説明

プレス型およびワークの清掃装置、並びに清掃方法

【課題】プレス型およびワークに付着する塵埃等を効率よく確実に除去する。
【解決手段】ワークWのリフタ装置8を有するプレス型に使用され、エアブロー装置2からなる清掃装置1であって、リフタ装置8は、ワークWの搬入時には支持部材81を下降させ、搬出時には上昇させるエアシリンダ82と、エアシリンダ82の下降用エア供給配管83および上昇用エア供給配管84と、を備え、エアブロー装置2は、下降用エア供給配管83から分岐させた分岐配管21と、分岐配管21に連通するブロー管22と、上昇用エア供給配管84に上昇用エアを供給して支持部材81を上昇させながらエアシリンダ82内の残圧エアQをブロー管22から噴出するとともに、プレス型からワークWを次工程へ搬出後、下降用エア供給配管83に下降用エアを供給して分岐配管21からブロー管22に噴出用エアを供給するエアコントローラ25と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス型およびワークの清掃装置、並びに清掃方法に係り、特に、エアブロー装置からなる清掃装置並びに清掃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばトリム型等のプレス型において、鋼板に切粉等の塵埃が付着しないように塵埃を除去する清掃方法としては、主に上型側に設けられたエアブロー装置を工場エアと接続し、トリミング時のプレス稼働(クランク角度)と連動させて、鋼板の表面に向けてエアブローを行い鋼板表面、および下型表面の清掃を行っていた(例えば、特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−53799号公報(段落0012)
【特許文献2】実開平1−84900号公報(明細書の第8頁の第5〜6行目、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の装置では、エアを適切なタイミング放出するためのエアブロー装置や制御装置を別途設けているため、構成が複雑化するという問題があった。
そして、エアブロー装置には空気通路が必要となり、型内部に細孔を複数個所穿設してエアを噴射するため、鋼板形状が変更された場合等において切粉飛散箇所が変わると空気通路を再加工しなければならないため柔軟に対応しにくいという問題があった。
【0005】
また、特許文献2に記載の装置では、上方からエアブローしているため、切粉が舞い上がりやすく、この舞い上がった切粉を回収するための集塵器を必要とするため、装置自体が非効率的であり大型化するという問題があった。
【0006】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、簡素化された構成によりプレス型における塵埃等を効率よく確実に除去することができるプレス型およびワークの清掃装置、並びに清掃方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、ワークを支持しながら上昇させてプレス型から搬出するリフタ装置を有するプレス型に使用され、エアを噴出し前記プレス型および前記ワークに付着する塵埃を吹き飛ばして除去するエアブロー装置からなる清掃装置であって、前記リフタ装置は、前記ワークを支持する支持部材と、前記ワークの搬入時には予め前記支持部材を下降させて退避させ、前記ワークの搬出時には前記支持部材を上昇させるエアシリンダと、このエアシリンダに下降用エアを供給する下降用エア供給配管と、前記エアシリンダに上昇用エアを供給する上昇用エア供給配管と、を備え、前記エアブロー装置は、前記プレス型の鋳抜き穴に配設され、前記下降用エア供給配管から分岐させた分岐配管と、この分岐配管に連通しエアを噴出するブロー管と、前記上昇用エア供給配管に前記上昇用エアを供給して前記支持部材を上昇させながら前記エアシリンダ内の残圧エアを前記ブロー管から噴出するとともに、前記プレス型から前記ワークを次工程へ搬出後、前記下降用エア供給配管に前記下降用エアを供給して前記分岐配管から前記ブロー管に噴出用エアを供給するエアコントローラと、を備えたことを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、前記エアブロー装置は、リフタ装置に供給される圧縮エアを利用して、前記下降用エア供給配管から分岐させた分岐配管に連通したブロー管からエアを噴出することで、別途エア供給源や複雑なエア供給配管を設ける必要がなく、構成を簡素化することができる。
【0009】
そして、エアコントローラにより、前記支持部材を上昇させながら前記エアシリンダ内の残圧エアを前記ブロー管から噴出することで、前記ワークの上昇時に前記ブロー管から前記プレス型およびワークにエアを噴出して塵埃を除去することができる。
また、前記プレス型から前記ワークを次工程へ搬出後、前記分岐配管から前記ブロー管に噴出用エアを供給することで、前記ブロー管から前記プレス型にエアを噴出してワークの搬出時にワークからプレス型に落下する塵埃を除去することができる。
【0010】
このため、本発明に係るプレス型およびワークの清掃装置は、リフタ装置に供給されるエアを制御するエアコントローラを利用してブロー管からエアを噴出することができるため、簡易な構成により確実にワークがプレス型(下型)から上昇するタイミング、ワークが次工程へ搬出されたタイミングに合わせてエアを噴出することができる。
【0011】
さらに、本発明に係るプレス型およびワークの清掃装置は、簡易な構成により効率よくタイミングを合わせて適切なエアの放出時間を管理することで、エアを過剰に放出することなく効率よく確実にプレス型およびワークに付着した塵埃を除去することができるため、工場エアの節減に寄与することができる。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のプレス型およびワークの清掃装置であって、前記ブロー管の位置およびエアの噴出角度の少なくとも一方を調整する調整機構を備えていることを特徴とする。
【0013】
かかる構成によれば、前記ブロー管の位置やエアの噴出角度を調整する調整機構を備えたことで、ワーク形状が変更された場合等においても切粉等の塵埃が飛散する適切な箇所にエアを噴射することができるため、設計変更に柔軟に対応して効率よく確実にプレス型に付着した塵埃を除去することができる。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載のプレス型およびワークの清掃装置であって、前記ブロー管の噴出口は、水平方向の径が垂直方向の径よりも大きい楕円形状の噴出口を備えていることを特徴とする。
【0015】
かかる構成によれば、楕円形状の噴出口を備えたことで、プレス型のワーク載置面に沿って広範囲にエアを噴射することができるため、効率よく確実にプレス型に付着した塵埃を除去することができる。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のプレス型およびワークの清掃装置であって、前記ブロー管の噴出口は、水平方向に対して下向きに約10度の傾斜角度をもって前記プレス型のワーク載置面の端面の方向に向けられ、前記端面は水平方向に対して上向きに約10度の傾斜角度を有する面取りが設けられていることを特徴とする。
【0017】
かかる構成によれば、ブロー管から水平方向に対して下向きに約10度の傾斜角度をもってエアを噴出することで、ワーク載置面に衝突するエアの衝撃を緩和し塵埃が舞い上がりにくくしてプレス型の縁部まで吹き飛ばすことができる。また、下向きに約10度の傾斜角度をもって噴出されたエアを水平方向に対して上向きに約10度の傾斜角度を有する面取りが施された前記ワーク載置面の端面で受けることで、エアが衝突する前記ワーク載置面の端面では前記面取りにより上昇しようとするエアの流れが生じるため、ワーク載置面の形状に沿ってエアを円滑に流すことができる。
【0018】
このため、塵埃が舞い上がらないようにプレス型の縁部まで効率よく吹き飛ばしてプレス型の縁部近傍に設けられたスクラップシュータから確実に排出することが可能となる。
【0019】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプレス型およびワークの清掃装置であって、前記プレス型は、前記搬入されたワークを検出する近接センサと、この近接センサを当該プレス型に固定する取り付け部材と、を備え、前記ブロー管は、前記取り付け部材に取り付けられて、前記プレス型のワーク載置面の近傍に配設されていることを特徴とする。
【0020】
かかる構成によれば、近接センサの取り付け部材に前記ブロー管を取り付けることで、近接センサはワーク載置面の近傍に配設されているため、前記ブロー管をワーク載置面の近傍に取り付けることが容易となり、前記ブロー管の取り付け工数を削減することが可能となる。
【0021】
請求項6に係る発明は、ワークを支持しながら上昇させてプレス型から搬出するリフタ装置を有するプレス型に使用され、エアブロー装置によりエアを噴出し前記プレス型に付着する塵埃を吹き飛ばして除去するプレス型およびワークの清掃方法であって、前記リフタ装置は、前記ワークを支持する支持部材と、前記ワークの搬入時には予め前記支持部材を下降させて退避させ、前記ワークの搬出時には前記支持部材を上昇させるエアシリンダと、このエアシリンダに下降用エアを供給する下降用エア供給配管と、前記エアシリンダに上昇用エアを供給する上昇用エア供給配管と、を備え、前記エアブロー装置は、前記下降用エア供給配管から分岐させた分岐配管と、この分岐配管に連通しエアを噴出するブロー管と、前記下降用エア供給配管および上昇用エア供給配管に供給するエアを制御するエアコントローラと、を備え、前記エアコントローラにより、前記上昇用エア供給配管に前記上昇用エアを供給して前記支持部材を上昇させながら前記エアシリンダ内の残圧エアを前記ブロー管から前記プレス型およびワークに噴出して塵埃を除去するとともに、前記プレス型から前記ワークを次工程へ搬出後、前記下降用エア供給配管に前記下降用エアを供給し前記分岐配管を通って前記ブロー管から前記プレス型にエアを噴出して塵埃を除去することを特徴とする。
【0022】
本発明に係るプレス型およびワークの清掃方法は、リフタ装置に供給されるエアを制御するエアコントローラを利用してブロー管からエアを噴出することができるため、簡易な構成により確実にワークがプレス型(下型)から上昇するタイミング、ワークが次工程へ搬出されたタイミングに合わせてエアを噴出することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るプレス型の清掃装置および清掃方法は、簡素化された構成によりプレス型における塵埃等を効率よく確実に除去して、工場エアの節減に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係るトリム型の構成を模式的に示す正面断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る清掃装置をプレス型に装着した状態を示す部分平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る清掃装置をトリム型に装着した状態を示す図2のA−A線矢視による部分正面断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るエアブロー装置の主要な構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係るエアブロー装置の主要な構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るエアブロー装置の主要な構成を示す正面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る清掃装置の動作を説明するための図であり、(a)はワークを搬入する状態、(b)はワークの搬出時にワークを支持して上昇させながらエアブローする状態、(c)はワークを次工程に搬出後にピストンを下降させながらエアブローする状態を示す。
【図8】本発明の実施形態に係るエアブロー装置の他の実施例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態に係るプレス型の清掃装置1の構成について、図1から図4を参照しながら詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る清掃装置1は、図1に示すように、例えば、前工程で絞り成形加工された鋼板等からなるワークWの縁取りを行うプレス型であるトリム型Tの清掃装置として使用することができる。
【0026】
トリム型Tは、図1に示すように、ガイドブッシュ10aとガイドポスト11aとで摺動自在に嵌合された上型10および下型11からなり、下型11にワークWがワーク載置面11bに載置された状態で、上型10を下降させパッド12でワークWを押圧して挟持し、上型10と下型11に設けられた切り刃(不図示)でワークWの縁部W1を切断するプレス金型である。
【0027】
このとき、切断されたワークWの縁部W1は、スクラップシュータ14から回収されるが、切断時に切粉や細長い切り屑(「塵埃」と総称する。)が飛散してワークWや下型11の表面に付着する場合がある。このようなワークWや下型11に付着した塵埃を放置するとプレス加工時にワークWや下型11の表面に損傷を与えるため、飛散した塵埃を本発明の実施形態に係る清掃装置1により吹き飛ばして清掃する。
【0028】
なお、ワークWは、特に限定されないが、自動車のボディを構成するサイドパネル等のトリム型Tの下型11のワーク載置面11bに載置した状態で上向きに凸になるような曲面が形成されている。
【0029】
トリム型Tには、ワークを成形するための成形面内に形成した鋳抜き穴13が形成されている(図2を併せて参照)。そして、この鋳抜き穴13の中には、ワークWを上昇させるリフタ装置8と、エアを噴出しトリム型Tに付着する塵埃を吹き飛ばして除去する清掃装置1を構成するエアブロー装置2と、が適切な箇所に適宜複数配設されている。
【0030】
清掃装置1は、図1と図2に示すように、リフタ装置8を有するプレス型に使用され、エアを噴出しトリム型Tに付着する塵埃を吹き飛ばして除去するエアブロー装置2を備えている。以下、リフタ装置8、およびエアブロー装置2の具体的な構成を説明する。
【0031】
リフタ装置8は、図3に示すように、ワークWを支持する支持部材であるラバーカップ81と、ラバーカップ81を下降または上昇させるエアシリンダ82と、エアシリンダ82に下降用エアを供給する下降用エア供給配管83と、エアシリンダ82に上昇用エアを供給する上昇用エア供給配管84と、を備えている。
【0032】
かかる構成により、リフタ装置8は、ワークWの搬入時には予めラバーカップ81を下降させて退避させ、ワークWの搬出時にはワークWをラバーカップ81で支持しながら上昇(リフトアップ)させて下型11からワークWを取り出す機能を有する。
【0033】
ラバーカップ81は、逆円錐形状の柔軟性のあるゴム製の支持部材であるが、ワークWのパネル形状に合わせて成形したウレタンゴム等の支持部材を適用することもでき特に限定されない。
【0034】
エアシリンダ82は、シリンダ本体82a内に摺動自在に内装されたピストン82bを有し、ピストン82bにはシリンダロッド82cが連結されている。そして、シリンダロッド82cの先端にラバーカップ81が装着されている。
【0035】
かかる構成により、エアシリンダ82は、下降用エア供給配管83にエアが供給されるとピストン82bを下降させ、上昇用エア供給配管84にエアが供給されるとピストン82bを上昇させる機能を有する。
【0036】
エアブロー装置2は、図3に示すように、下降用エア供給配管83から分岐させた分岐配管21と、この分岐配管21に連通しエアを噴出するブロー管22と、このブロー管22を下型11に位置決めして支持する支持台23と、ブロー管22の位置およびエアの噴出角度を調整する調整機構24(図4参照)と、下降用エア供給配管83と分岐配管21、および上昇用エア供給配管84に供給するエアを制御するエアコントローラ25と、を備えている。
【0037】
ブロー管22の支持台23は、図4に示すように、垂直方向(V方向)の調整機能を有する高さ調整部材23aと、高さ調整部材23aに対して水平方向の一方向(H1の方向)に移動自在に位置決めする機能を有するベース部材23bと、水平方向の一方向に直交する方向(H2方向)に移動自在にベース部材23bに位置決めする機能を有する水平方向調整部材であるアングル部材23cと、アングル部材23cに対して水平方向(R1方向)に回動自在に枢支された回動部材23dと、を備えている。
アングル部材23cは、水平方向部材23c1と垂直方向部材23c2からなり、回動部材23dは、垂直方向部材23c2に枢支されている。
【0038】
調整機構24は、図4と図5に示すように、支持台23に備えられており、ブロー管22の垂直方向(V方向)、並びに水平方向の一方向(H1の方向)および一方向に直交する方向(H2方向)の位置を調整する位置調整機構(24a,24b,24c,24d)と、ブロー管22から噴出されるエアの噴出角度を水平方向(R1方向)および垂直方向(R2方向)に回転させて調整する角度調整機構(24d,24e)と、を有する。
【0039】
具体的には、位置調整機構における垂直方向の位置決めは、高さ調整部材23aの垂直方向Vの長さを適宜設定することで調整する。
水平方向の位置決めは、ベース部材23bに水平方向の一方向(H1方向)に沿って形成された長穴24aにより、ベース部材23bの水平方向のH1方向の位置調整を行ない、長穴24aに挿通されたボルト24bを高さ調整部材23aにねじ込んで固定して行う。
【0040】
また、水平方向における一方向(H1の方向)に直交する方向(H2方向)の位置決めは、アングル部材23cの水平方向部材23c1のH2方向に沿って形成された1箇所の長穴24cにより、アングル部材23cのH2方向の位置調整を行ない、長穴24cに挿通されたボルト24dをベース部材23bにねじ込んで固定して行う。
【0041】
角度調整機構における水平方向の角度調整は、アングル部材23cの水平方向部材23c1に形成された1箇所の長穴24cにより、アングル部材23cを水平方向(R1方向)に回転させて角度調整を行ない、長穴24cに挿通されたボルト24dをベース部材23bにねじ込んで固定して行う。
【0042】
角度調整機構における垂直方向の角度調整は、アングル部材23cの垂直方向部材23c2に水平方向に回動自在に枢支された回動部材23dにより、この回動部材23dを垂直方向(R2方向)に回転させて角度調整を行ない、ボルト24eにより回動部材23dと垂直方向部材23c2とを固定して行う。
【0043】
かかる構成によれば、ブロー管22の位置およびエアの噴出角度を調整する調整機構24を備えたことで、設計変更等によりワーク形状が変更された場合においても切粉等の塵埃が飛散する適切な箇所にエアを噴射することができるため、設計変更に柔軟に対応して効率よく確実にトリム型Tに付着した塵埃を除去することができる。
【0044】
ブロー管22は、図4に示すように、中空のパイプ材をパイプベンダーにより所定の形状に屈曲するように成形加工され、水平方向の径φd1が垂直方向の径φd2よりも大きい楕円形状の噴出口22aを備えている。かかる構成により、噴出口22aから噴出されたエアが垂直方向よりも水平方向に広範囲に広がるため、ワーク載置面11bに沿って広範囲に効率よくエアを噴出することができる(図2参照)。
【0045】
ブロー管22の噴出口22aは、図6に示すように、水平方向に対して下向きに約10度(例えば、9〜11度)の傾斜角度θ1をもってトリム型Tのワーク載置面11bの端面11cの方向に向けられ、端面11cは水平方向に対して上向きに約10度(例えば、9〜11度)の傾斜角度θ2をもって面取りが設けられている。
【0046】
かかる構成によれば、ブロー管22から水平方向に対して下向きに約10度の傾斜角度θ1をもってエアを噴出することで、ワーク載置面11bに衝突するエアの衝撃を緩和し塵埃が舞い上がりにくくしてトリム型Tの縁部まで吹き飛ばすことができる。また、下向きに約10度の傾斜角度θ1をもって噴出されたエアを水平方向に対して約10度の傾斜角度θ2を有する面取りが施されたワーク載置面11bの端面11cで受けることで、エアが衝突するワーク載置面11bの端面11cでは面取りによる上向きの約10度の傾斜角度θ2により上昇しようとするエアの流れが生じるため、ワーク載置面11bの形状に沿ってエアを円滑に流すことができる。このため、塵埃が舞い上がらないようにトリム型Tの縁部まで効率よく吹き飛ばしてトリム型Tの縁部近傍に設けられたスクラップシュータ14から確実に排出することが可能となる。
【0047】
エアコントローラ25は、トリム型Tを稼動させる図示しないプレスマシーンのクランク軸の角度に合わせて作動するようになっている。このクランク軸の角度は、プレスマシーンの制御装置からエンコーダにより検出する。
かかる構成により、エアコントローラ25は、図3に示すように、エア源Gから下降用エア供給配管83に供給する下降用エアと、エア源Gから上昇用エア供給配管84に供給する上昇用エアと、を制御する機能を有する。
そして、エアコントローラ25は、下降用エア供給配管83に下降用エアを供給してピストン82bを下降させ(図7(c)参照)、上昇用エア供給配管84に上昇用エアを供給してピストン82bを上昇させる(図7(b)参照)。
【0048】
さらにこのとき、エアコントローラ25は、上昇用エア供給配管84に上昇用エアを供給してワークWを上昇させながらエアシリンダ82内の残圧エアQ(図7(b)参照)をブロー管22から噴出するとともに、トリム型TからワークWを次工程へ搬出後、下降用エア供給配管84に下降用エアを供給して分岐配管21からブロー管22に噴出用エアを供給する(図7(c)参照)。
【0049】
続いて、以上のように構成された本発明の実施形態に係るトリム型Tの清掃装置1の動作について、主として図7を参照しながら説明する。
図7(a)に示すように、プレスマシーン(不図示)のクランク軸の上死点を360度、下死点を180度としたときに上死点付近でワークWをローダ装置(不図示)により下型11(図1参照)に投入する。このとき、リフタ装置8は、ピストン82bが下降した待機状態でラバーカップ81は下方に退避している。ワークWが下型11(図1参照)に投入されると、近接センサ(不図示)でワークWの投入が検出される。
【0050】
このようにしてワークWが投入されると、図7(a)に示すように、ワークWを下型11(図1参照)に載置した状態で、上型10(図1参照)を下降させパッド12(図1参照)でワークWを挟持してトリム加工が行われる。トリム加工が終了すると、上型10(図1参照)が上昇し、ワークWの搬出工程に移行する。
【0051】
ワークWの搬出工程では、図7(b)に示すように、エアコントローラ25により、上昇用エア供給配管84に上昇用エアを供給してピストン82bを上昇させ下型11からワークWをリフトアップして上昇させながらエアシリンダ82内の残圧エアQをブロー管22から噴出する。このようにして、ブロー管22から噴出されるエアにより、下型11のワーク載置面11bおよびワークWの裏側表面W2に付着した塵埃を吹き飛ばして除去する。
【0052】
そして、図示しないプレスマシーンのクランク軸が上死点手前の330度付近で、ワークWはアンローダ装置(不図示)により次工程に搬出される(図7(b)参照)。
このようにして、トリム型TからワークWを次工程へ搬出後、図7(c)に示すように、エアコントローラ25により、下降用エア供給配管83に下降用エアを供給して分岐配管21からブロー管22に噴出用エアを供給して噴出し、下型11のワーク載置面11b付着した塵埃を吹き飛ばして除去する。
【0053】
以上のように構成された本発明の実施形態に係るトリム型Tの清掃装置1は、以下のような作用効果を奏する。
すなわち、本発明の実施形態に係るトリム型Tの清掃装置1は、エアブロー装置2により、下降用エア供給配管83から分岐させた分岐配管21に連通したブロー管22からエアを噴出することで、リフタ装置8に供給される圧縮エアを利用することができるため、別途エア供給源や複雑なエア供給配管を設ける必要がなく、構成を簡素化することができる。
【0054】
そして、エアコントローラ25により、ワークWを上昇させながらエアシリンダ82内の残圧エアQをブロー管22から噴出することで、ワークWの上昇時にブロー管22からトリム型TおよびワークWにエアを噴出して塵埃を除去することができる。
また、トリム型TからワークWをアンローダ装置(不図示)により次工程へ搬出後、分岐配管21からブロー管22に噴出用エアを供給することで、ブロー管22からトリム型Tにエアを噴出してワークWの搬出時にワークWからトリム型Tに落下する塵埃を除去することができる。
【0055】
このため、本発明に係るプレス型およびワークの清掃装置1は、リフタ装置8に供給されるエアを制御するエアコントローラ25を利用してブロー管22からエアを噴出することができるため、簡易な構成により確実にワークWがトリム型Tの下型11から上昇するタイミング、ワークWが次工程へ搬出されたタイミングに合わせてエアを噴出することができる。
【0056】
このようにして、本発明の実施形態に係るトリム型Tの清掃装置1は、簡易な構成により効率よくタイミングを合わせて適切なエアの放出時間を管理することで、エアを過剰に放出することなく効率よく確実にトリム型TおよびワークWに付着した塵埃を除去することができるため、工場エアの節減に寄与することができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されず、適宜変更して実施することが可能である。例えば、本実施形態においては、ブロー管22の支持台23をワークWを検出する近接センサの取り付け部材と別体として構成したが、図8に示すように、ブロー管22の支持台23と近接センサ3の取り付け部材23′とを共用化して、取り付け部材23′のベース部材23b′に近接センサ3を配設することもできる。
【0058】
かかる構成によれば、近接センサ3の取り付け部材23′にブロー管22を取り付けることで、近接センサ3はワーク載置面11bの近傍に配設されているため、ブロー管22をワーク載置面11bの近傍に取り付けることが容易となり、ブロー管22の取り付け工数を削減することが可能となる。
【符号の説明】
【0059】
1 清掃装置
2 エアブロー装置
3 近接センサ
8 リフタ装置
10 上型
11 下型
11b ワーク載置面
11c 端面
21 分岐配管
22 ブロー管
22a 噴出口
23 支持台
23′ 取り付け部材
24 調整機構(24a,24b,24c,24d,24e)
25 エアコントローラ
81 支持部材(ラバーカップ)
82 エアシリンダ
83 下降用エア供給配管
84 上昇用エア供給配管
G エア源
T トリム型(プレス型)
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを支持しながら上昇させてプレス型から搬出するリフタ装置を有するプレス型に使用され、エアを噴出し前記プレス型および前記ワークに付着する塵埃を吹き飛ばして除去するエアブロー装置からなる清掃装置であって、
前記リフタ装置は、
前記ワークを支持する支持部材と、
前記ワークの搬入時には予め前記支持部材を下降させて退避させ、前記ワークの搬出時には前記支持部材を上昇させるエアシリンダと、
このエアシリンダに下降用エアを供給する下降用エア供給配管と、
前記エアシリンダに上昇用エアを供給する上昇用エア供給配管と、を備え、
前記エアブロー装置は、前記プレス型の鋳抜き穴に配設され、
前記下降用エア供給配管から分岐させた分岐配管と、この分岐配管に連通しエアを噴出するブロー管と、
前記上昇用エア供給配管に前記上昇用エアを供給して前記支持部材を上昇させながら前記エアシリンダ内の残圧エアを前記ブロー管から噴出するとともに、前記プレス型から前記ワークを次工程へ搬出後、前記下降用エア供給配管に前記下降用エアを供給して前記分岐配管から前記ブロー管に噴出用エアを供給するエアコントローラと、を備えたことを特徴とするプレス型およびワークの清掃装置。
【請求項2】
前記エアブロー装置は、前記ブロー管の位置およびエアの噴出角度の少なくとも一方を調整する調整機構を備えていることを特徴とする請求項1に記載のプレス型およびワークの清掃装置。
【請求項3】
前記ブロー管の噴出口は、水平方向の径が垂直方向の径よりも大きい楕円形状の噴出口を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプレス型およびワークの清掃装置。
【請求項4】
前記ブロー管の噴出口は、水平方向に対して下向きに約10度の傾斜角度をもって前記プレス型のワーク載置面の端面の方向に向けられ、前記端面は水平方向に対して上向きに約10度の傾斜角度を有する面取りが設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のプレス型およびワークの清掃装置。
【請求項5】
前記プレス型は、前記搬入されたワークを検出する近接センサと、この近接センサを当該プレス型に固定する取り付け部材と、を備え、
前記ブロー管は、前記取り付け部材に取り付けられて、前記プレス型のワーク載置面の近傍に配設されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプレス型およびワークの清掃装置。
【請求項6】
ワークを支持しながら上昇させてプレス型から搬出するリフタ装置を有するプレス型に使用され、エアブロー装置によりエアを噴出し前記プレス型に付着する塵埃を吹き飛ばして除去するプレス型およびワークの清掃方法であって、
前記リフタ装置は、
前記ワークを支持する支持部材と、
前記ワークの搬入時には予め前記支持部材を下降させて退避させ、前記ワークの搬出時には前記支持部材を上昇させるエアシリンダと、
このエアシリンダに下降用エアを供給する下降用エア供給配管と、
前記エアシリンダに上昇用エアを供給する上昇用エア供給配管と、を備え、
前記エアブロー装置は、前記下降用エア供給配管から分岐させた分岐配管と、
この分岐配管に連通しエアを噴出するブロー管と、
前記下降用エア供給配管および上昇用エア供給配管に供給するエアを制御するエアコントローラと、を備え、
前記エアコントローラにより、前記上昇用エア供給配管に前記上昇用エアを供給して前記支持部材を上昇させながら前記エアシリンダ内の残圧エアを前記ブロー管から前記プレス型およびワークに噴出して塵埃を除去するとともに、前記プレス型から前記ワークを次工程へ搬出後、前記下降用エア供給配管に前記下降用エアを供給し前記分岐配管を通って前記ブロー管から前記プレス型にエアを噴出して塵埃を除去することを特徴とするプレス型およびワークの清掃方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−61486(P2012−61486A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206368(P2010−206368)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)