説明

プレス工程の合否判定方法及び装置

【課題】プレス工程の合否判定を簡易かつ高精度に実行する。
【解決手段】プレス工程の荷重プロファイル15において、ホールドすべき点として、サンプルホールド、変曲点ホールド、ピークホールド、極値ホールドを併用する(マルチホールド)。それぞれのホールド点に対応させて判定ウィンドウ100〜300を設定し、ホールド点が判定ウィンドウ100〜300内に含まれるか否かによりプレス工程の合否を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプレス(圧入を含む)工程の合否判定に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プレス工程において時間あるいは変位とともに変化する荷重を所定サンプリングタイミングでサンプリングし、サンプリング値が正常か異常かによりプレス工程が正常か異常かを判定する技術が知られている。プレス工程に限らず、ある物理量を検出し、検出値が正常か否かを判定する技術は周知である。
【0003】
下記の特許文献1には、落下衝撃振動の振幅レベルの最大値及び最小値が適正範囲にあるか否かを解析することで物品の硬さを判定することが開示されている。
【0004】
特許文献2には、信号波形の合否判定と、合否判定についての不合格レベルを判定するために、複数のレベル判定エリアを設定することが開示されている。
【0005】
特許文献3には、被測定対象物上のパターンの信号強度分布からパターンのエッジ部分のテーパ幅を検出し、検出したテーパ幅が所定範囲内のときに測定値が正しいと判定することが開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平8−193935号公報
【特許文献2】特開2004−69590号公報
【特許文献3】特開2006−170969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
プレス工程において所定サンプリングタイミングでサンプリングした荷重値が正常か否かでプレス工程が正常か否かを判定する場合、外部からサンプリングタイミング信号を供給する必要がある。また、所定のサンプリングタイミングでサンプリングしたとしても、より簡易に、かつ確実に工程の正常/異常(合格/不合格)を判定できることが望まれる。
【0008】
本発明の目的は、簡易に、かつ高精度に、プレス工程の合否判定を行うことができる方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、プレス工程の合否を判定する方法であって、プレス工程時に検出された、時間あるいは変位の関数としての荷重値を入力するステップと、前記荷重値のうち、サンプル点、極値点、変曲点、ピーク点の少なくともいずれかを検出して、時間あるいは変位と荷重値との組み合わせとしてホールドするステップと、ホールド点が、所定の時間範囲あるいは所定の変位範囲と所定の荷重値範囲からなるそれぞれのホールド点毎に設定された異常判定範囲内に存在するか否かを判定することで前記プレス工程の合否を判定するステップと、判定結果を出力するステップとを有する。
【0010】
また、本発明は、プレス工程の合否を判定する方法であって、プレス工程時に検出された、時間あるいは変位の関数としての荷重値を入力するステップと、前記荷重値のうち、サンプル点、極値点、ピーク点の中から選択される少なくともいずれかと変曲点とを検出して、時間あるいは変位と荷重値との組み合わせとしてホールドするステップと、ホールド点が、所定の時間範囲あるいは所定の変位範囲と所定の荷重値範囲からなるそれぞれのホールド点毎に設定された異常判定範囲内に存在するか否かを判定することで前記プレス工程の合否を判定するステップと、判定結果を出力するステップとを有する。
【0011】
また、本発明は、プレス工程の合否を判定する方法であって、プレス工程時に検出された、時間あるいは変位の関数としての荷重値を入力するステップと、前記荷重値のうち、サンプル点、極値点、変曲点、ピーク点の少なくともいずれかを検出して、時間あるいは変位と荷重値との組み合わせとしてホールドするステップと、ホールド点が、所定の時間範囲あるいは所定の変位範囲と所定の荷重値範囲からなるそれぞれのホールド点毎に設定された正常判定範囲内に存在するか否かを判定することで前記プレス工程の合否を判定するステップと、判定結果を出力するステップとを有する。
【0012】
また、本発明は、プレス工程の合否を判定する方法であって、プレス工程時に検出された、時間あるいは変位の関数としての荷重値を入力するステップと、前記荷重値のうち、サンプル点、極値点、ピーク点の中から選択される少なくともいずれかと変曲点とを検出して、時間あるいは変位と荷重値との組み合わせとしてホールドするステップと、ホールド点が、所定の時間範囲あるいは所定の変位範囲と所定の荷重値範囲からなるそれぞれのホールド点毎に設定された正常判定範囲内に存在するか否かを判定することで前記プレス工程の合否を判定するステップと、判定結果を出力するステップとを有する。
【0013】
また、本発明は、プレス工程の合否を判定する装置であって、プレス工程時に検出された、時間あるいは変位の関数としての荷重値を入力する手段と、ホールドすべき点として、サンプル点、極値点、変曲点、ピーク点の少なくともいずれを用いるかを選択する選択手段と、前記荷重値のうち、選択された点を検出して時間あるいは変位と荷重値との組み合わせとしてホールドする手段と、ホールド点が、所定の時間範囲あるいは所定の変位範囲と所定の荷重値範囲からなるそれぞれのホールド点毎に設定された異常判定範囲内に存在するか否かを判定することで前記プレス工程の合否を判定する手段と、判定結果を出力する手段とを有する。
【0014】
また、本発明は、プレス工程の合否を判定する装置であって、プレス工程時に検出された、時間あるいは変位の関数としての荷重値を入力する手段と、ホールドすべき点として、サンプル点、極値点、変曲点、ピーク点の少なくともいずれを用いるかを選択する選択手段と、前記荷重値のうち、選択された点を検出して時間あるいは変位と荷重値との組み合わせとしてホールドする手段と、ホールド点が、所定の時間範囲あるいは所定の変位範囲と所定の荷重値範囲からなるそれぞれのホールド点毎に設定された正常判定範囲内に存在するか否かを判定することで前記プレス工程の合否を判定する手段と、判定結果を出力する手段とを有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡易かつ高精度にプレス工程の合否判定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0017】
図1に、本実施形態におけるプレス工程の合否判定装置の構成図を示す。図1に示す装置1は、デジタル指示計としても機能し、プレス工程における荷重の変化あるいはプレス機の変位をグラフ表示あるいはデジタルの数値として視覚的に表示する。デジタル指示計は、プレス工程を制御するプレス工程制御機構に組み込まれ、プレス時の荷重を測定するひずみゲージ式トランスデューサからの荷重信号、または、プレス機の変位を測定する変位計(センサ)からの変位信号を入力する。
【0018】
本実施形態の装置1は、入出力インタフェースI/F10、メモリ12、表示装置14、CPU16、ROM18及びRAM20を有して構成される。
【0019】
入出力インタフェースI/F10は、トランスデューサからの荷重信号、または変位計からの変位信号を入力する。
【0020】
CPU16は、ROM18に記憶されたプログラムに従い、RAM20をワーキングメモリとして用いて入力した荷重信号をデジタル信号に変換し、さらに所定のタイミングでホールドしてメモリ12に格納する。本実施形態では、従来のように所定のサンプリングタイミングにおける荷重値ではなく、時間あるいは変位と荷重値とのセットでメモリ12に格納する。時間は、プレス工程を開始してからの経過時間を意味し、変位はプレス工程を開始してからのプレス機の変位量を意味する。例えば、ある経過時間t1においてホールドした荷重値がW1である場合、CPU16は(t1,W1)の組をホールド値としてメモリ12に格納する。あるいは、ある変位量x1においてホールドした荷重値がW2である場合、CPU16は(x1,W2)の組をホールド値としてメモリ12に格納する。
【0021】
本実施形態におけるホールドタイミングは一義的ではなく、複数のタイミングでホールドする(マルチホールド)。具体的に例示すると以下のとおりである。
(1)サンプルホールド
(2)極値(極大値、極小値)ホールド
(3)変曲点ホールド
(4)ピークホールド
【0022】
(1)〜(4)は適宜組み合わせることができる。例えば、(1)と(2)、(1)と(3)、(1)と(4)、(2)のみ、(2)と(3)、(2)と(4)、(3)のみ、(3)と(4)、(4)のみ、等である。(1)のみは従来と同様のサンプリングホールドである。プレス工程の正常/異常を判定するためには特に(2)、(3)が重要であり、(2)と(3)の少なくともいずれかを含むのが好適である。(2)のみ、(3)のみ、(2)と(3)、(1)と(3)等である。どのようなタイミングでホールドするかはユーザが適宜選択してもよく、予めROM18内のプログラムとして装置に組み込んでいても良い。ユーザが選択する場合、複数のホールドパターンをメニューとして表示装置14に表示し、ユーザがこのメニューを参照しながら選択できることが好ましい。例えば、あるユーザはホールドパターンとして(2)と(3)を選択し、別のユーザは(3)のみを選択する等である。ROM18をEEPROM等の書き換え可能なROMで構成することで、ユーザにより選択されたホールドパターンをROM18に記憶させることができる。
【0023】
また、CPU16は、順次取得した荷重値を時間あるいは変位の関数として表示装置14に表示する。時間あるいは変位の関数としての荷重値は、荷重プロファイルと呼ばれる。表示装置14は液晶モニタあるいは有機ELモニタで構成される。
【0024】
図2に、表示装置14に表示される荷重プロファイル15の一例を示す。横軸Xは時間あるいは変位であり、縦軸Yは荷重値である。荷重プロファイル15は、X−Y座標系における曲線として示される。ユーザは、この荷重プロファイル15を視認することで、プレス工程の状況を把握することができる。
【0025】
一方、メモリ12、ROM18、あるいはRAM20には、プレス工程の正常/異常を判定するための判定ウィンドウのデータが格納される。判定ウィンドウは、時間あるいは変位の範囲と、荷重値の範囲を組み合わせた2次元範囲として設定される。例えば、ある判定ウィンドウは、時間の範囲がt1〜t2、荷重値の範囲がW1〜W2として設定される。判定ウィンドウは、CPU16によりホールドされメモリ12に格納されたホールド値と比較され、ホールド値が判定ウィンドウ内に含まれているか否か判定される。判定ウィンドウには2種類存在する。第1は正常判定ウィンドウであり、この範囲内にホールド値が含まれていればプレス工程は正常と判定されるウィンドウである。第2は異常判定ウィンドウであり、この範囲内にホールド値が含まれていればプレス工程は異常と判定されるウィンドウである。判定ウィンドウは1つあるいは複数設定される。例えば、正常判定ウィンドウのみ、異常判定ウィンドウのみ、正常判定ウィンドウと異常判定ウィンドウの混在等である。CPU16は、ホールド値が判定ウィンドウに含まれているか否かを判定し、その判定結果に応じてプレス工程が正常か異常かを決定する。どのような判定ウィンドウを設定するか、及び設定した判定ウィンドウにホールド値が含まれているか否かに応じて多様な組み合わせが存在し得る。CPU16は、判定ウィンドウとホールド値の属否に応じて総合的に正常/異常を判定する。正常/異常の判定結果は、入出力I/F10からプレス制御装置に供給される。プレス制御装置は、判定結果に基づいて、プレス工程を再度実施するか、あるいは何らかのエラー処理を実行するかを制御する。
【0026】
図3に、ホールドパターンを示す。サンプルホールド、変曲点ホールド、ピークホールドの例である。サンプルホールド点をS1、変曲点ホールド点をS2、ピークホールド点をS3とする。各ホールド点は、既述したように時間あるいは変位とそのときの荷重値との組み合わせである。サンプルホールド点S1の時間をt1、荷重値をW1とすると、S1=(t1,W1)である。同様に、変曲点ホールド点S2の時間をt2、荷重値をW2とするとS2=(t2,W2)、ピークホールド点S3の時間をt3、荷重点をW3とするとS3=(t3,W3)である。サンプルホールド点S1は、外部からのサンプリングタイミング信号に応じて荷重信号をサンプリングホールドして得られる。図3に、測定開始信号とサンプリングタイミング信号を示す。図3では、測定開始信号に応じて時間t0で波形の測定を開始し、サンプリングタイミング信号に応じて時間t1でサンプルホールド点S1をサンプルホールドしている様子を示す。変曲点ホールド値S2は、荷重プロファイル15の変曲点を探索することでホールドされる。変曲点は、荷重プロファイル15の傾きが変化する点として定義される。ある点における前後で傾きが所定のしきい値以上変化すれば、その点は変曲点としてホールドされる。変曲点は、数学的に厳密な意味で用いる必要はなく、傾きが顕著に変化する点として把握することができる。プレス工程における変曲点は、プレス工程において被成型物が変形を完了した時点として物理的に意義がある。ピークホールドS3は、荷重プロファイル15のピーク値を探索することでホールドされる。プレス工程におけるピーク値は、プレス工程の完了時点として物理的に意義がある。
【0027】
また、図3には、サンプルホールド点S1、変曲点ホールド点S2、ピークホールド点S3に加え、判定ウィンドウも例示されている。判定ウィンドウ100は、サンプルホールド点S1を判定するための正常判定ウィンドウである。判定ウィンドウ200は、変曲点ホールド点S2を判定するための正常判定ウィンドウである。判定ウィンドウ300は、ピークホールド点S3を判定するための正常判定ウィンドウである。判定ウィンドウ100、200、300は、プレス工程が正常に実行された場合に得られるであろう荷重プロファイル15の軌跡を含むように設定される。例えば、判定ウィンドウ100に関しては、プレス工程が正常に実行された場合に、あるサンプリングタイミングtにおいて得られる荷重Wを含むように設定される。判定ウィンドウ100の時間範囲の下限をta、上限をtbとすると、Δtを固定値として、ta=t−Δt、tb=t+Δtと設定される。時間範囲ではなく変位範囲として設定することもできる。また、判定ウィンドウ100の荷重範囲の下限をWa、上限をWbとすると、ΔWを固定値として、Wa=W−ΔW、Wb=W+ΔWと設定される。判定ウィンドウ200についても同様であり、プレス工程が正常に実行された場合に、あるタイミングt’において得られる変曲点の荷重W’を含むように設定される。判定ウィンドウ200の時間範囲の下限をtc、上限をtdとすると、Δtを固定値として、tc=t’−Δt、td=t’+Δtと設定される。また、判定ウィンドウ200の荷重範囲の下限をWc、上限をWdとすると、ΔWを固定値として、Wc=W’−ΔW、Wd=W’+ΔWと設定される。判定ウィンドウ300についても同様であり、プレス工程が正常に実行された場合に、あるタイミングt’’において得られるピークの荷重W’’を含むように設定される。判定ウィンドウ300の時間範囲の下限をte、上限をtfとすると、Δtを固定値として、te=t’’−Δt、tf=t’’+Δtと設定される。また、判定ウィンドウ300の荷重範囲の下限をWe、上限をWfとすると、ΔWを固定値として、We=W’’−ΔW、Wf=W’’+ΔWと設定される。
【0028】
既述したように、ホールド点としてはサンプルホールド、変曲点、ピークホールドのいずれか、あるいはこれらを組み合わせたものを用いることができる。図4に、これらの組み合わせを例示する。「モード1」ではサンプルホールドと変曲点ホールドの組み合わせ、「モード2」ではサンプルホールドとピークホールドの組み合わせ、「モード3」では変曲点ホールドとピークホールドの組み合わせ、「モード4」ではサンプルホールドと変曲点ホールドとピークホールドの組み合わせである。各モードは、ホールド点を規定するだけでなく、判定ウィンドウをも規定する。ホールド点と判定ウィンドウは、図3に示されるように対応しているからである。「モード1」が選択されると、ホールド点としてサンプルホールドと変曲点ホールドが選択され、判定ウィンドウとして判定ウィンドウ100と判定ウィンドウ200が選択される。「モード2」が選択されると、ホールド点としてサンプルホールドとピークホールドが選択され、判定ウィンドウとして判定ウィンドウ100と判定ウィンドウ300が選択される。「モード3」が選択されると、ホールド点として変曲点ホールドとピークホールドが選択され、判定ウィンドウとして判定ウィンドウ200と判定ウィンドウ300が選択される。「モード4」が選択されると、ホールド点としてサンプルホールドと変曲点ホールドとピークホールドが選択され、判定ウィンドウとして判定ウィンドウ100、判定ウィンドウ200、判定ウィンドウ300が選択される。
【0029】
今、仮に「モード4」が選択された場合を想定する。CPU16は、順次入力される荷重信号から荷重プロファイル15を作成して表示装置14に表示するとともに、サンプルホールド、変曲点ホールド、ピークホールドを行ってホールド点をメモリ12に順次格納する。サンプルホールドは、外部からのサンプリングタイミング信号に基づいて実行する。変曲点ホールド及びピークホールドは、外部からのサンプリングタイミング信号によらずに実行できる。次に、CPU16は、ホールドしたそれぞれの値を対応する判定ウィンドウと比較し、判定ウィンドウに含まれるか否かを判定する。すなわち、サンプルホールド点S1が判定ウィンドウ100に含まれるか否かを判定し、変曲点ホールド点S2が判定ウィンドウ200に含まれるか否かを判定し、ピークホールド点S3が判定ウィンドウ300に含まれるか否かを判定する。そして、サンプルホールド点S1が判定ウィンドウ100に含まれ、かつ、変曲点ホールド点S2が判定ウィンドウ200に含まれ、かつ、ピークホールド点S3が判定ウィンドウ300に含まれる場合に、プレス工程は正常であると決定する。各ホールド点が対応する判定ウィンドウに含まれるか否かは、プレス工程が全て終了してから判定してもよく、あるいは、各ホールド点が検出される毎に順次対応する判定ウィンドウに含まれるか否かを判定してもよい。この場合、例えばサンプルホールド点S1が得られた時点で判定ウィンドウ100に含まれるか否かを判定し、含まれないと判定した時点でプレス工程は異常であると決定できる。
【0030】
なお、CPU16は、基本的には上記のようにサンプルホールド点S1が判定ウィンドウ100に含まれ、かつ、変曲点ホールド点S2が判定ウィンドウ200に含まれ、かつ、ピークホールド点S3が判定ウィンドウ300に含まれる場合に、プレス工程は正常であると決定するが、判定ウィンドウ100、200、300のうち、少なくともいずれか2つがホールド点を含む場合に正常と判定してもよく、あるいは、判定ウィンドウ100、200、300間に重み付けをしてもよい。例えば、判定ウィンドウ200及び判定ウィンドウ300の重みを相対的に大きくし、判定ウィンドウ100の重みを相対的に小さくし、サンプルホールド点S1は判定ウィンドウ100には含まれないが、変曲点ホールド点S2は判定ウィンドウ200に含まれ、かつ、ピークホールド点S3は判定ウィンドウ300に含まれる場合には正常と判定する等である。プレス工程における各ホールド点の重要度に応じて判定ウィンドウ100、200、300の重みを決定することが好適である。プレス工程において被成型物の変形を示す変曲点は重要度が高いため、判定ウィンドウ200の重みを最も大きくすることができる。ホールド点が判定ウィンドウに含まれる場合に2ポイント、含まれない場合に0ポイントとし、各ホールド点が対応する判定ウィンドウに含まれるか否かを判定し、その重み付け加算が所定のしきい値を超えた場合に正常と判定し、しきい値以下の場合に異常と判定してもよい。重み付け加算値としきい値との差分を用い、正常と決定される場合においてもどの程度の正常なのかを比率表示してもよい。例えば、80%の確率で正常と判定される等である。しきい値の上下にグレーゾーンを設け、このグレーゾーンの範囲内であれば正常か異常かの判定を留保してもよい。
【0031】
図5に、「モード1」が選択された場合の処理を示す。ホールド点としてサンプルホールド点S1及び変曲点ホールド点S2が探索され、それぞれ判定ウィンドウ100、200に含まれるか否かが判定される。CPU16は、サンプルホールド点S1が判定ウィンドウ100に含まれ、かつ、変曲点ホールド点S2が判定ウィンドウ200に含まれる場合にプレス工程は正常であると決定する。すなわち、サンプルホールド点S1が(t’,W’)であり、変曲点ホールド点S2が(t”,W”)である場合、
ta≦t’≦tb、Wa≦W’≦Wb ・・・(1)
かつ
tc≦t”’≦td、Wc≦W”≦Wd ・・・(2)
であるときにプレス工程は正常であると決定する。
上記の(1)は判定ウィンドウ100に含まれるか否かの判定であり、(2)は判定ウィンドウ200に含まれるか否かの判定である。
【0032】
図6に、さらに他のモードの例を示す。ホールド点として、サンプルホールドと変曲点ホールドを実行する場合である。サンプルホールドは、外部からのサンプリングタイミング信号に応じて実行され、所定の時間t1及びt2にて実行され、サンプルホールド点S4、S5が取得されメモリ12に格納される。また、変曲点ホールド点S2がメモリ12に格納される。一方、判定ウィンドウとして、サンプルホールド点S4に対応して判定ウィンドウ400が設定され、サンプルホールド点S5に対応して判定ウィンドウ500が設定され、変曲点ホールド点S2に対応して判定ウィンドウ200が設定される。判定ウィンドウ200,400は正常判定ウィンドウであり、ホールド点がウィンドウに含まれる場合に正常と判定されるウィンドウである。一方、判定ウィンドウ500は異常判定ウィンドウであり、ホールド点がこのウィンドウに含まれる場合に異常と判定されるウィンドウである。異常判定ウィンドウ500は、プレス工程に異常があった場合に生じるであろう荷重プロファイルの軌跡上に設定される。例えば、プレス工程に異常があった場合の過去の複数の荷重プロファイルの軌跡から、互いに重複する軌跡部分を抽出し、この抽出した軌跡を含むように異常判定ウィンドウを設定する。異常判定ウィンドウ500も正常判定ウィンドウと同様にメモリ12やROM18に予め格納しておく。CPU16は、サンプルホールド点S4が判定ウィンドウ400に含まれるか否か、サンプルホールド点S5が判定ウィンドウ500に含まれるか否か、及び変曲点ホールド点S2が判定ウィンドウ200に含まれるか否かを判定する。そして、サンプルホールド点S4が判定ウィンドウ400に含まれ、かつ、サンプルホールド点S5が判定ウィンドウ500に含まれず、かつ、変曲点ホールド点S2が判定ウィンドウ200に含まれる場合に、プレス工程は正常であると決定する。一方、サンプルホールド点S5が判定ウィンドウ500に含まれる場合は、CPU16はプレス工程が異常と決定する。
【0033】
なお、サンプルホールド点S4あるいは変曲点ホールド点S2のいずれかがそれぞれ判定ウィンドウ400、200に含まれず、かつ、サンプルホールド点S5が判定ウィンドウ500に含まれない場合には、CPU16はプレス工程は正常と決定する。サンプルホールド点S4及び変曲点ホールド点S2のいずれもそれぞれ判定ウィンドウ400、200に含まれず、かつ、サンプルホールド点S5が判定ウィンドウ500に含まれない場合には、CPU16はプレス工程は異常と決定する。要するに、たとえサンプルホールド点S5が判定ウィンドウ500に含まれない場合であっても、残りのホールド点と判定ウィンドウとの関係に応じて正常/異常を決定する。もちろん、サンプルホールド点S5が判定ウィンドウ500に含まれる場合には、残りのサンプルホールド点如何によらずにプレス工程は異常と決定する。
【0034】
図7に、さらに他のモードの例を示す。ホールド点として、極値ホールドと変曲点ホールドを実行する場合である。極値ホールドは、荷重プロファイルが極大値あるいは極小値となる点を探索してホールドするものである。極値ホールドは、外部からのサンプリングタイミング信号によらずに実行できる。変曲点ホールドも同様であるから、外部からのサンプリングタイミング信号は不要となる。また、荷重プロファイルに極大点あるいは極小点が存在しない場合、極大値ホールドを実行しても結果としてホールド点はなくメモリ12に格納されない(存在しないことを意味するヌルデータを格納してもよい)。図7において、極値ホールド点は存在せず、変曲点ホールド点S2のみが存在することを示す。極値ホールド点には判定ウィンドウ500が対応し、変曲点ホールド点S2には判定ウィンドウ200が対応する。CPU16は、極値ホールド点が判定ウィンドウ500に含まれるか否か、及び変曲点ホールド点S2が判定ウィンドウ200に含まれるか否かを判定する。判定ウィンドウ500は図6で説明したとおり、異常判定ウィンドウであり、ホールド点がここに含まれていればプレス工程は異常と決定される。図7において、極値が存在しないため極値ホールド点は存在せず、したがってホールド点は判定ウィンドウ500には含まれない。ここで、ホールド点がそもそも存在しない場合も、対応する判定ウィンドウには含まれないものとみなす。また、変曲点ホールド点S2が判定ウィンドウ200に含まれる場合、プレス工程は正常と決定される。
【0035】
なお、CPU16は、極値点ホールド点が判定ウィンドウ500に含まれておらず、かつ、変曲点ホールド点S2が判定ウィンドウ200に含まれていない場合、プレス工程は異常と決定する。
【0036】
図8に、図7のモードにおける他の荷重プロファイルを示す。極値ホールド及び変曲点ホールドを実行する場合のモードであり、極大値及び極小値が存在する場合である。極大値及び極小値が存在し、極大値ホールド点S6及び極小値ホールド点S7が探索されメモリ12に格納される。また、変曲点ホールド点S2が探索され、メモリ12に格納される。
【0037】
極大値ホールド点S6は判定ウィンドウ500に対応し、変曲点ホールド点S2は判定ウィンドウ200に対応する。CPU16は、メモリ12から極大値ホールド点S6を読み出して判定ウィンドウ500に含まれているか否かを判定する。そして、極大値ホールド点S6が判定ウィンドウ500に含まれる場合には、プレス工程が異常と決定する。一方、極大値ホールド点S6が存在するが判定ウィンドウ500に含まれず、かつ、変曲点ホールド点S2が判定ウィンドウ200に含まれる場合には、プレス工程は正常と決定する。極大値ホールド点S6が存在するが判定ウィンドウ500に含まれず、かつ、変曲点ホールド点S2が判定ウィンドウ200に含まれない場合、プレス工程は異常と決定する。
【0038】
本実施形態において、ホールド点としてサンプルホールド、変曲点ホールド、ピークホールド、極値ホールドを例示し、判定ウィンドウとして正常判定ウィンドウ、異常判定ウィンドウを例示したが、これらホールド点と判定ウィンドウの組み合わせは、上記の実施形態で開示した例に限定されるものではない。例えば、ホールド値として極値ホールドとピークホールドを選択し、判定ウィンドウとして極値ホールドには異常判定ウィンドウ、ピークホールドには正常判定ウィンドウを設定してもよい。また、極値ホールドには異常判定ウィンドウ、ピークホールドにも異常判定ウィンドウを設定してもよい。
【0039】
また、本実施形態において、ユーザがどのホールド点を用いるかを選択できるとともに、正常判定ウィンドウあるいは異常判定ウィンドウのいずれを用いるかを選択できるように構成してもよい。
【0040】
さらに、本実施形態において、変曲点ホールド点が最も重要であるとして、変曲点ホールド点のみ実行し、正常判定ウィンドウ200に含まれるか否かを判定して正常/異常を決定してもよい。変曲点ホールド点を必須ホールド点とし、他のホールド点をユーザが適宜選択できるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施形態の構成図である。
【図2】表示装置の表示例を示す説明図である。
【図3】ホールド点と判定ウィンドウの説明図である。
【図4】ホールド点を規定するモード説明図である。
【図5】ホールド点と判定ウィンドウの説明図である。
【図6】ホールド点と判定ウィンドウの説明図である。
【図7】ホールド点と判定ウィンドウの説明図である。
【図8】ホールド点と判定ウィンドウの説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1 プレス工程合否判定装置、10 インタフェース、12 メモリ、14 表示装置、16 CPU、18 ROM、20 RAM。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス工程の合否を判定する方法であって、
プレス工程時に検出された、時間あるいは変位の関数としての荷重値を入力するステップと、
前記荷重値のうち、サンプル点、極値点、変曲点、ピーク点の少なくともいずれかを検出して、時間あるいは変位と荷重値との組み合わせとしてホールドするステップと、
ホールド点が、所定の時間範囲あるいは所定の変位範囲と所定の荷重値範囲からなるそれぞれのホールド点毎に設定された異常判定範囲内に存在するか否かを判定することで前記プレス工程の合否を判定するステップと、
判定結果を出力するステップと、
を有することを特徴とするプレス工程の合否判定方法。
【請求項2】
プレス工程の合否を判定する方法であって、
プレス工程時に検出された、時間あるいは変位の関数としての荷重値を入力するステップと、
前記荷重値のうち、サンプル点、極値点、ピーク点の中から選択される少なくともいずれかと変曲点とを検出し、時間あるいは変位と荷重値との組み合わせとしてホールドするステップと、
ホールド点が、所定の時間範囲あるいは所定の変位範囲と所定の荷重値範囲からなるそれぞれのホールド点毎に設定された異常判定範囲内に存在するか否かを判定することで前記プレス工程の合否を判定するステップと、
判定結果を出力するステップと、
を有することを特徴とするプレス工程の合否判定方法。
【請求項3】
請求項1、2のいずれかに記載の方法において、
前記異常判定範囲は、前記プレス工程が異常に実行された場合に得られる時間あるいは変位の関数としての荷重値の軌跡を含む範囲として設定されることを特徴とするプレス工程の合否判定方法。
【請求項4】
プレス工程の合否を判定する方法であって、
プレス工程時に検出された、時間あるいは変位の関数としての荷重値を入力するステップと、
前記荷重値のうち、サンプル点、極値点、変曲点、ピーク点の少なくともいずれかを検出して、時間あるいは変位と荷重値との組み合わせとしてホールドするステップと、
ホールド点が、所定の時間範囲あるいは所定の変位範囲と所定の荷重値範囲からなるそれぞれのホールド点毎に設定された正常判定範囲内に存在するか否かを判定することで前記プレス工程の合否を判定するステップと、
判定結果を出力するステップと、
を有することを特徴とするプレス工程の合否判定方法。
【請求項5】
プレス工程の合否を判定する方法であって、
プレス工程時に検出された、時間あるいは変位の関数としての荷重値を入力するステップと、
前記荷重値のうち、サンプル点、極値点、ピーク点の中から選択される少なくともいずれかと変曲点とを検出して、時間あるいは変位と荷重値との組み合わせとしてホールドするステップと、
ホールド点が、所定の時間範囲あるいは所定の変位範囲と所定の荷重値範囲からなるそれぞれのホールド点毎に設定された正常判定範囲内に存在するか否かを判定することで前記プレス工程の合否を判定するステップと、
判定結果を出力するステップと、
を有することを特徴とするプレス工程の合否判定方法。
【請求項6】
請求項4、5のいずれかに記載の方法において、
前記正常判定範囲は、前記プレス工程が正常に実行された場合に得られる時間あるいは変位の関数としての荷重値の軌跡を含む範囲として設定されることを特徴とするプレス工程の合否判定方法。
【請求項7】
プレス工程の合否を判定する装置であって、
プレス工程時に検出された、時間あるいは変位の関数としての荷重値を入力する手段と、
ホールドすべき点として、サンプル点、極値点、変曲点、ピーク点の少なくともいずれを用いるかを選択する選択手段と、
前記荷重値のうち、選択された点を検出して時間あるいは変位と荷重値との組み合わせとしてホールドする手段と、
ホールド点が、所定の時間範囲あるいは所定の変位範囲と所定の荷重値範囲からなるそれぞれのホールド点毎に設定された異常判定範囲内に存在するか否かを判定することで前記プレス工程の合否を判定する手段と、
判定結果を出力する手段と、
を有することを特徴とするプレス工程の合否判定装置。
【請求項8】
請求項7記載の装置において、
前記異常判定範囲は、前記プレス工程が異常に実行された場合に得られる時間あるいは変位の関数としての荷重値の軌跡を含む範囲として設定されることを特徴とするプレス工程の合否判定装置。
【請求項9】
プレス工程の合否を判定する装置であって、
プレス工程時に検出された、時間あるいは変位の関数としての荷重値を入力する手段と、
ホールドすべき点として、サンプル点、極値点、変曲点、ピーク点の少なくともいずれを用いるかを選択する選択手段と、
前記荷重値のうち、選択された点を検出して時間あるいは変位と荷重値との組み合わせとしてホールドする手段と、
ホールド点が、所定の時間範囲あるいは所定の変位範囲と所定の荷重値範囲からなるそれぞれのホールド点毎に設定された正常判定範囲内に存在するか否かを判定することで前記プレス工程の合否を判定する手段と、
判定結果を出力する手段と、
を有することを特徴とするプレス工程の合否判定装置。
【請求項10】
請求項9記載の装置において、
前記正常判定範囲は、前記プレス工程が正常に実行された場合に得られる時間あるいは変位の関数としての荷重値の軌跡を含む範囲として設定されることを特徴とするプレス工程の合否判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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