プレス機械のスライドガイド装置
【課題】 簡単かつ安価で、製造容易、入手容易な要素を利用した構成で、ランニングコストが少なくて済みメテナンスも容易な構成としながら、低フリクションで精度良くスライドの往復動を案内することができるプレス機械のスライドガイド装置を提供する。
【解決手段】 本発明は、スライド2の往復動作方向に延在されるフレーム1側に支持されるガイド部材5(9)と、スライド2側に支持される滑り子13と、の間に形成される摺動面5A(9A)により、プレス機械のスライド2の往復動作をガイドするプレス機械のスライドガイド装置であって、ガイド部材5、9が、スライド2の往復動作方向と略直交する面と交差する方向に延びるガイド部材回動シャフト7(11)廻りに回動自在にフレーム1に支持され、滑り子13が滑り子回動シャフト15廻りに回動自在にスライド2に支持されたことを特徴とする。
【解決手段】 本発明は、スライド2の往復動作方向に延在されるフレーム1側に支持されるガイド部材5(9)と、スライド2側に支持される滑り子13と、の間に形成される摺動面5A(9A)により、プレス機械のスライド2の往復動作をガイドするプレス機械のスライドガイド装置であって、ガイド部材5、9が、スライド2の往復動作方向と略直交する面と交差する方向に延びるガイド部材回動シャフト7(11)廻りに回動自在にフレーム1に支持され、滑り子13が滑り子回動シャフト15廻りに回動自在にスライド2に支持されたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドの往復運動(昇降運動)を利用してしつつプレス加工を行うプレス機械(プレスマシン)の当該スライドを案内するプレス機械のスライドガイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のスライドガイド装置として、例えば特許文献1には、スライドと、プレス機械本体と、の間に、凸状の球面部と、当該凸状の球面部に対応して設けられる凹状の球面部と、を介装することで、スライドとプレス機械本体との間の傾き等を吸収して、摺動面の面圧を確実に面接触させることで均一化して、摩耗や溶着等の発生を抑制しつつ、低フリクションで精度良くスライドの往復動を案内できるようにしたものが提案されている。
【0003】
より詳細には、特許文献1には、特許文献1の図1〜図11に示されるように、球面体7、9の凸状に形成された球面部と、当該球面部に対応して凹状に形成されたホルダ27の球面部或いはキャップ18の球面部と、による位置調整作用により、前記球面体7、9の平面部或いは前記キャップ18の平面部と、これと対面するプレス機械のフレーム側に設けられるギブの平面部と、を常時面接触させつつ摺動させることで、スライド2の昇降をガイドするスライドガイド装置が記載されている。当該スライドガイド装置では、球面体7、9の平面側或いは前記ホルダ27の平面側をスライド2に取り付ける構成とし、これによりスライドに対する高精度で煩雑な球面加工を不要にし、スライド2の加工を容易にしている。
【0004】
また、特許文献2には、特許文献2の図1〜図6に示されるように、所定回動中心廻りに回動可能な滑り子保持器9(10)をスライド2に配設し、滑り子保持器9(10)に対して半円柱形滑り子7(8)を前記所定回動中心と交差する回動中心廻りに回動可能に保持するようにしたプレス機械のスライドガイド装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−311495号公報
【特許文献2】特開2009−195927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2に記載されたものは、スライドガイド装置の摺動面の片当たりを抑制し、摺動面全体が一様に当たるようにすることはできる。
【0007】
しかし、特許文献1や特許文献2に記載されたものは、球面体或いは半円柱形状の部材を利用するものであるため高い製品精度を維持しつつ製作することで費用が嵩み、更にはメンテナンスにおいても部品交換や再研磨などが必要となるような場合にも費用が嵩むこととなるため、低コスト化を図りたい場合や、比較的高い面圧が作用する摺動面を採用したい場合など装置の大型化を図りたいような場合には難点がある。
【0008】
本発明は、かかる実情に鑑みなされたもので、簡単かつ安価で、製造容易、入手容易な要素を利用した構成で、ランニングコストが少なくて済みメテナンスも容易な構成としながら、スライドとガイド部材延いてはプレス機械本体との間の摺動面の面圧を良好に面接触させることで均一化して、摩耗や溶着等の発生を抑制しつつ、低フリクションで精度良くスライドのプレス機械本体に対する往復動を案内することができるプレス機械のスライドガイド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このため、本発明に係るプレス機械のスライドガイド装置は、
スライドの往復動作方向に延在されプレス機械フレーム側に支持されるガイド部材と、スライド側に支持される滑り子と、の間に形成される摺動面により、プレス機械のスライドの往復動作をガイドするプレス機械のスライドガイド装置であって、
ガイド部材が、スライドの往復動作方向と略直交する面と交差する方向に延びるガイド部材回動シャフト廻りに回動自在にプレス機械フレーム側に支持され、
滑り子が、摺動面と略直交する方向から見たときに、ガイド部材回動シャフトと交差する滑り子回動シャフト廻りに回動自在にスライド側に支持されたことを特徴とする。
【0010】
本発明において、ガイド部材と、ガイド部材回動シャフトと、の間に、周方向において分割された分割式或いは一体式の筒状の軸受が備えられ、
滑り子と、滑り子回動シャフトと、の間に、周方向において分割された分割式或いは一体式の筒状の軸受が備えられたことを特徴とすることができる。
【0011】
本発明において、ガイド部材は、ガイド部材回動シャフトに略直交する断面形状が多角形状であり、
滑り子は、滑り子回動シャフトに略直交する断面形状が多角形状であり、
ガイド部材の多角形状の一面と、滑り子の多角形状の一面と、が当接して摺動面を形成する一方、ガイド部材或いは/及び滑り子を回動させて別の面により摺動面を形成することを可能に構成されたことを特徴とすることができる。
【0012】
また、本発明に係るプレス機械のスライドガイド装置は、
スライドの往復動作方向に延在されるプレス機械フレーム側に支持されるガイド部材と、スライド側に支持される滑り子と、の間に形成される摺動面により、プレス機械のスライドの往復動作をガイドするプレス機械のスライドガイド装置であって、
ガイド部材或いは滑り子の一方が、スライドの往復動作方向と略直交する面と交差する方向に延びるシャフト廻りに回動自在にホルダに支持されると共に、当該ホルダが摺動面と略直交する方向から見たときに前記シャフトと交差するシャフト廻りに回動自在にプレス機械フレーム側或いはスライド側に支持されることを特徴とする。
【0013】
本発明において、ガイド部材或いは滑り子の一方と、シャフトと、の間に、周方向において分割された分割式或いは一体式の筒状の軸受が備えられ、
前記ホルダと、シャフトと、の間に、周方向において分割された分割式或いは一体式の筒状の軸受が備えられたことを特徴とすることができる。
【0014】
本発明において、ガイド部材或いは滑り子は、これを回動自在に支持するシャフトに略直交する断面形状が多角形状であり、この多角形状の一面が相手と当接して摺動面を形成する一方、ガイド部材或いは滑り子を回動させて別の面により摺動面を形成することを可能に構成されたことを特徴とすることができる。
【0015】
本発明において、前記スライドが、スライドの往復動作方向に略直交する平面において略四角形を有する場合に、その4つの角部或いはその付近に、摺動面が配設されることを特徴とすることができる。
【0016】
本発明において、スライドの往復動作方向から見て、隣接する摺動面を前記スライドの内方に延伸させた場合に、それらが交差するように、当該隣接する摺動面が配置されることを特徴とすることができる。
なお、かかる構成(例えば図6のような構成)とすれば、スライドが昇温等して熱膨張(或いは温度低下して収縮)したような場合でも、摺動面に沿って変形するため、摺動面の面接触は維持され、摩耗や溶着等の発生を招くことなく、低フリクションで精度良くスライドの往復動を案内することができる。
【0017】
本発明において、スライドの往復動作方向から見て、隣接する摺動面を前記スライドの外方に延伸させた場合に、それらが交差するように、当該隣接する摺動面が配置されることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡単かつ安価で、製造容易、入手容易な要素を利用した構成で、ランニングコストが少なくて済みメテナンスも容易な構成としながら、スライドとガイド部材延いてはプレス機械本体との間の摺動面の面圧を良好に面接触させることで均一化して、摩耗や溶着等の発生を抑制しつつ、低フリクションで精度良くスライドのプレス機械本体に対する往復動を案内することができるプレス機械のスライドガイド装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1に係るプレス機械の全体構成を概略的に示す正面図である。
【図2】同上実施例1に係るプレス機械のスライドガイド装置の断面を示す図1のA−A断面図である。
【図3】図2の滑り子及びギブ部分を拡大して示した拡大図である。
【図4】図3のE−E断面図である。
【図5】図2のB矢視図及びC矢視図である。
【図6】同上実施例1に係るプレス機械のスライドガイド装置の他の一例(摺動面の配設方向違いの一例)を示す断面図である。
【図7】同上実施例1における滑り子、ギブの材質の組み合わせとブッシュ(軸受)の要否を例示した図である。
【図8】本発明の実施例2に係るプレス機械のスライドガイド装置の断面を示す断面図である。
【図9】図8の滑り子及びギブ部分を拡大して示した拡大図である。
【図10】図9のF−F断面図である。
【図11】同上実施例2における滑り子、ギブの材質の組み合わせとブッシュ(軸受)の要否を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係るプレス機械のスライドガイド装置の実施の形態について、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施例により、本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0021】
図1は、実施例1に係るプレス機械の正面図で、プレス機械のフレーム1のベッド部にボルスタ3が取り付けられ、当該ボルスタ3に対向してスライド2が昇降自在に配設されている。
【0022】
スライド2は、コンロッド4に自在継手等を介して連結され、クランク軸4Aと当該コンロッド4とにより構成されるクランク機構により昇降運動(往復運動)されて、当該スライド2の下面に取り付けられている金型を介してプレス加工が行われる。
【0023】
図1に示したように、フレーム1の左右のコラム部の内側のそれぞれに、スライド2の昇降方向に所定間隙をもって延在される(2分割された)一対のギブ9、9が配設されている。また、この一対のギブ9、9に対向して、プレス機械の背面側には、一対のギブ5、5(図2参照)が配設されている。
【0024】
図2〜図4に示すように、ガイド部材として機能するギブ5、5には、スライド2の昇降方向に沿った平面であってフレーム1のコラム部のスライド側面と所定の角度で交差する平面に、摺動面(ガイド面)5A、5Aが設けられている。
【0025】
同様に、ガイド部材として機能するギブ9、9には前記摺動面(ガイド面)5A、5Aとスライド2の図2平面に略直交する中心面X−Xに対して面対象な位置に、摺動面(ガイド面)9A、9Aが設けられている。
【0026】
これら4つの摺動面5A、9Aにより、スライド2の昇降は、図2平面内における遊動を規制されつつ昇降方向にガイドされることになる。
【0027】
図2は、図1のA−A断面図であり、当該図2に示したように、ギブ5は、フレーム1に取り付けられたホルダ6に、図2平面に略直交する回動中心軸(シャフト7)廻りに回動自在に支持されている。当該シャフト7が、本発明に係るガイド部材回動シャフトに相当する。
【0028】
より詳細には、ホルダ6は断面略コ字状の突き出し部6A、6Aを有しており、略コ字状の閉塞部背面6B側がフレーム1に取り付けられる一方、略コ字状の開放部分(突き出し部6A、6Aの間)にギブ5が収容されている(図2〜図4等参照)。
【0029】
ホルダ6には、図4に示したように、摺動面(ガイド面)5Aの延在方向に沿って延びるシャフト7が、略コ字状の両端の突き出し部分6A,6Aに支持されており、このシャフト7の周囲に、軸受(ブッシュ)5aを介してギブ5が回動自在に支持されている。
【0030】
同様に、ギブ9は、図2に示したように、フレーム1に取り付けられたホルダ10に、図2平面に略直交する回動中心軸(シャフト11)廻りに回動自在に支持されている。当該シャフト11が、本発明に係るガイド部材回動シャフトに相当する。
【0031】
ホルダ10は、ホルダ6と同様、断面略コ字状の突き出し部10A、10Aを有しており、略コ字状の閉塞部背面10B側がフレーム1に取り付けられる一方、略コ字状の開放部分(突き出し部10A、10Aの間)にギブ9が収容されている(図2〜図4等参照)。
【0032】
ホルダ10には、ホルダ6と同様、図4に示したように、摺動面(ガイド面)9Aの延在方向に沿って延びるシャフト11が、略コ字状の両端の突き出し部分10A,10Aにリテーナプレート12等を介して支持されており、このシャフト11の周囲に、軸受(ブッシュ)9aを介してギブ9が回動自在に支持されている。
【0033】
一方で、図2に示したように、スライド2の4つの角部には、ギブ5、9の摺動面(ガイド面)5A、9Aと面接触する滑り子13と、これを回動自在に保持する滑り子保持器(ホルダ)14が、スライド2に取り付けられている。
【0034】
滑り子保持器14は、図3、図4に示すように、断面略コ字状の突き出し部分14A,14Aを有しており、略コ字状の閉塞部背面14B側がスライド2に取り付けられる一方、略コ字状の開放部分(突き出し部14A、14Aの間)がギブ5、9を向いて配設されている。
【0035】
そして、滑り子保持器14には、摺動面(ガイド面)5A、9Aの延在方向と略直交すると共に摺動面(ガイド面)5A、9Aと略平行なシャフト15が、略コ字状の両側の突き出し部分14A,14Aに鍔部やリテーナプレート16等を介して支持されており、このシャフト15の周囲に、軸受(ブッシュ)13aを介して滑り子13が回動自在に支持されている。
当該シャフト15が、本発明に係る滑り子回動シャフトに相当する。
【0036】
すなわち、本実施例においては、図2〜図4に示したように、ギブ5、9は、スライド2の昇降方向に沿った方向に延びる回動中心軸(シャフト7、11)廻りに回動自在にフレーム1側に支持される一方で、スライド2の昇降方向に沿って延びるギブ5、9の摺動面5A、9Aと面接触する滑り子13はスライド2の昇降方向と略直交する回動中心軸(シャフト15)廻りに回動自在にスライド2に支持されている。
【0037】
従って、本実施例においては、ギブ5(9)は、フレーム1に対して、図4平面に略平行な回動中心軸廻りに回動可能に保持されているから、スライド2の昇降運動とギブ5(9)の摺動面(ガイド面)5A(9A)との間に図1(図4)の奥行方向における傾斜や倒れ等があっても、これを吸収して、滑り子13の摺動面13Aと、ギブ5(9)の摺動面(ガイド面)5A(9A)と、を良好に面接触させることができる。
【0038】
また、本実施例によれば、滑り子13のスライド2の昇降方向と略直交する回動中心軸廻りの回動運動により、スライド2の昇降運動とギブ5(9)の摺動面(ガイド面)5A、9Aとの間に図1(図4)平面内における傾斜や倒れ等があっても、これを吸収して、滑り子13の摺動面13Aと、ギブ5(9)の摺動面(ガイド面)5A(9A)と、を良好に面接触させることができることになる。
【0039】
すなわち、滑り子13の摺動面13Aと、ギブ5(9)の摺動面(ガイド面)5A(9A)と、は相互に回動自在であり、従って偏心荷重等によってスライド2が若干傾こうとするような場合においても、このような傾きを生じさせることを抑制しつつ、滑り子13の摺動面13Aと、ギブ5(9)の摺動面(ガイド面)5A(9A)と、は良好に面接触を維持して摺動することができるので、スライド2の高精度な往復動作を実現しながら、線接触等の局所的な接触の発生を防止して、摺動面(ガイド面)が異常摩耗したり、焼き付いて溶着等するようなことを抑制することができる。
【0040】
また、本実施例に係るギブ5(9)及び滑り子13の回動自在な保持は、例えば入手容易な市販の環状或いは筒状のすべり軸受(ブッシュ)5a、9a、13aなどを利用することができるため、球面形状や円筒の一部を回動自在に保持することが必要な従来の装置に比べて、製造が容易であり製造コスト、更には軸受交換などのメンテナンスコストなどを低く抑えることができる。なお、入手容易な市販の環状或いは筒状のすべり軸受(ブッシュ)5a、9a、13aとしては、周方向において分割された分割式或いは一体式の何れも利用可能である。
【0041】
更に、本実施例に係るギブ5(9)及び滑り子13は、回動中心軸に略直交する断面形状が例えば四角形などの多角形形状であり、それぞれ回動中心軸(シャフト7(11)及びシャフト15)廻りに回動させることができるから、例えば、ある一面が摩耗等した場合に、回動させて他の面を新たに摺動面(5A(9A)、13A)として利用することができるため、長期に亘って部品交換や摺動面の研磨・交換等を不要とすることができ、従来のものに比べてランニング、メンテナンスコスト等を大幅に低減することができる。
ここでは、ギブ5(9)及び滑り子13は、回動中心軸に略直交する断面形状を四角形としたが、これに限定されるものではなく、三角形以上の多角形形状とすることができるものである。
【0042】
以上説明したように、本実施例に係るギブ5(9)及びホルダ6、滑り子13及び滑り子保持器14を備えたスライドガイド装置によれば、製造容易で、入手容易な要素を利用した構成で、かつ、ランニングコストが少なくて済みメテナンスも容易な構成としながら、線接触等の発生を抑制して常に摺動面を面接触させることができるため、摺動面の面圧が均一化され、摩耗や溶着等の発生が抑制されると共に、低フリクションで精度良くスライド2のプレス機械本体に対する昇降復動を案内することができる。
【0043】
なお、本実施例では、ギブ5(9)をスライド2の昇降方向に沿った方向に延びる回動中心廻りに回動自在に配設する一方、滑り子13をスライド2の昇降方向と略直交する回動中心廻りに回動自在に配設して、摺動面13Aと略直交する方向から見たときに、ギブ5(9)の回動中心と、滑り子13の回動中心と、を略直交させた場合について説明したが、略直交に限定されるものではなく、要求に応じた摺動面の面接触を達成可能な範囲で、摺動面13Aと略直交する方向から見たときに、ギブ5(9)の回動中心と、滑り子13の回動中心と、が所定の角度で交差する構成とすることができる。
【0044】
ところで、ガイドウェイの基準側とされるギブ5及びホルダ6は、図2、図5に示すように、ピン部材24a(24b)を介してフレーム1のコラム部に取り付けられるブロック25により、スペーサ22を挟んでフレーム1のコラム部に取り付けられる。
【0045】
一方、位置調整側とされるギブ9及びホルダ10は、ピン部材24a(24b)を介してフレーム1のコラム部に取り付けられるサポート23a(23b)により、テーパ面21A(21B)を有するウェッジ21a(21b)を挟んでフレーム1のコラム部に取り付けられる。
【0046】
そして、スライド2の適切な昇降運動を実現でき、かつ、滑り子13の摺動面13Aと、ギブ5、9の摺動面5A、9Aと、の良好な面接触による摺動を実現できるように、前記ウェッジ21a(21b)を、ホルダ10に固定される固定ブロック28に螺合されている調整ボルト26(27)を所望に回転させることでサポート23a(23b)に対して図5中上下方向(スライド2の昇降方向)に相対移動させて、ウェッジ21a(21b)に形成されているテーパ面21A(21B)と、これらに対面してサポート23a(23b)に形成されているテーパ面23A(23B)と、の相対位置を変更し、ギブ9延いてはその摺動面9Aの位置調整を行なう。
【0047】
かかる位置調整完了後、固定ボルト6a、6b、30を介して、ホルダ6、10をフレーム1のコラム部に固定して調整作業を完了する。
【0048】
なお、滑り子13の摺動面13Aと、ギブ5、9の摺動面5A、9Aと、の間に隙間があると高精度の案内機能が害される惧れがあるため、ウェッジ21a(21b)の位置調整によりギブ5(9)を滑り子13側に押し付けるようして、摺動面にプリロードを掛けることができる。更に、摺動面5A(9A)、13Aや軸受5a、9a、13aに、図3や図4に示したように、給油通路から適宜給油することができる。
【0049】
ところで、上記の例では、図2に示したように、滑り子13の摺動面13Aと、ギブ5、9の摺動面5A、9Aと、をスライド2の角部の外側に配設する構成例(隣接する摺動面5A、5A(或いは9A、9A)をスライド2の外側に向けて延伸させた場合に、それらがスライド2の外側で交差するように、隣接する摺動面5A、5A(或いは9A、9A)が配置される構成例)について説明したが、これに限定されるものではなく、図6に示すように、滑り子13の摺動面13Aと、ギブ5、9の摺動面5A、9Aと、をスライド2の角部の内側に配設するように構成(隣接する摺動面5A、5A(或いは9A、9A)をスライド2の内方に向けて延伸させた場合に、それらがスライド2の内側で交差するように、隣接する摺動面5A、5A(或いは9A、9A)が配置される構成と)することもできる。
【0050】
なお、図6に示したように、滑り子13の摺動面13Aと、ギブ5、9の摺動面5A、9Aと、をスライド2の角部の内側に配設するようにすると、スライド2がプレス加工等の実行により昇温し膨張したような場合(或いは、温度低下があり収縮したような場合)でも、スライド2側に配設される滑り子13の摺動面13Aは、ギブ5、9の摺動面5A、9Aに沿って平行に外側へ広がるように変形するので、スライド2が比較的高温となるような状況下においても、摺動面の面接触は維持され、摩耗や溶着等の発生を招くことなく、低フリクションで精度良くスライド2の昇降復動を案内することができる。
【0051】
また、図1や図5に示したように、スライド2の昇降方向の上方側と下方側に同じ構成の滑り子13、滑り子保持器14を配設した場合について説明したが、例えば、スライド2の昇降方向の上方側に図2に示した構成を採用し下側に図6に示した構成を採用するなど適宜構成の異なる滑り子と滑り子保持器とを組み合わせて使用することも可能である。
【0052】
ところで、実施例1においては、滑り子13やギブ5、9の地金(基材:ベースメタル)を潤滑性の高い材料で製作したり各部摺動面に加工や処理などを施すことで、例えば軸受(ブッシュ)5a、9a、13a等を省略することなどが可能である。
【0053】
例えば、滑り子13とギブ5、9の材質として、図7に示すような組み合わせが採用可能であり、それに応じて軸受(ブッシュ)5a、9a、13aの要否なども決定される。
【0054】
すなわち、図7のNo.1のように、滑り子13の材質として構造用圧延鋼(潤滑性の低い材料の一例)を採用した場合には、シャフト15との間には軸受(ブッシュ)13aが必要とされると共に、滑り子13と面接触するギブ5、9(地金として構造用圧延鋼などを採用)の表面に砲金軸受材を溶射したり、潤滑性のある樹脂(例えば、フッ素樹脂(テフロン(登録商標)など))をコーティングしたり、樹脂層(テフロンライナなど)を貼着したりすることができる。また、ギブ5、9(地金として構造用圧延鋼などを採用)を回転自在に支持するために軸受5a、9aも必要とされる。
【0055】
なお、No.4の例では、ギブ5、9の地金を潤滑性のある鋳鉄としているので、軸受5a、9aが省略可能とされている。
また、No.6の例のように、滑り子13の材質として鋳鉄(潤滑性の高い材料の一例)を採用した場合には、シャフト15との間の軸受(ブッシュ)13aを省略可能とされる。
図7中に示す砲金(Gunmetal)は、銅合金の一種で、銅Cuと錫Snの合金で、一般に銅90%、錫10%程度の組成で、軸受材料として利用することができる。
【0056】
滑り子13の摺動面13Aや、ギブ5、9の摺動面5A、9Aには、例えば、地金(基材)に対して潤滑性が高く摩耗し難い材料(例えば軸受材料)などを溶射、メッキ、或いは貼着などにより適用することができ、或いは地金(基材)を潤滑性が高い材料や軸受材料としたような場合にはかかる材料の適用処理(表面改質など)は省略することも可能である。
【実施例2】
【0057】
図8は、実施例2に係るプレス機械のスライド部分の断面図(実施例1の図2に相当)であり、実施例2においては、図8平面に略直交して延在される摺動面47Aを有する4つのギブ47が、スライド2の4つの角部に配設されている滑り子46に対応してフレーム1に取り付けられている。なお、ここでは、図8平面に直交するX−X面、Y−Y面に関して面対称に配設される滑り子及びギブ周辺の構成についての説明は、滑り子46及びギブ47周辺の構成及び実施例1で説明した内容と同様であるので省略する。
【0058】
滑り子46は、図8〜図10に示すように、ギブ47の摺動面(ガイド面)47Aと面接触する摺動面46Aを有し、ギブ47の摺動面(ガイド面)47Aの延在方向(スライド昇降方向)と略平行な回動中心軸(シャフト44)廻りに、軸受46aを介して回動自在に取り付けられている。
【0059】
シャフト44は、滑り子保持器(ホルダ)43に保持されており、この滑り子保持器43は断面略コ字状の突き出し部分43A,43Aを有しており、図10に示すように、略コ字状の開放部分(突き出し部分43A,43Aの間)にシャフト44及び滑り子46が収容されていると共に、図9及び図10に示すように、略コ字状の閉塞部背面43B部分が、シャフト44と略直交する方向に延びる回動中心軸(シャフト41)廻りに、軸受43aを介して回動自在に支持されている。なお、シャフト44は、滑り子保持器43の略コ字状の突き出し部分43A,43Aに、鍔部やリテーナプレート45等を介して支持されている。
【0060】
そして、滑り子保持器43を回動自在に支持するシャフト41は、スライド2に取り付けられているホルダ40の略コ字状の突き出し部分40A,40Aに、鍔部やリテーナプレート42等を介して支持されている。
【0061】
すなわち、本実施例においては、図8〜図10に示したように、ギブ47は、スライド2の昇降方向に沿ってフレーム1側に固定的に支持される一方で、当該ギブ47の摺動面47Aと面接触する滑り子46はスライド2の昇降方向に沿った方向に延びる回動中心軸(シャフト44)廻りに回動自在に滑り子保持器43に支持され、かつ、この滑り子保持器43がスライド2の昇降方向と略直交する回動中心軸(シャフト41)廻りに回動自在にスライド2に支持されている。
【0062】
従って、本実施例の滑り子46は、ギブ47の摺動面(ガイド面)47Aに対して回動自在であり、従って偏心荷重等によってスライド2が若干傾こうとするような場合においても、このような傾きを生じさせることを抑制しつつ、滑り子46の摺動面46Aと、ギブ47の摺動面(ガイド面)47Aと、を良好に面接触させて摺動させることができるので、スライド2の高精度な往復動作を実現しながら、線接触等の局所的な接触の発生を防止して、摺動面(ガイド面)が異常摩耗したり、焼き付いて溶着等するようなことを抑制することができる。
【0063】
また、本実施例に係る滑り子46の回動自在な保持は、例えば入手容易な市販の環状或いは筒状のすべり軸受43a、46aなどを利用することができるため、球面形状や円筒の一部を回動自在に保持することが必要な従来の装置に比べて、製造が容易であり製造コスト、更には軸受交換などのメンテナンスコストなどを低く抑えることができる。
【0064】
更に、本実施例に係る滑り子46は、回動中心軸に略直交する断面形状が例えば四角形などの多角形形状であり、回動中心軸(シャフト44)廻りに回動させることができるから、例えば、ある一面が摩耗等した場合に、回動させて他の面を新たに摺動面(46A)として利用することができるため、長期に亘って部品交換や摺動面の研磨・交換等を不要とすることができ、従来のものに比べてランニング、メンテナンスコスト等を大幅に低減することができる。
ここでは、滑り子46は、回動中心軸に略直交する断面形状を四角形としたが、これに限定されるものではなく、三角形以上の多角形形状とすることができるものである。
【0065】
以上説明したように、本実施例に係る滑り子46、滑り子保持器(ホルダ)43、ホルダ40等を備えたスライドガイド装置によれば、製造容易で、入手容易な要素を利用した構成で、かつ、ランニングコストが少なくて済みメテナンスも容易な構成としながら、線接触等の発生を抑制して常に摺動面を面接触させることができるため、摺動面の面圧が均一化され、摩耗や溶着等の発生が抑制されると共に、低フリクションで精度良くスライド2のプレス機械本体に対する昇降復動を案内することができる。
【0066】
なお、本実施例では、滑り子46を滑り子保持器43に対して回動自在に支持するシャフト44と、滑り子保持器43をスライド2に対して回動自在に支持するシャフト41と、を、摺動面47Aと略直交する方向から見たときに略直交させた場合について説明したが、略直交に限定されるものではなく、要求に応じた摺動面の面接触を達成可能な範囲で、シャフト44と、シャフト41と、は、摺動面47Aと略直交する方向から見たときに所定の角度で交差する構成とすることができる。
【0067】
本実施例において、ギブ47は、実施例1と同様の方法により、フレーム1のコラム部に位置や傾斜を調整可能に取り付けることができる。
【0068】
ところで、実施例2においても、実施例1と同様に、滑り子46やギブ47を潤滑性の地金(基材:ベースメタル)を潤滑性の高い材料で製作したり各部摺動面に表面処理などを施すことで、例えば軸受(ブッシュ)43a、46a等を省略することなどが可能であり、滑り子46とギブ47の材質として、例えば、図11に示すような組み合わせが採用可能であり、それに応じて軸受(ブッシュ)43a、46aの要否なども決定される。
【0069】
また、本実施例においても、実施例1において図6で示したと同様に、滑り子46の摺動面46Aと、ギブ47の摺動面47Aと、をスライド2の角部の内側に配設するように構成(図8の上下方向において隣接する摺動面47A、47Aをスライド2の内方に向けて延伸させた場合に、それらがスライド2の内側で交差するように、隣接する摺動面47A、47Aが配置される構成と)することもできる。
【0070】
このような構成により、実施例1と同様に、スライド2がプレス加工等の実行により昇温し膨張したような場合(或いは、温度低下があり収縮したような場合)でも、スライド2側に配設される滑り子46の摺動面46Aは、ギブ47の摺動面47Aに沿って平行に外側へ広がるように変形するので、スライド2が比較的高温となるような状況下においても、摺動面の面接触は維持され、摩耗や溶着等の発生を招くことなく、低フリクションで精度良くスライド2の昇降復動を案内することができる。
【0071】
なお、実施例2では、ギブ47をフレーム1側に固定し、滑り子46をシャフト44を介して滑り子保持器(ホルダ)43に回動自在に支持させ、この滑り子保持器(ホルダ)43をシャフト41を介して回動自在にスライド2に支持させた場合を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、滑り子46をスライド2側に固定し、ギブ47を回動軸(シャフト)を介してホルダに回動自在に支持させ、このホルダを回動軸(シャフト)を介して回動自在にフレーム側に支持させるような構成とすることもできる。
【0072】
以上で説明した実施の形態は、本発明を説明するための例示に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは可能である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係るプレス機械のスライドガイド装置によれば、簡単かつ安価で、製造容易、入手容易な要素を利用した構成で、ランニングコストが少なくて済みメテナンスも容易な構成としながら、スライドとガイド部材延いてはプレス機械本体との間の摺動面の面圧を良好に面接触させることで均一化して、摩耗や溶着等の発生を抑制しつつ、低フリクションで精度良くスライドのプレス機械本体に対する往復動を案内することができ有益である。
【符号の説明】
【0074】
1 プレス機械のフレーム
2 スライド
5、9 ギブ(ガイド部材)
5A、9A 摺動面(ガイド面)
6、10 ホルダ
7、11 回動軸(シャフト:ガイド部材回動シャフト)
13 滑り子
13A 摺動面
14 滑り子保持器(ホルダ)
15 回動軸(シャフト:滑り子回動シャフト)
40 ホルダ
41、44 シャフト
43 滑り子保持器(ホルダ)
46 滑り子
46A 摺動面
47 ギブ(ガイド部材)
47A 摺動面(ガイド面)
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドの往復運動(昇降運動)を利用してしつつプレス加工を行うプレス機械(プレスマシン)の当該スライドを案内するプレス機械のスライドガイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のスライドガイド装置として、例えば特許文献1には、スライドと、プレス機械本体と、の間に、凸状の球面部と、当該凸状の球面部に対応して設けられる凹状の球面部と、を介装することで、スライドとプレス機械本体との間の傾き等を吸収して、摺動面の面圧を確実に面接触させることで均一化して、摩耗や溶着等の発生を抑制しつつ、低フリクションで精度良くスライドの往復動を案内できるようにしたものが提案されている。
【0003】
より詳細には、特許文献1には、特許文献1の図1〜図11に示されるように、球面体7、9の凸状に形成された球面部と、当該球面部に対応して凹状に形成されたホルダ27の球面部或いはキャップ18の球面部と、による位置調整作用により、前記球面体7、9の平面部或いは前記キャップ18の平面部と、これと対面するプレス機械のフレーム側に設けられるギブの平面部と、を常時面接触させつつ摺動させることで、スライド2の昇降をガイドするスライドガイド装置が記載されている。当該スライドガイド装置では、球面体7、9の平面側或いは前記ホルダ27の平面側をスライド2に取り付ける構成とし、これによりスライドに対する高精度で煩雑な球面加工を不要にし、スライド2の加工を容易にしている。
【0004】
また、特許文献2には、特許文献2の図1〜図6に示されるように、所定回動中心廻りに回動可能な滑り子保持器9(10)をスライド2に配設し、滑り子保持器9(10)に対して半円柱形滑り子7(8)を前記所定回動中心と交差する回動中心廻りに回動可能に保持するようにしたプレス機械のスライドガイド装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−311495号公報
【特許文献2】特開2009−195927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2に記載されたものは、スライドガイド装置の摺動面の片当たりを抑制し、摺動面全体が一様に当たるようにすることはできる。
【0007】
しかし、特許文献1や特許文献2に記載されたものは、球面体或いは半円柱形状の部材を利用するものであるため高い製品精度を維持しつつ製作することで費用が嵩み、更にはメンテナンスにおいても部品交換や再研磨などが必要となるような場合にも費用が嵩むこととなるため、低コスト化を図りたい場合や、比較的高い面圧が作用する摺動面を採用したい場合など装置の大型化を図りたいような場合には難点がある。
【0008】
本発明は、かかる実情に鑑みなされたもので、簡単かつ安価で、製造容易、入手容易な要素を利用した構成で、ランニングコストが少なくて済みメテナンスも容易な構成としながら、スライドとガイド部材延いてはプレス機械本体との間の摺動面の面圧を良好に面接触させることで均一化して、摩耗や溶着等の発生を抑制しつつ、低フリクションで精度良くスライドのプレス機械本体に対する往復動を案内することができるプレス機械のスライドガイド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このため、本発明に係るプレス機械のスライドガイド装置は、
スライドの往復動作方向に延在されプレス機械フレーム側に支持されるガイド部材と、スライド側に支持される滑り子と、の間に形成される摺動面により、プレス機械のスライドの往復動作をガイドするプレス機械のスライドガイド装置であって、
ガイド部材が、スライドの往復動作方向と略直交する面と交差する方向に延びるガイド部材回動シャフト廻りに回動自在にプレス機械フレーム側に支持され、
滑り子が、摺動面と略直交する方向から見たときに、ガイド部材回動シャフトと交差する滑り子回動シャフト廻りに回動自在にスライド側に支持されたことを特徴とする。
【0010】
本発明において、ガイド部材と、ガイド部材回動シャフトと、の間に、周方向において分割された分割式或いは一体式の筒状の軸受が備えられ、
滑り子と、滑り子回動シャフトと、の間に、周方向において分割された分割式或いは一体式の筒状の軸受が備えられたことを特徴とすることができる。
【0011】
本発明において、ガイド部材は、ガイド部材回動シャフトに略直交する断面形状が多角形状であり、
滑り子は、滑り子回動シャフトに略直交する断面形状が多角形状であり、
ガイド部材の多角形状の一面と、滑り子の多角形状の一面と、が当接して摺動面を形成する一方、ガイド部材或いは/及び滑り子を回動させて別の面により摺動面を形成することを可能に構成されたことを特徴とすることができる。
【0012】
また、本発明に係るプレス機械のスライドガイド装置は、
スライドの往復動作方向に延在されるプレス機械フレーム側に支持されるガイド部材と、スライド側に支持される滑り子と、の間に形成される摺動面により、プレス機械のスライドの往復動作をガイドするプレス機械のスライドガイド装置であって、
ガイド部材或いは滑り子の一方が、スライドの往復動作方向と略直交する面と交差する方向に延びるシャフト廻りに回動自在にホルダに支持されると共に、当該ホルダが摺動面と略直交する方向から見たときに前記シャフトと交差するシャフト廻りに回動自在にプレス機械フレーム側或いはスライド側に支持されることを特徴とする。
【0013】
本発明において、ガイド部材或いは滑り子の一方と、シャフトと、の間に、周方向において分割された分割式或いは一体式の筒状の軸受が備えられ、
前記ホルダと、シャフトと、の間に、周方向において分割された分割式或いは一体式の筒状の軸受が備えられたことを特徴とすることができる。
【0014】
本発明において、ガイド部材或いは滑り子は、これを回動自在に支持するシャフトに略直交する断面形状が多角形状であり、この多角形状の一面が相手と当接して摺動面を形成する一方、ガイド部材或いは滑り子を回動させて別の面により摺動面を形成することを可能に構成されたことを特徴とすることができる。
【0015】
本発明において、前記スライドが、スライドの往復動作方向に略直交する平面において略四角形を有する場合に、その4つの角部或いはその付近に、摺動面が配設されることを特徴とすることができる。
【0016】
本発明において、スライドの往復動作方向から見て、隣接する摺動面を前記スライドの内方に延伸させた場合に、それらが交差するように、当該隣接する摺動面が配置されることを特徴とすることができる。
なお、かかる構成(例えば図6のような構成)とすれば、スライドが昇温等して熱膨張(或いは温度低下して収縮)したような場合でも、摺動面に沿って変形するため、摺動面の面接触は維持され、摩耗や溶着等の発生を招くことなく、低フリクションで精度良くスライドの往復動を案内することができる。
【0017】
本発明において、スライドの往復動作方向から見て、隣接する摺動面を前記スライドの外方に延伸させた場合に、それらが交差するように、当該隣接する摺動面が配置されることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡単かつ安価で、製造容易、入手容易な要素を利用した構成で、ランニングコストが少なくて済みメテナンスも容易な構成としながら、スライドとガイド部材延いてはプレス機械本体との間の摺動面の面圧を良好に面接触させることで均一化して、摩耗や溶着等の発生を抑制しつつ、低フリクションで精度良くスライドのプレス機械本体に対する往復動を案内することができるプレス機械のスライドガイド装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1に係るプレス機械の全体構成を概略的に示す正面図である。
【図2】同上実施例1に係るプレス機械のスライドガイド装置の断面を示す図1のA−A断面図である。
【図3】図2の滑り子及びギブ部分を拡大して示した拡大図である。
【図4】図3のE−E断面図である。
【図5】図2のB矢視図及びC矢視図である。
【図6】同上実施例1に係るプレス機械のスライドガイド装置の他の一例(摺動面の配設方向違いの一例)を示す断面図である。
【図7】同上実施例1における滑り子、ギブの材質の組み合わせとブッシュ(軸受)の要否を例示した図である。
【図8】本発明の実施例2に係るプレス機械のスライドガイド装置の断面を示す断面図である。
【図9】図8の滑り子及びギブ部分を拡大して示した拡大図である。
【図10】図9のF−F断面図である。
【図11】同上実施例2における滑り子、ギブの材質の組み合わせとブッシュ(軸受)の要否を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係るプレス機械のスライドガイド装置の実施の形態について、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施例により、本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0021】
図1は、実施例1に係るプレス機械の正面図で、プレス機械のフレーム1のベッド部にボルスタ3が取り付けられ、当該ボルスタ3に対向してスライド2が昇降自在に配設されている。
【0022】
スライド2は、コンロッド4に自在継手等を介して連結され、クランク軸4Aと当該コンロッド4とにより構成されるクランク機構により昇降運動(往復運動)されて、当該スライド2の下面に取り付けられている金型を介してプレス加工が行われる。
【0023】
図1に示したように、フレーム1の左右のコラム部の内側のそれぞれに、スライド2の昇降方向に所定間隙をもって延在される(2分割された)一対のギブ9、9が配設されている。また、この一対のギブ9、9に対向して、プレス機械の背面側には、一対のギブ5、5(図2参照)が配設されている。
【0024】
図2〜図4に示すように、ガイド部材として機能するギブ5、5には、スライド2の昇降方向に沿った平面であってフレーム1のコラム部のスライド側面と所定の角度で交差する平面に、摺動面(ガイド面)5A、5Aが設けられている。
【0025】
同様に、ガイド部材として機能するギブ9、9には前記摺動面(ガイド面)5A、5Aとスライド2の図2平面に略直交する中心面X−Xに対して面対象な位置に、摺動面(ガイド面)9A、9Aが設けられている。
【0026】
これら4つの摺動面5A、9Aにより、スライド2の昇降は、図2平面内における遊動を規制されつつ昇降方向にガイドされることになる。
【0027】
図2は、図1のA−A断面図であり、当該図2に示したように、ギブ5は、フレーム1に取り付けられたホルダ6に、図2平面に略直交する回動中心軸(シャフト7)廻りに回動自在に支持されている。当該シャフト7が、本発明に係るガイド部材回動シャフトに相当する。
【0028】
より詳細には、ホルダ6は断面略コ字状の突き出し部6A、6Aを有しており、略コ字状の閉塞部背面6B側がフレーム1に取り付けられる一方、略コ字状の開放部分(突き出し部6A、6Aの間)にギブ5が収容されている(図2〜図4等参照)。
【0029】
ホルダ6には、図4に示したように、摺動面(ガイド面)5Aの延在方向に沿って延びるシャフト7が、略コ字状の両端の突き出し部分6A,6Aに支持されており、このシャフト7の周囲に、軸受(ブッシュ)5aを介してギブ5が回動自在に支持されている。
【0030】
同様に、ギブ9は、図2に示したように、フレーム1に取り付けられたホルダ10に、図2平面に略直交する回動中心軸(シャフト11)廻りに回動自在に支持されている。当該シャフト11が、本発明に係るガイド部材回動シャフトに相当する。
【0031】
ホルダ10は、ホルダ6と同様、断面略コ字状の突き出し部10A、10Aを有しており、略コ字状の閉塞部背面10B側がフレーム1に取り付けられる一方、略コ字状の開放部分(突き出し部10A、10Aの間)にギブ9が収容されている(図2〜図4等参照)。
【0032】
ホルダ10には、ホルダ6と同様、図4に示したように、摺動面(ガイド面)9Aの延在方向に沿って延びるシャフト11が、略コ字状の両端の突き出し部分10A,10Aにリテーナプレート12等を介して支持されており、このシャフト11の周囲に、軸受(ブッシュ)9aを介してギブ9が回動自在に支持されている。
【0033】
一方で、図2に示したように、スライド2の4つの角部には、ギブ5、9の摺動面(ガイド面)5A、9Aと面接触する滑り子13と、これを回動自在に保持する滑り子保持器(ホルダ)14が、スライド2に取り付けられている。
【0034】
滑り子保持器14は、図3、図4に示すように、断面略コ字状の突き出し部分14A,14Aを有しており、略コ字状の閉塞部背面14B側がスライド2に取り付けられる一方、略コ字状の開放部分(突き出し部14A、14Aの間)がギブ5、9を向いて配設されている。
【0035】
そして、滑り子保持器14には、摺動面(ガイド面)5A、9Aの延在方向と略直交すると共に摺動面(ガイド面)5A、9Aと略平行なシャフト15が、略コ字状の両側の突き出し部分14A,14Aに鍔部やリテーナプレート16等を介して支持されており、このシャフト15の周囲に、軸受(ブッシュ)13aを介して滑り子13が回動自在に支持されている。
当該シャフト15が、本発明に係る滑り子回動シャフトに相当する。
【0036】
すなわち、本実施例においては、図2〜図4に示したように、ギブ5、9は、スライド2の昇降方向に沿った方向に延びる回動中心軸(シャフト7、11)廻りに回動自在にフレーム1側に支持される一方で、スライド2の昇降方向に沿って延びるギブ5、9の摺動面5A、9Aと面接触する滑り子13はスライド2の昇降方向と略直交する回動中心軸(シャフト15)廻りに回動自在にスライド2に支持されている。
【0037】
従って、本実施例においては、ギブ5(9)は、フレーム1に対して、図4平面に略平行な回動中心軸廻りに回動可能に保持されているから、スライド2の昇降運動とギブ5(9)の摺動面(ガイド面)5A(9A)との間に図1(図4)の奥行方向における傾斜や倒れ等があっても、これを吸収して、滑り子13の摺動面13Aと、ギブ5(9)の摺動面(ガイド面)5A(9A)と、を良好に面接触させることができる。
【0038】
また、本実施例によれば、滑り子13のスライド2の昇降方向と略直交する回動中心軸廻りの回動運動により、スライド2の昇降運動とギブ5(9)の摺動面(ガイド面)5A、9Aとの間に図1(図4)平面内における傾斜や倒れ等があっても、これを吸収して、滑り子13の摺動面13Aと、ギブ5(9)の摺動面(ガイド面)5A(9A)と、を良好に面接触させることができることになる。
【0039】
すなわち、滑り子13の摺動面13Aと、ギブ5(9)の摺動面(ガイド面)5A(9A)と、は相互に回動自在であり、従って偏心荷重等によってスライド2が若干傾こうとするような場合においても、このような傾きを生じさせることを抑制しつつ、滑り子13の摺動面13Aと、ギブ5(9)の摺動面(ガイド面)5A(9A)と、は良好に面接触を維持して摺動することができるので、スライド2の高精度な往復動作を実現しながら、線接触等の局所的な接触の発生を防止して、摺動面(ガイド面)が異常摩耗したり、焼き付いて溶着等するようなことを抑制することができる。
【0040】
また、本実施例に係るギブ5(9)及び滑り子13の回動自在な保持は、例えば入手容易な市販の環状或いは筒状のすべり軸受(ブッシュ)5a、9a、13aなどを利用することができるため、球面形状や円筒の一部を回動自在に保持することが必要な従来の装置に比べて、製造が容易であり製造コスト、更には軸受交換などのメンテナンスコストなどを低く抑えることができる。なお、入手容易な市販の環状或いは筒状のすべり軸受(ブッシュ)5a、9a、13aとしては、周方向において分割された分割式或いは一体式の何れも利用可能である。
【0041】
更に、本実施例に係るギブ5(9)及び滑り子13は、回動中心軸に略直交する断面形状が例えば四角形などの多角形形状であり、それぞれ回動中心軸(シャフト7(11)及びシャフト15)廻りに回動させることができるから、例えば、ある一面が摩耗等した場合に、回動させて他の面を新たに摺動面(5A(9A)、13A)として利用することができるため、長期に亘って部品交換や摺動面の研磨・交換等を不要とすることができ、従来のものに比べてランニング、メンテナンスコスト等を大幅に低減することができる。
ここでは、ギブ5(9)及び滑り子13は、回動中心軸に略直交する断面形状を四角形としたが、これに限定されるものではなく、三角形以上の多角形形状とすることができるものである。
【0042】
以上説明したように、本実施例に係るギブ5(9)及びホルダ6、滑り子13及び滑り子保持器14を備えたスライドガイド装置によれば、製造容易で、入手容易な要素を利用した構成で、かつ、ランニングコストが少なくて済みメテナンスも容易な構成としながら、線接触等の発生を抑制して常に摺動面を面接触させることができるため、摺動面の面圧が均一化され、摩耗や溶着等の発生が抑制されると共に、低フリクションで精度良くスライド2のプレス機械本体に対する昇降復動を案内することができる。
【0043】
なお、本実施例では、ギブ5(9)をスライド2の昇降方向に沿った方向に延びる回動中心廻りに回動自在に配設する一方、滑り子13をスライド2の昇降方向と略直交する回動中心廻りに回動自在に配設して、摺動面13Aと略直交する方向から見たときに、ギブ5(9)の回動中心と、滑り子13の回動中心と、を略直交させた場合について説明したが、略直交に限定されるものではなく、要求に応じた摺動面の面接触を達成可能な範囲で、摺動面13Aと略直交する方向から見たときに、ギブ5(9)の回動中心と、滑り子13の回動中心と、が所定の角度で交差する構成とすることができる。
【0044】
ところで、ガイドウェイの基準側とされるギブ5及びホルダ6は、図2、図5に示すように、ピン部材24a(24b)を介してフレーム1のコラム部に取り付けられるブロック25により、スペーサ22を挟んでフレーム1のコラム部に取り付けられる。
【0045】
一方、位置調整側とされるギブ9及びホルダ10は、ピン部材24a(24b)を介してフレーム1のコラム部に取り付けられるサポート23a(23b)により、テーパ面21A(21B)を有するウェッジ21a(21b)を挟んでフレーム1のコラム部に取り付けられる。
【0046】
そして、スライド2の適切な昇降運動を実現でき、かつ、滑り子13の摺動面13Aと、ギブ5、9の摺動面5A、9Aと、の良好な面接触による摺動を実現できるように、前記ウェッジ21a(21b)を、ホルダ10に固定される固定ブロック28に螺合されている調整ボルト26(27)を所望に回転させることでサポート23a(23b)に対して図5中上下方向(スライド2の昇降方向)に相対移動させて、ウェッジ21a(21b)に形成されているテーパ面21A(21B)と、これらに対面してサポート23a(23b)に形成されているテーパ面23A(23B)と、の相対位置を変更し、ギブ9延いてはその摺動面9Aの位置調整を行なう。
【0047】
かかる位置調整完了後、固定ボルト6a、6b、30を介して、ホルダ6、10をフレーム1のコラム部に固定して調整作業を完了する。
【0048】
なお、滑り子13の摺動面13Aと、ギブ5、9の摺動面5A、9Aと、の間に隙間があると高精度の案内機能が害される惧れがあるため、ウェッジ21a(21b)の位置調整によりギブ5(9)を滑り子13側に押し付けるようして、摺動面にプリロードを掛けることができる。更に、摺動面5A(9A)、13Aや軸受5a、9a、13aに、図3や図4に示したように、給油通路から適宜給油することができる。
【0049】
ところで、上記の例では、図2に示したように、滑り子13の摺動面13Aと、ギブ5、9の摺動面5A、9Aと、をスライド2の角部の外側に配設する構成例(隣接する摺動面5A、5A(或いは9A、9A)をスライド2の外側に向けて延伸させた場合に、それらがスライド2の外側で交差するように、隣接する摺動面5A、5A(或いは9A、9A)が配置される構成例)について説明したが、これに限定されるものではなく、図6に示すように、滑り子13の摺動面13Aと、ギブ5、9の摺動面5A、9Aと、をスライド2の角部の内側に配設するように構成(隣接する摺動面5A、5A(或いは9A、9A)をスライド2の内方に向けて延伸させた場合に、それらがスライド2の内側で交差するように、隣接する摺動面5A、5A(或いは9A、9A)が配置される構成と)することもできる。
【0050】
なお、図6に示したように、滑り子13の摺動面13Aと、ギブ5、9の摺動面5A、9Aと、をスライド2の角部の内側に配設するようにすると、スライド2がプレス加工等の実行により昇温し膨張したような場合(或いは、温度低下があり収縮したような場合)でも、スライド2側に配設される滑り子13の摺動面13Aは、ギブ5、9の摺動面5A、9Aに沿って平行に外側へ広がるように変形するので、スライド2が比較的高温となるような状況下においても、摺動面の面接触は維持され、摩耗や溶着等の発生を招くことなく、低フリクションで精度良くスライド2の昇降復動を案内することができる。
【0051】
また、図1や図5に示したように、スライド2の昇降方向の上方側と下方側に同じ構成の滑り子13、滑り子保持器14を配設した場合について説明したが、例えば、スライド2の昇降方向の上方側に図2に示した構成を採用し下側に図6に示した構成を採用するなど適宜構成の異なる滑り子と滑り子保持器とを組み合わせて使用することも可能である。
【0052】
ところで、実施例1においては、滑り子13やギブ5、9の地金(基材:ベースメタル)を潤滑性の高い材料で製作したり各部摺動面に加工や処理などを施すことで、例えば軸受(ブッシュ)5a、9a、13a等を省略することなどが可能である。
【0053】
例えば、滑り子13とギブ5、9の材質として、図7に示すような組み合わせが採用可能であり、それに応じて軸受(ブッシュ)5a、9a、13aの要否なども決定される。
【0054】
すなわち、図7のNo.1のように、滑り子13の材質として構造用圧延鋼(潤滑性の低い材料の一例)を採用した場合には、シャフト15との間には軸受(ブッシュ)13aが必要とされると共に、滑り子13と面接触するギブ5、9(地金として構造用圧延鋼などを採用)の表面に砲金軸受材を溶射したり、潤滑性のある樹脂(例えば、フッ素樹脂(テフロン(登録商標)など))をコーティングしたり、樹脂層(テフロンライナなど)を貼着したりすることができる。また、ギブ5、9(地金として構造用圧延鋼などを採用)を回転自在に支持するために軸受5a、9aも必要とされる。
【0055】
なお、No.4の例では、ギブ5、9の地金を潤滑性のある鋳鉄としているので、軸受5a、9aが省略可能とされている。
また、No.6の例のように、滑り子13の材質として鋳鉄(潤滑性の高い材料の一例)を採用した場合には、シャフト15との間の軸受(ブッシュ)13aを省略可能とされる。
図7中に示す砲金(Gunmetal)は、銅合金の一種で、銅Cuと錫Snの合金で、一般に銅90%、錫10%程度の組成で、軸受材料として利用することができる。
【0056】
滑り子13の摺動面13Aや、ギブ5、9の摺動面5A、9Aには、例えば、地金(基材)に対して潤滑性が高く摩耗し難い材料(例えば軸受材料)などを溶射、メッキ、或いは貼着などにより適用することができ、或いは地金(基材)を潤滑性が高い材料や軸受材料としたような場合にはかかる材料の適用処理(表面改質など)は省略することも可能である。
【実施例2】
【0057】
図8は、実施例2に係るプレス機械のスライド部分の断面図(実施例1の図2に相当)であり、実施例2においては、図8平面に略直交して延在される摺動面47Aを有する4つのギブ47が、スライド2の4つの角部に配設されている滑り子46に対応してフレーム1に取り付けられている。なお、ここでは、図8平面に直交するX−X面、Y−Y面に関して面対称に配設される滑り子及びギブ周辺の構成についての説明は、滑り子46及びギブ47周辺の構成及び実施例1で説明した内容と同様であるので省略する。
【0058】
滑り子46は、図8〜図10に示すように、ギブ47の摺動面(ガイド面)47Aと面接触する摺動面46Aを有し、ギブ47の摺動面(ガイド面)47Aの延在方向(スライド昇降方向)と略平行な回動中心軸(シャフト44)廻りに、軸受46aを介して回動自在に取り付けられている。
【0059】
シャフト44は、滑り子保持器(ホルダ)43に保持されており、この滑り子保持器43は断面略コ字状の突き出し部分43A,43Aを有しており、図10に示すように、略コ字状の開放部分(突き出し部分43A,43Aの間)にシャフト44及び滑り子46が収容されていると共に、図9及び図10に示すように、略コ字状の閉塞部背面43B部分が、シャフト44と略直交する方向に延びる回動中心軸(シャフト41)廻りに、軸受43aを介して回動自在に支持されている。なお、シャフト44は、滑り子保持器43の略コ字状の突き出し部分43A,43Aに、鍔部やリテーナプレート45等を介して支持されている。
【0060】
そして、滑り子保持器43を回動自在に支持するシャフト41は、スライド2に取り付けられているホルダ40の略コ字状の突き出し部分40A,40Aに、鍔部やリテーナプレート42等を介して支持されている。
【0061】
すなわち、本実施例においては、図8〜図10に示したように、ギブ47は、スライド2の昇降方向に沿ってフレーム1側に固定的に支持される一方で、当該ギブ47の摺動面47Aと面接触する滑り子46はスライド2の昇降方向に沿った方向に延びる回動中心軸(シャフト44)廻りに回動自在に滑り子保持器43に支持され、かつ、この滑り子保持器43がスライド2の昇降方向と略直交する回動中心軸(シャフト41)廻りに回動自在にスライド2に支持されている。
【0062】
従って、本実施例の滑り子46は、ギブ47の摺動面(ガイド面)47Aに対して回動自在であり、従って偏心荷重等によってスライド2が若干傾こうとするような場合においても、このような傾きを生じさせることを抑制しつつ、滑り子46の摺動面46Aと、ギブ47の摺動面(ガイド面)47Aと、を良好に面接触させて摺動させることができるので、スライド2の高精度な往復動作を実現しながら、線接触等の局所的な接触の発生を防止して、摺動面(ガイド面)が異常摩耗したり、焼き付いて溶着等するようなことを抑制することができる。
【0063】
また、本実施例に係る滑り子46の回動自在な保持は、例えば入手容易な市販の環状或いは筒状のすべり軸受43a、46aなどを利用することができるため、球面形状や円筒の一部を回動自在に保持することが必要な従来の装置に比べて、製造が容易であり製造コスト、更には軸受交換などのメンテナンスコストなどを低く抑えることができる。
【0064】
更に、本実施例に係る滑り子46は、回動中心軸に略直交する断面形状が例えば四角形などの多角形形状であり、回動中心軸(シャフト44)廻りに回動させることができるから、例えば、ある一面が摩耗等した場合に、回動させて他の面を新たに摺動面(46A)として利用することができるため、長期に亘って部品交換や摺動面の研磨・交換等を不要とすることができ、従来のものに比べてランニング、メンテナンスコスト等を大幅に低減することができる。
ここでは、滑り子46は、回動中心軸に略直交する断面形状を四角形としたが、これに限定されるものではなく、三角形以上の多角形形状とすることができるものである。
【0065】
以上説明したように、本実施例に係る滑り子46、滑り子保持器(ホルダ)43、ホルダ40等を備えたスライドガイド装置によれば、製造容易で、入手容易な要素を利用した構成で、かつ、ランニングコストが少なくて済みメテナンスも容易な構成としながら、線接触等の発生を抑制して常に摺動面を面接触させることができるため、摺動面の面圧が均一化され、摩耗や溶着等の発生が抑制されると共に、低フリクションで精度良くスライド2のプレス機械本体に対する昇降復動を案内することができる。
【0066】
なお、本実施例では、滑り子46を滑り子保持器43に対して回動自在に支持するシャフト44と、滑り子保持器43をスライド2に対して回動自在に支持するシャフト41と、を、摺動面47Aと略直交する方向から見たときに略直交させた場合について説明したが、略直交に限定されるものではなく、要求に応じた摺動面の面接触を達成可能な範囲で、シャフト44と、シャフト41と、は、摺動面47Aと略直交する方向から見たときに所定の角度で交差する構成とすることができる。
【0067】
本実施例において、ギブ47は、実施例1と同様の方法により、フレーム1のコラム部に位置や傾斜を調整可能に取り付けることができる。
【0068】
ところで、実施例2においても、実施例1と同様に、滑り子46やギブ47を潤滑性の地金(基材:ベースメタル)を潤滑性の高い材料で製作したり各部摺動面に表面処理などを施すことで、例えば軸受(ブッシュ)43a、46a等を省略することなどが可能であり、滑り子46とギブ47の材質として、例えば、図11に示すような組み合わせが採用可能であり、それに応じて軸受(ブッシュ)43a、46aの要否なども決定される。
【0069】
また、本実施例においても、実施例1において図6で示したと同様に、滑り子46の摺動面46Aと、ギブ47の摺動面47Aと、をスライド2の角部の内側に配設するように構成(図8の上下方向において隣接する摺動面47A、47Aをスライド2の内方に向けて延伸させた場合に、それらがスライド2の内側で交差するように、隣接する摺動面47A、47Aが配置される構成と)することもできる。
【0070】
このような構成により、実施例1と同様に、スライド2がプレス加工等の実行により昇温し膨張したような場合(或いは、温度低下があり収縮したような場合)でも、スライド2側に配設される滑り子46の摺動面46Aは、ギブ47の摺動面47Aに沿って平行に外側へ広がるように変形するので、スライド2が比較的高温となるような状況下においても、摺動面の面接触は維持され、摩耗や溶着等の発生を招くことなく、低フリクションで精度良くスライド2の昇降復動を案内することができる。
【0071】
なお、実施例2では、ギブ47をフレーム1側に固定し、滑り子46をシャフト44を介して滑り子保持器(ホルダ)43に回動自在に支持させ、この滑り子保持器(ホルダ)43をシャフト41を介して回動自在にスライド2に支持させた場合を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、滑り子46をスライド2側に固定し、ギブ47を回動軸(シャフト)を介してホルダに回動自在に支持させ、このホルダを回動軸(シャフト)を介して回動自在にフレーム側に支持させるような構成とすることもできる。
【0072】
以上で説明した実施の形態は、本発明を説明するための例示に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは可能である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係るプレス機械のスライドガイド装置によれば、簡単かつ安価で、製造容易、入手容易な要素を利用した構成で、ランニングコストが少なくて済みメテナンスも容易な構成としながら、スライドとガイド部材延いてはプレス機械本体との間の摺動面の面圧を良好に面接触させることで均一化して、摩耗や溶着等の発生を抑制しつつ、低フリクションで精度良くスライドのプレス機械本体に対する往復動を案内することができ有益である。
【符号の説明】
【0074】
1 プレス機械のフレーム
2 スライド
5、9 ギブ(ガイド部材)
5A、9A 摺動面(ガイド面)
6、10 ホルダ
7、11 回動軸(シャフト:ガイド部材回動シャフト)
13 滑り子
13A 摺動面
14 滑り子保持器(ホルダ)
15 回動軸(シャフト:滑り子回動シャフト)
40 ホルダ
41、44 シャフト
43 滑り子保持器(ホルダ)
46 滑り子
46A 摺動面
47 ギブ(ガイド部材)
47A 摺動面(ガイド面)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドの往復動作方向に延在されプレス機械フレーム側に支持されるガイド部材と、スライド側に支持される滑り子と、の間に形成される摺動面により、プレス機械のスライドの往復動作をガイドするプレス機械のスライドガイド装置であって、
ガイド部材が、スライドの往復動作方向と略直交する面と交差する方向に延びるガイド部材回動シャフト廻りに回動自在にプレス機械フレーム側に支持され、
滑り子が、摺動面と略直交する方向から見たときに、ガイド部材回動シャフトと交差する滑り子回動シャフト廻りに回動自在にスライド側に支持されたことを特徴とするプレス機械のスライドガイド装置。
【請求項2】
ガイド部材と、ガイド部材回動シャフトと、の間に、周方向において分割された分割式或いは一体式の筒状の軸受が備えられ、
滑り子と、滑り子回動シャフトと、の間に、周方向において分割された分割式或いは一体式の筒状の軸受が備えられたことを特徴とする請求項1にプレス機械のスライドガイド装置。
【請求項3】
ガイド部材は、ガイド部材回動シャフトに略直交する断面形状が多角形状であり、
滑り子は、滑り子回動シャフトに略直交する断面形状が多角形状であり、
ガイド部材の多角形状の一面と、滑り子の多角形状の一面と、が当接して摺動面を形成する一方、ガイド部材或いは/及び滑り子を回動させて別の面により摺動面を形成することを可能に構成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプレス機械のスライドガイド装置。
【請求項4】
スライドの往復動作方向に延在されるプレス機械フレーム側に支持されるガイド部材と、スライド側に支持される滑り子と、の間に形成される摺動面により、プレス機械のスライドの往復動作をガイドするプレス機械のスライドガイド装置であって、
ガイド部材或いは滑り子の一方が、スライドの往復動作方向と略直交する面と交差する方向に延びるシャフト廻りに回動自在にホルダに支持されると共に、当該ホルダが摺動面と略直交する方向から見たときに前記シャフトと交差するシャフト廻りに回動自在にプレス機械フレーム側或いはスライド側に支持されることを特徴とするプレス機械のスライドガイド装置。
【請求項5】
ガイド部材或いは滑り子の一方と、シャフトと、の間に、周方向において分割された分割式或いは一体式の筒状の軸受が備えられ、
前記ホルダと、シャフトと、の間に、周方向において分割された分割式或いは一体式の筒状の軸受が備えられたことを特徴とする請求項4にプレス機械のスライドガイド装置。
【請求項6】
ガイド部材或いは滑り子は、これを回動自在に支持するシャフトに略直交する断面形状が多角形状であり、この多角形状の一面が相手と当接して摺動面を形成する一方、ガイド部材或いは滑り子を回動させて別の面により摺動面を形成することを可能に構成されたことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のプレス機械のスライドガイド装置。
【請求項7】
前記スライドが、スライドの往復動作方向に略直交する平面において略四角形を有する場合に、その4つの角部或いはその付近に、摺動面が配設されることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか一つに記載のプレス機械のスライドガイド装置。
【請求項8】
スライドの往復動作方向から見て、隣接する摺動面を前記スライドの内方に延伸させた場合に、それらが交差するように、当該隣接する摺動面が配置されることを特徴とする請求項7に記載のプレス機械のスライドガイド装置。
【請求項9】
スライドの往復動作方向から見て、隣接する摺動面を前記スライドの外方に延伸させた場合に、それらが交差するように、当該隣接する摺動面が配置されることを特徴とする請求項7に記載のプレス機械のスライドガイド装置。
【請求項1】
スライドの往復動作方向に延在されプレス機械フレーム側に支持されるガイド部材と、スライド側に支持される滑り子と、の間に形成される摺動面により、プレス機械のスライドの往復動作をガイドするプレス機械のスライドガイド装置であって、
ガイド部材が、スライドの往復動作方向と略直交する面と交差する方向に延びるガイド部材回動シャフト廻りに回動自在にプレス機械フレーム側に支持され、
滑り子が、摺動面と略直交する方向から見たときに、ガイド部材回動シャフトと交差する滑り子回動シャフト廻りに回動自在にスライド側に支持されたことを特徴とするプレス機械のスライドガイド装置。
【請求項2】
ガイド部材と、ガイド部材回動シャフトと、の間に、周方向において分割された分割式或いは一体式の筒状の軸受が備えられ、
滑り子と、滑り子回動シャフトと、の間に、周方向において分割された分割式或いは一体式の筒状の軸受が備えられたことを特徴とする請求項1にプレス機械のスライドガイド装置。
【請求項3】
ガイド部材は、ガイド部材回動シャフトに略直交する断面形状が多角形状であり、
滑り子は、滑り子回動シャフトに略直交する断面形状が多角形状であり、
ガイド部材の多角形状の一面と、滑り子の多角形状の一面と、が当接して摺動面を形成する一方、ガイド部材或いは/及び滑り子を回動させて別の面により摺動面を形成することを可能に構成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプレス機械のスライドガイド装置。
【請求項4】
スライドの往復動作方向に延在されるプレス機械フレーム側に支持されるガイド部材と、スライド側に支持される滑り子と、の間に形成される摺動面により、プレス機械のスライドの往復動作をガイドするプレス機械のスライドガイド装置であって、
ガイド部材或いは滑り子の一方が、スライドの往復動作方向と略直交する面と交差する方向に延びるシャフト廻りに回動自在にホルダに支持されると共に、当該ホルダが摺動面と略直交する方向から見たときに前記シャフトと交差するシャフト廻りに回動自在にプレス機械フレーム側或いはスライド側に支持されることを特徴とするプレス機械のスライドガイド装置。
【請求項5】
ガイド部材或いは滑り子の一方と、シャフトと、の間に、周方向において分割された分割式或いは一体式の筒状の軸受が備えられ、
前記ホルダと、シャフトと、の間に、周方向において分割された分割式或いは一体式の筒状の軸受が備えられたことを特徴とする請求項4にプレス機械のスライドガイド装置。
【請求項6】
ガイド部材或いは滑り子は、これを回動自在に支持するシャフトに略直交する断面形状が多角形状であり、この多角形状の一面が相手と当接して摺動面を形成する一方、ガイド部材或いは滑り子を回動させて別の面により摺動面を形成することを可能に構成されたことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のプレス機械のスライドガイド装置。
【請求項7】
前記スライドが、スライドの往復動作方向に略直交する平面において略四角形を有する場合に、その4つの角部或いはその付近に、摺動面が配設されることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか一つに記載のプレス機械のスライドガイド装置。
【請求項8】
スライドの往復動作方向から見て、隣接する摺動面を前記スライドの内方に延伸させた場合に、それらが交差するように、当該隣接する摺動面が配置されることを特徴とする請求項7に記載のプレス機械のスライドガイド装置。
【請求項9】
スライドの往復動作方向から見て、隣接する摺動面を前記スライドの外方に延伸させた場合に、それらが交差するように、当該隣接する摺動面が配置されることを特徴とする請求項7に記載のプレス機械のスライドガイド装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−224632(P2011−224632A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98459(P2010−98459)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000100861)アイダエンジニアリング株式会社 (153)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000100861)アイダエンジニアリング株式会社 (153)
【Fターム(参考)】
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