説明

プレス機

【課題】プレス機を、プレス型とアクチュエータとプレスストロークとに必要な空間の大きさにより近づけた小型なものとすることのできる、プレス機の構造を提案する。
【解決手段】加圧手段としてのアクチュエータ11と、受圧部材としてのベース部材13とを、柱部材12を介装してプレスストロークH及びプレス型9のための空間を介在させた状態に、タイロッド14で連結して、プレス機10を構成する。タイロッド14は、アクチュエータ11と柱部材12とベース部材13とを貫通した状態に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス機の構造に関し、詳しくは、プレス機の大きさの低減を図るための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プレス機では、フレームにシリンダ等のアクチュエータとプレス型とを固定し、フレームにてプレスの圧力を受ける構成としている。
例えば、図8に示す如く、従来のプレス機50において、フレーム51は、下部ベース部材52と上部ベース部材13との間に、柱部材12・12・・・を設け、これらをタイロッド14・14・・・で緊結して構成される。そして、フレーム51にシリンダ等のアクチュエータ11とプレス型9が固定される。
上述のプレス機50では、アクチュエータ11やプレス型9よりもフレーム51を大きく構成する必要があり、従って、プレス機50全体はプレス型9よりも遙かに大きなものとなってしまう。
【0003】
さらに、プレス機では、プレス処理の高荷重をフレームにて受ける構成であるため、フレームにその荷重に耐えうる剛性が必要とされる。フレームの荷重を支持する構成部材は、荷重を発生する点から離れるに従って大きな強度が必要となる。従って、フレームの構成部材であるタイロッドやベース部材等は、巨大になりがちである。
このため、プレス機は、製品やプレス型、また、アクチュエータの大きさに比して、遙かに大きなものとなってしまい、これが、材料・加工・組立・運搬等に係る費用や、設置スペースが嵩む原因の一つとなって、プレス設備のための費用が高価となるため、製品の単価を下げることが困難となっている。
【0004】
そこで、特許文献1に記載の技術では、主に、プレス機の設置スペースの低減のための技術が提案されている。プレス機では、プレス型の交換等のためにフレームを解体する必要があり、この解体のために、フレームの構成部材を移動させるためにフレームよりも遙かに大きな空間を必要とする。そこで、上記文献ではプレス機よりも遙かに大きなビットや建物を不要とする技術が提案されている。
特許文献1に記載の技術では、下部ベース部材と柱部材とを一体的に形成し、タイロッドで柱部材と上部ベース部材とを締結するフレーム構造として、タイロッドの長さを従来と比較して短いものとし、組立・解体に必要な空間の低減による、プレス機の設置スペースの低減が図られている。
【特許文献1】特開2002−224898号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記文献に記載の技術であっても、アクチュエータやプレス型を包囲するフレームがプレス機の構成要素とされるため、必然的にアクチュエータやプレス型よりもフレームは大きくなり、その結果、プレス機は製品やプレス型、また、アクチュエータの大きさに比して遙かに大きなものとなってしまう。
そこで、本発明では、プレス機の構成要素とされていたフレームという概念を払拭して、プレス機を、プレス型とアクチュエータとプレスストロークとに必要な空間の大きさにより近づけた小型なものとすることのできる、プレス機の構造を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、加圧手段としてのアクチュエータと、受圧部材としてのベース部材とを、プレスストローク及びプレス型のための空間を介在させた状態にタイロッドで連結して成る、プレス機である。
【0008】
請求項2においては、前記タイロッドを、アクチュエータとベース部材とに貫通させるものである。
【0009】
請求項3においては、前記アクチュエータとベース部材とに、柱部材を介装し、該柱部材にタイロッドを挿通させるものである。
【0010】
請求項4においては、前記タイロッドに、大径部を形成し、該大径部にてアクチュエータとベース部材とを離間した状態に保持させるものである。
【0011】
請求項5においては、前記アクチュエータとベース部材との間に、アクチュエータにより駆動されるロッドが挿入されるリニアベアリングと、該リニアベアリングの保持部材を備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1においては、プレス機に、アクチュエータとプレス型を包囲するフレームを備える必要がないため、プレス機を、プレス型とアクチュエータとプレスストロークとに必要な空間の大きさにより近づけた小型なものとすることができる。よって、材料・加工・組立・運搬等に係る費用や、設置スペース等の、プレス設備のための費用の削減に寄与することができる。
【0014】
請求項2においては、プレス時に発生する圧をアクチュエータとベース部材とで受けることができる。
【0015】
請求項3においては、アクチュエータとベース部材とを離間し、また、プレス機に掛かる荷重に耐える剛性を備える構成とすることができる。
【0016】
請求項4においては、アクチュエータとベース部材とを離間させる別部材を必要としないので、構成部材点数を低減させることができ、組み付け性の向上、及び、プレス設備のための費用の削減に寄与することができる。
【0017】
請求項5においては、プレス機の外形のサイズを変化させることなく、シリンダロッドの移動方向精度を確保するための機構を備えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の実施例に係るプレス機の全体的な構成を示す正面図、図2はプレス機の全体的な構成を示す平面図、図3はプレス機の構成を示す展開図である。
図4は別形態のタイロッドを採用するプレス機の全体的な構成を示す正面図、図5は別形態のタイロッドを採用するプレス機の構成を示す展開図である。
図6は摺動方向精度を確保するための機構を備えたプレス機の全体的な構成を示す正面図、図7はシリンダロッドの移動方向精度を確保するための機構を備えたプレス機の構成を示す展開図である。
図8は従来のプレス機の構成を示す正面図である。
【0019】
図1乃至図3に示す如く、本発明の実施例に係るプレス機10は、アクチュエータ11と、柱部材12と、上部ベース部材13と、タイロッド14等により構成される。
なお、本実施例においては、アクチュエータ11の上方に受圧部材としての上部ベース部材を配置しているが、プレス機10の形態はこれに限定されるものではなく、ベース部材の上方にアクチュエータを配置した上下逆転の形態としたり、ベース部材とアクチュエータを略水平方向に並設した形態としたりすることもできる。
【0020】
アクチュエータ11は、本実施例ではアクチュエータ本体11cとしてのシリンダとシリンダロッド11aとを備える加圧手段である、油圧式シリンダとしている。但し、アクチュエータ11はこれに限定されるものではなく、例えば、電磁力・静電力・摩擦力を利用する各種モーターを備えた加圧手段とすることができる。また、スクリュージャッキ等の機械式の加圧手段を備えることもできる。
【0021】
前記アクチュエータ11は、プレス機10の加圧手段であるとともに、受圧部材である。アクチュエータ本体(本実施例においてはシリンダ11cには、タイロッド14を挿通可能な挿通孔11bが形成される。タイロッド14はアクチュエータ11による加圧方向と略平行な方向に挿通される。
なお、本実施例においては、挿通孔11bは、アクチュエータ本体11cにおいてシリンダロッド11aの周囲四隅にそれぞれ設けられているが、アクチュエータ11の規模に応じてタイロッド14の数を変更することもでき、これに応じて挿通孔11b数を適宜変更することが好ましい。
【0022】
前記上部ベース部材13は、受圧部材であるとともにプレス型9保持部材である。該上部ベース部材13には、タイロッド14を挿通可能な挿通孔13aが形成される。また、上記柱部材12の芯部にも、タイロッド14を挿通可能な挿通孔12aが該柱部材12の伸延方向に形成される。
これらの挿通孔13a・12aも、上記アクチュエータ本体11cに設けた挿通孔11bと同様に、数及び位置を適宜調整することが好ましい。
【0023】
そして、アクチュエータ本体11cに形成された挿通孔11bと、柱部材12に形成された挿通孔12aと、上部ベース部材13に形成された挿通孔13aとを、略同一線上に配置し、この順番にタイロッド14を挿通させ、該タイロッド14の両端にボルト15・16を螺入して、アクチュエータ本体11cと、柱部材12と、上部ベース部材13とを締結する。
【0024】
タイロッド14が、アクチュエータ本体11cと上部ベース部材13とを貫通した状態とすることで、プレス時に発生する圧をアクチュエータ本体11cと上部ベース部材13とで受けることができる。また、アクチュエータ本体11cと上部ベース部材13との間の部分において、タイロッド14に柱部材12が外嵌されることによって、タイロッド14の両端に螺入されたボルト15・16による締め付け圧と、プレス圧とに、耐える剛性を備えるための補強が為されることになる。
【0025】
上部ベース部材13は、柱部材12を介してタイロッド14でアクチュエータ本体11cと連結させるため、また、平面視において(タイロッド14の挿通方向と略直交する方向において)挿通孔11bはアクチュエータ本体11cの外周より内側に位置しているため、該上部ベース部材13の平面視外周の大きさは、アクチュエータ11と略同様の大きさとすることができる。従って、平面視において、プレス機10の大きさはアクチュエータ11の大きさにより定まり、プレス機10の大きさをアクチュエータ11の大きさと略同様とすることができる。
【0026】
なお、上記プレス機10では、アクチュエータ11とベース部材13とが、プレスストロークH及びプレス型9のための空間を介在させた状態にタイロッド14で連結されており、上型及び下型から成るプレス型9は、それぞれシリンダロッド11aと上部ベース部材13とに固定される。そして、アクチュエータ本体11cと、上部ベース部材13との間に、柱部材12によってプレスストロークHが確保される。すなわち、プレス型9とプレスストロークHとが必要とするプレス方向の長さにより、柱部材12の長さが決定される。
【0027】
上記構成のプレス機10では、下部ベース部材を備えてフレームを構成することなく、アクチュエータ本体11cにタイロッド14を挿通させることによって、アクチュエータ本体11cに、従来のフレームの構成要素である下部ベース部材と同様の機能を与えている。
従って、プレス機10に、アクチュエータ11とプレス型9を包囲するフレームを備える必要がないため、プレス機10を、プレス型9とアクチュエータ11とプレスストロークHとに必要な空間の大きさにより近づけた小型なものとすることができる。よって、材料・加工・組立・運搬等に係る費用や、設置スペース等の、プレス設備のための費用の削減に寄与することができる。
【0028】
また、上記プレス機10に備えられるアクチュエータ11は一般的な構成のものを採用することができる。従って、一般的な構成のアクチュエータ11に、柱部材12と上部ベース部材13とタイロッド14とを付加することによって、プレス機10とすることができるので、従来のプレス機と比較して構成部材点数が少なく、安価にプレス機10を構成することができる。すなわち、プレス設備のための費用の削減に寄与することができる。
【0029】
なお、図4及び図5に示す如く、プレス機10に柱部材12を設ける代わりに、タイロッド14に挿通孔11b・13aよりも径の大きな大径部12bを一体的に形成して、該大径部12bにてアクチュエータ11と上部ベース部材13とを離間させた状態に保持する構造とすることができる。
この場合、柱部材12のぶんだけプレス機10の構成部材点数を低減させることができ、組み付け性の向上、及び、プレス設備のための費用の削減に寄与することができる。
【0030】
また、図6及び図7に示す如く、シリンダロッド11aの移動方向精度が必要である場合は、アクチュエータ11により駆動されるシリンダロッド11aの移動方向を規制するリニアベアリング18と、該リニアベアリング18の保持部材としてのホルダ19とを、上記構成のプレス機10に付加することで、対応することができる。
【0031】
前記ホルダ19には、リニアベアリング18を嵌入可能な嵌合孔19bと、タイロッド14を挿通可能な挿通孔19aとが形成される。
一方、リニアベアリング18には、シリンダロッド11aを挿通可能なガイド孔18aが形成される。
そして、上記リニアベアリング18を嵌合孔19bに嵌合したホルダ19は、柱部材12とアクチュエータ本体11cとの間に配置され、挿通孔19aに挿通されたタイロッド14によって、アクチュエータ11、柱部材12及び上部ベース部材13と一体的に締結される。
【0032】
シリンダロッド11aは、リニアベアリング18のガイド孔18aの内周を摺動することによって、摺動に負荷を与えることなく、移動方向が規制され、その移動方向精度が確保される。
このように、プレス機10の外形のサイズを変化させることなく、シリンダロッド11aの移動方向精度を確保するための機構を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例に係るプレス機の全体的な構成を示す正面図。
【図2】プレス機の全体的な構成を示す平面図。
【図3】プレス機の構成を示す展開図。
【図4】別形態のタイロッドを採用するプレス機の全体的な構成を示す正面図。
【図5】別形態のタイロッドを採用するプレス機の構成を示す展開図。
【図6】摺動方向精度を確保するための機構を備えたプレス機の全体的な構成を示す正面図。
【図7】シリンダロッドの移動方向精度を確保するための機構を備えたプレス機の構成を示す展開図。
【図8】従来のプレス機の構成を示す正面図。
【符号の説明】
【0034】
9 プレス型
10 プレス機
11 アクチュエータ
12 柱部材
13 上部ベース部材
14 タイロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧手段としてのアクチュエータと、受圧部材としてのベース部材とを、
プレスストローク及びプレス型のための空間を介在させた状態にタイロッドで連結して成る
ことを特徴とするプレス機。
【請求項2】
前記タイロッドを、アクチュエータとベース部材とに貫通させる、
請求項1に記載のプレス機。
【請求項3】
前記アクチュエータとベース部材とに、柱部材を介装し、
該柱部材にタイロッドを挿通させる、
請求項1又は請求項2に記載のプレス機。
【請求項4】
前記タイロッドに、大径部を形成し、
該大径部にてアクチュエータとベース部材とを離間した状態に保持させる、
請求項1又は請求項2に記載のプレス機。
【請求項5】
前記アクチュエータとベース部材との間に、
アクチュエータにより駆動されるロッドが挿入されるリニアベアリングと、
該リニアベアリングの保持部材を備える、
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のプレス機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−43723(P2006−43723A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−226919(P2004−226919)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】