説明

プレス装置及びプレス加工方法

【課題】エネルギー(プレス荷重)の損失が抑制されるプレス装置を提供する。
【解決手段】ボルスタ7を載置するボルスタキャリア9の枠部11の内側に、十字状に形成されるリブ12が形成されて、該リブ12の交差部C1が、ベッド10のダイクッション収容部13の中央に立設された支柱14によって支持される。これにより、ボルスタ7の中央が、ボルスタキャリア9のリブ12の交差部C1を介して支柱14によって支持されて、プレス荷重によってボルスタ7の中央が凹状に撓むのが防止される。これにより、ボルスタ7の変形(撓み)に消費されるプレス荷重(エネルギー)が削減されて当該プレス荷重の損失が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス装置に関するもので、特に、下型がボルスタによって支持されるプレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ダイクッションによって、クッションリングに作用するシワ押え力を均一化させるプレス装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。例えば、図6に示される従来のプレス装置1では、ダイクッション6が、クッションリング2を支持する複数本のクッションピン3と、該複数本のクッションピン3を支持するクッションパッド4と、該クッションパッド4に作用するシワ押え力を受圧するクッション5と、によって構成され、該ダイクッション6によって、クッションリング2の傾き、クッションピン3の長さのばらつき、クッションパッド4のボルスタ7に対する平行度誤差、及び当該プレス装置1の本体の歪みが吸収されることにより、クッションリング2に作用するシワ押え力が均一化される。従来のプレス装置1では、下型8がボルスタ7の中央に載置され、ボルスタ7が、ボルスタキャリア9を介してベッド10に支持される。
【0003】
従来のプレス装置1では、枠状に形成されたボルスタキャリア9によってボルスタ7の周縁部が支持される。このため、プレス荷重によって、ボルスタ7の中央が凹状に撓み、このボルスタ7の撓みに消費されるエネルギー(荷重)が損失になる。したがって、消費エネルギーの増加に伴って製造コストが増大すると共に、二酸化炭素の排出量が増大する。また、エネルギーの損失によって、ワンランク上の能力のプレス装置1が必要である場合、装置が大型化すると共に設備コストが増大する。
【特許文献1】特開平6−190464号公報(段落番号0011〜0032、図1〜図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、事情に鑑みてなされたもので、エネルギー(プレス荷重)の損失が抑制されるプレス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、下型がボルスタ上に載置されるプレス装置であって、ボルスタの周縁の一部又は全部と少なくとも中央とを支持するボルスタキャリアを具備することを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のプレス装置において、ボルスタキャリアは、矩形に形成されてベッドによって支持される枠部と、十字状に形成されて交差部によってボルスタの中央を支持する第1のリブと、を含んで構成されることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のプレス装置において、ベッドのダイクッション収容部の中央に立設されて、ボルスタキャリアの第1のリブの交差部を支持する支柱を具備することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載のプレス装置において、ベッドのダイクッション収容部に十字状に形成されて、ボルスタキャリアの第1のリブの中央又は全体を支持する第2のリブを具備することを特徴とする。
【0006】
したがって、請求項1に記載の発明では、ボルスタキャリアによって、ボルスタの周縁の一部又は全部と少なくとも中央とが支持されるので、プレス荷重によってボルスタの中央が凹状に撓むのが抑制される。
請求項2に記載の発明では、ボルスタの中央が、ボルスタキャリアの十字状に形成された第1のリブの交差部によって支持される。
請求項3に記載の発明では、ボルスタキャリアの第1のリブの交差部が、ベッドのダイクッション収容部の中央に立設された支柱によって支持される。
請求項4に記載の発明では、ボルスタキャリアの第1のリブの中央又は全体が、ベッドの十字状に形成された第2のリブによって支持される。
【発明の効果】
【0007】
エネルギー(プレス荷重)の損失が抑制されるプレス装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の一実施の形態を図1及び図2に基づいて説明する。なお、上述した従来のプレス装置1と構成が同一又は相当する部分については、同一の名称及び符号を付与する。図1に示されるように、本プレス装置1は、ボルスタ7を載置するボルスタキャリア9の枠部11が矩形に形成され、該枠部11の内側には十字状に形成されたリブ12(第1のリブ)が設けられる。そして、該リブ12の交差部C1が、ベッド10のダイクッション収容部13の中央に立設された支柱14に支持されることにより、ボルスタ7の中央がボルスタキャリア9のリブ12の交差部C1を介して支柱14に支持される。これにより、本プレス装置1は、プレス荷重によってボルスタ7の中央が凹状に撓むのが防止され、プレス荷重(エネルギー)の損失(成形に消費されるプレス荷重以外に消費されるプレス荷重)が抑制される構造になっている。
【0009】
図2に示されるように、本プレス装置1は、ベッド10(上部フレーム)がコンクリート製のピット15に収容され、該ベッド10の幅方向(図2における左右方向)両側に立設された側板16(中間フレーム)によってクラウン17(上部フレーム)が支持される。また、本プレス装置1は、クラウン17に支持されて下面(上型取付面)に上型20が取付けられるスライダ18を備える。そして、本プレス装置1は、クラウン17に設けられたスライダ駆動機構(サーボ駆動機構)の駆動力によって軸線方向(図2における上下方向)へ動作される一対のシャフト19を備え、該一対のシャフト19によって、スライダ18延いては該スライダ18に取付けられる上型20が上下方向(図2における上下方向)へ移動及び位置決めされる構造になっている。また、本プレス装置1は、ボルスタ7の上面(下型取付面)の中央に下型8(ポンチ)が取付けられ、枠状に形成されたクッションリング2(下型パッド)が下型8を囲続するようにして設けられる。
【0010】
そして、図2に示されるように、クッションリング2は、複数本のクッションピン3、クッションパッド4、クッション5を含んで構成されるダイクッション6によって支持される。ダイクッション6は、各クッションピン3の上端部がクッションリング2の下面に当接され、各クッションピン3は、ボルスタ7を垂直に、且つ軸線方向(図2における上下方向)へ移動可能に貫通する。また、ダイクッション6は、クッションリング2に負荷されるシワ押え力を、各クッションピン3を介して、ベッド10のダイクッション収容部13に収容されるクッションパッド4によって受圧する。そして、ダイクッション6は、クッションパヅド4によって受圧したシワ押え力を、ベッド10のダイクッション収容部13に配設される複数個のクッション5によって受圧する構造になっている。
【0011】
図1に示されるように、ボルスタキャリア9は、枠部11の相互に対向する内側面間にビーム12a,12bが架設され、枠部11の内側には、枠部11の中央で交差する十字状のリブ12が形成される。そして、ボルスタキャリア9は、枠部11がベッド10のダイクッション収容部13の開口周縁によって支持され、リブ12の交差部C1が支柱14によって支持される。なお、ボルスタキャリア9は、枠部11上面とリブ12の上面とが面一(同一平面)に形成され、枠部11の下面とリブ12の下面とが面一に形成される。また、クッションパッド4には、支柱14との干渉を回避するための空間22が設けられる。
【0012】
次に、本プレス装置1の作用を説明する。まず、図2に示されるように、上型20と下型8との間にワーク21(鋼板)をセットする。次に、上型20が下降されると、ワーク21の被拘束部が上型20とクッションリング2(下型パッド)とによって所定の拘束カ(シワ押え力)で拘束され、この状態で、上型20と下型8とによってワーク21が絞り成形される。この時、クッションリング2に負荷されるシワ押え力はダイクッション6によって受圧される。一方、下型8に負荷されるプレス荷重は、ボルスタ7によって受圧され、該ボルスタ7によって受圧されたプレス荷重は、ボルスタキャリア9を介してベッド10によって支持される。そして、ボルスタキャリア9は、枠部11の下面全体がベッド10の上面によって支持されると共に、リブ12(第1のリブ)の交差部C1(ボルスタキャリア9の中央)が、ベッド10のダイクッション収容部13の中央に立設される支柱14によって支持される。
【0013】
これにより、本プレス装置1は、ボルスタ7の中央が、ボルスタキャリア9のリブ12の交差部C1を介してベッド10に立設された支柱14によって支持され、プレス荷重によって当該ボルスタ7の中央が凹状に撓むのが抑制される。なお、本出願人による実験データによれぱ、鋼板から自動車用サイドメンバを成形(絞り成形)する場合、従来のプレス装置1(図6参照)では、本プレス装置1の1/3〜1/5のプレス荷重で済んだ。この時、本プレス装置1におけるボルスタ7の撓み量は、従来のプレス装置1におけるボルスタ7の撓み量の1/2以下であった。したがって、本プレス装置1では、従来比でボルスタ7の撓み量が半減した結果、プレス荷重(エネルギー)の損失が抑制されたと結論される。
【0014】
この実施の形態では以下の効果を奏する。
本プレス装置1では、ボルスタキャリア9の枠部11内側に、十字状に形成されるリブ12(第1のリブ)が形成され、該リブ12の交差部C1が、ベッド10のダイクッション収容部13の中央に立設された支柱14によって支持される。
したがって、本プレス装置1では、ボルスタ7の中央が、ボルスタキャリア9のリブ12の交差部C1を介して支柱14によって支持される。これにより、本プレス装置1は、プレス荷重によってボルスタ7の中央が凹状に撓むのが抑制され、ボルスタ7の変形(撓み)に消費されるプレス荷重(エネルギー)が削減され、プレス荷重の損失が抑制される。その結果、製造コストが削減されると共に、能力が小さいプレス装置1で済むので設備を小型化することができる。
また、本プレス装置1では、リブ12が十字状に形成されるため、ボルスタキャリア9の剛性を高めると共に、クッションピン3の配置の制約を最小限に抑えることでクッションピン3を効果的に配置することができる。さらに、本プレス装置1では、ボルスタキャリア9のリブ12の交差部C1を、支柱14によって当該支柱14の軸方向に支持(突張り棒の要領で支持)したので、簡単な構造で比較的大きなプレス荷重に対応することができる。
【0015】
なお、実施の形態はに限定されるものではなく、例えば次のように構成してもよい。
図3〜図5に示されるように、ベッド10のダイクッション収容部13の中央に立設される支柱14の代わりに、当該ベッド10に、平面視(図5における下方向の視線)で矩形に形成されるダイクッション収容部13を縦横2×2に4等分に区分する十字状に形成されたリブ25(第2のリブ)を設けてプレス装置1を構成してもよい。これにより、ベッド10のリブ25によってベッド10の剛性が高められると共に、ボルスタキャリア9のリブ12(第1のリブ)全体が支持されるのでプレス荷重によるボルスタ7の撓みが抑制される。この場合、クッションパッド4に、平面視で十字状に形成されるスリヅト26を設けておいて、該スリット26にベッド10のリブ25を差入れることにより、クッションパッド4とベッド10のリブ25との干渉が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施の形態のプレス装置の説明図であって、ボルスタ、ボルスタキャリア、ベッドの分解斜視図である。
【図2】本実施の形態のプレス装置の一部を断面で示す正面図である。
【図3】他の実施の形態のプレス装置の説明図であって、ボルスタ、ボルスタキャリア、ベッドの分解斜視図である。
【図4】他の実施の形態のプレス装置の説明図であって、一部を切断して示したベッドと該ベッドに対応するクッションパッドとの斜視図である。
【図5】他の実施の形態のプレス装置の一部を断面で示す正面図である。
【図6】従来のプレス装置の一部を断面で示す正面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 プレス装置、6 ダイクッション、7 ボルスタ、8 下型、9 ボルスタキャリア、10 ベッド、12 リブ(第1のリブ)、13 ダイクッション収容部、14 支柱、25 リブ(第2のリブ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下型がボルスタ上に載置されるプレス装置であって、前記ボルスタの周縁の一部又は全部と少なくとも中央とを支持するボルスタキャリアを具備することを特徴とするプレス装置。
【請求項2】
前記ボルスタキャリアは、矩形に形成されてベッドによって支持される枠部と、十字状に形成されて交差部によって前記ボルスタの中央を支持する第1のリブと、を含んで構成されることを特徴とする請求項1に記載のプレス装置。
【請求項3】
前記ベッドのダイクッション収容部の中央に立設されて、前記ボルスタキャリアの第1のリブの交差部を支持する支柱を具備することを特徴とする請求項2に記載のプレス装置。
【請求項4】
前記ベッドのダイクッション収容部に十字状に形成されて、前記ボルスタキャリアの第1のリブの中央又は全体を支持する第2のリブを具備することを特徴とする請求項2に記載のプレス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−68280(P2008−68280A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−248268(P2006−248268)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(394019082)コマツ産機株式会社 (103)
【Fターム(参考)】