説明

プレロード式IOL挿入装置および方法

【課題】挿入装置およびその構成部品に眼内レンズを予め装填する。
【解決手段】眼内レンズが保存液を含むバイアル内に封止されるシャトル内に装填される。使用時、バイアルが開封され、遠位ノズル部がバイアル内のシャトルに取り付けられる。次に、遠位ノズル部およびシャトルがプランジャーを有する近位本体部に取り付けられる。プランジャーを前進させることにより、IOLが遠位ノズル部の遠位先端から排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は眼疾患手術装置および方法に関するものである。具体的には、眼内レンズ(IOL)を目に挿入する装置および方法に関するものであって、IOLを予め装填できる装置および装填方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
IOLは白内障や他の病気にかかった目の生来の水晶体に代わる人工水晶体である。時により、IOLは屈折矯正のために目に移植されることもあり、その場合には移植されたIOLとともに生来の水晶体を残すことができる。IOLは後眼房または前眼房のいずれにも挿入できる。IOLには種々の構造および材質のものがある。一般的なIOLは1つの光学体、その光学体に取り付けられそこから延びる2つの触覚から成る3ピース型、および光学体と触覚とが一体的に形成された(例えば、1つの材料ブロックから光学体と触覚を機械加工された)1ピース型を含む所謂開ループ触覚、および閉ループ触覚IOLがある。更に別の種類のIOLにプレート触覚と呼ばれるものがあり、触覚が光学体のそれぞれの側から延びる平板状に形成されている。IOLはPMMA、シリコーン、ハイドロゲル、シリコーン・ハイドロゲル等の様々な材料または材料の組合せから成ることができる。
【0003】
IOLを目に移植するための様々な器具および方法が知られている。1つの方法においては、手術担当医が対向刃を有する手術用鉗子によってIOLを保持し、切開部を通して目に挿入する。この方法は今でも行われているが、IOLを目に挿入する際により自由がきく等の利点がある最新のIOL挿入装置の使用が増えている。手術用鉗子のみでは不可能であったはるかに小さな切開部を角膜に設けることができる直径の小さい挿入先端を有するIOL挿入装置が最近開発された。切開部(例えば、約3mm未満)が小さいと手術後の回復が早いことや乱視のような治療に伴う合併症が少ないことから、大きな切開部(例えば、約3.2mm〜5mm以上)より好ましい。
【0004】
IOLは小さくて繊細な製品であり、扱いには十分な注意を要する。IOLを小さな切開部を通してうまく移植するためには、折畳みおよび/または圧縮してから目に挿入し、そこで折り畳まれていない/圧縮されていない元の形状を成すようにする必要がある。従って、IOL挿入装置はIOLが装置内を容易に通過して目に挿入されると共に、繊細なIOLが多少なりとも損傷を受けることのないよう設計する必要がある。目に挿入する過程においてIOLが万一損傷を受けた場合には、損傷したIOLを目から摘出して別のIOLに置換する必要があるという非常に望ましくない結果をもたらす。
【0005】
従って、前記のように、IOL挿入装置はIOLが装置内を通過し易いよう設計する必要がある。また、IOLがIOL挿入装置の先端から予測可能な向きおよび方法によって排出され、目に挿入されることも同様に重要である。万一IOLがあまりにも早く、または間違った向きに排出されると、目の中で更にIOLを操作する必要が生じ周囲の組織に傷を与えかねない。従って、IOLを正確に実装し、内部を通過させ先端から制御、予測および反復可能な方法で排出して目に挿入できる挿入装置が非常に望ましい。
【0006】
IOLをIOL挿入装置の先端から制御可能な方法で排出するためには、まずIOLをIOL挿入装置に装填する必要がある。従って、IOLの装填は正確を要する重要な1つのステップである。多くの場合、間違ったIOLの装填が一連のIOL挿入操作の失敗の原因として挙げられる。現在市販されている多くのIOL挿入装置は、手術時に担当看護士や医師によって挿入装置に装填する必要がある。IOLは繊細であるため、看護士や医師の不注意によりIOLの損傷および/または挿入装置への不正確な装填による移植失敗の危険がある。従って、看護士や医師がIOLを直接取り扱うことおよび/または挿入装置に装填することは望ましくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
看護士や医師が直接IOLを取り扱う必要がなく、装置の操作およびIOL挿入処理を簡単にするIOL挿入装置の必要性が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の広義の態様において、個別にパッケージされ、その後手術時に組み立てられる近位本体部、遠位ノズル部、およびIOLを非圧縮状態で装填したシャトル部品を有する挿入装置が提供される。前記挿入装置は乾燥または殺菌保存液(例えば、緩衝食塩水)を含むバイアルにパッケージされた前記シャトル部品に前記IOLを、好ましくは非圧縮状態、即ち、少なくともIOL光学体が圧縮または折り畳まれていない状態で、予め装填して提供される。前記パッケージ、即ちバイアルは封止され殺菌される。輸送および保存中、ハイドロゲルのような材料から成るIOLに要求される湿潤状態が前記液によって保持される。
【0009】
ユーザが便宜上希望する場合には、前記挿入装置の近位本体部、ノズル部、並びに前記シャトル部品およびIOLを含むパケージ、即ちバイアルを1つの“キット”パッケージとして提供することも可能であるが、近位本体部は殺菌した別のパッケージに封止して提供される。前記挿入装置の近位本体部は対向する開放端間に延びる縦通路を有する管状の本体を有している。プランジャー部品が前記管状本体の近位開放端から挿入され、前記縦通路内を自在に伸縮する。前記プランジャーは、近位端部に手動で押圧してプランジャーを前記通路内に進めるフィンガー・プレス、および反対側の遠位端部に前記IOLに係合して前進し、前記ノズル部の遠位先端から排出するプランジャー先端を有している。
【0010】
手術時、担当看護士または医師がこれ等の構成部品のパッケージを開き、まず前記ノズル部をシャトル部品に取り付ける。この第1取付けステップは前記シャトル部品を直接手で取り扱う必要のない前記バイアル内で行なうことが好ましい。ノズル部の挿入先端部を覆う取外し自在なカバーが取り付けられることにより、ノズル部を手で扱うことが可能になる一方、繊細な挿入先端がこのカバーによって保護される。前記挿入先端はIOLが最終的に前記挿入装置から目に排出される部分である。従って、シャトル部品に取り付ける際、前記カバーを取り付けた状態でノズル部が扱われる。前記ノズルとシャトルとを連結した後、1つのユニットとして前記バイアルから引き出される。シャトルおよびノズルは、好ましくは連結されたとき共通縦軸に沿う縦通路をそれぞれ有している。前記カバーを取り付けたまま、前記シャトルに連結された前記ノズル部が前記近位本体部に取り付けられる。ノズル部が本体部に取り付けられた後、カバーが取り外されることにより、前記IOLを患者の目に挿入する準備が完了する。
【0011】
前記挿入装置は装置内を通して前記IOLを排出する際、圧縮または断面が小さくなるよう付勢する手段を有している。本発明の好ましい実施の形態において、前記シャトル通路およびノズル通路が前記遠位挿入先端に向け先細りに形成されている。前記プランジャーが前記挿入装置の近位端を進むことによってプランジャーの遠位先端が前記IOL光学体に係合する。プランジャーが更に進むにつれ、前記IOLが前記先細りの通路に押圧され断面が小さく圧縮され、最終的に挿入装置の遠位端から意図した方法で目に排出される。
【0012】
前記近位本体部、ノズル、およびシャトル部品が連結されたとき、前記IOLシャトル、IOL、および挿入装置の相対位置調整によりIOLが挿入装置内に選択的に位置合せされる。従って、IOLは装置内において前記プランジャー先端に対し特定の向きに配置される。これにより、先導する触覚が前記シャトル内において正しく位置合せされ、後続する触覚および光学体が前記プランジャー先端に一致するので、プランジャーを前進させると、後続する触覚が詰まったり支えたりせずに、プランジャー先端が意図した方法で前記IOL光学体に係合する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1a】バイアルに接近してバイアル内のシャトル部品に接続される様子を示すノズル部の実施の形態の側面図。
【図1b】挿入装置の近位本体部に接近して近位本体部に接続される様子を示す連結されたノズルとシャトル部品の実施の形態の側面図。
【図2a】完全に組み立てられた挿入装置のノズル部から保護スリーブを取り外す様子を示す断面図。
【図2b】図2aの完全に組み立てられた挿入装置のノズル部の先端からIOLが排出される様子を示す斜視図。
【図3a】図2a、2bに示す挿入装置の近位本体部の拡大斜視図。
【図3b】図3aに示す近位本体部の断面図。
【図3c】図3aに示す近位本体部の端面図。
【図4a】挿入装置のプランジャー部の断面図。
【図4b】図4aに示すプランジャー部の斜視図。
【図5a】IOLが配されているIOL装填領域を開いた状態を示す挿入装置のシャトル部品の実施の形態の上面斜視図。
【図5b】IOL装填領域を閉じた状態の図5aに示すシャトル部品を180度回転した斜視図。
【図5c】IOL装填領域を開いた状態の図5a、5bに示すシャトル部品の平面図。
【図5d】図5cに示すシャトル部品の左端面図。
【図6a】前図に示す挿入装置の遠位ノズル部の斜視図。
【図6b】図6aに示すノズル部の平面図。
【図6c】図6aに示すノズル部の断面図。
【図6d】図6aに示すノズル部の端面図。
【図7】シャトル部品に連結された遠位ノズル部の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、概略的に言えば、本発明はIOLを目に挿入するためのプレロード式挿入装置を含んでいる。本明細書において“プレロード式”とはパッケージされた挿入装置の部品が内部にIOLを含んでいることを意味する。従って、IOLを直接取り扱ったり、挿入装置に装填したりする必要はない。
【0015】
挿入装置10の部品組立てステップを図1aおよび1bに示し、組立て後の挿入装置10を図2a、2bに示す。挿入装置の個々の構成部品は以後の図に示してある。挿入装置10は、近位本体部12、遠位ノズル部14、およびシャトル部品16を有している。これ等の構成部品は個別にパッケージされ、手術の際に組み立てることにより、装置を通してIOL30を患者の目に挿入する準備が完了するものである(図2b)。IOL30は乾燥状態でパッケージされたシャトル部品16内、または保存液を含む容器、即ちバイアル11に収容され、輸送および保管中IOLを湿潤状態に保持するシャトル部品内に予め装填されている。IOLを乾燥または湿潤のいずれの状態でパッケージおよび保管するかについてはIOLの材料に依存する。乾燥状態でパッケージできるIOLの材料の例にはシリコーンがあり、湿潤保管を必要とするIOLの材料には、例えば、アクリルがある。
【0016】
近位本体部12は開放近位端12bと開放遠位端12cとの間に延びる縦通路12aを有している。通路12aの断面は円形、図示のような矩形等、任意の形状を成すことができる。
【0017】
遠位ノズル部14は開放近位端14bと開放遠位先端14cとの間に延びる縦通路14aを有している。通路14aは遠位先端14cに向けて先細りになっているため、IOLは徐々に圧縮され非常に小さな断面を成して遠位先端14cから排出される。
【0018】
シャトル部品16の実施の形態例においては、IOLが非圧縮状態で装填保持される。これについて、以下詳細に説明する。図1aおよび1bに示す第1組立てステップにおいて、IOLが装填されたシャトル16が遠位ノズル部の通路14aに配される。シャトル16も開放近位端16bと開放遠位端16cとの間に延びる縦通路16aを有している。シャトル16を遠位ノズル部14に配する際、必要条件ではないが、縦通路16aと14aとが同一軸X−Xに沿って実質的に整列していることが好ましい。近位本体部12を遠位ノズル部14に取り付ける際、縦通路12aは遠位ノズル通路およびシャトル通路14a、16aの共通軸X−Xに沿って実質的に整列する(図2b)。近位本体部通路12a、プランジャー20、およびシャトル16間の位置合せを適切に維持するために、シャトル16は近位端16bに近位フランジ16qを有することができる。フランジ16qは近位本体部通路12aの通路を画成する内壁表面に接触してもしなくてもよい(図3a)。
【0019】
近位本体部12において、長手方向に沿った任意の場所にフィンガー・フランジ17を形成することができ、挿入装置を注射器のように操作できるよう近位端12bに形成することが好ましい。フィンガー・フランジ17は、図示(図3a)のように、装置10を平坦な面に静止させるための少なくとも1つの平坦な縁部17aを有していることが好ましい。例えば、本体部12を1つ以上の平坦な側面を有するように形成する等、装置を平坦な面に静止させる別の手段も可能である。
【0020】
長さを有する近位部および遠位部20a、20b、遠位プランジャー先端22、およびサムプレス24を有するプランジャー20は、近位本体部12に伸縮自在に挿入される。近位本体部12と遠位ノズル部14とを接続するとプランジャー20が近位部通路12aおよびシャトル通路16aに順次延びて係合することにより、通路16aを通してIOL30を押厚し遠位先端14cから排出する。以下、IOLの挿入手順を詳細に説明する。
【0021】
挿入装置本体12の全体構成は図示および以下に説明するものと異なる場合がある。また、挿入装置の構成部品は任意の適切な材料(例えば、ポリプロピレン)から成ることができ、装置内およびIOL挿入手順においてIOLがよく見えるよう、全体または部分的に不透明、透明、あるいは半透明にすることができる。挿入装置の好ましい実施の形態において、バイアル11とその構成部品が蒸気殺菌されるため、そこに収容されるシャトル16を含む構成部品は蒸気殺菌の熱に耐え得る材料から成る必要がある。そのような材料の例には、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリサルフォン、ALTEM(デュポン社製)、およびPFAがあるがこれに限定されない。挿入装置本体および遠位ノズル部は、例えば、ETO殺菌のような別の方法で殺菌した材料で形成できる。
【0022】
シャトル部品16はIOL30をプレロード位置に保持するためのものである。IOL30を保持したシャトル16は、図1aの第1組立てステップにおいて、開口14aを通して遠位ノズル部14に挿入される。図5a〜5dからよく分かるように、シャトル16はIOL装填領域16dを有し、そこにIOLが非圧縮状態で配されている。装填領域16dは縦通路16aと連通していると共に、軸X−Xに沿ってIOLを非圧縮状態で配するよう構成され、各々がIOL光学体31の周縁部31aを通路16a(従って軸X−X)に沿って位置合わせするための放射状構造体または別の構造体を有する1つ以上の光学体支持素子16e、16fを有することができる。別の方法として、または光学体支持素子に加えて、各々が光学体31から延びる1つ以上の触覚30b〜30eの位置合せをするための放射状構造体または別の構造体を有する触覚支持素子16g〜16jがシャトル16に備えられる。この点において、図示およびここで述べるIOL構造体30は説明のためのものであり、本発明はこれに限定されない。本発明は任意の構造および型のIOL(例えば、プレート触覚IOL、開または閉ループ触覚IOL、前房IOL、後房IOL、(シングルおよびダブル・レンズ型を含む)遠近調節可能IOL等)にも容易に対応できる。従って、IOLシャトル16全体およびIOL装填領域16dも同様に、装置に用いられる特定の方式のIOLに合わせて構成される。シャトル16は少なくともIOL光学体31を非圧縮状態で保持する。また、シャトル16はIOL触覚を正しいボールト角(即ち、触覚が通常IOL光学体の縁部から延びる角度)に保持することが好ましい。IOLが開ループ触覚を有している場合、前記触覚支持素子がループ触覚を正しい角度および曲率半径に保持することが更に好ましい。図5aにおいて、触覚支持素子が湾曲外縁部に沿って触覚を押厚していることが分かる。これにより、IOLおよびシャトルの保存中、製造時に設計および設定された触覚の曲率が増大または減少して仕様を逸脱することがない。
【0023】
製造時において、IOL30がシャトル16に配される。IOL30は、適宜別の方法も可能であるが、作業員が組立ラインにおいて自動または半自動手段を有する鉗子によってシャトル16に装填できる。シャトルへのIOLの装填を容易にするため、(例えば、能動ヒンジによって)枢動可能に接続された2つの壁部16K、16LによってIOL装填領域16dを形成することによりIOL装填領域16dを開閉できる。壁部16K、16Lは観音開きし、シャトル装填領域16dが開いた位置において同一平面に位置する。この開いた状態において、IOL装填領域16dに簡単にアクセスでき、部分16Kが好ましいが、2つの部分の何れかに容易にIOL30をセットできる。これはIOL光学体31とIOL支持素子16e、16fとを位置合せし、触覚30b〜30eと触覚支持素子16g、16jとを位置合せすることにより達成できる。
【0024】
IOL30をシャトルのIOL装填領域16dに適切に装填した後、2つの部分16K、16Lを閉位置に枢着(図5aの矢印“a”の方向)することにより、IOL30が対向する壁部16K、16L間に収容される(図5b)。このようにIOL30をシャトル16に装填してシャトルの壁部16K、16Lを閉じた後、シャトル16をバイアル11に挿入して保存する。湿潤パッケージの場合、保存液がIOL30に届くようシャトル16がIOL30と連通する1つ以上のスルーホール16pを有することができる。バイアル11の多くの可能な実施の形態のうちの1つを図1aに示す。開放端11aおよび内部空洞11bを有するこのバイアル11は、シャトル遠位端16cを開放端11aの近傍に位置するようにしてシャトル16を収容するものである。1つ以上の縦に延びるフィンまたは別の位置合せ構造体(図示せず)をバイアル11の内表面に形成することにより、バイアル内においてシャトル16を所望の向きに保持できる。箔シール11cのような剛性または可撓性カバー・シートを開放端11aに取り付け、バイアル11を封止する。必要に応じ、フレキシブル・ヒンジによってシール11cをバイアル11に取り付けることができる。これにより、バイアルを開放した後もシールをバイアルに残すことができ、手術室において“裸”の部品を防止できる。手術の際、無菌領域において、パッケージ、即ち、バイアル11の包装(例えば、TYVECポーチ)を解き、バイアル・カバー・シール11cを剥がしてバイアル11を開き中のシャトル16にアクセスする。同様に、無菌領域において、近位本体部12および遠位ノズル部14の包装が解かれる。次に、遠位ノズル部14の近位端14bをバイアル11に挿入してシャトル部品16に連結する。図1a、1bに示すように、少なくともノズル部14の挿入先端14cを覆う保護スリーブ15が随意に提供される。スリーブ15によってノズル14を手で扱うことが可能になり、取り扱い中および挿入装置を組み立てる間、先端14cの損傷を防止できる。挿入装置10を完全に組み立てた後、以下に説明するようにノズル14からスリーブを取り外す。スリーブ15は、例えば、ポリカーボネートまたはポリプロピレンのような適切なプラスチックから成ることができる。前記連結が完了した後、図1bおよび7に示すように、必須ではないが好ましくはシャトルの近位端16bを遠位ノズル部の近位端14bから突出させてノズルとシャトルとが1つのユニットとしてバイアルから取り出される。シャトル16が容易に正しく遠位ノズル部に取り付けられるよう、シャトル16の外壁面に形成された縦フランジ16h(図5b)に対応する縦溝14h(図6d)を遠位ノズル部の内壁面に形成できる。このように、溝14hとフランジ16hとがシャトルと遠位ノズル部との誤った連結を防止する“鍵”となり、シャトル16が遠位ノズル部14に摺動収容される。更に、適切な機械的固定手段により、シャトル16と遠位ノズル部14とを組み立てた状態で固定できる。例えば、シャトル16を遠位ノズル部14に完全に挿入すると係合する窪み16nおよびスロット14nをそれぞれシャトル16および遠位ノズル部14に設けることができる。このようにして、シャトル16を遠位ノズル部14に固定できる。
【0025】
ノズル部14とシャトル16とを連結し、バイアル11から取り出した後、看護士または医師がノズル部14を近位本体部12に取り付ける。前記のように、2つの部分を単に押厚するだけと言うように、近位本体部12を遠位ノズル部に素早く且つ容易に取り付けることができる各種機械的接続手段が採用されている。このような手段には、例えば、協働する戻り止めと凹部、あるいは2つの部分接続する摩擦係合子がある。図示の実施の形態において、近位本体部12の開放遠位端12c近傍に形成された一対のスルーホール12d、12e(図3a、3b)に係合する一対の戻り止め14d、14e(図6a〜6d)が遠位ノズル部14の外壁面に設けられている。近位本体部12と遠位ノズル部14とを合わせると、戻り止め14d、14eがそれぞれスルーホール12d、12eに係合し2つの部分が連結される。放射フランジ14fを遠位ノズル部に設け、近位本体部12が遠位ノズル部14上を更に先に進む、即ち、戻り止め係合位置から先に進むのを阻止する停止体として機能させることができる。
【0026】
近位本体部12と遠位ノズル部14とを連結した後、図2aに示すように、ノズル部14からカバー15を取り外すことができる。これで挿入装置の組立てが完了し、患者の目にIOLを挿入する準備が整い、その患者の目に設けた切開部にノズルの先端14cを挿入してプランジャー20を押厚することにより、ノズルを通過させ先端14cからIOL30を排出挿入できる(図2b、目は省略)。
【0027】
図4a、4bにおいて、プランジャー20は遠位端にプランジャー先端22を備える遠位プランジャー・シャフト20a、および近位端に挿入装置を手動操作するためのサムプレス24を備える近位プランジャー・シャフト20bを有している。プランジャー先端22は、プランジャー20が遠位ノズル部14の遠位先端14cに向けて前進するにつれ、IOL光学体31の周縁部31aに係合するよう構成されている。プランジャー先端22によってIOL光学体31が損傷されないことが非常に重要である。そのため、プランジャー先端22はIOL光学体31を損傷しないよう設計されている。1つの実施の形態例において、前記先端が第1先端部22aと第2先端部22bとに分岐され、それにより図2に示すようにIOL光学体周縁部31aが先端部22a、22bの間に係合する。必要に応じ、本発明に別の設計のプランジャー先端を用いることができ、本発明は前記プランジャー先端に限定されるものではない。更に、前記プランジャー・シャフトを通路12a内に回転固定することにより、シャフト(従って先端22)が通路内において突発的に回転しないようにすることが好ましい。例えば、図示のように、近位シャフト20bおよび通路12aを断面が非円形となるよう形成することにより、プランジャー・シャフトを回転固定できる。
【0028】
特に好ましい実施の形態において、近位部本体部12の近位端12bの近傍の内壁面に形成された放射状に延びる羽根21a〜21d間に形成されたスロット12a’(図3c)に対応する1つ以上の細長いフランジ20a’がプランジャー・シャフトの近位部20bに設けられている。フランジ20a’およびスロット12a’はその間に触知抵抗を生むことにより、プランジャーを前進させるとき、より正確な制御を可能とすると共に感触が得られるようにするものである。羽根21a〜21dは剛性、可撓性、あるいはその組合せであってよく、いずれの場合も所望の触知抵抗量を得ることができる。プランジャーを制御する別の方法およびプランジャーと挿入装置本体との間に触知抵抗を生む別の方法も本発明の範囲に属するものである。これにより、連続的に触知フィードバックが得られ、簡単且つ制御可能な方法で挿入装置内にプランジャー(従って、IOLも)を前進させることができる。更に、フランジ20a’およびスロット12a’は前記のように構成部品の通路が沿っている軸X−Xに対するプランジャー・シャフト20および先端22の適切な位置調整に有用である。プランジャーを完全に前進させ、プランジャー・フィンガー・プレス24に対する指の力を抜いたとき、プランジャーが自動的に少し後退することが好ましい。この点に関し、シャフト20aの指20dにバネ20cを備えることができる。プランジャーが前進するにつれ、バネ20cは1つ以上の羽根21a〜21dと相互作用する。
【0029】
挿入装置を使用するとき、前記のように、適切な型および能力のIOLが予め装填されたシャトル16を格納している容器、即ちバイアル11が選択される。手術室の無菌領域において包装が解かれる。遠位ノズル部14およびプランジャー20が連結された近位本体部12の包装も無菌領域において解かれる。次に、遠位ノズルをシャトル16に取り付け前記バイアルから取り出し、そのノズルとシャトルのユニットを前記のように近位本体部に取り付ける。これにより、遠位先端14cを目の切開部に挿入してプランジャー20を前進させることができる。プランジャー20が前進するにつれ、プランジャー先端22がシャトル通路16aに入り、光学体周縁部31aに係合してIOL30を前に押圧する。プランジャー20を引き続き前進させると、IOL30はシャトル通路16a内を押圧されて前進し、遠位先端14cから排出され目に挿入される(図2b)。前記のように、プランジャーが完全に前進した位置において、バネ20cによって反対方向の付勢力がもたらされる。これは、バネ20cが1つ以上の羽根21a〜21dに対して圧縮されることにより生じるものである。これにより、プランジャー(従ってIOL)を正確に制御しつつ前進させることができると共に、プランジャー・サムプレス24に対する押圧力を軽減することによりプランジャーを自動後退させることができる。これにより、後に続く触覚に係合させて操作することによって、触覚を目の所定の位置に配するためのプランジャーに対する2回目の押圧操作が容易になる。前記機能と分岐プランジャー先端22とが相まって、これ等の機能を有さない挿入装置と比較して、IOLのより正確な制御および操作が可能になる。
【0030】
前記のように、本発明の挿入装置は任意の型および方式のIOLに対応できる。同様に、各種構成部品も装置に用いられる特定の方式のIOLに合わせて構成される。このように、本発明の挿入装置に係る方法および装置は様々な実施の形態を採ることができる。従って、本発明は前記図示および説明した実施の形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0031】
10 挿入装置
11 バイアル
12 近位本体部
14 遠位ノズル部
14c 遠位先端
15 保護スリーブ
16 シャトル部品
17 フィンガー・フランジ
20 プランジャー
22 プランジャー先端
24 サムプレス
30 IOL
31 IOL光学体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部に眼内レンズを収容し、保存および輸送できるよう構成され、保存状態から挿入状態に再構成可能な挿入装置をパッケージする方法であって、
a)縦通路を有する近位本体部を提供するステップ、
b)縦通路を有する遠位ノズル部を提供するステップ、
c)縦通路を有し、内部に眼内レンズを収容したシャトルを提供するステップ、および
d)内部空洞に通じる開放端を有するバイアルを提供し、該内部空洞に保存液を施し、該バイアルの内部に前記シャトルおよび眼内レンズを一緒に収納するステップ
の各ステップを有して成る方法において、
前記挿入装置が保存状態にあるとき前記シャトルおよび眼内レンズが前記水溶液を含むバイアル内に封止され、該保存状態にある挿入装置が、
前記バイアルを開封するステップ、
前記遠位ノズル部を前記シャトルに取り付けるステップ、および
前記遠位ノズル部を引き上げるようにして、該遠位ノズル部、前記シャトル、および前記眼内レンズを前記バイアルから取り出すステップ
の各ステップにより前記保存状態から前記挿入状態に再構成されることを特徴とする方法。
【請求項2】
保存状態から挿入状態に再構成可能な挿入装置組立品であって、
a)第1縦通路を有する近位本体部、
b)第2縦通路を有する遠位ノズル部、
c)第3縦通路を有し内部に眼内レンズを収容するよう構成されたシャトル、および
d)水溶液を保持するよう構成された内部空洞に通じる開放端および該開放端を取外し自在に封止する封止体を有するバイアル
を有して成り、眼内レンズが前記水溶液を含むバイアル内に封止され、前記遠位ノズル部が前記シャトルに取り付けられるよう構成され、前記近位本体部が前記遠位ノズル部に取り付けられるよう構成されて成り、
前記近位本体部、前記遠位ノズル部、および前記シャトルの各々が、該シャトルが前記ノズル部に取り付けられ、前記遠位ノズル部が前記近位本体部に取り付けられたとき、前記第1縦通路、第2縦通路、および第3縦通路が共通軸に略沿ってこの順で存在するように構成される、ことを特徴とする組立品。
【請求項3】
前記第1縦通路、第2縦通路、および第3縦通路が同軸に配列されて成ることを特徴とする請求項2記載の組立品。
【請求項4】
前記シャトルおよび遠位ノズル部がスナップ・フィットするよう構成されて成ることを特徴とする請求項2記載の組立品。
【請求項5】
前記遠位ノズル部が前記第2縦通路に前記シャトルを受け入れるよう構成され、前記近位本体部が前記遠位部を前記第1縦通路に受け入れるよう構成されて成ることを特徴とする請求項2記載の組立品。

【図1a】
image rotate

【図1b】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate

【図3c】
image rotate

【図4a】
image rotate

【図4b】
image rotate

【図5a】
image rotate

【図5b】
image rotate

【図5c】
image rotate

【図5d】
image rotate

【図6a】
image rotate

【図6b】
image rotate

【図6c】
image rotate

【図6d】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−30128(P2012−30128A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250495(P2011−250495)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【分割の表示】特願2007−549435(P2007−549435)の分割
【原出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(391008847)ボシュ・アンド・ロム・インコーポレイテッド (137)
【氏名又は名称原語表記】BAUSCH & LOMB INCORPORATED
【Fターム(参考)】