説明

プレート熱交換器及びその製造方法

【課題】伝熱面の表面積を広くし、安定したシール性能を確保したプレート熱交換器を得る。
【解決手段】伝熱プレートの伝熱面において、接合部12において接合してシール性能を確保するための波16間に、接合はせずに伝熱面積を向上させるための波15が形成されており、この伝熱面積を向上させるための波15の波高さは、シール性能を確保するための波16の波高さよりも低く形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝熱プレートを複数積層して固定し、伝熱プレートを介して熱交換を実施するプレート熱交換器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプレート熱交換器は、その通液孔周りの剛性向上を図り、圧力試験又は予期せぬ外力によって発生する伝熱プレートの変形による伝熱プレート間のシール性能の低下、及び、塑性変形による強度低下を防ぎ、永久的な伝熱プレート間の接合を確保している(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
また、従来のプレート熱交換器は、図9(a)及び(b)で示されるように、波形状の稜線がV字形状を有する伝熱面1、及び、四隅に形成された通液孔2を有する伝熱プレート3と、伝熱面1及び通液孔2を有し、V字波状が伝熱プレート3と180°反転した伝熱プレート4とが互いに積層されて構成されている。このとき、伝熱プレート3の山部5の頂点と、隣接する伝熱プレート4の谷部6の頂点とが、重なり合う位置でろう材等の接合材によって接合され接合部7が形成されている。伝熱プレート3の谷部6及び隣接する伝熱プレート4の山部5も、同様にろう材によって接合され、同様に接合部7が形成されている。
【0004】
この伝熱プレート3と伝熱プレート4とが接合された状態を示すのが図10である。このうち、図10(a)は、伝熱プレート3及び伝熱プレート4が重なり合って接合された状態の上面図を示し、図10(b)は、伝熱プレート3及び伝熱プレート4が重なり合って各伝熱面1が接合された状態を横から見た図である。このようなプレート熱交換器において圧力が作用することによって、プレート熱交換器の伝熱面1、通液孔2、及び伝熱プレート間の接合部7等の応力集中部に生じる繰り返し負荷、又は、製造時及び取り付け時に生じる外力等に対して、シール性能が確保できない場合がある。ここで、シール性能が損なわれた状態の例として、例えば、図11で示されるように、プレート熱交換器に対する外部からの圧力によって、接合部7近傍の伝熱面1が破断して穴17が生じた場合が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−73047号公報(第2−3頁、図1)
【特許文献2】特開2009−504158号公報(第2頁、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来は、通液孔2近傍の変形を抑制することによって、伝熱プレートのシール性能を確保していたが、伝熱面1において、ろう付け等による伝熱プレート間の接合部7が不十分であった場合におきるシール性能の低下に対しては効果がないという問題点があった。
【0007】
また、伝熱面1における接合部7と接合部7との距離である接合間距離8が長いと応力集中部への負荷が大きくなり、シール性能が低下する場合があるため、製品の信頼性向上の観点から、シール性能を向上させるため接合間距離8を短くする場合が多い。さらに、小型化、軽量化及び高性能化を目的として、伝熱プレートのサイズ及び積層する伝熱プレートの数を変えずに伝熱性能を向上させるために、波高さ9を高くし、波ピッチ10を短くする等の方法によって伝熱面1の表面積を広くする手法が取られ、製品の性能面からも接合間距離8を短くする方がよい。
【0008】
しかしながら、プレス加工によって製造される場合が多い伝熱プレートのV字波においては、上記のように波高さ9を高くし、波ピッチ10を短くする場合は、安定した波高さ9を得ることができず、図12で示されるように、伝熱プレートにおける積層方向の山部5と谷部6との間に、ギャップ11を生じる場合が多くなる。特に、伝熱面1がV字波状に形成される伝熱プレートのその伝熱面1における山部5又は谷部6の高さが異なると、伝熱プレート同士を積層した場合に、接合される山部5又は谷部6が高い地点に形成された接合部7の近傍においては、ギャップ11が広くなる。この場合、ギャップ11において、接合が十分になされない、あるいは、接合ができない等の接合不良が1つ又は複数個発生する場合がある。接合不良、すなわち、ギャップ11が生じている伝熱プレート間の接合部と接合部との間の接合間距離13が、シール性能を確保できる許容接合間距離14より広くなると、十分なシール性能が得られなくなる。そのため、伝熱プレートの接合時は積層した伝熱プレート上におもり等を載せて伝熱プレートに荷重を加え、ギャップ11を縮めることによって接合を形成することがある。しかし、おもりによって接合できる伝熱プレート間ギャップにも限界があると共に、おもりの重量が増すと製造時の作業性が劣ることになるという問題点があった。
【0009】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、伝熱面の表面積を広くし、安定したシール性能を確保したプレート熱交換器及びその製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るプレート熱交換器は、略平板状の伝熱プレートが複数枚積層され、該伝熱プレート間に冷媒が流通する冷媒流路が形成され、該冷媒流路は2種類の冷媒が交互に流通するように形成されたプレート熱交換器において、前記複数の伝熱プレートは、波の稜線形状が前記伝熱プレートの長手方向の一方向側に凸形状となるように、前記波が形成された伝熱面を有し、前記波の稜線形状の凸方向が交互に反転するように積層され、前記伝熱面において、波高さが異なるように複数の前記波が形成され、波高さの高い波同士を接合し、波高さの低い波同士は接合させないものとしたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、伝熱面積を向上させるための波の波高さを、シール性能を確保するための波の波高さより低くすることによって、波の山部と谷部との距離である起伏を小さくすることができ、プレス加工において成型しやすくすることができ、シール性能を確保するための波の波高さの精度を向上させることができ、伝熱プレートを安定して製造することができる。また、金型の劣化等によって、シール性能を確保するための波の波高さが安定しない場合においても、すべての波の波高さを均一にした場合よりも伝熱面の曲げ剛性が低いため、接合時のおもりによって、ギャップを縮めて接合部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1に係るプレート熱交換器において伝熱プレートを積層した状態の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態2に係るプレート熱交換器の伝熱プレートを積層した状態の断面図である。
【図3】本発明の実施の形態3に係るプレート熱交換器の伝熱プレートを積層した状態の断面図である。
【図4】本発明の実施の形態4に係るプレート熱交換器の伝熱プレートを積層した状態の断面図である。
【図5】本発明の実施の形態5に係るプレート熱交換器の伝熱プレートを積層した状態の断面図である。
【図6】本発明の実施の形態6に係るプレート熱交換器の伝熱プレートを積層した状態の断面図である。
【図7】本発明の実施の形態7に係るプレート熱交換器の波16の構造の例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態9に係るプレート熱交換器の伝熱プレートを積層した状態の断面図である。
【図9】従来のプレート熱交換器における伝熱プレートの構造図である。
【図10】従来のプレート熱交換器における伝熱プレートが接合された状態を示す図である。
【図11】伝熱プレート間においてシール性能が損なわれた状態の例を示す図である。
【図12】伝熱プレート間において接合されないギャップが生じた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係るプレート熱交換器において伝熱プレートを積層した状態の断面図である。
図1で示されるように、伝熱プレート(図9で示される伝熱プレート3又は伝熱プレート4)の伝熱面において、接合部12において接合してシール性能を確保するための波16間に、接合はせずに伝熱面積を向上させるための波15が形成されている。この伝熱面積を向上させるための波15の波高さは、シール性能を確保するための波16の波高さよりも低く形成されている。また、伝熱プレート3及び伝熱プレート4の外観は、図9で示されるものと同様である。このように伝熱プレートが接合部7において接合されることによって積層され、この伝熱プレート間に冷媒が流通する流路が形成され、異なる2種類の冷媒が流通する流路が交互に形成され、伝熱プレートを介してこの2種類の冷媒同士が熱交換を実施することになる。この2種類の冷媒は、それぞれ図9で示される別々の通液孔2から流入し、伝熱プレート間の流路を流通して熱交換が実施された後、異なる通液孔2からそれぞれ流出する。このとき、積層された伝熱プレート3及び伝熱プレート4の周囲は冷媒が外部に漏れないようにシールされている。さらに、一方の冷媒が流通する伝熱プレート間の流路に他方の熱媒体が混入しないように、この一方の熱媒体が流通する流路と、他方の冷媒が流通する通液孔2とがシールされている。
【0014】
前述した図10(b)で示される伝熱プレートのように、すべての波を均一な波高さで形成しようとすると、シール性能を確保するための波の波高さが安定して得ることが困難であり、形成された波の波高さがばらつき、シール性能が低下する場合がある。これは、プレス加工において伝熱プレートを成型する場合、波形状の起伏が大きいほど、金型通りの寸法で成型することが困難となるためである。
【0015】
しかし、図1で示されるように、伝熱面積を向上させるための波15の波高さを、シール性能を確保するための波16の波高さより低くすることによって、波の山部と谷部との距離である起伏を小さくすることができ、プレス加工において成型しやすくすることができ、波16の波高さの精度を向上させることができ、伝熱プレートを安定して製造することができる。また、金型の劣化等によって、シール性能を確保するための波16の波高さが安定しない場合においても、図10(b)で示されるようなすべての波の波高さを均一にした場合よりも伝熱面の曲げ剛性が低いため、接合時のおもりによって、ギャップを縮めて接合部7を形成することができる。ただし、接合部7間の距離である接合間距離13は、シール性能を確保できる限界の接合間距離である許容接合間距離14以下とする必要がある。
【0016】
なお、図1で示される伝熱プレートの伝熱面の波(波15又は波16)の稜線はV字形状としているが、これに限定されるものではなく、例えば、U字形状若しくは台形形状等のように、伝熱プレートの長手方向の一方向に凸形状となるような形状、又は、W字形状等でもよい。
また、波の稜線の形状のすべてを同一形状にする必要もなく、V字形状、U字形状、台形形状又はW字形状等が混在して形成されるものとしてもよい。
また、波15及び波16は、本発明の「波状部」に相当する。
【0017】
実施の形態2.
本実施の形態に係るプレート熱交換器について、実施の形態1に係るプレート熱交換器の構成と相違する点を中心に説明する。
【0018】
図2は、本発明の実施の形態2に係るプレート熱交換器の伝熱プレートを積層した状態の断面図である。
実施の形態1においては、シール性能を確保するための波16間に、伝熱面の表面積を向上させるための波15が1つのみ形成される構成であったが、本実施の形態に係るプレート熱交換器は、図2で示されるように、伝熱プレートの長手方向において伝熱面の表面積を向上させるための波15を複数個形成したものである。
【0019】
これによって、伝熱面積が広くなり伝熱性能が向上すると共に、波高さが低い波15により伝熱面積が広くなるので、伝熱プレート間の接合材が多い場合においても、流路を塞ぐことなく接合が可能となる。
【0020】
実施の形態3.
本実施の形態に係るプレート熱交換器について、実施の形態1に係るプレート熱交換器の構成と相違する点を中心に説明する。
【0021】
図3は、本発明の実施の形態3に係るプレート熱交換器の伝熱プレートを積層した状態の断面図である。
実施の形態1においては、伝熱面積を向上させるための波15の波高さを均一に形成しているが、本実施の形態に係るプレート熱交換器は、図3で示されるように、伝熱面積を向上させるための波15の波高さを均一にしなくてもよい構成としたものである。
【0022】
これによって、シール性能を確保するための波16の波高さの安定性がより必要な箇所において、伝熱面の表面積を向上させるための波15の波高さを部分的に低くすることによって、より安定した接合を得ることができる。
【0023】
なお、本実施の形態に係るプレート熱交換器における波15の波高さを均一にしなくてもよい構成を、実施の形態2に適用することもできる。
【0024】
実施の形態4.
本実施の形態に係るプレート熱交換器について、実施の形態1に係るプレート熱交換器の構成と相違する点を中心に説明する。
【0025】
図4は、本発明の実施の形態4に係るプレート熱交換器の伝熱プレートを積層した状態の断面図である。
実施の形態1においては、シール性を確保するための波16同士の接合部7間の距離である接合間距離13を、伝熱プレートの長手方向において均一にしている構成であったが、本実施の形態に係るプレート熱交換器は、図4で示されるように、接合間距離13を均一に形成しなくてもよい構成としたものである。
【0026】
これによって、例えば、負荷が高くなる通液孔2(図4においては図示せず。図9参照。)近傍の接合間距離13を小さくすることができるため、伝熱面積を広くなるので、伝熱性能が向上すると共に、通液孔2近傍のシール性能を向上させることができる。
【0027】
なお、本実施の形態に係るプレート熱交換器における接合間距離13を均一にしなくてもよい構成を、実施の形態2又は実施の形態3に適用することもできる。
【0028】
実施の形態5.
本実施の形態に係るプレート熱交換器について、実施の形態1又は実施の形態2に係るプレート熱交換器の構成と相違する点を中心に説明する。
【0029】
図5は、本発明の実施の形態5に係るプレート熱交換器の伝熱プレートを積層した状態の断面図である。
実施の形態1及び実施の形態2においては、伝熱プレートの長手方向においてシール性能を確保するための波16間に、伝熱面積を向上するための波15を同数個形成する構成であったが、本実施の形態に係るプレート熱交換器は、図5で示されるように、シール性能を確保するための波16間に、伝熱面積を向上させるための波15の個数を同数としなくてもよい構成としたものである。
【0030】
これによって、安定した接合が必要となる箇所において、部分的に伝熱面積を向上させるための波15の個数を多くすることによって、波15の個数が少ない場合よりも伝熱面の曲げ剛性が小さくなり、波16の安定した接合を得ることができる。
【0031】
なお、本実施の形態に係るプレート熱交換器における伝熱面積を向上させるための波15の個数を同数としなくてもよい構成を実施の形態4に適用することもできる。
【0032】
実施の形態6.
本実施の形態に係るプレート熱交換器について、実施の形態1又は実施の形態2に係るプレート熱交換器の構成と相違する点を中心に説明する。
【0033】
図6は、本発明の実施の形態6に係るプレート熱交換器の伝熱プレートを積層した状態の断面図である。
実施の形態1及び実施の形態2においては、伝熱プレートの長手方向においてシール性能を確保するための波16間のそれぞれに、伝熱面積を向上させるための波15を形成する構成であったが、本実施の形態に係るプレート熱交換器は、図6で示されるように、部分的に波16間に、伝熱面積を向上させるための波15を形成しなくてもよい構成としたものである。
【0034】
これによって、圧力試験時等に負荷が高くなる通液孔2(図6においては図示せず。図9参照。)近傍等において、伝熱面積を向上させるための波15を設けずに、接合間距離13を短くすることによって、シール性能を向上させたプレート熱交換器を得ることができる。
【0035】
なお、本実施の形態に係るプレート熱交換器における部分的に波16間に波15を形成しなくてもよい構成を、実施の形態3〜実施の形態5に適用することもできる。
【0036】
実施の形態7.
本実施の形態に係るプレート熱交換器について、実施の形態1に係るプレート熱交換器の構成と相違する点を中心に説明する。
【0037】
図7は、本発明の実施の形態7に係るプレート熱交換器の波16の構造の例を示す図である。このうち、図7(a)は、本実施の形態に係るプレート熱交換器の伝熱プレート3(又は伝熱プレート4)を示す図であり、図7(b)は、伝熱プレート3及び伝熱プレート4を積層し、図7(a)で示される太線の波16における接合部12を示す図であり、そして、図7(c)は、図7(b)のA方向から見た波16の形状の例を示す図である。
【0038】
伝熱プレートのシール性能を確保するための同一の波16の波高さは稜線方向に均一でなくてもよく、例えば、図7(c)で示される波16のように頂部に突起部16aを形成させるものとしてもよい。
【0039】
以上のように、シール性能を確保するための波16の頂部のうち、接合部12でのみ波高さを高くすることによって、より安定した接合を得ることができる。
【0040】
なお、図7(c)で示される伝熱プレートの波16における突起部16aの構成は、例示であり、接合部12でのみ波高さが高くなるように、すなわち、接合する伝熱プレート側に向けて凸形状となるようにすればよい。また、このような波16に接合する、隣接する伝熱プレートにおける波16についても、図7(c)で示されるような構造としなくてもよく、接合する波16のうち少なくとも一方が図7(c)で示されるような構造を有していればよい。
【0041】
また、本実施の形態に係るプレート熱交換器におけるシール性能を確保するための波16の頂部のうち接合部12でのみ波高さを高くする構成を、実施の形態2〜実施の形態6に適用することもできる。
【0042】
実施の形態8.
本実施の形態においては、実施の形態1〜実施の形態7に係るプレート熱交換器の製造方法について説明する。
【0043】
一般に、プレス加工機におけるプレス圧力が高いと、その金型の劣化は早くなる。また、成型面積が大きい金型、及び、起伏の激しい金型については、高いプレス圧力が必要となる場合が多く、金型のメンテナンス頻度が高くなることがある。
【0044】
そこで、本実施の形態においては、2回のプレス加工によって実施の形態1〜実施の形態7に係るプレート熱交換器の伝熱プレートを成型する。まず、最初のプレス加工によって、波高さが均一の波15に相当する波形状の伝熱プレートを成型する。次に、2回目のプレス加工(再プレス)によって、シール性能を確保するための波16に相当する波形状を成型し、元の波15に相当する波形状よりも高い波形状を成型する。
【0045】
以上のようなプレス加工によって、最初のプレス加工用の金型が劣化して、成型される波形状の波高さの精度が低くなった場合においても、再プレスによって調整することができ、波16の波高さを精度よく成型することができる。また、再プレスは部分的なプレス加工であるため、最初のプレス加工よりもプレス圧力を小さくすることができ、再プレス用の金型の劣化がしにくくなるため、トータルの金型のメンテナンスの頻度を少なくすることができる。
【0046】
実施の形態9.
本実施の形態に係るプレート熱交換器について、実施の形態1に係るプレート熱交換器の構成と相違する点を中心に説明する。
【0047】
図8は、本発明の実施の形態9に係るプレート熱交換器の伝熱プレートを積層した状態の断面図である。
実施の形態1においては、シール性能を確保するための波16間に、波16よりも波高さの低い波15を形成して伝熱プレートを積層し、波16同士を接合部7において接合させる構成としたものである。これに対し、本実施の形態に係るプレート熱交換器は、図8で示されるように、伝熱プレートの伝熱面1に形成される波の波高さは均一となるように形成し、接合させる一部の波同士の間に接合部材18を挟み込んで接合させて積層したものである。この場合、接合部材18によって接合されない波は、実施の形態1〜実施の形態7に係るプレート熱交換器の波15に相当する役割を果たすことになる。
【0048】
これによって、実施の形態8で示したような波16を成型するための再プレス工程が省略できるため、金型作製費用及び工数の削減を図ることができる。
【0049】
なお、本実施の形態に係るプレート熱交換器における接合部材18を挟み込んで波同士を接合させ積層させた構成は、実施の形態2〜実施の形態7に適用することもできる。
【0050】
実施の形態10.
本実施の形態においては、実施の形態1〜実施の形態7に係るプレート熱交換器の製造方法について説明する。
【0051】
実施の形態8において前述したように、一般に、プレス加工機におけるプレス圧力が高いと、その金型の劣化は早くなる。また、成型面積が大きい金型、及び、起伏の激しい金型については、高いプレス圧力が必要となる場合が多く、金型のメンテナンス頻度が高くなるという問題がある。
【0052】
そこで、本実施の形態において、2回のプレス加工によって実施の形態1〜実施の形態7に係るプレート熱交換器の伝熱プレートを成型する。まず、最初のプレス加工によって、波高さが均一の波16に相当する波形状の伝熱プレートを成型する。次に、2回目のプレス加工(再プレス)によって、最初のプレス加工によって成型した波の一部を押し潰して、波16よりも波高さが低い波15に相当する波形状を成型する。
【0053】
以上のようなプレス加工のように、再プレスは部分的なプレス加工であるため、最初のプレス加工よりもプレス圧力を小さくすることができ、再プレス用の金型の劣化がしにくくなるため、トータルの金型のメンテナンスの頻度を少なくすることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 伝熱面、2 通液孔、3、4 伝熱プレート、5 山部、6 谷部、7 接合部、8 接合間距離、9 波高さ、10 波ピッチ、11 ギャップ、12 接合部、13 接合間距離、14 許容接合間距離、15、16 波、16a 突起部、17 穴、18 接合部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略平板状の伝熱プレートが複数枚積層され、該伝熱プレート間に冷媒が流通する冷媒流路が形成され、該冷媒流路は2種類の冷媒が交互に流通するように形成されたプレート熱交換器において、
前記複数の伝熱プレートは、
波状部が形成された伝熱面を有し、
該伝熱面において、波高さが異なるように複数の前記波状部が形成され、
波高さの高い波状部同士を接合し、波高さの低い波状部同士は接合させない
ことを特徴とするプレート熱交換器。
【請求項2】
同一の前記伝熱プレートにおいて、前記波高さの高い波状部同士の間に存在する前記波高さの低い波状部は、1つ以上形成された
ことを特徴とする請求項1記載のプレート熱交換器。
【請求項3】
同一の前記伝熱プレートにおいて、前記波高さの低い波状部の波高さを不均一にした
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のプレート熱交換器。
【請求項4】
隣接する前記伝熱プレートの前記波高さの高い波状部同士が接合される接合部の間隔を不均一にした
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のプレート熱交換器。
【請求項5】
同一の前記伝熱プレートにおいて、部分的に前記波高さの高い波状部同士の間に、前記波高さの低い波状部を形成しない構成とした
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のプレート熱交換器。
【請求項6】
隣接する前記伝熱プレートのうち少なくとも一方が、前記波高さの高い波状部の接合部における波高さを、接合先である前記伝熱プレートに向けて凸形状となるように形成された
ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のプレート熱交換器。
【請求項7】
前記伝熱面において、前記波状部の稜線形状が前記伝熱プレートの長手方向の一方向側に凸形状となるように形成され、
前記複数の伝熱プレートは、前記波状部の稜線形状の凸方向が交互に反転するように積層された
ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のプレート熱交換器。
【請求項8】
略平板状の伝熱プレートが複数枚積層され、該伝熱プレート間に冷媒が流通する冷媒流路が形成され、該冷媒流路は2種類の冷媒が交互に流通するように形成されたプレート熱交換器において、
前記複数の伝熱プレートは、
波状部が形成された伝熱面を有し、
該伝熱面において、波高さが略均一となるように複数の前記波状部が形成され、
形成された複数の前記波状部のうち一部を、接合部材を介して、隣接する前記伝熱プレートの前記伝熱面の前記波状部と接合させた
ことを特徴とするプレート熱交換器。
【請求項9】
前記伝熱面において、前記波状部の稜線形状が前記伝熱プレートの長手方向の一方向側に凸形状となるように形成され、
前記複数の伝熱プレートは、前記波状部の稜線形状の凸方向が交互に反転するように積層された
ことを特徴とする請求項8記載のプレート熱交換器。
【請求項10】
前記伝熱プレートの前記伝熱面に波高さが略均一となるように、前記波状部をプレス加工によって成型する工程と、
成型された前記波状部のうち一部の波高さが高くなるようにプレス加工によって前記波高さの高い波状部を成型する工程と、
を有した
ことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載のプレート熱交換器の製造方法。
【請求項11】
前記伝熱プレートの前記伝熱面に波高さが略均一となるように、前記波状部をプレス加工によって成型する工程と、
成型された前記波状部のうち一部の波高さが低くなるように押し潰すプレス加工を実施して、前記波高さの低い波状部を成型する工程と、
を有した
ことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載のプレート熱交換器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−154594(P2012−154594A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15971(P2011−15971)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)