説明

プレート積層体とその製造方法

【課題】流路を層状に備える熱交換器において、層状とされた各流路のシール性を確保しつつ積層済みプレート接合の際の押圧の簡便化する。
【解決手段】熱交換器100は、サイドプレート130とサイドプレート140で、プレート積層体のプレートユニット110を取り囲み、プレートユニット110の最上層プレート112と最下層プレート115の間の複数の中間プレート116にて、多列の流路150を層状に有する。両サイドプレートはプレートユニット110の側に凸のプレート側凸部132、142を備え、このプレート側凸部132、142は、プレートユニット110における最上層プレート112と最下層プレート115と干渉して、プレート押圧時のストッパとして機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溝を有するプレートを複数枚積層して溝を閉鎖した流路を備えるプレート積層体とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
こうしたプレート積層体は、熱交換する熱交換器として多用され、こうした熱交換器は、重なり合ったプレート(例えば上下のプレート)で閉鎖された溝を流路としてそれぞれのプレートにおいて多列の流路を形成する。熱交換器は、ある層の流路に高温流体を流し、当該ある層の上下の層の流路に低温流体を流すことで、上下の層の流路を通過する流体の熱交換を行う(例えば、特許文献1等)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−262489号公報
【特許文献2】特開2007−15872号公報
【0004】
これら特許文献で提案された熱交換器はもとより、一般的な熱交換器にあっては、流路のシール性に積層済みプレート同士の接合固定が大きな影響を与える。その上、流路は多列であることから、プレート同士の接合固定は、プレート端部のみならず、プレートの中央領域においても必要とされる。その一方、複数のプレートを一枚ずつ接合固定しながら積層するのでは、生産性に欠ける。こうした理由から、熱交換器の製造に際しては、予めプレートを積層し、その積層した状態でプレートの接合固定、具体的には、接合箇所に銀ロウを付けた上でプレートを積層し、その積層方向に押圧した上で、銀ロウを溶融させたり、積層済みのプレートを押圧した上でプレート相互の接合箇所を拡散接合させるといった接合処理が取られている。
【0005】
積層済みプレートにこうした接合処理を施す場合、重なり合うプレート同士の接合箇所のシール性を確保するため、無負荷の積層済みプレートの積層寸法が縮むよう押圧されている。ところが、この押圧力が不用意に過大となると、溝を多列に有するプレートにおいて溝間の凸条の座屈や変形を招きかねない。その一方、押圧力が不足するとシール性確保の信頼性が低下しかねない。このため、煩雑な押圧力制御が求められているのが実情である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、流路を層状に備える熱交換器についての上記した問題点を解決するためになされ、層状とされた各流路のシール性確保と積層済みプレート接合の際の押圧の簡便化との両立を図ることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的の少なくとも一部を達成するために、本発明では、以下の構成を採用した。
【0008】
[適用1:プレート積層体の製造方法]
溝を有するプレートを複数枚積層し、重なり合うプレートと前記溝とにより形成された流路を備えるプレート積層体の製造方法であって、
複数枚の前記プレートを積層する積層工程と、
該積層された積層済みプレートの端部を複数枚のプレートに亘って積層方向に沿うように側壁を配置する配置工程と、
前記積層済みプレートを前記積層方向に押圧して、重なり合うプレートを接合する押圧接合工程とを備え、
前記側壁は、前記押圧が所定量以上進むことを抑制するストッパを備える
ことを要旨とする。
【0009】
この場合、前記側壁を、前記積層済みプレートの端部の側の壁面に凸とされたプレート側凸部を前記ストッパとして備えるものとできる。
【0010】
[適用2:プレート積層体]
溝を有するプレートを複数枚積層して重なり合うプレートを接合固定し、該接合したプレートの間で前記溝を閉鎖して流路を形成するプレート積層体であって、
前記プレート積層体の側面に複数枚のプレートに亘って積層方向に沿って対面する側壁を備え、
該側壁は、前記プレート積層体の側の壁面に凸のプレート側凸部を備え、該プレート側凸部を前記プレート積層体における一端側プレートと他端側プレートとに干渉するストッパとする
ことを要旨とする。
【0011】
上記したプレート積層体では、溝を有するプレートを複数枚積層した積層済みプレートにおける重なり合ったプレートと溝とにより流路を形成するに当たり、積層済みプレートを積層方向に押圧して、重なり合うプレートを接合し、溝を閉鎖された流路とする。そして、こうしたプレートの押圧に際しては、側壁を積層済みプレートの端部に配置して、この側壁を複数枚のプレートに亘って積層済みプレート端部に積層方向に沿わせるので、側壁は積層済みプレートの端部(側面)に対面する。この側壁は、押圧が所定量以上進むことを抑制するストッパを備えるので、無負荷の積層済みプレートの積層寸法が縮むよう押圧したとしても、この積層寸法の縮みは上記したようにストッパで制限される。よって、押圧を受ける積層済みプレートは、仮に押圧力が過大であったとしても、側壁が有するストッパで制限された分の積層寸法の縮みを起こした状態で接合固定されることになる。つまりは、プレート押圧をストッパにより抑制されるまで進めれば足りることになる。この結果、接合固定による流路のシール性を確保できると共に、プレート押圧も簡便となる。
【0012】
上記したプレート積層体を熱交換器として適用する際には、熱交換器では流路を層状に有することがあることから、多列の溝を有するプレートを積層して、前記多列の溝を形成する凸条の頂上面を対向するプレートに接合させ、この積層済みプレートを押圧して凸条頂上面をプレートに接合固定することになる。これにより、多列の溝がそれぞれ閉鎖されて流路となり、流路が層状に形成される。
【0013】
また、側壁がストッパとして既述したプレート側凸部を備えるものとすれば、この前記プレート側凸部は、前記積層方向に沿った前記押圧に伴って前記積層済みプレートにおける一端側プレートと他端側プレートとが前記積層方向に接近する際に前記一端側プレートと前記他端側プレートに干渉する。この一端側プレートと他端側プレートは、それぞれ単一のプレートとできるほか、両端側における複数枚のプレートであってもよい。
【0014】
このように、プレート積層体では、側壁を積層済みプレートの側面と対面させた上で、プレート側凸部はストッパとして一端側プレートと他端側プレートとに干渉する。このため、積層済みプレートを、前記多列の溝を形成する凸条の頂上面とプレートとを接合させた上でその接合固定のために積層方向に沿って押圧するに当たり、無負荷の積層済みプレートの積層寸法が縮むよう押圧したとしても、この積層寸法の縮みは上記したようにストッパとして機能するプレート側凸部で制限される。よって、押圧を受ける積層済みプレートは、仮に押圧力が過大であったとしても、側壁が有するこのプレート側凸部で制限された分の積層寸法の縮みを起こした状態で接合固定されることになる。つまりは、一端側プレートと他端側プレートとがプレート側凸部に干渉するまで押圧すれば足りることになる。この結果、接合固定による流路のシール性を確保できると共に、プレート押圧も簡便となる。
【0015】
上記したプレート積層体は、次のような態様とすることができる。例えば、前記プレート側凸部を側壁から積層済みプレートの側に凸とするに当たり、このプレート側凸部を前記プレート積層方向に沿って前記側壁の一端側から他端側にかけて延在するようにできる。こうすれば、側壁の一端側と他端側において、側壁エッジを切り欠くだけで、側壁の一端側から他端側にかけて凸のプレート側凸部を容易に形成できる。しかも、このプレート側凸部は、側壁の一端側から他端側にかけて延在して連続していると共に、積層済みプレートに対しては側壁と同じような対面幅となることから、積層プレートの押圧力に確実に抗することができ、ストッパとしての信頼性が高まる。つまりは、押圧力が過大である場合の積層済みプレートの積層寸法の不用意な縮み回避の実効性が高まる。
【0016】
また、このプレート側凸部を、前記側壁の一端側から他端側にかけて形成された複数筋の凸条とすることもできる。それぞれの凸条は側壁の一端側から他端側にかけて連続していることから、この態様では複数筋の凸条で積層プレートの押圧力に抗することができる。また、複数筋の凸条とした分、側壁の軽量化が可能である。
【0017】
このように複数筋の凸条を形成する場合、前記積層済みプレートを取り囲んで対向する前記側壁の一方の前記側壁は、前記プレート側凸部としての前記凸条を二筋備え、前記対向する他方の前記側壁は、前記プレート側凸部としての前記凸条を一筋備えるようにすることもできる。こうすれば、一端側プレートと他端側プレートは、一方の側壁における二筋の凸条と他方の側壁における一筋の凸条の3カ所で支えられることから、押圧時において両端側プレートを不用意に傾斜させたりすることがない。特に、前記他方の前記側壁の前記一筋の前記凸条を、前記一方の前記側壁が有する前記二筋の前記凸条の間に位置するようにすれば、一端側プレートと他端側プレートをバランスよく3カ所の凸条で支えることができ、好ましい。
【0018】
また、このように複数筋の凸条を形成する場合、前記一端側プレートと前記他端側プレートとで挟まれた複数のプレートを、前記プレート側凸部として形成された前記凸条が入り込む凹所をプレートの積層方向に沿って備えるものとする。そして、重なり合うプレートの接合固定にロウ材を用いるようにすれば、用いられたロウ材は、プレートの接合箇所からはみ出して空隙に達してフィレットを形成し、このフィレットは、プレートの積層方向に沿って連続するようになる。このため、プレート端部側の溝が閉鎖されて形成された流路において、流体が通過する際の流体の漏れを抑制できる。
【0019】
また、前記プレート側凸部を前記積層済みプレートの側に凸とするに当たり、その凸の程度を、前記プレート側凸部を含む前記側壁としての厚みの10%以下の突出高さとすれば、積層済みプレートをその積層方向に沿って押圧する際の押圧力がプレート側凸部を経て側壁に作用する面積を小さくできるので、この押圧力による側壁自体の変形を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。図1は本発明の実施例としての熱交換器100の概略構成を示す斜視図、図2はこの熱交換器100を分解して説明するための説明図である。
【0021】
図示するように、熱交換器100は、プレートユニット110の両側にサイドプレート130、140を備える。プレートユニット110は、プレートの積層体であり、最上層プレート112と最下層プレート115との間に、中間プレート116を複数枚積層して備える。そして、この熱交換器100は、プレートユニット110において重なり合った上下のプレートの間に流路150を多列に形成し、この多列の流路150を層状に有する。
【0022】
図2に示すように、最上層プレート112は、多列の溝113を備え、これら溝を形成するため、両サイドには凸条114sを、溝間には凸条114cを備える。中間プレート116のそれぞれは、多列の溝117を備え、これら溝を形成するため、両サイドと溝間にほぼ同じ形状の凸条118を備える。この場合、最上層プレート112と最下層プレート115は、中間プレート116より幅広とされており、その分、最上層プレート112の両サイドの凸条114sは溝間の凸条114cより凸幅が広くなっている。そして、最下層プレート115とその上の中間プレート116の上下のプレートで、上下の中間プレート116同士で、最上層プレート112とその下の中間プレート116の上下のプレートで、中間プレート116が有する溝117と最上層プレート112が有する溝113を閉鎖して既述した流路150とする。こうした流路形成に際しては、それぞれのプレートにおける上記の凸条の頂上面は、対向するプレートに後述するように接合固定される。
【0023】
このプレートユニット110の一方のサイドプレート130は、他方側のサイドプレート140と共に、プレートユニット110をプレート積層方向に沿って取り囲み、このプレートユニット110の側面と対面する。サイドプレート130とサイドプレート140は、左右の違いはあるものの同一の構成であるので、以下、サイドプレート130について説明する。
【0024】
サイドプレート130は、プレートユニット110の側の上下端に切欠131を備え、プレートユニット110の側の壁面を、凸のプレート側凸部132としている。このプレート側凸部132は、図2に示すように、プレートユニット110のプレート積層方向に沿ってサイドプレート130の上端側から下端側にかけて切欠131により形成されている。そして、このプレート側凸部132は、その上下の切欠131に最上層プレート112の凸条114sと最下層プレート115が係合することで、プレートユニット110における最上層プレート112と最下層プレート115とに干渉するストッパとして機能している。
【0025】
本実施例では、図2に示すように、プレート側凸部132の突出高さWaを、このプレート側凸部132を含むサイドプレート130全体の厚みWbの10%以下、好ましくは3〜10%とした。また、プレート側凸部132の高さ寸法hは、最上層プレート112と所定枚数の中間プレート116と最下層プレート115とを積層しただけで無負荷の状態のプレートユニット110における中間プレート116の積層高さ寸法より、小さくされている。しかも、このプレート側凸部132の高さ寸法hは、これらプレートを後述するように押圧しつつ接合固定する場合にその接合固定の機能(シール機能)が十分発揮できるまでプレート押圧を実施する際のプレートの積層寸法の縮みを考慮して、定められている。換言すれば、上記したようにプレート側凸部132が最上層プレート112と最下層プレート115とに干渉してストッパとして機能するまでプレート押圧を行えば、その押圧の間に実施される接合処理手法(本実施例では、銀ロウ付け)で得られた接合固定で十分なシール性を発揮できることになる。
【0026】
上記した熱交換器100は、多列の流路150が層状に上下に重なったその上下の層の一方の層の多列の流路150に高温流体を流し、他方の層の多列の流路150に低温流体を流すことで、上下の層の流路を通過する流体の熱交換を行う。つまり、溝113を有する最上層プレート112や、溝117を有する中間プレート116を、熱交換の伝熱プレートとする。本実施例では、伝熱性および耐久性を考慮して、上記の各伝熱プレートを金属製プレート、詳しくはステンレス製のプレートとした。
【0027】
次に、上記した熱交換器100の製造工程について説明する。図3は熱交換器100の製造工程を示す工程図、図4は熱交換器製造工程におけるプレート積層の様子を示す説明図、図5は熱交換器製造工程におけるプレート押圧の様子を示す説明図、図6は熱交換器製造工程を経た熱交換器100を端面視して示す説明図である。
【0028】
図3に示すように、まず、伝熱プレートを準備する(ステップS100)。具体的には、溝113を有する最上層プレート112と、溝117を有する所定枚数の中間プレート116と、最下層プレート115とを準備する。次に、準備した上記の各伝熱プレートを、図4に示すように、離間するよう退避位置にあるサイドプレート130とサイドプレート140との間において、最下層プレート115、中間プレート116および最上層プレート112の順に順次積層する(ステップS110)。このプレート積層に際しては、上下のプレートにおいて接合し合う箇所、具体的には、最上層プレート112における凸条114sと凸条114cの頂上面、中間プレート116における凸条118の頂上面に銀ロウが予め塗布される。或いは、ステップS100において、凸条頂上面に銀ロウ塗布済みの上記各伝熱プレートを準備して、これを積層する。このステップS110のプレート積層を経ると、積層された上下のプレートにおいて、上側のプレート(最上層プレート112または中間プレート116)の凸条、具体的には凸条114sと凸条114cおよび凸条118の頂上面は、これに対向する下側のプレート(中間プレート116または最下層プレート115)に接合する。この場合、各凸条は、塗布済みの銀ロウを介在させた状態で、プレートに接合する。
【0029】
次いで、サイドプレート130とサイドプレート140とをプレート積層済みのプレートユニット110の側に図示しないプレート保持ジグにより前進させる(ステップS120)。これにより、上記の両サイドプレートは、プレート積層済みのプレートユニット110を取り囲んで、プレート側凸部132およびプレート側凸部142の前面をプレートユニット110の側面と対面させる。本実施例では、プレート側凸部132およびプレート側凸部142の前面とプレートユニット110の側面とが接触するまで、上記の両サイドプレートを前進させた。
【0030】
次に、図5に示すように、両サイドプレートで上記のように取り囲んだ状態のプレートユニット110を、その上下面から押圧しつつ塗布済みの銀ロウが溶融する温度環境下に置く接合処理に処する(ステップS130)。この接合処理におけるプレート押圧によって、プレートユニット110を構成する各プレート、即ち、溝を有する最上層プレート112と中間プレート116は、それぞれの凸条にて支えられていることから、この凸条の高さが縮むよう寸法縮みを起こすので、プレートユニット110としてもその積層寸法の縮みを起こす。このプレートユニット110としての積層寸法縮みは、凸条で支えられた最上層プレート112と中間プレート116の各プレートでの凸条の高さ寸法の縮の総和となる。
【0031】
こうして押圧に伴う積層寸法縮みが起きると、図6に示すように、最上層プレート112と最下層プレート115とは、サイドプレート130とサイドプレート140が有するプレート側凸部132およびプレート側凸部142の上下端に当接して干渉する。よって、この両プレート側凸部がストッパとして機能するので、プレートユニット110の積層寸法の縮みは制限される。そして、こうしてプレートユニット110の積層寸法の縮みが制限されて押圧された状態で、プレートユニット110の各伝熱プレート、具体的には、最上層プレート112とその下方の中間プレート116は、最上層プレート112が有する凸条114cの頂上面と凸条114sの頂上面とで接合し、この頂上面に塗布済みの銀ロウの溶融およびその後の冷却工程(ステップS140)を経て接合固定される。上下に重なった中間プレート116同士と最下層プレート115とその上方の中間プレート116では、上側の中間プレート116が有する凸条118の頂上面で接合し、この頂上面に塗布済みの銀ロウの溶融およびその後の冷却工程(ステップS140)を経て接合固定される。
【0032】
上記のステップS130の接合処理後の冷却工程(ステップS140)では、プレートユニット110を、押圧したままの状態で銀ロウが固化するまで冷却する。そして、銀ロウ冷却後には、それまでサイドプレート130とサイドプレート140を前進させていた図示しないプレート保持ジグを退避させる。これにより熱交換器100の製造工程を終了する。
【0033】
以上説明したように、本実施例では、熱交換器100を製造する上で、プレートユニット110をサイドプレート130とサイドプレート140で取り囲み、両サイドプレートが有するプレート側凸部132とプレート側凸部142とを、プレート押圧の際のストッパとして機能させて、プレート押圧に伴うプレートユニット110の積層寸法の縮みを制限した。しかも、この積層縮みを制限する上記の両プレート側凸部の高さ寸法hを規定する際には、最上層プレート112と最下層プレート115とが両プレート側凸部に干渉するまでプレートユニット110を押圧して接合処理(本実施例では、銀ロウ付け)を行えば、その接合固定で十分なシール性を発揮できるようにした。このため、プレートユニット110の押圧に際しては、そのプレート押圧を、最上層プレート112と最下層プレート115とが両プレート側凸部に干渉するよう行えば足りるので、押圧力の特段の制御が不要となる。この結果、本実施例によれば、多列の流路150を層状に有する熱交換器100における流路のシール性をプレート押圧下での銀ロウ付けという接合処理にて容易に確保できると共に、プレート押圧の簡便化も図ることができる。
【0034】
また、サイドプレート130とサイドプレート140とにおいて、それぞれのプレート側凸部132とプレート側凸部142とを、プレートユニット110におけるプレート積層方向に沿って各サイドプレートの一端側から他端側(即ち上端側から下端側)にかけて延在するものとした。よって、図2に示すように、両サイドプレートの上下端に切欠131、141を形成するだけで、サイトプレートの上端から下端にかけて延在するプレート側凸部132、142を容易に形成できる。
【0035】
しかも、このプレート側凸部132、142は、サイトプレートの上端から下端にかけて延在して連続していると共に、プレートユニット110に対してはサイドプレート130、140と同じ対面幅となることから、プレートユニット110を押圧する際の押圧力に確実に抗することができる。このため、プレート側凸部132、142のストッパとしての信頼性が高まるので、プレート押圧力が過大である場合のプレートユニット110の積層寸法の不用意な縮み高い実効性で回避できる。
【0036】
更に、上記両サイドプレートのプレート側凸部132とプレート側凸部142は、その前面を、プレートユニット110の側面に接触させて対面させている。このため、プレートユニット110の押圧時においてその押圧力により中間プレート116に座屈が起きようとしても、このプレート座屈を高い実効性で抑制できる。
【0037】
また、本実施例では、上記両サイドプレートにプレート側凸部132とプレート側凸部142を形成するに当たり、図2に示すように、その突出高さWaを、プレート側凸部を含むサイドプレート全体の厚みWbの10%以下(好ましくは3〜10%)とした。このため、上記両プレート側凸部が既述したようにプレート押圧時のストッパとして機能する際にプレート側凸部132、142がプレート押圧力を受ける面積が狭くなるので、プレート押圧力によるプレート側凸部、延いてはこれを有するサイドプレート自体の変形を効果的に抑制できる。この結果、サイドプレート130とサイドプレート140とを含む熱交換器100としての形状変形が起きないようにできる。
【0038】
次に、他の実施例について説明する。図7は他の実施例の熱交換器100Aの概略構成を分解して説明するための説明図、図8は最上層プレート112を取り去った状態の熱交換器100Aを平面視して示す説明図である。図示するように、この熱交換器100Aは、プレート押圧時のストッパとして機能するプレート側凸部をプレート上端から下端にかけた複数筋の凸条とした点に特徴がある。
【0039】
つまり、サイドプレート130Aは、その上端から下端側にかけて凸の凸条133を二筋備える。図8に示すように、他方のサイドプレート140Aも同様であり、両サイドプレートの二筋の凸条133と凸条143は向かい合うようにされている。つまり、プレートユニット110の最上層プレート112と最下層プレート115は、両サイドプレートの二筋の凸条133と凸条143により4カ所で係合する。そして、凸条の延在範囲において積層されることになる中間プレート116Aは、凸条133、143が入り込む凹所120を備える。図9はサイドプレート130Aと中間プレート116Aの係合の様子を斜視にて示す説明図、図10はサイドプレート130Aと中間プレート116Aの係合の様子を平面視と断面視にて示す説明図である。
【0040】
中間プレート116Aの凹所120は、その凹の幅が凸条より広くされ、凹の深さは凸条の突出高さと同じにされている。よって、サイドプレート130Aとサイドプレート140Aでプレートユニット110を取り囲んだ場合、図10に示すように、凸条133の頂上面は凹所120の底面に当接し、凸条133の左右には空隙122が形成される。
【0041】
上記したように、二筋の凸条133を有するサイドプレート130Aと二筋の凸条143を有するサイドプレート140Aにてプレートユニット110を既述したように取り囲み、その状態でプレートユニット110の押圧を行うことで、熱交換器100が得られる。この実施例にあっても両サイドプレートが有する凸条133と凸条143は、既述したプレート側凸部132、142と同様、プレートユニット110の押圧時において、最上層プレート112と最下層プレート115に干渉してストッパとして機能する。よって、熱交換器100Aにあっても、上記した効果(流路のシール性確保とプレート押圧の簡略化)を奏することができる。
【0042】
また、サイドプレート130A、140Aは、凸条の凸条133、143をそれぞれ二筋有するに過ぎないので、サイドプレート、延いては熱交換器100Aの軽量化を図ることができる。
【0043】
また、次のような利点もある。図10に示すように、上下に重なり合う中間プレート116Aにおいては、凹所120の形成側の凸条118の頂上面とプレートとの間は図中太線で示すように銀ロウ塗布箇所GRとなる。この銀ロウ塗布箇所GRの銀ロウは、押圧下での溶融により銀ロウ塗布箇所GRから凸条133両側の空隙122にはみ出して流れ出る。こうして空隙122に流れ出た銀ロウは、溶融状態では空隙122のコーナ部に貯まるので、その後の冷却により図10(A)に黒塗りで示すように空隙コーナにフィレットを形成する。このフィレットは、図10(A)における紙面を貫く方向、即ちプレートの積層方向に繋がって連続するので、中間プレート116Aの端部側の溝117が閉鎖された流路を流体が通過する際の漏れを抑制することができる。
【0044】
次に、凸条を有するサイドプレートの変形例について説明する。図11は図8相当図であり変形例のサイドプレートを用いた熱交換器100Aを平面視して示す説明図、図12はまた別の変形例のサイドプレートを用いた熱交換器100Aを平面視して示す説明図である。図11に示す熱交換器100Aのサイドプレート130Aは、一筋の凸条133を備え、図12ではサイドプレート130Aは一筋の凸条133をサイドプレート140Aが有する二筋の凸条143の間に位置させている。これら変形例では、プレートユニット110の最上層プレート112と最下層プレート115を、サイドプレート130Aの側の一筋の凸条133とサイドプレート140Aの側の二筋の凸条143の3カ所で支えられることから、プレート押圧時において上記両プレートを不用意に傾斜させたりすることがない。特に、図12に示す変形例では、最上層プレート112と最下層プレート115をバランスよく3カ所の凸条で支えることができ、好ましい。
【0045】
なお、本発明は上記した実施例や変形例の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様にて実施することが可能である。例えば、プレートユニット110においては、最上層プレート112と最下層プレート115とをその間の中間プレート116より幅広とし、この幅広の最上層プレート112と最下層プレート115とをプレート側凸部132にて支えるようにしたが、最上層プレート112の下方の中間プレート116を最上層プレート112と同じ幅広として、最上層プレート112とその下方の中間プレート116とをプレート側凸部132で支えるようにすることもできる。最下層プレート115とその上方の中間プレート116についても同様である。
【0046】
また、プレート側凸部132や凸条133をプレートユニット110のプレート積層方向に延在するようにしたが、次のようにすることもできる。図13はまた別の変形例の熱交換器100Bを説明するための説明図である。図示するように、この熱交換器100Bでは、サイドプレート130Bは、その上下端側に、凸条135をプレートユニット110Bのプレート積層方向と交差する方向に有する。上下の凸条135は、プレートユニット110Bの側に凸であることから、既述したプレート側凸部132や凸条133と同様に、最上層プレート112と最下層プレート115をプレート押圧時に支えるストッパとして機能する。よって、この変形例にあっても既述した効果を奏することができる。この場合、上下の凸条135の形成に当たっては、サイドプレート上端側の凸条135の上端面とプレート下端側の凸条135の下端面との間隔が、既述したプレート側凸部132の高さ寸法hとなるようにされている。また、凸条135の凸幅は、プレートを押圧に抗して支えるストッパとして機能が発揮できる幅とされている。
【0047】
更に、図7では、二筋の凸条133を有するサイドプレート130Aについて説明したが、凸条133を三筋以上有するようにすることもできる。
【0048】
また、上記した実施例ではプレートの積層方向を上下方向としたが、プレートを水平方向に積層して用いる熱交換器についても適用できる。この他、プレートの接合固定に用いるロウ材として銀ロウ以外に種々のものが使用できると共に、拡散接合手法にて重なり合うプレート、詳しくは凸条頂上面とプレートとの接合固定を行うようにすることもできる。
【0049】
また、上記した実施例では、熱交換器としての適用例について説明したが、熱交換器以外の用途に用いられるプレート積層体とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施例の熱交換器100の概略構成を示す斜視図である。
【図2】熱交換器100を分解して説明するための説明図である。
【図3】熱交換器100の製造工程を示す工程図である。
【図4】熱交換器製造工程におけるプレート積層の様子を示す説明図である。
【図5】熱交換器製造工程におけるプレート押圧の様子を示す説明図である。
【図6】熱交換器製造工程を経た熱交換器100を端面視して示す説明図である。
【図7】他の実施例の熱交換器100Aの概略構成を分解して説明するための説明図である。
【図8】最上層プレート112を取り去った状態の熱交換器100Aを平面視して示す説明図である。
【図9】サイドプレート130Aと中間プレート116Aの係合の様子を斜視にて示す説明図である。
【図10】サイドプレート130Aと中間プレート116Aの係合の様子を平面視と断面視にて示す説明図である。
【図11】図8相当図であり変形例のサイドプレートを用いた熱交換器100Aを平面視して示す説明図である。
【図12】また別の変形例のサイドプレートを用いた熱交換器100Aを平面視して示す説明図である。
【図13】変形例の熱交換器100Bを説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0051】
100、100A、100B…熱交換器
110…プレートユニット
110B…プレートユニット
112…最上層プレート
113…溝
114c…凸条
114s…凸条
115…最下層プレート
116…中間プレート
116A…中間プレート
117…溝
118…凸条
120…凹所
122…空隙
130、130A、130B…サイドプレート
131…切欠
132…プレート側凸部
133…凸条
135…凸条
140、140A…サイドプレート
142…プレート側凸部
143…凸条
150…流路
GR…銀ロウ塗布箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝を有するプレートを複数枚積層し、重なり合うプレートと前記溝とにより形成された流路を備えるプレート積層体の製造方法であって、
複数枚の前記プレートを積層する積層工程と、
該積層された積層済みプレートの端部を複数枚のプレートに亘って積層方向に沿うように側壁を配置する配置工程と、
前記積層済みプレートを前記積層方向に押圧して、重なり合うプレートを接合する押圧接合工程とを備え、
前記側壁は、前記押圧が所定量以上進むことを抑制するストッパを備える
ことを特徴とするプレート積層体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプレート積層体の製造方法であって、
前記側壁は、前記積層済みプレートの端部の側の壁面に凸とされたプレート側凸部を前記ストッパとして備え、前記プレート側凸部を、前記積層方向に沿った前記押圧に伴って前記積層済みプレートにおける一端側プレートと他端側プレートとが前記積層方向に接近する際に前記一端側プレートと前記他端側プレートに干渉させる
プレート積層体の製造方法。
【請求項3】
溝を有するプレートを複数枚積層して重なり合うプレートを接合固定し、該接合したプレートの間で前記溝を閉鎖して流路を形成するプレート積層体であって、
前記プレート積層体の側面に複数枚のプレートに亘って積層方向に沿って対面する側壁を備え、
該側壁は、前記プレート積層体の側の壁面に凸のプレート側凸部を備え、該プレート側凸部を前記プレート積層体における一端側プレートと他端側プレートとに干渉するストッパとする
プレート積層体。
【請求項4】
前記プレート側凸部は、前記プレート積層方向に沿って前記側壁の一端側から他端側にかけて延在するよう形成されている請求項3に記載のプレート積層体。
【請求項5】
前記プレート側凸部は、前記側壁の一端側から他端側にかけて形成された複数筋の凸条とされている請求項4に記載のプレート積層体。
【請求項6】
請求項5に記載のプレート積層体であって、
前記積層済みプレートを取り囲んで対向する前記側壁の一方の前記側壁は、前記プレート側凸部としての前記凸条を二筋備え、前記対向する他方の前記側壁は、前記プレート側凸部としての前記凸条を一筋備える
プレート積層体。
【請求項7】
請求項6に記載のプレート積層体であって、
前記他方の前記側壁は、前記一筋の前記凸条を、前記一方の前記側壁が有する前記二筋の前記凸条の間に位置するようにして備える
プレート積層体。
【請求項8】
請求項5ないし請求項7いずれかに記載のプレート積層体であって、
前記一端側プレートと前記他端側プレートとで挟まれた複数のプレートは、前記プレート側凸部として形成された前記凸条が入り込む凹所をプレートの積層方向に沿って備え、該凹所と前記凸条との空隙において、重なり合うプレートの接合固定に用いられたロウ材がプレートの接合箇所からはみ出したフィレットを、前記積層方向に沿って連続するように形成する
プレート積層体。
【請求項9】
請求項3ないし請求項8いずれかに記載のプレート積層体であって、
前記プレート側凸部は、前記プレート側凸部を含む前記側壁としての厚みの10%以下の突出高さで前記積層済みプレートの側へ凸とされている
プレート積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−30890(P2009−30890A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−195880(P2007−195880)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(591160512)金属技研株式会社 (14)