説明

プログラマブルコントローラ

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、プログラマブルコントローラに関し、特に、プログラマブルコントローラのシステムエラー発生時に、独立した各ユニットにおいてシステムエラーの要因を判別し、各ユニットの効率的な運用を図るプログラマブルコントローラに関するものである。
【0002】
【従来の技術】図4は、従来におけるプログラマブルコントローラの構成を示す説明図である。図において、1はシステムに電源を供給する電源ユニット、2は他のユニットを制御するために演算処理を実行する、システムの中枢となるCPUユニット、3はCPUユニット2から入力される指令に基づき外部へON/OFF情報を出力する出力ユニット、4は外部機器(計算機、モニタ装置)と接続し、CPUユニット2との間にて情報の授受動作を行う特殊機能ユニットである。
【0003】また、5は専用回線によりシステム間のデータ通信を行うデータリンクユニット、6は電源ユニット1,CPUユニット2,出力ユニット3,特殊機能ユニット4,データリンクユニット5の各ユニット間を結合するベースユニット、7はCPUユニット2内に設けられ、電源系統からくる電源ダウン予告のエラー信号(電源リセット信号:以下、ΣREL信号という)10とCPU内部で発生するエラー(演算エラー等)信号(以下、CPUERR信号という)11を統合してシステムリセット信号(以下、ΣMRE信号という)12を出力するリセット回路、8は特殊機能ユニット4と接続して情報の授受を実行する外部機器(計算機,モニタ装置等)、9は専用回線を介してデータリンクユニット5とつながるシステム(子局システム)である。また、15はCPUユニット2内に設けられたMPU(マイクロプロセッサ)、16は出力ユニット3内に設けられたラッチ回路、17は特殊機能ユニット4内に設けられたMPU(マイクロプロセッサ)、18は同様に特殊機能ユニット4内に設けられた通信インタフェース、19はデータリンクユニット5内に設けられたMPU(マイクロプロッサ)、20は同様にデータリンクユニット5内に設けられた出力ポートである。
【0004】次に、動作について説明する。システム内において、電源ユニット1がダウンしたり、CPUユニット2において、プログラム実行中に演算エラー等が発生することにより実行不可能となった場合、各々電源ダウン予告として、ΣREL信号10およびCPUERR信号11が発生する。これらの信号はCPUユニット2内のリセット回路7に入力され、回路内で論理和をとってΣMRE信号12として各ユニットへ出力される。
【0005】次に、上記ΣMRE信号を検出した各ユニットでは、各々のリセット処理を実行する。出力ユニット3では、外部出力のラッチ回路16をクリアし、出力全部をOFF状態にする。特殊機能ユニット4にあっては、内部のMPU17のRESET端子にΣMRE信号を接続しており、内部をリセット状態にして外部機器8との交信を中断する。データリンクユニット5にあっては、特殊機能ユニット4と同様にMPU19をリセット状態にするが、伝送系統はリセットされないため、本システムがシステムダウンしたことを他の子局システムは検知でき、本システムをリンク回線より解列してデータリンクを続行する。
【0006】その他、この発明に関連する参考技術文献として特開平2−234241号公報に開示されている「リセット・リトライ回路」、特開平3−172924号公報に開示されている「プリンタ制御方式」がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従来のシステムにあっては、CPUユニット2内で発生するCPUERR信号と電源ユニットからのΣREL信号のうち、どちらかのエラーが発生しても全てΣMRE信号が出力されるため、他のユニットでは、どの要因によりリセットがかかったか判別できない状態でシステムダウンしてしまい、その結果、リセットの要因を判別するのに時間がかかり、システムの復旧に時間がかかってしまうという問題点があった。
【0008】また、システムダウンが発生したときに、他のユニットは自ユニットに影響がない場合であっても自動的にリセットをかけて運転を停止させるため、システムの運用において非効率的であるという問題点もあった。
【0009】この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、システムエラー発生時に他のユニットにてシステムエラーの要因を判別し、その判別結果に基づいてシステム復旧時間を短縮し、自ユニットにおける処理に影響がない場合には、リセットをかけずに運転を続行し、独立した各ユニットの効率的な運用を図ることができるプログラマブルコントローラを得ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】この発明に係るプログラマブルコントローラは、システムに電源を供給する電源ユニットと、プログラム内容を演算/実行するCPUユニットと、前記CPUユニットに接続され、各種機能を実現する機能ユニットとを含むプログラマブルコントローラにおいて、前記CPUユニットは、前記電源ユニットからの電源ダウン予告のエラー信号およびCPUからの、システムダウンさせる必要のあるCPUのエラーか否かを決定する第1のCPUエラー信号の状態に基づいてシステムリセット信号を出力するリセット手段を備え、前記機能ユニットは、前記リセット手段からのシステムリセット信号および前記CPUユニットからの、すべてのCPUのエラーを判断する第2のCPUエラー信号の状態に基づいて処理内容を選択する選択手段を備えたものである。また、この発明に係るプログラマブルコントローラは、システムに電源を供給する電源ユニットと、プログラム内容を演算/実行するCPUユニットと、前記CPUユニットに接続され、各種機能を実現する機能ユニットとを含むプログラマブルコントローラにおいて、前記CPUユニットは、前記CPUからのCPUエラー信号の内容を判断するエラー内容判断手段と、前記電源ユニットからの電源ダウン予告のエラー信号および前記エラー内容判断手段からの、システムダウンさせる必要のあるCPUのエラーか否かを決定する第1のCPUエラー判断信号の状態に基づいてシステムリセット信号を出力するリセット手段とを備え、前記機能ユニットは、前記リセット手段からのシステムリセット信号および前記エラー内容判断手段からの、すべてのCPUのエラーを判断する第2のCPUエラー判断信号の状態に基づいて処理内容を選択する選択手段を備えたものである。また、前記エラー内容判断手段は、入力されたCPUエラー信号に基づいて出力されるCPUエラー判断信号のレベルを任意に調整できるレベル調整手段を備えたものである。また、前記機能ユニットは、前記CPUユニットから入力される指令に基づき外部に対してON/OFF情報を出力する出力ユニットと、外部機器と接続され、前記CPUユニットとの間で情報の授受を行う特殊機能ユニットと、システム間のデータ通信を行うデータリンクユニットとである。
【0011】
【作用】この発明におけるシステムリセット信号(ΣMRE)と、CPUエラー信号(CPUERRL)は、システムエラー発生時に、その要因(電源系のエラー/CPU内部のエラー)をCPUユニットから他のユニットへ情報として伝達する。
【0012】
【実施例】
〔実施例1〕以下、この発明の一実施例を図について説明する。図1において、1は電源ユニット、2はCPUユニット、3は出力ユニット、4は特殊機能ユニット、5はデータリンクユニット、6はベースユニット、7は電源ユニット1からのΣREL信号10と、CPUユニット2内部のCPUERR信号11を統合してΣMRE信号12を出力するリセット回路、8は特殊機能ユニット4との通信にて接続される外部機器(計算機,モニタ装置)である。
【0013】また、9はデータリンクユニット5と専用回線でつながるシステム(子局シスム)である。CPUユニット2内にCPU内部のCPUERR信号11としてリセット回路7につながる信号と、直接ベースユニット6より他のユニットまで接続されるCPUERRL信号13の2つがある。また、出力ユニット3内ではCPUERRL信号13を入力したときの出力形態(全点OFFあるいは出力状態を保持)を選択する出力モード選択スイッチ14を内蔵している。また、15はCPUユニット2内に設けられたMPU(マイクロプロセッサ)、16は出力ユニット3内に設けられたラッチ回路、17は特殊機能ユニット4内に設けられたMPU(マイクロプロセッサ)、18は同様に特殊機能ユニット4内に設けられた通信インタフェース、19はデータリンクユニット5内に設けられたMPU(マイクロプロッサ)、20は同様にデータリンクユニット5内に設けられた出力ポートである。
【0014】次に、動作について説明する。図1において、CPUユニット2およびシステムが正常動作しているとき、ΣMRE信号12とCPUERRL信号13はノンアクティブ状態である。ここで、電源系統の故障により電源ダウン予告としてΣREL信号10がアクティブ(“L”レベル)になると、従来のシステムと同様にΣMRE信号12がアクティブ(“H”レベル)となり、各ユニット(出力ユニット3,特殊機能ユニット4,データリンクユニット5)に伝達され、出力ユニット3は出力をOFFする。
【0015】特殊機能ユニット4では、CPUERRL信号13がノンアクティブ(“H”レベル)であることからNMI処理にて電源系のエラーによりシステムダウンすることを電源ダウンとなる前に通信インタフェース18を介して外部機器8へ伝達でき、外部機器8として従来よりもさらに具体的な対応(例えば、電源系の異常による警報等)が可能になる。データリンクユニット5では、特殊機能ユニット4と同様に、専用回線を通じの子局9へ電源系のエラーによりシステムダウンしたことを伝達し、自局のシステムダウンの要因まで子局に知らせることができる。
【0016】次に、CPUユニット2内部にてエラーが発生したとき、CPUユニット2における処理としては、システムダウンさせる必要があるエラーと、システムダウンする必要のないエラーが判別できるものとし、システムダウンさせるエラーの場合は、CPUERR信号11とCPUERRL信号13をアクティブ(共に“L”レベル)にする。これにより、ΣMRE信号12がアクティブ(“H”レベル)になるとともに、CPUERRL信号13がアクティブ(“L”レベル)となり、各ユニット(出力ユニット3、特殊機能ユニット4、データリンクユニット5)に伝達され、出力ユニット3は、その出力をOFFする。
【0017】特殊機能ユニット4ではCPUERRL信号13がアクティブ(“L”レベル)となっていることからNMI処理にてCPUユニット2内部のエラーにてシステムダウンすることをリセット状態となる前に通信インタフェースを介して外部機器8へ伝達でき、外部機器8として、従来よりもさらに具体的な対応(CPU点検のメッセージ等)が可能となる。データリンクユニット5では特殊機能ユニット4と同様に専用回線を通じの子局9へCPUユニット2内部のエラーによりシステムダウンしたことを伝達し、自局のシステムダウンの要因まで子局に知らせることができる。
【0018】最後に、CPUユニット2内部のエラーのうち、システムダウンする必要のないエラーである場合、MPUは、CPUERR信号11ノンアクティブ(“H”レベル)でCPUERRL信号13のみアクティブ(“L”レベル)にする。これによって、ΣMRE信号12はノンアクティブ(“L”レベル)でCPUERRL信号13のみアクティブ(“L”レベル)となって各ユニット(出力ユニット3,特殊機能ユニット4,データリンクユニット5)に伝達され、出力ユニット3では、モード設定スイッチ14により、システムダウンする必要のないエラーが発生したときに出力を全点OFFさせるか、あるいは出力状態を保持させるかを選定でき、各々のモードにて動作することができる。また、特殊機能ユニット4やデータリンクユニット5では、正常動作(外部機器8や子局9とのデータ通信)を継続しながら自局のCPUユニット2内でエラーが発生したことをNHI処理にて1つの情報として外部機器8や他の子局9へ伝達することができる。
【0019】〔実施例2〕次に、この発明に係る第2の実施例を説明する。図2および図3は、この発明の第2の実施例を説明する説明図であり、上記図1に示した実施例1と内容が重複する部分については、その説明を省略する。
【0020】図2において、30はシステムゲートアレイであり、装置における各種エラーチェックを実行するエラーチェック回路30aと、CPUエラー用I/Oポート30bとを具備している。上記エラーチェック回路30aはハードウェアによりWDTエラー等を検出する。また、上記CPUエラー用I/Oポート30bは重度、中度、軽度の各種エラーを選択的に出力する。ここで、重度エラーとしてはCPUの暴走、CPUのハードウェアが正常に動作しない場合、WDTエラー等があり、また、中度エラーとしては演算チェックエラー等、さらに、軽度エラーとしてはバッテリエラー等がある。また、31は中度エラーをユーザ側において、軽度エラーとして扱うか、あるいは重度エラーとして扱うかを選択設定できる設定スイッチであり、32はMPU15とエラーチェック回路30a、CPUエラー用I/Oポートとの間において信号を伝達するCPUバスである。
【0021】以上の構成において、図2における中度エラーを重度又は軽度エラーに選択する設定スイッチ31は軽度となるようにしてあることとして(オフ状態)、CPUERRL信号13と、ΣMRE信号12とによりどのようにエラーの区別をするかに関して以下に説明する。第1に、CPUERRL信号13が“L”レベルで、ΣMRE信号12が“”レベルの場合にあっては、CPUの軽度/中度エラーと判断する。第2に、CPUERRL信号13が“H”レベルで、ΣMRE信号12が“”レベルの場合にあっては、電源エラー等の中度エラーと判断する。第3に、CPUERRL信号13が“L”レベルで、ΣMRE信号12が“”レベルの場合にあっては、CPUの重度エラーと判断する。第4に、CPUERRL信号13が“H”レベルで、ΣMRE信号12が“”レベルの場合にあっては、正常と判断するものである。
【0022】図3は、上記第2の実施例における出力カードユニット3a、インテリジェント特殊機能ユニット4a、データリンクユニット5aの構成を示す説明図であり、出力ユニット3aには、ラッチ回路16の他に、CPUのエラー、特に中度エラー、軽度エラーの場合における出力を保持するか、あるいはリセットするかをユーザ側にて選択可能な設定スイッチ14aが設けられている。
【0023】インテリジェント特殊機能ユニット4aには、MPU17、外部機器8との通信を実行する通信インタフェース18の他、I/Oポート33が設けられている。そして、エラー発生時における上記MPU17はNMI動作によりI/Oポート33のエラー内容をチェックし、その内容を通信インタフェース18へ送ることにより、外部機器8側にてシステム内のエラーが判断可能となり、復帰時間の短縮を図ることができる。
【0024】データリンクユニット5aには、MPU19の他、I/Oポート34およびリンクインタフェース35が設けられている。このデータリンクユニット5aは、上記インテリジェント特殊機能ユニット4aと同様に、エラー発生により他の子局システムへ自局のエラーを伝達することができる。
【0025】
【発明の効果】以上のように、この発明によれば、CPUERRL信号とΣMRE信号をバス上に布線し、これに対し、2つの信号の内容によりエラー内容を判別できる各ユニット(出力ユニット3,特殊機能ユニット4,データリンクユニット5)にて構成したことにより、専用回線により接続された他のシステム(外部機器,子局)へ自局のエラーを伝達することができ、システムエラー発生時に他のユニットにてシステムエラーの要因を判別し、システム復旧時間を短縮し、自ユニットにおける処理に影響がない場合には、リセットをかけずに運転を続行し、各ユニットの効率的な運用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係るプログラマブルコントローラの概略構成(実施例1)を示す説明図である。
【図2】この発明に係るプログラマブルコントローラの概略構成(実施例2)を示す説明図である。
【図3】この発明に係るプログラマブルコントローラの概略構成(実施例2)を示す説明図である。
【図4】従来におけるプログラマブルコントローラの概略構成を示す説明図である。
【符号の説明】
1 電源ユニット
2 CPUユニット
3 出力ユニット
3a 出力カードユニット
4 特殊機能ユニット
4a インテリジェント特殊機能ユニット
5 データリンクユニット
5a データリンクユニット
6 ベースユニット
7 リセット回路
8 外部機器
9 子局システム
10 エラー信号(ΣREL)
11 エラー信号(CPUERR)
12 システムリセット信号(ΣMRE)
13 エラー信号(CPUERRL)
14 出力モード選択スイッチ
30 システムゲートアレイ
30a エラーチェック回路
30b CPUエラー用I/Oポート
31 設定スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 システムに電源を供給する電源ユニットと、プログラム内容を演算/実行するCPUユニットと、前記CPUユニットに接続され、各種機能を実現する機能ユニットとを含むプログラマブルコントローラにおいて、前記CPUユニットは、前記電源ユニットからの電源ダウン予告のエラー信号およびCPUからの、システムダウンさせる必要のあるCPUのエラーか否かを決定する第1のCPUエラー信号の状態に基づいてシステムリセット信号を出力するリセット手段を備え、前記機能ユニットは、前記リセット手段からのシステムリセット信号および前記CPUユニットからの、すべてのCPUのエラーを判断する第2のCPUエラー信号の状態に基づいて処理内容を選択する選択手段を備えたことを特徴とするプログラマブルコントローラ。
【請求項2】 システムに電源を供給する電源ユニットと、プログラム内容を演算/実行するCPUユニットと、前記CPUユニットに接続され、各種機能を実現する機能ユニットとを含むプログラマブルコントローラにおいて、前記CPUユニットは、前記CPUからのCPUエラー信号の内容を判断するエラー内容判断手段と、前記電源ユニットからの電源ダウン予告のエラー信号および前記エラー内容判断手段からの、システムダウンさせる必要のあるCPUのエラーか否かを決定する第1のCPUエラー判断信号の状態に基づいてシステムリセット信号を出力するリセット手段とを備え、前記機能ユニットは、前記リセット手段からのシステムリセット信号および前記エラー内容判断手段からの、すべてのCPUのエラーを判断する第2のCPUエラー判断信号の状態に基づいて処理内容を選択する選択手段を備えたことを特徴とするプログラマブルコントローラ。
【請求項3】 前記エラー内容判断手段は、入力されたCPUエラー信号に基づいて出力されるCPUエラー判断信号のレベルを任意に調整できるレベル調整手段を備えたことを特徴とする請求項2に記載のプログラマブルコントローラ。
【請求項4】 前記機能ユニットが、前記CPUユニットから入力される指令に基づき外部に対してON/OFF情報を出力する出力ユニットと、外部機器と接続され、前記CPUユニットとの間で情報の授受を行う特殊機能ユニットと、システム間のデータ通信を行うデータリンクユニットとであることを特徴とする請求項1または2に記載のプログラマブルコントローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】第2706027号
【登録日】平成9年(1997)10月9日
【発行日】平成10年(1998)1月28日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−338645
【出願日】平成4年(1992)12月18日
【公開番号】特開平5−257725
【公開日】平成5年(1993)10月8日
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【参考文献】
【文献】特開 平3−176710(JP,A)
【文献】特開 平1−233608(JP,A)