説明

プログラマブル表示器およびそのデータ処理方法

【課題】データの送受信のための通信において障害が発生した場合に、誤作動の防止や通信の復旧時の円滑な動作のための適切な制御を可能とするプログラマブル表示器、およびそのデータ処理方法を得ること。
【解決手段】指示データの入力を受け付ける入力手段11と、外部機器3の動作情報を表示する表示手段13と、を備える制御部1と、制御部1と通信可能とされ、制御部1から受信した指示データを外部機器3へ伝達し、外部機器3から取得した動作情報を制御部1へ送信する被制御部2と、を有し、被制御部2は、外部機器3の動作の状態をシーケンスデータとして随時記憶するシーケンスデータ記憶手段22を有し、制御部1および被制御部2の間の通信における障害を検知した場合、被制御部2は、障害が発生したときの動作に対応するシーケンスデータをシーケンスデータ記憶手段22から検索し、検索により特定したシーケンスデータの遷移を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラマブル表示器およびそのデータ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プログラマブル表示器は、制御を総括する制御側部分と、制御対象である外部機器に接続された被制御側部分との間の通信に障害が発生した場合に、誤作動の防止や通信の復旧時の円滑な動作を可能とするための処理を実施することがある。障害発生時のデータ処理方法として、例えば特許文献1には、通信障害が発生した場合に、出力回路の全接点をOFFとし、制御対象である外部機器の動作を一律に停止させる方法が開示されている。この方法によると、プログラマブル表示器は、通信が復旧することにより再び入力操作に追従するように動作する。
【0003】
障害発生時のデータ処理方法として、例えば特許文献2には、出力回路のうち予め指定した接点については障害発生前のON状態を保持可能とする方法が開示されている。この方法によると、プログラマブル表示器は、障害が発生した場合に、予め指定した接点については障害発生前の設定をそのまま保持し、動作を継続させる。
【0004】
また、例えば特許文献3には、常時取り込まれる設定データに応じた制御を実施するプロセス制御方法において、制御側部分において設定データを登録する際の障害の発生により設定データが不定値となっても、障害発生前に被制御側部分に登録されている設定データを適用する方法が開示されている。この方法によると、プログラマブル表示器は、障害が発生した場合に、被制御側部分に登録されている設定データに応じた動作を継続させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4041963号公報
【特許文献2】特開昭60−181901号公報
【特許文献3】特開昭60−201401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
障害発生により外部機器の動作を一律に停止させ、復旧により入力操作に追従するデータ処理を実行する方法は、プログラマブル表示器に固有の設定データの登録や複数の接点設定に適用した場合、プロセスの中途における接点設定が障害発生により欠落する状況が生じ得る。かかる状況では、いずれの設定までが有効であるかが不明となることから、通信の復旧時には、制御側部分と被制御側部分との間で設定の不整合が生じることとなる。
【0007】
障害発生前の出力状態を保持する接点を予め指定する方法では、各接点に対して指定の有意性を予め確認しておく必要があり、網羅性の確保が困難となる。また、障害発生時の設定のいずれにも固定値が適用されるために、データ処理方法としては汎用性に欠けることにもなり得る。
【0008】
制御側部分にて登録される設定データが障害の発生により不定値となっても、被制御側部分に登録されている障害発生前の設定データを適用する方法では、障害発生時に設定した設定データが欠落することが問題となる。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、データの送受信のための通信において障害が発生した場合に、誤作動の防止や通信の復旧時の円滑な動作のための適切な制御を可能とするプログラマブル表示器、およびそのデータ処理方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、外部機器の制御のための指示データの入力を受け付ける入力手段と、前記外部機器の動作に関する動作情報を表示する表示手段と、を備える制御部と、前記制御部と通信可能とされ、前記制御部から受信した前記指示データを前記外部機器へ伝達し、前記外部機器から取得した前記動作情報を前記制御部へ送信する被制御部と、を有し、前記被制御部は、前記外部機器の動作の状態をシーケンスデータとして随時記憶するシーケンスデータ記憶手段を有し、前記制御部および前記被制御部の間の通信における障害を検知した場合、前記被制御部は、前記障害が発生したときの動作に対応する前記シーケンスデータを前記シーケンスデータ記憶手段から検索し、検索により特定した前記シーケンスデータの遷移を停止させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被制御部は、シーケンスデータ記憶手段から読み出した過去のシーケンスデータを参照することで、指示データの入力により実行しているシーケンスを停止し、障害が発生したときのシーケンスデータを特定する。被制御部は、特定したシーケンスデータの遷移が停止するように外部機器を動作させることで、障害発生時における不具合の発生を回避可能とする。プログラマブル表示器は、データの送受信のための通信において障害が発生した場合に、誤作動の防止や通信の復旧時の円滑な動作のための適切な制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施の形態にかかるプログラマブル表示器の全体概略構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、プログラマブル表示器の制御部の動作手順の一例を示すフローチャートである。
【図3】図3は、プログラマブル表示器の被制御部の動作手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明にかかるプログラマブル表示器およびそのデータ処理方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
実施の形態.
図1は、本発明の実施の形態にかかるプログラマブル表示器の全体概略構成を示すブロック図である。プログラマブル表示器は、制御部1および被制御部2を有する。制御部1および被制御部2は、無線接続経路5を介して通信可能とされている。制御部1および被制御部2は、無線接続経路5により接続されたものである場合に限られず、有線接続経路によって接続されたものとしても良い。
【0015】
制御部1は、入力手段11、統括処理手段12、表示手段13、表示生成手段14および指示データ記憶手段15を有する。操作者4は、入力手段11の操作により、外部機器3の制御のための指示データを入力する。入力手段11は、操作者4による指示データの入力を受け付ける。
【0016】
統括処理手段12は、制御部1および被制御部2による処理動作を統括する。表示手段13は、外部機器3の動作に関する動作情報を表示する。表示手段13は、例えば液晶表示装置である。表示生成手段14は、統括処理手段12からの動作情報に応じて、表示手段13に表示させる画面を生成する。指示データ記憶手段15は、制御部1および被制御部2の間の通信における障害が発生した際に、入力手段11から入力されている指示データを記憶する。
【0017】
被制御部2は、制御部1から受信した入力指示を外部機器3へ伝達し、外部機器3から取得した動作情報を制御部1へ送信する。被制御部2は、外部機器接続インタフェース(I/F)21およびシーケンスデータ記憶手段22を有する。外部機器接続I/F21は、統括処理手段12との間のデータの入出力、外部機器3との間のデータの入出力を実施する。シーケンスデータ記憶手段22は、外部機器3の動作の状態をシーケンスデータとして随時記憶する。
【0018】
図2は、プログラマブル表示器の制御部の動作手順の一例を示すフローチャートである。操作者4からの入力指示を入力手段11が受け付けると、統括処理手段12は、無線接続経路5の接続が確立しているか否かを判断する(ステップS1)。無線接続経路5に故障が発生しておらず接続が確立していると判断した場合(ステップS1、Yes)、統括処理手段12は、入力された指示データを外部機器接続I/F21へ送信する(ステップS2)。
【0019】
無線接続経路5に故障が発生しており接続が確立していないと判断した場合(ステップS1、No)、統括処理手段12は、入力手段11から入力された指示データを指示データ記憶手段15へ伝達する。指示データ記憶手段15は、指示データを記憶する(ステップS3)。
【0020】
次に、統括処理手段12は、無線接続経路5による接続が復旧したか否かを判断する(ステップS4)。無線接続経路5による接続が復旧していないと判断した場合(ステップS4、No)、統括処理手段12は、接続が復旧するまでステップS4の判断を実施する。
【0021】
無線接続経路5による接続が復旧したと判断した場合(ステップS4、Yes)、統括処理手段12は、指示データ記憶手段15が保持している指示データを読み出し、外部機器接続I/F21へ送信する(ステップS5)。このように、制御部1は、制御部1および被制御部2の間の通信が復旧した場合、指示データ記憶手段15が保持している指示データを被制御部2へ送信する。
【0022】
これにより、プログラマブル表示器は、被制御部2における指示データの欠落を抑制し、誤作動の防止とシーケンスの完全な実施が可能となる。ステップS2またはステップS5における指示データの送信により、制御部1は、指示データに応じた一連の動作を終了する。
【0023】
図3は、プログラマブル表示器の被制御部の動作手順の一例を示すフローチャートである。外部機器接続I/F21は、無線接続経路5の状態を監視し、無線接続経路5の接続が確立しているか否かを判断する(ステップS11)。無線接続経路5に故障が発生しておらず接続が確立していると判断した場合において(ステップS11、Yes)、統括処理手段12からの指示データを受信すると(ステップS12)、外部機器接続I/F21は、受信した指示データを外部機器3へ伝達する。これにより、被制御部2は、指示データに応じたシーケンスを外部機器3に実行させる(ステップS13)。
【0024】
外部機器3は、指示データに応じて実行した動作に関する動作情報を外部機器接続I/F21へ伝達する。外部機器接続I/F21は、外部機器3からの動作情報をシーケンスデータ記憶手段22へ伝達する。
【0025】
シーケンスデータ記憶手段22は、外部機器接続I/F21からの動作情報をシーケンスデータとして記憶する(ステップS14)。シーケンスデータ記憶手段22は、通信障害が無い場合に、外部機器3におけるシーケンスの実行履歴をシーケンスデータとして蓄積していく。
【0026】
無線接続経路5に障害が発生しており接続が確立していないと判断した場合(ステップS11、No)、外部機器接続I/F21は、シーケンスデータ記憶手段22に記憶されているシーケンスデータから、障害が発生したときの外部機器3の動作に対応するシーケンスデータを検索する(ステップS15)。このように、被制御部2は、制御部1および被制御部2の間の通信における障害を検知した場合、障害が発生したときの外部機器3の動作に対応するシーケンスデータをシーケンスデータ記憶手段22から検索する。
【0027】
外部機器接続I/F21は、シーケンスデータ記憶手段22での検索により特定したシーケンスデータの遷移を停止させる(ステップS16)。シーケンスデータの遷移を停止させるとは、例えば、指示データに応じて動作させている接点の遷移や動作状態を表す数値の増減等の停止をいうものとする。外部機器3は、指示データに応じて実行していたシーケンスを停止させる。
【0028】
次に、外部機器接続I/F21は、無線接続経路5による接続が復旧したか否かを判断する(ステップS17)。無線接続経路5による接続が復旧していないと判断した場合(ステップS17、No)、外部機器接続I/F21は、接続が復旧するまでステップS17の判断を実施する。
【0029】
無線接続経路5による接続が復旧したと判断した場合(ステップS17、Yes)、外部機器接続I/F21は、ステップS15における検索により特定したシーケンスデータを外部機器3へ伝達する。これにより、被制御部2は、障害発生時に実行していたシーケンスを外部機器3に再実行させる。シーケンスデータ記憶手段22は、保持しているシーケンスデータを消去する(ステップS18)。ステップS14におけるシーケンスデータの記憶、もしくはステップS18におけるシーケンスの再実行およびシーケンスデータの消去により、被制御部2は、障害の有無に応じた一連の動作を終了する。
【0030】
プログラマブル表示器は、シーケンスデータ記憶手段22に蓄積されたシーケンスデータから障害発生時のシーケンスを特定し、シーケンスデータの遷移を停止させることで、障害発生時における不具合の発生を回避することができる。
【0031】
プログラマブル表示器は、障害が解消すると、障害発生前に実行中であったシーケンスを再実行させ、かつ保持していたシーケンスデータを消去することで、通信の復旧の際における制御部1と被制御部2との設定の不整合や欠落を抑制させる。プログラマブル表示器は、障害発生時の不具合を回避するとともに、制御部1と被制御部2とにおける設定の整合を維持することで、誤作動の防止や通信の復旧時の円滑な動作のための適切な制御を実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明にかかるプログラマブル表示器およびそのデータ処理方法は、特に、操作者および外部機器の間におけるデータ伝達の確実性を重視する場合や、不安定な通信状況が想定される場合に適している。
【符号の説明】
【0033】
1 制御部
2 被制御部
3 外部機器
4 操作者
5 無線接続経路
11 入力手段
12 統括処理手段
13 表示手段
14 表示生成手段
15 指示データ記憶手段
21 外部機器接続I/F
22 シーケンスデータ記憶手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部機器の制御のための指示データの入力を受け付ける入力手段と、前記外部機器の動作に関する動作情報を表示する表示手段と、を備える制御部と、
前記制御部と通信可能とされ、前記制御部から受信した前記指示データを前記外部機器へ伝達し、前記外部機器から取得した前記動作情報を前記制御部へ送信する被制御部と、を有し、
前記被制御部は、前記外部機器の動作の状態をシーケンスデータとして随時記憶するシーケンスデータ記憶手段を有し、
前記制御部および前記被制御部の間の通信における障害を検知した場合、前記被制御部は、前記障害が発生したときの動作に対応する前記シーケンスデータを前記シーケンスデータ記憶手段から検索し、検索により特定した前記シーケンスデータの遷移を停止させることを特徴とするプログラマブル表示器。
【請求項2】
前記制御部および前記被制御部の間の通信が復旧した場合、
前記被制御部は、前記障害が発生したときの動作を前記外部機器に再び実行させ、
前記シーケンスデータ記憶手段は、保持している前記シーケンスデータを消去することを特徴とする請求項1に記載のプログラマブル表示器。
【請求項3】
前記制御部は、前記障害が発生した際に、前記入力手段から入力されている前記指示データを記憶する指示データ記憶手段を有し、
前記制御部および前記被制御部の間の通信が復旧した場合、前記制御部は、前記指示データ記憶手段が保持している前記指示データを前記被制御部へ送信することを特徴とする請求項1または2に記載のプログラマブル表示器。
【請求項4】
外部機器の制御のための指示データの入力を制御部にて受け付ける工程と、
前記制御部と通信可能とされている被制御部へ、前記制御部から前記指示データを送信する工程と、
前記被制御部から前記外部機器へ前記指示データを伝達する工程と、
前記外部機器の動作に関する動作情報を前記被制御部にて取得する工程と、
前記被制御部から前記制御部へ前記動作情報を送信する工程と、
前記制御部にて前記動作情報を表示する工程と、
前記外部機器の動作の状態をシーケンスデータとして随時記憶する工程と、を含み、
前記制御部および前記被制御部の間の通信における障害が検知された場合、前記障害が発生したときの動作に対応する前記シーケンスデータを検索し、検索により特定した前記シーケンスデータの遷移を停止させることを特徴とするプログラマブル表示器のデータ処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−69101(P2013−69101A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206971(P2011−206971)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】