説明

プロシアニジン類の定量方法

【課題】プロシアニジン類を特異的に、かつ精度良く測定することが可能な定量方法の提供。
【解決手段】飲食品中のプロシアニジン類(カテキンのn重合体又はそれらの混合物の総称:n≧1、但しnは整数)の定量方法であって、サイズ排除クロマトグラフィーによって分離したプロシアニジン類を蛍光検出法により定量することを特徴とするプロシアニジン類の定量方法、及び天然抽出物含有物中のプロシアニジン類(カテキンのn重合体又はそれらの混合物の総称:n≧1、但しnは整数)の定量方法であって、サイズ排除クロマトグラフィーによって分離したプロシアニジン類を蛍光検出法により定量することを特徴とするプロシアニジン類の定量方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプロシアニジン類の定量方法に関し、より詳しくは、飲食品中のプロシアニジン類の合計含有量を精度良くかつ簡便に測定することが可能なプロシアニジン類の定量方法に係る。
【背景技術】
【0002】
主要なポリフェノールの一つであるプロシアニジン類(カテキン類や、その重合体)は、276nm±20の励起光波長で316nm±20の蛍光波長を有することが知られており(非特許文献1参照)、近年、脂肪蓄積抑制(抗肥満)効果、中性脂肪吸収抑制作用、発癌抑制効果、抗酸化作用、抹消循環改善作用、血液流動性改善作用、肝機能改善効果、及び血小板凝集抑制効果等の様々な作用効果が確認されている。プロシアニジン類が上記のような効能を発揮するためには、適切な量を体内に摂取する必要がある。そのためには、飲食品中に含まれるプロシアニジン類の総量を精度よく定量する方法の開発が望まれている。
【0003】
従来、プロシアニジン類の検出には、逆相クロマトグラフィーで分離後、UVで検出を行っていた(非特許文献1、2参照)。プロシアニジン類は、構成ユニットの数や結合位置の組み合わせによって多数の分子サイズの異なる異性体が存在する。一方で、構造上の性質は近似しており、分子サイズではなく、極性あるいは疎水性に応じて分離できる逆相クロマトグラフィーが用いられていた。また、分離したプロシアニジン類は、UVによる吸光度の変化に基づき検出していたが、フェニルアラニンやチロシン等のアミノ酸や、他のポリフェノール類のように、UVを吸収する構造を有するものは、天然抽出物中に多種多様に含まれている。したがって、逆相クロマトグラフィーとUV検出器を用いた場合、プロシアニジン類以外のポリフェノール類を解析してしまうおそれや、各ピークにオーバーラップが生じて正確に測定できない等のおそれがあり、飲食品中のプロシアニジン類の量を精度良く定量することが困難であった。また、通常、濃度が既知の標準品と比較して試料溶液中に含まれる検出物を特定し、定量するが、上述したようにプロシアニジン類はその数が多いため、標準品を揃えることが困難である。
【0004】
この問題を解決するため、例えば特許文献1には、前処理工程で夾雑物を取り除いた処理溶液を用いて、カテキン類及びプロシアニジン類を測定する方法が開示されている。この測定方法においては、カフェイン、テオブロミン等のメチルキサンチン類、カフェ酸、クマル酸、フェルラ酸等のフェニルプロパノイド類、フラボン類、フラボノール類、及びそれらの配糖体類の夾雑物を、極性有機溶媒を含む溶出液を用いてゲル濾過カラムにかけて分離し、プロシアニジン類を高速液体クロマトグラフィーで定量している。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、前処理工程を必要とし、操作が煩雑であると共に、前処理工程で完全に夾雑物を取り除くことは不可能である。また、カテキン類やプロシアニジン類の損失も多くなってしまい、測定試料中のカテキン類、及びプロシアニジン類の含有量を精度よく測定することは困難であった。
【非特許文献1】Bergmen W.R. et al. Journal of the American Chemical Society、1987年、第109号、第6614頁−第6619頁
【非特許文献2】Yanagida A. et al. Journal of Biochemical and Biophysical Methods、2003年、第56号、第311頁−第322頁
【非特許文献3】Kennedy J. et al. Journal of Chromatography A、2003年、第995号、第99頁−第107頁
【特許文献1】特開2007−10487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、プロシアニジン類を特異的に、かつ精度良く測定することが可能なプロシアニジン類の定量方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載のプロシアニジン類の定量方法は、飲食品中のプロシアニジン類(カテキン類のn重合体又はそれらの混合物の総称:n≧1、但しnは整数)の定量方法であって、サイズ排除クロマトグラフィーによって分子サイズ毎に分離したプロシアニジン類を蛍光検出法により定量することを特徴とする。
本発明の請求項2に記載のプロシアニジン類の定量方法は、天然抽出物含有物中のプロシアニジン類(カテキンのn重合体又はそれらの混合物の総称:n≧1、但しnは整数)の定量方法であって、サイズ排除クロマトグラフィーによって分離したプロシアニジン類を蛍光検出法により定量することを特徴とする。
本発明の請求項3に記載のプロシアニジン類の定量方法は、請求項1において、前記飲食品が飲料であることを特徴とする。
本発明の請求項4に記載のプロシアニジン類の定量方法は、請求項3において、前記飲料が茶飲料であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のプロシアニジン類の定量方法は、特定波長の励起光を照射し、蛍光を検出することにより、プロシアニジン類のみを特異的に検出することができる。ゆえに、飲食品等の天然抽出物含有物のように、多種多様な物質の混合物中に含まれるプロシアニジン類の総量を精度良く検出することができる。特に本発明の定量方法は、濃度が既知の標準品のデータに基づいて、飲食品等の試料中に含有されるプロシアニジン類の総量を正確に算出することができる。つまり、その値に応じたプロシアニジン類の摂取が可能となり、適切な量を摂取することで疾病リスクの低減を図ることができる。また、一日に必要とされる量から最適な濃度のプロシアニジン類を含有した飲料等を製造することができる。特に、飲食品がプロシアニジン類を有効成分とする特定保健用食品として認定されるためには、規定量のプロシアニジン類を含有する必要があるが、本発明の定量方法によれば、精確にプロシアニジン類を定量できることから、特定保健用食品中のプロシアニジン類の定量に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のプロシアニジン類の定量方法は、飲食品中のプロシアニジン類(カテキン類のn重合体、又はそれらの混合物の総称:n≧1、但し、nは整数)の定量方法であって、サイズ排除クロマトグラフィーによって分離したプロシアニジン類を蛍光検出法により定量する。以下、それぞれについて、詳細に説明する。
【0010】
プロシアニジン類は、276nm±20の励起光波長で316nm±20の最大蛍光波長を有する物質である。本明細書において、プロシアニジン類とは、カテキン類のn重合体(n≧1、但し、nは整数)又はそれらの総称であり、n=1のカテキン類も含む。カテキン類としては、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキンが含まれるが、特にこれらに限定されるものではない。プロシアニジン類としては、カテキン類のn重合体又はそれらの混合物であれば特に限定されるものではない。また、天然のプロシアニジン類でもよく、合成されたプロシアニジン類であってもよい。
【0011】
飲食品としては、飲料等の流動体でも良く、食品等の固体であってもよい。また、後述する天然抽出物を原料とするものであってもよく、従来公知の方法で合成されたプロシアニジン類が添加されたものであってもよい。
飲料としては、現在公知の飲料、例えば、茶飲料、リンゴやマンゴスチン、ブドウ等の果実飲料、シソの葉等を含んだ野菜ジュース、ワインなどのアルコール飲料、ココア、スポーツ飲料、乳飲料、乳性飲料、ゼリー飲料、炭酸飲料等が挙げられる。
飲料としては、茶飲料を用いることが好ましい。本明細書中、茶飲料とは、茶葉を1種類または2種類以上使用して、湯又は水で抽出したものである。茶葉としては、緑茶に代表される不発酵茶葉、烏龍茶に代表される半発酵茶葉、紅茶に代表される完全発酵茶葉、プーアル茶に代表される後発酵茶葉等が挙げられる。これら飲料は、従来公知の方法で作ることができる。
【0012】
食品としては、現在公知の食品、例えばリンゴやマンゴスチン、ブドウ等の果物、オリーブやピーナッツ等の木の実類、黒豆等の穀類、シソの葉等の野菜などの天然物であってもよく、魚肉練り製品、畜肉製品、乳製品、パン類、冷菓類、菓子類、乾燥食品、各種麺類、サプリメント等の加工食品であってもよい。菓子類としては、例えばゼリー、チューインガム、チョコレート、キャンディ、ビスケット、スナック等が挙げられる。これら食品は、従来公知の方法で作ることができる。
【0013】
天然抽出物含有物としては、天然の植物等から公知の方法で抽出したプロシアニジン類を含むもので、上記で説明した飲食品のほかに、化粧品、医薬品、医薬部外品等が挙げられる。天然の植物としては、例えば、バラ科のリンゴやオトギリソウ科のマンゴスチン、モクセイ科のオリーブ、ブドウ科のブドウ等の植物、マメ科の大豆(黒豆)やラッカセイ(ピーナッツ)等の豆類、ツツジ科のクランベリーやコケモモ、ザクロ科のザクロ等の木の実、等が挙げられる。抽出方法としては、プロシアニジン類を損なわない方法であれば特に限定されず、抽出物として、例えば、水やアルコール類等の溶液中で加熱することにより抽出して得たものでもよく、しぼり汁等の圧搾して得たものであってもよく、凍結乾燥させたものを特定の溶剤に可溶化して得たものであってもよい。
【0014】
これらの飲食品等をサイズ排除クロマトグラフィーで分析する際は、飲食品等が液状である場合は、溶剤を用いて希釈した溶液を用いる。飲食品等が固体である場合は、凍結乾燥させて粉末状としたものを、適当な溶剤に溶解した溶液を用いるか、適当な溶剤を用いて抽出して得られた溶液を用いる。飲食品等中のプロシアニジン類の損失量を最小限に抑えることができるため、凍結乾燥させた粉末状のものを用いることが好ましい。上記で用いられる溶剤としては、プロシアニジン類を損なわずに、サイズ排除クロマトグラフィーに用いることができるものであれば特に限定されるものではない。このような溶剤としては、メタノール、エタノール等のアルコール溶液、アセトン、アセトニトリル等が挙げられる。
【0015】
また、本発明のプロシアニジン類の定量方法は、検出感度に優れているため、試料を希釈して用いることが好ましい。希釈倍率としては、測定試料中の濃度に応じ適宜調節して行えばよいが、例えば1倍超〜100倍である。
【0016】
サイズ排除クロマトグラフィーとしては、以下の分析条件で行うことが好ましい。
カラムとしては、通常、サイズ排除クロマトグラフィーに用いられるカラムであれば、特に限定されるものではなく、例えば、ビニルポリマー系カラム、極性有機溶媒系SECカラム等を用いることができる。
固定相としては、多孔性のシリカゲルや有機ポリマーゲルなど通常のサイズ排除クロマトグラフィーに用いられる固定相であれば特に限定させるものではなく、例えば、ポリビニルアルコールゲル、ポリスチレン/ジビニルベンゼン系ポリリジンゲル等が挙げられる。
移動相としては、メタノール、エタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、アセトン等を水と任意の割合で混和したものを用いることができる。また、尿素やグアニジン等の水素結合阻害剤を0.01M〜8M含んだものでもよい。移動相は酸性にする方が分離及び分析する成分の安定性を高めることができる。そのため、塩酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸、酢酸、トリクロロ酢酸、過塩素酸等を移動相に適量加えてもよい。
流速としては、カラムや固定相に応じ適宜調節することが好ましく、例えば0.3mL/min〜1.5mL/minである。
カラム温度は用いるカラムや固定相、移動相等を考慮し、適宜調節することが好ましく、例えば15℃以上50℃以下である。
好適なサイズ排除クロマトグラフィーの条件としては、固定相としてポリビニルアルコール系ゲルを充填した極性有機溶媒系SECカラムと、移動相として0.1M尿素水溶液(pH0.2塩酸で調整)/アセトニトリル(500mL:500mL)の混合溶液を用い、移動相の流速を0.5mL/分、カラム温度は室温である。
【0017】
検出方法としては、276±20nmの励起光波長で、316±20nmの蛍光波長を検出する蛍光検出器を用いることが好ましい。測定試料の溶液中に複数の分子サイズが異なるプロシアニジン類が含有されていた場合は、チャート上に複数のピークが観察される。また、単一のプロシアニジン類が含有されていた場合、もしくは合成品では、チャート上に単一のピークが観察される。
276nm±20の励起光を照射した場合に316nm±20の蛍光が検出されるという光学的性質は、プロシアニジン類に特異的なものであるため、このような蛍光検出器を用いて検出した場合には、チャート上に観察されるピークは全てプロシアニジン類に由来するものとなる。このため、従来のUV検出法と異なり、チャート上の各ピークが、プロシアニジン類由来のピークか、それとも他の物質由来のピークかを、標準品を用いて判別する必要がない。このため、蛍光検出法により、測定試料の溶液中のプロシアニジン類を、UV検出法よりも高精度に検出することが可能である。
【0018】
プロシアニジン類の定量方法としては、蛍光検出器で得られたピークの総面積から、プロシアニジン類の総量を定量することができる。具体的には、濃度が既知の標準品を同一条件で測定し、得られたチャートのピークの面積をA、試料中のプロシアニジン類のピーク面積の合計をA、測定試料の希釈倍率をDとすると、以下の式(1)で表される。
試料中のプロシアニジン類の総量(mg/100mL)=標準プロシアニジンの量(mg)×A/AXD・・・(1)
なお、標準品としては、濃度が既知で、ゲル排除クロマトグラフィーと蛍光検出器とで観察されるピークが単一のものであれば特に限定されるものではなく、市販品であってもよいし、公知の方法で合成したものであってもよい。このような標準品としては、例えば、プロシアニジンB2が挙げられる。プロシアニジンB2は、n=2のプロシアニジン2量体であり、n≧2の他のn重合体と比べて、最も溶出時間が遅い。つまり、プロシアニジンB2のピークよりも早い時間に検出されているピークが、測定試料の溶液中に含まれているn≧2のn重合体であるプロシアニジン類由来のピークであると判断することができる。つまり、標準品としてプロシアニジンB2を用いることにより、プロシアニジン類の溶出時間の目安とすることができる。
【0019】
つまり、本発明のプロシアニジン類の定量方法は、従来のHPLC法において、UV検出器に代えて蛍光検出器を用いることにより、複雑な前処理等を行うことなく、簡便に精度良くプロシアニジン類を定量することが可能となる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0021】
<プロシアニジン類の検出>
標準品として、プロシアニジンB2(0〜200μg/mL)溶液を調整した。また、試料溶液としてリンゴ抽出溶液を含む水溶液を調整した。これらの溶液をサイズ排除クロマトグラフィーによって分離し、蛍光検出器を用いてプロシアニジン類を検出した。サイズ排除クロマトグラフィーに関しては、カラムとして極性有機溶媒系SECカラム(東ソー社製;TSKgel α―2500)(7.8×300mm)、移動相として0.1M尿素水溶液(pH0.2塩酸で調整)/アセトニトリル(500mL:500mL)の混合溶液を用いた。また、カラム温度は室温とし、流速は0.5mL/分、測定試料の注入量は10μLで行った。検出器としては蛍光検出器を用い、276nm±20の励起光波長で、316±20nmの蛍光波長を測定した。なお、サイズ排除クロマトグラフィーによる測定は、以下同様の測定条件で行う。その結果得られたチャートを図1に示す。
図1より、リンゴ由来のプロシアニジン類に関するピークが複数観察された。したがって、複数種のプロシアニジン類がリンゴ抽出溶液に含まれていることが観察された。
【0022】
<プロシアニジンの多量体の検出>
プロシアニジン単量体、及び2量体〜5量体をそれぞれ溶解した溶液(全て100μg/mL)を用い、サイズ排除クロマトグラフィーによって、蛍光検出器を用いて分離したプロシアニジン類を検出した。その結果得られたチャートを図2に示す。図2(a)は測定試料として単量体のエピカテキン溶液を用いたもの、図2(b)は、プロシアニジン2量体画分溶液を用いたもの、図2(c)は、プロシアニジン3量体画分溶液を用いたもの、図2(d)は、プロシアニジン4量体画分溶液を用いたもの、図2(e)は、プロシアニジン5量体画分溶液を用いたものの結果である。また、図2(f)は、図2(a)〜図2(e)で得られたピークをマージしたものである。
図2から、精度良く単量体〜5量体のプロシアニジン類を検出することが確認された。
【0023】
<プロシアニジン類を含有しないポリフェノールでの測定>
プロシアニジン類以外の物質として、リンゴ由来のポリフェノールの一種であるクロロゲン酸(100μg/mL)や、ルチン(100μg/mL)、フロリジン(100μg/mL)についてもサイズ排除クロマトグラフィーによって、蛍光検出器を用いて分離したプロシアニジン類を検出した。その結果得られたチャートを図3に示す。図3(a)は、測定試料としてクロロゲン酸溶液を用いたもの、図3(b)は、測定試料としてルチン溶液を用いたもの、図3(c)は、測定試料としてプリジン溶液を用いたものの結果である。
図3より、どの溶液においてもピークが観察されなかった。
以上より、本発明の測定方法によれば、プロシアニジンを特異的に、かつ精度良く検出できることが観察された。
【0024】
<ポリフェノール含有物質におけるプロシアニジン類の定量>
次に、ポリフェノールを含む天然抽出物含有物(リンゴポリフェノール、ホップポリフェノール、イソフラボン、オリーブ、ブドウ種子抽出物、緑茶抽出物、シソの葉、ピーナッツ、松樹皮抽出物、ヘスペリジン、マンゴスチン、ウーロン茶抽出物、黒豆)に対して、同様にサイズ排除クロマトグラフィーによって、蛍光検出器を用いて分離したプロシアニジン類を定量した。測定試料の調整に関して、オリーブ、シソの葉、ピーナッツ、マンゴスチン、及び黒豆については、氷結乾燥させた粉末をメタノールまたは50%メタノールに溶解した。その他の粉末状のものも同様にメタノールまたは50%メタノールに溶解した。その後、これらの溶液を2倍希釈し、そのうち10μLを測定に使用した。また、液状のものに関しては、そのまま2倍希釈したものを用いた。検出器としては、蛍光検出器と、UV検出器の両方で行った。その結果を図4〜図16に示す。図中、(a)で示す結果は蛍光検出器を用いて得られたチャート、(b)で示す結果はUV検出器を用いて得られたチャートを示したものである。さらに、プロシアニジン類の量を、以下の式から求めた。
プロシアニジン類の量(mg/mL)=プロシアニジンB2標準品の量(mg)×AT/AS×2
なお、氷結乾燥させたオリーブ、シソの葉、ピーナッツ、マンゴスチン、及び黒豆については、最終的なプロシアニジン類の含有量は、各食品の水分含有量に基づいて補正した値を算出した。
【0025】
図4は、測定試料としてリンゴポリフェノール(AP)溶液を用いたもの、図5は測定試料としてホップポリフェノール(HP)溶液を用いたものの結果である。なお、AP、HP共にメタノールに溶解させて解析を行った。AP20.9ppmの試料についてプロシアニジンB2換算で3.1ppmのプロシアニジン類が観察された。また、HPでは280ppmの試料についてプロシアニジンB2換算で9.2ppmのプロシアニジン類が観察された。
図6は、測定試料としてイソフラボン溶液を用いたもの、図7は、測定試料としてオリーブ溶液を用いたものである。イソフラボンはメタノールに、オリーブは凍結乾燥した後、粉砕し、50%メタノールに溶解させて解析を行った。イソフラボンでは、198ppmの試料についてプロシアニジンB2換算で0.4ppmのプロシアニジン類が観察された。また、オリーブでは23.3ppmの試料についてプロシアニジンB2換算で1.7ppmのプロシアニジン類が観察された。
図8は、測定試料としてブドウ種子抽出物溶液を用いたもの、図9は、測定試料として緑茶抽出物溶液を用いたものである。ブドウ種子抽出物、緑茶抽出物ともにメタノールに溶解させて解析を行った。ブドウ種子抽出物では、280ppmの試料についてプロシアニジンB2換算で17.0ppmのプロシアニジン類が観察された。また、緑茶抽出物では27.1ppmの試料についてプロシアニジンB2換算で0.2ppmのプロシアニジン類が観察された。
図10は、測定試料としてシソの葉溶液を用いたもの、図11は、測定試料としてピーナッツ溶液を用いたものである。シソの葉、ピーナッツ共に凍結乾燥した後、粉砕し、50%メタノールに溶解させて解析を行った。シソの葉では、224ppmの試料についてプロシアニジンB2換算で1.3ppmのプロシアニジン類が観察された。また、ピーナッツでは235ppmの試料についてプロシアニジンB2換算で17.1ppmのプロシアニジン類が観察された。
図12は、測定試料として松樹皮抽出物溶液を用いたもの、図13は、測定試料としてヘスペリジン溶液を用いたものである。松樹皮抽出物はメタノール溶液に、ヘスペリジンは50%メタノール溶液に溶解させて解析を行った。ピクノジェノールでは、199ppmの試料についてプロシアニジンB2換算で18.3ppmのプロシアニジン類が観察された。また、ヘスペリジンでは228ppmの試料についてプロシアニジンB2換算で0.1ppmのプロシアニジン類が観察された。
図14は、測定試料としてマンゴスチン溶液を用いたもの、図15は、測定試料としてウーロン茶抽出物溶液を用いたものである。マンゴスチンは凍結乾燥した後、粉砕し、メタノールに、ウーロン茶抽出物は原液を50%メタノール溶液に溶解させて解析を行った。マンゴスチンでは、209ppmの試料についてプロシアニジンB2換算で0.1ppmのプロシアニジン類が観察された。また、ウーロン茶抽出物では225ppmの試料についてプロシアニジンB2換算で0.8ppmのプロシアニジン類が観察された。
図16は、測定試料として黒豆溶液を用いたものである。黒豆を凍結乾燥した後、粉砕し、メタノールに溶解させて解析を行った。黒豆では、193ppmの試料についてプロシアニジンB2換算で23.4ppmのプロシアニジン類が観察された。
【0026】
図4〜図16において、プロシアニジン類を蛍光検出器を用いて解析した(a)のピークパターンと、従来のUV検出器を用いて解析した(b)のピークパターンとでは異なったピークパターンが観察された。従来のUV検出器を用いた方法では、プロシアニジン類に加え、他の物質も検出されていたことが確認された。したがって、従来のUV検出器を用いた解析方法では、プロシアニジン類の精確な定量が困難であることが明らかとなり、本発明の定量方法によれば、精確、かつ簡便に測定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、飲食品中や天然抽出物含有物に含まれるプロシアニジン類の総量を精度良く定量することができる。そのため、飲食品中の特定機能成分を精確に定量することが要求される分野、例えば、特定保健用食品の認定等において、特に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】測定試料としてリンゴ由来のプロシアニジン類を用い、サイズ排除クロマトグラフィーにより分離し、蛍光検出器で測定して得られたチャートを示した図である。
【図2】測定試料として、プロシアニジン類の単量体〜5量体のプロシアニジンを用い、サイズ排除クロマトグラフィーにより分離し、蛍光検出器で測定して得られたチャートを示した図である。
【図3】測定試料としてクロロゲン酸、ルチン、プリジン、プラセボを用いた際の、サイズ排除クロマトグラフィーにより分離し、蛍光検出器で測定して得られたチャートを示した図である。
【図4】測定試料としてリンゴポリフェノール(AP)を用いた際のサイズ排除クロマトグラフィーにより分離し、蛍光検出器で測定して得られたチャートを示した図である。
【図5】測定試料としてホップポリフェノール(HP)を用いた際のサイズ排除クロマトグラフィーにより分離し、蛍光検出器で測定して得られたチャートを示した図である。
【図6】測定試料としてイソフラボンを用いた際のサイズ排除クロマトグラフィーにより分離し、蛍光検出器で測定して得られたチャートを示した図である。
【図7】測定試料としてオリーブを用いた際のサイズ排除クロマトグラフィーにより分離し、蛍光検出器で測定して得られたチャートを示した図である。
【図8】測定試料としてブドウ種子抽出物を用いた際のサイズ排除クロマトグラフィーにより分離し、蛍光検出器で測定して得られたチャートを示した図である。
【図9】測定試料として緑茶抽出物を用いた際のサイズ排除クロマトグラフィーにより分離し、蛍光検出器で測定して得られたチャートを示した図である。
【図10】測定試料としてシソの葉を用いた際のサイズ排除クロマトグラフィーにより分離し、蛍光検出器で測定して得られたチャートを示した図である。
【図11】測定試料としてピーナッツを用いた際のサイズ排除クロマトグラフィーにより分離し、蛍光検出器で測定して得られたチャートを示した図である。
【図12】測定試料として松樹皮抽出物を用いた際のサイズ排除クロマトグラフィーにより分離し、蛍光検出器で測定して得られたチャートを示した図である。
【図13】測定試料としてヘスペリジンを用いた際のサイズ排除クロマトグラフィーにより分離し、蛍光検出器で測定して得られたチャートを示した図である。
【図14】測定試料としてマンゴスチンを用いた際のサイズ排除クロマトグラフィーにより分離し、蛍光検出器で測定して得られたチャートを示した図である。
【図15】測定試料としてウーロン茶抽出物を用いた際のサイズ排除クロマトグラフィーにより分離し、蛍光検出器で測定して得られたチャートを示した図である。
【図16】測定試料として黒豆を用いた際のサイズ排除クロマトグラフィーにより分離し、蛍光検出器で測定して得られたチャートを示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲食品中のプロシアニジン類(カテキンのn重合体又はそれらの混合物の総称:n≧1、但しnは整数)の定量方法であって、
サイズ排除クロマトグラフィーによって分離したプロシアニジン類を蛍光検出法により定量することを特徴とするプロシアニジン類の定量方法。
【請求項2】
天然抽出物含有物中のプロシアニジン類(カテキンのn重合体又はそれらの混合物の総称:n≧1、但しnは整数)の定量方法であって、
サイズ排除クロマトグラフィーによって分離したプロシアニジン類を蛍光検出法により定量することを特徴とするプロシアニジン類の定量方法。
【請求項3】
前記飲食品が飲料であることを特徴とする請求項1に記載のプロシアニジン類の定量方法。
【請求項4】
前記飲料が茶飲料であることを特徴とする請求項3に記載のプロシアニジン類の定量方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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