説明

プロジェクタ

【課題】 温度及び気圧に基づいて冷却ファンを制御する場合に、冷却ファンへの制御電圧の制御電圧が許容値以上または、外気圧が許容気圧範囲以下の場合は、十分な冷却ができないという問題点があった。
【解決手段】 冷却ファン13を有するプロジェクタにおいて、機器内部温度または外気温を検出するための温度センサ2と、外気圧を検出するための気圧センサ3と、前記温度センサ2で検出した機器内部温度または外気温から前記冷却ファン13の目標回転数を求め、この目標回転数を前記気圧センサで検出した外気圧値に基づいて補正を行って補正された目標回転数を演算する演算手段1と、当該演算手段1で演算した目標回転数に対応した制御電圧が、前記冷却ファンの最大値以上、または外気圧が前記冷却ファンの許容気圧以下の場合は、前記発光管7への供給電力を減少させる制御装置とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却ファンを有するプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スクリーン等に映像を投射して表示するプロジェクタにおいては、ケーシング内部の温度上昇を防ぐため、冷却ファンにより空冷を行っている。ここで冷却ファンの回転数は、消費電力の低減と騒音防止のため、温度センサを設けて、この温度センサにより検出された温度に基づいて、制御が行われている。
【0003】
更に、プロジェクタにおいては、気圧の低い場所(例えば、高所)では、温度のみの制御では、冷却ファンによる十分な冷却が行えないことから、温度センサだけでなく気圧センサを設け、温度センサによって検出された検出温度と気圧センサによって検出された検出気圧に基づいて、冷却ファンの回転数を制御することが行われている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−258237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の構成では、検出した温度及び気圧に基づいて求めた冷却ファンの目標回転数をとなるよう冷却ファンへの制御電圧を制御するが、冷却ファンの制御電圧が、許容される最大値より大きくなる場合や、検出した外気圧が冷却ファンの許容気圧範囲以下の場合は、十分な冷却ができないという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記事情によりなされたもので、その目的は、気圧が許容範囲以下であっても、十分に冷却を行うことができるプロジェクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明のプロジェクタは、光源としての発光管と、この発光管を冷却するための冷却ファンを有するプロジェクタにおいて、機器内部温度または外気温を検出するための温度センサと、外気圧を検出するための気圧センサと、前記温度センサで検出した機器内部温度または外気温から前記冷却ファンの目標回転数を求め、この目標回転数を前記気圧センサで検出した外気圧値に基づいて補正を行って補正された目標回転数を演算する演算手段と、当該演算手段で演算した目標回転数に対応した制御電圧が、前記冷却ファンの最大値以上、または外気圧が前記冷却ファンの許容気圧以下の場合は、前記発光管への供給電力を減少させる制御装置とを具備することを特徴とする。
【0007】
このような構成を有することにより、冷却ファンの許容気圧範囲以下の場合であっても、プロジェクタ内部の冷却を行えるようになる。
また、上記目的を達成するために本発明のプロジェクタは、光源としては発光管と、この発光管を冷却するための冷却ファンを有するプロジェクタにおいて、機器内部または外気温を検出するための温度センサと、外気圧を検出するための気圧センサと、前記温度センサで検出した機器内部温度または外気温から前記冷却ファンへの供給電力のデューティ比を求め、前記気圧センサで検出された外気圧に基づく補正を行って冷却ファンの供給電力の補正されたデューティ比を演算する手段と、この演算手段で演算した冷却ファンへの供給電力のデューティ比が、外気圧が許容気圧以下の場合は、前記発光管への供給電力を減少させる制御装置とを具備することを特徴とする。
【0008】
このような構成を有することにより、冷却ファンの許容気圧範囲以下の場合であっても、プロジェクタ内部の冷却を行えるようになる。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明では、検出した温度と気圧により求めた冷却ファンの動作量を求めて、この動作量が冷却ファンの許容値を超えた場合は、発光管の光量を減少させるという構成をとるため、この環境(気圧・温度)の変化に対して、冷却ファンの能力及び発光管の駆動電力を制御し、機器の内部温度を一定にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の第1の実施の形態に関わるプロジェクタの構成を示す概略ブロック図である。
図において、各種制御や演算を行う演算処理装置(CPU)1には、温度を検出する温度センサ2、外気圧を検出する気圧センサ3、各種操作を行う操作部4が接続されている。また、演算処理装置(CPU)が演算を行うための必要なデータを記憶したメモリ5である。ここで、温度センサ2は、機器内部の温度を検出するものでも、機器外部の外気温を検出するものでもどちらでも構わない。
【0012】
更に、演算処理装置(CPU)1は、電力供給を行う発光管駆動回路6を介して光源としての発光管(ランプ)7が接続されている。ここで発光管駆動回路6からの供給電力の電圧値は、通常の照度で発光管を光らせる「電力(通常)」と、照度を落として光らせる「電力(低)」の2種類が設定されている。もちろん、電圧値は2段階に限定されるものでなく、3段階以上の設定があるとなお良い。
【0013】
更に、当該プロジャクタには、例えばPC等の外部信号源とケーブル等を介して接続され、映像信号が入力される映像入力部8、この映像入力部から入力された映像信号に対してスケーリング等の表示のために必要な画像処理を行う映像処理部9、画像処理部で処理された映像信号によりライトバルブ10を駆動するライトバルブ駆動回路11が設けられている。ここでライトバルブ10は、発光管(ランプ)7からの照射光に対して映像信号に基づく変調を行うもので、例えば液晶パネルや、DLP方式等の種々の方式がある。
【0014】
そして、発光管(ランプ)7からの照射光がライトバルブ10を介して変調されて投射レンズ12に照射され、そして投射レンズ12で拡大され、図示しないスクリーンに照射され、映像を表示することができる。
【0015】
更に、前記発光管(ランプ)7を冷却する冷却ファン13、冷却ファン13へ電力を供給する冷却ファン駆動装置14、冷却ファン13から出力される回転数パルスから冷却ファン13の回転数を検出する回転数検出装置15が設けられている。ここで、冷却ファン13では、供給される駆動電圧について冷却ファン13の能力等を考慮した上限値が予め設定されている。また、極端に気圧が低くなると冷却ファン13が送風を行っても発光管(ランプ)7に対して、十分な冷却が行えなくなることから、許容できる最低限の気圧である許容気圧範囲も予め設定されている。
【0016】
図2はメモリ5に記憶されている、温度センサ2で検出する温度(外気温または機器内部温度)と目標回転数を対応つけたテーブルの一例を示す図である。当該テーブルは各温度毎に、供給電力が「電力(通常)」の場合と「電力(低)」の場合のそれぞれについて、目標回転数が対応付けられている。
【0017】
このような構成において、演算処理装置(CPU)1は、温度センサ2で検出された温度、外気圧、メモリ5に記憶されたデータに用いて、冷却ファン13の目標回転数を演算し、現在の回転数情報と比較してファン駆動装置14及び発光管駆動装置6を制御する。
【0018】
以下、図3は実施の形態に関するフローチャートを用いて、詳細に説明する。
まず、S31において温度センサ2により温度(外気温または機器内部温度)を検出する。次に、S32において発光管(ランプ)7へ供給電圧を確認する。ここで発光管駆動装置6から発光管(ランプ)7への供給電圧は、初期状態では電力(通常)となっている。
【0019】
次に、S33において、メモリ5に保存されたテーブルにより、発光管(ランプ)7への供給電力と、測定された温度から、冷却ファン13の目標回転数を呼び出す。
【0020】
次に、S34において、気圧センサ3により外気圧を検出し、この検出された外気圧を用いて、以下の補正式により目標回転数の補正を行う(S35)。
新たな目標回転数=目標回転数*基準気圧/気圧検出値
このようにして求められた「補正された新たな目標回転数」に基づき、演算処理装置(CPU)1は、S36において、回転数検出装置15により検出される冷却ファン13の回転数と一致するように、冷却ファン駆動回路14を制御して冷却ファン13への駆動電圧を制御する。
【0021】
ここで、S37において、冷却ファン13への駆動電圧が、上記説明した供給可能な電圧範囲を超えた電圧、または測定した外気圧が許容気圧範囲以下となっている場合は、S38に移行し、発光管(ランプ)7への供給電力を低下させて、以下S32に戻り、同様に動作を続ける。具体的には、発行管(ランプ)7への供給電力が2段階の場合は「電力(通常)」から「電力(低)」に変更する。また、3段階以上の設定がある場合は、現状より低い電力へ変更する。もし、発光管(ランプ)7への供給電力が、設定可能な最も低い電力量となっている場合は、発光管(ランプ)7を消灯、またはアラームを出すようにする。
【0022】
また、S37において、冷却ファン13への制御電圧が許容される最大値以下であって、かつ外気圧が冷却ファン13の許容気圧以上であれば、S39に移行する。
S39では、演算処理装置(CPU)1は、回転数検出装置15より冷却ファン13の回転数を検出し、この回転数が目標回転数となるように、冷却ファン駆動装置14を制御して、冷却ファン13への電力供給量を可変する。そして、S36に戻って以下の制御を繰り返す。
【0023】
このように、本実施の形態では測定された温度に基づいた目標回転数を外気圧に基づき補正して、冷却ファン13の回転数を補正した目標回転数となるように冷却ファン13への供給電圧の可変を行う。更にこの供給電圧が許容値を超える場合や外気圧が許容値を下回った場合は、発光管(ランプ)7の照度を低下させることで、プロジャクタ内部の温度上昇を防ぐことができる。
【0024】
このため、気圧による冷却ファンの回転数の制御に加えて、発光管(ランプ)7の照度の制御も行うため、気圧の高い場所では冷却ファンをより低速で駆動するため、静音化が可能となる。また、気圧の低い場所では、検出した気圧により冷却ファン13の冷却能力アップを行い、更にそれでも不十分な場合は、発光管(ランプ)7の供給電力の変更処理を行うことでより気圧の低い高所でも使用が可能となる。
【実施例2】
【0025】
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、発光管への供給電力のデューティ比を制御することにより、制御を行うものである。
構成は、前述した第1の実施の形態と同様であるが、メモリ5に記憶されるテーブルは、図4に示す温度とデューティ比の対応関係を示すテーブルとなっている。図4に示すテーブルは、温度毎に、供給電力(通常)の場合と供給電力(低)の場合のデューティ比が記憶されている。
【0026】
図5は、第2の実施形態に関するフローチャートである。
図において、S51において温度センサ2により温度(外気温または機器内部温度)を検出する。次に、S52において発光管へ供給電圧を確認する。ここで発光管駆動装置6から発光管(ランプ)7への供給電圧は、初期状態では電力(通常)となっている。
【0027】
次に、S53において、メモリ5に保存されたテーブルにより、発光管(ランプ)7への供給電力と、測定された温度から、冷却ファン7の供給電力のデューティ比を呼び出す。
【0028】
次に、S54において、気圧センサ3により外気圧を検出し、この検出された外気圧を用いて、以下の補正式によりデューティ比の補正を行う(S55)。
新たなデューティ比=デューティ比*基準気圧/気圧検出値
このようにして求められた補正値である「新たなデューティ比」に基づき、演算処理装置(CPU)1は、S56において、冷却ファン駆動回路14を制御して冷却ファン13への駆動電圧のデューティ比を制御する。
【0029】
ここで、S57において、S55で求めた新たなデューティ比が100%となる場合、または測定した外気圧が許容気圧範囲以下となっている場合は、S38に移行し、発光管(ランプ)7への供給電力を低下させて、以下S32に戻り、同様に動作を続ける。具体的には、発行管(ランプ)7への供給電力が2段階の場合は「電力(通常)」から「電力(低)」に変更する。また、3段階以上の設定がある場合は、現状より低い電力へ変更する。もし、発光管(ランプ)7への供給電力が、設定可能な最も低い電力量となっている場合は、発光管(ランプ)7を消灯し、アラームを出すようにする。
【0030】
このように、本実施の形態では、メモリ5に記憶したテーブルより求めた温度に対応する供給電力のデューティ比を、外気圧に基づき補正して、冷却ファン13への供給電力のデューティ比となるように冷却ファン13への供給電圧の可変を行う。そして、更にこのデューティ比が100%を超える場合や外気圧が許容値を下回った場合は、発光管(ランプ)7の照度を低下させることで、プロジャクタ内部の温度上昇を防ぐことができる。
【0031】
このため、気圧による冷却ファンの回転数の制御に加えて、発光管(ランプ)7の照度の制御も行うため、気圧の高い場所では冷却ファン13をより低速で駆動するため、静音化が可能となる。また、気圧の低い場所では、検出した気圧により冷却ファン13の冷却能力アップを行い、更にそれでも不十分な場合は、発光管(ランプ)7の供給電力の変更処理を行うことでより気圧の低い高所でも使用が可能となる。
【0032】
なお、本発明は、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態に関わる構成を示す概略ブロック図である。
【図2】外気温と目標回転数との関係を示すテーブル。
【図3】本発明の第1の実施の形態に関わるフローチャート。
【図4】外気温と制御電圧のデューティ比との関係を示すテーブル。
【図5】本発明の第2の実施の形態に関わるフローチャート。
【符号の説明】
【0034】
1・・・演算処理装置(CPU)
2・・・温度センサ
3・・・気圧センサ
4・・・操作部
5・・・メモリ
6・・・発光管駆動回路
7・・・発光管(ランプ)
8・・・映像入力部
9・・・映像処理部
10・・・ライトバルブ
11・・・ライトバルブ駆動回路
12・・・投射レンズ
13・・・冷却ファン
14・・・冷却ファン駆動装置
15・・・回転数検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源としての発光管と、この発光管を冷却するための冷却ファンを有するプロジェクタにおいて、
機器内部温度または外気温を検出するための温度センサと、
外気圧を検出するための気圧センサと、
前記温度センサで検出した機器内部温度または外気温から前記冷却ファンの目標回転数を求め、この目標回転数を前記気圧センサで検出した外気圧値に基づいて補正を行って補正された目標回転数を演算する演算手段と、
当該演算手段で演算した目標回転数に対応した制御電圧が、前記冷却ファンの最大値以上、または外気圧が前記冷却ファンの許容気圧以下の場合は、前記発光管への供給電力を減少させる制御装置と
を具備することを特徴とするプロジェクタ。
【請求項2】
光源としては発光管と、この発光管を冷却するための冷却ファンを有するプロジェクタにおいて、
機器内部または外気温を検出するための温度センサと、
外気圧を検出するための気圧センサと、
前記温度センサで検出した機器内部温度または外気温から前記冷却ファンへの供給電力のデューティ比を求め、前記気圧センサで検出された外気圧に基づく補正を行って冷却ファンの供給電力の補正されたデューティ比を演算する手段と、
この演算手段で演算した冷却ファンへの供給電力のデューティ比が、外気圧が許容気圧以下の場合は、前記発光管への供給電力を減少させる制御装置と
を具備することを特徴とするプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−69679(P2009−69679A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−239969(P2007−239969)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】