説明

プロジェクタ

【課題】投影面に合わせた最適な設定を自動的に行なうことができるプロジェクタを提供する。
【解決手段】投影面12に備えられた電子タグ13に記録されているID情報を読取る非接触電子タグ読取部6と、ID情報と関連付けられた投影条件情報を保存する投影条件情報保存部5と、投影面12に投影する画像データを処理する画像データ処理部10と、画像データ処理部10により処理された画像データを投影面12に投影する画像データ投影部11と、読取部6により読取られたID情報と関連する投影条件情報を投影条件情報保存部5より検索し、検索された投影条件情報に基づいて画像を処理するように画像データ処理部10を制御する投影条件情報制御部4と、投影条件情報の保存の操作を行う操作パネル2と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触電子タグ読取装置を搭載し、電子タグの情報に基づいて投影条件の設定を変更するプロジェクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタは、会議、プレゼンテーション、又はビデオ鑑賞用と多くの場面で使用される。使用に際して、より見やすい映像を投影するために、例えば、スクリーン、黒板、色の付いた壁など投影面の色の違いに合わせて設定を変更したり、部屋の大きさや投影面の明暗に合わせて投影画像の明るさを変更するなど、複数の設定や調整を行う必要がある。このような設定は、プロジェクタを同じ場所に常設して使用する場合は一度でよいが、1つのプロジェクタを共用して、会議や打ち合わせのたびに持ち運んで複数の場所で使用する場合は、投影面、周辺の明るさ等々の環境が変わるたびに設定を変更する必要があり、大変煩わしかった。
この問題を解消するために、特許文献1には、クレードル(携帯情報機器等を直接規格コネクタ類に接続することなく充電やデータ転送、あるいは拡張を行う拡張機器のこと)に設定を保存することで、設定、調整の手間を掛けずにプロジェクタを利用する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に開示されている従来技術は、複数の投影面を登録するには複数のクレードルが必要となり、プロジェクタを設置するたびに、設定が保存されたクレードルに変更する必要があり、煩わしいといった問題がある。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、投影面に応じた最適な設定を自動的に行なうことができるプロジェクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はかかる課題を解決するために、面状態が異なる複数の投影面に対して夫々任意の画質の像を投影するために必要とされる投影条件に関する投影条件情報を投影面毎に入力する投影条件情報入力手段と、前記投影面毎に配置されて各投影面についてのID情報を記録した非接触情報記録媒体と、前記各非接触情報記録媒体に記録されているID情報を読取る読取手段と、前記投影条件情報入力手段により入力された投影条件情報を記憶し、記憶した投影条件情報に係る特定の投影面に関するID情報を前記読取手段により読取って前記記憶した投影条件情報と関連付けて保存する投影条件情報保存手段と、前記投影条件情報に基づいて、前記特定の投影面に投影する画像データを補正する画像データ処理手段と、前記画像データ処理手段により補正された画像データを前記投影面に投影する画像投影手段と、前記各手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記読取手段により読取られたID情報に関連付けられた投影条件情報を前記投影条件情報保存手段より検索し、検索された投影条件情報に基づいて画像データを補正するように前記画像データ処理手段を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、各投影面に応じた最適な投影条件情報をプロジェクタに保存しておくので、投影面が変化しても、当該投影面に最適な設定を自動的に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】カラープロジェクタの基本構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るプロジェクタの内部構成を示すブロック図である。
【図3】投影条件情報保存部に保存する投影条件情報の構成について示す図である。
【図4】プロジェクタに投影条件情報を保存する動作を説明するフローチャートである。
【図5】プロジェクタに保存した投影条件情報を読み出して設定する動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1はカラープロジェクタの基本構成を示す図である。
投写型表示装置(液晶プロジェクター)50は、光源51と、光源51の出射面に対向して配置された第1のレンズアレイ52と、第1のレンズアレイ52の出射側に配置された重畳レンズ54とで構成される照明光学系を備えている。照明光学系から出射された光は、反射ミラー55により反射されて、ダイクロイックミラー61、60と、反射ミラー68とを含む色光分離光学系53に入射される。さらに、入射側レンズ59と、リレーレンズ56と、反射ミラー57、58とを含む導光光学系を備えている。また、3枚のフィールドレンズ66、65、62と、3枚の液晶ライトバルブ63R、63G、63Bと、クロスダイクロイックプリズム64と、投写レンズ67と、を備えている。
反射ミラー55は、重畳レンズ54から射出された光を色光分離光学系53の方向に反射する機能を有している。色光分離光学系53は、2枚のダイクロイックミラー61、60により、重畳レンズ54から射出される光を、赤、緑、青の3色の色光に分離する機能を有している。
【0008】
第1のダイクロイックミラー61は、重畳レンズ54から射出される光のうち赤色光成分を透過させるとともに、青色光成分と緑色光成分とを反射する。第1のダイクロイックミラー61を透過した赤色光は、反射ミラー68で反射され、フィールドレンズ66を通って赤光用の液晶ライトバルブ63Rに達する。このフィールドレンズ66は、重畳レンズ54から射出された各部分光束をその中心軸(主光線)に対して平行な光束に変換する。他の液晶ライトバルブの前に設けられたフィールドレンズ65、62も同様である。
第1のダイクロイックミラー61で反射された青色光と緑色光のうちで、緑色光は第2のダイクロイックミラー60によって反射され、フィールドレンズ65を通って緑光用の液晶ライトバルブ63Gに達する。一方、青色光は、第2のダイクロイックミラー60を透過し、導光光学系、すなわち、入射側レンズ59を透過し、反射ミラー57で反射し、リレーレンズ56を透過して反射ミラー58で反射し、さらに、フィールドレンズ62を通って青色光用の液晶ライトバルブ63Bに達する。
なお、青色光に導光光学系が用いられているのは、青色光の光路の長さが他の色光の光路の長さよりも長いため、光の拡散等による光の利用効率の低下を防止するためである。すなわち、入射側レンズ59に入射した光束をそのまま、フィールドレンズ62に伝えるためである。
【0009】
3つの液晶ライトバルブ63R、63G、63Bは、入射した光を、与えられた画像情報(画像信号)に従って変調する光変調手段としての機能を有している。これにより、3つの液晶ライトバルブ63R、63G、63Bに入射した各色光は、与えられた画像情報に従って変調されて各色光の画像を形成する。3つの液晶ライトバルブ63R、63G、63Bから射出された3色の変調光は、クロスダイクロイックプリズム64に入射する。
クロスダイクロイックプリズム64は、3色の変調光を合成してカラー画像を形成する色光合成部としての機能を有している。クロスダイクロイックプリズム64には、赤光を反射する誘電体多層膜と、青光を反射する誘電体多層膜と、が4つの直角プリズムの界面に略X字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって3色の変調光が合成されて、カラー画像を投写するための合成光が形成される。クロスダイクロイックプリズム64で生成された合成光は、投写レンズ67の方向に射出される。投写レンズ67は、この合成光を投写スクリーン上に投写する機能を有し、投写スクリーン上にカラー画像を表示する。
本発明では、後述する画像データ投影部11が、各液晶ライトバルブ63R、63G、63Bに対して画像データ処理部10により処理された画像データを受けて液晶ライトバルブ上に作像することにより、カラー画像を投影するものである。
【0010】
図2は本発明の実施形態に係るプロジェクタの内部構成を示すブロック図である。本実施形態のプロジェクタ1は、投影面12ごとに設定された投影条件情報に基づいて投影面12に画像を投影するプロジェクタであって、投影面12に備えられた電子タグ(非接触情報記録媒体)13に記録されているID情報を読取る非接触電子タグ読取部(以下、単に読取部と呼ぶ:読取手段)6と、ID情報に関連付けられた投影条件情報を保存する投影条件情報保存部(投影条件情報保存手段)5と、投影面12に投影する画像データを補正する画像データ処理部(画像データ処理手段)10と、画像データ処理部10により補正された画像データを投影面12に投影する画像データ投影部(画像投影手段)11と、読取部6により読取られたID情報に関連付けられた投影条件情報を投影条件情報保存部5より検索し、検索された投影条件情報に基づいて画像を補正するように画像データ処理部10を制御する投影条件情報制御部(以下、単に制御部と呼ぶ:制御手段)4と、投影条件情報の入力操作を行う操作パネル2と、操作パネル2からの情報を処理して制御部4及び電源部8に入力する入力情報処理部3と、プロジェクタに電源を供給する電源部8と、電源部8がONしたことを検知して制御部4に通報する電源検知部7と、外部のPC15とのデータ授受を仲介する外部接続部9と、を備えている。尚、投影する画像データの元となるデータはPC15から供給される。また、読取部6は電磁波14が電子タグ13に届く距離まで近づけることができる。
【0011】
また、本実施形態においては、投影条件情報の保存は、プロジェクタ本体で行う構成としたが、電子タグ13及び読取部6に読み書き可能なものを使用すれば、プロジェクタ1にはID情報のみを保存し、投影条件情報を電子タグ13に保存することも可能である。また、投影条件情報保存部5に保存されている投影条件情報の中から任意に選択可能な操作手段を備えるようにしても良い。即ち、電子タグ13に記録されているID情報とは無関係に、投影条件情報保存部5の中から任意に投影条件情報を選択できるようにしても良い。
【0012】
図3は、投影条件情報保存部に保存する投影条件情報の構成について示す図である。投影条件情報は、タグID20と対応付けられたプロジェクタ1の各種設定で構成されている。プロジェクタの投影画像を、色つきの投影面に投影したときに、人が見て白い投影面に投影したときに近い色合いにするために、プロジェクタからの投影画像の色を変更するプロジェクタの壁色補正といった機能がある。
例えば、黒板モード21、ランプパワー22等があり、タグID「00120001」の電子タグが備えられた投影面が白いスクリーンの場合は、壁色補正が不要であるので、黒板モード:切り、ランプパワー:低といった投影条件情報が保存されている。また、タグID「00120002」の電子タグが備えられた投影面が黒い黒板の場合は、壁色補正が必要であるので、黒板モード:黒、ランプパワー:標準といった投影条件情報が保存されている。これらの情報は、制御部4により投影条件情報保存部5に保存される。この他に、投影面12の色と投影画像の色が補色関係となるように、色に関する情報も保存するようにしても良い。例えば、緑色の黒板の場合は、赤系統の色で投影することにより、画像を見やすくすることができる。尚、投影条件情報には、投影画像の照度を調整するための投影条件情報が含まれる。また、投影条件情報保存部5には、投影条件が異なる複数の投影条件情報を保存する。
【0013】
次に本実施形態に係るプロジェクタの投影条件情報を保存する動作と、投影条件情報を読み出してプロジェクタに設定する動作について説明する。
図4はプロジェクタに投影条件情報を保存する動作を説明するフローチャートである。このフローチャートでは、ユーザが行なう動作と、プロジェクタが行なう動作を分けて説明する。
まず、ユーザは、投影面12に合わせた最適な設定を行なうため、投影面12の色や部屋の状態(明るさ、広さ等)を観察して、最適な設定はどのようにすればよいかを検討して、投影条件情報を決定する(S1)。例えば、投影面12が黒板や色つきの場合は、壁色補正を行なうように設定する。投影条件情報が決定すると、投影面12の適所にID情報が記憶されている電子タグ13を貼る(S2)。これにより、当該投影面12は、電子タグ13に記録されているID情報の投影面となる。次に、決定した投影条件情報を操作パネル2から入力する(S3)。ユーザの操作はこれで終了する。
【0014】
ユーザにより入力された投影条件情報は、入力情報処理部3により処理されて、制御部4に伝えられる(S4)。制御部4は、それにより、読取部6に対して電子タグ13のID情報を読取るための電磁波14を放射するように指令する。電磁波14は、電子タグ13により受信されると、そのエネルギーを電源として電子タグ13が活性化して情報の授受を行なう。この結果、電子タグ13に記録されているID情報を読取部6により読取る(S5)。そしてID情報が正しく読み取られると(S6でY)、制御部4は、そのID情報を操作パネル2より入力した投影条件情報と関連付けて投影条件情報保存部5に保存する(S7)。これにより、ID情報と投影条件情報が関連付けられて保存される。一方、ステップS6で電子タグ13のID情報が正しく読取られない場合(S6でN)は、動作を終了して、電子タグ13を良品と交換する。
【0015】
図5は投影条件情報保存部に保存した投影条件情報を読み出してプロジェクタを設定する動作を説明するフローチャートである。このフローチャートでは、ユーザが行なう動作と、プロジェクタが行なう動作を分けて説明する。
まず、ユーザは、操作パネル2から電源部8をONする(S11)。それにより、制御部4は、読取部6に対して電子タグ13のID情報を読取るための電磁波14を放射するように指令する。電磁波14は、電子タグ13により受信されると、そのエネルギーを電源として電子タグ13が活性化して情報の授受を行なう。この結果、電子タグ13に記録されているID情報を読取部6により読取る(S12)。そしてID情報が正しく読み取られると(S13でY)、制御部4は、投影条件情報保存部5に、読み出したID情報と同じ電子タグ(登録済みの電子タグ)があるか否かを検索する(S14)。登録済みの電子タグがあると(S14でY)、そのID情報に関連付けられた投影条件情報に基づいて画像データ処理部10により画像データを補正して、画像データ投影部11により補正された画像を投影面12に投影する(S15)。一方、ステップ13でID情報が正しく読取れない場合(S13でN)、又は、登録済みの電子タグが無い場合(S14でN)は、そこで終了する。
【0016】
このように、各投影面12の環境に基づいて最適な投影条件情報を作成し、その投影面12に備えられた電子タグ13のID情報と関連付けて保存しておくため、投影面12の環境が変化しても、電子タグ13のID情報から自動的に投影条件情報を検索して、プロジェクタ1を投影面12に最適な条件で動作させることができる。
【符号の説明】
【0017】
1 プロジェクタ、2 操作パネル、3 入力情報処理部、4 投影条件情報制御部、5 投影条件情報保存部、6 非接触電子タグ読取部、7 電源検知部、8 電源部、9 外部接続部、10 画像データ処理部、11 画像データ投影部、12 投影面、13 電子タグ、14 電磁波、15 PC、20〜22 投影条件情報、50 投写型表示装置(液晶プロジェクター)、51 光源、52 第1のレンズアレイ、53 色光分離光学系、54 重畳レンズ、55 反射ミラー、56 リレーレンズ、57、58 反射ミラー、59 入射側レンズ、60、61 ダイクロイックミラー、62 フィールドレンズ、63R、63G、63B 液晶ライトバルブ、64 クロスダイクロイックプリズム、66、65、67 投写レンズ、68 反射ミラー
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2011−049865公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面状態が異なる複数の投影面に対して夫々任意の画質の像を投影するために必要とされる投影条件に関する投影条件情報を投影面毎に入力する投影条件情報入力手段と、
前記投影面毎に配置されて各投影面についてのID情報を記録した非接触情報記録媒体と、
前記各非接触情報記録媒体に記録されているID情報を読取る読取手段と、
前記投影条件情報入力手段により入力された投影条件情報を記憶し、記憶した投影条件情報に係る特定の投影面に関するID情報を前記読取手段により読取って前記記憶した投影条件情報と関連付けて保存する投影条件情報保存手段と、
前記投影条件情報に基づいて、前記特定の投影面に投影する画像データを補正する画像データ処理手段と、
前記画像データ処理手段により補正された画像データを前記投影面に投影する画像投影手段と、
前記各手段を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記読取手段により読取られたID情報に関連付けられた投影条件情報を前記投影条件情報保存手段より検索し、検索された投影条件情報に基づいて画像データを補正するように前記画像データ処理手段を制御することを特徴とするプロジェクタ。
【請求項2】
前記投影条件情報には、前記投影面の色の違いに応じて前記投影画像の投影色を変更するための情報が含まれることを特徴とする請求項1に記載のプロジェクタ。
【請求項3】
前記投影条件情報には、前記投影画像の輝度を調整するための情報が含まれることを特徴とする請求項1に記載のプロジェクタ。
【請求項4】
前記投影条件情報保存手段に保存されている投影条件情報の中から任意に選択可能な操作手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−101207(P2013−101207A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244390(P2011−244390)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】