説明

プロジェクタ

【課題】 本発明の目的は、装置の大型化することなしに、スクリーンに正対させたあと、スムーズに投射位置合わせを可能とするプロジェクタを提供するものである。
【解決手段】
プロジェクタにおいて、プロジェクタが置かれた床と接触する回転部材と、該回転部材を駆動するための第1のアクチュエータと、該回転部材の進行方向を変えるための第2のアクチュエータと、高さ調節のための第3のアクチュエータからなる高さ調節足ユニットを2つ以上有することを特徴とする構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器に関し、特に画像を拡大投射するためのプロジェクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来プロジェクタの画像投射位置を合わせることは、非常に煩わしい作業となっていた。これらを解決するための一つの手段として、特許文献1、及び特許文献2においては、スクリーン面に対してプロジェクタ装置そのものを正対させる提案はなされている。
【0003】
特許文献1は、傾いたときに、足中心の微小偏芯を利用して左右に投射方向を振る(左右首振り)。
【0004】
特許文献2は、足にローラを付けて、左右の投射方向を自動で調整する(正対)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-33874号公報
【特許文献2】特開2005-201954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記従来例では、スクリーンに対して正対(垂直に投射する位置)させることはできるが、スクリーン面に対して平行な方向の位置を合わせることはできない。仮に正対させても、スクリーンの左右の位置が合わないので、装置を持ち上げたり引きずったりして調整しなければならない。すると合わせた画像が動いてしまうために何度もやり直さなければならず煩わしい作業となる。またこれを解決するために横方向にシフト可能な装置が市販されているが、シフトするために装置が大型化してしまい高価なものとなってしまう。
【0007】
本発明の目的は、装置の大型化することなしに、スクリーンに正対させたあと、スムーズに投射位置合わせを可能とするプロジェクタを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これらの問題を解決するために、
画像を拡大投射するためのプロジェクタにおいて、
プロジェクタが置かれた床と接触する回転部材と、
該回転部材を駆動するための第1のアクチュエータと、
該回転部材の進行方向を変えるための第2のアクチュエータと、
高さ調節のための第3のアクチュエータからなる高さ調節足ユニットを2つ以上有するものである。
【発明の効果】
【0009】
前記構成とすることで、プロジェクタが置かれた机上面内で装置本体が自走して、前後・左右・回転・傾きと6軸の調整が可能となる。つまり本提案の高さ調整足ユニットの構成においては、スクリーンに対して正対する位置に調整を行った後に、本体の傾き調整を行い、そのままの姿勢にてスクリーン面と平行に移動することができる。これら一連の動作がリモコンまたは自動で装置に触れることなく行え、画像がぶれずに行える。装置を持ち上げたり引きずったりしなくてすむので、一度合わせた状態を維持したまま最終調整が行え、位置合わせがスムーズかつ早く行えるものである。オートフォーカス、パワーズーム、電動レンズシフトなど電動機能が次々にプロジェクタに盛り込まれているが、本提案によりまだ実現されていなかった十分な電動位置調整を可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】足ユニットを斜め上方から見た図
【図2】プロジェクタ装置全体の外観を示す図
【図3】足ユニットの断面図
【図4】足ユニットの断面図
【図5】足ユニットの略分解図
【図6】足ユニット内の突出ユニット分解図
【図7】足ユニット全部品の分解図
【図8】足ユニットの移動方向変更状態を示す図
【図9(a)】装置に足ユニットを装着した場合の移動方向変更状態を示す図(その1)
【図9(b)】装置に足ユニットを装着した場合の移動方向変更状態を示す図(その2)
【図9(c)】装置に足ユニットを装着した場合の移動方向変更状態を示す図(その3)
【図10】足ユニットの突出高さ変更状態を示す図
【図11】プロジェクタ装置全体の高さ調節状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施例1]
図1と図2にて、大まかな部品の説明を行う。図1には足ユニットである1000が示されている。1はベースで足ユニットのすべての部品が直接または間接的に保持されている。10は移動用アクチュエータで、20は回転用アクチュエータで、30は高さ調整用アクチュエータである。
【0012】
図2は、画像を拡大投影するプロジェクタの装置全体を示す図である。2000は外装上で、3000は外装下で、4000はプロジェクタ装置内で生成された画像を拡大投射するための投射レンズである。図2(a)は装置を斜め上方から見た斜視図であり、図2(b)は同様に斜め下方から見た斜視図である。図2(b)によりプロジェクタ装置底面に、図1にて説明の足ユニット1000が3箇所に設けられている。装置前方に配置されているのが1000Fで、装置後方右側に1000Rが配置され、装置後方左側に1000Lが配置されている。
【0013】
図3と図4の断面図にて、10、20、30の各アクチュエータの動力伝達系を説明する。図3において、10の移動用アクチュエータからの出力は、10a部を伝って、14のローラAに伝達される。14からの回転力は、13のベルトに伝達され、16のボールに伝達される。15のローラBは、13のベルトの動力伝達の補助的役割を担うものである。12は突出ホルダーで、10の移動用アクチュエータを、11のビスIにて固定保持しており、16のボールまでの動力伝達に関係する部材全てを内包している。17のボールカバーは、16のボールが12の突出ホルダーから外れないようにするためのカバーである。
【0014】
次に30の高さ調整用アクチュエータの動力伝達系を説明する。30の高さ調整用アクチュエータには、32のギヤTが取り付けられている。32のギヤTからの動力は、33のアイドラーギヤTに伝達され、34のリフトギヤリングに伝達される。34のリフトギヤリングの内径にはネジが切られているので、12の突出ホルダー外周に切られたネジと噛み合い、12の突出ホルダーを、1のベース底面から突出させることができるものである。1のベースには、4の固定蓋下が装着され、34のリフトギヤリングを回転摺動可能に保持するものである。次に図4において、20の回転用アクチュエータには、22のギヤKが取り付けられており、23の回転筒伝達される。23の回転筒外周にもギヤを一体で設けているので、22のギヤTからの力が伝達されるものである。図3には、23の回転筒から、12の突出ホルダーへの動力伝達が示されている。20の回転用アクチュエータからの駆動力は、23の回転筒に設けられた溝部23aにて、12の突出ホルダーに設けられた凸部12aに伝えられる。これにより12の突出ホルダーは回転させられるので、16ボールの回転方向を変更することができるものである。
【0015】
図5の立体的構図にて、1000の足ユニットの、概略構成を再確認する。1のベースに、12の突出ホルダーに内包または保持される、100の突出ユニットが保持される。100の突出ユニットを、1のベースから突出させるためのアクチュエータである30は、31のビスTにて、1のベースに固定されている。また100の突出ユニットを回転させるためのアクチュエータ20は、21のビスKにて、1のベースに固定されている。23の回転筒内で100の突出ユニットは上下に移動できるように保持しながら、1のベースの上で回転可能でなくてはならない。このために2の固定枠上にて、23の回転筒は、1のベースに、回転自由に保持されるものである。2の固定枠は、3のビスAにて、1のベースに固定されるものである。
【0016】
図6は、突出ユニット100の構成を示す図であり、13のベルトが、14のローラAと、15のローラBに両端を巻きついていることを示すものである。
【0017】
図7は、図5の構成のままでは、1000の足ユニットを組み立てられないので、組み立て順序を概略説明するものである。100の突出ユニットを先に組み立ててしまうと、23の回転筒と、2の固定枠上が取り付けられなくなるので、10の移動用アクチュエータは、23と2を12の突出ホルダーにはめてから後に取り付けるものである。また17のボールカバーは、34のリフトギヤリングを通せないので、100の突出ユニットを構成する前に、通しておく必要がある。
【0018】
図8は、1000の足ユニットが移動方向を変更する状態を示すものである。1のベースに取り付けられた100の突出ユニットは、23の回転筒が回転っせられることで、図8(a)の状態から図8(b)の状態に移行する。図8(a)においては、10の移動用アクチュエータの突出方向と直行方向である、紙面略左右方向に移動する状態である。同様に、図8(b)は、10の移動用アクチュエータの突出方向が90度回転しており、紙面略前後方向に移動する状態にある。
【0019】
図8を踏まえて、図9にて装置全体の移動方向を説明する。図9(a)の状態は、3000の外装下に設けられた3箇所の足ユニット、1000F、1000R、1000Lの移動方向が全て装置前後方向に揃っており、前方または後方に移動可能な状態を示すものである。図9(a)では前方に矢印を付しているが、10の移動用アクチュエータの回転方向制御を変えることで後方への移動も可能とするものである。図9(b)は3000の外装下の略中心から描かれる円接線方向に、各足ユニットの移動方向が向いている状態である。これにより装置全体は、装置略中心にて置かれた平面内にて回転することができるものである。正確には、装置の回転中心は、各足ユニット、1000F、1000R、1000Lの移動進行方向と直行する軸の交点を中心として回転する。ただし前記直行軸は、3本存在するために、厳密には交点は3箇所存在する場合がある。この場合はスムーズに回転できなくなくなるので、極力交点が1か所になるように、足ユニットの移動進行方向を制御するものである。図9(c)においては、1000の足ユニットの移動進行方向が、図9(a)の状態から90°回転している。この状態では、図9(a)の装置全体が紙面略前後方向に移動するのに対して、左右方向に移動可能とした状態である。図9の(a)(b)(c)の組み合わせで、装置が置かれた平面内を自在に移動、回転可能とするものである。
【0020】
図10は、100の突出ユニットが、1のベースから突出する状態を示すものである。図10(a)の状態では、100の突出ユニットは、突出していないが、図10(b)の状態にて、ほぼ最大量突出した状態となっている。このとき、23の回転筒に設けた切り欠き部23cに、10の移動用アクチュエータが入り込むので、23の回転筒との干渉を避けるものである。また、10の移動用アクチュエータの突出方向が一定でありながら、100の突出ユニットを突出可能としていることが示されている。つまり高さ調整を行うことで移動進行方向が変化せず、独立して高さ調整が可能となる。
【0021】
図11は、100の突出ユニットが3箇所おのおのの高さに突出された状態を示すもので、これにより様々な傾きを持つ平面に置かれても、任意の傾きまたは、所定の水平状態に調整できることを示すものである。
【0022】
3箇所に1000の足ユニットを備えることで、装置を置かれた平面に対して、装置そのものが自在に移動可能であることを説明している。また装置そのものは、限定された範囲であるが、装置全体としては6軸に調整可能となっている。それぞれの軸は、独立して調整可能な構成であるので、例えば後述の調整が可能となるものである。
【0023】
スクリーンに対して、概略の位置にプロジェクタを置き、プロジェクタを稼動させる。稼動点灯されることで、スクリーン上に画像が映し出される。まず1軸目として、スクリーン面に対して装置を正対させた状態にする。リモコン操作にて自走回転させ、投射画像左右端の縦辺の長さが合うまで調整を行う。この時装置は、リモコンからの信号を受けて自動的に図9(b)の状態となり回転する。次に2軸目として装置の左右傾きを調節する。これが調節されていないと投射画像の上辺または底辺が傾いているので、高さが合うまで調節を行う。この時装置は、リモコンからに信号を受けて、1000Rまたは1000Lが、自動的に図10(a)から図10(b)に示す状態の間で最適な位置に調節される。次に3軸目として投射画像位置がスクリーンに対して左右均等になるように合わせる。この時装置は、リモコンからの信号を受けて自動的に図9(c)の状態となりスクリーン面に対して平行に自走することで調整される。次に4軸目として投射画像の横幅をスクリーンの幅に合わせる。この場合投射レンズのズーム機能を使用することもできるが、装置とスクリーンとの距離を変えて合わせることができる。距離を変える場合は、リモコンからの信号を受けて自動的に図9(a)の状態となりスクリーンに面との間隔を変えるよう自走して投射画像の大きさを調節する。次に5軸目としてスクリーンに対して投射画像の全体高さを調節する。この時装置は、リモコンからの信号を受けて自動的に図11の状態となり全体高さを調節する。次に6軸目として、1000Fだけの突出量を変えて装置前後方向の傾きを変えて高さ調整を行う。5軸目と6軸目の調節は目的が略近しいので、高さ調節はどちらでもよい。しかし厳密には6軸目の調節だけで高さ調節を行うと台形歪が発生するので、理想的には6軸目にて装置の水平調節を行い、レンズシフトまたはデジタル画像シフト機能を使用するほうが良い。最後はピント調節を行う。装置にAF機能があればこれを利用するが、無い場合は、リモコン操作等にてマニュアルフォーカス調整を行う。
【0024】
これまで述べた装置の調節手順はどこからはじめても良いが、基本的には大きく誤差を持った項目から調整を行い収束させるのが効率的である。前述の例では、リモコンから信号を送り、各軸調節を個別手動調節を行うものであるが、CCDやラインセンサー、または距離測定センサーなどを具備することで、スクリーンに対する現在の装置の状態や、スクリーンに投射された投射画像の状態を検知して、全自動調節を行うことも可能である。
また、不図示ではあるが、足ユニットの各アクチュエータの駆動を検知するセンサーを具備することで、移動量、移動方向、突出高さを検出して、より正確な制御をも可能とするものである。
【0025】
以上のように、オートフォーカス、パワーズーム、オートキーストン、オートホワイトバランス、デジタルシフトなど様々な自動調整機能が可能となってきている昨今において、レンズシフトなどによる装置の大型化をすることなく、十分な自動画像位置調整を可能とするものである。
【符号の説明】
【0026】
1000 足ユニット
1 ベース
10 移動用アクチュエータ
20 回転用アクチュエータ
30 高さ調整用アクチュエータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を拡大投射するためのプロジェクタにおいて、
プロジェクタが置かれた床と接触する回転部材と、
該回転部材を駆動するための第1のアクチュエータと、
該回転部材の進行方向を変えるための第2のアクチュエータと、
高さ調節のための第3のアクチュエータからなる高さ調節足ユニットを2つ以上有することを特徴とするプロジェクタ。
【請求項2】
プロジェクタの内部部品保護のための外装部材を有し、
前記全てのアクチュエータは外装部材に内包される構造としたことを特徴とする請求項1に記載のプロジェクタ。
【請求項3】
該高さ調節足ユニットは、第1のアクチュエータから該回転部材への動力伝達部と、第3のアクチュエータにより外装から伸び出る
足部材を有し、該動力伝達部は該足部材に内包されていることを特徴とする請求項2に記載のプロジェクタ。
【請求項4】
該回転部材は、該回転部材の回転中心軸と、前記第2のアクチュエータにより回動される部材の回転中心軸の交点を中心とした
球形状をなしていることを特徴とする請求項1に記載のプロジェクタ。
【請求項5】
画像を拡大投射するプロジェクタにおいて、
スクリーン面に対して正対した姿勢に電動調整可能な手段と、
前記スクリーン面に対して正対した姿勢を維持したままスクリーン面に対して平行方向に電動移動可能な手段を有することを
特徴とするプロジェクタ。
【請求項6】
前記スクリーン面に対して平行な方向に電動移動可能な手段を有する部位は、
2つ以上の高さ調節足ユニットであること特徴とする請求項5に記載のプロジェクタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9(a)】
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【図9(b)】
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【図9(c)】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−80087(P2013−80087A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219771(P2011−219771)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】