説明

プロセス制御工業のための汚れ及び腐食検出器

工業プロセスの管18の中を流れる流体からプロセスエレメントの起こりうる又は起こりそうな腐食又は汚れを推測する方法が記載される。ボディ28の周波数応答を計測する。計測した周波数応答を記憶された値に対して比較する。計測した周波数応答と記憶された値との比較に基づいて、プロセスエレメントの腐食又は汚れを識別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は一般に、工業プロセスのための汚れ及び腐食検出器に関し、より具体的には、工業プロセス中のプロセスエレメントの汚れ及び腐食を予測するための現場取り付け型検出器に関する。
【0002】
一般に、「汚れ(fouling)」とは、表面上の表面物質の付着をいう。汚れは、熱交換器における不具合の一般的な原因であり、検出しにくい。熱交換器とは、たとえばプロセスと熱交換器内を循環する流体との間の熱の移動を促進する装置である。熱交換器は、リアクタ、ボイラなどをはじめとする数多くの工業システムで使用されている。
【0003】
この熱交換を促進するものは、中を流体が絶えず循環する一つ以上の管で構成された交換器コアである。本明細書で使用する「流体(fluid)」とは、液体又は気体状態にあるプロセス材料をいう。流体は、交換器コアを通って循環する。一部の実施態様では、流体は、腐食性を有する場合もあるが、蒸気又は高温もしくは低温のプロセス材料である場合もある。
【0004】
一般に、交換器コアは、容器、導管又は工業プロセスの他の構成部品と隣接及び/又は接触して配置されて、熱をプロセスと交換器内を循環する流体との間で移すことができる。一般に、熱交換器内の流体は、交換器に送り込まれ、交換器中を循環し、交換器の他方の側で収集される。多くの場合、収集された流体はリサイクルされ、再循環される。リサイクルとは、特定の実施により、収集した流体を加熱又は冷却するプロセスをいう。たとえば、交換器中を循環する流体が蒸気であるならば、凝縮させた蒸気を収集し、相が蒸気に戻るまで再加熱したのち、交換器中に戻して循環する。
【0005】
使用される材料に依存して、交換器を通過する循環流体は、腐食を生じさせる場合もあり、交換器を目詰まりさせる又は被覆するおそれのある固体を含有する場合もあり、それによって熱交換プロセスの効率を低下させる。一般に、腐食及び汚れは、工業プロセスにおける交換器中で重大な問題を引き起こす。たとえば、汚れのせいで熱交換器が目詰まりするならば、又は腐食のせいで不具合を起こすならば(シールが腐食し、圧力が失われるなどの理由で)、プロセス流体は、交換器コアを通って循環することができず、熱交換の効率が損なわれるおそれがある。さらには、交換器コアを使用して熱をプロセスに伝える、又はプロセスから熱を取り出す場合、その交換器が目詰まりするならば、プロセスは所望の温度に到達しないかもしれない。さらには、交換器コア中の流体とで熱を交換するプロセス材料が、外側からコアを汚れ又は腐食させて、交換器コアの効率を落とすおそれもある。
【0006】
熱交換器コアが汚れ又は腐食すると、一般には、コアを保守点検する(目詰まりを解消したり、交換したり、他のやり方で修理する)ことができるよう、システムが運転停止される。運転中に交換器コアが不具合を起こすならば、システムが運転停止されるだけでなく、そのバッチを放棄しなければならないかもしれない。一般に、起こりそうな汚れ及び/又は腐食を識別し、不具合を起こす前にコアを保守点検することが望ましい。
【0007】
プロセス工業では、予定外のプラント停止時間は、生産の損失及び運転停止/始動に要する費用の両方のせいで、多大な費用損失になる。業種によって異なるが、計画的なメンテナンスは、多くの場合、完全なプラント運転停止よりもずっと安上がりである。また、予定外のプラント停止時間を招く事象は、結果として、安全性の問題、環境問題及び欠陥商品を生じさせるおそれがある。
【0008】
そのような予定外の事象を可能な限り回避するため、プロセス制御工業では、診断情報を作成し、アラームを発するための装置が使用されている。一般に、プロセス変量がモニタされ、所定の限界を超えると、アラーム状態が報告される。通常、アラームは、プロセス変量が正常範囲の外にあることを示唆する。原因は、制御室又はそのアラームを発した計器のいずれかで、利用可能な他の情報から決定又は推測されることになる。従来、目詰まり又は被覆の検出は、エネルギーバランス又は効率が既知のベースライン状態から低下したかどうかを判断するために、複雑な圧力容積関係の高度な解析を要するものであった。
【0009】
概要
工業プロセスの管の中を流れる流体からプロセスエレメントの起こりうる又は起こりそうな腐食又は汚れを推測する方法が記載される。ボディの周波数応答を計測する。計測した周波数応答を記憶された値に対して比較する。その比較に基づいてプロセスエレメントの腐食又は汚れを識別する。一つの実施態様では、比較に基づいて腐食又は汚れのタイプの特性を推測する。
【0010】
詳細な説明
一般に、本発明は、プロセスフローの中、好ましくはプロセスエレメントの上流側に挿入することができ、装置の共振周波数に基づいて下流側の汚れ及び腐食状態を予測するために使用することができる装置に関する。本発明はまた、プロセス構成部品の汚損及び腐食(又は目詰まり)を、プロセス構成部品の上流側に配置された装置の共振周波数に基づいて予測するための技術に関する。
【0011】
図1は、汚れ検出器12及び熱交換器14を含む工業プロセス10の簡略化ブロック図を示す。熱交換システムは、熱交換器14の上流側に配置された汚れ検出器12を含み、汚れ検出器12は他方、本発明の実施態様にしたがって、リサイクル塔16に結合されている。設計において一般的であり、本発明の一部ではない熱交換システムの多くの構成部品は、熱交換器14及びリサイクル塔16の多くのエレメントをはじめとして、省略又は簡略化されている。
【0012】
一般に、流体は、リサイクル塔16によって処理され、管18の中を流れ、汚れ検出器12を通過し、熱交換器14のシェル20に入る。流体は、この実施態様では入口ライン22を介して熱交換器14に送り込まれ、熱交換器14内の管24を通って循環するプロセス流体で熱エネルギーを交換する。使用された流体は、ライン26を介して熱交換器14から出て、リサイクル塔16を通って循環して交換器14に戻ることができる。入口ライン22を介して導入されたプロセス流体は、交換器中を流れ、出口ライン23を介して外に流れ出る。
【0013】
一般に、リサイクル塔16は、加熱塔又は冷却塔である場合がある。あるいはまた、リサイクル塔16は、使用された流体を熱交換器14に再循環させる前に使用された流体に対して何らかの他の処理を実施することもできる。
【0014】
流体は、汚れ検出器12の周囲を流れたのち熱交換器14に流れ込む。汚れ検出器12を熱交換器14の上流側に配置することにより、一部には汚れ検出器12の共振周波数に基づいて、プロセス流体による交換器コア14の腐食又は汚れを予測することが可能である。
【0015】
第二の汚れ検出器12が交換器の上流側に配置され、プロセス流体入口ライン22に結合されている。第二の汚れ検出器12は、交換器コア14の上流側の入口ライン22及び交換器コア14の内部で起こりうる又は起こりそうな汚れ又は腐食を検出するために使用される。
【0016】
以下に記すように、汚れ検出器12は、流体流れの中に延びる障害物のボディ又はエレメントで構成されている。センサがボディに結合されてその共振周波数を検出する。一部の実施態様では、ボディは、流体流れによってその共振状態に励起される。他の実施態様では、ボディは、圧電エレメントを使用してその共振状態に励起される。いずれの場合でも、障害物のボディの共振周波数は、汚れ又は腐食のせいでボディの質量が変化するとともに変化して、それにより、下流側エレメントの起こりうる又は起こりそうな汚れ又は腐食を予測する。
【0017】
図1の実施態様では、2個の汚れ検出器12が、一方はプロセス流体用として、もう一方は加熱/冷却流体用として設けられている。しかし、いかなる数の汚れ検出器12を使用してもよい。一部のシステムでは、1個の汚れ検出器12で、起こりそうな汚れ又は腐食状態を予測するのに十分であるかもしれない。
【0018】
熱交換器中の汚れ又は腐食を診断する状況で様々な実施態様を記載したが、本発明は、プロセス流体流れの流体流れ中の汚れ又は腐食を判断することが望まれる多くの異なる用途で使用することができることが理解されよう。図2は、本発明の実施態様の汚れ検出器12の現場における簡略化断面図を示す。汚れ検出器12は、プロセス管18への取り付けのためのフランジ19を備えた管セグメント17中に配置された共振体又はボディ28を含む。一般に、ボディ28は、管18中の流体流れを少なくとも部分的に妨げるサイズである。ボディ28は、好ましくは、圧電エレメント30及びセンサ32に結合され、それらの両方がリード34によってプロセス回路36に接続されてもよい。プロセス回路36は、通信リンク40を介してコントロールセンタ38と通信するように適合されたトランシーバを含むこともできる。プロセス回路36はまた、ボディ28を振動するために圧電エレメント30を駆動するための駆動回路を含むこともできる。
【0019】
ボディ28はベース42に取り付けられ、このベースは、管セグメント17の、厚みを減らした領域(以下「湾曲部」46と呼ぶこともある)の壁44に結合されている。厚みを減らした領域46は、ボディ28の動きに応答して計測可能なひずみを発生させる。
【0020】
汚れ検出器の初期共振周波数は、曲げ剛性、ボディ28の質量及び、程度は低めであるが、減衰の関数である。プロセス材料が検出器12の表面を汚れ又は腐食させるにつれ、共振周波数が変化する。この共振周波数の変化は、本体28の質量の変化に基づき、検出器12の、存在する汚れの量もしくは厚さ(質量増に基づく)又は腐食もしくはエロージョンの量(質量損失に基づく)に相関させることができる。質量変化が十分に有意である場合、アラーム又はアラーム状態を起動し、アラーム信号を発し、コントロールセンタに通信することができる。
【0021】
一般に、アラームは、プロセスの下流側の構成部品が腐食し又は汚れているかもしれないという通知を出す。これにより、プラントメンテナンススタッフは、予定外のプラント運転停止を防ぐための適切な事前措置を講じることができる。このように、汚れ/腐食検出器は、プロセスエレメントの起こりうる又は起こりそうな汚れ又は腐食を推測する際に基づくことができる量的尺度を提供する。
【0022】
先に述べたように、圧電エレメント30はボディ28に結合されている。圧電エレメント30の周波数掃引がボディ28を「振動」する(ボディ28を振動させる)。センサ32がボディ28の振動をモニタして、ボディ28の共振周波数を検出する。
【0023】
一般に、共振周波数は、ボディ28の汚れ及び/又は腐食、ひいては、言わずもがな、交換器の汚れ及び/又は腐食を検出するために使用することができる一つのパラメータである。具体的には、汚れ及び腐食は(汚れの場合にはボディの質量を増すことにより、腐食の場合にはボディの質量を減らすことにより)いずれもボディ28の質量を変化させる。共振周波数は、一部には質量に依存し、質量の変化は、いかにわずかなものであろうと、共振周波数のシフトとして検出可能である。
【0024】
設置中、ボディ28を振動するために圧電エレメント30を励起する。センサ32がベースライン共振周波数を計測すると、それをプロセス電子部品36のメモリに記憶することができる。作動中又はバッチとバッチとの合間で周期的に、ボディ28を再び振動し、共振周波数を計測する。そして、計測した共振周波数をベースライン共振周波数に対して比較する。障害物の計測された共振周波数がベースラインに対して所定の範囲の外まで変動するならば、アラームを発して、さらなる処理の前に交換器を清浄、点検又は他のやり方で保守点検すべきであることを指示することができる。
【0025】
汚れ又は腐食を検出するために使用することができるもう一つのパラメータは、圧電エレメント30を駆動するのに必要な力である。ボディ28の共振周波数は、力の「スイートスポット」又は局所出力最小値に対応する。特に、システムを駆動するために必要な力は一般に共振周波数で最小になる。圧電エレメント30を使用してシステムを駆動するならば、圧電エレメント30は、振動の振幅を計測するための、おおよその振幅計測装置として使用することもできる。
【0026】
汚れ及び腐食検出器は、障害物の共振周波数を周波数掃引で検出するように設計されており、その周波数掃引は、好ましい実施態様では、もっともらしい共振周波数を中心にしたものであることができる。好都合に設計された共振点を与えられると、プロセスノイズそのものが構造を共振状態に励起するということが可能である。その場合、振動の周波数及び振幅を計測するのに、加速度計しか要らない。
【0027】
一般に、障害物と関連した質量の変化は、結果として、周波数応答の変化を生じさせる。たとえば、ボディが被覆又は汚されるならば、ボディ28は、一般に、ベースラインよりも低い共振周波数を示すであろう。共振周波数のシフトの大きさは、付着物の性質及び量に依存するであろう。たとえば、粘着質又はねばねばした付着物は、減衰係数を高め、Qファクタを下げるかもしれない。共振周波数の減衰の増大は、質量が加えられない限り、固有共振周波数に関して見かけ共振周波数を変化させるであろう。これは、質量の変化ほど大きな効果ではないかもしれないが、それでも容易に検出可能である。
【0028】
障害物の腐食又はエロージョンを検出するために装置が使用されるならば、障害物による材料のエロージョンは、固有共振に対して共振周波数を高めるであろう。共振周波数のシフトの大きさは、エロージョン過程での質量損失に依存するであろう。また、減衰の減少のみでも、質量が加えられない限り、固有共振周波数に関して見かけ共振周波数を変化させるであろう。
【0029】
本開示を読むことにより、本発明のシステムを一般に、アンダーダンプな二次システムとしてモデル化する(又は、少なくとも二次システムのように見せる)ことができることが当業者によって理解されよう。一般に、共振周波数及び減衰係数は、アンダーダンプな二次システムのより良い尺度である。
【0030】
ボディ28の質量変化を検出するための代替方策は、Qファクタ、位相余裕、ゲイン余裕などをはじめとする周波数応答の変化を計測することである。一般に、周波数掃引に対するシステムの周波数応答の変化(ベースラインと比較した場合)は、腐食もしくはエロージョン又は質量ゲイン事象を示唆するであろう。変化は、交換器が目詰まり又は腐食してきていることの示唆であるかもしれない。共振周波数の様々な変化の効果は、付着又は腐食の性質に依存して異なるであろう。付着物質が多量ではあるが粒状(低粘度)であるならば、Qファクタ及び位相ずれはさほど変化しないが、共振周波数は変化し、減衰は最小限の変化しか示さない。しかし、付着物質が非常に粘稠であるならば、共振周波数だけでなくQ及び位相余裕の両方が変化するであろう。
【0031】
従来の技術検出器に対する本発明の強力な利点は、ボディ28の共振周波数をモニタすると、腐食又は汚れが起こっているかどうかだけでなく、どのようなタイプの付着物(粘稠又は粒状)が生じているのかをも判断することができることにある。
【0032】
汚れ及び腐食検出器12は、ボディ28が管18の底に配置されるならば、流体流れの中に溶解しない固体が、交換器に流れ込んでシステムを目詰まりさせるのではなく、ボディ28に引っ掛けることができるというさらなる利点を有する。このような固体は、質量の変化のせいであるボディ28の周波数応答の変化に注目することにより、又は突然で予想外のボディの動きを検出することにより、検出することができる。このように、検出器12は、下流側のプロセスエレメント、たとえば熱交換器、ベンチュリ管、Annubar流量計などの状態早期警告システム(予測手段)を提供する。
【0033】
一般に、ボディ28は、多様な異なる形状に形成することができ、そのいずれもが、特定の用途のために最適化される共振特性を提供することができる。
【0034】
たとえば、一つの実施態様では、ボディには、流体流れに直面する平坦面及びその平坦面の背後に配置された凹み区域を形成して、それにより、渦を発生させ、小さな流体ポケットを流体流れから孤立させることができる。これは、場合によっては、流体流れの直接的な力から遮蔽された区域でボディの腐食を促進するかもしれない。もう一つの実施態様では、ボディは、その表面に沿って異なる材料で形成され、各材料が、流体流れ内の種々のイオン又は分子と反応性であり、反応性イオン又は分子のいずれかの存在がボディの質量変化を生じさせるようになっている。種々の材料は、下流側のエレメントを形成するために使用される材料にしたがって選択することができる。
【0035】
さらには、ニューラルネットワーク、人工知能エージェント又は他の解析ツールを使用して、計測された共振周波数値から汚れ及び腐食状態を推測することにも利用できる。これらのエレメントは図示されていないが、汚れ/腐食検出器から導出されたプロセスデータの解析のためにそのようなシステムを使用すると、汚れ又は腐食の検出及び対応するアラーム信号の発信を自動化することもできることが理解されよう。
【0036】
図3は、本発明の実施態様の共振体300の斜視図を示す。共振体300は、ベース302に結合されたボディ304を有し、ベースは他方で管の壁(図示せず)に結合される。この実施態様では、共振体300は、腐食及び/又は汚れのための表面を提供しながらも流体流れに対する障害を最小限にするため、涙滴の形を有する状態で示されている。
【0037】
好ましい実施態様では、ブラフボディは翼形のボディであり、ベース中の圧電変換器306によって励起される。湾曲部(図示せず)は、ベースと一体化した薄いディスク構造として具現化され、その上に翼形のブラフボディが取り付けられる。圧電変換器を駆動し、共振周波数の変化を感知し、アラーム状態を通信するための電子部品(図示せず)がプロセスの外部から取り付けられる。このような電子部品は、近接結合することもできるし、遠隔取り付けすることもできる。
【0038】
このタイプの汚れ検出器はまた、被覆物付着に比例する信号を出力することができる。一部のプロセス流体の場合、この付着計測をより正確にするために、プロセス流体粘度の経時的変化を推定することが求められるであろう。
【0039】
図4は、共振体400の代替態様を断面で示す。共振体400は、ベース404に結合されたボディ402を有し、ベースは他方で管の壁(図示せず)に結合される。この実施態様では、ボディ402は、中空のチャンバ408を画定する薄い壁406を有する。共振体400の共振周波数は、装置電子部品のメモリに記憶することができるベースライン共振周波数を提供するように決定することができる。腐食性流体流れが薄い壁406を腐食させて貫通すると、チャンバ408が流体で満たされ、共振体400の共振周波数が劇的に変化する。あるいはまた、チャンバ408を満たす流体は、作動中の通常の動きとは異なるボディ402の動きを生じさせる可能性が高い。
【0040】
薄い壁406の漸進的な腐食は、上記のような周波数応答を使用して検出することもできるが、所定のアラーム条件をかなり高くセットして、アラーム状態を起動することなく小さな変動をモニタすることができるようにしてもよい。流体がチャンバ408を満たすと、プロセス流体が共振体400の質量を急進的に変化させるにつれ、周波数応答が劇的に変化して、それによってアラームが起動される。
【0041】
ボディ402の薄い壁406は、流体流れと反応するように選択された材料から形成することができる。一般に、薄い壁406のために選択される材料は、システムの他の要素による腐食又は被覆の推定速度と合致する速度又はそれによりもわずかに高い速度でプロセス流体と反応するように設計されている。さらには、壁の厚さそのものを、腐食又はエロージョンの速度に相関するように設計して、プロセス流体が壁を破るとアラーム信号が発されるようにしてもよい。
【0042】
図5は、本発明の実施態様の共振体500の平面図である。共振体500は、ベース502に結合されたリング形ボディ504を有し、ベースは他方で管の壁(図示せず)に結合される。この実施態様では、ボディ504は、腐食及び/又は汚れのための表面を提供しながらも流体流れに対する障害を最小限にするため、流体の流れの方向に対して垂直に向けられている。リング形ボディ504の形状大きさは、リング形ボディ504の汚れを交換器そのものの形状大きさに相関させるために、交換器で使用される管材の形状大きさに合致するように指定することができる。
【0043】
図面に示し、上記で説明した各実施態様では、検出器は、流体流れに対して部分的障害として作用するボディを含む。ボディは、概念的には、被覆又は腐食の早期検出のための「犠牲」として説明することができる。一つの実施態様では、流体流れに直面するボディの表面は、ボディの汚れ又は腐食を促進するために、流体の性質にしたがって異なることができる。たとえば、特定のタイプの流体の場合、被覆を促進するために比較的平坦である流体直面表面を提供することが望ましいかもしれない。被覆及び/又は腐食を促進する他の形状を考案し、具現化することもできる。たとえば、先に論じたように、プロセス流れに直面する表面は、腐食性プロセス流体と反応するための犠牲的表面を提供して、その流体がその表面を孔食又はエロージョンするようにすることもできる。
【0044】
検出器の具体的な形状にかかわらず、コントロールセンタは、汚れ検出器の周波数掃引を周期的に起動して圧電エレメントを励起し、それによって検出器のボディを振動させることもできる。ボディ又はそのベースのいずれかに配置されたセンサを使用すると、ボディの共振周波数を検出することができる。
【0045】
ボディの質量の変化、すなわち質量損失又は質量増は、計測した共振周波数を記憶された共振周波数(ベースライン周波数)に対して比較することによって検出することができる。変化が所定の範囲の外に及ぶならば、アラームを起動することもできる。
【0046】
一般に、ボディ及びシステムの他の材料のための支持材料は、適用プロセス流体又は気体による腐食又はエロージョンに抵抗することが望ましい。しかし、腐食/エロージョン過程がボディから材料を除去するにつれ、共振周波数は増大する。所定の量の材料が失われたところで、装置は、潜在的な腐食問題が存在するというアラーム信号又は警告を送出する。
【0047】
一般に、本発明の汚れ及び腐食検出器には数多くの利点がある。第一に、汚れ及び腐食検出器は、交換器汚れの程度を判断するための高感度な予測的方法を提供する。ボディは、簡単な適用及び取り付けを提供し、汚れ又は腐食に関する情報を提供するために多数の圧力及び容積解析を要しない。ボディを清浄又は交換することによって交換器が保守点検されるとき検出器が保守点検されるため、メンテナンスは簡単である。さらには、本発明の汚れ及び腐食検出器は、電極又は電子接点なしでプロセス内腐食/エロージョン感知機構を提供する。腐食/エロージョン感知は、余裕のある安全係数をもってアラーム信号を発するように設定することができる。
【0048】
臨界的な腐食モニタ用途の場合には、薄い外皮/中空コアボディ技術を使用することによって検出器の感度を高めることができる。大部分の用途の場合、4〜20ミリアンペアのループ電力が、検出器を給電するのに十分すぎるあろう。しかし、小さな突発的活動に備えて4〜20ミリアンペアのループから電力を容量的に貯蔵することにより、それを借用することも可能である。一般に、汚れ及び腐食は時間をかけて発生し、絶え間ないモニタリングは不要であるため、本発明はそのような設定に好適である。
【0049】
図6は、ベース604に取り付けられたボディ602を有する共振体600を示す。ボディ602は、腐食性インサート608を受け、保持するサイズである一つ以上のポケット606(又は凹所)を有する。一つの実施態様では、ボディ602及びポケット604はステンレス鋼から形成されている。腐食性インサートは、インサートの腐食又は汚れが下流側のエレメントの起こりうる腐食又は汚れを示唆するよう、下流側のプロセスエレメントの材料と一致する腐食性又は汚損性にしたがって選択することができる。共振周波数を維持するために、ポケット604は、好ましくは、ボディ602を中心に対称的に配設されるであろう。
【0050】
当業者には、ボディを、好ましくは、管材中に形成又は管材に溶接することができ、その管材を溶接又は好ましくはフランジエレメントによってプロセスに取り付けることができるということが理解されよう。腐食性インサート608は、管材をプロセス中に配置する前にボディ602に挿入することができる。この実施態様では、起こりうる腐食を検出したとき又は下流側のエレメントの保守点検中に管材が取り出され、腐食性インサート608が交換され、管材がプロセスに再挿入される。
【0051】
図7は、ベース704に取り付けられたボディ702を有し、そのボディ702の上にカバー層706(仮想線で示す)が配置されている共振体700を示す。カバー層706は、スリップカバーであってもよいし、被着カバー層であってもよく、好ましくは腐食性材料から形成されている。腐食性カバー706は交換可能なエレメントを提供して、腐食性カバー706を必要に応じて新しいカバーと交換するだけで共振体を何度も再使用することを可能にする。さらには、腐食性カバー706は、共振体700をプロセスに合わせて拡大縮小可能にする。たとえば、一部のプロセスでは、下流側のエレメントは、3枚の腐食性カバーを使い切った後で保守点検を要するということになるかもしれない。そのような場合、多数の腐食性カバー706をボディ702の上に積層することが可能である。この場合、すべての腐食性層の腐食に対応する質量の変化が、共振体700をして、下流側の潜在的腐食を示唆するアラーム状態を発生させる。その後、共振体700を取り出し、カバー706を交換し、共振体700を再び設置する。
【0052】
先に述べたように、本発明は、下流側の潜在的な汚れ及び/又は腐食を予測するものとして使用されることを意図する。一つの実施態様では、検出器の周波数応答が所定の範囲の外に変化するたび、アラームが起動され、検出器ボディが交換される。代替態様では、検出器ボディは、新たなベースラインに関して再較正されるだけであり、アラームは、新たなベースラインに対する周波数応答の変化に関してリセットされる。第三の実施態様では、ボディは耐食性であり、流体と反応するための一つ以上の交換可能かつ腐食性のエレメント(インサート又はカバー)を備える。
【0053】
熱交換器に関して本発明を提示したが、本発明の汚れ及び腐食検出器はいかなる流体流れでも使用することができる。さらには、図2は、管セグメントの直径全体に延びるボディを示すが、ボディは、流れの中に延びさえすればよい。最後に、汚れ又は腐食によって生じる質量のわずかな変化がボディの周波数応答に基づいて容易に検出可能であり、起こりうる腐食又は汚れの推測が、障害の共振周波数応答に基づいて腐食又は汚れの特性を識別するための周波数応答の解析を含むことができるということが理解されるべきである。たとえば、周波数応答のQファクタ又は減衰係数の変化は、汚れが粒状であるのか粘着性であるのかを示すことができる。そのうえ、共振周波数のシフト(高め又は低め)を使用すると、障害物の質量の増減に基づいて汚れと腐食とを区別することができる。共振周波数の減少は一般に、障害物の質量増を特徴とする汚損状態を示唆する。共振周波数の増大は一般に、障害物の質量減を特徴とする腐食状態を示唆する。ピーク共振周波数、減衰係数などをはじめとする周波数応答の他の特性を、他の起こりそうな汚れ又は腐食状態に相関させることもできる。
【0054】
好ましい実施態様を参照しながら本発明を説明したが、当業者は、本発明の本質及び範囲を逸することなく、その形態及び詳細に変更を加えることができることを認識するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施態様の汚れ及び腐食検出システムの簡略化ブロック図である。
【図2】本発明の実施態様の汚れ及び腐食検出器の断面図である。
【図3】本発明の実施態様の共振体の斜視図である。
【図4】本発明の実施態様の肉薄型シェル共振体の斜視図である。
【図5】本発明の実施態様のリング形共振体の斜視図である。
【図6】本発明の実施態様の、腐食性インサートを確保するためのポケットを備えた共振体の斜視図である。
【図7】本発明の実施態様の、腐食性カバーを備えた共振体の斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工業プロセスの管の中を流れる流体からプロセスエレメントの起こりうる腐食又は汚れを推測する方法であって、
管中に配置されたボディの周波数応答を計測することと、
計測した周波数応答を記憶された値に対して比較することと、
比較に基づいてプロセスエレメントの腐食又は汚れを識別することと、
を含む方法。
【請求項2】
計測するステップの前に、
流体流れを少なくとも部分的に妨げるボディを管中に設置することと、
ボディの周波数応答を計測することと、
計測した周波数応答に基づく値を記憶することと、
をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
計測するステップが、
ボディに結合した圧電エレメントの周波数掃引を実施することと、
ボディの共振周波数を計測することと、
をさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
周波数応答の変化が汚れのタイプの特性を示唆する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
周波数応答のQファクタの減少及び減衰係数の増加が粘着性物質の付着を示唆する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
周波数応答のQファクタの最小限の変化、最小限の位相ずれ及び最小限の減衰の変化を伴う共振周波数の変化が、粒状物質の付着を示唆する、請求項4記載の方法。
【請求項7】
周波数応答の共振周波数を識別することをさらに含み、
記憶された周波数応答に対する共振周波数の増加が腐食を示唆する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
増大の大きさが腐食の程度を示唆する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
変化が所定の範囲の外であるとき、管中で共振体の下流側にあるプロセスエレメントの汚れ又は腐食を示唆するアラームを発すること
をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
ボディが、
管中に配置され、流体流れの中に延びる構造と、
構造に配置され、一つ以上の腐食性インサートを確保するように適合された一つ以上のポケットとを含み、
一つ以上の腐食性インサートの腐食が構造の周波数応答の変化を生じさせる、請求項1記載の方法。
【請求項11】
各腐食性インサートがその腐食特性にしたがって選択される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
腐食特性が、管中のプロセスエレメントの腐食特性に対応するように選択される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
工業プロセスの管の中を流れる流体からプロセスエレメントの起こりうる腐食又は汚れを推測するための装置であって、
管中に配置され、励起に応答して動くように適合されたボディと、
管に結合され、ボディの周波数応答の変化に基づいて起こりうる腐食又は汚れを推測するように適合されたセンサと、
を含む装置。
【請求項14】
ボディが、
プロセスエレメントの材料と一致した速度で流体流れと反応するように選択された材料から形成された薄い壁を有する中空構造
を含む、請求項13記載の装置。
【請求項15】
ボディが、
流体流れの中に延びる構造と、
構造の周囲に配置された複数のポケットと、
を含む、請求項13記載の装置。
【請求項16】
それぞれが複数のポケットの一つの中に収まるようなサイズの複数の腐食性インサートをさらに含む、請求項15記載の装置。
【請求項17】
腐食性インサートが、流体と反応するように選択された材料から形成されている、請求項16記載の装置。
【請求項18】
周波数応答が汚れのタイプの特性を示唆する、請求項13記載の装置。
【請求項19】
周波数応答のQファクタの減少及び減衰係数の増加がボディ上の粘着性物質の付着を示唆する、請求項18記載の装置。
【請求項20】
Qファクタの最小限の変化、最小限の位相ずれ及び最小限の減衰の変化を伴う共振周波数の変化が粒状物質の付着を示唆する、請求項18記載の装置。
【請求項21】
周波数応答の変化が所定の範囲の外であるとき、アラーム信号を発するように適合された、アラーム信号をコントロールセンタに送信するためのトランスミッタ回路
をさらに含む、請求項13記載の装置。
【請求項22】
励起が、ボディを共振状態に励起するのに十分なプロセスノイズを含む、請求項13記載の装置。
【請求項23】
励起が、圧電ドライバによって発される励起信号を含む、請求項13記載の装置。
【請求項24】
ボディに被さるように適合され、流体と反応するように選択された材料から形成されている腐食性カバー
をさらに含む、請求項13記載の装置。
【請求項25】
工業プロセスのプロセスエレメントの起こりうる汚れ又は腐食を推測する方法であって、
工業プロセスの管の中を流れるプロセス流体中に延びるボディを共振状態に振動することと、
ボディの周波数応答の変化を記憶された値に対して検出することと、
検出した変化に基づいてプロセスの腐食又は汚れを識別することと、
を含む方法。
【請求項26】
変化が所定の範囲の外であるとき、汚れ又は腐食を示唆するアラーム信号を発することをさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
振動するステップが、
ボディに結合した圧電エレメントを周波数掃引で励起することを含み、
周波数掃引が圧電エレメントを励起すると、圧電エレメントが他方でボディを共振状態に励起する、請求項25記載の方法。
【請求項28】
検出するステップが、
ボディの周波数応答を計測することと、
周波数応答を記憶された周波数応答に比較して変化を識別することと、
を含む、請求項25記載の方法。
【請求項29】
計測するステップが、
ボディに結合されている圧電駆動エレメントの周波数掃引中の局所出力最小値を検出すること
を含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
ボディが、
プロセスエレメントの材料と一致した速度で流体流れと反応するように選択された材料から形成された薄い壁を有する中空構造
を含む、請求項25記載の方法。
【請求項31】
ボディが、
流体流れの中に延びる構造と、
構造上に配置された一つ以上のポケットと、
を含む、請求項25記載の方法。
【請求項32】
振動するステップの前に、
一つ以上の腐食性インサートを一つ以上のポケットの中に配置すること
を含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
一つ以上の腐食性インサートが、プロセスエレメントの反応速度と実質的に同じである速度でプロセス流体と反応するように選択された材料から形成されている、請求項32記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−510997(P2008−510997A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−529940(P2007−529940)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/028980
【国際公開番号】WO2006/036339
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(597115727)ローズマウント インコーポレイテッド (240)
【Fターム(参考)】