説明

プロトプラストを形質移入するための改善された技術

本発明は、植物細胞プロトプラストにおける1以上の注目する分子の導入方法であって、植物細胞プロトプラストを準備すること、ミスマッチ修復系および非相同末端再結合からなる群から選択される1以上の経路の制御を変更することができる組成物ならびに/またはDSBを導入することができる組成物を用いてこの植物細胞プロトプラストの第1の形質移入を実施すること、変異原性オリゴヌクレオチドなどの1以上の注目する分子を用いてこの植物細胞プロトプラストの第2の形質移入を実施すること、ならびに細胞壁が形成されるのを許容することによる、方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物細胞プロトプラストにおける注目する異種分子の導入方法に関する。本発明はさらに、形質移入された植物細胞プロトプラストに、および当該方法を実施するためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子修飾は、生細胞の、またはその細胞が一部を形成するかまたはその細胞が再生することができる場所となる生物の、1以上の遺伝子的にコードされた生物学的特性を改変する目的をもって、生細胞の遺伝子材料の変化を意図的に作成するプロセスである。これらの変化は、遺伝子材料の一部分の欠失、外因性の遺伝子材料の付加、または遺伝子材料の既存のヌクレオチド配列における置換のような変化の形をとることができる。
【0003】
真核生物の遺伝子修飾の方法は、20年を超える年月にわたって知られており、農業、ヒトの健康、食品の品質および環境保護の分野における改善のために、植物および動物の細胞ならびに微生物において幅広い応用例を見出してきた。
【0004】
遺伝子修飾の一般的な方法は、外因性のDNA断片を細胞のゲノムに付加することからなり、これは、後に、すでに存在する遺伝子によってコードされる特性に勝り上回る新しい特性をその細胞またはその生物に与えることになる(これにより既存の遺伝子の発現が抑制されることになる応用例を含む)。多くのこのような例は所望の特性を入手する上で効果的であるが、とはいうものの、これらの方法はあまり正確ではない。なぜなら、外因性のDNA断片が挿入されるゲノムの位置に対する(従って、発現の最終的なレベルに対する)制御がないからであり、所望の効果は、もともとのそしてよくバランスがとれたゲノムによってコードされる自然の特性に勝って顕在化する必要があるからである。遭遇する一般的な問題は、宿主のゲノムDNAの中への外因性のDNA断片のランダムな組み込みに起因して、必須または有益な遺伝子が不活性化または改変され、宿主の望ましい特徴の望まれない喪失を引き起こすということである。
【0005】
反対に、所定のゲノム遺伝子座におけるヌクレオチドの付加、欠失または変換を生じることになる遺伝子修飾の方法は、既存の遺伝子の正確な修飾を可能にするであろう。
【0006】
過去数十年間にわたるゲノミクスの出現を得て、今では、動物、植物および細菌のゲノムをより素早くかつ費用効率よく解読することが可能である。これは、動物における疾患感受性または植物における収量特性などの表現型に関連づけることができる豊富な遺伝子および調節配列をもたらした。これは、ある配列の推定上の機能が素早く確立されるようにするであろうが、観察される表現型に遺伝子が関与するという究極的なエビデンスは、予想される変更された表現型を示す変異体系統を創出することにより得られる必要がある。
【0007】
動物細胞とは異なり、植物細胞は、多糖およびタンパク質の混合物から構成される厚い細胞壁によって取り囲まれており、しかも動物細胞が異種分子の導入を容易に受けるのに対して、植物細胞はより扱いにくく、いくらかはより侵襲的な方法を必要とする。異種分子を植物細胞に導入するための先行技術の手順は、2つのカテゴリーに分類することができる。
【0008】
第1のカテゴリーは、植物細胞壁に穴をあけることによる、植物細胞の中への注目する分子の機械的な導入を利用するすべての方法をまとめる。これは、微粒子銃による送達によって成し遂げることができ、この微粒子銃による送達については、注目する分子は金属ビーズ、金またはタングステン上にコーティングされており、これらは、気体加圧式デバイスを使用して細胞の中へと噴射される。しかしながらこのようなアプローチの効率はかなり低く、そして、すべての細胞が形質転換されるわけではないので、選択が必要であり、このことが、標的の数を制限する。別のアプローチは、細胞壁を貫通して植物細胞の中へと化合物を直接注入するためのマイクロマニピュレータに接続されたマイクロニードルまたはナノニードルを使用する。しかしながら、マイクロインジェクションは、特別仕様の設備およびかなりの熟練を必要とする。この方法は、単調で退屈なものでもあり時間もかかり、微粒子銃による送達に勝る利点をほとんどもたらさない。さらに別の方法は、注目する分子を含有しかつ末端が細胞壁を消化する酵素でコーティングされている炭素ナノチューブを利用する。このナノチューブは、細胞壁を局所的に分解し、細胞膜に穴をあけ、チューブの内容物を宿主細胞の中へと送達することを可能にすると想定されるであろう。マイクロインジェクションまたは微粒子銃照射ほどには侵襲的ではないものの、上記の制約はここでも当てはまる。
【0009】
第2のカテゴリーは、注目する分子の導入に先立って植物細胞壁全体が酵素により除去されるすべての方法をまとめる。細胞壁の完全な除去は細胞間の連結を破壊して、個別化された細胞の均質な懸濁液を生成し、これにより、より均一で大スケールの形質移入実験が可能になる。この方法は、プロトプラスト融合、電気穿孔、リポソーム介在性形質移入、およびポリエチレングリコール介在性形質移入を含むが、これらに限定されない。それゆえ、プロトプラスト調製は、数百万の細胞を生成するための、非常に信頼性が高くかつ安価な方法であり、その融通性、効率および収量については他の方法よりも好ましいことが多い。
【0010】
プロトプラストは、ほとんどあらゆる植物組織から単離することができる。プロトプラストの主要な源は葉肉組織であり、葉肉組織は、新鮮重1グラムあたり大量のプロトプラストを与える。他のタイプの組織の使用は、たいていは、考慮対象の系についての既存の手順の利用可能性および実験の最終目的に依存する。
【0011】
すべてではないとしても多くの生物学的プロセスは、空間的および時間的に制御されている。細胞は自身の生物時計を有し、細胞周期はその最も明らかな代表例である。1つの細胞はすべて、成長(G0、G2)、DNA複製(S)、分裂(M)および静止(G0)などの一連の発生段階を経ることになる。それゆえ、特定の経路と相互作用する意図の実験を計画するときには、検討対象の系の状態を扱うことが妥当である。注目する分子の導入は、検討されるプロセスに合致するために、慎重に時期を合わされる必要がある。注目する分子は、その分子がその作用を発揮することができるまで長期間にわたって細胞環境の中で安定である必要があるか、または検討対象のプロセスが始まる前に短時間のうちに送達される必要があるかのいずれかである。例えば、標識されたチューブリンを細胞の中に導入することによる、前期前微小管束形成の間の微小管動力学の研究において、標識されたチューブリンが、前期前微小管束形成が始まるまで酵素による分解に耐えるほどに十分安定でなければ、チューブリンが、前期前微小管束形成の前に短時間に送達されることが確実にされる必要がある。その特別の例については、別の考慮事項は、前期前微小管束以外の構造の中への蛍光性チューブリンの組み込み、従って所望の時期にこのプローブを送達する必要性であろう。
【0012】
残念ながら、細胞懸濁培養液の稀なケースを除き、プロトプラストの由来のもとになることができる葉肉細胞は、静止状態(G0)にあり、プロトプラストが適正なホルモンバランスで誘発されるときだけ、プロトプラストは、細胞周期に再び入り、活発に流動(streaming)を開始することになる。1つの静止状態のプロトプラストが1ラウンドの細胞周期を経るために必要とされる時間は、系ごとに大きく異なり、数時間〜数日かかる可能性がある。さらには、プロトプラストを生成するために使用される酵素混合物が洗い流されるとすぐに、プロトプラストは、その細胞壁を再形成することを開始し、これは、細胞壁再形成を遅くするかまたは防止するための予防措置がとられなければ、異種分子の導入を減少または完全に阻むことさえするであろう。それゆえ、プロトプラストは、注目する分子が送達されるべきである適切な段階にプロトプラストが到達するまで細胞壁を伴わないまま置かれることすらできず、細胞壁再形成は積極的に防止される必要があるが、同時にプロトプラストの流動能は保持されるべきである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは当該技術分野のこれらの不都合を克服しようとして、プロトプラストおよび細胞周期を制御でき、かつより効率的におよびより制御可能な態様でプロトプラストを形質移入することができる方法を考案した。
【0014】
本発明者らは、2つの形質移入工程の組み合わせによって、プロトプラストにおけるいくつかの生物学的プロセスの詳細な制御が可能になるということを、本発明において見出した。2つの形質移入工程のこの組み合わせは、細胞壁阻害剤の使用、および/または細胞期の同期化工程と組み合わせられてもよい。本発明者らは、第1の形質移入工程において特定の経路と相互作用し、かつ/または二本鎖DNA切断を導入する種々の組成物および異種分子を用いた形質移入が実施される第2の工程の導入によって、形質移入プロセスに対して改善された効率および制御が可能になるということを見出した。さらに本発明者らは、セルロースシンターゼ、セルロース沈着を阻害することまたは新生のセルロース微細線維を捕捉することによるなどで細胞壁形成に干渉する1以上の非酵素の化学的化合物をプロトプラストに添加することにより、異種分子の導入のタイミングおよび効率が、細胞周期の中の所望の期に時間的により近いところでの異種分子の送達の可能性を通して、高められかつ最適化されうるということを見出した。本発明者らは、特定の細胞期に細胞を同期化することにより、形質移入の増大が成し遂げられうるということも見出した。
【0015】
より広い観点では、ミスマッチ修復系および/もしくはNHEJ経路の(一過性)抑制ならびに/または二本鎖DNA切断の導入ならびに(ii)任意にプロトプラスト系における細胞壁再形成の一過性阻害および/または細胞周期の期の同期化と組み合わせた、変異原性オリゴヌクレオチドなどの注目する異種分子を用いたプロトプラストの形質移入は、細胞系が、プロトプラストの単離の時点から時間的に遠い特定の生物学的/生化学的プロセスにおいてその細胞が能力ある細胞周期の特定の段階で、形質移入される必要があるとき、非常に価値がある。さらには、プロトプラスト系における細胞壁再形成の一過性阻害は、一過性に発現されたプラスミドの連続的な導入を許容し、この複合的な作用が所望の成果を導く。例えば、ZFNコンストラクトが、あるとき、例えばドナーコンストラクトが導入される4、6、12、18または24時間前に導入されるならば、遺伝子標的指向化は、より効率的である。これによりZFNが発現されることができ、かつ適正な遺伝子標的指向化事象が起こるために必要なDSBを誘導するようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ミスマッチ認識後のMMR下流のシグナル伝達についての略図。
【図2】BranzeiおよびFoiani、−、2008年、第8巻、第9号、1038−46頁から採ったNHEJおよびHRについての略図。
【図3】DSB末端の成熟の略図。
【図4】相同組み換えの略図。
【図5】植物プロトプラストにおけるフットプリント形成についての実験計画。
【図6】遺伝子標的指向化事象についての実験計画。
【図7】BY−2プロトプラストにおけるmeGFP回復についての実験計画。
【図8】dsRNAの添加の後のタバコおよびトマトのプロトプラストにおけるMSH2のレベル。
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1の態様では、本発明は、植物細胞プロトプラストにおける1以上の注目する分子の導入方法であって、
− 植物細胞から細胞壁を酵素により分解し、かつ/または植物細胞から細胞壁を取り除くことにより、前記植物細胞プロトプラストを準備する工程と、
− (i)ミスマッチ修復系、非相同末端再結合からなる群から選択される1以上の経路の制御を変更することができる第1の組成物、および/または
(ii)二本鎖DNA切断を誘導することができる第2の組成物
を用いてこの植物細胞プロトプラストの第1の形質移入を実施する工程と、
− 1以上の注目する分子を用いてこの植物細胞プロトプラストの第2の形質移入を実施する工程と、
− 細胞壁を形成させる工程と
を含み、この第2の形質移入は第1の形質移入の後に実施される方法、に関する。
【0018】
用語「および(かつ)/または」は、本発明に関する範囲では、第1の組成物を用いた形質移入、または第2の組成物を用いた形質移入、または両方を用いた形質移入のいずれかを実施することができるということを意味するということを当業者は理解するであろう。そこで、本発明に係る第1の形質移入、およびすべてのその実施形態では、第1の組成物または第2の組成物またはその両方を含んでもよい。
【0019】
当該方法の第1の工程では、プロトプラストは植物細胞から準備される。プロトプラストは、植物細胞プロトプラストの生成について使用される一般的な手順を使用して(例えばマセラーゼmacerase)を使用して)準備することができる。植物細胞プロトプラスト系は、これまでのところトマト(Solanum Lycopersicon)、タバコ(Nicotiana tabaccum)および他の多くのもの(セイヨウアブラナ(Brassica napus)、ニンジン(Daucus carota)、レタス(Lactucca sativa)、トウモロコシ(Zea mays)、ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)、ペチュニア(Petunia hybrida)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、イネ(Oryza sativa))について記載がある。本発明は、本願明細書に列挙されるプロトプラスト系(これらに限定されない)を含めて、一般にいずれのプロトプラスト系にも適用できる。
【0020】
プロトプラストは、葉肉細胞(活発に分裂していない)に、成長点培養物(活発に分裂している)に、および細胞懸濁液(活発に分裂している)に由来することができる。
【0021】
当該プロトプラストは、ミスマッチ修復系、非相同末端再結合(Non−Homologous End Joining)経路からなる群から選択される経路のうちの1以上の制御を変更することができる第1の組成物を用いて形質移入されることができる。好ましくは、この形質移入は一過性である。好ましくは、このミスマッチ修復系、非相同末端再結合経路は下方制御される。
【0022】
これらの経路の制御は、好ましくは、これらの経路を制御することができるdsRNAの使用を通して成し遂げられる。適切な組成物の選択および設計のための例および指針は、本願明細書に以下で提示される。1つの実施形態では、この第1の組成物は、MutS、MutL、MutH、MSH2、MSH3、MSH6、MSH7、MLH1、MLH2、MLH3、PMS1、DNA−PK複合体 Ku70、Ku80、Ku86、Mre11、Rad50、RAD51、XRCC4、Nbs1のうちの1以上の制御を変更することができる。
【0023】
ミスマッチ修復系
多くの病変は、いわゆるミスマッチ修復系(MMR)によって修復される。大腸菌(E.Coli)では、MMRは、3つの主要な複合体、MutS、MutLおよびMutHからなる。MutSは、ミスマッチの認識のおよびMutHを動員する第2の複合体MutLに向かうシグナル伝達に関わる。MutHは、ミスマッチを含有する新しく合成されたDNA鎖にニックを導入することになるニッキング活性を保有する。新しく合成された鎖の中のニックの存在は、エキソヌクレアーゼに、分解される対象のDNA(ミスマッチヌクレオチドを含む)の一続きのもの(stretch)を合図する。そのあとDNAポリメラーゼが娘鎖の中のギャップを埋めるであろう。大腸菌のMMR遺伝子のオルソログは、MutLによって機能が実施されるMutHを除き、すべての真核生物において見出すことができる(総説として、KolodnerおよびMarsishky、Curr.Opin.Genet.Dev.、1999年、第9巻、89−96頁を参照)。植物では、4つのMutSオルソログ(MSH2、MSH3、MSH6およびMSH7)ならびに4つのMutLオルソログ(MLH1、MLH2、MLH3およびPMS1)が存在する。塩基−塩基ミスペアまたは単独のヘリックス外のヌクレオチドのミスマッチ認識は、MutSα(MSH2::MSH6ヘテロ二量体)によって成し遂げられ、他方で、より大きいヘリックス外のループアウト(loopout)は、MutSβ(MSH2::MSH3ヘテロ二量体)によって認識される。MSH7遺伝子は植物では特定されているが、これまでのところ動物では特定されていない。MSH7は、MSH6に非常に類似しており、同じくMSH2とヘテロ二量体(MutSγ)を形成する(CulliganおよびHays、Plant Cell、2000年、第12巻、991−1002頁)。MMR経路は、Li、Cell Research、2008年、第18巻、85−98頁から採った図1に図示されている。
【0024】
最近、植物プロトプラストにおける特定のmRNAの一過性抑制のための方法が提案されており(Anら、Biosci.Biotechnol.Biochem.、2003年、第67巻、2674−2677頁)、これは植物における(内因性の)MMR遺伝子の一過性抑制のための価値あるツールであるということが本発明で見出された。
【0025】
上記経路、例えばdsRNAの生成、の制御を変更するために使用される組成物において使用することができるMMR経路に関連する遺伝子(MSH2、MSH3、MSH6、MSH7、MLH1、MLH2、MLH3およびPMS1など)の配列は、AtMSH2についてのGenBank受入番号AF002706.1などの公共のデータベースから入手でき、本願明細書中の別の箇所に記載される。所望の植物特異的配列は、例えば入手できるシロイヌナズナ(Arabidopsis)配列に基づいてプライマーを設計し、その後所望のオルソログを特定することにより特定することができる。
【0026】
最も有毒な病変は二本鎖DNA切断(DSB)である。DSBは、活性酸素種 −とりわけヒドロキシルラジカル−、電離放射線または化学物質(癌の処置のために使用される化学療法剤を含む)などの内因性のまたは外因性の遺伝毒性の剤の作用から生じる可能性がある。他の種類のDNA病変の修復、またはDNA複製などの細胞プロセスも、DSBを生じる。例えば、ヌクレオチド除去修復または塩基除去修復によるDNA修復にはエンドヌクレアーゼが関与し、このエンドヌクレアーゼは、一本鎖ニックを導入する。2本のDNA鎖上での一本鎖ニックまたはギャップの同時発生は、DSBの形成を導く。同様にして、複製フォークの上流の一本鎖ニックまたはギャップは、DNA二重らせんの巻き戻しによりDSBへとプロセシングされる可能性がある(Bleuyardら、DNA repair、2006年、第5巻、1−12頁)。2つの競争的経路(図2、BranzeiおよびFoiani、2008年、第8巻、第9号、1038−46頁から)がDSBを修復するために存在し、つまりそれらは、非相同末端再結合(non−homologous end joining、NHEJ)および相同組み換え(HR)である。二本鎖切断(DSB)は、好ましくは、G1期の間の非相同末端再結合(NHEJ)によって、および細胞周期のS期およびG2期の間の相同組み換え(HR)によって修復される。Kuヘテロ二量体がDSBに結合することで、DNA−PK触媒的サブユニットの動員およびNHEJによるDSBの封着が開始される。対照的に、S期およびG2期に発生するDSBは、MRE111−RAD50−NBS1複合体を通してATMを優先的に活性化する。細胞周期のS期およびG2期に特異的であるより高いサイクリン依存性キナーゼ(CDK)活性はDSB切除を促進し、一本鎖DNA(ssDNA)の3’オーバーハングを露出させる。3’オーバーハングのssDNAが複製タンパク質A(RPA)で被覆されるとき、それはATRを活性化する。RPAは、RAD52などのメディエータータンパク質の助けを借りて除去され、RAD51によって置き換えられうる。これは、RAD51シナプス前フィラメントの形成を導き、これが、二本鎖の中の相同領域に侵入することによりHRを開始し、DNA合成によってさらに伸長されることができるDループ(D−loop)と呼ばれるDNA連結部を形成する。DNAヘリカーゼによるこの中間体の鎖(ストランド)置換は、上記反応を合成依存的鎖アニーリング(synthesis−dependent strand annealing、SDSA)に向かって導く。あるいは、第2のDSB末端は、捕捉されて二重ホリデイジャンクション中間体を生じることができ、この中間体は、エンドヌクレアーゼによって分解されうるし、またはヘリカーゼ(BLM)およびトポイソメラーゼ(TOP3)の複合された作用によって溶解されうる。
【0027】
非相同末端再結合経路
NHEJは、DSB修復の支配的な経路であり、平滑末端または短いオーバーハングを有する末端を再結合することを含み、切断された末端の認識および並立で始まる。これは、KUヘテロ二量体(Ku70およびKu80[またはKu86])およびDNA−PK触媒的サブユニット(DNA−PKcs)からなるDNA−PK複合体によって促進される。DSB末端の成熟はArtemisよって実施され(図3、出典はGoodarziら、2006年)、再封着はXrcc4/DNAリガーゼIV複合体によって実施される。NHEJは、比較的不正確なプロセスであり、DNA配列の挿入および欠失を伴うことが多い(Bleuyardら、2006年、Goodarziら、The EMBO journal、2006年、第25巻、3880−3889頁)。KU70、KU80、およびPARP−1を含めたいくつかの遺伝子は、NHEJにおいてある役割を果たすことが公知である。
【0028】
NHEJ経路、例えばdsRNAの生成、の制御を変更するために使用される組成物において使用することができるNHEJ経路に関連する遺伝子の配列は、AtKU70についてのGenBank受入番号AF283759.1などの公共のデータベースから入手でき、本願明細書中の別の箇所に記載される。所望の植物特異的配列は、例えば入手できるシロイヌナズナ配列に基づいてプライマーを設計し、その後所望のオルソログを特定することにより特定することができる。
【0029】
相同組み換え経路
HRは、姉妹染色分体を鋳型として使用する正確な修復プロセスであり、それゆえ修復の忠実度を確実にする。HR修復に向かう第1の工程は、一本鎖3’オーバーハングを形成するためのDSBの切除である。この末端プロセシングは、Mre11、Rad50およびNbs1タンパク質からなるMRN複合体によって実施される。アクセサリータンパク質の助けを借りて、Rad51は、一本鎖末端に動員され、相同的な二本鎖の侵入を促進する(図4。出典はSugiyamaら、The EMBO journal、2006年、1−10頁)。
【0030】
捕捉された鎖は、次に、DNA合成によって伸長され、第2のDSB末端が捕捉され、二重ホリデイの形成が生じ、これは、エンドヌクレアーゼによって分解されてクロスオーバーの形成を生じうるし、またはヘリカーゼおよびトポイソメラーゼの複合された作用によって溶解されうる(Bleuyardら、2006年;BranzeiおよびFoiani、2008年)。
【0031】
1つの実施形態では、第1の形質移入は、二本鎖DNA切断を誘導することができる第2の組成物を用いて実施することができる。例は、ジンクフィンガーヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼ(Cellectis、フランス)、およびTALエフェクターヌクレアーゼ(Boschら、Science、2009年、326巻、1509−1512頁;Moscouら、Science、2009年、第326巻、1501頁)である。ジンクフィンガーヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼが、好ましくは所望の位置で二本鎖切断を誘導するように、公知の技術を使用して設計され、その場合、標的にされる変異生成に関連するある実施形態では、第2の形質移入は、変異原性オリゴヌクレオチド由来の変異を導入することを意図する。ジンクフィンガーヌクレアーゼは、特定のDNA配列を切るようにカスタム設計されたタンパク質である。ジンクフィンガードメインは、およそ30個のアミノ酸から構成され、これらのアミノ酸は、亜鉛イオンによって安定化されるときに特徴的な構造へと折り畳まれる。ジンクフィンガードメインは、DNAらせんの深いほうの溝(major groove)へと入り込むことによりDNAに結合することができる。各ジンクフィンガードメインは、ジンクフィンガーのαヘリックス領域にある鍵となるアミノ酸残基を介して特定のDNAトリプレット(3bps)に結合することができる。従って、これらの鍵となるアミノ酸を変えることにより、特定のトリプレットに対するジンクフィンガーの認識特異性を変更し、これにより注目する配列に意図的に向けられたジンクフィンガーコンストラクトを作成することが可能である。この系の融通性は、ジンクフィンガードメインが連続して一緒に連結されて、長いDNA配列に結合することができるという事実に由来する。例えば、連続する6つのジンクフィンガードメインは、複雑な真核生物のゲノムにおいてユニークであるのに十分長い特定の18bps配列を認識する。ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、ヌクレアーゼFokIに融合された一連のジンクフィンガーから構成される。このZFNは細胞へと導入され、特定のゲノム配列を認識しそれに結合することになる。FokIヌクレアーゼは二量体として切るので、切断部位の反対のDNA鎖上にある特定の配列を認識する第2のZFNが必要とされる。次いでDNAを切ること、または二本鎖切断(DSB)が、これら2つの標的にされたDNA配列間で作製される(Millerら、Nature Biotech、2007年、第25巻、第7号、778−785頁;CathomenおよびJoung、Mol Ther、2008年、第16巻、第7号、1200−1207頁;Foleyら、PLoS ONE、2009年、第4巻、第2号、e4348頁)。姉妹染色分体であるかまたはドナー DNAコンストラクトであるかのいずれであってもよい相同配列の存在下で、DSBは、HRによって修復されることができる。これは、姉妹染色分体が修復のために使用されるのではなく、情報は細胞へと導入されるドナーコンストラクトからコピーされる、遺伝子標的指向化のプロセスの基礎である。このドナーコンストラクトは、もともとの染色体の遺伝子座と比較して変更箇所を含有し、従ってHRのプロセスは、これらの変更箇所をゲノムに組み込む。
【0032】
第1の形質移入は、第1の組成物および第2の組成物の両方を、同時にまたは(互いに)連続的に用いた形質移入を含んでもよい。
【0033】
本発明に係る方法では、第2の形質移入は、1以上の注目する分子を導入するために実施される。
【0034】
この注目する分子は、化学物質、DNA、RNA、タンパク質、オリゴヌクレオチド、およびペプチドからなる群から選択されることができる。ある実施形態では、この注目する分子は、dsRNA、miRNA、siRNA、プラスミド、変異原性オリゴヌクレオチド、より好ましくは変異原性オリゴヌクレオチドから選択される。
【0035】
ある実施形態では、注目する分子として、ZFNコンストラクトをコードするプラスミドを使用することができる。次に第2の形質移入工程は、発現後に、フットプリント(footprinting)において使用することができるDSBを誘導することができるZFNコンストラクトを導入する。
【0036】
ある実施形態では、変異原性オリゴヌクレオチドを、注目する分子として使用することができる。この変異原性オリゴヌクレオチドは、ひとたびプロトプラストへと形質移入されると、プロトプラストのDNAにおいて変更をもたらすことができる。好ましくは、変異原性オリゴヌクレオチドについての標的DNAは核内DNAに由来する。あるいは、葉緑体またはミトコンドリアのDNAを使用することができる。原理上は、これまでに当該技術分野で記載されたいずれの変異原性オリゴヌクレオチド、例えばRNA/DNAキメラオリゴヌクレオチド、LNAを含有するオリゴヌクレオチドなどのオリゴヌクレオチド、ホスホロチオエート、プロピン置換などを使用することができる。
【0037】
このように、注目する分子としての、変異原性オリゴヌクレオチドの使用は、オリゴヌクレオチド依存性標的化ヌクレオチド交換(ODTNE)を提供する。
【0038】
オリゴヌクレオチド依存性標的化ヌクレオチド交換(oligonucleotide−mediated targeted nucleotide exchange、ODTNE)
オリゴヌクレオチド依存性標的化ヌクレオチド交換(ODTNE)は、変異(複数可)、例えば1つの点変異または欠失/挿入を導入すること、それゆえもともとの遺伝子機能を回復することによりゲノムの遺伝子座を修正または変更するための一本鎖オリゴヌクレオチドの使用を指す。この概念は、遺伝子治療およびテーラーメイド医療の基礎であり、世界中で精力的に研究されている(Parekh−Olmedoら、Neuron、2002年、第33巻、495−498頁;Madsenら、PNAS、2008年、第105巻、第10号、3909−3914頁;Leclercら、BMC Biotechnology、2009年、第9巻、第35号、1−16頁)。ODTNEの有効性および効率に影響を及ぼすいくつかのパラメータが特定されており、いくつかはまだ検証を必要とするが、機能的MMR系がODTNEを妨げることは現在十分に確立されている(Igouchevaら、Oligonucleotides、2008年、第18巻、111−122頁;Kennedy MaguireおよびKmiec、Gene、2007年、第386巻、107−114頁;Papaioannouら、J.Gene Med.、2009年、第11巻、267−274頁)。ODTNEの使用ならびにこの技術において機能的であるオリゴヌクレオチドの構造および設計は、とりわけ、国際公開第98/54330号パンフレット、国際公開第99/25853号パンフレット、国際公開第01/24615号パンフレット、国際公開第01/25460号パンフレット、国際公開第2007/084294号パンフレット、国際公開第2007073149号パンフレット、国際公開第2007073166号パンフレット、国際公開第2007073170号パンフレット、国際公開第2009002150号パンフレットに十分に記載されている。本願明細書に開示される変異原性オリゴヌクレオチドの構造的特徴および標的配列(変更対象の遺伝子)からの配列情報に基づいて、当業者は、第2の形質移入工程で使用されるべき所望の変異原性オリゴヌクレオチドを設計することができる。本発明で使用される変異原性オリゴヌクレオチドは、当該技術分野で使用される他の変異原性オリゴヌクレオチドと同程度の長さ、すなわち典型的には10〜60ヌクレオチド、好ましくは20〜55ヌクレオチド、より好ましくは25〜50ヌクレオチドを有する。
【0039】
変異原性オリゴヌクレオチドを使用する本発明は、例えば、細胞を変更するため、野生型への回復によって変異を修正するため、変異を誘導するため、コード領域の破壊により酵素を不活化するため、コード領域を変更することにより酵素の生理活性を改変するため、コード領域を破壊することによりタンパク質を改変するため、miRNA標的を改変するため、前駆体遺伝子を改変するためおよびより多くの目的のために使用することができる。
【0040】
ある実施形態では、注目する分子はDNAコンストラクトである。DNAコンストラクトは、細胞の中に導入されることが所望される配列情報(遺伝子標的指向化)を含有するDNA配列である。このDNAコンストラクトは、ZFNコンストラクトであることができる。
【0041】
形質移入(第1の形質移入および第2の形質移入の両方)は、当該技術分野で記載される方法、例えば電気穿孔、微粒子銃、PEG介在性形質移入などを使用して成し遂げることができる。PEG介在性形質移入が好ましい。PEG介在性形質移入(好ましい)または微粒子銃などの従来の形質移入は、最高技術水準の方法(Sporleinら、Theor.Appl.Genet.、1991年、第82巻、712−722頁;MathurおよびKoncz、「Methods in Molecular Biology」、第82巻、「Arabidopsis protocols」、J.Marinez−ZapaterおよびJ.Salinas編、ニュージャージー州、トトワ(Totowa)、Humana Press Inc.;Goldsら、Bio/Technology、1993年、第11巻、95−100頁)を使用して実施することができる。
【0042】
遺伝子標的指向化は、極めて強力な技術であり、医学および農業の両方において多くの応用例を有する。遺伝子標的指向化はゲノムの正確な操作を可能にし、これにより、生物学者らが、遺伝子機能を研究開発することができる。しかしながら、HRは、染色体の遺伝子座にDSBが存在することに頼るので、ほとんどすべての細胞のタイプにおけるHRの効率は低い。従って、ZFNの有用性は、いずれの染色体の遺伝子座においてもDSBを誘導することができることであり、ZFNが使用されて、遺伝子標的指向化の効率が100倍改善された。DSBが生成されると、DSBはNHEJ経路またはHR経路のいずれかによって修復されうる。HR、従って遺伝子標的指向化、の効率は、DSBがHRによって修復されうるようにNHEJ経路を阻害することにより、高めることができる。これは、ヒトおよび真菌の細胞において実際に当てはまることが示されている(Fattahら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、2008年、第105巻、8703−8708頁;Meyerら、J.Biotechnology、2007年、第128巻、770−775頁;Bertoliniら、Mol.Biotechnol.、2009年、第41巻、106−114頁)。NHEJとHRとの間の選択は、細胞周期の期に依存する可能性もあり、G1では、相同的な鋳型の不存在に起因してNHEJが優勢であり、他方で、相同的な姉妹染色分体が存在するG2/MではHRがより活性である(BranzeiおよびFoiani、Nature reviews molecular biology、2008年)。
【0043】
植物の育種におけるODTNEおよびZFN
植物の育種では、従来の交配により植物のパフォーマンスを改善するために、自然の遺伝的変異が使用される。しかしながら、自然の変異は限られており、育種プログラムが価値ある新しい変種を生成するために多くの年月を要する。遺伝的変異は、人工的におよび伝統的に作成することができ、これは、宿主植物のゲノムに多くの変異を導入する化学的な変異生成によって行われる。最終的にいくつかの変異が注目する表現型を与えるであろうから、それを育種プログラムにおいて使用することができる。しかしながら、これらの方法は、残留する変異を取り除くための多くの戻し交配が必要であることおよびこのような化学物質によって導入される変異の範囲が限られることなどの欠点を有する。それゆえ、ODTNEおよびZFNなどの技術は、植物において指向的でクリーンな方法で遺伝子変異を導入するための魅力的な解決策を代表する。しかしながら、動物系を植物系へと移すことは、とりわけ、標的にされた遺伝子変化を促進することが公知の生理的条件を複製するという大きな課題を突きつける。
【0044】
機能的MMR系はODTNEを妨げ、遺伝子修復の実質的な増大が、siRNAを使用してMSH2をノックアウトした後に観察された。しかしながら、これらの方法は、安定に統合されたsiRNAコンストラクトを利用し、それゆえMSH2は、構成的に抑制されるが、これは好ましいことではない。なぜなら、長期的に見れば、得られた変異誘発物の表現型は、その植物の死につながるからである。ODTNEは、細胞周期のS期において蓄積する細胞において促進されるということも示されている。
【0045】
植物プロトプラストにおける特異的mRNAの一過性抑制のための方法が記載されており(Anら、Biosci.Biotechnol.Biochem.、2003年、第67巻、2674−2677頁)、これは、植物における(内因性の)MMR遺伝子の一過性抑制のための価値あるツールである可能性があるということが本発明で見出された。S期における細胞の蓄積は、ヒドロキシ尿素またはアフィディコリンなどの化学物質を使用して容易に成し遂げることができる。本発明者らは、当該オリゴヌクレオチドの送達に関するこれらの種々のパラメータの調整によって各々の個々のパラメータの効果が増進される可能性があるということを見出した。これを成し遂げるために、本発明は、細胞が細胞周期のS期において蓄積している間のMMR抑制、およびそのあとの、注目する遺伝子の修正を促進するためのオリゴヌクレオチドの導入を提供する。
【0046】
遺伝子標的指向化についても同じことが妥当し、ドナーコンストラクトの導入に先立って、細胞周期のS/G2/M期にある細胞の割合の増加が望ましく、NHEJが抑制され、ZFNが発現され、DSBが生成される。
【0047】
植物細胞では、細胞における異種分子の導入は、非常に厚い細胞の存在のため、動物細胞におけるほどには容易ではなく、この非常に厚い細胞は、注目する分子がプロトプラストに到達するために除去される必要がある。これは、セルロース分解性酵素およびペクチン分解性酵素を用いた細胞壁の酵素による消化によって成し遂げられるが、酵素混合物が洗い流されるとすぐに、細胞は細胞壁を再形成することを開始する。それゆえ、長い期間にわたって、例えば少なくとも10、30、60分間、または1、2、4、6、8、10、12、16、または24時間、またはこれより長く、例えば10分間〜24時間の間、プロトプラストの形質転換可能性(transformability)を保持したい場合には、細胞壁再形成を防止することが非常に重要である。好都合なことに、細胞壁合成に影響を及ぼし、かつ注目する種々の分子を用いて形質移入されるまでプロトプラストを裸のまま維持するために使用することができる化学物質が存在する。本願では、このような細胞壁阻害剤の使用により、植物プロトプラストにおける連続的な異種分子の導入が可能になり、オリゴヌクレオチド依存性標的化遺伝子変化、およびZFNを使用する遺伝子標的指向化の効率の改善につながるというエビデンスが提供される。
【0048】
従って、本発明のある実施形態では、細胞壁の再形成を防止するために、非酵素組成物がプロトプラスト培養物に加えられる。細胞が細胞周期における適切な段階に到達するまで細胞壁再形成を破壊、防止、低下および/または遅延することにより、より多くの異種分子が細胞へと送達されることができ、形質移入の効率の上昇を成し遂げることができる。例えば洗浄するかまたは培地を細胞壁の再形成を阻害する化合物を含有しない培地で置き換えることによる、非酵素組成物の除去によって、細胞壁が形成されるようになり細胞は細胞周期を続けるようになる。
【0049】
非酵素組成物は、所望の形質移入の特定の状況に応じて、植物細胞プロトプラストに加えることができる。この組成物は、
− 第1の形質移入の前もしくは第1の形質移入と同時に、
− 第1の形質移入と第2の形質移入との間に、
− 第2の形質移入の前もしくは第2の形質移入と同時に、または
第2の形質移入の後に
加えることができる。
【0050】
細胞壁の形成を阻害または防止するこの非酵素組成物は、
− 第1の形質移入の前もしくは第1の形質移入と同時に、
− 第1の形質移入と第2の形質移入との間に、
− 第2の形質移入の前もしくは第2の形質移入と同時に、または
− 第2の形質移入の後でかつ細胞壁が形成されるのを許容する前に
除去することができる。
【0051】
このようにして、細胞壁の再形成は、所望の形質移入を考慮して阻害することができる。例えば、図5に示されるトマトALS遺伝子座でのフットプリント形成については、当該組成物は、第1の形質移入工程の前に加えられる。他の例では(図6および図7を参照)、当該組成物は、第1の形質移入と(ほとんど)同時に加えられる。同様に、細胞壁の再形成を短時間(1〜24時間)許容し、次いで第1の形質移入に先立って細胞壁のさらなる形成を止めることも可能である。
【0052】
第1の形質移入と第2の形質移入との間の期間は、少なくとも10、30、60分間、または1、2、4、6、8、10、12、16、24時間から、数日まで、例えば96時間まで、またはさらに長くまで変わってもよい。典型的には、この期間は1時間〜72時間、好ましくは2〜48時間、より好ましくは4〜42時間、さらにより好ましくは12〜36時間である。
【0053】
(阻害、破壊、遅延および/または低下による)細胞壁(再)形成へ干渉することは、プロトプラスト培地に、例えば、セルロース沈着を阻害するかまたは新生のセルロース微細線維を捕捉し、従って組織化された細胞壁へのそれらの組み込みを防止する1以上の化学的(すなわち非酵素)化合物を加えるによって成し遂げられる(Parekh−Olmedoら、Ann.NY Acad.Sci.、2003年、第1002巻、43−56頁;Andersonら、J.Plant Physiol.、2002年、第159巻、61−67頁;MeyerおよびHerth、「Chemical inhibition of cell wall formation and cytokinesis,but not of nuclear division,in protoplasts of Nicotiana tabacum L. cultivated in vitro」、Plant、1978年、第142巻、第3号、253−262頁)。
【0054】
本発明で使用される化学的化合物は、本願では「細胞壁形成阻害剤」と呼ばれる。これらの化学的化合物は、セルロース細胞壁の形成を防止、破壊、阻害および/または遅延することができ、これは、本願明細書中では「細胞壁形成を阻害すること(細胞壁形成の阻害)」と示される。
【0055】
プロトプラスト培養物は、細胞壁の形成がないだけの状態で、または少なくとも細胞壁の形成の低下を伴うだけで、その通常の発生サイクルを経ることが許容されてもよい。このプロトプラストは、その発生サイクルを経て、DNA合成が開始することが所望される期に到ったとき、当該細胞壁形成阻害剤は、例えば洗浄することによりまたは培地の置き換えにより、プロトプラスト培養物から実質的に除去することができる。
【0056】
従って、当該細胞壁形成阻害剤を用いたプロトプラストの処理は、阻害剤(複数可)が加えられた瞬間から例えば、少なくとも12〜60時間、または24〜48時間、細胞壁形成を禁じる。従って、細胞壁形成を十分な期間阻害することにより、細胞が、通常は形質移入を受け入れない細胞周期におけるある時期に、従来の形質移入技術を使用することが可能になる。当該阻害剤の使用は、典型的には、細胞周期の進行に影響を及ぼさない。
【0057】
考慮対象の化学物質は、好ましくは、細胞周期の進行と著しく干渉することなく、また使用される濃度でプロトプラストに有害であることもなく、細胞壁再形成を防止するべきである。これに関して、「著しく干渉することなく」は、当該化学物質が、細胞周期の進行が細胞周期の通常の速度、すなわちその化学物質の不存在下での速度の少なくとも50%、少なくとも75%、好ましくは85%、より好ましくは95%で続くことを許容するということを意味する。これに関して、「有害である」は、プロトプラストのうちの少なくとも50%、少なくとも75%、好ましくは85%、より好ましくは95%が、とりわけ本願明細書に記載される細胞壁再形成の阻害以外のいずれの他の点でも当該化学物質によって影響を受けないということを意味する。
【0058】
種々の化学物質が細胞壁形成に干渉する。それらの化学物質のうちの多くは、除草剤として一般に使用される。例えば、2,6−ジクロロベンゾニトリル(DCB)(DeBoltら、Plant Physiology、2007年、第145巻、334−338頁;Andersonら、J.Plant Physiol.、2002年、第159巻、61−67頁)は、セルロースシンターゼを阻害すること、それゆえ細胞板形成を破壊することにより作用する周知の除草剤である(Vaughnら、Protoplasma、1996年、第194巻、117−132頁)。DCBは、細胞膜へのセルロースシンターゼ複合体の送達に影響を及ぼすことなく、セルロースシンターゼ複合体の運動性を阻害することが示されている(DeBoltら、Plant Physiology、2007年、第145巻、334−338頁)。さらには、当該技術に関しては細胞周期の進行が当然に重要であるので、好ましい細胞壁形成阻害剤は、細胞周期の進行に影響を及ぼさないか(GalbraithおよびShields、「The effect of inhibitors of cell wall synthesis on tobacco protoplast development」、Physiologia Plantarum、1982年、第55巻、第1号、25−30頁;MeyerおよびHerth、「Chemical inhibition of cell wall formation and cytokinesis,but not of nuclear division,in protoplasts of Nicotiana tabacum L.cultivated in vitro」、Plant、1978年、第142巻、第3号、253−262頁)、または限られた程度までしか影響を及ぼさない。DCBは、細胞周期の進行を制限せず、従って好ましい細胞壁形成阻害剤である。
【0059】
他の化学物質としては、除草剤イソキサベン(DeBoltら、Plant Physiology、2007年、第145巻、334−338頁)が挙げられ、これは、細胞膜におけるセルロースシンターゼ複合体の統合を阻害し、既存のセルロースシンターゼ複合体を破壊する。従って、好ましい実施形態では、セルロース合成阻害剤はセルロースシンターゼ阻害剤である。別の実施形態では、当該化学物質は、セルロース合成に関与する遺伝子、例えばCESA遺伝子に干渉する。カルコフロールホワイトは、蛍光光沢剤(fluorescent brightener)とも呼ばれ、セルロース微細線維と競争して、調整された(coordinated)ネットワークへのセルロース微細線維の統合を防止する(RonceroおよびDuran、Journal of Bacteriology、1985年、第163巻、第3号、1180−1185頁、Haiglerら、Science、1980年、第210巻、第4472号、903−906頁)。
【0060】
他の細胞壁形成阻害剤は、例えば、ニトリル、ベンズアミドおよび/もしくはトリアゾロカルボキシアミド除草剤などのセルロース生合成阻害剤、ジニトロアニリン、ホスホロアミダート、ピリジン、ベンズアミドおよび/もしくはベンゼンジカルボン酸除草剤などの微小管集合阻害剤ならびに/またはセルロース沈着の阻害剤である。
【0061】
ある実施形態では、セルロース生合成阻害剤は、ジクロベニル、クロルチアミド、フルポキサム、トリアゾフェナミド、フトキサゾリンA、フトラマイシン、タクストミンA、ブレフェルジンAからなる群から選択される。
【0062】
ある実施形態では、微小管集合阻害剤は、コブトリン(cobtorin)、ジニトロアニリン、ベネフィン(ベンフルラリン)、ブトラリン、ジニトラミン、エタルフルラリン、オリザリン、ペンディメタリン、トリフルラリン、アミプロホス−メチル、ブタミホス ジチオピル、チアゾピル プロピザミド=プロナミド、テブタム(tebutam) DCPA(クロルタールジメチル)からなる群から選択される。
【0063】
ある実施形態では、セルロース沈着の阻害剤はキンクロラックである。
【0064】
ある実施形態では、細胞壁形成阻害剤は、モルリン(morlin)(7−エトキシ−4−メチルクロメン−2−オン)、イソキサベン(CAS 82558−50−7、N−[3−(1−エチル−1−メチルプロピル)−1,2−オキサゾール−5−イル]−2,6−ジメトキシベンズアミド)、AE F150944(N2−(1−エチル−3−フェニルプロピル)−6−(1−フルオロ−1−メチルエチル)−1,3,5,−トリアジン−2,4−ジアミン)、ジクロベニル(ジクロロベンゾニトリル)、カルコフロールおよび/またはカルコフロールホワイト(4,4’−ビス((4−アニリノ−6−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ−s−トリアジン−2−イル)アミノ)−、2,2’−スチルベン二スルホン酸およびその塩)、オリザリン(CASRN 19044−88−3、4−(ジプロピルアミノ)−3,5−ジニトロベンゼンスルホンアミド)、5−tert−ブチル−カルバモイルオキシ−3−(3−トリフルオロメチル)フェニル−4−チアゾリジノン、クマリン、3,4 デヒドロプロリン、
【化1】

、コブトリン、ジニトロアニリン、ベネフィン(ベンフルラリン)、ブトラリン、ジニトラミン、エタルフルラリン、ペンディメタリン、トリフルラリン、アミプロホス−メチル、ブタミホス ジチオピル、チアゾピル プロピザミド=プロナミド、テブタム、DCPA(クロルタールジメチル)、キンクロラックからなる群から選択される。
【0065】
ある実施形態では、上に列挙された化学物質のうちの2以上の混合物を使用することができる。これらは、同時にまたは連続してプロトプラスト試料に加えることができる。
【0066】
非酵素組成物の量および濃度は、種々の化学物質およびプロトプラスト系(の混合物)ごとに異なるであろうが、いくつかの初期の基礎的実験と一緒に本願明細書で引用される利用可能な文献に基づいて、当業者によって容易に決定されることが可能である。
【0067】
植物細胞は双子葉植物または単子葉植物であってよい。
【0068】
これに関して、好ましい双子葉植物は、モクレン科(Magnoliaceae)、キンポウゲ科(Ranunculaceae)、サボテン科(Cactaceae)、キク科(Asteraceae)、ブナ科(Fagaceae)、ナス科(Solanaceae)、アブラナ科(Brassicaceae)、シソ科(Lamiaceae)、バラ科(Rosaceae)、モクセイ科(Oleaceae)、ウリ科(Cucurbitaceae)、およびセリ科(Umbelifereae)からなる群から選択される。
【0069】
これに関して、好ましい単子葉植物は、イネ科(Poaceae)、ラン科(Orchidaceae)、アヤメ科(Iridaceae)、ウキクサ科(Lemnaceae)、ユリ科(Liliaceae)、およびネギ科(Alliaceae)からなる群から選択される。
【0070】
好ましい作物は、ジャガイモ、トウモロコシ、トマト、タバコ、綿、大豆、菜種である。
【0071】
新しく単離されたプロトプラストは、通常は、自然にG0に同期化される(GalbraithおよびShields、Physiologia Plantarum、1982年、第55巻、第1号、25−30頁)。所望の形質移入および所望の細胞期(S期、M期、G1期および/またはG2期)に依存して、プロトプラストの追加の同期化の必要性が、ある実施形態では、プロセス全体のまたは形質移入工程の効率をさらに高めるために、有利である場合がある。葉肉、分裂組織、または細胞懸濁液に由来するものなどの異なるプロトプラストは、活発に分裂していてもよいし活発に分裂していなくてもよいが、細胞期の同期化は、十分な形質移入を成し遂げるために望ましい場合がある。
【0072】
従って、ある実施形態では、当該方法は、植物細胞または植物細胞プロトプラストの細胞期を同期化する工程をさらに含む。
【0073】
細胞期の同期化は、リン酸飢餓、硝酸飢餓、イオン飢餓、血清飢餓、スクロース飢餓、オーキシン飢餓などの栄養欠乏によって成し遂げることができる。同期化は、同期化剤(synchronizing agent)をプロトプラスト試料に添加することにより成し遂げることもできる。
【0074】
この同期化は、
− 植物細胞プロトプラストが植物細胞から形成される前に、または
− 第1の形質移入の前に、または
− 第2の形質移入の前に、または
− 第1の形質移入と第2の形質移入との間に
行うことができる。
【0075】
同期化工程は、同期化剤が、
− 植物細胞プロトプラストが植物細胞から形成される前に、または
− 第1の形質移入の前に、または
− 第2の形質移入の前に、または
− 第1の形質移入と第2の形質移入との間に、または
− 第2の形質移入の後もしくは第2の形質移入と同時に、
例えば洗浄することによりまたは培地の置き換えにより除去される工程も含んでもよい。
【0076】
同期化する工程は、植物細胞プロトプラストを、細胞壁の(再)形成を阻害または防止する非酵素組成物と接触させる工程とは独立に(例えば、前に、後にまたは同時に)実施されてもよい。
【0077】
従って、ある実施形態では、同期化剤は、プロトプラスト試料に加えることができる。アフィディコリン(好ましい)、ヒドロキシ尿素(好ましい)、チミジン、コルヒチン、コブトリン、ジニトロアニリン、ベネフィン(ベンフルラリン)、ブトラリン、ジニトラミン、エタルフルラリン、オリザリン、ペンディメタリン、トリフルラリン、アミプロホス−メチル、ブタミホス ジチオピル、チアゾピル プロピザミド=プロナミド、テブタム DCPA(クロルタールジメチル)、ミモシン、アニソマイシン、α アマニチン、ロバスタチン、ジャスモン酸、アブサイシン酸、メナジオン、クリプトゲイン、熱、過酸化水素、過マンガン酸ナトリウム、インドメタシン、エポキソミシン(epoxomycin)、ラクタシスチン、icrf 193、オロモウシン、ロスコビチン、ボヘミン、スタウロスポリン、K252a、オカダ酸、エンドタール(endothal)、カフェイン、MG132、サイクリン依存性キナーゼおよびサイクリン依存性キナーゼ阻害剤などの同期化剤、ならびにこれらの標的機構、量および濃度およびそれらの関連する細胞周期の期は、例えば「Flow Cytometry with plant cells」、J.Dolezel c.s.編、Wiley−VCH Verlag、2007年、327頁以降に記載されている。アフィディコリンおよび/またはヒドロキシ尿素が好ましい。
【0078】
選択された遺伝子座におけるフットプリント形成に向けられた本発明の方法の好ましい実施形態では、当該方法は、プロトプラストを生成するための細胞壁消化、細胞壁形成阻害剤(好ましくはDCB)を含む組成物による細胞壁阻害、同期化剤(好ましくはヒドロキシ尿素)の(第1の形質移入と同時にまたは第1の形質移入に先立つ)の添加、KU70に対するdsRNA(第1の組成物)の添加、(好ましくは例えば、約6、12、18または24時間の期間の後の)ZFNコンストラクト(第2の組成物または第2の形質移入)の添加、(第2の形質移入と同時または第2の形質移入の直前の)同期化剤の除去の工程を含む。
【0079】
遺伝子標的指向化事象を目的とした好ましい実施形態では、本発明に係る方法は、植物細胞プロトプラストの形成、細胞壁形成阻害剤の添加、例えばKU70(NHEJ)(これに限定されない)に対する同期化剤、ZFNコンストラクトおよび/またはdsRNAの添加(第1の形質移入)、ならびに例えば6、12、18または24時間の同期化の期間の後の、同期化剤の除去を伴う、ドナーコンストラクトの第2の形質移入を含む。
【0080】
プロトプラストにおけるODTNEを目的とした好ましい実施形態では、植物細胞は、プロトプラスト形成前の48時間まで同期化剤を与えられる。細胞壁の消化の後、細胞壁阻害剤は、MMR(MSH2または他のMMR関連遺伝子)に対して、dsRNAと一緒に加えられる(第1の形質移入)。所望の細胞周期の期において、細胞壁阻害が解除され、同期化剤が除去され、第2の形質移入のために変異原性オリゴヌクレオチドが加えられ、そして当該細胞は細胞周期を続けるようにされる。
【0081】
本発明は、植物細胞プロトプラストを形質移入するためのキットであって、第1の組成物、第2の組成物、細胞壁の形成を阻害または防止する非酵素組成物、同期化剤、および1以上の注目する異種分子からなる群から選択される2以上を含むキット、にも関する。
【0082】
本発明は、以下の非限定的な項目によって要約することができる。
(1)植物細胞プロトプラストにおける1以上の注目する分子の導入方法であって、
− 植物細胞から細胞壁を酵素により分解し、かつ/または植物細胞から前記細胞壁を取り除くことにより、植物細胞プロトプラストを準備する工程と、
− (i)ミスマッチ修復系、非相同末端再結合からなる群から選択される1以上の経路の制御を変更することができる第1の組成物、および/または
(ii)二本鎖DNA切断を誘導することができる第2の組成物
を用いて前記植物細胞プロトプラストの第1の形質移入を実施する工程と、
− 1以上の注目する分子を用いて前記植物細胞プロトプラストの第2の形質移入を実施する工程と、
− 前記細胞壁を形成させる工程と
を含み、前記第2の形質移入は前記第1の形質移入の後に実施される、方法。
【0083】
(2)二本鎖DNA切断を誘導することができる前記第2の組成物は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、およびジンクフィンガーヌクレアーゼまたはメガヌクレアーゼをコードするDNAコンストラクトからなる群から選択される、項目1に記載の方法。
【0084】
(3)前記第1の組成物および前記第2の組成物は、実質的に同時に前記植物細胞プロトプラストへと与えられる、項目1に記載の方法。
【0085】
(4)前記第1の組成物は、前記第2の組成物の前に加えられる、項目1に記載の方法。
【0086】
(5)前記第2の組成物は、前記第1の組成物の前に加えられる、項目1に記載の方法。
【0087】
(6)前記制御を変更することは、前記経路のうちの1以上の下方制御、好ましくは前記経路の一過性の下方制御である、項目1に記載の方法。
【0088】
(7)前記方法は、
− 前記第1の形質移入の前もしくは前記第1の形質移入と同時に、または
− 前記第1の形質移入と第2の形質移入との間に、または
− 前記第2の形質移入の前もしくは前記第2の形質移入と同時に、または
− 前記第2の形質移入の後に、
前記植物細胞プロトプラストを、前記細胞壁の(再)形成を阻害または防止する非酵素組成物と接触させる工程をさらに含み、前記方法は、
− 前記第1の形質移入の前もしくは前記第1の形質移入と同時に、または
− 前記第1の形質移入と第2の形質移入との間に、または
− 前記第2の形質移入の前もしくは前記第2の形質移入と同時に、または
− 前記第2の形質移入の後で、
かつ前記細胞壁が形成されるのを許容する前に、
細胞壁の形成を阻害または防止する前記非酵素組成物を除去する工程をさらに含む、項目1に記載の方法。
【0089】
(8)前記植物細胞または植物細胞プロトプラストの細胞周期の期を同期化する工程をさらに含む、項目1に記載の方法。
【0090】
(9)前記同期化は、好ましくは
− 前記植物細胞プロトプラストが前記植物細胞から形成される前もしくは前記植物細胞プロトプラストが前記植物細胞から形成されるのと同時に、または
− 前記第1の形質移入の前もしくは前記第1の形質移入と同時に、または
− 前記第2の形質移入の前もしくは前記第2の形質移入と同時に、または
− 前記第1の形質移入と前記第2の形質移入との間に、
前記植物細胞または植物細胞プロトプラストを、同期化剤と接触させることにより成し遂げられる、項目8に記載の方法。
【0091】
(10)前記方法は、
− 前記植物細胞プロトプラストが前記植物細胞から形成される前に、または
− 前記第1の形質移入の前もしくは前記第1の形質移入と同時に、または
− 前記第2の形質移入の前もしくは前記第2の形質移入と同時に、または
− 前記第1の形質移入と前記第2の形質移入との間に、
前記同期化剤を除去する工程をさらに含む、項目9に記載の方法。
【0092】
(11)前記同期化する工程は、前記植物細胞プロトプラストを、前記細胞壁の(再)形成を阻害または防止する非酵素組成物と接触させる工程とは独立に(例えば、前に、後にまたは同時に)実施される、項目8に記載の方法。
【0093】
(12)細胞壁の形成を阻害する前記非酵素組成物は、
(a)セルロース生合成阻害剤、
(b)微小管集合阻害剤、
(c)セルロース沈着の阻害剤、
(d)他の細胞壁形成阻害剤
からなる群から選択される1以上の細胞壁形成阻害剤を含有する、項目7に記載の方法。
【0094】
(13)前記セルロース生合成阻害剤は、ジクロベニル、クロルチアミド、フルポキサム、トリアゾフェナミド、フトキサゾリンA、フトラマイシン、タクストミンA、ブレフェルジンAからなる群から選択される、項目12に記載の方法。
【0095】
(14)前記微小管集合阻害剤は、コブトリン、ジニトロアニリン、ベネフィン(ベンフルラリン)、ブトラリン、ジニトラミン、エタルフルラリン、オリザリン、ペンディメタリン、トリフルラリン、アミプロホス−メチル、ブタミホス ジチオピル、チアゾピル プロピザミド=プロナミド、テブタム DCPA(クロルタールジメチル)からなる群から選択される、項目12に記載の方法。
【0096】
(15)前記セルロース沈着の阻害剤はキンクロラックである、項目12に記載の方法。
【0097】
(16)前記他の細胞壁形成阻害剤は、モルリン(7−エトキシ−4−メチルクロメン−2−オン)、イソキサベン(CAS 82558−50−7、N−[3−(1−エチル−1−メチルプロピル)−1,2−オキサゾール−5−イル]−2,6−ジメトキシベンズアミド)、AE F150944(N2−(1−エチル−3−フェニルプロピル)−6−(1−フルオロ−1−メチルエチル)−1,3,5,−トリアジン−2,4−ジアミン)、ジクロベニル(ジクロロベンゾニトリル)、カルコフロールおよび/またはカルコフロールホワイト(4,4’−ビス((4−アニリノ−6−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ−s−トリアジン−2−イル)アミノ)−、2,2’−スチルベン二スルホン酸およびその塩)、オリザリン(CASRN 19044−88−3、4−(ジプロピルアミノ)−3,5−ジニトロベンゼンスルホンアミド)、5−tert−ブチル−カルバモイルオキシ−3−(3−トリフルオロメチル)フェニル−4−チアゾリジノン、クマリン、3,4 デヒドロプロリン、
【化2】

、コブトリン、ジニトロアニリン、ベネフィン(ベンフルラリン)、ブトラリン、ジニトラミン、エタルフルラリン、ペンディメタリン、トリフルラリン、アミプロホス−メチル、ブタミホス ジチオピル、チアゾピル、プロピザミド=プロナミド、テブタム、DCPA(クロルタールジメチル)、キンクロラックからなる群から選択される、項目12に記載の方法。
【0098】
(17)前記第1の組成物は、MutS、MutL、MutH、MSH2、MSH3、MSH6、MSH7、MLH1、MLH2、MLH3、PMS1、DNA−PK複合体 Ku70、Ku80、Ku86、Mre11、Rad50、RAD51、XRCC4、Nbs1、PARP−1のうちの1以上の制御を変更することができる、項目1に記載の方法。
【0099】
(18)前記第1の組成物はdsRNAを含む、項目1に記載の方法。
【0100】
(19)前記第2の形質移入における前記1以上の分子は、化学物質、DNA、RNA、タンパク質、オリゴヌクレオチド、mRNA、siRNA、miRNA、ペプチド、プラスミド、リポソーム、変異原性オリゴヌクレオチドからなる群から選択される、項目1に記載の方法。
【0101】
(20)細胞周期の期の前記同期化は、前記プロトプラストを細胞周期のS期、M期、G1および/またはG2期に同期化する、項目8に記載の方法。
【0102】
(21)細胞周期の期の前記同期化は、リン酸飢餓、硝酸飢餓、イオン飢餓、血清飢餓、スクロース飢餓、オーキシン飢餓などの栄養欠乏により成し遂げられる、項目8に記載の方法。
【0103】
(22)前記同期化剤は、アフィディコリン、ヒドロキシ尿素、チミジン、コルヒチン、コブトリン、ジニトロアニリン、ベネフィン(ベンフルラリン)、ブトラリン、ジニトラミン、エタルフルラリン、オリザリン、ペンディメタリン、トリフルラリン、アミプロホス−メチル、ブタミホス ジチオピル、チアゾピル プロピザミド=プロナミド、テブタム DCPA(クロルタールジメチル)、ミモシン、アニソマイシン、α アマニチン、ロバスタチン、ジャスモン酸、アブサイシン酸、メナジオン、クリプトゲイン、熱、過酸化水素、過マンガン酸ナトリウム、インドメタシン、エポキソミシン、ラクタシスチン、icrf 193、オロモウシン、ロスコビチン、ボヘミン、スタウロスポリン、K252a、オカダ酸、エンドタール、カフェイン、MG132、サイクリン依存性キナーゼおよびサイクリン依存性キナーゼ阻害剤からなる群のうちの1以上から選択される、項目9に記載の方法。
【0104】
(23)項目19に記載の異種分子を用いて形質移入された植物細胞プロトプラスト。
【0105】
(24)植物細胞プロトプラストを形質移入するためのキットであって、第1の組成物、第2の組成物、細胞壁の形成を阻害または防止する非酵素組成物、同期化剤、および1以上の注目する異種分子からなる群から選択される2以上を含むキット。
【実施例】
【0106】
植物ミスマッチ修復遺伝子および非相同末端再結合遺伝子
MMR経路(MSH2)およびNHEJ経路(Ku70)に関わる遺伝子と相同性を共有するタバコおよびトマトのESTについて公共のデータベースをスクリーニングした。dsRNAを生成するために使用される領域に下線を引いてある。dsRNAは、当該技術分野で周知のプロトコルに従って生成した。加えて、注目する遺伝子のいずれかと著しい相同性を示さないプラスミドに由来する非特異的dsRNA種を生成した。これを、dsRNAそれ自体の存在は特定のmRNAの抑制に関与しないことを実証するための対照として使用した。
【0107】
トマトKu70
GGAAGATCTGAACGACCAGCTTAGGAAACGCATGTTTAAGAAGCGCAGAGTTCGAAGACTTCGACTTGTAATTTTTAATGGATTATCTATCGAACTTAACACCTATGCTTTGATCCGTCCAACTAATCCAGGGACAATTACTTGGCTTGATTCGATGACTAATCTTCCTTTGAAGACTGAGAGAACCTTCATATGTGCTGATACTGGTGCTATAGTTCAGGAGCCTCTAAAACGCTTTCAGTCTTACAAAAATGAGAATGTCATCTTTTCTGCGGATGAGCTTTCAGAAGTCAAAAGAGTTTCAACTGGACATCTTCGTCTGTTGGGCTTCAAGCCTTTGAGCTGCTTAAAAGACTATCATAACCTGAAGCCAGCAACTTTTGTCTTTCCCAGTGATGAGGAAGTGGTTGGAAGCACTTGTCTTTTCGTTGCTCTCCAAAGATCAATGTTGCGGCTTAAGCGTTTTGCAGTTGCTTTCTATGGGAATTTAAGTCATCCTCAATTGGTTGCTCTTGTTGCACAAGATGAAGTAATGACTCCTAGTGGTCAAGTCGAGCCACCAGGGATGCATCTGATTTATCTTCCATATTCTGATGATATCAGACATGTTGAAGAGCTTCATACTGATCCTAATTCCGTGCCTCATGCCACTGATGACCAGATAAAGAAGGCCTCCGCTTTAGTGAGACGTATTGACCTCAAAGATTTTTCTGTGTGGCAATTTGCTAATCCTGCATTGCAGAGACATTATGCAGTATTACAAGCTCTTGCACTTG[配列番号1]
【0108】
タバコMSH2
GGAGCTACTGATAGATCATTGATTATAATTGATGAGTTGGGCCGTGGTACATCAACCTATGATGGCTTTGGTTTAGCTTGGGCTATTTGTGAGCACATTGTTGAAGAAATTAAGGCACCAACATTGTTTGCCACTCACTTTCATGAGCTGACTGCATTGGCCAACAAGAATGGTAACAATGGACATAAGCAAAATGCTGGGATAGCAAATTTTCATGTTTTTGCACACATTGACCCTTCTAATCGCAAGCTAACTATGCTTTACAAGGTTCAACCAGGTGCTTGTGATCAGAGTTTTGGTATTCATGTTGCTGAATTTGCAAATTTTCCACCGAGTGTTGTGGCCCTGGCCAGAGAAAAGGCATCTGAGTTGGAGGATTTCTCTCCTATTGCCATAATTCCAAATGACATTAAAGAGGCAGCTTCAAAACGGAAGAGAGAATTTGACCCTCATGACGTGTCTAGAGGTACTGCCAGAGCTCGGCAATTCTTACAGGATTTCTCTCAGTTGCCACTGGATAAGATGGATCCAAGCGAGGTCAGGCAACAGTTGAGCAAAATGAAAACCGACCTGGAGAGGGATGCAGTTGACTCTCACTGGTTTCAGCAATTCTTTTAGTTCTTCAGATTAGAACTATATCTTCTATTCTGTGAAGCTTGGGGGAATGATAGTGATGGGTTTTGTGGATATAACTTAGCCTAAGTGTAAAGTTTCGTTTAAATCCTTACCCCAAACATGATTCTCTGTAATCAGGGGACTTTTGTATGCATCCTGTGTTAAATAGTAAACGTTATCTTATGGTCAGCTAACATTGGTAGTAGTCTATTGAATTATTCCTTCACAACGACTAAACAACCTTCCCTTCTCTTAAAACACCCTAAACT[配列番号2]
【0109】
NtMSH2およびLeKu70の下方制御の評価
LeKu70またはMilliQ水に対するdsRNAを用いたプロトプラストの形質移入の24時間後に、RNAeasyキット(Qiagen)を使用して全RNAを単離した。Quantitect RTキット(Qiagen)を使用してcDNA合成を実施した。Light Cycler装置(Roche)を使用して内因性のLeKu70のレベルを測定した。mRNA定量化のために使用したプライマーを、下記に列挙する。
【表1】

【0110】
トマトプロトプラストの単離
トマトM82栽培品種のインビトロでのシュート培養物(shoot culture)を、25℃および60〜70%RHで、2000luxの16/8時間の光周期を用いて、0.8% Micro−Agarを補ったMS20培地上で維持する。1グラムの若葉をCPW9Mの中でやさしくスライスし、酵素溶液(2% セルロースonozuka RS、0.4% macerozyme onozuka R10、2.4−D(2mg/ml)、NAA(2mg/ml)、BAP(2mg/ml) pH5.8)、およびヒドロキシ尿素(2mM)を含有するCPW9M)に移す。消化を、暗所で、25℃で一晩進行させる。翌朝、ペトリ皿を1時間やさしく渦を巻かせ、プロトプラストを遊離させる。このプロトプラスト懸濁液を50μmメッシュのステンレス鋼製ふるいに通して濾過し、室温で、85×gで5分間の遠心分離によってプロトプラストを回収する。このプロトプラストペレットを、2mM ヒドロキシ尿素を補ったCPW9Mに再懸濁し、各チューブの底に、3mLのCPW18Sを加える。遠心分離(10分間、室温、85×g)の間に2つの層の間の界面に蓄積する生プロトプラストを集め、血球計算器を使用してそれらの密度を評価する。プロトプラストを、室温で、85×gで5分間の遠心分離によって回収し、2mM ヒドロキシ尿素を補ったMaMg培地に、10/mLの最終密度に再懸濁する。
【0111】
トマトプロトプラスト形質移入
フットプリント形成(実施例1)
各形質移入について、250000のプロトプラストを、25μgのトマトKu70に対する二本鎖RNAおよび250μLのPEG溶液(40% PEG4000(Fluka 番号81240)、0.1M Ca(NO、0.4M マンニトール)と混合する。形質移入を、室温で20分間進行させる。5mLの0.275M Ca(NOを滴下し、十分に混合する。形質移入されたプロトプラストを室温で、85×gで5分間の遠心分離によって回収し、CPW9Mの中で2回洗浄する。最後に、プロトプラストを、2mg.L−1ジクロベニルおよび2mM ヒドロキシ尿素を補ったK8pに、250000/mLの最終密度に再懸濁し、暗所で、25℃で一晩インキュベーションする。翌朝、プロトプラストを室温で、85×gで5分間の遠心分離によって回収し、2mM ヒドロキシ尿素を補ったCPW9Mの中で1回洗浄し、生プロトプラストを上記のとおり単離する。生プロトプラストを、MaMgに、10/mLの最終密度に再懸濁し、20μgのZFNコンストラクト(Townsendら、Nature、2009年)を用いて上記のとおり形質移入する。次いでプロトプラストをアルギン酸(塩)中に包埋し、K8p培地中で培養する。
【0112】
遺伝子標的指向化(実施例2)
各形質移入について、250000のプロトプラストを、25μgのトマトKu70に対する二本鎖RNA、20μgのZFNコンストラクト(Townsendら、Nature、2009年)および250μLのPEG溶液(40% PEG4000(Fluka 番号81240)、0.1M Ca(NO、0.4M マンニトール)と混合する。形質移入を、室温で20分間進行させる。5mLの0.275M Ca(NOを滴下し、十分に混合する。形質移入されたプロトプラストを、室温で、85×gで5分間の遠心分離によって回収し、CPW9Mの中で2回洗浄する。最後に、プロトプラストを、2mg.L−1ジクロベニルおよび2mM ヒドロキシ尿素を補ったK8pに、250000/mLの最終密度に再懸濁し、暗所で、25℃で一晩インキュベーションする。翌朝、プロトプラストを室温で、85×gで5分間の遠心分離によって回収し、2mM ヒドロキシ尿素を補ったCPW9Mの中で1回洗浄し、生プロトプラストを上記のとおり単離する。生プロトプラストを、MaMgに、10/mLの最終密度に再懸濁し、20μgのドナーコンストラクトを用いて上記のとおり形質移入する。次いでプロトプラストをアルギン酸(塩)中に包埋し、K8p培地中で培養する。
【0113】
フットプリントの検出(実施例1)
3日の培養後、アルギン酸(塩)の皿をクエン酸ナトリウムに溶解させ、プロトプラストを遠心分離によって回収し、あとのDNAeasyキット(Qiagen)を使用するDNA抽出のために液体窒素の中で凍結する。全長ALSオープンリーディングフレームを、校正Taqポリメラーゼを使用してPCRによって増幅し、PCR産物を、TOPO XL PCRクローニングベクター(Invitrogen)にクローニングし、E.Coli One Shot TOP10コンピテント細胞(Invitrogen)に形質転換する。100μg.mL−1カルベニシリンを補ったLB寒天上に細菌をプレーティングし、37℃で一晩インキュベーションする。翌朝、400の個々のクローンを取り上げ、ALS遺伝子座にミスマッチを有するクローンを特定するためのLight Cycler装置(Roche)での高分解能融解曲線分析のために使用する。陽性のクローンをシーケンシングによって確認する。
【0114】
遺伝子標的指向化事象の検出(実施例2)
14日の培養後、アルギン酸(塩)の皿を5mmの細片へと切断し、0.8% micro agarを用いて固形化しかつ20nM クロルスルフロンを補ったTM−DB培地の表面上に配置する。遺伝子標的指向化事象から生じるカルスは、クロルスルフロンに対して耐性を持つであろうから、6〜8週間発育するであろう。耐性のカルスをサンプリングし、Qiagen Plant DNA easyキットを使用してDNAを抽出する。ALS遺伝子の全長コード配列をPCRによって増幅し、変異の存在をシーケンシングによって確認する。
【0115】
実施例3
植物細胞株
非機能的なEGFP遺伝子を含有するタバコBright Yellow 2細胞の懸濁液を、このタンパク質の発色団領域に、未熟の終止コドンの形成を生じる点変異を導入することにより、生成した。この株は、オリゴヌクレオチド依存性標的化遺伝子修復によるEGFP遺伝子の修復に対する種々のパラメータの影響を試験するためのレポーター系として使用する。
【0116】
ATGGGAAGAGGATCGCATCACCACCATCATCATAAGCTTCCAAAGAAGAAGAGGAAGGTTCTCGAGATGGTGAGCAAGGGCAGGAGCTGTTCACCGGGGTGGTGCCCATCCTGGTCGAGCTGGACGGCGACGTAAACGGCCACAAGTTCAGCGTGTCCGGCGAGGGCGAGGGCGATGCCACCTACGGCAAGCTGACCCTGAAGTTCATCTGCACCACCGGCAAGCTGCCCGTGCCCTGGCCCACCCTCGTGACCACCCTGACCTACGGCGTGCAGTGCTTCAGCCGCTACCCCGACCACATGAAGCAGCACGACTTCTTCAAGTCCGCCATGCCCGAAGGCTACGTCCAGGAGCGCACCATCTTCTTCAAGGACGACGGCAACTACAAGACCCGCGCCGAGGTGAAGTTCGAGGGCGACACCCTGGTGAACCGCATCGAGCTGAAGGGCATCGACTTCAAGGAGGACGGCAACATCCTGGGGCACAAGCTGGAGTACAACTACAACAGCCACAACGTCTATATCATGGCCGACAAGCAGAAGAACGGCATCAAGGTGAACTTCAAGATCCGCCACAACATCGAGGACGGCAGCGTGCAGCTCGCCGACCACTACCAGCAGAACACCCCCATCGGCGACGGCCCCGTGCTGCTGCCCGACAACCACTACCTGAGCACCCAGTCCGCCCTGAGCAAAGACCCCAACGAGAAGCGCGATCACATGGTCCTGCTGGAGTTCGTGACCGCCGCCGGGATCACTCTCGGCATGGACGAGCTGTACAAGTAA[配列番号7]
【0117】
変異したEGFP(mEGFP)のcDNA配列において、変異の位置は、下線付きおよび太字(G→T)で示されている。
【0118】
修復および対照オリゴヌクレオチド配列
GFP 7 配列番号8 TCAGCTCCTCGCCCTTGC
GFP 8 配列番号9 TCAGCTCCTAGCCCTTGC
は、ホスホロチオエート修飾を示す。
【0119】
タバコプロトプラストの単離
BY−2培地(Nagataら、Method Cell Sci、1999年)に一週間維持した5mLの7日齢のタバコBright Yellow 2(BY−2)細胞懸濁培養液を、2mM ヒドロキシ尿素を補った45mLのBY−2培地が入っている50mLの三角フラスコに移す。細胞を24時間分裂させ、室温で、1000rpmで10分間の遠心分離によって回収する。押し固められた細胞容積に、MDE(全量900mlの中に、0.25gのKCl、1.0gのMgSO.7HO、0.136gのKHPO、2.5gのポリビニルピロリドン(MW 10,000)、6mgのナフタレン酢酸および2mgの6−ベンジルアミノプリン。この溶液の浸透圧を、ソルビトールを用いて600mOsm.kg−1に調整する。pH 5.7)中のBY−2酵素混合物(1%(w/v)セルラーゼOnozuka RS、0.05% ペクチナーゼ Y23、0.2% ドリセラーゼ(driselase)(担子菌(Basidiomycetes sp)由来))25mLを加える。細胞をTC品質のペトリ皿に移し、緩やかな撹拌(40rpm)のもとで消化を、25℃で4時間進行させる。このプロトプラスト懸濁液を50μmメッシュのステンレス鋼製のふるいに通して濾過し、5℃で、800rpmで5分間の遠心分離により回収する。プロトプラストを、2mM ヒドロキシ尿素を補った氷冷したKC洗浄用培地(0.2% CaCl.2HO、1.7% KCl、KClを用いて540mOsm.Kg−1、pH 5.7)に再懸濁し、5℃で、800rpmで5分間遠心分離する。プロトプラストを2mM ヒドロキシ尿素を補ったKC洗浄用培地に再懸濁し、各チューブの底に、3mLのCPW18Sを加える。生プロトプラストは、5℃で、800rpmで10分間の遠心分離の際に2つの培地の界面に蓄積するであろう。生プロトプラストを回収し、血球計算器を使用してそれらの密度を評価する。プロトプラスト密度を、氷冷したKC洗浄用培地を使用して10/mLに調整する。
【0120】
タバコプロトプラスト形質移入
トマトプロトプラストについてと同様に、タバコプロトプラスト形質移入を実施する。タバコプロトプラストを、12.5μgのタバコMSH2に対するdsRNA用いて形質移入する。形質移入されたプロトプラストを、2mM ヒドロキシ尿素および2mg.L−1ジクロベニルを補ったTo培地2.5mLに再懸濁する。To培地は、(1リットルあたり、pH 5.7)950mg KNO、825mg NHNO、220mg CaCl.2HO、185mg MgSO.7HO、85mg KHPO、27.85mg FeSO.7HO、37.25mg NaEDTA.2HO、Hellerの培地(Heller,R.、Ann Sci Nat Bot Biol Veg、1953年)に係る微量栄養素、MorelおよびWetmoreの培地(Morel,G.およびR.H.Wetmore、Amer.J. Bot.、1951年)に係るビタミン、2%(w/v)スクロース、3mg ナフタレン酢酸、1mg 6−ベンジルアミノプリン、および浸透圧を540mOsm.kg−1にするための量のマンニトールを含有しており、これを35mmペトリ皿に移した。翌日、プロトプラストを遠心分離によって回収し、2mM ヒドロキシ尿素および2mg.L−1 ジクロベニルを補った氷冷したKC洗浄用培地で洗浄する。生プロトプラストを回収し、1.6nmolの、転写された鎖に相補的でかつ標的にされた配列との1つのミスマッチを含有する(GFP 7)かまたは含有しない(GFP 8)オリゴヌクレオチドを用いて上記のとおり形質移入する。3’末端および5’末端の両方にある4つのホスホロチオエート連結によって、オリゴヌクレオチドをヌクレアーゼ分解から保護する。プロトプラストを、最終的に、ヒドロキシ尿素もジクロベニルも含まないTo培地に再懸濁する。24時間後、バンドパス(band pass) GFPフィルターキューブ(filter cube)を取り付け、CFI Super Plan Fluor ELWD 20XC対物レンズを取り付けたNikon Eclipse TS100−Fを使用してEGFP回復を採点する。
【0121】
結果
タバコおよびトマトMSH2の下方制御
結果を図8に提示する。これらの結果は、MSH mRNAのレベルが単離後に上昇するということを実証する。大多数の葉プロトプラストは、活発に分裂していない葉肉細胞に由来する。単離後、培地中のホルモンは、これらの細胞が細胞周期へと再進入すること、および結果としてMMR遺伝子のレベルの誘導を誘導する。非特異的dsRNA(MSH2と相同性を共有しない)の添加は発現レベルに影響を及ぼさないが、他方で、MSH2 dsRNAは、MSH2 mRNAレベルを、単離後にプロトプラストにおいて見出されるMSH2 mRNAレベルの5〜20%まで低下させることにおいて有効である。本発明者らは、MLH1およびKU70の両方に標的化されたdsRNAについて同様の結果を見出した。
【0122】
トマトALS遺伝子座でのフットプリント形成(実施例1、図5)
すべての試料を、2mM ヒドロキシ尿素で処理した(材料および方法を参照)。
【表2】

【0123】
トマトALS遺伝子座での遺伝子標的指向化事象(実施例2、図6)
実施例2:植物プロトプラストにおける効率的な遺伝子標的指向化についての実験計画、図6を参照。
すべての試料を、2mM ヒドロキシ尿素で処理した(材料および方法を参照)。
【表3】

BY−2プロトプラストにおけるmeGFP回復
【0124】
実施例3:植物プロトプラストにおける効率的なODTNEについての実験計画、図7を参照。すべての試料を、2mM ヒドロキシ尿素で処理した(材料および方法を参照)。
【表4】

【0125】
上記の実施例から、細胞壁阻害を用いるフットプリント形成、遺伝子標的指向化またはODTNEについて必要とされる事象の順序の最適化によって、すべての記載されたプロセスにおける実質的な改善が導かれるということが明らかである。
【0126】
SEQUENCE LISTING
<110> Keygene NV
<120> Improved techniques for transfecting protoplasts
<130> P30039PC00
<150> US 61/288474
<151> 2009−12−21
<150> NL2004020
<151> 2009−12−24
<160> 9
<170> PatentIn version 3.3
<210> 1
<211> 776
<212> DNA
<213> Lycopersicon esculentum
<220>
<221> misc_feature
<223> KU70
<400> 1
ggaagatctg aacgaccagc ttaggaaacg catgtttaag aagcgcagag ttcgaagact 60
tcgacttgta atttttaatg gattatctat cgaacttaac acctatgctt tgatccgtcc 120
aactaatcca gggacaatta cttggcttga ttcgatgact aatcttcctt tgaagactga 180
gagaaccttc atatgtgctg atactggtgc tatagttcag gagcctctaa aacgctttca 240
gtcttacaaa aatgagaatg tcatcttttc tgcggatgag ctttcagaag tcaaaagagt 300
ttcaactgga catcttcgtc tgttgggctt caagcctttg agctgcttaa aagactatca 360
taacctgaag ccagcaactt ttgtctttcc cagtgatgag gaagtggttg gaagcacttg 420
tcttttcgtt gctctccaaa gatcaatgtt gcggcttaag cgttttgcag ttgctttcta 480
tgggaattta agtcatcctc aattggttgc tcttgttgca caagatgaag taatgactcc 540
tagtggtcaa gtcgagccac cagggatgca tctgatttat cttccatatt ctgatgatat 600
cagacatgtt gaagagcttc atactgatcc taattccgtg cctcatgcca ctgatgacca 660
gataaagaag gcctccgctt tagtgagacg tattgacctc aaagattttt ctgtgtggca 720
atttgctaat cctgcattgc agagacatta tgcagtatta caagctcttg cacttg 776
<210> 2
<211> 884
<212> DNA
<213> Nicotiana benthamiana
<400> 2
ggagctactg atagatcatt gattataatt gatgagttgg gccgtggtac atcaacctat 60
gatggctttg gtttagcttg ggctatttgt gagcacattg ttgaagaaat taaggcacca 120
acattgtttg ccactcactt tcatgagctg actgcattgg ccaacaagaa tggtaacaat 180
ggacataagc aaaatgctgg gatagcaaat tttcatgttt ttgcacacat tgacccttct 240
aatcgcaagc taactatgct ttacaaggtt caaccaggtg cttgtgatca gagttttggt 300
attcatgttg ctgaatttgc aaattttcca ccgagtgttg tggccctggc cagagaaaag 360
gcatctgagt tggaggattt ctctcctatt gccataattc caaatgacat taaagaggca 420
gcttcaaaac ggaagagaga atttgaccct catgacgtgt ctagaggtac tgccagagct 480
cggcaattct tacaggattt ctctcagttg ccactggata agatggatcc aagcgaggtc 540
aggcaacagt tgagcaaaat gaaaaccgac ctggagaggg atgcagttga ctctcactgg 600
tttcagcaat tcttttagtt cttcagatta gaactatatc ttctattctg tgaagcttgg 660
gggaatgata gtgatgggtt ttgtggatat aacttagcct aagtgtaaag tttcgtttaa 720
atccttaccc caaacatgat tctctgtaat caggggactt ttgtatgcat cctgtgttaa 780
atagtaaacg ttatcttatg gtcagctaac attggtagta gtctattgaa ttattccttc 840
acaacgacta aacaaccttc ccttctctta aaacacccta aact 884
<210> 3
<211> 18
<212> DNA
<213> artificial
<220>
<223> primer
<400> 3
accagcttag gaaacgca
<210> 4
<211> 18
<212> DNA
<213> primer
<400> 4
agcaccagta tcagcaca
<210> 5
<211> 23
<212> DNA
<213> artificial
<220>
<223> primer
<400> 5
cacacattga cccttctaat cgc 23
<210> 6
<211> 23
<212> DNA
<213> artificial
<220>
<223> primer
<400> 6
agaaatcctc caactcagat gcc 23
<210> 7
<211> 786
<212> DNA
<213> Nicotiana benthamiana
<400> 7
atgggaagag gatcgcatca ccaccatcat cataagcttc caaagaagaa gaggaaggtt 60
ctcgagatgg tgagcaaggg ctaggagctg ttcaccgggg tggtgcccat cctggtcgag 120
ctggacggcg acgtaaacgg ccacaagttc agcgtgtccg gcgagggcga gggcgatgcc 180
acctacggca agctgaccct gaagttcatc tgcaccaccg gcaagctgcc cgtgccctgg 240
cccaccctcg tgaccaccct gacctacggc gtgcagtgct tcagccgcta ccccgaccac 300
atgaagcagc acgacttctt caagtccgcc atgcccgaag gctacgtcca ggagcgcacc 360
atcttcttca aggacgacgg caactacaag acccgcgccg aggtgaagtt cgagggcgac 420
accctggtga accgcatcga gctgaagggc atcgacttca aggaggacgg caacatcctg 480
gggcacaagc tggagtacaa ctacaacagc cacaacgtct atatcatggc cgacaagcag 540
aagaacggca tcaaggtgaa cttcaagatc cgccacaaca tcgaggacgg cagcgtgcag 600
ctcgccgacc actaccagca gaacaccccc atcggcgacg gccccgtgct gctgcccgac 660
aaccactacc tgagcaccca gtccgccctg agcaaagacc ccaacgagaa gcgcgatcac 720
atggtcctgc tggagttcgt gaccgccgcc gggatcactc tcggcatgga cgagctgtac 780
aagtaa 786
<210> 8
<211> 25
<212> DNA
<213> artificial
<220>
<223> mutagenic oligonucleotide
<220>
<221> modified_base
<222> (1) .. (4)
<223> phosphorothioate modified nucleotides
<220>
<221> modified base
<222> (22) .. (25)
<223> phosphorothioate modified nucleotides
<400> 8
tgaacagctc ctcgcccttg ctcac 25
<210> 9
<211> 25
<212> DNA
<213> artificial
<220>
<223> mutagenic oligonucleotide
<220>
<221> modified_base
<222> (1) .. (4)
<223> phophorothioate modified nucleotides
<220>
<221> modified_base
<222> (22) .. (25)
<223> phophorothioate modified nucleotides
<400> 9
tgaacagctc ctagcccttg ctcac 25

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物細胞プロトプラストにおける1以上の注目する分子の導入方法であって、
− 植物細胞から細胞壁を酵素により分解し、かつ/または植物細胞から細胞壁を取り除くことにより、前記植物細胞プロトプラストを準備する工程と、
− (i)ミスマッチ修復系、非相同末端再結合からなる群から選択される1以上の経路の制御を変更することができる第1の組成物、および/または
(ii)二本鎖DNA切断を誘導することができる第2の組成物
を用いて前記植物細胞プロトプラストの第1の形質移入を実施する工程と、
− 1以上の注目する分子を用いて前記植物細胞プロトプラストの第2の形質移入を実施する工程と、
− 前記細胞壁が形成されるのを許容する工程と
を含み、前記第2の形質移入は前記第1の形質移入の後に実施される、方法。
【請求項2】
二本鎖DNA切断を誘導することができる前記第2の組成物は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼまたはTALエフェクターヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼをコードするDNAコンストラクト、メガヌクレアーゼをコードするDNAコンストラクト、TALエフェクターヌクレアーゼをコードするDNAコンストラクトからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の組成物および前記第2の組成物は、実質的に同時に前記植物細胞プロトプラストへと与えられる、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の組成物は、前記第2の組成物の前に加えられる、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の組成物は、前記第1の組成物の前に加えられる、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記制御を変更することは、前記経路のうちの1以上の下方制御、好ましくは前記経路の一過性の下方制御である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、
− 前記第1の形質移入の前もしくは前記第1の形質移入と同時に、または
− 前記第1の形質移入と第2の形質移入との間に、または
− 前記第2の形質移入の前もしくは前記第2の形質移入と同時に、または
− 前記第2の形質移入の後に、
前記植物細胞プロトプラストを、前記細胞壁の(再)形成を阻害または防止する非酵素組成物と接触させる工程をさらに含み、前記方法は、
− 前記第1の形質移入の前もしくは前記第1の形質移入と同時に、または
− 前記第1の形質移入と第2の形質移入との間に、または
− 前記第2の形質移入の前もしくは前記第2の形質移入と同時に、または
− 前記第2の形質移入の後で、
かつ前記細胞壁が形成されるのを許容する前に、
細胞壁の形成を阻害または防止する前記非酵素組成物を除去する工程をさらに含む、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記植物細胞または植物細胞プロトプラストの細胞周期の期を同期化する工程をさらに含む、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記同期化は、好ましくは、
− 前記植物細胞プロトプラストが前記植物細胞から形成される前または前記植物細胞プロトプラストが前記植物細胞から形成されるのと同時に、または
− 前記第1の形質移入の前もしくは前記第1の形質移入と同時に、または
− 前記第2の形質移入の前もしくは前記第2の形質移入と同時に、または
− 前記第1の形質移入と前記第2の形質移入との間に、
前記植物細胞または植物細胞プロトプラストを、同期化剤と接触させることにより成し遂げられる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、
− 前記植物細胞プロトプラストが前記植物細胞から形成される前に、または
− 前記第1の形質移入の前もしくは前記第1の形質移入と同時に、または
− 前記第2の形質移入の前もしくは前記第2の形質移入と同時に、または
− 前記第1の形質移入と前記第2の形質移入との間に、または
− 前記第2の形質移入の後もしくは第2の形質移入と同時に、
前記同期化剤を除去する工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記同期化する工程は、前記植物細胞プロトプラストを、前記細胞壁の(再)形成を阻害または防止する非酵素組成物と接触させる工程とは独立に(例えば前に、後にまたは同時に)実施される、請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
細胞壁の形成を阻害する前記非酵素組成物は、
(a)セルロース生合成阻害剤、
(b)微小管集合阻害剤、
(c)セルロース沈着の阻害剤、
(d)他の細胞壁形成阻害剤
からなる群から選択される1以上の細胞壁形成阻害剤を含有する、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記セルロース生合成阻害剤は、ジクロベニル、クロルチアミド、フルポキサム、トリアゾフェナミド、フトキサゾリンA、フトラマイシン、タクストミンA、ブレフェルジンAからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記微小管集合阻害剤は、コブトリン、ジニトロアニリン、ベネフィン(ベンフルラリン)、ブトラリン、ジニトラミン、エタルフルラリン、オリザリン、ペンディメタリン、トリフルラリン、アミプロホス−メチル、ブタミホス ジチオピル、チアゾピル プロピザミド=プロナミド、テブタム DCPA(クロルタールジメチル)からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記セルロース沈着の阻害剤はキンクロラックである、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記他の細胞壁形成阻害剤は、モルリン(7−エトキシ−4−メチルクロメン−2−オン)、イソキサベン(CAS 82558−50−7、N−[3−(1−エチル−1−メチルプロピル)−1,2−オキサゾール−5−イル]−2,6−ジメトキシベンズアミド)、AE F150944(N2−(1−エチル−3−フェニルプロピル)−6−(1−フルオロ−1−メチルエチル)−1,3,5,−トリアジン−2,4−ジアミン)、ジクロベニル(ジクロロベンゾニトリル)、カルコフロールおよび/またはカルコフロールホワイト(4,4’−ビス((4−アニリノ−6−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ−s−トリアジン−2−イル)アミノ)−、2,2’−スチルベン二スルホン酸およびその塩)、オリザリン(CASRN 19044−88−3、4−(ジプロピルアミノ)−3,5−ジニトロベンゼンスルホンアミド)、5−tert−ブチル−カルバモイルオキシ−3−(3−トリフルオロメチル)フェニル−4−チアゾリジノン、クマリン、3,4 デヒドロプロリン、
【化1】

、コブトリン、ジニトロアニリン、ベネフィン(ベンフルラリン)、ブトラリン、ジニトラミン、エタルフルラリン、ペンディメタリン、トリフルラリン、アミプロホス−メチル、ブタミホス ジチオピル、チアゾピル、プロピザミド=プロナミド、テブタム、DCPA(クロルタールジメチル)、キンクロラックからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の組成物は、MutS、MutL、MutH、MSH2、MSH3、MSH6、MSH7、MLH1、MLH2、MLH3、PMS1、DNA−PK複合体 Ku70、Ku80、Ku86、Mre11、Rad50、RAD51、XRCC4、Nbs1、PARP−1のうちの1以上の制御を変更することができる、請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の組成物はdsRNAを含む、請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の形質移入における前記1以上の分子は、化学物質、DNA、RNA、タンパク質、オリゴヌクレオチド、mRNA、siRNA、miRNA、ペプチド、プラスミド、リポソーム、変異原性オリゴヌクレオチドからなる群から選択される、請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
細胞周期の期の前記同期化は、前記プロトプラストを細胞周期のS期、M期、G1および/またはG2期に同期化する、請求項8から請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
細胞周期の期の前記同期化は、リン酸飢餓、硝酸飢餓、イオン飢餓、血清飢餓、スクロース飢餓、オーキシン飢餓などの栄養欠乏により成し遂げられる、請求項8から請求項11および請求項20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記同期化剤は、アフィディコリン、ヒドロキシ尿素、チミジン、コルヒチン、コブトリン、ジニトロアニリン、ベネフィン(ベンフルラリン)、ブトラリン、ジニトラミン、エタルフルラリン、オリザリン、ペンディメタリン、トリフルラリン、アミプロホス−メチル、ブタミホス ジチオピル、チアゾピル プロピザミド=プロナミド、テブタム DCPA(クロルタールジメチル)、ミモシン、アニソマイシン、α アマニチン、ロバスタチン、ジャスモン酸、アブサイシン酸、メナジオン、クリプトゲイン、熱、過酸化水素、過マンガン酸ナトリウム、インドメタシン、エポキソミシン、ラクタシスチン、icrf 193、オロモウシン、ロスコビチン、ボヘミン、スタウロスポリン、K252a、オカダ酸、エンドタール、カフェイン、MG132、サイクリン依存性キナーゼおよびサイクリン依存性キナーゼ阻害剤からなる群のうちの1以上から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の形質移入と前記第2の形質移入との間の時間は、少なくとも10、30、60分間、1、2、4、6、8、10、12、16、または24時間であるが、好ましくは96時間未満であり、好ましくは前記時間は、1時間〜72時間、より好ましくは2〜48時間、さらにより好ましくは4〜42時間、なおさらにより好ましくは12〜36時間である、請求項1から請求項22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の形質移入と前記第2の形質移入との間の時間は、少なくとも10、30、60分間、1、2、4、6、8、10、12、16、または24時間であるが、好ましくは96時間未満であり、好ましくは前記時間は1時間〜72時間、より好ましくは2〜48時間、さらにより好ましくは4〜42時間、なおさらにより好ましくは12〜36時間であり、前記方法は、
− 前記第1の形質移入の前もしくは前記第1の形質移入と同時に、または
− 前記第1の形質移入と第2の形質移入との間に、または
− 前記第2の形質移入の前もしくは前記第2の形質移入と同時に、または
− 前記第2の形質移入の後に
前記植物細胞プロトプラストを、前記細胞壁の(再)形成を阻害または防止する非酵素組成物と接触させる工程をさらに含み、前記方法は、
− 前記第1の形質移入の前もしくは前記第1の形質移入と同時に、または
− 前記第1の形質移入と第2の形質移入との間に、または
− 前記第2の形質移入の前もしくは前記第2の形質移入と同時に、または
− 前記第2の形質移入の後で、
かつ前記細胞壁が形成されるのを許容する前に、
細胞壁の形成を阻害または防止する前記非酵素組成物を除去する工程をさらに含む、請求項1から請求項23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
請求項19に記載の異種分子を用いて形質移入された植物細胞プロトプラスト。
【請求項26】
植物細胞プロトプラストを形質移入するためのキットであって、第1の組成物、第2の組成物、細胞壁の形成を阻害または防止する非酵素組成物、同期化剤、および1以上の注目する異種分子からなる群から選択される2以上を含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−514764(P2013−514764A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544423(P2012−544423)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【国際出願番号】PCT/NL2010/050872
【国際公開番号】WO2011/078665
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(509351340)
【Fターム(参考)】