説明

プロトロンビン時間を決定する方法

【課題】
【解決手段】
本発明は、経口抗凝血療法及び肝細胞癌(HCC)をモニタするための試験に関する。具体的には、本発明は、ビタミンK欠乏性タンパク質(protein induced by vitamin K absence)又はアンタゴニスト(antagonists)(Pivka)の凝固時間及びINR結果に関する効果を考慮して、血漿又は全血試料のプロントロンビン時間を決定する方法を提供する。本発明の主な目的は、国際標準化率(INR)結果についてのプロトロンビン時間法を調整し、INRpivkaを測定することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、経口抗凝固剤療法及び肝細胞癌(HCC)をモニタするINR単位に基づいた試験に関する。具体的には、本発明は、ビタミンK欠乏性タンパク質(protein induced by vitamin K absence)又はアンタゴニスト(antagonists)(Pivka)がINRに及ぼす影響を考慮して、血漿又は全血試料のプロトロンビン時間を決定する方法を提供する。本発明の目的は、国際標準比率(INR)結果に対してプロトロンビン時間を調整し、また、INR単位としてPivka効果(即ち、INRPivka)を測定することである。
【0002】
本発明の背景
プロトロンビン時間(PT)試験は、血栓性素因等の血栓疾患に罹患している患者を治療するのに用いられる経口抗凝固療法(OAT)を管理するために導入された。この療法は、肝臓の凝固因子(F II、F VII、F IX及びF X)の合成を阻害するワルファリン(又はクマリン)等のビタミンKアンタゴニストに基づいている。現在、OATの必要性は、世界的に高まってきている。例えば、フィンランドでは、2003年にはワルファリン投薬が人口の1.7%に処方され、患者の数は、高齢者人口によって増大している。OAT投与は、血栓症又は出血の深刻な影響を防ぐために継続した管理を必要とするので、毎年8億のPT試験が世界中で実施されていることは、驚くに値しない。最も一般的に用いられているPT試験は、Quick一段法(Quick’s one−stage PT)及びOwren法(Owren’s method)に基づくものである。後者は、日本と同様に北欧諸国やベネルクス諸国で広く用いられており、一方で、Quick PTは、他の国で用いられているアプローチであり、実施されている全PT試験の約95%を数える。
【0003】
国際標準比率(INR)及び国際感度指数(ISI)が、世界保健機構によって導入された時、その目的は、経口抗凝固療法(5)についてのPT結果を調整することであった:ある種の血漿又は全血試料についてのPT結果は、用いられる試薬、機器、又は方法に関わらずINR単位で同じであるべきである。今日、PTについての各市販の凝固試薬(即ち、トロンボプラスチン)は、主要なWHO参照調製に対して標準化されている。この結果を用いて、ISI(国際感度指数)で公表されているトロンボプラスチン試薬の相対感度を計算する。次いで、このINR結果を、式:INR=[PT率]ISIによって計算する。しかし、INR規格の使用の増加により、その限界が認識され、最近、多数の(又は、恐らくほとんどの)市販のINR法間で同意はなされず、臨床学的に過剰のINRの変形例が存在し、従って、患者の良い治療を危険にさらしてきた(9、10)。
【0004】
Hemkerと同僚(1、2)は、ビタミンK欠乏性タンパク質(protein induced by vitamin K absence)又はアンタゴニスト(antagonists)(Pivka)の役割を最初に特徴付けた。彼らは、内因性拮抗凝固阻害剤(endogenous competitive coagulation inhibitor)とクマリン療法が関連することを発見した。これは、後にPivkaと名付けられた。問題のタンパク質は、ビタミンK依存性因子の前段階であった。これらのタンパク質は、恐らく、凝固因子X(F X)に対して、プロトロンビン変換複合体を阻害した(3)。Pivka因子は、カルシウム結合に必要であり、これによって、リン酸脂質面へのこれらの因子の「吸着」に必要であるガンマカルボキシグルタミン酸が欠乏していることが分かった。従って、これらは、活性凝固因子(4、5)に対する不活性類似体である。
【0005】
Talstadは、なぜPTの標準化が問題であるかという問いを熟考し、Pivka阻害剤の補正によるPT標準化を提案している(15、16)。Heckemann et al.は、酵素速度論に基づいた機能性凝固因子及び拮抗Pivka阻害剤の同時定量方法を開示している(17)。更に、Pivkaについての免疫化学アッセイも知られている(例えば、米国特許第5,516,640号参照。)しかしながら、PT試験におけるPivka補正についての容易で実際的な方法は、先行技術には導入されていない。従って、本発明の目的は、Pivka効果を更に研究し、様々な試薬を用いることによってPivkaを考慮してQuick法とOwren PT法を比較することであった。結果として、本発明は、Pivka効果の問題を克服したPT試験用の直接的な方法を提供する。
【0006】
本発明の概要
本発明は:
a)経口抗凝固剤療法(OAT)を受けている患者、又は肝細胞癌(HCC)を有する患者から得られた血漿又は全血試料の、又はキャリブレータ又は対照血漿試料の少なくとも2つの異なる希釈液のプロトロンビン時間を測定して、前記試料についてのtmin又はINRmin値を決定するステップと;
b)阻害剤の入っていない血漿又は全血試料の少なくとも2つの異なる希釈液のプロトロンビン時間を測定して、標準血漿についてのtmin又はINRmin値を決定するステップと;
c)ステップa)及びb)の結果からtPivka又はINRPivka値を計算するステップと;
d)ステップa)で測定されたプロトロンビン時間からステップc)で得られたtPivka又はINRPivka値を引くことによって、ステップa)の前記試料について前記Pivkaを補正したPTを決定するステップと;
を具える、プロトロンビン時間(PT)を補正したPivkaを決定する方法に関する。
【0007】
また、本発明は、本発明の方法を実施するようにプログラムした凝固分析器又はポイントオブケア機器(POCT)等のデバイスを提供する。
【0008】
発明の詳細な説明
本発明は:
a)経口抗凝固剤療法(OAT)を受けている患者、又は肝細胞癌(HCC)を有する患者から採取した血漿又は全血試料、又はキャリブレータ又は対照血漿試料の、少なくとも2つの異なる希釈液のプロトロンビン時間を測定して、前記試料についてのtmin又はINRmin値を決定するステップと;
b)阻害剤の入っていない血漿又は全血試料の少なくとも2つの異なる希釈液のプロトロンビン時間を測定して、標準血漿についてのtmin又はINRmin値を決定するステップと;
c)ステップa)及びb)の結果からtPivka又はINRPivka値を計算するステップと;
d)ステップa)で測定されたプロトロンビン時間からステップc)で得られたtPivka又はINRPivka値を引くことによって、ステップa)の前記試料について前記Pivkaを補正したPTを決定するステップと;
を具える、INR単位のPivka効果と、プロトロンビン時間(PT)を補正したPivkaを決定する方法を提供する。
【0009】
この試料についてのINRmin又はtmin値は、それぞれ、試料希釈又は試料体積(X軸)とINR単位又は秒単位の凝固時間(Y軸)との間の関係をプロットすることによって得られる。回帰直線は、様々な試料の希釈又は体積のINR値又は凝固時間に相当する点を通って描かれる。この回帰直線は、INRmin又はtminでY軸と交わる(図1参照)。
【0010】
好ましくは、測定したプロトロンビン時間のPivka効果についての値は、式:
INRPivka=INRmin(患者試料、キャリブレータ、又は対照)−INRmin(標準血漿)
又は
Pivka=tmin(患者試料、キャリブレータ、又は対照)−tmin(標準血漿)
を用いて計算される。
【0011】
また、tPivka値をINR単位に変換することも可能である。
【0012】
この方法のステップd)で、患者試料のPTに関するPivka効果は、好ましくは、次式のうちの1つを用いて補正される:
INRcorrected=INRpatient,calibrator,control−INRPivka
又は、
corrected=tpatient,calibrator,control−tPivka
ここで、式中、
INRpatient,calibrator,control又はtpatient,calibrator,controlは、前記方法のステップa)で測定された試料のプロトロンビン時間であり、INRPivka又はtPivkaは、前記方法のステップc)で計算した値である。好ましくは、前記INRpatient,calibrator,control又はtpatient,calibrator,controlは、未希釈試料、即ち、それぞれINRtotal又はttotalのプロトロンビン時間である。
【0013】
PT試料についての初期INR値は:
INR=(試料sec/標準secISI
の式で計算される。ここで、式中、試料secは、秒単位で測定した患者試料(又はキャリブレータ、又は対照試料)のプロトロンビン時間であり、標準secは、秒単位で測定した標準血漿の試料のプロトロンビン時間であり、ISIは、PT試験で用いられる凝固試薬の相対感度である。ISI値は、試薬の製造者によって通常与えられているか、又はISIキャリブレータキットを用いて測定される。
【0014】
PT試験用血漿試料は、好ましくは、生理食塩水又はその他の好適な緩衝液で希釈される。しかしながら、測定に様々な試料体積を用いる場合、試料希釈は必要ではない。簡略化するために、様々な試料体積及び試験試薬のこれらの混合物も、ここでは「希釈液」と呼ぶ。更に、「少なくとも二の希釈液」の表現は、ここでは試料セットも意味しており、この試料の1つは未希釈試料である。
【0015】
好ましくは、本法のステップb)は、ある種の凝固試薬(即ち、トロンボプラスチン)について、1回のみ実施され、得られた結果は、複数の患者、キャリブレータ、又は同じ試薬で試験された対照試料用にステップc)で用いられる。これは、標準血漿がPivkaを含まないので可能であり、従って、標準血漿のtmin又はINRmin値は、ある種の凝固試薬について常に一定である。好ましくは、ステップb)では、阻害剤を含まない血漿又は全血試料を、健康であることが分かっている対象(即ち、標準血漿の試料)から採取する。「阻害剤が含まれていない血漿又は全血試料」の表現は、ここでは、血漿又は全血試料がPivka阻害剤のような阻害剤を含まないことを意味する。
【0016】
また、本発明の方法は、現在の分析器は、試料パターンを送り、本法の実行に必要な計算を行うように容易にプログラムできるので、全自動凝固分析器で実施することもできる。従って、本発明は、本発明の方法を実行するようにプログラムされた凝固分析器又はポイントオブケア機器(POCT)等のデバイスに関するものである。流体試料の凝固を分析するデバイス及び方法は、当該分野でよく知られている(例えば、米国特許第6,750,053号参照)。ポイントオブケア機器は、限定はされないが、研究室、病院又は医療センター等の場所でプロトロンビン時間(PT)及びINRを迅速に決定するように開発された携帯用デバイスである。患者は、例えば、自宅で自分で試験するためのポイントオブケア機器を用いることができる。
【0017】
また、本発明は、本発明を実施するための凝固分析器又はポイントオブケア機器(POCT)等のデバイスの使用に関するものである。
【0018】
本発明は、更に、本法のステップa)及びb)の結果からtPivka又はINRPivka値を計算し、前記ステップa)で測定したプロトロンビン時間から本法のステップc)で得られたtPivka又はINRPivka値を引くことによって、前記ステップa)の試料についてのPTを補正したPivkaを決定するためのコンピュータ等のデバイス又は前記デバイスの使用に関するものである。
【0019】
実験セクション
【0020】
例1
【0021】
材料及び方法
【0022】
患者及び血液採取
全ての手順は、1975年のヘルシンキ宣言に従って、我々の機関の責任ある委員会によって承認された。我々は、病院及び医療センターの患者の中から無作為に選択した標準試料とOAT患者試料を分析した。0.2mLの0.109mol/L(3.2%)クエン酸溶液を含むクエン酸凝固管(Greiner Labortechnik GmbH社製、Vacuette cat.no.454322、9NC)内に、10人の標準患者及び10人のOAT患者から血液(1.8mL)を採取した。試料針(Terumo社製、Venoject needle、Quick Fit、cat.no.MN−2138MQ)は、0.8×40mmであった。試料管を1850g、20℃で10分間遠心分離して、血漿を分離した。全測定は、血液採取後8時間内に同時に開始した。
【0023】
PT時間の決定
PT凝固時間を、完全自動BCS凝固分析器(独国マールブルク所在のDadebehring社製The Dadebehring Coagulation System)を用いて測定した。Quickを用いた一段階プロトロンビン時間用に、100μLの凝固試薬を50μLのクエン酸血漿に加えた。4つの試験試薬は:
(i) ネオプラスチンCLプラス(Neoplastine CL Plus)、cat.no.00376(Diagnostica Stago社製ウサギ脳トロンボプラスチン)、lot031581、ISI1.30(器具についての記載なし)、ISI値1.42;
(ii) PT−フィブリノゲン組み換え体、cat.no.20005000(イリノイ州所在のInstrumentation Laboratory製組み換え型ウサギ組織トロンボプラスチン)、lot NO 425869、ACL用にISI1.03、ISI値l.08;
(iii)PT−フィブリノゲンHSプラス、cat.no.08469810(イリノイ州所在のInstrumentation Laboratory製ウサギ脳トロンボプラスチン)、lot NO325729、ACL用にISI1.13、ISI値1.25;
(iv) デイドイノビン(Dade Innovin)cat.no.B4212−50(DadeBehring Marburg GmbH社製組み換え型ヒト組織トロンボプラスチン)、lot No.526987、BCS用にISI0.90、ISI値l.04;
であった。
【0024】
Owren PT(トロンボプラスチン試薬と併用した)について、凝固反応は、10μLのクエン酸試料血漿、50μLの希釈剤、及び150μLの試薬を含んでいた。3つの試験試薬は:
(v) 25mmol/LのCaCl(cat.no.GHI155)及びGHI社製希釈剤、lot C414F(Owrenの緩衝液、cat.no GHI150)を含むOwren’s PT、cat.no.GHI(Global Hemostasis Institute社)131−10(ウサギ脳トロンボプラスチン)、最適な方法についてISI1.09、ISI値1.17;
(vi) Nycotest PT、cat.no.1002488(ウサギ脳トロンボプラスチン)及びAxis−Shield as社製希釈剤(Nycotest PT、希釈液、cat.no.1002485)、lot10107353、トロンボトラックについてISI1.13、ISI値0.95;
(vii)SPA、50 cat.no.00105(組織トロンボプラスチン)及びDiagnostica Stago社製希釈剤(SPA緩衝液cat.no.00124)、lot022071、ISI0.98(器具についての記載なし)、ISI値0.93;
であった。
【0025】
2つの方法(4+3試薬)は、Diagnostica Stago社製lot021964の同じキャリブレータEtaloquick cat.no.00496で、ISIを測定した。
【0026】
血漿希釈1:2は、Kabi社製生理食塩水(Natriumklorid 9mg/mL、500ml)で作られた。
【0027】
PT決定の分析における不正確
7つのPT試験の稼働中の不正確性を、治療範囲内のINR値、即ち、約2.2INRを有する1人の患者血漿試料(n=10回測定)を用いて測定した。各CVは:ネオプラスチンCLプラス(Neoplastine CL Plus)が2.3%、PT−ファブリノゲン組み換え体(PT−Fibrinogen Recombinant)が2.7%、PT−ファブリノゲンHSプラス(PT−Fibrinogen HS Plus)が1.1%、デイドイノビン(Dade Innovin)が2.6%、Owren’s PTが1.4%、Nycotest PTが1.6%、及びSPAが1.0%であった。
【0028】
Pivka決定及び統計
我々は、標準血漿及びOAT血漿について、y軸に凝固時間を、x軸に血漿希釈度をプロットした。一次方程式から、我々は、一の試料(3、11)についての無数の凝固因子を有するいわゆる最小凝固時間(tmin)と呼ばれるy軸上の線切片を得た。標準血漿とOAT血漿との間の切片(y軸)の差は、キャリブレーション効果のない秒単位のPivkaの作用を示す。我々は、INR単位で切片の差を計算した(OAT切片−標準血漿切片、図1)。
【0029】
INR結果は、式:
INR=(試料sec/標準secISI
を用いて秒単位で計算した。
【0030】
Microsoft Excel 5.0プログラムを用いて、相関関数及びINR結果を得た。
【0031】
結果
平均切片は、標準血漿については、0.03から0.14INRの範囲でQuick PTを用いて、また、0.01から0.03INRの範囲でOwren PTを用いて変化させる。平均切片は、OAT血漿については、0.40から1.46INRの範囲でQuick PTを用いて、また、0.20から0.28INRの範囲でOwren PTを用いて変化させる。Quick PT法及びOwren PTを用いた標準血漿(0.07INR)及びOAT血漿(0.72INR)についての切片の平均SDは、0.02INR;0.23INRであった。Quick PTのPivka効果の平均は、0.36INR(SD 0.43INR)(イノビン(Innovin)試薬0.15INRなしで;SD0.14)、Owren PTのPivka効果の平均は、0.36INR(SD0.24INR)である。Pivka補正を用いた、OAT血漿からの平均INR結果は、Quick PTについては2.58INR(SD0.11)であり、Owren PTについては2.51INR(SD0.16)であった(表1)。
【0032】
考察
INR結果の調和は、患者のケア及び科学文献の実用性を改善する点で実質的な目的である。患者のケアについてのINR単位の治療範囲が調和し、医師が容易に用いることができる。問題は、世界中のINR結果を統一することであり、これは、臨床検査室の課題である。実際には、検査室は、機器についての製造者のISI、製造者の又は「局地的」(ある国又は地域)キャリブレータキットを使用する。それでは、同じ試料からのINR結果は、同じであるべきである。ISIキャリブレーションは、INR結果を調和させる点で重要である。PT試薬の多様性(トロンボプラスチン、pH、イオン濃度、及び質、添加剤等)は世界的に考えることができ、これは、INRの調和を非常に困難なものにしている。
【0033】
PT試薬は、低ISI、即ち1.0付近であるべきである。このため、我々は、この研究用に高感度Owren及びQuick試薬を選択する。べき関数としてのISI(キャリブレーション)の効果は、治療範囲内でINR値が高くなると上昇する()。これによって、結果に、治療範囲でより調和することが求められている。PT測定についての分析基準は、OAT患者の顕著な生物学的変化に部分的に起因して、非常に厳しい(バイアス0.20INR及びCV<5%)(12)。
【0034】
Pivka因子は、治療領域及び測定それ自体のキャリブレーションの効果の理由によってINR結果の調和に大きな役割を有する。我々は、イノビン(Innovin)結果(ヒトトロンボプラスチン)を除外するのであれば、PivkaとPT法の関係を見出すことができる:Quick PTについてのPivkaの平均は、0.15INRであり、Owren PTについては、0.36INRである。これは、Owren PT法についてより大きなPivka感度と、より大きな阻害性(0.21INR)を意味する(表1)。これは、Quick PTと比較してOwren PTについてより低いINRとなることを説明している(6、13、14)。抗凝固療法では、患者は、ケア管理用にOwren PTを用いて、より多くの投薬(0.21INR)を受ける。
【0035】
両方法で、同じ製造者であるDiagnostica Stago社は、Pivka感度が非常に小さい試薬を有する。我々は、イノビン(Innovin)(0.98INR)を用いた、最も大きなPivka効果を発見した。その試薬は、組み換え型ヒト組織トロンボプラスチンを含み、一方で、その他の全ての試薬がウサギ起源のトロンボプラスチンを含む。このPivkaは、様々な試薬を用いて変化し、部分的にトロンボプラスチン依存性である。標準血漿及びOAT血漿についての切片SDは、明らかにOwren PT(0.01から0.03INR、0.20から0.28INR)よりもQuick PT(0.03から0.14INR、0.40から1.46INR)がより変化する。これらの結果は、Owren PT法を用いて、我々は、様々な試薬について、より広範囲でINR結果を調和させることができるという見方を確認するものである。我々のより早い時期の発見によれば、我々は、Owren PT法が優れているとの結論を出した(6、7、8)。
【0036】
表1では、様々なPT試薬及び方法を用いて、OAT血漿−Pivka阻害からのINR結果の平均間でほとんど同じ結果であり、と最小分散を参照する。これは、Pivka計算が、正しいことを確認するものである(全試薬についての同じキャリブレーション)。Pivka阻害は、世界的なINR結果の調和という点で問題を引き起こす(キャリブレーション、様々な試薬、機器、及びPT法)()。OAT患者からのISIキャリブレータ(より高いINR値)は、Pivka凝固因子も含んでおり、これは、INR系を複雑にする。キャリブレータのINR値は、Pivka効果なしのものであるべきである。
【0037】
本発明の方法は、様々な希釈及び単純な数学的計算について、1人の患者の試料につき少なくとも2つのPT測定を必要とするだけである。結果として、本法は、異なる種類の機器に適用することが容易である。理論的に、PT法は、活性K依存性凝固因子及び不活性因子(Pivka阻害)を含む、血液凝固についての抗凝固薬の全効果を測定するべきである。この方法論的選択は、Pivka感受性トロンボプラスチンの使用及び活性及び不活性凝固因子の合計を測定する方法を意味する。別の方法論的可能性は、この研究にあるように、凝固阻害剤無しで活性凝固因子のみを測定することである。この新しい方法は、最も良い主要な可能性についてのINR系を開発するのを助けて、経口抗凝固治療についてのINRを世界的に調和させる。
【0038】
例2
【0039】
材料及び方法
【0040】
患者及び血液採取
静脈血試料を、10人の標準対象と、経口抗凝固療法のモニタリングにPT時間試験が必要とされる210人の病院及び医療センターの患者から得た。我々の領域では、「P−INR」試験コードをこの目的に用いる。従って、患者試料は、抗凝固の起こり得る全ての相:(i)治療前、(ii)投与調整相、及び(iii)定状状態相を示した。全ての手順は、1975年のヘルシンキ宣言に従って、我々の機関の責任ある委員会によって承認された。0.2mLの0.109mol/L(3.2%)クエン酸溶液を含むクエン酸凝固管(Greiner Labortechnik GmbH社、Vacuette cat.no.454322、9NC)内に、血液(1.8mL)を採取した。試料針(Terumo社、Venoject needle、Quick Fit、cat.no.MN−2138MQ)は、0.8×40mmであった。試料管を1850g、20℃で10分間遠心分離して、血漿を分離した。血液採取後8時間以内に同時に全測定を開始した。
【0041】
PT決定
PT凝固時間を完全自動BCS凝固分析器(独国マールブルク所在のDadebehring社製The Dadebehring Coagulation System)を用いて測定した。Quickを用いた一段プロトロンビン時間について、100μLの凝固試薬を50μLのクエン酸血漿に加えた。また、希釈試料用に、100μL+25μL+25μL(Kabi社製生理食塩水、「Natriumklorid 9mg/mL」、500mL)を加えた。試験試薬は:デイドイノビン(Dade Innovin)cat.no.B4212−50(組み換え型ヒト組織トロンボプラスチン、DadeBehring Marburg GmbH社)、lot536928、ISI=0.92であった。
【0042】
Owren PT(併用トロンボプラスチン試薬)用に、凝固反応は、10μLのクエン酸試料血漿、60μLの希釈剤、及び140μLの試薬、及び「希釈測定」用の体積:5μL+65μL+140μL、7μL+63μL+140μL、又は14μL+56μL+140μLを含んでいた。試験試薬は:Nycotest PT、cat.no.1002488(ウサギ脳トロンボプラスチン)、及びlot10112954、ISI=1.07として、Axis−Shield社製希釈剤(Nycotest PT、希釈液、cat.no.1002485)であった。
【0043】
ISI較正
2つのローカルISIキャリブレータキット:(i)Equalis社製「Svensk nationell kalibrator for protrombinkomplexaktiviet」、lot11、12、Cal 1=0.85INR及びCal 2=3.19INR(主に瑞国及び諾国で用いられる)、(ii)Bioclin社製「ISI−kalibraattorikitti」、cat.no.B10000150、lot 8、Cal 1=2.07INR、Cal 2=3.52INR及びCal 3=1.0INR(主に芬国で用いられる)を用いた。
【0044】
更に、2つの市販の(製造者キャリブレーション)ISIキャリブレーションキット:(i)Diagnostica Stago社製Etaloquick cat.no.00496、lot041555、Cal 1=0.91INR、Cal 2=3.24INR及びCal 3=4.90INR、(ii)DadeBehring社製PT−Multi Calibrator cat.no.OPAT035、lot35422、Cal 1=1.01INR、Cal 2=1.30INR、Cal 3=1.65INR、Cal 4=2.97INR、Cal 5=4.00INR、Cal 6=5.29INRを用いた。
【0045】
最小PT時間及び各INRの決定
数秒で阻害を測定する手順を、Hemkerと協働者によって記載されたように実行した(1、2、3)。我々は、様々なキャリブレータついてと同様に、標準血漿及びOAT血漿についてのPT(秒)対D(D=血漿又はキャリブレータ希釈因子)プロットを構成した。これは、経口抗凝固剤を有する非拮抗阻害法則と調和する(18)。この一次方程式から、y軸切片を計算する。これは、所謂無数の凝固因子を有する最小凝固時間(tmin)である(3)。標準血漿とOAT血漿との間の切片(y軸)の差は、キャリブレーション効果のない数秒でのPIVKAの作用を示している。更に我々は、INR単位の切片の差を計算して全INRからそれを差し引いた:
INRCorrected=INRTotal−INRPivka
【0046】
INRの値は、式:INR=(試料sec/標準secISIを用いて計算した。Quick PT線形性チェックについての希釈因子は:0.91;1.00;1.25;1.67 2.00であり、Owren PT線形性チェックについての希釈因子は:0.67;1.00;1.25;1.67;2.50であった。
【0047】
分析に基づく不正確性及び統計
PT試験の同時正確性を、治療範囲、即ち、ほぼ2.2INRでのINR値を有する一の患者血漿試料(n=10回測定)を用いて測定した。各CVは:デイドイノビン(Dade Innovin)が2.6%、Nycotest PTが1.6%であった。これは、試薬のスペクトラムがより幅広い我々の以前の観察と調和する()。Microsoft Excel 5.0プログラムを用いて、最小二乗法を用いて相関関数及びINR結果を得た。
【0048】
結果
PIVKA阻害は、1より大きいINR値を有する全てのキャリブレータで実証できた。期待されているように、この阻害は、キャリブレータINR値の増加と共に増加した(表2)。しかしながら、PIVKA阻害はキャリブレータキット間で変動し、2つの異なるPT法で異なっていたことは、注目に値する。
【0049】
我々は、同じキャリブレータを用いた場合でさえ、PT法に依存して、200人のOAT患者の場合で、INR結果の顕著な差があることを示した。従来のINRについての平均は、Quick法及びOwren法それぞれによって測定した場合に、3.89及び2.68であった。PIVKA補正後、この平均は、INRCorrectedと表され、2.49及び2.30INR単位であった。これらの結果によって、我々は2.13INRCorrected単位の標的点を確立することが可能となり、この範囲は1.6−2.6INRCorrected単位であった。様々な希釈を用いる線形性は、Quick法及びOwren PT法に効果的であった。我々は、200人のOAT患者の場合で、従来のPT測定と活性凝固(INRCorrected)を測定する新しい方法との間の差−より高いINR値に向けて増加する−があることを示した。個々の元の値と補正した(INRCorrected)値を図2に示す。凝固阻害の個々の変動は、図3に示すようにOAT患者試料に対して、様々なINRレベル(Owren PT)で注目に値する。
【0050】
考察
この新しい方法は、一の患者試料について、2つのPT測定と数学的計算:INRcorrected=INRpatient,calibrator,control−INRPivkaを必要とする。様々な種類の機器に容易に適合する。試薬にかかる費用は、自動機器が、非常に小さい液体体積をピペットで取ることができるので、PT測定に半分の体積を用いるのと同じである。
【0051】
表1 Quick及びOwren PT法を用いるPivka阻害の測定及びQuick及びOwren PT法用の様々な試薬

【0052】
表2 2つの異なるPT法を用いた4つのキャリブレータキットで得たINR阻害


増加するINR値に応じてアレンジする。
製造者によって与えた通り。
各キャリブレータについてのINR(y軸):C(C=キャリブレータ希釈因子)(x軸)プロットを構築した。より高い値を有するキャリブレータ、即ち、PIVKAを含むキャリブレータから最も低いINR値の各キャリブレータのy切片(INR)値を順次減じることによって、阻害率を計算した。詳しくは、材料及び方法、及び図1を参照。
INR対1/C線のy軸切片:即ち、阻害剤不存在での理論上の凝固時間、又はINRCorrectedを表す
【0053】
参考文献
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18.Henry JB.Clinical Diagnosis and Management by Laboratory Methods.20th ed.Philadelphia:W.B.Saunders Company,2001:284−5.
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、Pivka計算のモデルである。標準血漿のtmin値は、一の試薬ロットについて一定である。患者の血漿についてのtmin値は、1人の患者についてのみである。一次方程式を計算するには、一の患者試料について少なくとも2つの測定値が必要とされる。
【図2】図2は、Owren PTによって決定される従来のINR(INRTotal)と、Etaloquickキャリブレーションを用いて増加する順にした200人のOAT患者血漿についての活性凝固因子(INRCorrected)及び阻害効果(INRPivka)である。
【図3】図3は、INR単位として200人OAT患者試料のOwren PTのPIVKA阻害(阻害因子F II、F VII及びF X)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Pivka−補正プロトロンビン時間(PT)の決定方法において:
a)経口抗凝固剤療法(OAT)を受けている患者、又は肝細胞癌(HCC)を有する患者から採取した血漿又は全血試料、又はキャリブレータ又は対照血漿試料の少なくとも2つの異なる希釈液のプロトロンビン時間を測定して、前記試料についてのtmin又はINRmin値を決定するステップと;
b)阻害剤の入っていない血漿又は全血試料の少なくとも2つの異なる希釈液のプロトロンビン時間を測定して、標準血漿についてのtmin又はINRmin値を決定するステップと;
c)ステップa)及びb)の結果からtPivka又はINRPivka値を計算するステップと;
d)ステップa)で測定したプロトロンビン時間からステップc)で得られたtPivka又はINRPivka値を引くことによって、ステップa)の前記試料について前記Pivkaを補正したPTを決定するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、ステップa)の前記試料について前記Pivkaを補正したPTを、以下の式:
INRcorrected=INRpatient,calibrator,control−INRPivka
又は
corrected=tpatient,calibrator,control−tPivka
ここで、式中、
INRpatient,calibrator,control又はtpatient,calibrator,controlは、前記方法のステップa)で測定した試料のPTであり、INRPivka又はtPivkaは、前記方法のステップc)で計算した値である、
のうちの1つを用いて、ステップd)で決定することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記方法を試料パターンと前記方法の実行に必要である計算を実行するようにプログラムされた完全自動凝固分析器で実行することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、ステップb)が、ある種の凝固試薬(即ち、トロンボプラスチン)について一度実施されて、得られた結果を、同じ試薬で試験された複数の患者、キャリブレーション、又は対照試料について、ステップc)で用いることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法を実施するようにプログラムされたことを特徴とするデバイス。
【請求項6】
請求項5に記載のデバイスにおいて、前記デバイスが、凝固分析器又はポイントオブケア機器(POCT)であることを特徴とするデバイス。
【請求項7】
請求項1に記載の方法の前記ステップc)及びd)を実施するようにプログラムされたことを特徴とするデバイス。
【請求項8】
請求項1に記載の方法を実施するためのデバイスの使用。
【請求項9】
請求項8に記載の使用において、前記デバイスが、凝固分析器又はポイントオブケア機器(POCT)であることを特徴とする使用。
【請求項10】
請求項1に記載の方法のステップa)及びb)の結果からtPivka又はINRPivkaを計算し、前記ステップa)で測定したプロトロンビン時間から請求項1に記載の前記方法のステップc)で得たtPivka又はINRPivka値を引くことによって前記ステップa)の前記試料についての前記Pivkaを補正したPTを決定するためのデバイスの使用。
【請求項11】
請求項10に記載の使用において、前記デバイスがコンピュータであることを特徴とする使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−533496(P2008−533496A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502430(P2008−502430)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【国際出願番号】PCT/FI2006/050104
【国際公開番号】WO2006/100346
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(507311979)
【Fターム(参考)】