説明

プロバソプレシン、特にコペプチンもしくはニューロフィジンIIによる、気道および肺の感染および慢性疾患の診断および/または危険性の層化

【課題】呼吸器および肺の感染もしくは慢性疾患(特に、下気道感染および慢性閉塞性肺疾患)の危険性を診断および/または層化するための方法を提供する。
【解決手段】プロバソプレシン(proAVP)またはそのフラグメントもしくは部分ペプチド、特にコペプチンもしくはニューロフィジンIIが測定される。さらに、インビトロ診断のための適切な生体マーカーの組み合わせに関する。プロバソプレシン(proAVP)またはそのフラグメントおよび部分ペプチド、好ましくは、コペプチンもしくはニューロフィジンIIは、気道および肺の感染もしくは慢性疾患の診断のための優れた感受性および特異性を実証する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気道および肺の感染もしくは慢性疾患、特に、下気道感染(LRTI)およびCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の診断および/または危険性の層化のための方法に関する。ここでプロバソプレシン(proAVP)またはそのフラグメントおよび部分ペプチド、特に、コペプチン(copeptin)もしくはニューロフィジンIIの決定が行われる。さらに、本発明は、この目的に適した、インビトロ診断のための生体マーカーの組み合わせに関する。
【0002】
適切な治療の目的で、気道および肺の感染もしくは慢性疾患の初期診断および区別(differentiation)は、臨床的決定を行うことの必要性と関連して、救急救命室において既に必要とされている。気道および肺の感染もしくは慢性疾患の場合における非特異的症状(呼吸困難 difficulty breathing)が原因で、他の疾患からの区別および識別(distinction)の両方、ならびに気道および肺の具体的感染もしくは慢性疾患の認識は、必須である。
【0003】
コペプチン(C末端プロAVPともいう)は、WO2006/018315(BRAHMS AG)において、心疾患および関連する肺機能不全(「肺障害」)のインビトロ診断のための生体マーカーとして記載されている。これに関連するコペプチンアッセイは、Morgenthalerら(Nils G.Morgenthaler,Joachim Struck,Christine Alonso and Andreas Bergmann,Assay for the Measurement of copeptin,a Stable Peptide Derived from the recursor of Vasopressin,Clinical Chemistry 52:112−119,2006)に記載される。
【0004】
当該分野の技術水準において、上記プロカルシトニン(PCT)測定は、細菌性敗血症(閾値>0.5ng/mL)を他の疾患原因から区別するための研究の目的について記載される(EP0656121)。PCTはまた、上記研究が主に診断と関連している場合に、既に診断されている肺炎の原因における異なる病因タイプ間を区別するために、肺炎と関連する文献中に記載される(Prat C,Dominguez J,Andreo F,Blanco S,Pallares A,Cuchillo F,Ramil C,Ruiz−Manzano J,Ausina V,プロカルシトニンおよびneopterin correlation with aetiology and severity of pneumonia,J Infect.52(3)(2006):pp169−177ならびにMasia M,Gutierrez F,Shum C,Padilla S,Navarro JC,Flores E,Hernandez I,Masia M,Gutierrez F,Shum C,Padilla S,Navarro JC,Flores E,Hernandez I、Chest 128(4)(2005):pp2223−2239、Boussekey N,Leroy O,Georges H,Devos P,d’Escrivan T,Guery B,Diagnostic and prognostic values of admission procalcitonin levels in community−acquired pneumonia in an intensive care unit.Infection 33(4)(2005):pp 257−63)。Zhouら(Zhou CDら Zhongguo Wei Zhong Bing Ji Jiu Yi Xue.2006 Jun,18(6),370−2)によって記載される研究において、PCTは、集中治療室における人工呼吸器関連肺炎(ventilator−associated pneumonia)の初期診断のための診断マーカーとして表される。PCTはまた、肺炎における診断マーカーとして記載されている(Pratら.2006(前出)およびMasia Mら 2005(前出),Boussekey Nら.2005(前出)、Christ−Crain M,Morgenthaler NG,Solz D,Muller C,Bingisser R,Harbarth S,Tamm M,Struck J,Bergmann A,Muller B,Pro−adrenomedullin to predict severity and outcome in community−acquired pneumonia,Crit Care 10(3)(2006):pp R96)。さらに、抗生物質治療を要する臨床的に関連する感染(細菌性肺炎を含む)が、PCTを用いて、それぞれ、>0.1ng/mLかつ>0.25ng/mLの閾値濃度において下気道の感染(肺炎を含む)を有すると疑われている患者において検出されることが示された研究が存在する(Christ−Crain M,Stolz D,Bingisser R,Muller C,Miedinger D,Huber PR,Zimmerli W,Harbarth S,Tamm M,Muller B,Procalcitonin Guidance of Antibiotic Therapy in Community−acquired Pneumonia:A Randomized Trial,Am J Respir Crit Care Med 174(1)(2006),pp.84−93およびChrist−Crain M,Jaccard−Stolz D,Bingisser R,Gencay MM,Huber PR,Tamm M,Muller B,Effect of procalcitonin−guided treatment on antibiotic use and outcome in lower airway infections:cluster−randomized,single−blinded intervention trial,Lancet 21;363(9409)(2004):pp600−607,Stolz D,Christ−Crain M,Gencay MM,Bingisser R,Huber PR,Muller B,Tamm M,Diagnostic value of signs,symptoms and laboratory values in lower airway infection,Swiss Med Wkly 8;136(27−28)(2006):pp 434−440)。
【0005】
しかし、コペプチンおよびプロカルシトニンのマーカー組み合わせは、記載されていない。
COPDに関する特定の臨床研究は、公知である(Soler−Cataluna JJ,Martinez−Garcia MA,Roman Sanchez P,ら. Severe acute exacerbations and mortality in patients with chronic obstructive pulmonary disease. Thorax 1005;60:925−931;Antonelli Incalzi R,Fuso L,De Rosa M,ら. Co−morbidity contributes to predict mortality of patients with chronic obstructive pulmonary disease. Eur Respir J 1997;10:2794−2800;Yohannes AM,Baldwin RC,Connolly MJ. Predictors of 1−year mortality in patients discharged from hospital following acute exacerbation of chronic obstructive pulmonary disease. Age Ageing 2005;34:491−496;Almagro P,Barreiro B,Ochoa de Echaguen A,ら. Risk factors for hospital readmission in patients with chronic obstructive pulmonary disease. Respiration 2006;73:311−317)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、危険性のある患者の初期および完全な検出が成功しないことが、以前に既知のマーカーを使用する公知の診断方法の欠点であるので、危険性の層化は、不十分な程度にのみ起こる。従って、本発明の根底にある1つの課題は、気道および肺の感染もしくは慢性疾患の診断ならびに/または危険性の層化のための方法を開発することにあり、これは、危険性のある患者の改善された検出を可能にする。
【0007】
当該分野の技術水準において、上記マーカーの十分な感受性および/または特異性が一般に達成されていないことは、さらに不利である。
従って、別の課題は、気道および肺の感染もしくは慢性疾患の診断ならびに/または危険性の層化のための方法を利用可能にすることにある。ここで少なくとも1種のマーカーまたはマーカーの組み合わせは、十分な感受性および特異性を実証する。
【0008】
従って、本発明の課題は、気道および肺の感染もしくは慢性疾患の診断ならびに/または危険性の層化のための方法を利用可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、気道および肺の感染もしくは慢性疾患の診断ならびに/または危険性の層化のための方法によって達成され、ここでプロバソプレシン(proAVP)またはそのフラグメントおよび部分ペプチド、特に、コペプチンもしくはニューロフィジンIIの測定が行われる(本明細書以降:本発明に従う方法)。
【0010】
驚くべきことに、プロバソプレシン(proAVP)またはそのフラグメントおよび部分ペプチド、好ましくは、コペプチンもしくはニューロフィジンIIは、気道および肺の感染もしくは慢性疾患の診断のための優れた感受性および特異性を実証する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、プレ−プロバソプレシンのアミノ酸配列を示す。
【図2】図2は、CAP/肺炎を有する患者の病院滞在と、入室時の測定されたコペプチン血漿値との間の関係を示す。これは、経時的な病院退院の確率として示される。入室時にコペプチン値<40pmol/Lを有する患者は、コペプチン値>40pmol/Lを有する患者と比較して、有意に短い病院滞在を有した。示された日数(d)での患者数:コペプチン<40pmol/L:n=140(0d) 88(5d) 54(10d) 28(15d) 12(20d) 1(25d) 1(30d) 0(35d)コペプチン340pmol/L:n=27(0d) 23(5d)18(10d) 12(15d) 5(20d) 4(25d) 1(30d) 0(35d)。
【図3】図3は、合併症の頻度(死亡、退院後の反復入院)と、上記入室時のコペプチン血漿値吐の間の関係を示す。これは、事象がない(事象から解放されている)時間として示される。事象は、死亡または最初の退院後の反復入院として定義される。入室時にコペプチン値<40pmol/Lを有する患者は、コペプチン値>40pmol/Lを有する患者より有意に低い頻度のこの事象を有した。示された日数(d)での患者数:コペプチン<40pmol/L:n=140(0d) 133(30d) 129(60d) 126(90d) 123(120d) 120(150d) 115(180d)コペプチン>40pmol/L:n=27(0d) 21(30d) 16(60d) 16(90d) 15(120d) 13(150d) 12(180d)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の範囲内において、用語「気道および肺の感染」とは、特に、細菌、ウイルス、真菌、もしくは原生動物によって引き起こされる感染、例えば、下気道感染(LRTI)、気管支炎、肺炎、サルコイドーシス、気管支拡張症、非心原性肺水腫(non−cardiac pulmonary edema)のような適応症を意味すると理解される。
【0013】
さらに、下気道感染(LRTI)、気管支炎、腐敗性気管支炎、肺炎は、本発明によれば、特に好ましい。肺炎、特に、市中肺炎(community associated pneumonia)(CAP)、および下気道感染(LRTI)は、非常に好ましい。
【0014】
本発明の範囲内において、肺炎は、肺組織の急性疾患もしくは慢性疾患を意味することが理解され、そしてその感染は、細菌、ウイルスもしくは真菌、原性動物、希には、毒性物質の吸入によっても、または免疫学的に引き起こされる。臨床医に関しては、肺炎は、胸部X線で認められ得る少なくとも1種の浸潤物との組み合わせにおいて、種々の症状(発熱もしくは低体温症、震え、咳、胸膜性胸痛(pleuritic thorax pain)、増大した喀痰生成、増大した呼吸率、鈍い打診音、気管支性呼吸、耳近くの捻髪音、胸膜摩擦音(pleural rubbing))の一群である(Harrisons Innere Medizin{Harrison’s Internal Medicine},published by Manfred Dietel,Norbert Suttorp and Martin Zeitz,ABW Wissenschaftsverlag 2005)。
【0015】
本発明の範囲内において、「肺および気道の慢性疾患」とは、間質性肺疾患および肺線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、特にCOPD感染悪化、気管支喘息、特に、気管支喘息の場合における感染悪化、気管支癌のような適応症であることが理解される。COPD、特に、COPD感染悪化が特に好ましい。
【0016】
本発明によれば、COPDとは、咳、増大した喀痰、およびストレス下での呼吸困難によって特徴づけられる慢性疾患の群をいう。慢性閉塞性気管支炎および肺気腫が主に言及されるべきである。両方の疾患プロフィールが、呼息(exhalation)(呼気作用(expiration))が特に妨げられることで特徴づけられる。COPDの主な症状の口語的用語はまた、「喫煙による咳(smoker’s cough)」である。本発明は、急性悪化の場合において特に有利である。
【0017】
本発明によれば、用語「危険性の層化」とは、気道および肺の感染もしくは慢性疾患のより集中的な診断および治療/処置の目的で、より乏しい予後を有する患者、特に急患および危険性のある患者を見いだすことを包含する。この目的は、最も有利な考えられる過程を可能にする。従って、本発明に従う危険性の層化は、医薬、特に抗生物質を用いて、気道および肺の感染もしくは慢性疾患の場合において考えられる有効な処置方法を可能にする{原文のまま−文中第1の部分では、単数形の直接目的語、この直接目的語に関連する関連文節においては複数形を受ける動詞}。
【0018】
この目的のために、本発明はまた、気道および肺の感染もしくは慢性疾患の増大した危険性および/または不利な予後を有する患者、特に、徴候的な患者および/または無徴候性の患者の場合において、特に、急患の同定に関する。
【0019】
救急救命医療および/または集中治療医療(intensive−care medicine)の場合、特に、信頼性のある層化は、本発明に従う方法によって、特に、有利な様式において、行われ得る。従って、本発明に従う方法は、迅速な治療成功をもたらし、死亡の回避をもたらす臨床的決定を可能にする。このような臨床的決定はまた、本発明によれば、上記患者の入院を包含する。
【0020】
この理由が原因で、本発明はまた、臨床的決定(例えば、さらなる処置および治療を行う目的で、薬物療法、特に抗生物質によって、好ましくは、集中治療医療もしくは救急救命医療の時間が重要な状況において、気道および肺の感染もしくは慢性疾患の診断ならびに/または危険性の層化のための方法に関する。
【0021】
従って、別の好ましい実施形態において、本発明に従う方法は、気道および肺の感染または慢性疾患の治療制御に関する。
本発明に従う方法の別の好ましい実施形態において、上記診断および/または危険性の層化は、予後のため、初期認識および鑑別診断による認識のため、重篤度の程度の評価のため、ならびに治療の過程にわたる進行の評価のために行われる。
【0022】
別の好ましい実施形態において、本発明は、気道および肺の感染もしくは慢性疾患のインビトロ診断ならびに/または危険性の層化のための方法に関し、ここで上記マーカー、プロバソプレシン(proAVP)またはそのフラグメントおよび部分ペプチド(特に、コペプチンもしくはニューロフィジンII)の測定は、試験される患者に対して行われる。しかし、コペプチンまたはそのフラグメントもしくは部分配列が特に好ましい。特に、コペプチンは、インビトロ診断の目的で、血清および血漿中での特に優れた安定性を示す(Morgenthaler NG,Struck J,Alonso C.ら. Assay for the measurement of copeptin,a stable peptide derived from the precursor of vasopressin,Clin Chem 2006;52:112−119)。
【0023】
さらに、本発明は、上記実施形態のうちの1つによれば、気道および肺の感染および慢性疾患の診断および/または危険性の層化のための方法、気道および肺の感染もしくは慢性疾患の初期診断もしくは鑑別診断または予後のためのインビトロ診断のための方法に関し、ここで上記症状の出現後、上記マーカープロバソプレシン(proAVP)またはそのフラグメントおよび部分ペプチド、特に、コペプチンもしくはニューロフィジンIIの6〜20pmol/Lのカットオフ(閾値)値は、診断および/または危険性の層化に対して有意(特異的)である。さらに、好ましくは、上記症状の出現の2時間後に、6〜10pmol/L、特に、9pmol/Lのカットオフ(閾値)が好ましい。
【0024】
さらに、本発明は、上記実施形態のうちの1つによれば、気道および肺の感染もしくは慢性疾患の診断ならびに/または危険性の層化のための方法、あるいは気道および肺の感染もしくは慢性疾患の初期診断もしくは鑑別診断または予後のための方法に関し、ここで上記症状の出現後、上記マーカープロバソプレシン(proAVP)またはそのフラグメントおよび部分ペプチド、特に、コペプチンもしくはニューロフィジンIIの10〜50pmol/Lのカットオフ(閾値)は、予後および/または危険性の層化に対して有意(特異的)である。さらに、10〜40pmol/Lのカットオフ(閾値)が好ましい。
【0025】
これに基づいて、本発明に従うこれらの方法は、有利なことには、感受性である。
本発明に従う方法の一実施形態において、体液、特に血液、必要に応じて、全血もしくは血清もしくは入手可能な血漿が試験されるべき患者から採取され、上記診断は、インビトロで/エキソビボで(すなわち、ヒトもしくは動物の身体の外で)行われる。上記マーカープロバソプレシン(proAVP)またはそのフラグメントおよび部分ペプチド、特に、コペプチンおよびニューロフィジンIIの測定に基づいて、気道および肺の感染もしくは慢性疾患に対する優れた感受性および特異性が達成され、そして上記診断または危険性の層化は、少なくとも1種の患者サンプル中に存在するその量を使用して行われ得る。しかし、上記マーカーコペプチン(proAVPの安定なフラグメントまたはプレ−プロバソプレシン)またはそのフラグメントもしくは部分配列が特に好ましい。
【0026】
本発明の範囲内において、「プロバソプレシン」とは、プレ−プロバソプレシンから得られ得るヒトタンパク質もしくはポリペプチドであると理解され、そして上記プレ−プロバソプレシンの範囲内のアミノ酸29−164(WO2006/018315および図1もまた参照のこと)、およびそれから得られ得るフラグメントもしくは部分ペプチド、特に、コペプチン(フラグメント:アミノ酸126−164(39アミノ酸配列:ASDRSNATQL DGPAGALLLR LVQLAGAPEP FEPAQPDAY)もしくはニューロフィジンII(フラグメント:プレ−プロバソプレシンのアミノ酸32−124(93アミノ酸配列:AMSDLELRQC LPCGPGGKGR CFGPSICCAD ELGCFVGTAE ALRCQEENYL PSPCQSGQKA CGSGGRCAAF GVCCNDESCV TEPECREGFH RRA)を含む。さらに、本発明に従うこれらポリペプチドは、翻訳後修飾(例えば、グリコシル化、脂質化、もしくは誘導体化を示し得る。
【0027】
別の実施形態において、プロバソプレシン(proAVP)またはそのフラグメントおよび部分ペプチド、特に、コペプチンもしくはニューロフィジンIIの測定は、さらなるマーカー、具体的に好ましくは、気道および肺の感染もしくは慢性疾患を既に示すものを用いてさらに行われ得る。
【0028】
この理由が原因で、本発明は、上記測定が、試験されるべき患者において、炎症マーカーの群から選択される少なくとも1種のさらなるマーカーでさらに実施される、本発明に従う方法の一実施形態に関する。
【0029】
本発明によれば、上記炎症マーカーは、C反応性タンパク質(CRP)、サイトカイン(例えば、TNF−α)、例えば、インターロイキン(例えば、IL−6)、例えば、プロカルシトニン(1−116、3−116)、ならびに接着分子(例えば、VCAMもしくはICAM)の群から選択される少なくとも1種のマーカーから選択され得る。
【0030】
特に好ましい実施形態において、本発明は、生体マーカー、具体的には、プロバソプレシン(proAVP)またはそのフラグメントおよび部分ペプチド、特に、コペプチンもしくはニューロフィジンIIと、プロカルシトニン(1−116、3−116)および/またはC反応性タンパク質(CRP)の群との特に有利な組み合わせに関する。
【0031】
この理由が原因で、本発明は、気道および肺の感染もしくは慢性疾患のインビトロ診断ならびに/または危険性の層化のための方法に関し、ここで上記マーカープロバソプレシン(proAVP)またはそのフラグメントおよび部分ペプチド、特に、コペプチンもしくはニューロフィジンIIの測定は、試験されるべき患者において、各場合において、プロカルシトニン(1−116、3−116)もしくはその部分配列と組み合わせて行われる。繰り返すと、ニューロフィジンII、コペプチンおよびプロカルシトニンの組み合わせは特に好ましく、特に、コペプチンおよびプロカルシトニンの組み合わせが好ましい。これら述べられた生体マーカー組み合わせは、特に有利な様式で相乗効果を実証し、診断に対して改善された特異性および感受性がもたらされる。
【0032】
本発明の範囲内において、「プロカルシトニン」とは、出願人のEP0656121、EP1121600、およびDE10027954A1に記載されるように、1−116アミノ酸もしくは2―16アミノ酸(PCT 2−116)もしくは3−116アミノ酸(PCT 3−116)のアミノ酸配列を有するヒトタンパク質またはポリペプチドであると理解される。さらに、本発明に従うプロカルシトニンは、翻訳後修飾(例えば、グリコシル化、脂質化、または誘導体化)を実証し得る。さらに、プロカルシトニンの部分配列またはフラグメントはまた、含められる。
【0033】
本発明の別の実施形態において、本発明に従う方法は、上記マーカーの並行測定または同時測定(例えば、96穴以上を有するマルチタイタープレート)によって、インビトロ診断の範囲内で行われ得る。ここで上記測定は、少なくとも1名の患者のサンプルに対して行われる。
【0034】
さらに、本発明に従う方法およびその測定は、自動化分析デバイスを用いて、特に、Kryptor(http://www.kryptor.net/)を用いて行われ得る。
【0035】
別の実施形態において、本発明に従う方法およびその測定は、単一のパラメーター測定を使用するかまたは複数のパラメーター測定を使用するかに関わらず、迅速な試験(例えば、側方流試験(lateral flow test))によって行われ得る。特に好ましい実施形態において、これは、救急救命時診断における使用に適した自己試験もしくはデバイスである。
【0036】
さらに、本発明は、気道および肺の感染もしくは慢性疾患の診断ならびに/または危険性の層化のための、ならびに/あるいは気道および肺の感染もしくは慢性疾患の初期診断もしくは鑑別診断のためのインビトロ診断または気道および肺の感染もしくは慢性疾患の予後のための、プロバソプレシン(proAVP)またはそのフラグメントおよび部分ペプチド、特に、コペプチンもしくはニューロフィジンIIの使用に関する。
【0037】
特定の実施形態において、本発明は、気道および肺の感染もしくは慢性疾患の診断ならびに/または危険性の層化のための、各場合における、プロカルシトニン(1−116、3−116)またはその部分配列との組み合わせにおける、プロバソプレシン(proAVP)またはそのフラグメントおよび部分ペプチド、特に、コペプチンもしくはニューロフィジンIIの使用に関する。
【0038】
本発明に従う使用は、必要に応じて、少なくとも1種の他の適切なマーカー(「パネル」もしくは「クラスター」といわれる)とともに行われ得る。
別の課題は、本発明に従う方法を行うための対応する診断デバイスを利用可能にすることである。
【0039】
本発明の範囲内において、このような診断デバイスは、アレイもしくはアッセイ(例えば、免疫アッセイ、ELISAなど)、最も広義において、本発明に従う方法を行うためのデバイスであることが特に理解される。
【0040】
本発明はさらに、気道および肺の感染もしくは慢性疾患の診断ならびに/または危険性の層化のためのキットに関し、これらのキットは、上記プロバソプレシン(proAVP)またはそのフラグメントおよび部分ペプチド、特に、コペプチンもしくはニューロフィジンIIを測定するための検出試薬、およびおそらく上記で言及されるさらなるマーカーを含む。このような検出試薬は、例えば、抗体などを含む。
【0041】
以下の実施例および図面は、本発明のより詳細な例示を果たすが、本発明をこれら実施例および図に限定することはない。
【実施例】
【0042】
実施例1
血液サンプルを、呼吸窮迫の主な症状を有する、病院の救急救命室に来た患者から、初期評価(initial examination)の間に採取した。
試験被験体の数:167
サンプル採取、生体マーカー分析:
血液サンプルを、標準血清モノベット(Monovette)によって採取した。20〜40分間の凝固時環の後、2000gで15分間、遠心分離を行った;その後の血清分離を、デカントすることにより行った。上記血清サンプルを、さらに使用するときまで−20℃で保存した。
【0043】
Morgenthalerら(Morgenthaler NG,Struck J,Alonso C,ら Assay for the measurement of copeptin, a stable peptide derived from the precursor of vasopressin, Clin Chem 2006; 52:112−119)に従うコペプチンアッセイ。
検出限界:1.7pmol/L。
【0044】
急性の悪化(事象)の場合のCOPD:
コペプチン、CRP、およびプロカルシトニンは、14日後または6ヶ月後に有意に増大することを測定することが可能であった。
【0045】
167人の患者(年齢(平均)70歳)のコペプチン値を研究した。上記患者は、現存のCOPDの急性悪化が原因で救急救命室に来た。上記患者を、入室の14日後、および6ヶ月後に、彼らの肺機能に関して臨床的に試験した。表1は、救急救命室に入室した際の上記患者の臨床パラメーターの全体像を示す。
【0046】
【表1−1】

【0047】
【表1−2】

【0048】
多変量分析(p=0.006、コックス回帰分析)において、上記測定されたコペプチン値は、年齢、現存の併存疾患、低酸素血、および制限された肺機能とは無関係に、乏しい臨床経過の予測変数であった。入室時に40pmol/L以上のコペプチン値を有した患者のうちの44%において、成功裏の長期治療を達成することが可能であるに過ぎなかった。これとは対照的に、40pmol/L未満のコペプチン値を有した患者のうちの82%において成功を達成することが可能であった(p<0.0001)。
【0049】
このことから、コペプチンは、COPE(および他の肺疾患)を有する患者の場合において、不利な臨床経過の予後マーカーを表すことが明らかになっている。コペプチンは、初期時点で、彼らの現存する肺疾患に対して特に集中治療を要する患者を同定することができた。
【0050】
表2ならびに図2および図3は、詳細にその状況を説明する。
【0051】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
気道および肺の感染もしくは慢性疾患の診断ならびに/または危険性の層化のための方法であって、ここでプロバソプレシン(proAVP)またはそのフラグメントおよび部分ペプチド、特に、コペプチンもしくはニューロフィジンIIの測定が行われる、方法。
【請求項2】
気道および肺の感染もしくは慢性疾患の増大した危険性および/または不利な予後を有する患者を同定するための、請求項1に記載の気道および肺の感染もしくは慢性疾患の診断ならびに/または危険性の層化のための方法。
【請求項3】
前記患者は、徴候性の患者および/または無徴候性の患者、特に、急患である、請求項1または2に記載の気道および肺の感染もしくは慢性疾患の診断ならびに/または危険性の層化のための方法。
【請求項4】
臨床的決定、特に、薬物療法、特に抗生物質によるさらなる処置および治療、特に、集中医療または救急救命医療において行うための、ならびに前記患者の入院のための、請求項1〜3のいずれか1項に記載の気道および肺の感染もしくは慢性疾患の診断ならびに/または危険性の層化のための方法。
【請求項5】
前記マーカープロバソプレシン(proAVP)またはそのフラグメントおよび部分ペプチド、特に、コペプチンもしくはニューロフィジンIIの測定が、各場合において、試験されるべき患者においてプロカルシトニンおよび/またはC反応性タンパク質(CRP)、またはその部分配列の群と組み合わせて、行われる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の気道および肺の感染もしくは慢性疾患の診断ならびに/または危険性の層化のための方法。
【請求項6】
前記診断は、予防のために、予後のために、早期認識および鑑別診断による認識のために、重篤度の程度の評価のために、ならびに治療の過程にわたる予後の評価のために行われることで特徴づけられる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の気道および肺の感染もしくは慢性疾患の診断ならびに/または危険性の層化のための方法。
【請求項7】
前記マーカープロバソプレシン(proAVP)またはそのフラグメントおよび部分ペプチド、特に、コペプチンもしくはニューロフィジンIIの、前記診断のためのカットオフ(閾値)、6〜20pmol/L、特に、6〜10pmol/L、または前記予後のためのカットオフ(閾値)、10〜50pmol/L、特に、10〜40pmol/Lは、有意(特異的)であることで特徴づけられる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
さらに、炎症マーカーの群から選択される少なくとも1種の他のマーカーの測定が行われることで特徴づけられる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記炎症マーカーは、サイトカイン(例えば、TNF−α、例えば、インターロイキン(例えば、IL−6)、および例えば、接着分子(例えば、VCAMもしくはICAM)のうちの少なくとも1種のマーカーから選択されることで特徴づけられる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記マーカーの並行測定または同時測定が行われることで特徴づけられる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記測定は、少なくとも1つの患者サンプルを使用して行われることで特徴づけられる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記測定は、自動化分析デバイスを用いて、特に、Kryptorによって行われることで特徴づけられる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記測定は、迅速試験によって、特に、単一のパラメーター測定または複数のパラメーター測定を用いて行われることで特徴づけられる、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記危険性の層化は、予後について、初期認識および鑑別診断による認識について、重篤度の程度の評価のために、ならびに急性冠症候群の治療過程にわたる予後の評価のために、行われることで特徴づけられる、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
気道および肺の感染もしくは慢性疾患の診断ならびに/または危険性の層化のための、プロバソプレシン(proAVP)またはそのフラグメントおよび部分ペプチド、特に、コペプチンもしくはニューロフィジンII、およびおそらくさらなるマーカーの使用。
【請求項16】
気道および肺の感染もしくは慢性疾患の診断ならびに/または危険性の層化のための、プロカルシトニンおよび/またはC反応性タンパク質(CRP)、ならびにおそらくさらなるマーカーとの組み合わせにおける、プロバソプレシン(proAVP)またはそのフラグメントおよび部分ペプチド、特に、コペプチンもしくはニューロフィジンIIの使用。
【請求項17】
気道および肺の感染もしくは慢性疾患の診断ならびに/または危険性の層化のためのキットであって、該キットは、プロバソプレシン(proAVP)またはそのフラグメントおよび部分ペプチド、特に、コペプチンもしくはニューロフィジンII、ならびにおそらく請求項8または9のうちの1項に記載の他のマーカー、および補助物質を測定するための検出試薬を含む、キット。
【請求項18】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法を行うための診断デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−83664(P2013−83664A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−176(P2013−176)
【出願日】平成25年1月4日(2013.1.4)
【分割の表示】特願2009−535559(P2009−535559)の分割
【原出願日】平成19年11月11日(2007.11.11)
【出願人】(509091332)ベー.エル.アー.ハー.エム.エス ゲーエムベーハー (12)
【Fターム(参考)】