説明

プロペラハブ

本発明は、タービンエンジン、特に、プロップファンエンジン用の可変ピッチの羽根を備えるプロペラのハブに関する。プロペラのハブが、前記羽根を受け入れるための実質的に半径方向の円柱形の凹所(236)を自身(234)の中心軸を中心にして分布させて備えている多角形リング(234)と、ターボエンジンのタービンロータ部材(243)と、前記リングを前記ロータ部材(243)へと接続するためにリングに取り付けられた固定フランジと、を備えている。ハブは、開口部(241)にすき間を伴って挿入される複数のバックアップフック(244)をさらに備えており、バックアップフック(244)が、リング(234)またはロータ部材(243)のいずれか一方へと接続され、開口部(241)が、前記2者のうちの他方に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オープンロータ型のターボエンジンの可変ピッチの羽根を備えるプロペラハブに関する。
【背景技術】
【0002】
この形式のターボエンジンのファンは、典型的には、一方が上流に位置し、一方が下流に位置する2つの同軸な逆方向に回転する外プロペラを備えており、各々のプロペラが、ターボエンジンのタービンによって回転駆動し、このターボエンジンのナセルの外側へと実質的に半径方向に延びている。
【0003】
各々のプロペラは、多角形リングを含むハブを備えており、多角形リングが、ターボエンジンの長手軸を中心にして分布した実質的に半径方向の円柱形の凹所を有しており、これらの凹所にプロペラの羽根が受け入れられる。さらにハブは、タービンのロータ部材と、多角形リングをロータ部材へと接続する固定フランジとを備えている。
【0004】
羽根は、多角形リングの凹所において回転することが可能であり、羽根の角度ピッチを調整し、ターボエンジンの動作状態に応じて最適化されるような方法で、適切な手段によって羽根の軸を中心にして回転駆動する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
動作の際に、プロペラの羽根は、30000daNにもなりうるきわめて大きな遠心力にさらされ、これらの力が多角形リングへと伝達される。多角形リングが破壊すると、羽根が脱落して、ターボエンジンのあちこちにきわめて重大な構造的損傷を引き起こす可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、特に、この問題に対する簡単、効果的、かつ経済的な解決策を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の主題は、上述の形式のプロペラハブであって、多角形リングの不具合に対する安全性を提供するプロペラハブである。
【0008】
この目的のため、ターボエンジン用の可変ピッチの羽根を備えるプロペラハブであって、前記羽根を受け入れるための実質的に半径方向の円柱形の凹所を自身の中心軸を中心にして分布させて備えている多角形リングと、ターボエンジンのタービンロータ部材と、前記リングをロータ部材へと接続するためにリングに取り付けられた固定フランジと、開口部にすき間を伴って挿入される複数のバックアップフックとを備えており、バックアップフックが、リングまたはロータ部材のいずれか一方へと接続され、開口部が、前記2者のうちの他方に接続されているプロペラハブが提案される。
【0009】
多角形リングおよび/または固定フランジの破壊または半径方向の変形の場合に、前記バックアップフックが半径方向の応力を引き受け、リングの少なくとも保持を保証し、この不具合から生じうる損傷を限定する。
【0010】
有利には、前記バックアップフックが、前記ロータ部材に取り付けることができる半径方向のプレートによって保持される。
【0011】
第1の実施形態においては、半径方向のプレートの各々が、バックアップフックを形成する実質的に円形断面の少なくとも2本のピンを有する。
【0012】
第2の実施形態においては、前記バックアップフックが、前記開口部とちょうど同じように非円形の断面を有する。
【0013】
いずれの場合も、前記バックアップフックを、前記半径方向のプレートに取り付けることができ、または前記プレートと一緒に単一の部品として形成することができる。
【0014】
どちらの場合も、バックアップフックが、多角形リングの半径方向の平面において、多角形リングの扇形領域について、対応する半径方向のプレートに対する平行移動だけでなく、回転も制限する。
【0015】
有利には、前記固定フランジが、リングの片側へと取り付けられ、前記プレートが、リングの軸方向の移動を制限するような方法で、リングの軸方向の反対側に配置される。
【0016】
有利には、前記ハブが、例えばプレートをロータ部材へと接続するリングの中心軸に平行に向いたボルトなど、リングの中心軸に平行な方向に前記フックを取り付けるための軸方向の手段をさらに備える。
【0017】
さらに詳しくは、前記プレートが、前記プレートの支持部との半径方向の平面における確実な係合を可能にする起伏を備える。結果として、この確実な係合が、半径方向の平面におけるプレートの移動を阻止する一方で、プレートが、前記軸方向の取付け手段によってそれぞれの支持部へと保持される。この係合を、例えば、プレートの中央の切欠きに係合する支持部の中央の突起と、プレートの側縁にそれぞれ係合する支持部の2つの側方の突起とによって形成することができる。
【0018】
本発明に関する詳細が、図面を参照して後述される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】オープンプロペラ型のターボエンジンを示している。
【図2】露出型のロータの羽根を保持するための従来技術の多角形リングを斜視図にて示している。
【図3】本発明の第1の実施形態によるプロペラハブの多角形リングの正面図を示している。
【図4】本発明の第2の実施形態によるプロペラハブの多角形リングの正面図を示している。
【図5】ターボエンジンのロータ部材に取り付けられた図3の多角形リングの詳細図を示している。
【図6】ターボエンジンのロータ部材に取り付けられた図4の多角形リングの詳細図を示している。
【図7】ターボエンジンのロータ部材に取り付けられた図3の多角形リングの一部分の長手断面図を示している。
【図8】ターボエンジンのロータ部材に取り付けられた図4の多角形リングの一部分の長手断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
最初に図1を参照すると、オープンロータ型のターボエンジン10が示されており、ターボエンジン10が、上流から下流へと、ターボエンジンの内部のガスの流れの方向に、圧縮機12と、環状の燃焼室14と、高圧タービン16と、逆方向に回転し、すなわちターボエンジンの長手軸Aを中心にして2つの反対の方向に回転する2つの低圧タービン18、20とを備えている。
【0021】
これら下流のタービン18、20の各々は、ターボエンジンのナセル26の外側へと半径方向に延びている外プロペラ22、24と一緒に回転し、このナセル26は、実質的に円筒形であって、圧縮機12、燃焼室14、ならびにタービン16、18、および20の周囲を軸Aに沿って延びている。
【0022】
ターボエンジンを貫く空気の流れ28が、圧縮され、次いで燃料と混合されて燃焼室14において燃やされ、結果として燃焼ガスがタービンへと進入してプロペラ22、24を回転駆動し、ターボエンジンによって生み出される推力の大部分がもたらされる。タービンを出る燃焼ガスは、推力を増すためにホース32を介して放出される(矢印30)。
【0023】
プロペラ22、24は、前後に同軸に配置され、ターボエンジンの軸Aを中心にして一定の間隔で分布した複数の羽根を備えている。これらの羽根は、実質的に半径方向に延びており、可変ピッチ式であり、すなわちターボエンジンの動作状態に応じて自身の角度位置を最適にするような方式で、自身の軸を中心にして回転することが可能である。
【0024】
上述の構造において、各々のプロペラは、軸Aを中心にして延びる多角形リングによって形成されたロータ部材を備えており、そのような多角形リングが、プロペラの羽根を取り付けるための手段を係合させるための複数の実質的に円柱形の半径方向の凹所を備えている。この形式の多角形リング134が、図2に示されている。多角形リング134が、円柱形の壁156を有する実質的に半径方向の円柱形の凹所136と、リングを軽量化するためにリングに形成され、リングの中心軸Cを中心にして一定の間隔で分布した複数の開口158とを備えている。各々の開口158は、2つの隣り合う半径方向の凹所136の間に位置している。
【0025】
この形式の多角形リング134は、ターボエンジンにとって重大な破壊点を構成する。多角形リング134が破壊され、またはリングとタービンとの間の連結が破壊された場合に、プロペラの羽根が脱落して遠心力によって飛ばされ、ターボエンジンのあちこちにきわめて相当な損傷を生じさせる可能性がある。したがって、この危険を取り除く方策を講じなければならない。
【0026】
本発明の第1の実施形態によるプロペラハブの一部を形成する多角形リング234が、図3に示されている。リング134とちょうど同じように、このリング234も、羽根を受け入れるべくリングを巡って半径方向に分布した円柱形の凹所236を備えている。しかしながら、このリング234は、リングを巡って半径方向に分布した半径方向の突起240をさらに備えており、各々の突起240が、リングの中心軸Cに実質的に平行な2つの円柱形の開口部241を有している。これらの半径方向の突起240は、円柱形の凹所236と干渉することがないような方法で、円柱形の凹所236の間に挿入されている。
【0027】
図5を参照すると、本発明のこの第1の実施形態によるプロペラハブは、タービンロータ部材243へと接続されるように設計された半径方向のプレート242を備えており、各々のプレート242が、リング234の半径方向の突起240の2つの開口部241にすき間を伴って受け入れられる円形断面の2本のピン244を保持している。ピンが、バックアップフックを構成している。
【0028】
図7に示されるとおり、リング234は、固定フランジ245によってロータ部材243へと取り付けられる。この固定フランジ245は、ボルト246によってロータ部材243へと取り付けられ、半径方向のプレート242に軸方向において対向する側で、ボルト247によってリング234へと取り付けられる。
【0029】
半径方向のプレート242は、固定フランジ245を取り付ける同じボルト246によって、ロータ部材243へと取り付けられる。これらのボルト246は、実質的にリング234の中心軸Cの方向を向いている。さらに、ロータ部材243は、各々のプレート242について、プレート242の中央の切欠き249に係合する中央の突起248と、プレート242の側縁251にそれぞれ接触する2つの側方の突起250とを有している。結果として、ロータ部材243のこれらの突起が、リング234の中心軸に垂直な半径方向の平面において、プレート242との確実な係合を形成する。
【0030】
通常の動作においては、ピン244がすき間を伴って開口部241に受け入れられるため、応力がプレート242を介して伝えられることがない。リング234からロータ部材243へのすべての応力は、固定フランジ245によって伝えられる。しかしながら、リング234および/または固定フランジ245の破壊または大きな半径方向の変形の場合には、ピン244が開口部241の壁に接触し、リング234の少なくとも一部分の半径方向の保持の応力の少なくとも一部を引き受ける。このようにして、ピン244が、リング236のバックアップフックを形成する。各々のプレート242が2本のピン244を有し、半径方向の平面においてロータ部材243に確実に係合しているため、プレート242は、応力だけでなく半径方向の平面における局所トルクも、前記ロータ部材243へと伝達することができる。このようにして、プレート242が、本発明によるプロペラハブの破壊に対してさらなる安全性を提供する。
【0031】
図4、図6、および図8に示されているさらなる実施形態においては、多角形リング334のバックアップフックが、円形の断面を有するピンの組によって形成されるのではなく、半径方向のプレート342の側面の多角形リング334の中心軸Cの方向の突起344によって形成されている。側面の突起344は、プレート342とともに単一の部品を形成している。断面が矩形であるこれらの側面の突起344が、リング334の半径方向の突起340の細長い断面の開口部341にすき間を伴って受け入れられる。
【0032】
図6に示されるように、第1の実施形態と同様の方式で、リング334は、固定フランジ345によってロータ部材343へと接続される。この固定フランジ345は、ボルト346によってロータ部材343へと取り付けられ、半径方向のプレート342に軸方向において対向する側で、ボルト347によってリング334へと取り付けられる。
【0033】
半径方向のプレート342は、固定フランジ345を取り付ける同じボルト346によって、ロータ部材343へと取り付けられ、ボルト346は、実質的にリング334の中心軸Cの方向を向いている。さらに、ロータ部材343は、各々のプレート342について、プレート342の中央の切欠き349に係合する中央の突起348と、プレート342の側縁351にそれぞれ接触する2つの側方の突起350とを有している。結果として、ロータ部材343のこれらの突起が、リング334の中心軸に垂直な半径方向の平面において、プレート342との確実な係合を形成する。
【0034】
本発明の第1の実施形態と同様、リング334および/またはフランジ345の破壊または大きな半径方向の変形の場合に、プレート342がリング334の保持を保証する。この実施形態においては、半径方向の平面における局所トルクが、非円形断面の突起344および開口部341によって、リング334からプレート342へと伝えられる。
【0035】
本発明を、特定の例示の実施形態を参照して説明したが、特許請求の範囲に定められる本発明の全体的な範囲から離れることなく、これらの例に対して種々の改良および変更を行うことができることが明らかである。例えば、多角形リングの2つの隣り合う半径方向の凹所の間に、2つ以上の半径方向のプレートを配置してもよい。それらの半径方向のプレートを、多角形リングの固定フランジへの取付け部と同じ側に配置し、それらの取付け部とプレートとを交互に配置することができる。バックアップ手段を、ロータ部材にではなく、リングに組み合わせることもでき、その場合には、バックアップ手段を受け入れる開口部を、リングにではなく、ロータ部材に組み合わせることができる。したがって、本明細書および図面は、本発明を限定するものとしてよりもむしろ、本発明を例示するものとして考えられなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボエンジン用の可変ピッチの羽根を備えるプロペラハブにして、
前記羽根を受け入れるための実質的に半径方向の円柱形の凹所(236、336)を、自身234の中心軸(C)を中心にして分布させて備えている多角形リング(234、334)と、
ターボエンジンのタービンロータ部材(243、343)と、
前記リングを前記ロータ部材(243、343)へと接続するためにリングに取り付けられた固定フランジ(245、345)とを備えているハブであって、
開口部(241、341)にすき間を伴って挿入される複数のバックアップフック(244、344)をさらに備えており、バックアップフック(244、344)が、リング(234、334)またはロータ部材(243、343)のいずれか一方へと接続され、開口部(241、341)が、前記2者のうちの他方に接続されていることを特徴とする、ハブ。
【請求項2】
前記バックアップフック(244、344)が、前記ロータ部材(243、343)に取り付けられた半径方向のプレート(242、342)によって保持されている、請求項1に記載のハブ。
【請求項3】
半径方向のプレート(242)の各々が、バックアップフックを形成する実質的に円形の断面を有している少なくとも2つのピン(244)を有している、請求項2に記載のハブ。
【請求項4】
前記バックアップフック(344)が、前記開口部(341)とちょうど同じように非円形の断面を有している、請求項2に記載のハブ。
【請求項5】
前記固定フランジ(245、345)が、リング(234、334)の片側へと取り付けられ、前記プレート(242、342)が、前記リング(234、334)の軸方向の反対側に配置される、請求項2に記載のハブ。
【請求項6】
リングの前記中心軸(C)に平行な方向に前記プレート(242、342)を取り付けるための手段(246、346)をさらに備えている、請求項2に記載のハブ。
【請求項7】
前記プレート(242、342)が、前記プレート(242、342)の支持部との半径方向の平面における確実な係合を可能にする起伏を備えている、請求項6に記載のハブ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のハブと、円柱形の凹所(236、336)に受け入れられた羽根とを備える、プロペラ(22、24)。
【請求項9】
請求項8に記載のプロペラ(22、24)を少なくとも1つ備えるターボエンジン(10)。
【請求項10】
逆方向に回転する2つのプロペラ(22、24)を備えている、請求項9に記載のターボエンジン(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−531357(P2012−531357A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518095(P2012−518095)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059467
【国際公開番号】WO2011/000943
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(505277691)スネクマ (567)