説明

プローブ保持装置

【課題】プローブを複雑な機構を用いることなく生体に対して当接し、その当接状態を維持できるようにする。
【解決手段】プローブ保持装置12は固定機構21と保持部24とを有する。保持部24はプローブ14を保持する。保持部24はプローブ14を首振り運動させる姿勢可変機構を有している。固定機構21はベースプレート20とその両端間にわたって設けられた複数のバンド部材22とを有している。生体10に対して複数のバンド部材22を締め付け固定すれば、生体表面上にベースプレート20を位置決めすることができ、これにより保持部24つまりプローブ14を生体に対して安定的に位置決め保持することができる。他の実施形態においては骨折時に用いられる当て木のようなベースブロックが生体表面上に位置決め固定される。そのベースブロックにはプローブ保持部が取付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプローブ保持装置に関し、特に生体に対して位置決めされたプローブの姿勢を維持する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
骨折後の癒合診断など骨の力学的特性や健全性を評価するために超音波診断が利用される(特許文献1など)。具体的には、骨に対して外力を作用させつつ、プローブ(超音波探触子)を生体表面に当接して骨に対して超音波の送受波を行うことにより、骨の変位などが計測され、その計測結果から骨の健全性が評価される。その際、プローブを手で把持すると、当接姿勢を確実に維持することができない。そこで、プローブを保持する装置が利用される。特許文献1の図6に記載されたプローブ保持装置では、生体の外部に設置された支柱にプローブが取り付けられる。本願出願時点で未公開の特願2003−384830号には創外固定器にプローブを取り付けることが記載されている。
【0003】
特許文献2及び特許文献3には、体表面上にプローブを固定する装置が記載されている。かかる装置は、プローブ保持部から放射状に伸長する複数のプレートを有し、各プレートを体表面上に接着することによって、プローブの姿勢が保持されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−298205号公報
【特許文献2】実公昭58−6405号公報
【特許文献3】特許第2664562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
腕や足などにプローブを当接して超音波診断を行う場合、特に、骨の微小変位などを計測する場合、生体上においてプローブが確実に且つ安定して位置決めされることが望まれる。特許文献1などに記載された特別な機構を備えた装置を利用する場合、生体それ自体を拘束する必要があり、また機構の規模が大きくなる。特許文献2及び特許文献3に記載された構成を用いる場合、接着の仕方によってはプローブを確実に固定することが困難になる。例えば、粘着テープを利用する場合には取扱が煩雑になったり、生体に違和感を生じさせたりする場合がある。
【0006】
本発明は、腕や足などの部位に対してプローブを簡便に固定でき、しかも安定してプローブの保持を行える装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は、生体表面へ送受波面を向けさせつつプローブを保持する保持部と、前記保持部を生体に固定するための固定機構と、を含み、前記固定機構は、前記保持部を搭載し、生体表面上に位置決めされるベース部と、生体を取り囲んで前記ベース部を前記生体表面上に位置決めする締め付け具と、を有することを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、保持部によってプローブが保持され、その保持部が固定機構によって生体に対して固定される。固定機構はベース部と締め付け具とを有し、締め付け具によってベース部が生体表面上に位置決めされる。締め付け具は生体の周囲を取り囲むものであり、従来のように特定部位に接着応力が集中することはなく、生体全体を包み込んで生体とベース部とを一体化することが可能となる。よって、プローブを確実かつ安定して保持できる。その場合において、生体自体を拘束する必要性がない。
【0009】
保持部がプローブの姿勢を可変する姿勢調整機構を備えていてもよいし、保持部にそのような機構を設けなくてもよい。前者によればプローブの姿勢を微調整できるので、プローブの位置決めが容易となる。後者によれば、装置の機構を簡易化でき、これによって装置の重量を軽減できる。例えば、足や腕など円筒形に近い部位において、その中心軸方向に走行している骨を超音波診断する場合、プローブにおけるアレイ振動子のアレイ方向を骨の軸方向に合わせ、その状態にプローブを保持すれば、姿勢調整機構を格別設けなくても超音波診断を行える。保持部は、例えば、プローブの胴体部分を保持するものであってもよいし、プローブの先端部(送受波部)を保持するものであってもよい。プローブの送受波面と生体表面との間における音響的整合のために、プローブの送受波面には、水袋、バルーンなどのカップリング部材を設けるのが望ましい。プローブには、例えば、直線状又は円弧状に配列された1Dアレイ振動子が設けられるが、それに代えて2Dアレイ振動子などを設けることもできる。
【0010】
締め付け具は、紐状の部材その他によって構成され、いずれにしても生体の周囲を取り囲む長さを有し且つある程度の柔軟性をもった部材で構成されるのが望ましい。締め付け具は、伸縮性の部材で構成することもできるし、非伸縮性の部材で構成することもできる。少なくとも後者の場合には、その長さを生体周囲長に合わせるための調整器や面状ファスナなどを設けるのが望ましい。
【0011】
本発明の望ましい態様では、プローブを保持したプローブ保持装置それ自身が生体に支持される。仮に生体が運動した場合にはそれに伴ってプローブ保持装置が運動し、同時にプローブが運動する。その際、プローブと生体との相対的な位置関係を維持できる。これにより、必要ならば、生体運動状態(例えば足踏み状態)で超音波診断を行うことも可能となる。
【0012】
望ましくは、前記締め付け具は、前記生体の長手方向に並んだ柔軟性をもった複数のバンド部材を有する。そのような複数のバンド部材によれば、生体の各位置におけ形状つまり周囲長に合わせて、各バンド部材の実効長を個別的に調整し、生体への確実な取付けが可能となる。
【0013】
望ましくは、前記ベース部は、前記プローブの先端部を生体表面側へ突出させる開口が形成された面状部材を有する。望ましくは、前記面状部材は、前記生体表面に沿って広がる弾性変形可能な部材である。例えば、面状部材として、柔軟性をもった布地を利用することもできるし、弾性変形する硬質性の樹脂プレートを利用することもできる。ここで、生体表面と面状部材の裏面は、望ましくは、全面的に又は部分的に接触する関係にある。但し、面状部材が硬質プレートとして構成される場合において、それが生体表面上から浮いた状態となるように構成することもできる。いずれにしても、生体表面上に面状部材が位置決め固定されるように、当該面状部材が取り付けられる。面状部材が弾性作用を有していれば、例えば、湾曲状態からの復元力を利用して、面状部材の両端間にわたって取り付けられた締め付け部材に良好なテンションを与えることができ、また、プローブに対して生体表面方向へ良好な当接力を及ぼすことができる。
【0014】
望ましくは、前記ベース部は、前記生体中の骨の伸長方向に沿って伸長したブロックを有する。このブロックは、望ましくは、骨折時に生体表面にあてがわれる当て木のように機能し、骨あるいは体表面に沿って設けられる。ブロックの伸長方向における複数の位置において複数の紐状部材(及び面状部材)により生体を取り囲めば、あたかも包帯などを用いて当て木を生体へ沿わせて固定した場合と同じような状態を形成できる。よって、ブロックに搭載されている保持部そしてプローブを生体と構造的に一体化できる。
【0015】
望ましくは、前記保持部は、前記プローブの当接姿勢を可変する姿勢可変機構を有する。この構成によればプローブのセット後にその姿勢を調整できるという利点がある。望ましくは、前記姿勢可変機構は、前記プローブを保持する回転体と、前記回転体を回転可能に保持する枠体と、を有する。いわゆるボールジョイント機構を用いれば様々な方向にプローブを傾けることができ、更に、プローブ中心軸を回転軸としてプローブを回転させることもできる。必要に応じて、骨の縦断面の他に横断面を取得できるように、プローブを回転させてもよい。回転体の姿勢調整後にその回転体の動きを規制するロック機構を設けるのが望ましい。
【0016】
(2)また本発明は、生体中の骨の超音波診断で用いられ、超音波を送受波するアレイ振動子を備えるプローブを保持するプローブ保持装置において、前記アレイ振動子のアレイ方向を前記骨の軸方向に合わせつつ生体表面に当接されたプローブを保持し、その姿勢を維持可能な保持部と、前記保持部を生体に固定するための固定機構と、を含み、前記固定機構は、前記保持部を搭載し、前記生体表面上に位置決めされる部材であって、前記プローブの先端部を突出させる開口を有する面状部材と、前記骨の軸方向に並んで設けられたフレキシブルな複数のバンド部材で構成され、生体表面上に前記プローブを固定するための締め付け具と、前記各バンド部材の長さを個別的に調整するための長さ調整手段と、を有することを特徴とする。
【0017】
望ましくは、前記長さ調整手段は、前記面状部材と前記各バンド部材の端部とを着脱自在に結合させる面状ファスナを有する。面状ファスナを用いれば着脱を簡便に行える。しかも、両面が結合した貼り合わせ状態では、面方向への水平外力に対して非常に強い抗力を発揮させることができるので、締め付け状態を良好に維持できる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、腕や足などの部位に対してプローブを簡便に固定でき、しかも安定してプローブの保持を行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1には、本発明に係るプローブ保持装置の好適な実施形態が示されており、図1はその斜視図である。このプローブ保持装置12は超音波を送受波するプローブ14を保持する装置であり、生体10内の骨を超音波診断する際に用いられる。もちろん、骨以外の組織の超音波診断を行う場合にプローブ保持装置12を用いてもよい。
【0021】
図1において、プローブ保持装置12は、プローブ14を保持する保持部24と、生体10に対して保持部24を固定するための固定機構21と、を有する。生体10は例えば足や腕等である。後に図7を用いて説明するように、腹部あるいは胸部などにプローブ保持装置12を適用することもできる。
【0022】
プローブ14は、本体16と、その先端側に設けられたプローブヘッド17と、本体16の後端側に設けられたケーブル取付部18と、を有する。プローブヘッド17内には、図1に示される例において、複数の振動素子からなるアレイ振動子が設けられている。そのアレイ振動子はいわゆる1Dアレイ振動子である。複数の振動素子はこの例では直線状に配列されている。1Dアレイ振動子に代えて2Dアレイ振動子を設けることもできる。アレイ振動子によって超音波ビームが形成され、その超音波ビームは電子的に走査される。超音波ビームの電子的走査により走査面が形成される。本実施形態において、その走査面は生体10内の骨の中心軸に一致するように位置決めされ、すなわち、そのような条件が満たされるように超音波診断前にプローブ14の位置決めが行われる。この例では、走査面は二次元断層画像を形成する場合に形成され、骨の変位計測時には複数の計測位置に対して複数のビームが形成される。電子走査方式としては、電子リニア走査、電子セクタ走査などが知られている。なお、図1において、Z方向はプローブ14の当接方向であり、そのZ方向に直交するY方向は骨の軸方向であり、X方向はZ方向及びY方向に直交する方向である。
【0023】
固定機構21は、図1に示す例において、ベースプレート20と複数のバンド部材22とを有する。ベースプレート20は、例えば硬質のプラスチック部材などによって構成される。図1に示す例では、ベースプレート20がその原形状態でX方向及びY方向に沿って緩やかに湾曲している。複数のバンド部材22の締め付けにより、ベースプレート20を弾性変形させることができる。これについては後に図4を用いて説明する。
【0024】
ベースプレート20の中央部にはY方向に伸長した長穴としての開口20Aが形成されている。その開口20Aはプローブ14におけるプローブヘッド17を生体側に突出(あるいは露出)させるためのものである。ベースプレート20のX方向における両端部には複数のバンド部材22における両端部が連結されている。各バンド部材22は生体10を取り囲んでベースプレート20を生体表面上に押しつけ固定するためのものであり、バンド部材22は、例えば、布地、ゴム部材、合成繊維などによって構成される。各バンド部材22が伸縮性の部材によって構成されてもよいし、非伸縮性の部材によって構成されてもよい。いずれにしても、各バンド部材22の実効長すなわち実際に生体を取り囲む長さを可変できるように構成するのが望ましい。各バンド部材22をゴム部材によって構成すれば、その弾力伸縮性をもって生体10の周囲長にバンド部材22の長さを自然に適合させることができる。あるいは、各バンド部材22が非伸縮性の部材で構成される場合には長さ調整機構を設けるのが望ましい。長さ調整機構は例えばバンド部材22の長さを短くしたりあるいは長くしたりする器具であってもよいし、各バンド部材22の一方端の取付け位置を自在に可変できる機構であってもよい。
【0025】
いずれにしても、各バンド部材22はフレキシブルな部材によって構成され、各バンド部材22により生体10の周囲が全体的に包み込まれ、かつ締め付けられる。図1に示されるように、生体10の伸長方向に沿って複数のバンド部材22を設ければ、それぞれの長さを個別的に調整することにより、生体10の各位置における太さあるいは周囲長に応じて確実に固定を行える。したがって、バンド部材22の個数は図1に示されるものには限られない。もちろん、バンド部材22を幅広の単一部材として構成することも可能である。
【0026】
保持部24は、プローブ14における本体16を保持する回転体26と、その回転体26を回転自在に収容する枠体29と、その枠体29をベースプレート20上に位置決め固定する複数の支柱23と、を有している。枠体29は、図1に示される例において、2つの部材によって構成され、すなわち、第1環状体28と第2環状体30とで構成されている。後に説明するように、枠体29の内面は球状面を構成しており、一方、回転体26の外面は球状面を構成しており、それらの面接合関係によって、回転体26の回転運動が許容されている。レバー32は、第1環状体28と第2環状体30との間を締め付ける操作部材であり、レバー32の操作によって、枠体29内部の回転体26の運動をロックすることができる。
【0027】
なお、保持部24をベースプレート20上に確実に取り付けることができる限りにおいて、複数の支柱23以外の部材を用いることができる。また、ベースプレート20を透明部材によって構成すれば、プローブヘッド17の当接状態を外部から視認することが可能となる。
【0028】
図2には、図1に示したプローブ保持装置12についての別の角度から見た斜視図が示されている。なお、図1においては、レバー32がY方向の下方に示されているが、図2においてはレバー32がY方向の上方に描かれている。このことは後述する図3についても同様である。
【0029】
上述したように、ベースプレート20は硬質の面状部材として構成され、それが有する開口20Aを介して、プローブヘッド17が生体側へ突出している。プローブヘッド17における先端面は送受波面であり、その送受波面を介して図示されていないアレイ振動子によって超音波が送受波される。プローブヘッド17には図示されていないカップリング部材が設けられる。そのようなカップリング部材は例えば水袋あるいはバルーンなどである。送受波面17Aと生体表面との間に生体と等価な音響インピーダンスをもった部材を介在させることにより空気層を排除して良好な音響伝播を確保することが可能となる。
【0030】
保持部24はプローブ14の姿勢を調整する機能を備えており、そのような機能によって、プローブ14を例えばθ方向に駆動(運動)させることができ、またφ方向に駆動(運動)させることができる。すなわち、図1に示した回転体26の中心点を揺動原点として、プローブ14を自在に首振り運動させることができる。なお、開口20Aの形状を円形とすることにより、プローブ14の中心軸回りにおいて、プローブ14を回転させることが可能となる。そのような構成によれば、骨の縦断面の他に骨の横断面を容易に取得できるという利点がある。なお、プローブ14内に2Dアレイ振動子を設ければ、プローブ回転を行うことなく、電子的なビームステアリングによって任意の方向にビーム及び走査面を形成することができる。プローブヘッド17Aの突出量は任意に設定することができるが、少なくともプローブ14の送受波面が生体表面に対して直接的又は間接的に良好に当接される必要がある。
【0031】
図3には、プローブ保持装置12の分解斜視図が示されている。保持部24は、上述したように第1環状体28と、第2環状体30とを有している。その内部には回転体26が収納配置される。回転体26はX方向に二分割された分割体36,38を有する。2つの分割体36,38の間にプローブ14の本体16が挟み込まれるが、その本体16と各分割体36,38との間には、ゴム状のスペーサ44,46及び座金40,42が介在配置される。なお、図3においてボルトやナットなどの部材については図示省略されている。
【0032】
上述したように、各分割体36,38の外周面(側面)36A,38Aは球状面を構成している。これに対応して、第1環状体28及び第2環状体30の内周面28A,30Aも球状面を構成している。すなわち、ボールジョイント構造が採用されている。レバー32に設けられた軸32Aは、第1環状体28を貫通し、第2環状体30に連結される。そして、レバー32の回動操作によって、第1環状体28と第2環状体30との間の距離を可変でき、これによって、それらに挟まれる回転体26の回転が許容され、あるいは禁止される。なお、図3においては、Z方向において、プローブ16の前方に第2環状体30が描かれているが、実際には、符号48で示されるように、プローブ14の後方から第2環状体30がプローブ14へ差し込まれることになる。
【0033】
図4には、プローブ保持装置12の使用状態が示されている。プローブ14の送受波面が生体10の表面上に当接され、固定機構によりプローブ保持装置12が生体10に対して確実に固定される。その後、姿勢可変機構によってプローブ14の向きが調整される。その固定時には、複数のバンド部材22の長さが可変される。その可変は、各バンド部材22の伸縮作用により発揮され、あるいは、長さ調整機構の機能によってなされる。複数のバンド部材22の締め付けを行うと、ベースプレート20の両端が生体側へ引き込まれ、その湾曲度合いが増大する。そのような状態では、ベースプレート20は原形方向への復帰力を発揮し、各バンド部材22に対して適度のテンションが加えられる。これによって、プローブ14を適切な当接力をもって生体10の表面上に当接することができ、またプローブ14の姿勢を安定的に保持することが可能となる。ベースプレート20における両端部分は生体10の表面上に接触してもよいし、それらが浮いた状態となってもよい。幅広のベースプレート20を用いることにより、生体10の表面上を相当範囲にわたって覆って、ベースプレート20の裏面を部分的にあるいはほぼ全面的に生体10の表面上に密着させるようにしてもよい。
【0034】
プローブ14の位置決めが完了した後、超音波診断が実行される。すなわち、プローブ14によって超音波の送受波が行われ、すなわち複数の超音波ビームが形成される。それが符号50で示されている。各超音波ビーム50は生体10の内部に存在する骨10Aの中心軸上を貫通する。これによって、骨10の長手方向に沿った複数の箇所において骨表面の変位を計測することができる。必要に応じて骨10Aに対して外部から力が加えられる。例えば周期的に外力が骨10Aに対して加わり、そのような外力の大きさとの関係において骨10Aの撓み量などが計測される。超音波診断によって得られた情報に基づいて骨の健全性や力学的特性などが診断される。もちろん、上述したように、本実施形態に係るプローブ保持装置12を骨以外の他の組織の診断に用いるようにしてもよい。
【0035】
図1乃至図4に示したプローブ保持装置12によれば、生体10によってプローブ保持装置12自体を支持させることができるので、プローブ保持装置12を生体との関係において位置決めするための大掛かりな機構は不要となる。また、上記構成によれば、生体と共にプローブ保持装置12すなわちプローブ14を運動させることもできるので、例えば足に対してプローブを固定した状態で足踏みをさせて、その際に継続的に超音波診断を実行させることも容易である。特に、本実施形態によれば、生体の周囲全体を締め付け部材によって包み込んで締め付けるため、プローブを確実かつ安定して保持できるという利点がある。すなわち、従来のように局所的な接着方式を用いると、剥がれやすくなったり、生体に違和感を与えたりするような問題が生じるが、本実施形態に係る構成によれば生体に違和感や苦痛を与えることなくプローブの取付けを行えるという利点がある。何らかの理由から生体を拘束するようにしてもよいが、生体を拘束しなくても、適切な位置関係をもって生体へプローブを固定でき、その状態を保持できる。
【0036】
次に、図5、図6及び図7を用いて、他の実施形態に係るプローブ保持装置について説明する。
【0037】
図5及び図6には、プローブ保持装置の第2実施形態が示されている。図5は、その斜視図を示しており、図6は、その分解斜視図を示している。なお、図5及び図6においてもボルトやナットなどの部材については図示省略されている。
【0038】
プローブ保持装置100は、プローブ108を保持する保持部106と、その保持部106を生体に取り付けるための固定機構102と、を有する。プローブ108は、図1乃至図4に示したプローブと同様のものが用いられる。固定機構102は、ベース部103と複数のバンド部材110とを有している。ベース部103は、ベースカバー104と、それに固定されるベースブロック120と、を有している。ベースカバー104は、この実施形態において、布などの部材によって構成され、すなわち柔軟で形状を容易に可変できる部材によって構成されている。一方、ベースブロック120は、例えばプラスチックなどの硬質材料で構成される。ベースブロック120は生体の長手方向すなわち骨の軸方向に伸張した立方体形状を有している。ベースブロック120はX方向に一定幅を有し、固定機構102による取付状態において、生体表面に対してベースブロック120が一体化される。
【0039】
ベースカバー104は、この例では、例えば生体の周囲の内で半周程度を覆う面状部材であり、その左右端部にわたって、複数のバンド部材110が取付けられる。バンド部材110は例えば布などの柔軟な部材によって構成される。各バンド部材110の一方端部110Bはベースカバー104の一方端部に固定されている。各バンド部材110の他方端部110Aは、ベースカバー104の他方端部に対して着脱自在に接合される。
【0040】
具体的に説明すると、図5及び図6に示す実施形態においては、複数のバンド部材110を所望の有効長をもってベースカバー104に取り付けるために、面状ファスナ112が用いられている。面状ファスナ112は、一方面部材112Aと、他方面部材112Bと、で構成される。それらは、例えば、多数の微小ループが植設された部材と、複数の微小フックが植設された部材と、によって構成される。ここでは、ベースカバー104上に多数の微小ループが植設された面状部材112Bが広範囲にわたって貼付されており、一方、各バンド部材110の他方端部110Aには多数の微小フックが植設された面状部材112Aが設けられている。
【0041】
面状部材112Aは面状部材112Bに対して着脱自在であり、両者が互いに係合した状態においては水平方向の力に対してかなり強い結合力を発揮する。生体の長手方向に沿って複数のバンド部材110が設けられており、生体の各部位における形状(周囲長)に応じて各バンド部材110の取付け長さを容易に調整できる。長さ調整は、各バンド部材110の他方端部110Aの取付位置を変えるだけでよいので簡便である。
【0042】
図6を用いて保持部106について詳述する。保持部106は、ベースブロック120上に固定されるホルダ枠122を有している。ホルダ枠122は、断面がコ字状の枠本体134と、それに対して着脱自在に結合されるプレート136と、で構成される。枠本体134にはY方向に伸張したフレーム132が設けられている。そのフレーム132は上述したブロック120に結合されるものである。枠本体134とプレート136とで囲まれる空間にプローブ108の本体128が挟み込まれて保持される。ベースブロック120は、本体126とつば部124とで構成され、つば部124がベースカバー104上に固定される。
【0043】
したがって、図5及び図6に示した実施形態によれば、簡易な構成によってプローブ108を保持してそれを確実に生体へ当接させることが可能となる。すなわち、固定機構102において、ベースブロック120は、骨折時に用いられる当て木のように機能し、また、ベースカバー104及び複数のバンド部材110は、その当て木を固定する包帯あるいはギブスのような作用を発揮し、これにより、ベースブロック120を生体と物理的に一体化させることが可能となる。例えば、プローブ108を保持させた状態において、複数のバンド部材110を用いてプローブ保持装置100を生体に仮どめし、すなわち緩く固定し、断層画像を見ながらプローブ108を適切に位置決めし、その状態で複数のバンド部材110を用いて強く生体を締め付け固定すれば、プローブ108を適切に位置決めすることが可能である。図5及び図6に示した実施形態においては、ベースカバー104が柔軟な部材によって構成されているため、生体が様々な形状を有していても、それに合わせて包み込みを行うことができ、しかもベースブロック120は硬質の部材として構成されているため、ベースカバー104が確実に装着された状態においては、ベースブロック120を生体に安定的に固定することができる。この実施形態においても、プローブ保持装置100は生体によって支持されることになるため、例えば生体を運動させた状態において超音波診断を実行させることも容易である。
【0044】
図7には、第3実施形態に係るプローブ保持装置200が示されている。このプローブ保持装置200は例えば生体における胴部あるいは胸部などに取付けられるように固定機構208が大型化されている。但し、その基本的な構造は図5及び図6に示した実施形態と同じである。また、保持部204は図1乃至図4に示した実施形態における保持部と同一の構造を有している。具体的に説明すると、固定機構208は、ベースカバー206と生体の伸長方向に並んだ複数のバンド部材210とを有している。各バンド部材210の両端部210A,210Bはそれぞれベースカバー206の両端部に連結される。この場合に、各バンド部材210の有効な長さについてはその伸縮作用によりあるいは長さ調整機構により変更される。ベースカバー206はある程度の柔軟性をもったプラスチック部材などによって構成されてもよい。すなわち、保持部204を確実に支持でき、しかも生体の形状に沿って自在に変形するような部材で構成するのが望ましい。
【0045】
図7に示す実施形態によれば、腕や足以外のより太い部位に対してプローブ保持装置200を適用することが可能である。また、保持部204がプローブ202の姿勢可変機構を有しているため、プローブ202を生体に当接した後においてもその姿勢を自在に変更し、姿勢調整後にその状態をロックすることができる。また、上述した各実施形態と同様に、生体の全体が包み込まれて保持部204の固定が行われるため、生体に対して局所的な応力が働いて様々な問題が生じてしまうことを未然に防止できる。特に、生体の奥側から保持部204を生体側へ引き込むことができるので、上述した各実施形態と同様に、プローブ202の当接状態を極めて安定化することができる。
【0046】
なお、各実施形態において、保持部とプローブとの間にスプリングなどの部材を介在してそのスプリングによって一定の当接力を発揮させるようにしてもよい。単一のプローブ保持装置が複数種類のプローブを保持できるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係るプローブ保持装置の第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示すプローブ保持装置を他の角度から見た斜視図である。
【図3】図1に示すプローブ保持装置の分解斜視図である。
【図4】図1に示すプローブ保持装置の作用を説明するための図である。
【図5】本発明に係るプローブ保持装置の第2実施形態を示す斜視図である。
【図6】図5に示すプローブ保持装置の分解斜視図である。
【図7】本発明に係るプローブ保持装置の第3実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
10 生体、12 プローブ保持装置、14 プローブ、20 ベースプレート、21 固定機構、22 バンド部材、24 保持部、26 回転体、29 枠体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体表面へ送受波面を向けさせつつプローブを保持する保持部と、
前記保持部を生体に固定するための固定機構と、
を含み、
前記固定機構は、
前記保持部を搭載し、生体表面上に位置決めされるベース部と、
生体を取り囲んで前記ベース部を生体表面上に位置決めする締め付け具と、
を有することを特徴とするプローブ保持装置。
【請求項2】
請求項1記載のプローブ保持装置において、
前記締め付け具は、前記生体の長手方向に並んだ柔軟性をもった複数のバンド部材を有することを特徴とするプローブ保持装置。
【請求項3】
請求項1記載のプローブ保持装置において、
前記ベース部は、前記プローブの先端部を生体表面側へ突出させる開口が形成された面状部材を有することを特徴とするプローブ保持装置。
【請求項4】
請求項3記載のプローブ保持装置において、
前記面状部材は、前記生体表面に沿って広がる弾性変形可能な部材であることを特徴とするプローブ保持装置。
【請求項5】
請求項1記載のプローブ保持装置において、
前記ベース部は、前記生体中の骨の伸長方向に沿って伸長したブロックを有することを特徴とするプローブ保持装置。
【請求項6】
請求項1記載の装置において、
前記保持部は、前記プローブの当接姿勢を可変する姿勢可変機構を有することを特徴とするプローブ保持装置。
【請求項7】
請求項6記載の装置において、
前記姿勢可変機構は、
前記プローブを保持する回転体と、
前記回転体を回転可能に保持する枠体と、
を有することを特徴とするプローブ保持装置。
【請求項8】
生体中の骨の超音波診断で用いられ、超音波を送受波するアレイ振動子を備えるプローブを保持するプローブ保持装置において、
前記アレイ振動子のアレイ方向を前記骨の軸方向に合わせつつ生体表面に当接されたプローブを保持し、その姿勢を維持可能な保持部と、
前記保持部を生体に固定するための固定機構と、
を含み、
前記固定機構は、
前記保持部を搭載し、生体表面上に位置決めされる部材であって、前記プローブの先端部を突出させる開口を有する面状部材と、
前記骨の軸方向に並んで設けられたフレキシブルな複数のバンド部材で構成され、生体表面上に前記プローブを固定するための締め付け具と、
前記各バンド部材の実効長さを個別的に調整するための長さ調整手段と、
を有することを特徴とするプローブ保持装置。
【請求項9】
請求項8記載の装置において、
前記長さ調整手段は、前記面状部材と前記各バンド部材の端部とを着脱自在に結合させる面状ファスナを有することを特徴とするプローブ保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−204475(P2006−204475A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−19344(P2005−19344)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】