説明

プールの配管口構造

【課題】 水泳用のプール、遊泳用の流水プールなどのプールの配管口へ、人や物が吸込まれたり引寄せられたりすることを防止し、さらに強く吸引されるのを緩和して一層の安全性を向上させたプールの配管口構造を提供する。
【解決手段】 水泳用のプール、遊泳用の流水プールなどのプールの吐出口、吸水口、循環水口、排水口などの配管口14の前方に、格子構造の安全浮蓋体9を側面周囲に通水のための所定面積を確保するように、間隔Lをおいて浮かせた状態で着脱自在に取付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水泳用のプール、遊泳用の流水プールなどのプールの配管口構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な水泳用のプールについて流水プールを事例にして、その概略を図6に基づいて説明する。
流水プール1には、例えば、断面U字形の開渠状に鋼材、合成樹脂材、コンクリート構造体、或いはこれらの複合構造体で形成した水路を、円形状、楕円形状、円弧と直線を組合せた各種平面形状等に配設して、プール水が循環回流する流水路2が形成されている。
図6に示す流水プール1は、平面円弧と直線を組合せた形状で、断面U字形の開渠状に形成した水路を配設して循環する流水路2を形成したもので、流水路2の内側中央部には、日光浴や休憩等が可能な中の島3を設けたり、子供用の遊泳プール4等が設けられており、この中の島3へは、流水路2の周囲に設けられたデッキ5から遊戯者が水路を越えて渡るブリッジ6が架設されている。また、周囲のデッキ5と内側の中の島3から遊戯者が流水路2内へ出入りするために、スロープや階段の出入口(図示省略)が流水路2の適所に設けられている。
【0003】
流水プール1の所定箇所の側壁面や底壁面には種々の配管口が開口されている。流水路2内の下流方向に向けて吐出口7が設けられており、この吐出口7から水を勢い良く噴出してプール水の流れを加速するように形成されている。プール水は吸水口8から引き抜かれ、起流装置(図示省略)を経て吐出口7から噴出され、プール水に強制流を起こし流水路2内を循環回流する。また、流水路2や遊泳プール4には複数の循環吐出口、底部の排水口、水面近傍の溢流溝と溢流口等(図示省略)が、プール水の循環浄化のために設けられている。
【0004】
上記プールの配管口のうち、吸水口8を事例とし図7に示して説明する。
流水路2の側壁10には吸水口8があり、デッキ5の下部に配管13が敷設され、開口部14から循環水を吸入している。吸水口8の前方は側壁10が矩形にくり抜かれ拡大され、矩形の枠体11に金網、格子枠、パンチングメタルなどを有する柵、つまりフェンス12が設けられている。
【0005】
さらに図8に示すように、吐出口や吸水口などの配管13の開口部14には、細長い帯板や断面円形の棒や中空の管などからなる格子状のフレーム15が、溶接などによって直接取付けられている場合がある。
【0006】
開渠状の流水路を複数設け、連絡水路で連絡し、切替自在の遮蔽体を形成した従来技術の発明には、本出願人による特開平9−268789号(特許文献1参照)「流水プール」の発明がある。
【0007】
また、サーフィンプールと流水プールを組合せて連絡してレジャー性を向上させた従来技術の発明には、特開平−279872号(特許文献2参照)「プール施設」の発明がある。
【0008】
【特許文献1】特開平9−268789号
【特許文献2】特開平9−279872号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の図6に示した従来一般の流水路2を設けた流水プールは、幼児や年少者たちは流水プール内の途中でゆっくりしたり、止まったり、逆方向に進んだり、潜ったりして、水の流れや進行方向に関係なく自由に遊ぶなどするため、吐出口7、吸水口8、排水口などの配管口に、人や物が吸込まれる被害が発生する危険性があった。
殊に、図7に示す枠体11のフェンス12が取付けられていない場合や、例え枠体11及びフェンス12があっても万一外れた場合に、人や物が吸水口8の開口部14に吸い込まれたり、身体の一部が引寄せられて身動きが出来なくなったり、溺れるなどの事故や被害が発生することがあった。
【0010】
また、図8に示すように、吐出口や吸水口などの配管13の開口部14の内部に、格子状のフレーム15を溶接などによって直接取り付けた場合には、人や物が吸い付けられた際に流水断面積が減少するため、流速がさらに加速されて一層離れ難くなる。
また、配管内の掃除やメンテナンスを行う際に取外しができないなどの欠点があった。
【0011】

特許文献1の「流水プール」の発明は、複数の流水路を連絡水路で連絡し遮蔽体を切替えて利用する従来技術の発明である。
この従来技術の流水プールは、配管口の構造を示したものではない。
【0012】

また、上記特許文献2の「プール施設」の発明は、サーフィンプールと流水プールを組合せて連絡してレジャー性を向上させた発明である。
この従来技術のプール施設は、配管口の構造と安全性を配慮したものではなかった。
【0013】
この発明の目的は、上述の従来技術が有する問題点に鑑みてなされたもので、水泳用のプール、遊泳用の流水プールなどのプールの配管口へ、人や物が吸込まれたり引寄せられたりすることを防止し、さらに強く吸引されるのを緩和して一層の安全性を向上させたプールの配管口構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1の発明に係る配管口構造は、水泳用のプール、遊泳用の流水プールなどのプールの吐出口、吸水口、循環水口、排水口などの配管口前方に、格子構造の安全浮蓋体を側面周囲に通水のための所定面積を確保するように、間隔をおいて浮かせた状態で着脱自在に設けたものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明に係るプールの配管口構造は、水泳用のプール、遊泳用の流水プールの吐出口、吸水口、循環水口、排水口などの配管口前方に、格子構造の安全浮蓋体を側面周囲に通水のための所定面積を確保するように、間隔をおいて浮かせた状態で着脱自在に設けたので、人や物が吸込まれることなく、例え前方の通水面に人や物が引寄せられた場合でも周囲の隔接した間隔から通水が行われるため、強く吸引されて脱離不能となることもなく安全である。また、安全浮蓋体を取外して掃除やメンテナンスができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明に係るプールの配管口構造、安全浮蓋体9(9A,9B)の実施の形態について、図1乃至図5を参照して説明する。
【0017】
図1は本願の配管口構造の実施形態例で、吸水口の場合について着脱自在で格子構造の安全浮蓋体を配管口の周囲に取付ける状況を示す。
流水を循環させる流水プールの配管口は、吐出口、吸水口の他に、循環水口、排水口などがあり、開渠状の流水路2の複数箇所に設けられている。
流水路2の側壁には吸水口8を覆うように矩形の枠体(図示せず)が設けられ、この枠体には格子状や金網状などのフェンス(図示せず)が取付けられている。
この吸水口8の配管13の開口部14に、人や物が吸込まれることがないように、着脱自在構造の安全浮蓋体9を設ける。
なお、この安全浮蓋体9は矩形の枠体に形成した場合を示しているが、外周枠は楕円や円形の環状(図5に示す)に形成してもよい。
さらに、枠体は平行する部材のみで形成した事例を示しているが、十字状に交差する形状にして吸引阻止力を高めてもよい。
さらにまた、図示省略したが、中央部を突出させた時計皿形状にして、吸い込まれた際の接触面積を低減させる形状にすれば、より効果的な吸込み防止形状の枠体とすることができる。
【0018】
この安全浮蓋体9は、周囲に通水を確保するための間隔を設けて側壁10の表面から浮かせて取付ける。
なお、通水を確保する隔接間隔は、格子状に組枠した枠体の通水阻止面積も配慮し、吸引力に抗する面積確保に留意する。
このように安全浮蓋体9を浮かせて取付けることにより、例え人や物が配管に向かう前方向に吸込まれた際にも、周囲の間隔から通水が行われるため、強く引寄せられ吸引されて脱離不能となることがなく安全である。
この安全浮蓋体9は、掃除やメンテナンスの際に、簡単に取外して掃除や点検を行うことができる。

【0019】
図2は、図1の安全浮蓋体9の部分を示す斜視説明図である。
図2に示すように、配管の開口部14の周囲には、壁面から間隔Lが確保されるように、予めL字状型材の取付ピース18を溶接や埋設などによって取付けておく。
この取付ピース18に安全浮蓋体9の周枠体16の側縁に設けた取付プレート19を合せて固定する。

【0020】
さらに安全浮蓋体9Aの取付部を図3に拡大して示す。
取付ピース18に安全浮蓋体9の周枠体16の側縁に設けた取付プレート19を合せて、ボルト・ナット20などを用いて確りと固定する。
Lは側壁10の表面から浮かせて取付ける間隔である。この間隔Lを周囲に有する通水部分の表面積の合計は、配管開口部14の断面積より大きな面積に形成する。

【0021】

安全浮蓋体9Bの取付部の他の事例を図4に示す。
安全浮蓋体9Bの固定手段は、安全浮蓋体9の周枠体16に設けた取付部材21穴を、壁面に埋設したアンカーボルト22に合わせてナットを用いて固定する。
Lは側壁10の表面から浮かせて取付ける間隔である。この間隔Lは周囲に有する通水部分の面積合計が、配管開口部14の断面積より大きな面積になるように確保して形成する。

【0022】
図5は、安全浮蓋体9の他の事例で、周枠体16は開口部14より大きい楕円形の環状に形成し、壁面から間隔Lを設けて固定する。
配管の開口部14の周囲には、予めL字状型材の取付ピース18を溶接や埋設などによって取付けておく。
この取付ピース18に安全浮蓋体9の周枠体16の側縁に設けた取付プレート19を合致させて固定する。

【0023】
図1乃至図5に示す安全浮蓋体9、9A、9Bは、周囲に間隔Lを設けて側壁10の表面から浮かせて取付けることにより、人や物が配管13に向かう方向に吸込まれて前方からの通水が制限された際に、周囲の間隔Lから通水することができるため、強く引寄せられることなく引き離すことができ安全である。

【0024】
上記図2乃至図5に示す安全浮蓋体9、9A、9Bは簡単な部材からなり、蓋のない既設の配管口14に簡単に取付けることができる。
この安全浮蓋体9、9A、9Bを設けることにより、人や物が吸込まれることなく、例え引寄せられても強く吸引されて脱離不能に張付けられることもなく安全である。また、掃除やメンテナンスの際には、簡単に取外すことができる。

【0025】
格子19は、図1乃至図5に示すような縦格子、又は縦横の格子、或いは開孔した平板などを採用し、大きな物が通過することのないようにするとともに、流水抵抗が大きくならないように通水部の平面積を余り減少させない構造とする。
【産業上の利用可能性】
【0026】
この発明のプールの配管口構造は、水泳用プールや遊泳用の流水プールの配管口のみならず、種々の配管の配管口に適用し、蓋のない既設の配管口であっても、着脱容易で簡単かつ経済的に取付けることができる。

そして、配管口に人や物が吸込まれたり、引寄せられたりして脱離不能に張り付けられることもなく、安全性に優れた配管口構造とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明に係るプールの配管口構造の安全浮蓋体を取付ける状況を示す斜視説明図である。
【図2】図1の安全浮蓋体の一部を欠除して示す斜視説明図である。
【図3】取付部を拡大して示す斜視説明図である。
【図4】取付部の他の事例を示す斜視説明図である。
【図5】安全浮蓋体の他の事例の一部を欠除して示す斜視説明図である。
【図6】従来例の一般的な流水プールを示す平面説明図である。
【図7】図6の流水プールの配管口のうち、吸水口を示す説明図である。
【図8】従来例の配管開口部にフレームを設けた状態を示す斜視説明図である。
【符号の説明】
【0028】

1流水プール 2流水路
3中の島 4遊泳プール
5デッキ 6ブリッジ
7吐出口 8吸水口
9安全浮蓋体 9A浮格子体 9B浮格子体
10側壁
11枠体 12フェンス
13配管 14開口部
15フレーム 16周枠体
17縦格子 18取付ピース
19取付プレート 20ボルト・ナット
21取付部材 22アンカーボルト
23ナット
L間隔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水泳用のプール、遊泳用の流水プールなどのプールの吐出口、吸水口、循環水口、排水口などの配管口の前方に、格子構造の安全浮蓋体を側面周囲に通水のための所定面積を確保するように、間隔をおいて浮かせた状態で着脱自在に設けたことを特徴とするプールの配管口構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−82065(P2008−82065A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−264717(P2006−264717)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000147729)株式会社石井鐵工所 (67)