説明

ヘアカーラー

【課題】強固なクセ付けを効率良く実施し得るヘアカーラーを提供すること。
【解決手段】本発明のヘアカーラー1は、毛髪が巻き付けられる毛髪巻き付け具2と、毛髪巻き付け具2に対して着脱自在になされ、水蒸気を伴う熱を発生する蒸気温熱発生具3とを含んで構成される。蒸気温熱発生具3に、該蒸気温熱発生具3の毛髪巻き付け具2に対する着脱操作をする際に把持される把持部36が設けられている。把持部36は、発熱状態の蒸気温熱発生具3における把持部36を指で直接把持して前記着脱操作を実施できるように、把持部36の材質及び/又は配置位置が調整されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪にカール等のクセ付けを施すために使用されるヘアカーラーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘアカーラーとして、鉄粉等の被酸化性金属を含む発熱体を備え、該発熱体による蒸気温熱(水蒸気を伴う熱)により毛髪にクセ付けを施すようにしたものが知られている。例えば特許文献1には、鉄粉を含む発熱剤と該発熱剤が収納される通気性の収納袋とからなる、携帯用ヘアカーラーの発熱体が記載されている。特許文献1に記載の発熱体は、毛髪が巻き付けられる略円筒状の巻き付け具と共に併用されるもので、特許文献1の記載によれば、発熱を開始した該発熱体を該巻き付け具の中空部に装着し、該巻き付け具に毛髪を巻き付けた後、該巻き付け具を押え具に装着して、該毛髪を該巻き付け具と該押え具とで挟持し、その状態で所定時間(該発熱体の温度がある程度低下するまで)放置することにより、該発熱体から発生する蒸気温熱によって該毛髪にカールを施すことができるとされている。
【0003】
また、特許文献2には、特許文献1に記載のヘアカーラーの改良技術として、発熱体(筒状物)の大きさを任意に変更できるようにしたものが記載されている。特許文献2に記載の発熱体は、鉄粉等を含む発熱物質が収納された複数の偏平状袋部が、それぞれ、半円弧柱面状に丸められ且つその円周方向に重ね合わされることによって1つの筒状物として構成されており、複数の該偏平状袋部をその円周方向や軸方向にずらして重ね合わせることによって、該発熱体(筒状物)の直径や軸長を適宜変更可能になされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平4−57323号公報
【特許文献2】特開2006−280749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
市販のヘアカーラーには、毛髪に熱のみ(水蒸気を伴わない熱)を付与する方式のものがあるが、このような方式のヘアカーラーは、蒸気温熱を付与する方式のものに比して、クセ付けに多くの時間を要し、クセ付け作業の効率が悪く、また、クセ付けによって毛髪に与えるダメージが大きい。
【0006】
また、特許文献1及び2に記載の発熱体は、蒸気温熱を発生するものであるが、以下に説明するように、クセ付け作業の効率の点で改善の余地がある。即ち、特許文献1及び2に記載の発熱体は、該発熱体が毛髪にクセ付けを施すことが可能な程度に発熱している状態においては、該発熱体の温度が70℃以上に達しているところ、斯かる発熱状態の該発熱体を、厚手の手袋等を使用せずに指で直接把持できるような工夫がなされていないため、該発熱体の基本的な使用方法としては、該発熱体を1個の毛髪巻き付け具に装着し発熱させた後は、該発熱体の温度が低下するまで放置しておくことになる。従って、特許文献1及び2に記載の発熱体は、該発熱体1個につき、1個の毛髪巻き付け具による頭髪全体のうちの1箇所のクセ付けにしか利用できず、クセ付け作業の効率の点で改善の余地がある。
【0007】
仮に、発熱状態の発熱体が指で直接把持できるように工夫されていると、例えば、「頭髪の所定箇所に巻き付けられた1個の毛髪巻き付け具に発熱体を装着して、該所定箇所の毛髪のクセ付けを行った後、未だ発熱状態にある該発熱体を指で直接把持して該毛髪巻き付け具から取り外し、頭髪の別の箇所に巻き付けられた別の1個の毛髪巻き付け具に装着して該別の箇所の毛髪のクセ付けを行う」というような、効率的なクセ付け作業が可能となり、1個の発熱体で頭髪の複数箇所にクセ付けを施すことが可能となる。特許文献1及び2に記載の発熱体を用いてこのような効率的なクセ付け作業を実施しようとすると、前述したように発熱状態の発熱体の温度は70℃以上の高温であるため、厚手の手袋無しでは火傷するおそれがある。また、厚手の手袋を装着するのは手間がかかるし、発熱体の着脱作業自体が行いにくくなる。強固なクセ付けを効率良く実施し得るヘアカーラーは未だ提供されていない。
【0008】
従って本発明の課題は、強固なクセ付けを効率良く実施し得るヘアカーラーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、毛髪が巻き付けられる毛髪巻き付け具と、該毛髪巻き付け具に対して着脱自在になされ、水蒸気を伴う熱を発生する蒸気温熱発生具とを含んで構成されるヘアカーラーであって、前記蒸気温熱発生具に、該蒸気温熱発生具の前記毛髪巻き付け具に対する着脱操作をする際に把持される把持部が設けられており、前記把持部は、発熱状態の前記蒸気温熱発生具における該把持部を指で直接把持して前記着脱操作を実施できるように、該把持部の材質及び/又は配置位置が調整されているヘアカーラーを提供することにより、前記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のヘアカーラーによれば、毛髪にカール等のクセ付けを効率良く実施することができ、且つ強固なクセ付けが可能で、クセ付けされた毛髪のクセが長期間維持される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明のヘアカーラーの第1実施形態の斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す毛髪巻き付け具を一部破断して示す斜視図である。
【図3】図3は、図1に示す蒸気温熱発生具の一部を開封してその中身(発熱体)を取り出した状態を示す分解斜視図である。
【図4】図4(a)〜図4(d)は、それぞれ、図1に示すヘアカーラーの使用方法の一例を示す説明図である。
【図5】図5は、本発明のヘアカーラーの第2実施形態における蒸気温熱発生具を示す斜視図である。
【図6】図6(a)及び図6(b)は、それぞれ、図5に示す蒸気温熱発生具を備えたヘアカーラーの使用方法の一例を示す説明図である。
【図7】図7は、本発明のヘアカーラーの第3実施形態の斜視図である。
【図8】図8(a)〜図8(d)は、それぞれ、図7に示すヘアカーラーの使用方法の一例を示す説明図である。
【図9】図9は、本発明のヘアカーラーの第4実施形態の斜視図である。
【図10】図10は、図9に示す蒸気温熱発生具の分解斜視図である。
【図11】図11(a)及び図11(b)は、それぞれ、図9に示すヘアカーラーの機能を説明する模式的な断面図である。
【図12】図12は、本発明のヘアカーラーの第5実施形態における蒸気温熱発生具を示す模式的な断面図である。
【図13】図13(a)及び図13(b)は、それぞれ、図12に示す蒸気温熱発生具を備えたヘアカーラーの使用方法の一例を示す説明図である。
【図14】図14(a)及び図14(b)は、それぞれ、毛髪のカール度の評価方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づいて、図面を参照しながら説明する。図1〜図4には、本発明のヘアカーラーの第1実施形態が示されている。第1実施形態のヘアカーラー1Aは、図1に示すように、毛髪が巻き付けられる毛髪巻き付け具2と、毛髪巻き付け具2に対して着脱自在になされ、水蒸気を伴う熱を発生する蒸気温熱発生具3とを含んで構成されている。蒸気温熱発生具3は、使用前は包装体4内に密封されている。図1は、包装体4の一端に位置する封止部(図示せず)を開封して蒸気温熱発生具3を取り出した状態を示している。該封止部は、包装体4の他端に位置する封止部4aと同様に構成されている。
【0013】
毛髪巻き付け具2は、図1及び図2に示すように、軸方向(図中X方向)の少なくとも一端が開口した中空筒状で且つ周面部2bが通気性を有している、通気部20を具備している。より具体的には、第1実施形態における毛髪巻き付け具2は、軸方向Xの両端2a,2aが何れも開口端となっている中空筒状体で、その内部に軸方向Xの全長に亘って中空部21が形成されている。第1実施形態においては、毛髪巻き付け具2の周面部2b全体が通気性を有しており、第1実施形態における毛髪巻き付け具2全体が通気部20である。中空部21に装着された蒸気温熱発生具3の発熱によって発生した水蒸気は、通気性の周面部2bを通じ、対象物である毛髪に付与されるようになされている。
【0014】
毛髪巻き付け具2(通気部20)は、図2に示すように、芯部材23の表面に金属部材25が巻き付けられ、更にその上に毛髪巻き付け部材27が巻き付けられて構成されている。
【0015】
芯部材23は、合成樹脂や薄板や耐水性紙材等の軽量の材料で筒状(円筒状)に形成されている。芯部材23は中空であって、その中空部21を画成する周面部は、軸方向Xに延びる複数の縦枠部23aと、該縦枠部23aを横切って周方向に延びる複数の横枠部23bとで形成されており、該周面部には、これらの枠部23a,23bで仕切られた複数の通孔24が形成されている。複数の通孔24は、芯部材23の周面部全体に均一に配されており、これにより芯部材23の通気性が高められている。芯部材23のサイズは、特に制限されないが、通常、軸方向Xの全長は50〜200mm程度、内径は10〜50m程度である。
【0016】
金属部材25は、芯部材23の表面に巻き付けられるもので、板状に形成されていることが好ましく、アルミニウム板やステンレス板等が用いられる。金属部材25には、該金属部材25を厚み方向に貫通する複数の通孔26が、該金属部材25の全体に均一に設けられている。芯部材23に金属部材25を巻き付けることにより、芯部材23の中空部21に装着された蒸気温熱発生具3から発生する熱を、毛髪に効率良く伝えることが可能となる。尚、金属部材25は無くても構わない。
【0017】
毛髪巻き付け部材27は、生地28の表面に、毛髪保持材として多数のフック状の毛髪係止体29を設けたものである。生地28は通気性を有している。フック状の毛髪係止体29を設けると毛髪を容易に絡ませることができるが、毛髪保持材はこれに限定されるものでなく、毛髪を巻き付けることができるものであれば良く、例えばスポンジや表面に弱い粘着性を有するシートを用いても良い。
【0018】
蒸気温熱発生具3は、図1に示すように、使用時に毛髪巻き付け具2(通気部20)の中空部21内に装着される通気部対応部30と、通気部対応部30に連接され且つ図4(b)に示すように、使用時に中空部21の軸方向Xの外方に位置する通気部非対応部31とを有している。蒸気温熱発生具3は、略筒状(円筒状)であり、その軸方向Xの一端部が通気部非対応部31、残りの部分が通気部対応部30となっている。
【0019】
蒸気温熱発生具3の軸方向Xの全長は、通気部非対応部31の分だけ、毛髪巻き付け具2の軸方向Xの全長よりも長くなっている。通気部対応部30の軸方向Xの全長は、毛髪巻き付け具2の軸方向Xの全長と略同じである。また、蒸気温熱発生具3を毛髪巻き付け具2(芯部材25)の中空部21に軽くフィットさせる(両者間にやや隙間ができる程度に装着させる)ようにする観点から、蒸気温熱発生具3(通気部対応部30)の外径は、毛髪巻き付け具2(芯部材25)の内径よりもやや短い程度、具体的には、毛髪巻き付け具2(芯部材25)の内径の90〜99%にすることが好ましい。蒸気温熱発生具3のサイズは、特に制限されないが、通常、軸方向Xの全長は70〜220mm程度、外径は9〜49mm程度である。
【0020】
蒸気温熱発生具3は、図3に示すように、空気との接触により発熱可能な発熱体33を具備している。より具体的には、第1実施形態における蒸気温熱発生具3は、筒状の芯部材32の表面にシート状の発熱体33が巻き付けられ、この状態で芯部材32及び発熱体33が収容体34に収容されて構成されている。筒状に巻かれた発熱体33の重ね合わされた端部どうしは、粘着テープや接着剤等で接合されていても良い。
【0021】
芯部材32は、樹脂製フィルムや紙等のシート材で筒状に巻かれて形成されている。筒状に巻かれた該シート材の重ね合わされた端部どうしは、テープや接着剤等で接合されていても良い。芯部材32を構成するシート材は、比較的厚みの大きいものが好ましく、該シート材の厚みは、好ましくは0.1〜1.0mmである。
【0022】
発熱体33は、空気との接触により発熱可能なもので、被酸化性金属を含む発熱組成物に電解質水溶液を含有させてなる。発熱体33は、被酸化性金属が酸素と接触することによる酸化反応で生じた熱を利用して、所定温度に加熱された水蒸気を発生する。
【0023】
発熱体33は、100質量部の前記発熱組成物に対して、2〜15質量%、特に4〜10質量%の電解質を含む電解質水溶液が20〜80質量部、特に30〜60質量部含有されて構成されていることが好ましい。電解質としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属の塩化物、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等のアルカリ土類金属の塩化物等が挙げられる。
【0024】
第1実施形態における発熱体33は、公知の湿式抄造法により製造されたシート状物からなる。より具体的には、発熱体33を構成する前記発熱組成物は、被酸化性金属及び繊維状物を含む繊維シートであり、好ましくは、更に反応促進剤を含んでいる。シート状物である発熱体33の坪量は、好ましくは200〜600g/m2である。尚、第1実施形態においては、図3に示すように、1枚のシート状の発熱体33を丸めて筒状を形成しているが、複数枚のシート状の発熱体33を重ね合わせて積層体とし、該積層体を丸めて筒状を形成しても良い。
【0025】
前記発熱組成物(繊維シート)は、60〜90質量%、特に75〜85質量%の被酸化性金属と、5〜20質量%、特に7.5〜12.5質量%の繊維状物と、5〜20質量%、特に7.5〜12.5質量%の反応促進剤とを含んで構成されていることが好ましい。
【0026】
前記発熱組成物を構成する各種材料としては、当該技術分野において通常用いられているものと同様のものを用いることができる。被酸化性金属としては、鉄、アルミニウム、亜鉛、銅等が挙げられる。繊維状物としては、木材パルプや各種合成繊維等が挙げられる。反応促進剤としては、活性炭、カーボンブラック、黒鉛等が挙げられる。前記発熱組成物には、更に、保水剤(例えば、バーミキュライト、ケイ酸カルシウム、シリカゲル、シリカ系多孔質物質、アルミナ、パルプ、木紛、吸水ポリマー等)等を含有させても良い。
【0027】
収容体34は、通気性シート35を所定位置で接合して、筒状の密閉空間が形成されたもので、該密閉空間に、筒状に巻かれた芯部材32及び発熱体33を収容することができるものである。収容体34は、図1に示すように、略筒状(円筒状)であり、その軸方向Xの両端は、それぞれ、通気性シート35がヒートシール等の公知の接合手段によって接合されて封止部3aとなっているが、図3では、一方の封止部3aを開封した状態を示している。
【0028】
通気性シート35は、通気度(JIS P8117で規定)が、好ましくは300〜4000cc/(m2・24hr)、更に好ましくは1000〜3000cc/(m2・24hr)であるものが好ましい。
【0029】
通気性シート35としては、例えば、樹脂製シートに該シートを厚み方向に貫通する孔が多数形成されてなる、開孔シートの他、ポリオレフィン等の合成パルプ、木材パルプ、レーヨン、アセテート等の半合成繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維等から形成された不織布、織布、合成紙、紙等を用いることができ、これらの2種以上を貼り合わせてなる積層シートを用いることもできる。前記開孔シートとしては、例えば、樹脂からなるシートに機械的手段によって多数の孔を形成したもの;樹脂と無機フィラーとの混合シートを延伸により界面剥離させ、該混合シートに微孔を形成したもの;発泡成形による連続気泡を利用し微孔を連通させたもの等が挙げられる。また、前記開孔シートの形成材料となる樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィンやポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。通気性シート35は、複数枚を重ねて用いることもできる。
【0030】
蒸気温熱発生具3は、毛髪に強固なクセ付けを施すことを可能にする観点から、下記測定方法による水蒸気放出量が0.8mg/(cm2・min)以上、特に1.0mg/(cm2・min)以上であることが好ましい。
【0031】
<水蒸気放出量の測定方法>
室温環境(20℃、65%RH)下で水蒸気発生体(蒸気温熱発生具3)を外気遮断用の包装袋(包装体4)から取り出す。1mgの単位まで測定可能な上皿天秤に、水蒸気発生体を直ちに載せ、その後15分間重量測定を行う。測定開始時の重量をWt0(g)とし、15分後の重量をWt15(g)とし、水蒸気発生体表面の水蒸気発生面積をS(cm2)としたときに、以下の式から発生した水蒸気の量を算出する。
水蒸気放出量〔mg/(cm2・min)〕=(Wt0−Wt15)×1000/15S
【0032】
また、同様の観点から、蒸気温熱発生具3は、毛髪巻き付け具2(通気部20)の中空部21内に適切に装着された状態で発熱したときに、毛髪巻き付け具2の周面部2bの表面温度が55℃以上、特に55〜80℃となるような発熱性能を有していることが好ましい。これを達成するために、蒸気温熱発生具3は、発熱状態においてその表面温度が60℃以上、特に70〜85℃となるような発熱性能を有していることが好ましい。蒸気温熱発生具の水蒸気放出量や発熱性能は、例えば、発熱体の重量、発熱体の組成、通気量、電解質濃度、電解質水溶液の添加量によって調整することができる。
【0033】
図1及び図3に示すように、蒸気温熱発生具3には、該蒸気温熱発生具3の毛髪巻き付け具2に対する着脱操作をする際に把持される把持部36が設けられている。把持部36は、発熱状態の蒸気温熱発生具3における該把持部36を指で直接把持して前記着脱操作を実施できるように、その材質及び/又は配置位置が調整されている。ここで、「指で直接把持」とは、手(指)に手袋等を装着せずに、素手で把持部を直接摘むことを意味する。
【0034】
把持部36は、帯状の断熱材37から形成されており、断熱材37は、使用時に毛髪巻き付け具2の中空部21(通気部20)の軸方向Xの外方に位置する、通気部非対応部31に配置されている。より具体的には、帯状の断熱材37(把持部36)は、通気部非対応部31における、芯部材32が存していて略筒状になっている部分の外面(収容体34の外面)に、その周方向の全長に亘って巻き付けられている。断熱材37は、収容体34の外面に接着剤等により接合されていても良く、あるいは接合されずに該外面上を摺動可能になされていても良い。
【0035】
把持部36の下方近傍には収容体34(通気性シート35)を挟んで発熱体33が存しているため、把持部36の配置位置は、蒸気温熱発生具3の発熱状態において、発熱体33から発生する蒸気温熱が通過し、指で直接把持できないほどの高温となる位置であるところ、第1実施形態においては、把持部36が熱を伝え難い断熱材37からなるため、蒸気温熱発生具3が発熱状態であっても、把持部36を指で直接把持することが可能である。
【0036】
把持部36を形成する断熱材37としては、例えば、スポンジ、不織布、織布、紙、ゴム、グラスウール等が挙げられる。断熱材37の厚みは、断熱性を高める観点から、1mm以上が好ましく、特に2〜3mmが好ましい。把持部36の幅は、該把持部36を把持する指先が収容体34の外面に直接触れないような、十分な大きさに調整することが好ましい。
【0037】
前述したように、蒸気温熱発生具3は、使用前は包装体4(図1参照)内に密封されている。包装体4は、非通気性シート40を所定位置で接合して、筒状の密閉空間が形成されたもので、該密閉空間に、蒸気温熱発生具3を収容することができるものである。非通気性シート40の材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリウレタン類、フッ素系樹脂類等、公知の溶融成形性樹脂の中から適宜選択して使用することができる。内容物の保存安定性を向上するために、酸素吸収層、酸素遮断層等を設けた積層型の酸素バリア性素材を使用することもできる。
【0038】
以上の構成を有する第1実施形態のヘアカーラー1Aは、次のようにして使用される。先ず、図4(a)に示すように、常法に従って毛髪巻き付け具2(通気部20)の周面部2bに、カール付けされていないストレートな毛髪Hを巻き付け、次いで、包装体4(図1参照)から取り出した蒸気温熱発生具3の通気部対応部30を、該毛髪巻き付け具2の中空部21内に挿入する。蒸気温熱発生具3を包装体4内から取り出して外気と接触させることにより、蒸気温熱発生具3の内部の発熱体33中の被酸化性金属が空気(酸素)と接触して蒸気温熱が発生する。
【0039】
図4(b)には、蒸気温熱発生具3の毛髪巻き付け具2(通気部20)に対する適切な装着状態が示されている。蒸気温熱発生具3は、通気部対応部30が通気部20(中空部21)内に位置し、通気部非対応部31(把持部36)が通気部20の軸方向外方に位置するように、毛髪巻き付け具2に装着される。斯かる適切な装着状態において、蒸気温熱発生具3から発生した水蒸気が、毛髪巻き付け具2の通気性の周面部2bを通じて、周面部2bに巻き付けられている毛髪Hに付与され、また、このとき、周面部2bの表面温度は好ましくは55℃以上となっており、毛髪Hは周面部2bによって加熱される。毛髪Hの加熱時間(図4(b)に示す如く、蒸気温熱発生具3を毛髪巻き付け具2に装着している時間)は、蒸気温熱発生具3の発熱性能等にもよるが、通常2分程度である。
【0040】
こうして毛髪Hが十分に加熱されたら、把持部36を指で直接把持し、蒸気温熱発生具3を毛髪巻き付け具2の中空部21から引っ張り出して取り外す。そして、図4(c)に示す如く、毛髪巻き付け具2に毛髪Hを巻き付けたままの状態で数分間放置する。毛髪巻き付け具2から蒸気温熱発生具3を取り外した直後、毛髪Hは、水蒸気によって表面が濡れた状態となっているが、余熱により通常2分程度で乾燥する。
【0041】
毛髪Hが乾燥したら、常法に従って毛髪Hから毛髪巻き付け具2を取り外す。すると、図4(d)に示すように、十分にカール付けされた毛髪Hが得られる。
【0042】
このように、ヘアカーラー1Aは蒸気温熱(水蒸気を伴う熱)を利用することで、毛髪の水素結合に作用し、比較的低温で強固なクセ付けを実現するものである。毛髪中の結合には、主鎖を形成している縦の結合(ポリぺプチド結合)と、隣り合った主鎖どうしを結ぶ側鎖結合とがあり、毛髪の強度や弾性等の特性は、この側鎖結合によるところが大きい。側鎖結合には、水素結合、シスチン結合、塩結合があり、これらのうち最も数が多い水素結合は、水分を与えると切断し、水分を奪う(乾燥させる)と再結合するという性質を有する。本発明は、斯かる毛髪中の水素結合に着目し、毛髪に単に熱を付与するだけでなく水蒸気も付与し、且つ蒸気温熱のON−OFF操作を実施することで、毛髪に強固なクセ付けを施すことを可能にしている。即ち、図4(b)に示す如き蒸気温熱の付与(蒸気温熱ON)により、毛髪H中の水素結合が水蒸気によって切断され、毛髪Hがクセ付けされやすい状態となり、続いて、図4(c)に示すように、蒸気温熱発生具3を毛髪巻き付け具2から取り外し、毛髪Hを毛髪巻き付け具2に巻き付けた状態で放置し(蒸気温熱OFF)、毛髪Hを除熱乾燥することにより、一旦切断された毛髪H中の水素結合が再結合し、これにより、カール付けされた毛髪Hが得られる。
【0043】
第1実施形態のヘアカーラー1Aによれば、把持部36を具備していることにより、発熱状態の蒸気温熱発生具3を直接指で把持できるため、前述した蒸気温熱のON−OFF操作を実施することができ、これにより、4分程度(加熱約2分、除熱乾燥約2分)の比較的短時間で効率良く、強固にクセ付けされた毛髪が得られる。市販の電熱式のホットカーラー(熱のみを毛髪に付与し、水蒸気は付与しないタイプのカーラー)を使用した場合、1箇所の毛髪のクセ付けに要する時間は、第1実施形態のヘアカーラー1Aの倍以上である。また、市販の電熱式のホットカーラーによる加熱温度は通常130℃以上であるため、クセ付けにより毛髪に大きなダメージを与えることが懸念されるが、第1実施形態のヘアカーラー1Aによれば、加熱温度の上限は80℃程度であるため、毛髪へのダメージを軽減することができる。
【0044】
また、発熱体33は、前述した構成を具備していることにより、毛髪に十分なクセ付けを施し得る発熱状態を15分以上持続することが可能であるため、1個の蒸気温熱発生具3に対して、複数個の毛髪巻き付け具2を用意し、予め頭髪の複数箇所に毛髪巻き付け具2を巻き付けておくことにより、1個の蒸気温熱発生具3で頭髪の複数箇所にクセ付けを施すことが可能である。斯かる効率的なクセ付け作業は、発熱状態の蒸気温熱発生具3を指で直接把持することを可能にする、把持部36の存在によるところが大きい。
【0045】
以下、本発明の他の実施形態について図5〜図13を参照して説明する。後述する他の実施形態については、前述した第1実施形態のヘアカーラー1Aと異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、第1実施形態のヘアカーラー1Aについての説明が適宜適用される。
【0046】
図5及び図6には、本発明のヘアカーラーの第2実施形態が示されている。第2実施形態のヘアカーラー1Bにおける蒸気温熱発生具5は、図5に示すように、シート状物である四角形形状の発熱体33の一面上に、帯状の把持部36(断熱材37)が設けられて構成されている。発熱体33と把持部36との間は、粘着テープや接着剤等で接合されている。蒸気温熱発生具5は、使用前は包装体6内に密封されている。包装体6は偏平なもので、非通気性シート40を所定位置で接合して密閉空間が形成されたものであり、該密閉空間に、シート状の蒸気温熱発生具5を収容することができるものである。図5は、四角形形状の包装体6の周縁に位置する封止部6aの一部を開封して蒸気温熱発生具5を取り出した状態を示している。
【0047】
第2実施形態のヘアカーラー1Bは次のようにして使用される。先ず、図5に示す如く包装体6から蒸気温熱発生具5(発熱体33)を取り出し、該蒸気温熱発生具5を、図6(a)に示す如く把持部36の配置面側を外側にして筒状に巻き、発熱体33の周方向の端部を粘着テープ5aで固定する。こうして得られた筒状の蒸気温熱発生具5の外径は、該蒸気温熱発生具5が毛髪巻き付け具2(通気部20)の中空部21に軽くフィットする程度に調整されることが好ましい。筒状の蒸気温熱発生具5において、把持部36を含む軸方向Xの一端部が通気部非対応部51、残りの部分が通気部対応部50となっている。
【0048】
次いで、筒状の蒸気温熱発生具5の通気部対応部50を、毛髪が巻き付けられた毛髪巻き付け具2の中空部21内に挿入する。図6(b)に示すように、筒状の蒸気温熱発生具5は、通気部対応部50が通気部20(中空部21)内に位置し、通気部非対応部51(把持部36)が通気部20の軸方向外方に位置するように、毛髪巻き付け具2に装着される。蒸気温熱発生具5の装着後は、前述した第1実施形態と同様の手順で毛髪Hのクセ付けを行うことができる。第2実施形態によっても第1実施形態と同様の効果が奏される。
【0049】
図7及び図8には、本発明のヘアカーラーの第3実施形態が示されている。第3実施形態のヘアカーラー1Cにおける毛髪巻き付け具7は、図7に示すように、第1実施形態における毛髪巻き付け具2と同じ構成の通気部20に加えて、非通気部70を具備している。非通気部70は、軸方向Xの少なくとも一端が開口した中空筒状で且つ周面部7bが非通気性を有しているものである。より具体的には、非通気部70は、軸方向Xの両端が何れも開口端となっている中空筒状体で、その内部に軸方向Xの全長に亘って中空部71が形成されている。非通気部70の周面部7bは、その全体が非通気性であり、空気を実質的に通過させないようになっている。
【0050】
非通気部70の材料としては、前述した第1実施形態における非通気性シート40の材料と同様のものを用いることができる。尚、非通気部70は、後述するように、通気部20のように毛髪を巻き付けて使用するものではないので、毛髪を巻き付けるための部材を具備している必要はない。従って、非通気部70は、例えば非通気性シート40を筒状に丸めて形成したものであっても良い。
【0051】
毛髪巻き付け具7において、通気部20と非通気部70とは、それぞれの軸方向を一致させ且つそれぞれの中空部21,71が互いに連通するように連接されている。即ち、通気部20と非通気部70とは、図7に示すように直列に連結されており、毛髪巻き付け具7全体として1つの筒状体を形成している。斯かる毛髪巻き付け具7の構成により、蒸気温熱発生具3を、通気部20の中空部21から非通気部70の中空部71へ、あるいはこれとは逆に中空部71から中空部21へ、任意の方向にスライド可能になされている。通気部20と非通気部70とは、軸方向の長さ及び内径がそれぞれ略同じに調整されている。
【0052】
また、第3実施形態における蒸気温熱発生具3は、図7に示すように、把持部36として、2本の帯状部材38を備えている。各帯状部材38は、その長さ方向の一端が、蒸気温熱発生具3の軸方向Xの一端に位置する封止部3aに接合されており、該帯状部材38の他端は、他の部材に接合されておらず自由端となっている。各帯状部材38の長さは、該帯状部材38を用いた蒸気温熱発生具3の毛髪巻き付け具7内におけるスライドを容易にする観点から、毛髪巻き付け具7の軸方向Xの全長よりも長くすることが好ましい。
【0053】
蒸気温熱発生具3の使用時には、通常、帯状部材38の自由端部(自由端及びその近傍)が指で直接把持される。帯状部材38の自由端部は、蒸気温熱発生具3内に収容され且つ蒸気温熱を発生する、発熱体33から離れた位置に存しているため、蒸気温熱発生具3が発熱状態のときに該自由端部を指で把持しても、該指が水蒸気や熱に晒されるおそれはない。帯状部材38としては、前述した第1実施形態における断熱材37と同様のものを用いることもできるが、このように、帯状部材38の配置位置が発熱体33からの蒸気温熱に晒され難いように調整されているので、断熱性を有していない材を用いることもでき、樹脂製フィルム等でも良い。
【0054】
第3実施形態のヘアカーラー1Cは次のようにして使用される。先ず、図示しない包装体から蒸気温熱発生具3を取り出し、把持部36(帯状部材38)を用いて、通気部対応部30を、毛髪巻き付け具7の通気部20における中空部21内に挿入する。図8(a)に示すように、蒸気温熱発生具3は、通気部対応部30が通気部20(中空部21)内に位置し、通気部非対応部31が毛髪巻き付け具7の軸方向外方に位置するように、毛髪巻き付け具7に装着される。このとき、非通気部70の中空部71には、実質的に帯状部材38が挿入されているのみであり、蒸気温熱発生具3の本体(帯状部材38を除く部分)は実質的に挿入されていない。次いで、常法に従って毛髪巻き付け具7の通気部20の周面部2bに毛髪Hを巻き付け、その状態で数分間放置する。
【0055】
蒸気温熱発生具3からの蒸気温熱により毛髪Hが十分に加熱されたら、非通気部70側に延びている帯状部材38を指で把持して非通気部70側に引っ張り、図8(b)に示すように、蒸気温熱発生具3の本体を非通気部70の中空部71内にスライドさせる。毛髪Hは、通気部20に巻き付けたままで放置する。このような、蒸気温熱発生具3の本体の通気部20から非通気部70への移動により、毛髪Hの除熱乾燥がなされる。一方、蒸気温熱発生具3の本体は、非通気性の周面部7bで囲まれた非通気部70の中空部71内に移されることにより、該蒸気温熱発生具3内の発熱体33への空気(酸素)の供給が妨げられるため、発熱反応が抑制され、発熱持続時間を延長することが可能となる。
【0056】
毛髪Hが乾燥したら、常法に従って毛髪Hから毛髪巻き付け具2を取り外す。すると、図8(c)に示すように、十分にカール付けされた毛髪Hが得られる。こうして所定箇所の毛髪のクセ付けが完了したら、図8(d)に示すように、帯状部材38を用いて手動により、蒸気温熱発生具3の本体を非通気部70から通気部20へスライドさせ、前述した手順と同様の手順で、別の箇所の毛髪のクセ付け作業を実施する。
【0057】
第3実施形態によっても第1実施形態と同様の効果が奏される。特に第3実施形態によれば、毛髪巻き付け具2に巻き付けられ蒸気温熱を付与された毛髪の除熱乾燥時に、蒸気温熱発生具3の本体を非通気部70内に収容できるようになっているため、蒸気温熱発生具3(発熱体33)の寿命を延ばすことが可能となる。
【0058】
図9〜図11には、本発明のヘアカーラーの第4実施形態が示されている。第4実施形態のヘアカーラー1Dにおける蒸気温熱発生具8は、図10に示すように、支持部材9の表面に発熱体33が巻き付けられて構成されている。支持部材9は、発熱体33が巻き付けられる筒状部9Aと、該筒状部9Aの一端に連接された筒状の把持部36とを具備している。把持部36は、筒状部9Aよりも外径が大きくなされている。支持部材9は、各種合成樹脂や金属等から構成されており、支持部材9自体は非通気性である。
【0059】
また、第4実施形態のヘアカーラー1Dにおける毛髪巻き付け具10は、第1実施形態における毛髪巻き付け具2と同じ構成の通気部20に加えて、非通気部80を具備している。非通気部80は、軸方向Xの少なくとも一端が開口した中空筒状で且つ周面部8bが非通気性を有しているものである。より具体的には、非通気部80は、図11(a)に示すように、軸方向Xの一端が開口端80a、他端が閉塞端80bとなっている中空筒状体で、その内部に軸方向Xの略全長に亘って中空部81が形成されている。非通気部80の周面部8b及び閉塞端80bは、それぞれ、その全体が非通気性であり、空気を実質的に通過させないようになっている。
【0060】
毛髪巻き付け具10において、図11に示すように、非通気部80は、通気部20の中空部21内に装着された蒸気温熱発生具8と該通気部20との間に挿入可能になされている。即ち、非通気部80の筒状部分(閉塞端80bを除く部分)は、手動により、通気部20の内周面に沿って摺動可能にその外径が調整されており、通気部20(中空部21)内に蒸気温熱発生具8が完全に挿入(装着)されている状態において、図11(a)に示すように、非通気部80の筒状部分の略全体を通気部20の軸方向外方に位置させ、あるいは図11(b)に示すように、非通気部80の筒状部分全体を、通気部20の周面部2bと蒸気温熱発生具8との間に位置させることができる。図11(a)に示す状態においては、通気性を有している周面部2bと蒸気温熱発生具8との間が非通気部80で遮断されていないため、蒸気温熱発生具8における発熱体33への空気(酸素)の供給が妨げられず、発熱体33の発熱反応が促進されるのに対し、図11(b)に示す状態においては、非通気部80によって斯かる空気の供給が妨げられるため、発熱体33の発熱反応が抑制され、発熱持続時間を延長することが可能となる。
【0061】
第4実施形態のヘアカーラー1Dの使用時において、通気部20の周面部2bに巻き付けられた毛髪(図示せず)に蒸気温熱発生具8から発生する蒸気温熱を付与する場合は、図11(a)に示す状態とし、続いて該毛髪を除熱乾燥する場合は、非通気部80の前記筒状部分を通気部20内に押し込んで、図11(b)に示す状態とする。このように、第4実施形態のヘアカーラー1Dにおいては、非通気部80の通気部20(中空部21)内の移動によって、通気部20(周面部2b)の通気性をコントロールすることが可能であり、これにより、第3実施形態と同様の効果が奏される。
【0062】
図12及び図13には、本発明のヘアカーラーの第5実施形態が示されている。第5実施形態のヘアカーラー1Eにおける蒸気温熱発生具11は、水を含浸可能な保水体12を具備しており、保水体12に湯を含浸させることにより、保水体12から蒸気温熱が発生するようになされている。即ち、前述した実施形態における蒸気温熱発生具が、空気との接触により発熱可能な発熱体を利用したものであったのに対し、第5実施形態における蒸気温熱発生具11は、そのような発熱体を利用したものではなく、保水体12から発生する湯気を毛髪に付与するようにしたものである。従って、蒸気温熱発生具11は、使用前に密封されている必要は無い。
【0063】
蒸気温熱発生具11は、図12及び図13(a)に示すように、支持部材13の表面に保水体12が巻き付けられて構成されている。支持部材13は、保水体12が巻き付けられる筒状部13Aと、支持部材13の他端に位置する把持部36と、筒状部13Aと把持部36との間に配された連結部材13Bとを具備している。連結部材13Bは、把持部36を指で把持して蒸気温熱発生具11を取り扱う際に、保水体12に含浸された湯が把持部36側に垂れ落ちる不都合を防止する役割を果たすもので、筒状の保水体12の外径よりも大きな外径を有する、円盤状の部材で構成されている。支持部材13は、各種合成樹脂や金属等から構成されており、支持部材13自体は非通気性である。
【0064】
保水体12としては、水(湯)を吸収保持し得るものが用いられ、例えば、綿等からなる織布、不織布、フェルト、スポンジ、パルプ等からなる紙、ポリビニルアルコール(PVA)等の吸水性樹脂等が挙げられる。
【0065】
蒸気温熱発生具11を使用するには、1)保水体12に湯を染み込ませるか、あるいは2)保水体12に水を染み込ませた後、電子レンジ等の加熱手段で保水体12を加熱し、保水体12に染み込ませた水を湯に変える。こうして保水体12から湯気が発生するようになったら、図13(a)及び図13(b)に示すように、該保水体12を、毛髪Hが巻き付けられた毛髪巻き付け具2の中空部21内に挿入する。その後の作業は、前述した第1実施と同様である。第5実施形態によっても第1実施形態と同様の効果が奏される。
【0066】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。前述した一の実施形態のみが有する部分は、すべて適宜相互に利用できる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。以下、本発明を更に具体的に説明する。
【0068】
〔実施例1〕
図1に示すヘアカーラー(第1実施形態のヘアカーラー)と基本構成が同じであるヘアカーラーを作製し、これを実施例1のサンプルとした。
蒸気温熱発生具に関し、芯部材として厚さ0.2mmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用い、発熱体として湿式抄造により製造されたシート状物を用い、収容体としてJIS P8117で規定する通気度が1050cc/(m2・24hr)の通気性シートからなる収容体を用い、把持部(断熱材)としてスポンジを用いた。発熱体としての前記シート状物は、鉄粉80質量%、パルプ10質量%及び活性炭10質量%を含有し、坪量250g/m2、寸法90mm×45mmの矩形形状のシート状物であり、4枚の該シート状物を重ね合わせて積層体とし、該積層体を丸めて筒状としたものを、前記芯部材と共に前記収容体内に収容し、密封して蒸気温熱発生具とした。該蒸気温熱発生具の外径は22mm、軸方向の全長は100mmであった。また、毛髪巻き付け具の外径は25mm、軸方向の全長は80mmであった。
前記蒸気温熱発生具は、前記測定方法による水蒸気放出量が1.7mg/(cm2・min)であり、また、発熱状態においてその表面温度が70℃以上となる発熱性能を有していた。
【0069】
〔実施例2〕
蒸気温熱発生具の外径を18mm、毛髪巻き付け具の外径を20mmにそれぞれ変更した以外は実施例1と同様のヘアカーラーを作製し、これを実施例2のサンプルとした。
【0070】
〔評価〕
各実施例のヘアカーラーを用いて、下記クセ付け作業1〜3それぞれに従って、毛髪のクセ付け(カール付け)を行った。毛髪として、長さ200mm、重さ0.9gの人毛を用いた。下記クセ付け作業1〜3によって得られた、カール付けされた毛髪のカール度を次式により算出した。その結果を下記表1に示す。
【0071】
カール度=(L0−L)/L0
式中、L0は、カール付けされる前の毛髪の長さ(単位:mm)であり(図14(a)参照)、Lは、カール付けされた後の毛髪の見掛け長さ(単位:mm)である(図14(b)参照)。カール度が大きいほど、毛髪が強固にカール付けされたことを意味し、高評価となる。
【0072】
<クセ付け作業1>
クセ付け作業1は、前述した第1実施形態のヘアカーラー1Aの使用方法に従って行うもので、蒸気温熱のON−OFF操作を実施する。毛髪に蒸気温熱を付与する時間(蒸気温熱ON時間)を2分、その後の蒸気温熱発生具の毛髪巻き付け具からの取り外しによる、毛髪の除熱乾燥時間(蒸気温熱OFF時間)を1分とする。
【0073】
<クセ付け作業2>
クセ付け作業2は、毛髪に水蒸気を付与せずに熱のみを付与してクセ付けを行うものであり、主として、クセ付け作業1における蒸気温熱(水蒸気を伴う熱)による毛髪のクセ付け効果の有効性を評価するための比較態様である。具体的には、前述した第2実施形態のヘアカーラー1Bにおいて、蒸気温熱発生具5(発熱体33)の通気部対応部50の外周面(毛髪巻き付け具2との対向面)を非通気性にし、且つ毛髪巻き付け具2の内周面を通気性にし、こうして改造されたヘアカーラー1Bを用いて、クセ付け作業1と同様のクセ付け作業を行う。クセ付け作業2において、毛髪に熱を付与する時間を2分、その後の毛髪の除熱時間(毛髪巻き付け具から蒸気温熱発生具を取り外し、該毛髪巻き付け具を毛髪に巻きつけた状態で放置する時間)を1分とし、該除熱時間経過後、直ちに毛髪から毛髪巻きつけ具を取り外して該毛髪のカール度を測定する。
【0074】
<クセ付け作業3>
クセ付け作業3は、クセ付け作業1において蒸気温熱OFF時間を実質的に確保せずにクセ付けを行うものであり、主として、クセ付け作業1における蒸気温熱のON−OFF操作による毛髪のクセ付け効果の有効性を評価するための比較態様である。具体的には、クセ付け作業1において、所定の蒸気温熱ON時間(2分間)の経過後、直ちに毛髪巻き付け具からの蒸気温熱発生具を取り外し及び毛髪からの該毛髪巻きつけ具の取り外しを行い、該毛髪のカール度を測定する。
【0075】
【表1】

【0076】
表1に示す結果から明らかなように、前述した蒸気温熱のON−OFF操作を実施したクセ付け作業1は、斯かる操作を実施しない他のクセ付け作業2及び3に比して、毛髪のカール度が大きく、毛髪に強固なクセ付けを施すことができた。クセ付け作業2は、主として、毛髪に水蒸気を付与せずに熱のみを付与してクセ付けを行ったため、また、クセ付け作業3は、主として、蒸気温熱OFF時間を実質的に確保しなかったため、何れも、クセ付け作業1に比して毛髪のカール度が低い結果となった。以上のことから、毛髪に強固なクセ付けを施す上で蒸気温熱のON−OFF操作は有効であり、斯かる操作を実施可能に構成された本発明のヘアカーラーの有効性が明らかである。
【符号の説明】
【0077】
1A〜1E ヘアカーラー
2,7,10 毛髪巻き付け具
3,5,8,11 蒸気温熱発生具
4,6 蒸気温熱発生具の包装体
9,13 支持部材
12 保水体
20 通気部
21 通気部の中空部
30 通気部対応部
31 通気部非対応部
36 把持部
37 断熱材
38 帯状部材
70,80 非通気部
71,81 非通気部の中空部
H 毛髪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛髪が巻き付けられる毛髪巻き付け具と、該毛髪巻き付け具に対して着脱自在になされ、水蒸気を伴う熱を発生する蒸気温熱発生具とを含んで構成されるヘアカーラーであって、
前記蒸気温熱発生具に、該蒸気温熱発生具の前記毛髪巻き付け具に対する着脱操作をする際に把持される把持部が設けられており、
前記把持部は、発熱状態の前記蒸気温熱発生具における該把持部を指で直接把持して前記着脱操作を実施できるように、該把持部の材質及び/又は配置位置が調整されているヘアカーラー。
【請求項2】
前記毛髪巻き付け具は、軸方向の少なくとも一端が開口した中空筒状で且つ周面部が通気性を有している、通気部を具備しており、
前記蒸気温熱発生具は、使用時に前記通気部の中空部内に装着される通気部対応部と、該通気部対応部に連接され且つ使用時に該中空部の軸方向外方に位置する通気部非対応部とを有しており、
前記把持部が前記通気部非対応部に配置されている請求項1記載のヘアカーラー。
【請求項3】
前記毛髪巻き付け具は、軸方向の少なくとも一端が開口した中空筒状で且つ周面部が非通気性を有している、非通気部を具備しており、
前記通気部と前記非通気部とは、それぞれの軸方向を一致させ且つそれぞれの中空部が互いに連通するように連接されており、
前記蒸気温熱発生具を、前記通気部の中空部から前記非通気部の中空部へ、又は前記非通気部の中空部から前記通気部の中空部へスライド可能になされている請求項2記載のヘアカーラー。
【請求項4】
前記毛髪巻き付け具は、軸方向の少なくとも一端が開口した中空筒状で且つ周面が非通気性を有している、非通気部を具備しており、
前記非通気部は、前記通気部の中空部内に装着された前記蒸気温熱発生具と該通気部との間に挿入可能になされている請求項2記載のヘアカーラー。
【請求項5】
前記蒸気温熱発生具は、空気との接触により発熱可能な発熱体を具備している請求項1〜4の何れかに記載のヘアカーラー。
【請求項6】
前記発熱体は、湿式抄造により製造されたシート状物からなる請求項5記載のヘアカーラー。
【請求項7】
前記蒸気温熱発生具は、水を含浸可能な保水体を具備しており、該保水体に湯を含浸させることにより、該保水体から水蒸気を伴う熱が発生するようになされている請求項1〜6の何れかに記載のヘアカーラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−206385(P2011−206385A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78725(P2010−78725)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】