説明

ヘアキャッチャー

【課題】良好に髪の毛等を下流側に集めることができる手入れが容易なヘアキャッチャーを提供する。
【解決手段】上流側から下流側に向かって下傾状をなし、上流側の最も高い外周側42から中央の軸部41に向かって略水平状に隆起した隆起部44が形成されており、この隆起部44により排水時の髪の毛の回転が遮られて、髪の毛が上流側から下流側へ滑り落ちて流れ、髪の毛が軸部41に絡み付くことを防いで髪の毛等を下流側に集めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手入れが容易なヘアキャッチャーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているようなヘアキャッチャーが存在し、このヘアキャッチャーは、簾部の上面に整流板を突設して構成したものである。
このヘアキャッチャーでは、髪の毛が中央の栓軸に絡み付かないので、簾部に絡んだ髪の毛は指で摘んで上に引き上げるだけで容易に抜き取り除去することができるものとしている。
【特許文献1】特開2002−121797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記特許文献1に開示されているヘアキャッチャーの構造では、整流板が三角形状であるため、髪の毛を含んだ排水が流れる時に、整流板の外周側では髪の毛が外周に沿って回転しやすく、そのため、髪の毛の回転を確実に止めることができずに、髪の毛が栓軸に絡み付く場合があるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、髪の毛の中央部への絡み付きをなくし、良好に髪の毛をまとめて除去できる手入れが容易なヘアキャッチャーの提供を目的とし、この目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
本発明のヘアキャッチャーは、上流側から下流側に向かって下傾状をなし、上流側の最も高い外周側から中央の軸部に向かって略水平状に隆起部が形成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明のヘアキャッチャーでは、上流側の最も高い外周側から中央の軸部に向かって略水平状に隆起部が形成されているため、髪の毛を含んだ排水が上流側から下流側に流れる時に、髪の毛が回転することを隆起部で良好に防ぐことができ、髪の毛は上流から下流に向かって回らずに流れ、ヘアキャッチャーの下流側に髪の毛をまとめることができ、まとめられた髪の毛を容易に除去してヘアキャッチャーの手入れができる。
【0006】
また、本発明のヘアキャッチャーは、上流側から下流側に向かって下傾状をなし、上流側の高い位置から更に立ち上げて外周側から中央の軸部に向かう仕切部が形成されていることを要旨とする。
こうすれば、外周側から中央の軸部に向かって仕切部が立ち上げ形成されているため、この仕切部により髪の毛の回転を確実に防いで、髪の毛を良好に下流側へ流し、下流側で髪の毛をまとめて捕捉することができるものとなる。また、ヘアキャッチャーの手入れ時には、仕切部を指で摘んで持ち上げることができ、手入れがしやすいものとなる。
【0007】
また、本発明のヘアキャッチャーにおいて、外周側の全域に亘って、外側へ向けて斜め上方へ立ち上がる外周立上部が形成されている構成とすることもできる。
こうすれば、外周立上部により髪の毛やゴミが逃げることがなく、外周立上部と傾斜底面との折り目部分に髪の毛やゴミを集めてまとめることができる。
また、外周立上部には傾斜があるため、まとめられた髪の毛やゴミを取り出しやすいものとなる。
【0008】
また、本発明のヘアキャッチャーにおいて、前記上流側から下流側に向かって下傾状をなす面上には、前記軸部より上流側に上流側孔を、前記軸部より下流側に下流側孔を、それぞれ設けるとともに、上流側孔は下流側孔よりも小径に設定されている構成とすることもできる。
こうすれば、下流側孔を大きくしたことによって排水の流れが良くなり、排水の流れに沿って下流側孔の近傍に髪の毛やゴミが溜まりやすくなる。一方、下流側孔上に髪の毛やゴミが溜まって排水の流れが悪くなっても、上流側孔から排水が行われるので良好な排水が維持できる。また、上流側孔は下流側孔よりも小径でかつ上流にあるため髪の毛やゴミが溜まりにくく、排水性能の維持には効果的である。
【0009】
また、本発明のヘアキャッチャーにおいて、前記上流側孔と前記下流側孔の間に孔無し部を設けた構成とすることもできる。
こうすれば、排水用の孔内の清掃は困難であるが、孔無し部を設けて孔の数を制限することで清掃性が向上する。また、孔無し部を設ける位置については、下流側の孔はゴミを含む排水の処理を行うため、なるべく下方に、上流側の孔は、下流側の孔にゴミが溜まり孔を閉塞しても排水を行えるようにするため、なるべく上方にあることが望ましいので、上方でも下方でもない部分、即ち上方と下方の間に設けると好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
図1は、洗面器の斜視構成図であり、洗面器1のボウル部1aの底には上下に貫通して排水孔1bが形成されている。この排水孔1bには、ポップアップ弁2が上下方向に開閉可能に取り付けられる。
ポップアップ弁2の下面中央部から軸3が垂設され、この軸3には、ヘアキャッチャー4とオーバーフローキャッチャー5が設けられている。
【0011】
図2の拡大断面構成図で示すように、ヘアキャッチャー4とオーバーフローキャッチャー5は、排水孔1bの下部に設けられた排水器具6内に収納される。
排水器具6は、本体筒部6aの下部に縮径部6bが一体形成され、本体筒部6aの上端には、外方向へ突出して止水鍔部6cが一体形成されており、この止水鍔部6cがビス7によりボウル部1aの下面に取り付け固定される。
【0012】
この排水器具6には、オーバーフローホース接続部6dが一体形成されており、このオーバーフローホース接続部6dに袋ナット8を介してオーバーフローホース9が接続され、ボウル部1aのオーバーフロー水が、このオーバーフローホース9を通り流入されるものである。また、縮径部6bの下端には袋ナット10を介してトラップ管11が接続されている。
【0013】
このトラップ管11の上端付近には、外側からレリース12が挿通されて前記軸3の下端に連結されており、レリース12の他端は、取付固定部13に設けられた操作ボタン14に連繋されており、この操作ボタン14を操作することで、レリース12を介して軸3を上下方向に移動させてポップアップ弁2を開閉できるように構成されている。
【0014】
ポップアップ弁2の下方に設けられたヘアキャッチャー4の第1実施例を図3〜図6に示す。
図3は、ヘアキャッチャーの斜視構成図であり、図4は、前面側から視たヘアキャッチャーの構成図であり、図5は、図3のA方向から視た矢視側面図である。また図6は、図5の平面構成図である。
【0015】
ヘアキャッチャー4は、中央部に上下方向に円筒状の軸部41が設けられ、この軸部41内は軸3を通すことのできる軸孔41aとなっている。ヘアキャッチャー4の外周側には、全域に亘って、外側へ向けて斜め上方へ立ち上がる外周立上部42が形成されており、ヘアキャッチャー4の底面は、図5に示すように、上流側から下流側に向かって緩やかに湾曲して下傾状をなす傾斜底面43となっている。
この傾斜底面43の上流側の最も高い外周側から中央の軸部41に向かって略水平状に隆起した隆起部44が形成されており、この隆起部44の両側は傾斜面45,45となって、この各傾斜面45,45にそれぞれ複数の上流側孔46,46が上下に貫通形成されている。
【0016】
また、軸部41より下流側には、上下に貫通して複数の下流側孔47,47が貫通形成されている。また、この複数の下流側孔47と前記上流側孔46間には、孔の存在しない孔無し部48,48が外周側から中央の軸部41に向かって形成されている。
なお、本例では、上流側孔46および下流側孔47は丸孔で形成されているが、上流側孔46は下流側孔47よりも小径に形成されている。
【0017】
このようなヘアキャッチャー4においては、洗面器のボウル部1a内の水を排水孔1bから排水する際に、排水中に含まれている髪の毛は回転しながら下流側へ流れるが、本例のヘアキャッチャー4では隆起部44が上流側に立ち上げて形成されているため、髪の毛はこの隆起部44に遮られて回転することができず、髪の毛は傾斜底面43に沿って上流側から下流側に流れ落ちることとなり、外周立上部42により髪の毛やゴミが逃げることがなく、髪の毛やゴミを良好に下流側の外周立上部42と傾斜底面43との折り目部分に集めてまとめることができる。
【0018】
なお、上流側孔46は小径であるため髪の毛が抜け落ちることが少なく、髪の毛は良好に下流側に滑り落ちることができ、良好に下流側に集められる。
なお、髪の毛は回転が止められるため、軸部41の回りに髪の毛が絡み付くことが良好に防がれこととなる。
【0019】
なお、下流側に集められた髪の毛やゴミにより下流側孔47が詰まった場合でも、上流側孔46は詰まることがないため、この上流側孔46を通し良好に排水することができ、排水能力は持続される。
このように髪の毛やゴミを下流側に集めることができるため、ヘアキャッチャー4を排水孔1bから上方へ引き上げて、下流側に集まった髪の毛を指で摘んで除去することができ、掃除が容易なものとなる。なお、外周立上部42には傾斜があるため、まとめられた髪の毛やゴミを取り出しやすいものとなる。また、排水用の孔内の清掃は困難であるが、孔無し部48を設けて孔46,47の数を少なくしたため、清掃性が向上し、ヘアキャッチャー4の手入れがしやすいものとなる。
【0020】
次に、図7〜図10はヘアキャッチャーの第2実施例を示す。
第2実施例のヘアキャッチャー4は、中央部に上下方向に延びて軸孔41aを有する軸部41が形成されており、外周側には、外側へ向かって上向きに傾斜した外周立上部42が形成されている。中央の軸部41の回りは、上方へ盛り上げられて盛り上がり部49が形成されており、この盛り上がり部49と外周立上部42との間には凹み状に谷部50が形成されている。この盛り上がり部49,谷部50,外周立上部42には、複数の孔52が上下に貫通形成されている。
【0021】
本例のヘアキャッチャー4においても、底面は上流側から下流側へ向かって下傾した傾斜底面43となっており、この傾斜底面43の最も高い上流側から更に上方へ板状に立ち上げて、外周立上部42から軸部41に向かって延びる仕切部51が形成されており、この仕切部51の上面中央部には、凹み状に凹部51aが形成されている。
【0022】
このような第2実施例のヘアキャッチャー4においても、上流側から下流側へ向かって流れる排水中の髪の毛は回転しながら流れるが、仕切部51が立ち上げて形成されているため、この仕切部51に遮られて髪の毛の回転が止まり、髪の毛は傾斜底面43の傾斜に沿って上流側から下流側に流れ落ちてゆき、低い下流側の谷部50に良好に髪の毛やゴミがまとめられる。なお、髪の毛は回転が止められるため、軸部41の回りに髪の毛が絡み付くことが良好に防がれこととなる。
【0023】
ヘアキャッチャー4を排水孔1bから上方へ取り出す際には、仕切部51の凹部51a付近を指で摘んで良好に引き上げることができ、まとめられた髪の毛やゴミを容易に除去することができて、ヘアキャッチャー4の手入れが容易なものとなる。
なお、本例においても、髪の毛やゴミが下流側に堆積した状態でも、上流側に形成されている孔52を通り良好に排水できるため、排水能力は良好に維持される。
なお、本例において、軸部41より上流側の孔52を、軸部41より下流側の孔52よりも小径に設定しても良い。また、上流側の孔52と下流側の孔52の間に孔無し部を設けた構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】洗面器の斜視構成図である。
【図2】洗面器の排水孔の底側に取り付けられた排水器具の断面拡大構成図である。
【図3】第1実施例のヘアキャッチャーの斜視構成図である。
【図4】図3の前面側から視た正面構成図である。
【図5】図3のA方向から視たA矢視側面図である。
【図6】図5の平面構成図である。
【図7】第2実施例のヘアキャッチャーの斜視構成図である。
【図8】図7の前面側から視た正面構成図である。
【図9】図7のA方向から視たA矢視側面図である。
【図10】図9の平面構成図である。
【符号の説明】
【0025】
1 洗面器
1a ボウル部
1b 排水孔
2 ポップアップ弁
3 軸
4 ヘアキャッチャー
5 オーバーフローキャッチャー
6 排水器具
41 軸部
41a 軸孔
42 外周立上部
43 傾斜底面
44 隆起部
45 傾斜面
46 上流側孔
47 下流側孔
48 孔無し部
49 盛り上がり部
50 谷部
51 仕切部
51a 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側から下流側に向かって下傾状をなし、上流側の最も高い外周側から中央の軸部に向かって略水平状に隆起部が形成されていることを特徴とするヘアキャッチャー。
【請求項2】
上流側から下流側に向かって下傾状をなし、上流側の高い位置から更に立ち上げて外周側から中央の軸部に向かう仕切部が形成されていることを特徴とするヘアキャッチャー。
【請求項3】
外周側の全域に亘って、外側へ向けて斜め上方へ立ち上がる外周立上部が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のヘアキャッチャー。
【請求項4】
前記上流側から下流側に向かって下傾状をなす面上には、前記軸部より上流側に上流側孔を、前記軸部より下流側に下流側孔を、それぞれ設けるとともに、上流側孔は下流側孔よりも小径に設定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3何れかに記載のヘアキャッチャー。
【請求項5】
前記上流側孔と前記下流側孔の間に孔無し部を設けたことを特徴とする請求項4に記載のヘアキャッチャー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−133207(P2010−133207A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312771(P2008−312771)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【出願人】(000157212)丸一株式会社 (158)
【Fターム(参考)】