説明

ヘキサシアノメタレート及びオクタシアノメタレートをベースとするナノコンポジット固体材料、それを作製する方法、並びに該材料を用いて無機汚染物質を固定する方法

【課題】従来技術の問題を克服する、金属のヘキサシアノフェレート、又は金属のシアノメタレートをベースとする無機汚染物質を結合するコンポジット固体材料を提供すること。
【解決手段】本発明のナノコンポジット固体材料は、カチオンMn+(式中、Mは遷移金属であり、nは2又は3である)及びアニオン[M’(CN)x−(式中、M’は遷移金属であり、xは3又は4であり、mは6又は8である)を含むCN配位子を有する金属配位ポリマーのナノ粒子を含むナノコンポジット固体材料であって、前記配位ポリマーの前記Mn+カチオンが、多孔質ガラス製の支持体の孔内に化学的に付着した有機グラフトの有機基に有機金属結合を介して結合しており、前記多孔質ガラスの孔が、無孔ホウケイ酸ガラスのホウ酸相の選択的化学エッチングによって得られ、前記無孔ホウケイ酸ガラスの組成が相図SiO−NaO−Bの偏析領域に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘキサシアノメタレート(cyanaometallates)及びオクタシアノメタレートをベースとするナノコンポジット固体材料に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、金属カチオン、並びにヘキサシアノメタレート及びオクタシアノメタレートのアニオン、とりわけヘキサシアノフェレート及びオクタシアノフェレートのアニオンを含むCN配位子を有する金属配位ポリマーのナノ粒子を含むナノコンポジット固体材料であって、上記ナノ粒子が、多孔質固体支持体の孔の内部に化学的に付着した有機グラフトに有機金属結合を介して結合している、ナノコンポジット固体材料に関する。
【0003】
本発明は、上記固体材料を作製する方法にも関する。
【0004】
本発明は、溶液中に含有される無機汚染物質を上記材料を用いて固定(結合)する方法にも関する。
【0005】
本発明の技術分野は概して、無機質固定剤(結合剤)の技術分野であると定義することができる。
【背景技術】
【0006】
多くの無機質固定剤(結合剤)が、様々な産業、特に原子力産業からの様々な媒体及び排出物中に含有される金属カチオン等の様々な無機汚染物質を固定(結合)するために使用されている。
【0007】
原子力産業では実際に、放射能が低いか又は中程度の排出物を処理するため、とりわけ放射性物質(activities)を除染し、廃棄する際に、放射能を濃縮し、縮小された空間内に閉じ込めるために、溶液中に存在する放射性同位体をイオン交換又は共沈によって無機固体に固定(結合)する減容による浄化技法を用いている。
【0008】
現在処理されている量は莫大であり、フランスでは年間数万mに達する。処理されている液体はまた、原子力発電所のプロセス一次冷却水と放射性同位体に接触する様々な排出物との両方が問題となるため、性質が多様である。
【0009】
したがって、処理を要する放射性排出物の例としては、以下のものに言及することができる:
使用済み核燃料の処理作業による排出物、
蒸発濃縮物、
使用済み核燃料の貯蔵池からの排出物、
施設、監視センター、管理区域の洗面設備等のすすぎ及び洗浄による排出物等の全ての洗浄排出物及びすすぎ排出物、
樹脂を再生するための溶液等。
【0010】
とりわけ原子力産業に適用される従来の無機質固定剤(結合剤)の中でも、様々な化学形態の溶液中に存在する元素(例えばAg、Sb、Ra又はPb)を固定(結合)するために使用される、Manox(登録商標)タイプの酸化マンガンをベースとする製品、及び超ウラン元素を共沈によって固定(結合)するために使用される水酸化鉄に言及することができる。しかしながら、水性の排出物からのセシウムの分離は、これら従来の無機質固定剤(結合剤)では、セシウムに対する親和性が低いため困難である。
【0011】
現在、液体排出物の放射性セシウムの除染は重大な問題である。実際に、30年近くの半減期を有する137Cs及び約2×10年の半減期を有する135Csがウラン核分裂生成物の中で最も豊富であり、約2年の半減期を有する134Csが原子力発電所の放射化生成物である。
【0012】
それらについては多くの遷移金属のヘキサシアノフェレート(II)及びヘキサシアノフェレート(III)が、広いpH範囲にわたってセシウムに対する非常に強い親和性を有し、照射に対して良好な耐性を有する[1][2]。
【0013】
この理由から、ヘキサシアノフェレート、とりわけCu、Ni及びCoのヘキサシアノフェレート(II)等の不溶性ヘキサシアノフェレートに加え、アルカリ金属のヘキサシアノフェレートが、特に原子力産業において金属イオンを分離、回収及び固定(結合)するために現在最も使用されている無機質固定剤(結合剤)の1つである。これらの不溶性ヘキサシアノフェレート又はアルカリ金属のヘキサシアノフェレートは、様々な工業排出物及び原子炉排出物、例えば照射済み燃料の再処理により生じる強酸性溶液、及び上記で既に言及した溶液から半減期の長いセシウム137等の放射性アルカリ金属のイオンを固定(結合)するイオン交換体として特に使用されている。
【0014】
したがって、不溶性ヘキサシアノフェレートは現在、液体放射性廃棄物を共沈によって処理する方法の大半に利用されている。
【0015】
カリウムニッケルヘキサシアノフェレート(II)(KNTFC)は、Cs除染に関して最も研究されているイオン交換体である。セシウムの抽出は、処理される溶液のカリウムとCsとの間での1対1のイオン交換によって達成される。この材料は、工業的にはNi(NOとKFe(CN)との共沈によって得られる[3]。
【0016】
しかしながら、ヘキサシアノフェレートは高い選択性を有する場合、安定性が低く、機械的強度が低いという本質的な欠点を有する。それにより固定剤(結合剤)が占める体積が減少し、場合によってはカラムが詰まり、溶液のカラムへの通過回数が制限されるために、ヘキサシアノフェレートをカラム内に充填することが困難になり、更には不可能になる。
【0017】
ヘキサシアノフェレートは粉末形態に作製すると、機械的に不安定な細粒を形成し、機械的に脆弱であるが、緻密な塊の形態では、その比表面積が小さいことから反応速度(reaction kinetics)が低下し、その効率が強く制限されることが多い。
【0018】
実際には、緻密な形態と高い反応速度とを同時に実現することは一般に困難である。
【0019】
フィンランドのHarjulaらは、工業規模でカラム内で行われる除染方法に無孔(塊状)ヘキサシアノフェレートを使用することを初めて提案した[4]、[5]。これらは無孔(塊状)カリウムコバルトヘキサシアノフェレート(II)であるが、詰まりのために限られた体積の溶液を処理することにしか適用されない。
【0020】
カラム内で行われる除染方法にこれらのヘキサシアノフェレート材料を使用するために、その機械的強度を増大させる目的で、従来技術においては少なくとも以下の3つの解決策が提案されている:
有機樹脂又はベントナイト等の固体支持体上に沈殿させることによって、これらの材料を合成することからなる第1の解決策、
これらの材料の粒子をポリ(酢酸ビニル)等の不溶性ポリマー内に沈殿させることからなる第2の解決策、
最後に、これらの材料の粒子を、例えばメソ多孔質シリカタイプの多孔質無機支持体内に直接沈殿させることからなる第3の解決策。
【0021】
ヘキサシアノフェレートと固体支持体とを含むコンポジット材料が、それによって得られる。この固体支持体は有機支持体であっても、又は無機支持体であってもよい。
【0022】
有機支持体を有するコンポジット材料に関心を向けると、とりわけ無孔(塊状)ヘキサシアノフェレートを試験した後、無機/有機ハイブリッドイオン交換樹脂の合成に有機ポリマーと混合したヘキサシアノフェレートの微粒子を使用することを提案しているHarjulaらの文献[6]に言及することができる。合成方法の説明は提示されていない。
【0023】
有機支持体を有するこれらのコンポジットの安定性はより良好であるが、大半の有機化合物中でのその存在は、とりわけ放射線分解のために使用可能性を強く制限し、これらの材料の処分の問題を引き起こしている。
【0024】
特に、大量の有機化合物の存在は、焼成中に直面する困難及びガラスの合成スループットの低下のために、ガラス化タイプの従来の経路によるこれらの廃棄物の調整を制限している。
【0025】
さらに、無機質部分は常に、固定(結合)の不可逆性という特性を有している。
【0026】
ここで、無機の無機質支持体を有するコンポジット材料に関心を向けると、支持体内での共沈による合成、ゾル・ゲル経路を介した合成、多孔質無機支持体内での直接合成、又は他の経路を介した合成によって作製することができる。
【0027】
支持体内での共沈による合成方法は、カラムプロセスを用いたCs除染のために無機支持体上での直接経路を介した共沈を提案する、Mimuraらの文献[7]に記載されている。カリウムニッケルヘキサシアノフェレート(II)(KNiFC)を、Ni(NO溶液、次いでKFe(CN)溶液でのマクロ孔の連続的な含浸によってシリカゲル内で合成する。次いで、KNiFCをシリカゲルマトリックス内に均一に分散させ、KNiFC充填率を含浸サイクルの回数によって制御する。
【0028】
より近年では、Ambashtaらの文献[8]が、磁場によって補助される、放射性排出物からのCsの除染にマグネタイトカリウムニッケルヘキサシアノフェレートコンポジットを使用することを提案している。このコンポジットは、マグネタイト粒子上での水性媒体中のKNiFCの共沈によって得られる。この著者らによる磁性錯体は、従来のKNiFCと同じ特性を有するが、これらの粒子の磁気的性質のために、Cs分離後の粒子のはるかに容易な回収が可能となる。
【0029】
支持体内での共沈によるこのタイプの合成では、最終生成物の組成の制御は不十分であり、その特性の再現性はあまり高くない。実際に、共沈によるヘキサシアノフェレートの沈着量の制御は、無機支持体上での無機質結合剤の付着が機械的にしか達成されず、したがってヘキサシアノフェレート固定剤(結合剤)の支持体への結合が弱くなるため、極めて不十分である。したがって、固定剤(結合剤)が除染工程中に容易に脱離する可能性がある。この合成はまた体系的に大量のヘキサシアノフェレートを利用するが、このことはそれにより生じる廃棄物の処理及び調整にとって厄介である。
【0030】
ゾル・ゲル経路を介した直接合成方法は、シリカゾルのゲル化中に直接ヘキサシアノフェレートの沈殿を行うことが提案される、Mardanらの文献[9]に記載されている。そのために、シリカゾルを初めにKFe(CN)の溶液の存在下でゲル化する。次に、得られるヒドロゲルSiO−KFe(CN)をCo(NO)のアセトン溶液と混合して、ヒドロゲルSiO−KCoFCを得る。次いで、このコンポジットを洗浄した後、115℃で風乾する。およそ180m/gの孔表面積、0.005μm〜0.01μmの孔径、およそ0.4cm/gの孔体積を有する多孔質SiO−KCoFCコンポジットの粒子がそれにより得られる。
【0031】
得られるヘキサシアノフェレートの組成の制御は不十分である。SiO 1g当たりおよそ0.15gのKCoFCという比率で、組成K1.69Co0.93Fe(CN)を有するコンポジットが得られる。このコンポジットを、カラム上ではなくバッチ方法でモデル溶液(1M HCl、10ppmのCsを有する)中で試験する。これらの条件下では、コンポジット1g当たり5.73×10mlのKdが得られる。
【0032】
このタイプのハイブリッド無機−無機材料の別の例が、より近年に文献[10]及び文献[10bis]で提案されており、その後市販されている。ここでも、合成方法の説明は簡潔である。
【0033】
先述のように、これは水酸化ジルコニウムゲル内でのカリウムニッケルヘキサシアノフェレートの直接合成であるようである。この論文の著者らによると、塩基性溶液(すなわちpH>12の溶液)への適用のために水酸化ジルコニウムが選択された。得られる材料(「Thermoxid−35」と呼ばれる)は、直径0.4mm〜1mmの細粒の外観をしており、およそ33質量%のZrO、38質量%の水及び28質量%のカリウムニッケルヘキサシアノフェレートを含有する。
【0034】
この材料は、孔体積がおよそ0.35cm/g〜0.4cm/g、孔サイズがおよそ6nmの空隙を有する。このコンポジットを、1mol/LのNaClの存在下で、pH6.2〜9.6の溶液中0.01mmol/L〜2.0mmol/Lの濃度でCsの吸着について試験した。いずれの場合においても、1.0×10cm/gを超えるKdが得られる。
【0035】
共沈による標準的な合成と同様、ゾル・ゲル経路を介したin situでの共沈によるコンポジットの加工にも、最大で30%に達し得る大量のヘキサシアノフェレートだけでなく、無視できない量の水が使用される。これは、それにより生じる廃棄物の処理及び調整の問題を引き起こし得る。実際に、大量の水は貯蔵中の放射線分解による水素の放出を引き起こす可能性がある。
【0036】
さらに、実験室での試験によって、平衡に達するには約300時間が必要とされるため、「Thermoxid」上での吸着速度が非常に遅いことが示された。
【0037】
最後に、ヘキサシアノフェレートに富んだこれらの化合物の予想されるガラス化が、有毒なシアン化水素酸の発生(evolvement)を引き起こし、それにより固定(結合)されたセシウムの揮発が促進され、そのため除染が不能となる可能性がある。
【0038】
多孔質無機支持体内でのヘキサシアノフェレートの直接合成は、アニオン交換ポリマー(その上に不溶性金属ヘキサシアノフェレートが薄層の形態で固定(結合)される)で被覆された多孔質シリカビーズの使用を提案する、Loos Neskovicらの文献[11]、文献[12]及び文献[13]に記載されている。
【0039】
このコンポジットにおいては、金属ヘキサシアノフェレートアニオンは、ポリマー上に静電相互作用によって吸着される。
【0040】
このコンポジットを合成するために使用される方法は以下の通りである:シリカ等の多孔質無機質の支持体を、例えばポリビニルイミダゾール又はポリアミンタイプのポリマー溶液に含浸させることが、まず初めに達成される。次に、それにより被覆された支持体をヨウ化メチル等の架橋剤で架橋する。任意でアンモニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基等のカチオン基をこのポリマー上に生じさせることが可能である。
【0041】
これらの工程の終了時に、アニオン交換ポリマーの膜で被覆された固体支持体が得られる。
【0042】
後続工程は、この材料をアルカリ金属(ナトリウム又はカリウム)ヘキサシアノフェレート(II)又は(III)の水溶液に含浸させることからなる。アニオン部分Fe(CN)4−の固定(結合)が、それによりポリマーのカチオン基上に得られる。この固定(結合)は、静電型の結合を形成することによって達成される。洗浄後の後続工程は、この固体支持体を塩、例えば硝酸銅(その金属は、得ることが望まれる不溶性ヘキサシアノフェレートに相当する)に浸漬することからなる。不溶性金属(例えば銅又はニッケル)ヘキサシアノフェレートの重量含有率は、シリカ等の無機質支持体の質量を基準にしておよそ3質量%である。
【0043】
次いで、この材料をカラム内に充填することができ、これをヘキサシアノフェレートによって選択的に固定(結合)されるセシウムに富んだ溶液を除染する方法に連続的に適用することができる。これらの材料の機械的安定性は非常に良好であり、広範囲のpHにわたって使用することができる。
【0044】
それにもかかわらず、大量の有機ポリマーの存在は、有機ポリマーが無機支持体の全体を被覆するため、一方でセシウムの固定(結合)後の放射線分解の問題、他方で処分の問題を引き起こす。
【0045】
実際に、ガラス化を受けた場合に、相当量の有機物の存在が本ガラス化プロセスを行ううえで問題となるため、抽出後のこの材料から何が生じるかを知ることの問題が生じている。
【0046】
著者らはこれらの材料をガラス化することができると述べている。しかし、ガラス化中に、大量のポリマーの存在によって問題が発生する可能性があり、一方でこのガラス化工程中の高い適用温度によってセシウムの揮発が引き起こされる可能性がある。
【0047】
言い換えると、Loos−Neskovicらの文献に記載される方法では、一方で「アニオン交換体」ポリマーであり、任意で架橋化合物である幾つかの有機化合物が使用される。無視できない量のこれらの有機化合物の存在は、それにより生じる廃棄物を処理及び調整するうえで問題となる。実際に、一方ではこれらの化合物の放射線分解による水素の発生が起こる可能性があり、他方では予想されるこれらの材料の直接的なガラス化によって、分解によりこれらのポリマーが除去される場合、気体の発生が起こり、さらに支持体内に閉じ込められたCsが奪われる可能性がある。
【0048】
ごく最近では、Chin Yuang Changらの文献[14]において、官能基化されたメソ多孔質シリカ支持体の使用が、Ni2+及びFe(CN)4−の連続的な吸着によって、多層のカリウムニッケルヘキサシアノフェレート(NiHCF=KNiFe(CN))をそれに挿入するために提案されている。官能基化されたシリカ支持体は、プロピルエチレンジアミントリアセテートによって官能基化されたシリカ(PEDTAFS)である。実際に、プロピルエチレンジアミントリアセテート(PEDTA)はNi(II)をキレート化することができ、したがって多層のNiHCFの成長の固定点として使用されている。この材料を作製するために、NiHCFをPEDTAFS粉末内で、初めにこの粉末をNi(NO)の溶液に浸漬することによって合成する。次に、濾過及びすすぎの後、粉末を続いてK(Fe(CN))の溶液に浸漬した後、再度濾過して、すすぐ。これらの工程を複数回、すなわち5回繰り返す。セシウム吸着試験はバッチ式で行う。最大3.0Mの他のイオン、すなわちKNO及び/又はNaNOの存在下で、約100ppmのCsを硝酸塩の形態で有する溶液について10mL/gを超えるKdが得られる。しかし、官能基化された多孔質シリカはCsも吸着するという事実も考慮しなくてはならない。
【0049】
この文献に記載される材料のガラス化は、セシウム等の汚染物質の固定(結合)の後、このガラス化工程中に非常に高い適用温度のために、とりわけセシウム等の汚染物質の揮発(volalitilization)及び放出に関連する多くの問題を引き起こす可能性がある。
【0050】
コンポジット材料を合成する他の経路も研究されている。このため、Lin and Cuiの文献[15]は、放射性排出物の処理のための有機−無機ナノコンポジットを記載している。Lin and Cuiは、薄い導電性ポリアニリン膜、及びカーボンナノチューブのマトリックス上に沈着したニッケルヘキサシアノフェレートのナノ粒子からなるこれらの材料を合成するために、電気化学的なアプローチを使用している。この材料は、電気化学によって補助されるイオン交換による除染方法に使用することが意図されている。
【0051】
これらの材料はカラム法に使用することができず、汚染物質の固定(結合)、抽出後の炭素に非常に富んだこれらの材料の処理(処分)は困難である。
【0052】
Folch B.らの文献[16]は、ハイブリッドメソ多孔質シリカ、より具体的には−(CHN官能基を含有するSBA−15及びMCM−41タイプのハイブリッドメソ構造六方晶シリカ内にヘキサメタレート構成要素及びオクタメタレート構成要素を含む、CN配位子を有する配位ポリマーのサイズを制御したナノ粒子(シアノ架橋配位ポリマーナノ粒子)の合成を記載している。
【0053】
得られるコンポジット材料のカチオンの固定(結合)への使用は記載されていない。さらに、このメソ多孔質シリカは機械的強度が極めて不十分であり、それらをカラム内に適用することが妨げられる。
【0054】
したがって、上記の点を考えると、とりわけこれらの無機汚染物質がセシウム等の放射性化合物である場合に、これらの無機汚染物質の固定(結合)後の限られた回数の工程で、これらの汚染物質の揮発、放出のリスクを伴うことなく容易に処理、調整、貯蔵することのできる、金属のヘキサシアノフェレート、又はより一般には金属のシアノメタレートをベースとする無機汚染物質を固定(結合)するコンポジット固体材料が必要とされているようである。これらの固定(結合)された固定化無機汚染物質を、それらを結合した後に保持し、固定(結合)の終了時にコンポジット固体材料が受ける処理(複数も可)にかかわらず、これらの固定化無機汚染物質を再び放出する、再び塩析することのない材料が更に必要とされている。
【0055】
この材料は、それにより連続的な適用を可能にするためにカラム内に充填することが可能となるように更に化学的かつ機械的に安定でなくてはならない。
【0056】
無機汚染物質を結合するこのコンポジット固体材料はまた、優れた結合特性、特に除染特性を有しなくてはならない。
【0057】
一方で、低い比表面積が反応速度の低下をもたらす緻密な形態の製品とは対照的に、高い反応速度に対して良好な機械的安定性を伴う無機汚染物質を固定(結合)する固体材料を得ることが望ましい場合がある。
【0058】
言い換えると、とりわけ優れた機械的安定性及び化学的安定性、強い親和性又は除染係数、大きな反応性並びに良好な選択性を有し、汚染物質の固定(結合)後に汚染物質が放出又は揮発することなく容易に処理することのできる、金属のヘキサシアノフェレート、又はより一般には金属のシアノメタレートをベースとする無機汚染物質を固定(結合)する固体材料が必要とされている。
【0059】
これらの特性は、最小量、いかなる場合にも従来技術のコンポジット無機質固定剤(結合剤)よりも大幅に少ない量の金属ヘキサシアノフェレートタイプの無機質固定剤(結合剤)によって得られるべきである。
【0060】
最後に、完全に再現可能な制御された組成及び特性を有する材料、並びにかかる材料を作製することのできる信頼性がある方法が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0061】
したがって、本発明の目的は、従来技術の無機汚染物質を固定(結合)するコンポジット固体材料の欠点、欠陥、制限及び不利益を有さず、従来技術の材料の問題を克服する、とりわけ上記で言及した必要性及び要件の全てを満たす、金属のヘキサシアノフェレート、又はより一般には金属のシアノメタレートをベースとする無機汚染物質を結合するコンポジット固体材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0062】
この目的及び更なる他の目的は、本発明によると、Mn+カチオン(式中、Mは遷移金属であり、nは2又は3である)及び[M’(CN)x−アニオン(式中、M’は遷移金属であり、xは3又は4であり、mは6又は8である)を含むCN配位子を有する金属配位ポリマーのナノ粒子を含むナノコンポジット固体材料であって、上記配位ポリマーのMn+カチオンが、多孔質ガラス製の支持体の孔内に化学的に付着した(固定された)有機グラフトの有機基に有機金属結合を介して結合している、ナノコンポジット固体材料によって達成される。
【0063】
有利には、Mn+はFe2+、Ni2+、Fe3+又はCo2+であり得る。
【0064】
有利には、M’がFe2+又はFe3+又はCo3+でありmが6であるか、又はM’がMo5+でありmが8であり得る。
【0065】
有利には、アニオン[M’(CN)x−は、[Fe(CN)3−アニオン、[Fe(CN)4−アニオン、[Co(CN)3−アニオン又は[Mo(CN)3−アニオンであり得る。
【0066】
有利には、カチオンはNi2+カチオン、Fe2+カチオン又はFe3+カチオンであってもよく、アニオンは[Fe(CN)3−アニオン又は[Fe(CN)4−アニオンである。
【0067】
有利には、カチオンはFe3+カチオンであってもよく、アニオンは[Mo(CN)3−アニオンであってもよい。
【0068】
有利には、カチオンはCo2+又はNi2+であってもよく、アニオンは[Co(CN)3−アニオンであってもよい。
【0069】
有利には、ナノ粒子は球又は回転楕円の形状を有する。
【0070】
ナノ粒子は概して、直径3nm〜30nmというようなサイズを有する。
【0071】
配位ポリマーのナノ粒子は概して、支持体全体で均一なサイズ及び形状を有することに留意されたい。
【0072】
有利には、有機基は、ピリジン及びアミン等の窒素含有基、並びにアセチルアセトネート及びアセチルカルボキシレート等の酸素含有基から選択することができる。
【0073】
有利には、多孔質ガラスの孔は、組成が相図SiO−NaO−Bの偏析領域に位置する無孔(塊状)ホウケイ酸ガラスのホウ酸相の選択的化学エッチングによって得ることができる。
【0074】
有利には、支持体の外観は、ビーズ、繊維、管又は板等の粒子の形態であり得る。
【0075】
有利には、支持体の外観はビーズ等の粒子の形態であってもよく、粒径は10μm〜500μmであってもよい。
【0076】
有利には、支持体の比表面積は10m/g〜500m/gであり得る。本明細書中では概して、比表面積はBET比表面積である。
【0077】
有利には、多孔質支持体の空隙率は25体積%〜50体積%である。この空隙率は概して、窒素吸着によって測定される。
【0078】
有利には、支持体はミクロ空隙、メソ空隙及びマクロ空隙から選択される1つ又は複数のタイプの孔サイズを有し得る。
【0079】
有利には、支持体の平均孔サイズは2nm〜120nm、例えば2nm〜20nmであり得る。
【0080】
有利には、支持体の孔は厚さ10nm〜60nmの仕切り、壁によって規定される。
【0081】
本発明による材料は、特定の構造及び組成を有し、CN配位子を有する金属配位ポリマーのナノ粒子を含むナノコンポジット固体材料であって、該ナノ粒子が、多孔質ガラス製の支持体の孔内に化学的に付着した有機グラフトの有機基に有機金属結合を介して結合している、ナノコンポジット固体材料であると規定することができる。
【0082】
言い換えると、本発明による材料は、多孔質ガラスマトリックスの孔内に、概して共有結合(covalence)によって固定化された(化学的に付着した)グラフトの有機基に付着(結合)した金属シアノメタレート(金属のヘキサシアノメタレート及びオクタシアノメタレート等)の構成要素、パターン、単位格子をベースとする、CN配位子を有する配位ポリマーのナノ粒子(シアノ架橋配位ポリマーナノ粒子)を含む。
【0083】
本発明による材料が、支持体の特定の点で、シアノ配位子によるネットワーク(シアノ架橋ネットワーク)を支持体の孔内に成長させることにより作製された材料であり、この成長はMn+、続いて[M’(CN)x−の連続的な配位(場合によっては繰り返す)によって達成されると述べることができる。
【0084】
ポリマーがMn+/[M’(CN)x−ポリマーであると更に述べることができる。
【0085】
ポリマーはMn+カチオン間の結合、例えばM2+カチオンと例えばM’3+カチオンとのCN配位子を介した結合:M2+−CN−M’3+を確立するため、いわゆる配位ポリマーである。
【0086】
概して、原子比率M/M’は1に近い。
【0087】
「化学的に付着した」とは概して、グラフトが共有結合を介して孔壁の表面に結合(付着)していることを意味する。
【0088】
ナノ粒子を固定する有機基(官能基と記載される場合もある)は、Mn+カチオンと有機金属結合を形成することが可能な基(ピリジン基等)である。
【0089】
グラフトは概して、ガラス支持体の孔の表面へのグラフトの化学的付着(概して共有結合による)を確実にする基に上記有機基を連結する炭素原子数2〜6の直鎖アルキレン基、例えば−(CH−基等の連結基(官能固定基とも呼ばれる)を含む。その表面が本質的にシリカから構成されるガラスの場合、グラフトの共有付着を確実にするこの基は、例えばガラス表面のシラノール基に結合したSiO基である。
【0090】
本発明によると、遷移金属のヘキサシアノフェレート等の金属のシアノメタレートは連続的な結晶化によって得られ、グラフトを固定する有機基又は官能基に強い有機金属結合を介して結合している。これはその後、ガラス支持体に共有結合によって化学的に強く結合したグラフトを介して、この支持体に完全に接着する。
【0091】
本発明による材料は、Folch. Bらの文献[16]に記載される材料とは、とりわけ支持体が多孔質ガラス製であり、メソ多孔質シリカ製ではないという点で異なる。
【0092】
当業者は、多孔質ガラス製の支持体がメソ多孔質シリカ製の支持体とは全く異なることを認識し、本発明による材料の多孔質ガラス製の支持体と、文献[16]において言及されるようなメソ多孔質シリカ製の支持体との間に存在し得る違いを即座に特定する。
【0093】
多孔質ガラス製の支持体であると規定される支持体は、いかなる場合にもメソ多孔質シリカ製の支持体を含むことはない。
【0094】
実際に、一方の多孔質ガラスを合成する方法と、他方のメソ多孔質シリカを合成する方法とは明らかに全く異なる。
【0095】
そのため、本明細書中で下記により詳細に論考されるように、空隙の性質は多孔質ガラス製の支持体とメソ多孔質シリカ製の支持体とで極めて異なっている。
【0096】
多孔質ガラスとメソ多孔質シリカとの本質的な違いは、多孔質ガラスは所望の形状がどのようなものであれ、その形状に容易に形作ることができるのに対し、メソ多孔質シリカについてはそれが全く不可能であることである。多孔質ガラスはしたがって、あらゆる幾何学的配置及び/又はサイズを有し、各種の用途に適合させることのできる支持体の形状を随意に与えることができる。多孔質ガラス製の支持体によるこれら全ての有利な特性は、当然ながらこの多孔質ガラス製の支持体を含む本発明による材料に付与される。
【0097】
したがって、本発明による材料は多孔質ガラス製の支持体を含むため、明らかにより大きな機械的強度を有し、文献[16]の材料では不可能である、カラム内でのその使用が可能となる。
【0098】
実際に、本発明による材料の多孔質ガラス製の支持体は概して、上記で規定されるような、例えば10nm〜60nmというかなりの厚さを有する仕切り(壁)を有し、したがって、有利なことには、高い機械的強度を有するため、例えば2nm〜3nmという厚さのわずかな仕切り(壁)を有するFolchの文献[16]のゾル・ゲル経路によって得られるシリカとは異なり、カラム内で使用されるビーズを形作ることのできる材料であると規定され得る。
【0099】
さらに、本発明による材料は概して、数種類の孔サイズが同時に存在し得るという意味で非組織的な空隙を有するが、文献[16]の材料においては、シリカ支持体は、孔サイズが常に10nm未満という秩序立った(well organized)空隙を有する。
【0100】
かかる非組織的な空隙は、とりわけ幾つかのマクロ孔の存在のために、吸着中の空隙内での汚染物質イオンの拡散にとって先験的により有利であり得る。
【0101】
したがって、この非組織的な空隙は反応速度(kinetics)を増大させ得る。
【0102】
本発明による材料は従来技術の材料の欠点を有さず、上記に挙げた要件を満たし、従来技術の材料によって引き起こされる問題の解決策を提供する。
【0103】
したがって、本発明による材料においては、無機汚染物質を溶液から除去することを目的とした溶液の処理中に塩析する可能性のある遊離金属シアノメタレート(遷移金属ヘキサシアノフェレート等)は空隙内に存在しない。
【0104】
従来技術では全く予想外である、本発明による材料の最も重要な特性の1つは、ポリマーナノ粒子(それ自体が支持体の孔の表面に化学的に付着した有機グラフトに結合している)での放射性セシウム等の無機汚染物質の吸着の後に、本発明による材料の空隙を、それによりセシウム等の汚染物質のいかなる放出(揮発)も生じることなく、容易に閉塞させることができることである。空隙の閉塞は、とりわけ支持体が、好ましくはその空隙を「緩やかな」条件下で容易に閉塞させるその能力によって選択される多孔質ガラス製であり、シリカ製でないことから、実際に「緩やかな」条件下での処理、例えば低い温度での熱処理、又は放射線処理、又は更には好ましくは塩基性雰囲気、例えばアンモニア含有雰囲気下での化学的処理によって、無機汚染物質、例えばセシウムが放出される(とりわけ揮発する)リスクを伴うことなく達成することができる。
【0105】
上記に記載される処理、例えば熱処理によってガラスの空隙を容易に閉塞させる可能性は、本発明による方法の基本的な利点の1つである。文献[16]に記載される材料のようなメソ多孔質シリカ製の支持体を含む材料の場合、空隙を閉塞させることは可能ではない(少なくともそれほど容易ではない)。
【0106】
空隙を閉塞させた後、本発明による材料を閉じ込めマトリックスとして直接使用することができるが、これは文献[16]の材料のような従来技術の材料では不可能であった。
【0107】
したがって、本発明による材料は概して、支持体の質量を基準にして1重量%〜10重量%、好ましくは2重量%〜3重量%の量の付着金属シアノメタレート、例えば付着金属ヘキサシアノフェレートを含む。この値は、従来技術のシリカに含浸されたヘキサシアノフェレートの30%という値と比較するに値する。
【0108】
本発明は更に、上記で記載の材料を作製する方法であって、
a)多孔質ガラス製の支持体を作製する工程、
b)多孔質ガラス製の支持体の孔内における有機グラフトの化学的付着を達成する工程、
c)孔内に有機グラフトを付着させた多孔質ガラス製の支持体を、Mn+イオンを含有する溶液と接触させた後、それにより得られる支持体を1回又は複数回洗浄し、乾燥させる工程、
d)工程c)の終了時に得られる多孔質ガラス製の支持体を、[M’(CN)x−の錯体の溶液と接触させた後、それにより得られる支持体を1回又は複数回洗浄し、乾燥させる工程、
e)工程d)の終了時に得られる多孔質ガラス製の支持体を1回又は複数回洗浄した後、乾燥させる工程、
f)任意で工程c)〜工程e)を繰り返す工程を連続的に行う、上記で記載の材料を作製する方法に関する。
【0109】
有利には、工程a)中、多孔質ガラス製の支持体は、組成が相図SiO−NaO−Bの偏析領域に位置する無孔(塊状)ホウケイ酸ナトリウムガラスのホウ酸相の選択的化学エッチングによって作製することができる。
【0110】
有利には、化学エッチングの前に、無孔(塊状)ホウケイ酸ナトリウムガラスを熱処理することができる。
【0111】
有利には、化学エッチングは、塩酸溶液等の酸性溶液によるエッチング、任意でその後のソーダ溶液等の塩基性溶液によるエッチングを含み得る。
【0112】
有利には、有機グラフトはピリジンであってもよく、多孔質ガラス製の支持体の孔の内部への有機グラフトの化学的付着は、多孔質ガラス製の支持体を(CHO)Si(CHNのメタノール溶液等の溶液と接触させることによって達成してもよい。
【0113】
有利には、Mn+イオンを含有する溶液は、[M(HO)]Cl又は[M(HO)]Clのメタノール溶液等の溶液であり得る。
【0114】
有利には、[M’(CN)x−の錯体は、以下の式:
(Cat)[M’(CN)](式中、M’、m及びxは上記で既に与えられた意味を有し、CatはK又はNa等のアルカリ金属、テトラブチルアンモニウム(TBA)等の第四級アンモニウム、及びテトラフェニルホスホニウム(PPh)等のホスホニウムのカチオンから概して選択されるカチオンである)に一致する。
【0115】
有利には、工程c)〜工程e)を1回〜4回繰り返すことができる。
【0116】
要約すると、この方法は単純であり、既知の実証済みのプロセスを用いるものであり、信頼性が高く、完全に再現可能であり、すなわち特徴、組成及び特性が完全に確定しており、不規則に変動することのない最終製品の作製を可能にする。
【0117】
本発明は、溶液中に含有される少なくとも1つの無機汚染物質を固定する方法であって、上記溶液を上記で記載のナノコンポジット固体材料と接触させ、それにより無機汚染物質を固体材料の孔内に固定化する、溶液中に含有される少なくとも1つの無機汚染物質を固定する方法にも関する。
【0118】
有利には、上記溶液は水溶液であり得る。
【0119】
上記溶液は、処理液又は工業排出物であり得る。
【0120】
有利には、上記溶液は、原子力産業及び原子力施設、並びに放射性核種を利用する活動からの液体及び排出物から選択することができる。
【0121】
有利には、該方法を連続的に行うことができる。
【0122】
有利には、無機汚染物質を固定(結合)するコンポジット固体材料をカラム内に充填することができる。
【0123】
概して、上記汚染物質は0.1ピコグラム/L〜100mg/Lの濃度で存在し得る。
【0124】
上記汚染物質は金属又は該金属の放射性同位体から生じ得る。
【0125】
上記汚染物質はアニオン錯体、コロイド及びカチオンから選択することができる。
【0126】
上記汚染物質はとりわけ、Cs、Co、Ag、Ru、Fe及びTl、並びにそれらの同位体から選択される元素であり得る。
【0127】
有利には、接触の後、孔内に無機汚染物質を固定化した固体材料に対してその孔を閉塞させる処理を施す。
【0128】
有利には、孔を閉塞させる処理は、1000℃未満、例えば600℃〜850℃の温度で、例えば5分〜30分の期間行われる熱処理、又は概して、例えば70MeVのAr又は250MeVのKr、2×1010イオン/cm・s〜10×1010イオン/cm・sのフルエンスという条件下で、例えばKrイオン又はArイオン又はXeイオンでの衝撃によって行われる低エネルギー放射線処理、又は概して塩基性雰囲気、例えばアンモニア含有雰囲気等において、概して室温で、例えば1時間〜12時間の期間行われる更なる化学的処理である。
【0129】
この固定(結合)方法は、この方法において適用される本発明による固体材料に本質的に関連し、上記に既に記載されている利点を全て有する。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】相図SiO−NaO−B及びこの相図の偏析領域を示す図である。
【図2】BET装置による空隙率の測定中のP/P(ここで、Pは窒素の分圧であり、Pは最大吸着圧である)に対する吸着窒素体積V(cm/g)を示すグラフである。右の縦軸の目盛りは□によって示される測定に関係する。左の縦軸の目盛りは■、○及び●によって示される測定に関係する。サンプルは、種々の条件下で熱処理(TT)及び化学エッチング(TC)を行った、実施例1の組成物から作製した多孔質ガラスのサンプルである。■によって示される測定は、いかなる熱処理も施さず、0.5M HClによって90℃で6時間化学エッチングを行ったサンプルに対して行った。○によって示される測定は、いかなる熱処理も施さず、0.5M HClによって90℃で24時間化学エッチングを行ったサンプルに対して行った。●によって示される測定は、540℃で25時間熱処理を施し、0.5M HClによって90℃で6時間化学エッチングを行ったサンプルに対して行った。□によって示される測定は、いかなる熱処理も行わず、0.5M HClによる90℃で6時間の化学エッチング、その後1M NaOHによる室温で1時間の化学エッチングを行ったサンプルに対して行った。
【図3】−(CHNグラフトを用いて行われる本発明による方法の概略図である。
【図4】実施例2の材料、すなわち多孔質ガラス製の支持体及びFeNi(CN)のナノ粒子を有するナノコンポジット材料を用いてバッチ式で行ったCs吸着速度試験を示すグラフである。FeNi(CN)の濃度は支持体の質量を基準にして2%であり、溶液1L当たり1gの材料を使用する。溶液中のCs濃度を縦軸にプロットし(初期濃度に対する%)、時間(時間)を横軸にプロットしている。
【発明を実施するための形態】
【0131】
ここで、本発明を、特に作製方法を参照することによって以下により詳細に説明する。
【0132】
本方法の第1の工程は、多孔質ガラス製の支持体を作製することである。
【0133】
まず第一に、本明細書中で支持体に関連して使用される「多孔質」という用語が、この支持体が孔又は間隙を含有していることを意味すると明記する。
【0134】
したがって、この多孔質支持体の密度は、固体材料と記載される非多孔質支持体の理論密度未満である。
【0135】
孔は接続していても、又は孤立していてもよいが、本発明による多孔質支持体においては孔の大部分は接続し、連通している。したがって、これは開放空隙又は相互接続した孔と称される。
【0136】
概して、本発明の多孔質ガラス製の支持体においては、孔は上記支持体の第1の表面と該支持体の第2の主表面とを接続する浸透性の(percolating)孔である。
【0137】
本発明の意味では、支持体は概して、その密度がその理論密度の最大で約95%である場合、多孔質であるとみなされる。
【0138】
好ましくは、この多孔質ガラス製の支持体は、組成が相図SiO−NaO−Bの偏析領域に位置する原料無孔(塊状)ホウケイ酸ナトリウムガラスの化学エッチングによって作製される支持体である。
【0139】
この組成は全てのガラスの熱力学表に与えられ、したがって当業者はこの組成を非常に容易にかつ非常に迅速に決定することができる。
【0140】
例えば、Jean PHALIPPOU著のTechniques de l’ingenieur, July 10th 2001, part Verres AF3600からの引用である図1のダイアグラムに言及することができる。
【0141】
このダイアグラム上では、偏析領域は領域B及び領域Dであり、好ましくは領域Dが本発明によって採用される。
【0142】
「無孔(塊状)ガラス」とは、この原料ガラスが空隙を全く又はほとんど有さず、この空隙が特に化学エッチングによって生じることを意味する。
【0143】
このガラスの加工は概して、相図SiO−NaO−Bの偏析領域に位置するホウケイ酸ガラスの場合、第一に酸化物又は酸化物前駆体(炭酸塩等)の粉末を、求める組成を有するガラスを得ることが可能な、目的の割合で秤量することによって行われる。また、ガラスの組成は概して、その機械的特性及び化学的特性に影響を及ぼすことなく、高温を適用せずに多孔質ガラス製の基板の空隙を容易に閉塞させることができるように選択される。
【0144】
次いで、これらの粉末を完全に(intimately)混合し、粉末の混合物を例えばロジウム白金合金製のるつぼに入れ、これをマッフル炉等の適切な加熱装置内に置く。
【0145】
溶融ガラスを得るための粉末混合物の溶融は概して、いわゆるガラス加工温度(一般に1300℃〜1550℃の範囲に位置する)である温度で行われる。この加工温度は概して、室温からの昇温過程(temperature−raising ramps)を複数回行うこと、及びこれらの昇温過程間の様々な期間の温度プラトー(plateaus)を観察することによって達成される。加工温度、例えば1480℃での最終プラトーは、1時間〜4時間、例えば2時間の期間を有し得る。
【0146】
概して、溶融ガラスを次に、例えばプレート上に流し込み、その凝固温度まで冷却し、その後破砕する。次いで、破砕したガラス片を再度るつぼに入れた後、それらを上記で規定される加工温度にすることによって再度溶融させる。概して、破砕したガラス片を含有するるつぼを、予め加工温度にした炉内に直接導入し、この温度を例えば1480℃に十分な時間(概して10分間〜60分間、例えば30分間)維持して、溶融ガラスを均質にする。
【0147】
次いで、特定の形状が所望される場合、溶融ガラスを再度、例えばプレート上に流し込むか、又はモールド内に流し込み、その後凝固するまで冷却する。
【0148】
任意で、ガラスをプレート上に流し込んだ場合、その後それを所望の形状にすることが可能である。例えば、ガラスを再度破砕してもよく、任意で、より小さな粒径の粉末を調製することが所望される場合、例えば振動ミルを用いてより細かく粉砕してもよい。
【0149】
ガラス製の支持体はあらゆる種類の形状をとることができる。
【0150】
支持体の外観はしたがって、球(ビーズ)、繊維、管又は板等の粒子の形態であり得る。
【0151】
支持体のサイズはまた、広い範囲で変化し得る。
【0152】
有利には、支持体の外観は粉末を形成する粒子の形態であってもよく、10μm〜500μmの粒径(粒子サイズ)を有し得る。粒子のサイズは、その最大の寸法(球又は回転楕円の場合、その直径である)によって規定される。
【0153】
上記に記載されるガラスを加工する方法は、作製が所望されるガラス支持体の形状及び/又はサイズに従って容易に適合させることができる。
【0154】
ガラスの加工の後、化学エッチングの前に、ガラスに任意で、様々な温度及び期間での1回又は複数回の熱処理を行ってもよい。
【0155】
これらの熱処理(複数も可)は、破砕の前及び/又は後に行うことができる。したがって、ガラスの形状の完全性を維持することが所望される場合、熱処理(複数も可)は破砕の前に行われ、そうでなければこの破砕の後に行われ、そして熱処理の時間(複数も可)は異なる。1回又は複数回の熱処理(複数も可)を破砕の前に、1回又は複数回の熱処理(複数も可)を破砕の後に行うことも可能である。
【0156】
この熱処理(複数も可)は、ホウ酸塩の領域を拡大し、したがって最終多孔質ガラスにおける孔のサイズ及び形態を変化させるという目的を有し得る。
【0157】
この熱処理(複数も可)は概して、偏析(demixed)領域の成長温度であり、一般にガラス転移温度(Tg)とガラス転移温度+最大350℃との間に位置する温度で行われる。この熱処理(複数も可)の期間は多様であり、処理温度に応じて最大で数日の範囲であり得る。
【0158】
したがって、熱処理(複数も可)は、Tg〜Tg+350℃の温度で6時間〜96時間の期間行うことができる。
【0159】
この任意の熱処理(複数も可)の後、ガラス内の空隙を得るのに必要な化学エッチングが行われる。
【0160】
化学エッチングは概して、例えば濃度0.5mol/Lの塩酸溶液等の酸性溶液でのエッチング、任意でその後の濃度1mol/Lのソーダ溶液等の塩基性溶液でのエッチングを含む。
【0161】
酸エッチングは概して、2時間〜48時間、例えば6時間〜24時間の期間であり、概して50℃〜120℃、例えば90℃の温度で行われる。
【0162】
任意の塩基エッチングは概して、1時間〜3時間、例えば1時間の期間であり、概して室温で行われる。
【0163】
概して、それにより加工された多孔質支持体を、例えば超純水で、1回又は複数回洗浄し、次いで例えば温度120℃のオーブン内で24時間乾燥させる。
【0164】
支持体は、BETによって測定されるような比表面積が10m/g〜500m/g、好ましくは50m/g〜150m/gであり得る。
【0165】
支持体の空隙率も、概して25%〜50%という広い範囲で変化し得る。
【0166】
本発明による方法によって作製される支持体は、単一のタイプの空隙のみ、例えばミクロ空隙、メソ空隙又はマクロ空隙を有し得る。
【0167】
あるいは、本発明による方法によって作製される支持体は、例えばミクロ空隙(概して2nm未満の孔サイズ、例えば直径)、メソ空隙(2nm〜20nmの孔サイズ、例えば直径)及びマクロ空隙(20nm超、例えば最大100nmの孔サイズ、例えば直径)から選択される数種類の空隙を同時に有し得る。
【0168】
平均孔径(円形断面を有する孔の場合、その平均直径である)は概して、2nm〜120nmの範囲である。
【0169】
空隙率及び孔サイズは変化し得るが、任意の熱処理及び化学エッチング(複数も可)の条件を変更することによって完全に制御することができる。
【0170】
したがって、図2に示されるように、熱処理及び化学エッチングの条件は非常に異なる空隙率をもたらし得る。
【0171】
したがって、
例えばいかなる熱処理も行わず、0.5M HCl中、90℃で6時間のエッチングを施したサンプルについてはミクロ空隙が観察される(比表面積164m/g)。
例えばいかなる熱処理も行わず、0.5M HCl中、90℃で24時間のエッチングを施したサンプルについてはミクロ空隙及びメソ空隙が観察される(比表面積146m/g)。
例えば540℃で24時間の熱処理、その後0.5M HCl中、90℃で6時間の化学エッチングを行ったサンプルについてはメソ空隙が観察される(実施例1のサンプル、比表面積65m/g)。
例えばいかなる熱処理も行わず、0.5M HCl中、90℃で6時間の化学エッチング、その後1M NaOH中、室温で1時間の塩基エッチングを行ったサンプルについてはマクロ空隙が観察される(比表面積69m/g)。
【0172】
本発明による多孔質ガラス製の支持体は、「厚い」と記載され得る、すなわち概して、10nm〜60nmの厚さを有する孔壁を有し、これは文献[16]のメソ多孔質シリカの孔の仕切り(壁)(2nm〜3nm)よりもはるかに厚く、機械的強度を大幅に増大させる。
【0173】
ここで有機グラフトの化学的付着について記載される工程、及び支持体の孔内でこれらのグラフトに結合したCN配位子を有する配位ポリマーのナノ粒子の作製について記載される工程は、Folchらの文献[16]に記載される方法の工程と実質的に同様であるが、この文献では、多孔質支持体がメソ多孔質シリカ製であり、ガラス製ではないという点で異なる。したがって、とりわけこれらの工程に適用される試薬及び操作条件だけでなく、ナノ粒子及びグラフトを介した孔の表面へのその付着の説明に関して、その文献に言及することができる。
【0174】
次いで、有機グラフトの化学的付着が多孔質ガラス製の支持体の孔内で達成される。この工程は官能基化工程と呼ばれる場合もある(図3を参照されたい)。
【0175】
有機グラフトは、ナノ粒子を固定する官能基として表される有機基を含む。
【0176】
ナノ粒子を固定する官能基は、カチオンMn+と有機金属結合を形成することが可能な基である。
【0177】
かかる有機基の例は上記で既に言及した。好ましい有機基は、図3中に示されるようにピリジンである。
【0178】
有機基は多孔質ガラス製の支持体に直接結合してもよいが、有機基は概して、一般に多孔質ガラス製の支持体への共有結合を介して化学的に付着、固定、結合したアーム、連結基及び付着基を介して、この支持体と化学的に結合、固定、付着する。
【0179】
したがって、グラフトは概して、ガラス支持体の孔の表面へのグラフトの化学的付着を確実にする基に上記有機基を連結(接続)する炭素原子数2〜6の直鎖アルキレン基、例えば−(CH−基(図3を参照されたい)等の連結基(官能固定基とも呼ばれる)を含む。その表面が本質的にシリカから構成されるガラスの場合、グラフトの共有付着を確実にするこの基は、例えばガラス表面のシラノール基に結合したSiO基である。
【0180】
多孔質ガラス製の支持体の孔壁の表面へのグラフトの付着(固定)を得るために、この支持体をしたがって、概して共有結合によってガラスの表面に化学的に結合することが可能な付着基、及び任意でグラフトの孔壁の表面への付着(概して共有結合による)を確実にする付着基に上記官能固定基を接続(連結)する連結基である上記官能固定基を含む化合物と接触させる。
【0181】
この付着基は、例えばガラスの表面に存在し得るシラノール基と反応するトリアルコキシシラン基から選択され得る。
【0182】
したがって、ピリジンの場合、多孔質ガラスの支持体を溶媒中の(CHO)Si(CHNの溶液と接触させることができる。好ましい溶媒はトルエンである。溶媒を概して還流させ、接触期間は概して12時間〜48時間、例えば24時間である。
【0183】
したがって、この工程の終了時に、ピリジン基(図3を参照されたい)等の有機基によって官能基化された多孔質ガラス製の支持体が得られる。
【0184】
次いで、多孔質ガラス製の支持体の孔内にCN配位子を有する金属配位ポリマーのナノ粒子の成長を進める。
【0185】
この成長は、任意で繰り返される2つの連続的な工程で行われる。
【0186】
この工程は、孔内に有機グラフトを結合した多孔質ガラス製の支持体を、Mn+イオンを概して金属塩の形態で含有する溶液と接触させることにより始められる。
【0187】
この溶液は、概して水、アルコール、及び水と1つ又は幾つかのアルコールとの混合物から選択される溶媒中の溶液である。
【0188】
好ましい溶媒はメタノールである。
【0189】
溶液中に含有される金属塩は、その金属が概して、不溶性である、この金属のシアノメタレート(この金属のヘキサシアノフェレート等)を与えることが可能な金属から選択される塩である。
【0190】
この金属は全ての遷移金属、例えば銅、コバルト、亜鉛、カドミウム、ニッケル及び鉄等から選択され得る。
【0191】
ニッケル、鉄及びコバルトが好ましく、Mn+イオンはしたがってFe2+、Ni2+、Fe3+及びCo2+から選択され得る。
【0192】
金属塩は例えば、溶液中の濃度が好ましくは0.01mol/L〜1mol/L、さらに好ましくは0.02mol/L〜0.05mol/Lである、これらの金属の1つの任意で水和した硝酸塩、硫酸塩、塩化物、酢酸塩であり得る。
【0193】
さらに、使用される塩の量は好ましくは、処理される支持体1g当たり約0.4mmolである。
【0194】
有利には、Mn+イオンを含有する溶液は、水若しくはメタノール等のアルコール中の溶液、又は水と1つ若しくは幾つかのアルコールとの混合物中の溶液であり得る。
【0195】
有利には、Mn+イオンを含有するこの溶液は、[M(HO)]Cl(式中、Mは好ましくはNi、Fe又はCoである)、又は[M(HO)]Cl(式中、MはFeである)のメタノール溶液等の溶液であり得る。
【0196】
接触(支持体の含浸とも記載されることがある)は概して、室温で好ましくは撹拌しながら行われ、その期間は概して20時間〜24時間である。
【0197】
この接触の終了時に、Mn+カチオンが有機金属結合を介してグラフトの官能固定基に結合した固体支持体が得られる。したがって、ピリジンの場合(図3を参照されたい)、環の窒素とMn+カチオンとの間で結合が確立される。次いで、得られる固体生成物を例えば粉末として、例えば濾過によって分離する。
【0198】
次いで、分離した生成物を、好ましくはMn+溶液の溶媒と同じ溶媒(メタノール等)で1回又は複数回、例えば1回〜3回洗浄する。
【0199】
この洗浄操作によって、過剰の金属塩を除去して、組成が完全に規定された安定な生成物を得ることが可能である。
【0200】
次いで、乾燥させる工程を概して室温、真空中で、6時間〜48時間、例えば24時間の期間行う。概して、乾燥は支持体の質量が実質的に一定になるまで続ける。
【0201】
上記に記載される金属カチオンMn+と反応させた多孔質ガラス製の支持体を、次いで[M’(CN)x−、例えば[M’(CN)3−の錯体(任意で塩と呼ばれることもある)の溶液と接触させる。
【0202】
この溶液は、水、アルコール、及び水と1つ又は幾つかのアルコールとの混合物から選択される溶媒中の溶液である。
【0203】
好ましい溶媒はメタノールである。
【0204】
接触(支持体の含浸とも記載されることがある)は概して、室温で好ましくは撹拌しながら行われ、その期間は概して20時間〜48時間、例えば24時間である。
【0205】
この錯体は概して以下の式:
(Cat)[M’(CN)](式中、M’、m及びxは上記に既に与えられた意味を有し、Catは概してK又はNa等のアルカリ金属、テトラブチルアンモニウム(TBA)等の第四級アンモニウム、及びテトラフェニルホスホニウム(PPh)等のホスホニウムのカチオンから選択されるカチオンである)に一致する。好ましい錯体は式[N(C[M’(CN)]の錯体である。
【0206】
さらに好ましい錯体は、式[N(C[M’(CN)]、例えば[N(C[Fe(CN)]、[N(C[Mo(CN)]及び[N(C[Co(CN)]の錯体である。
【0207】
錯体又は塩の溶液、例えばメタノール溶液は様々な濃度で適用される。すなわち、塩又は錯体の濃度は概して0.01mol/L〜1mol/L、好ましくは0.02mol/L〜0.05mol/Lである。
【0208】
一方で、適用される[M’(CN)x−の塩又は錯体の溶液は、本質的に初期の多孔質ガラス製の支持体からなる含浸支持体の量に対する塩又は錯体の質量比が、好ましくは5%〜20%となるように調製される。
【0209】
塩又は錯体のアニオン部分[M’(CN)x−、例えば[Fe(CN)4−の付着(固定)が、それによりMn+カチオン上で得られるが(図3を参照されたい)、この付着は媒体に応じた比較的強い共有結合型の結合の形成によって達成され、この付着(固定)は概して量的である(すなわちMn+カチオンの全てが反応する)。結合はしたがっていかなるランダム性も有しない。
【0210】
この接触の終了時に、得られる固体生成物を例えば粉末として、例えば濾過によって分離する。
【0211】
次いで、分離した生成物を、好ましくは塩又は錯体の溶液の溶媒と同じ溶媒(メタノール等)で1回又は複数回、例えば1回〜3回洗浄する。
【0212】
この洗浄操作は、Mn+カチオンと結合していない[M’(CN)x−の塩及び錯体を除去する目的を有し、もはやいかなる遊離の(結合していない)[M’(CN)x−(塩析され得る)も存在していない無機汚染物質を固定(結合)するナノコンポジット材料を得る可能性を与える。
【0213】
多孔質ガラスの支持体を金属カチオンMn+に接触させ、次いで多孔質ガラス製の支持体を[M’(CN)x−、例えば[M’(CN)3−の塩又は錯体の溶液に接触させる工程は、1回しか行わなくても、又は1回〜4回繰り返してもよく(図3を参照されたい)、このようにしてナノ粒子のサイズを完全に調整することが可能である。
【0214】
無機質固定剤(結合剤)、すなわちアニオン交換体ポリマー上に固定された(結合した)不溶性金属ヘキサシアノフェレートの重量含有率は概して、多孔質ガラス製の支持体の質量を基準にして1%〜10%、例えば3%である。
【0215】
本発明による無機汚染物質を固定(結合)するナノコンポジット固体材料は、とりわけ溶液中に含有される少なくとも1つの無機汚染物質、例えば金属カチオンを固定(結合)する方法であって、上記溶液を無機汚染物質を固定(結合)する上記コンポジット固体材料と接触させる、方法に適用され得るが、これに限らない。
【0216】
本発明による材料は、その優れた特性、例えば優れた交換容量、優れた選択性、高い反応速度のために、かかる使用に特に好適である。
【0217】
この優れた効率は、不溶性ヘキサシアノフェレート等の無機質固定剤(結合剤)の量の低減によって得られる。
【0218】
さらに、本発明による材料の優れた機械的強度及び安定性の特性(その特異的な構造によって得られる)のために、それをカラム内に充填し、固定(結合)するプロセスを例えば流動床内で連続的に適用することが可能となり、したがって既存の設備、例えば幾つかの工程を含む加工チェーン(chain)又は加工ラインに容易に組み入れることができる。
【0219】
本発明の方法及び本発明による無機汚染物質を固定(結合)するコンポジット固体材料を用いて処理することのできる溶液は非常に多様であり、更には本発明による材料の優れた化学的安定性のために、例えば腐食性の酸、腐食剤又は他の薬剤を含有していてもよい。
【0220】
本発明による材料は特に、非常に広いpH範囲にわたって使用することができる。例えば、0.1M〜3Mの範囲の濃度を有する硝酸水溶液、pH8までの酸性溶液又は中性溶液等を処理することが可能である。本発明による方法において固定(結合)することのできる無機汚染物質は、任意の無機汚染物質、すなわち例えば、その溶液中に見出すことができる金属又は同位体、好ましくはこの金属の放射性同位体から生じる(それをベースとする)任意の汚染物質であり得る。
【0221】
この汚染物質は、好ましくはアニオン錯体、コロイド、カチオン及びそれらの混合物から選択される。
【0222】
好ましくは、この汚染物質は、Tl、Fe、Cs、Co、Ru、Ag...及びそれらの同位体、特に放射性同位体(中でも58Co、60Co、55〜59Fe、134Cs、137Cs、103、105、106、107Ruに言及することができる)から選択される元素に由来するカチオン等の汚染物質である。金属カチオンは特に、セシウムカチオンCs又はタリウムカチオンTl2+である。
【0223】
アニオン錯体は例えばRuO2−である。
【0224】
本発明による材料の好ましい使用は、原子力産業の液体のガンマ放射能に大きく寄与し、ヘキサシアノフェレートによって選択的に固定(結合)されるセシウムの固定(結合)である。
【0225】
カチオン(複数も可)等の汚染物質(複数も可)の濃度は、広い範囲で変化し得る。例えば、カチオンの各々について、濃度は0.1ピコグラム/L〜100mg/L、好ましくは0.01mg/L〜10μg/Lであり得る。
【0226】
本発明の方法によって処理される溶液は好ましくは、固定(結合)されるカチオン(複数も可)等の汚染物質(複数も可)に加えて、溶液中の他の塩、例えばNaNO又はLiNO又は更にはAl(NO、又は任意の他のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の可溶性塩を、2mol/Lに達し得る濃度で含有し得る水溶液である。溶液は上記で示したように、酸、塩基、更には有機化合物も含有し得る。
【0227】
処理される溶液は、エタノール(無水アルコール)、アセトン若しくは他の溶媒等の純粋な有機溶媒、これらの有機溶媒の混合物、又は水と水混和性のこれらの有機溶媒の1つ又は複数との混合物中の溶液であってもよい。
【0228】
したがって、本発明による材料は、有機樹脂によっては処理することのできない溶液を処理することが可能であるという利点を有する。
【0229】
この溶液は処理液、又は工業排出物、又は特に原子力施設及び原子力産業、若しくは原子力産業に関連する任意の他の活動から生じ得る任意の他の溶液であり得る。
【0230】
本発明の方法によって処理することのできる原子力産業、原子力施設及び放射性核種を利用する活動の様々な液体及び排出物の中でも、例えば発電装置を冷却する水、及び放射性同位体と接触する全ての様々な排出物(全ての洗浄水、樹脂を再生する溶液等)に言及することができる。
【0231】
しかしながら、本発明による方法を他の非核分野の活動、例えば工業分野又は他の分野に適用してもよいことが明らかである。
【0232】
したがって、ヘキサシアノフェレートはタリウムを選択的に固定(結合)し、この特性は、劇剤であるこの元素の排出及び放出を低減又は抑制するためのセメント工事排出物の浄化に利用することができる。
【0233】
本発明による固定(結合)方法が好ましくは連続的に適用され、したがって好ましくは粒子の形態である本発明によるナノコンポジット材料が、例えばカラムの形態で充填される(材料は好ましくは流動床を形成し、その流動化は処理される溶液によって確実になる)ことが分かったが、固定(結合)方法はバッチ式(バッチモード)で適用することもできる(したがって交換材料と処理される溶液との接触は、好ましくは撹拌によって達成される)。カラム内に材料を充填することによって、相当量の溶液を高い流速で連続的に処理することが可能となる。
【0234】
処理される溶液と本発明による材料との接触時間は多様であるが、連続操作については例えば1分間〜1時間、バッチ操作については例えば10分間〜25時間、好ましくは10分間〜24時間の範囲であり得る。
【0235】
固定(結合)プロセスの終了時に、溶液中に見られるカチオン等の汚染物質を、吸着、すなわちナノ粒子(それら自体がガラス支持体の孔壁の表面に化学的に結合している)の内部、ナノ粒子の構造の内部でのイオン交換又は吸着によって、本発明による固定(結合)ナノコンポジット固体材料(交換体)に固定化する。
【0236】
本発明による材料の空隙は、材料が本質的にガラスからなるため、「緩やかな」(すなわち、その機械的特性及び化学的特性のいかなる変更ももたらさず、特に固定化したセシウム等の汚染物質の揮発による放出、塩析を引き起こさない)条件下で行われる処理によって容易に閉塞させることができる。
【0237】
汚染物質が捕捉された本発明による材料の孔を閉塞させることを可能にするこの処理は、材料に外部応力(熱応力、放射応力、化学応力又は他の応力であり得る)を加えることによって行うことができる。
【0238】
熱処理を行う場合、低い温度、すなわち概して1000℃未満の温度、例えば600℃〜850℃、とりわけ800℃で、例えば5分〜30分、例えば6分の期間行われる。かかる処理は、とりわけ従来技術のシリカ製の多孔質支持体のガラス化に適用される温度(セシウム等の汚染物質の揮発を引き起こす)をはるかに下回る温度で行われる。本発明によると、この熱処理は支持体のガラス化ではなく、単に支持体の孔の閉塞(比表面積の減少によって実証される)を引き起こす。
【0239】
処理を基板への照射によって行う場合、照射は概して、例えば70MeVのAr又は250MeVのKr、2×1010イオン/cm・s〜10×1010イオン/cm・sのフルエンスという条件下で、例えばArイオン、Krイオン又はXeイオンでの衝撃によって達成される低エネルギー処理である。
【0240】
空隙の閉塞が化学的処理によって達成される場合、概して塩基性雰囲気、例えばアンモニア含有雰囲気等を、概して室温で、例えば1時間〜数時間、好ましくは1時間〜12時間の期間で使用する。
【0241】
空隙を閉塞させた本発明によるナノコンポジット固体材料は、直接貯蔵することができる。これは、その非常に大きな機械的安定性及び化学的安定性、並びにその本質的に無機質の性質によって、水素の放出をもたらす生成物のいかなる分解も生じることなく、かかる貯蔵が可能となるためである。
【0242】
しかしながら、場合によっては浸出試験を行うことが必要となる可能性がある。
【0243】
空隙を閉塞させた本発明による固体材料においては、Cs等の汚染物質がガラスに封入されていると述べることができる。
【0244】
したがって、本発明による材料は、固定化したセシウム等の汚染物質の塩析、放出のリスクを何ら伴うことなく、安全かつ信頼性のある方法で、孔を閉塞させる単純な処理によって閉じ込めマトリックスとして直接使用することができるが、これは、汚染物質、特にセシウムの揮発による放出を引き起こす閉じ込め、処理、例えば高温で行われるガラス化を必要とする従来技術の材料では不可能であった。
【0245】
本発明による材料及びそれを利用する固定(結合)方法は、従来技術の全ての材料及び方法が、とりわけ固体又はコンポジットであるかにかかわらず有する未解決の本質的な問題の1つに対する解決策を提供する。
【0246】
ここで、本発明を、限定としてではなく例示として与えられる以下の実施例を参照して説明する。
【実施例】
【0247】
以下の実施例1〜実施例4においては、多孔質ガラスの粉末を初めに偏析の制御(実施例1)、続いて化学エッチングによって合成し、次いでフェロシアン化ニッケル粒子のグラフト化及び成長をこれらの多孔質ガラスにおいて行った(実施例2)。
【0248】
次いで、それにより得られる粉末を用いて、セシウムを硝酸ナトリウムに富んだ溶液から抽出する試験を行った(実施例3)。
【0249】
最後に、これらの粉末の空隙を閉塞させる試験を、該粉末をそれにより捕捉されたCsを充填するマトリックスとして使用される固体材料に変換するために行った(実施例4)。
【0250】
これら4つの工程の操作方式は以下の通りである:
【0251】
実施例1:多孔質ガラスの合成
初期ガラスの組成は、SiO 75mol%、NaO 5mol%、B 20mol%である。使用される前駆体は、それぞれ市販の粉末であるSiO(Sifraco(登録商標))、NaCO(Prolabo(登録商標))及びHBO(Prolabo(登録商標))である。
【0252】
100gのガラスのバッチを得るために、72.58gのSiO粉末、8.53gのNaCO粉末及び39.86gのHBO粉末を秤量することから始める。残留する微量の水を全て除去するために、シリカ及び炭酸ナトリウムを予め250℃の温度に加熱する。
【0253】
この秤量の後、これらの粉末を完全に混合し、次いでロジウム白金るつぼに入れ、マッフル炉に入れる。
【0254】
ガラスの合成を達成するために、まず初めに第1の熱処理を以下のサイクルに従って行う:
室温から150℃まで100℃/時間の速度での昇温を行った後、この温度で2時間のプラトーを観察する、
300℃まで50℃/時間の速度での昇温を行った後、この温度で2時間のプラトーを観察する、
1200℃まで150℃/時間の速度での昇温を行った後、1480℃まで400℃/時間でのさらなる昇温を行い、この温度で1時間のプラトーを観察する。
【0255】
この第1の熱処理の終了時に、溶融ガラスをプレート上に流し込み、次いで金槌で破砕する。
【0256】
次いで、破砕したガラス片をるつぼ内に戻し、1480℃にした炉内に直接導入し、良好な均質化のためにこの温度を30分間維持する。
【0257】
最後に、溶融ガラスをプレート上に再度流し込み、金槌で破砕し、振動ミルを用いて細かく粉砕する。
【0258】
得られた粉末は125μm未満のサイズを有する細粒を有する。
【0259】
540℃で24時間熱処理したガラスに対し、以下の化学エッチングを行った:
得られた粉末3gを、濃度0.5mol/LのHCl溶液を30mL入れたSavillex(登録商標)(これはテフロン(登録商標)密封容器である)内に入れる。
【0260】
次いで、この「Savillex(登録商標)」を、90℃のオーブン内に6時間入れる。この化学エッチングの後、粉末を続いて濾過し、超純粋水で複数回洗浄し、その後120℃のオーブン内で24時間乾燥させる。
【0261】
次いで、比表面積及び空隙率の測定をBET装置を用いて行う。
【0262】
ミクロ多孔質サンプル(約7m/gのミクロ空隙を有する)及び比表面積65m/g及び孔サイズ8nmのメソ多孔質サンプルが得られる。
【0263】
実施例2:多孔質ガラスにおけるニッケルヘキサシアノフェレートナノ粒子のグラフト化及び合成
実施例1で作製されたガラスの孔内での−(CHNのグラフト化は、多孔質ガラス粉末をトルエン中、有機化合物(CHO)Si(CHNの存在下で一晩還流させることによって達成される。
【0264】
次いで、それによりグラフト化したガラス粉末2gを、3.65×10−2Mの[Ni(HO)]Clのメタノール溶液中に入れる。
【0265】
この混合物を室温で一晩撹拌する。
【0266】
濾過の後、粉末をメタノールで複数回洗浄し、次いで真空中、室温で24時間乾燥させる。
【0267】
第2の段階では、それにより得られた粉末を、2.5×10−2Mの錯体[N(C][Fe(CN)]のメタノール溶液中に入れる。混合物を室温で48時間撹拌する。次いで、粉末を濾過し、メタノールで複数回洗浄し、真空中で乾燥させる。初めに金属塩、次いでシアノメタレート前駆体によるこれらの処理を2回目に繰り返す。
【0268】
それにより得られた粉末の化学分析によって、Fe含量がおよそ2質量%であることが示される。
【0269】
実施例3:セシウムの固定
次いで、実施例2で加工されたグラフト化ガラス粉末を、Csの固定について試験する(図4を参照されたい)。
【0270】
これらの試験のために使用される溶液は、0.1mol/LのNaNOを含有し、pHは7〜8の間に含まれる。実際の工業溶液のイオン力を正確にシミュレートするには、大量の硝酸ナトリウム含量が必要とされる。
【0271】
50mL容量のこの溶液に、4.4gのCsNO(濃度は60.2mg/Lとなる)、同様に50mgの実施例2で得られたグラフト化多孔質ガラス(すなわち、溶液1L当たり1gのグラフト化多孔質ガラス)を導入する。
【0272】
Csの初期測定濃度(Ci)は60.2mg/Lである。
【0273】
これを室温で25時間撹拌する。濾過の後、溶液をイオンクロマトグラフィーによって分析する。
【0274】
この濾過工程の後、残留溶液を分析する。
【0275】
セシウムの最終測定濃度(Cf)は44.3mg/Lである。
【0276】
除染係数(Kd)はこのようにして算出される:
Kd=(Ci−Cf)/Cf×Vsol/msupport
【0277】
したがって、この係数は本実施例では372mL/gに等しい。
【0278】
本実施例では、ガラス1グラム当たり20mgのFeがグラフト化され、ガラス1g当たり16.5mgのCsが固定(結合)された。
【0279】
実施例4:空隙の閉塞
それにより捕捉されたセシウムを閉じ込めるための空隙の閉塞は、800℃で5分間〜10分間の熱処理によって達成される。
【0280】
例えば、800℃で6分間の多孔質サンプルの熱処理によって、540℃で24時間熱処理した後、0.5M HClで24時間化学処理したサンプルの比表面積が、73m/gという比表面積から19m/gという比表面積まで減少し、これにより孔の閉塞が実証される。
【0281】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオンMn+(式中、Mは遷移金属であり、nは2又は3である)及びアニオン[M’(CN)x−(式中、M’は遷移金属であり、xは3又は4であり、mは6又は8である)を含むCN配位子を有する金属配位ポリマーのナノ粒子を含むナノコンポジット固体材料であって、前記配位ポリマーの前記Mn+カチオンが、多孔質ガラス製の支持体の孔内に化学的に付着した有機グラフトの有機基に有機金属結合を介して結合しており、前記多孔質ガラスの孔が、無孔ホウケイ酸ガラスのホウ酸相の選択的化学エッチングによって得られ、前記無孔ホウケイ酸ガラスの組成が相図SiO−NaO−Bの偏析領域に位置する、ナノコンポジット固体材料。
【請求項2】
n+がFe2+、Ni2+、Fe3+又はCo2+である、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
M’がFe2+又はFe3+又はCo3+であり、mが6であるか、又はM’がMo5+であり、mが8である、請求項1又は2に記載の材料。
【請求項4】
[M’(CN)x−が[Fe(CN)3−、[Fe(CN)4−、[Co(CN)3−又は[Mo(CN)3−である、請求項1から3のいずれか一項に記載の材料。
【請求項5】
前記カチオンMn+がNi2+カチオン、Fe2+カチオン又はFe3+カチオンであり、前記アニオンが[Fe(CN)3−アニオン又は[Fe(CN)4−アニオンである、請求項1から4のいずれか一項に記載の材料。
【請求項6】
前記カチオンがFe3+カチオンであり、前記アニオンが[Mo(CN)3−アニオンである、請求項1から4のいずれか一項に記載の材料。
【請求項7】
前記カチオンがCo2+カチオン又はNi2+カチオンであり、前記アニオンが[Co(CN)3−アニオンである、請求項1から4のいずれか一項に記載の材料。
【請求項8】
前記粒子が球又は回転楕円の形状を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の材料。
【請求項9】
前記ナノ粒子が直径3nm〜30nmというようなサイズを有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の材料。
【請求項10】
前記有機基がピリジン及びアミン等の窒素含有基、並びにアセチルアセトネート及びアセチルカルボキシレート等の酸素含有基から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の材料。
【請求項11】
前記支持体の外観がビーズ、繊維、管又は板等の粒子の形態である、請求項1から10のいずれか一項に記載の材料。
【請求項12】
前記支持体の外観がビーズ等の粒子の形態である、その粒径が10μm〜500μmである、請求項11に記載の材料。
【請求項13】
前記支持体のBET比表面積が10m/g〜500m/gであり、空隙率が25体積%〜50体積%である、請求項1から12のいずれか一項に記載の材料。
【請求項14】
前記支持体がミクロ空隙、メソ空隙及びマクロ空隙から選択される1つ又は複数のタイプの孔径を有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の材料。
【請求項15】
前記支持体の平均孔径が2nm〜120nm、例えば2nm〜20nmである、請求項1から14のいずれか一項に記載の材料。
【請求項16】
前記支持体の孔が厚さ10nm〜60nmの仕切り、壁によって規定される、請求項1から15のいずれか一項に記載の材料。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載の材料を作製する方法であって、
a)多孔質ガラス製の支持体を作製する工程、
b)前記多孔質ガラス製の支持体の孔内における有機グラフトの化学的付着を達成する工程、
c)孔内に前記有機グラフトを付着させた前記多孔質ガラス製の支持体を、Mn+イオンを含有する溶液と接触させた後、それにより得られる支持体を1回又は複数回洗浄し、乾燥させる工程、
d)工程c)の終了時に得られる多孔質ガラス製の支持体を、[M’(CN)x−の錯体の溶液と接触させた後、それにより得られる支持体を1回又は複数回洗浄し、乾燥させる工程、
e)工程d)の終了時に得られる多孔質ガラス製の支持体を1回又は複数回洗浄した後、乾燥させる工程、
f)任意で工程c)〜工程e)を繰り返す工程を連続的に行う、請求項1から16のいずれか一項に記載の材料を作製する方法。
【請求項18】
化学エッチングの前に、前記無孔ホウケイ酸ナトリウムガラスを熱処理する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
化学エッチングが塩酸溶液等の酸性溶液によるエッチング、任意でその後のソーダ溶液等の塩基性溶液によるエッチングを含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記有機グラフトがピリジンであり、前記多孔質ガラス製の支持体の孔内における前記有機グラフトの化学的付着を、前記多孔質支持体を(CHO)Si(CHNのメタノール溶液等の溶液と接触させることによって達成する、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記Mn+イオンを含有する溶液が、[M(HO)]Cl又は[M(HO)]Clのメタノール溶液等の溶液である、請求項17から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記[M’(CN)x−錯体が、以下の式:
(Cat)[M’(CN)](式中、M’、m及びxは請求項1において既に与えられた意味を有し、CatはK又はNa等のアルカリ金属、テトラブチルアンモニウム(TBA)等の第四級アンモニウム、及びテトラフェニルホスホニウム(PPh)等のホスホニウムのカチオンから選択されるカチオンである)に一致する、請求項17から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
工程c)〜工程e)を1回〜4回繰り返す、請求項17から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
溶液中に含有される少なくとも1つの無機汚染物質を固定する方法であって、前記溶液を請求項1から16のいずれか一項に記載のナノコンポジット固体材料と接触させ、それにより前記無機汚染物質を前記固体材料の孔内に固定化する、溶液中に含有される少なくとも1つの無機汚染物質を固定する方法。
【請求項25】
前記溶液が水溶液である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記溶液が処理液又は工業排出物である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記溶液が原子力産業及び原子力施設、並びに放射性核種を利用する活動からの液体及び排出物から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
該方法を連続的に行う、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
無機汚染物質を固定する前記コンポジット固体材料がカラム内に充填される、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記汚染物質が0.1ピコグラム/L〜100mg/Lの濃度で存在する、請求項24から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記汚染物質が金属又は該金属の放射性同位体から生じる、請求項24から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記汚染物質がアニオン錯体、コロイド及びカチオンから選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記汚染物質がCs、Co、Ag、Ru、Fe及びTl、並びにそれらの同位体から選択される元素である、請求項24から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記接触の終了時に、前記ナノコンポジット固体材料にその孔を閉塞させる処理を施す、請求項24から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記孔を閉塞させる処理が1000℃未満の温度で行われる熱処理、又は概して低エネルギーの放射線処理、又は化学的処理である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記化学的処理をアンモニア含有雰囲気等の塩基性雰囲気中で行う、請求項35に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−527344(P2012−527344A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511303(P2012−511303)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057009
【国際公開番号】WO2010/133689
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(510097644)コミッサリア ア ロンネルジー アトミック エ オ ゾンネルジー ザルテルナティーフ (33)
【出願人】(502205846)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィク (154)
【出願人】(511280940)ユニヴェルシテ ドゥ モンペリエ ドゥジエーム (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE MONTPELLIER II
【住所又は居所原語表記】Place Eugene Bataillon, F―34000 Montpellier FRANCE
【Fターム(参考)】