説明

ヘッドホンユニット

【課題】イヤーパッドが汚れたり傷んだりした際に簡単に交換できるヘッドホンユニットの提供。
【解決手段】スピーカー部18などが収容されるケーシング12と、その使用時に人体の外耳介側に当接する位置関係のもとでケーシング12の放音面19側を覆うイヤーパッド22とを備えるヘッドホンユニット11において、ケーシング12は、放音面19側を開口させた略筒状の開口端部15の開口端15a近傍位置に小径段差部16を備え、イヤーパッド22は、人体の外耳介側に当接するパッド本体部23と、該パッド本体部23の内側に固定されて小径段差部16の表出面17側に差し込まれる支持筒部24とを備え、小径段差部16の表出面17には、支持筒部24の内側面24aと接触した際に倒伏する起毛長さの短繊維43を静電植毛してなるフロック層42を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーシング側に離脱困難に取り付けられているイヤーパッドが汚れたり傷んだりした際に、簡単に交換することができるようにしたヘッドホンユニットに関する技術である。
【背景技術】
【0002】
通常、ヘッドホンは、下記特許文献1にも示されているように、電気信号を音響に変換して放音するスピーカー部などを各別に収容した左右一対のケーシングと、その使用時に外耳介側に当接する位置関係のもとで各ケーシングの放音面を各別に覆うイヤーパッドとからなるヘッドホンユニットと、該ヘッドホンユニットにおけるケーシング相互間に架け渡して外耳介側への側圧を付与しながら頭頂部を介して支持されるヘッドバンドとを少なくとも備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2657446号公報
【0004】
この場合、各ヘッドホンユニットは、ケーシング側に付設されたイヤーパッドを介することで、外耳介に対し密に接触させることができるほか、当たりが弾性を伴ってソフトであることから長時間にわたり装着しても不快感を感じることもないようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種のヘッドホンユニットは、人体頭部に位置する外耳介にイヤーパッドを直に密着させた状態のもとで装着・使用されることから、その使用を繰り返すことでイヤーパッドに皮脂や汗などが付着して汚れやすいばかりでなく、傷みやすくもある。
【0006】
しかし、従来からあるヘッドホンを構成しているヘッドホンユニットにあっては、ケーシングが備えるバッフルプレート側にイヤーパッドの周縁部を簡単には脱落しないように被せるようにしてしっかりと取り付けて組み合わされていることから、逆にイヤーパッドが汚れたり傷んだりしても簡単には交換することができないという不都合があった。
【0007】
また、近時におけるCD販売店などでは、ヘッドホンを用いて不特定多数の客に音曲を試聴させるようにしていることから、該ヘッドホンも入れ替わり立ち替わり使用される結果、とりわけイヤーパッドの汚れが目立ち、非衛生的となってしまう不具合があった。
【0008】
本発明は、従来技術の上記課題に鑑み、通常はケーシング側にイヤーパッドを離脱困難に取り付けておくことができ、イヤーパッドが汚れたり傷んだりした際に簡単に交換することができるヘッドホンユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成すべくなされたものであり、電気信号を音響に変換して放音するスピーカー部などが収容されるケーシングと、その使用時に人体の外耳介側に当接する位置関係のもとで前記ケーシングの放音面側を覆うイヤーパッドとを少なくとも備えるヘッドホンユニットにおいて、前記ケーシングは、前記放音面側を開口させた略筒状の開口端部の開口端近傍位置に小径段差部を備え、前記イヤーパッドは、人体の外耳介側に当接するパッド本体部と、該パッド本体部の内側に固定されて前記小径段差部の表出面側に差し込まれる支持筒部とを備え、小径段差部の前記表出面には、前記支持筒部の内側面と接触した際に倒伏する起毛長さの短繊維を静電植毛してなるフロック層を設けたことを最も主要な特徴とする。
【0010】
この場合、前記小径段差部の奥端境界部には、弾性リングを配置しておくのが好ましい。また、前記短繊維には、経年変化の少ない耐候性素材を用いるのが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、ケーシングは、その小径段差部の表出面に短繊維を静電植毛してなるフロック層を備えているので、イヤーパッドの支持筒部を単に挿入することで倒伏されるフロック層により、抜脱困難な方向への摩擦力を生成させてヘッドホンユニットとして組み立てることができる。
【0012】
また、イヤーパッドを交換する際には、その支持筒部を周方向に捩るように回転させながら引っ張ることにより、各短繊維を径方向に傾かせた状態のもとで簡単にケーシング側から引き抜くことができる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、小径段差部の奥端境界部に弾性リングが配置されているので、がたつきのない状態のもとでヘッドホンユニットを組み立てることができる
【0014】
請求項3に係る発明によれば、短繊維に経年変化の少ない耐候性素材が用いられているので、その耐久性を高めてイヤーパッドの交換を長期にわたり安定的に繰り返し行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一例をイヤーパッドを引き離した状態のもとで示す要部説明図。
【図2】図1に示す例につき、イヤーパッドをケーシング側に取り付ける際の状態を要部を拡大して示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一例をイヤーパッドを引き離した状態のもとで示す要部説明図であり、ヘッドホン(図示せず)を構成しているヘッドホンユニット11は、電気信号を音響に変換して放音するスピーカー部18などが収容されるケーシング12と、その使用時に人体の外耳介側に当接する位置関係のもとでケーシング12の放音面19側を覆うイヤーパッド22とを少なくとも備えて形成されている。
【0017】
このうち、ケーシング12は、必要部材が収容できる適宜容積の空間部13を内部に有し、かつ、スピーカー部18が配置される放音面19側を開口させた断面略椀形状を呈して形成されている。
【0018】
この場合、ケーシング12は、ケーシング本体部14と、該ケーシング本体部14の開放縁側から外方に一体となって延設されて放音面19を形成する略筒状の開口端部15とで形成されている。
【0019】
しかも、該開口端部15は、開放端15a近傍に位置する部位の外径がその奥側に位置する部位の外径よりも小径に形成して確保される小径段差部16を備えており、該小径段差部16の奥端境界部16a側には、ゴムなどからなる弾性リング材32が嵌め込むようにして設置さている。
【0020】
また、小径段差部16は、弾性リング材32を除く部位に位置する表出面16に多数本の短繊維43を静電植毛してなるフロック層42を備えている。
【0021】
この場合、静電植毛用の短繊維43としては、適宜のものを用いることができるが、経年変化の少ない耐候性素材、例えばポリエステル繊維等を好適に用いることができる。なお、各短繊維43は、小径段差部15の段差高さと略同等もしくはやや短寸な起毛長さのものを用いるのが望ましい。
【0022】
一方、イヤーパッド22は、図示しない弾性クッション材を内蔵させて人体の外耳介側と当接するパッド本体部23と、該パッド本体部23の内側に固定されてケーシング12の小径段差部16の表出面17側に差し込まれる支持筒部24とを備えて形成されている。
【0023】
この場合、支持筒部24は、その内径がケーシング12における小径段差部16の外径よりもやや大径で、完全に差し込んだ際にその先端面25が弾性リング材32に圧接する送込み長さaが付与されて形成されている。
【0024】
次に、上記構成からなる本発明につき、図示例に基づいてその作用・効果を説明すれば、ケーシング12における小径段差部16には、イヤーパッド22における支持筒部24を図2に示すように単に挿入するという簡単な操作で、抜脱困難な方向への摩擦力を生成させて確実に取り付けることで、ヘッドホンユニット11を組み立てることができる。
【0025】
すなわち、ケーシング12は、その小径段差部16の表出面17に短繊維43を静電植毛してなるフロック層42を備えているので、イヤーパッド22における支持筒部24を送り込むことでフロック層42を構成している短繊維43のそれぞれを、図2に示されているように弾性リング材32が位置する方向に倒伏させた状態のもとでその内側面24aに密に接触させることができる。
【0026】
このため、イヤーパッド22は、これをケーシング12側から引き抜こうとしても倒伏している各短繊維43の向きを逆方向に変えることができないために、支持筒部24の内側面24aとフロック層42の間に摩擦力が生じて引き抜くことが難しくなり、ケーシング12側に確実に取り付けた状態のもとでヘッドホンユニット11として組み立てることができる。
【0027】
しかも、ケーシング12における小径段差部16の奥端境界部16aとイヤーパッド22における支持筒部24の先端面25とは、介在させた弾性リング材32により密に弾接する結果、がたつきのない状態のもとでヘッドホンユニット11を組み立てることができることになる。
【0028】
また、短繊維43に例えばポリエステル繊維のような経年変化の少ない耐候性素材を用いている場合には、イヤーパッド22の交換を繰り返し行っても耐久性を高めて長期にわたり安定的にヘッドホンユニット11として使用することができる。
【0029】
しかも、イヤーパッド22を交換する際には、該イヤーパッド22における支持筒部24を周方向に捩るように回転させながら引っ張ることにより、各短繊維43を径方向に傾かせた状態のもとで簡単にケーシング12側から引き抜くことができる。
【0030】
つまり、本発明によれば、ヘッドホンユニット11は、ケーシング12の小径段差部16に単にフロック層42を設けることで、従来例は容易ではなかったイヤーパッド22の交換を極めて簡単に行うことができることになる。
【0031】
以上は、本発明を図示例に基づいて説明したものであり、その具体的な実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、ケーシング12における小径段差部16の奥端境界部16a側には、所望により弾性リング材32を配置せず、直接にイヤーパッド22における支持筒部24の先端面25が当接するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0032】
11 ヘッドホンユニット
12 ケーシング
13 空間部
14 ケーシング本体部
15 開口端部
15a 開口縁
16 小径段差部
16a 奥端境界部
17 表出面
18 スピーカー部
19 放音面
22 イヤーパッド
23 パッド本体部
24 支持筒部
24a 内側面
25 先端面
32 弾性リング材
42 フロック層
43 短繊維
a 送込み長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号を音響に変換して放音するスピーカー部などが収容されるケーシングと、その使用時に人体の外耳介側に当接する位置関係のもとで前記ケーシングの放音面側を覆うイヤーパッドとを少なくとも備えるヘッドホンユニットにおいて、
前記ケーシングは、前記放音面側を開口させた略筒状の開口端部の開口端近傍位置に小径段差部を備え、
前記イヤーパッドは、人体の外耳介側に当接するパッド本体部と、該パッド本体部の内側に固定されて前記小径段差部の表出面側に差し込まれる支持筒部とを備え、
小径段差部の前記表出面には、前記支持筒部の内側面と接触した際に倒伏する起毛長さの短繊維を静電植毛してなるフロック層を設けたことを特徴とするヘッドホンユニット。
【請求項2】
前記小径段差部の奥端境界部には、弾性リングを配置した請求項1に記載のヘッドホンユニット。
【請求項3】
前記短繊維には、経年変化の少ない耐候性素材を用いた請求項1または2に記載のヘッドホンユニット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−187151(P2010−187151A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29304(P2009−29304)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000128566)株式会社オーディオテクニカ (787)
【Fターム(参考)】