説明

ヘッド浮上量測定装置および測定方法

【課題】ディスクの回転数変化に応じて浮上量が大きく変わり、RPMキャリブレーションが可能なヘッド浮上量測定装置および測定方法を得る。
【解決手段】ディスクの回転中に生じる気体流を利用して浮上するヘッド本体の浮上量として、ディスクの表面と対向するヘッド本体の対向面との間隔を測定するヘッド浮上量測定装置であって、回転するガラスディスク41と、ヘッド本体11を上記ガラスディスク41に対向させ、ガラスディスク41の回転状態では、上記ヘッド本体11が上記ガラスディスク41の下表面41a上に浮上するように上記ヘッド本体11をフレキシャ31を介して先端部に支持するロードビーム41と、上記ロードビーム41の他端部を、上記ヘッド本体11が上記ガラスディスク41の下表面41aから接離する方向に微動させるマイクロメータ43とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッド本体および透明ディスクとで反射された光の干渉光強度によりヘッド本体のヘッド浮上量を測定するヘッド浮上量測定装置および測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク記録再生装置の主要部品である磁気ヘッドは、磁気ディスク(記録媒体)が回転したときに磁気ディスク表面と磁気ヘッドの間に生じる気体流によって浮上し、その浮上姿勢を保った状態で、回転中の磁気ディスクにデータを書き込み、読み取る構成である。磁気ヘッドの浮上量(Flying Height)は、通常、ヘッドジンバルアッセンブリ(HGA)の段階で浮上量測定装置(Flying Height Tester)により測定され、評価される。
【0003】
ヘッド浮上量測定装置は種々開発されているが、磁気ディスクの替わりに、ガラス等で形成された透明ディスクを使用し、対向するヘッド本体表面および透明ディスクの表面での反射光の干渉を利用してヘッド浮上量を光学的に測定するタイプが広く用いられている。
【0004】
従来の浮上量測定装置の概要を図6に示した。ヘッドジンバルアッセンブリは、薄膜磁気素子113がスライダ112とに形成されたヘッド本体111と、このヘッド本体111を弾性的に支持するフレキシャ121と、このフレキシャ121が先端部に装着されたロードビーム131とを備えている。ロードビーム131は、他端部が揺動アクチュエータ142に支持されていて、揺動アクチュエータ142の軸心を中心として、先端部のヘッド本体111をガラスディスク141の略半径方向に移動させる。ガラスディスク141は、スピンドルモータ143によって所定回転数(rpm)で回転駆動される。ヘッド本体111は、ロードビーム131の弾性応力によるロード圧と、ヘッド本体111と回転するガラスディスク141との間に生じる圧力とが均衡するように浮上し、フレキシャ121の弾性応力に抗してガラスディスク141に対する姿勢を変えてディスクの凹凸等に追従することができる。
【0005】
光源144から射出された可干渉光は、ビームスプリッタ145でガラスディスク141に向かって反射され、ガラスディスク141に垂直に入射し、一部はガラスディスク141の裏面で反射してビームスプリッタ145に戻り、一部はガラスディスク141を透過してヘッド本体111の媒体対向面114で反射し、ガラスディスク141を透過してビームスプリッタ145に戻る。
【0006】
ビームスプリッタ145に戻った光束は、ビームスプリッタ145を透過し、反射光学系146で反射されて撮像素子147に入射する。撮像素子147は、入射した干渉光強度に応じた映像信号をパーソナルコンピュータ151に出力する。パーソナルコンピュータ151は、入力した映像信号の干渉光強度(輝度)を解析して浮上量を演算する。
【0007】
ここで、ヘッド本体111の媒体対向面114の形状、素材、反射率、浮上量は、ヘッド本体111の種類が異なれば異なる。そこで浮上量測定前に反射光の強度と浮上量との関係を求めるキャリブレーション処理を実行する。キャリブレーション方法としては、ガラスディスク141の回転数を変化させて浮上量を変化させるRPMキャリブレーション法と、機械的にヘッド本体111をガラスディスク141から引き離して浮上量を変化させるRetractキャリブレーション法とがある。RPMキャリブレーション法の方がスムースかつ高精度の浮上量測定が可能であった。
【特許文献1】特開平5-322522号公報
【特許文献2】特開平9-280829号公報
【特許文献3】特開2001-35110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、近年普及してきた低浮上化と負圧スライダは、ガラスディスクの回転数を変化させても浮上量の変化が少ないため、RPMキャリブレーション法では浮上量測定を行うことができないので、Retractキャリブレーション法により浮上量測定を行う必要があった。
【0009】
従来のRetractキャリブレーション法では、ヘッド本体111を透明ディスクから引き離す方向にロードビーム131の略中間をロードバー133によって押圧していた(特許文献2)。
【0010】
そのため、ヘッド本体111を支持するロードビーム131のばね性が損なわれてしまう。ヘッド本体111は、ロードビーム131の弾性応力と、ヘッド本体111とガラスディスク41の間に作用する圧力とが均衡するように浮上し、フレキシャ121の弾性応力によって姿勢制御されているが、従来例ではフレキシャ121の弾性応力、弾性変位量にヘッド本体111の浮上量が依存してしまう。そのため、ロードバー133を徐々に下降させても、フレキシャ121の弾性応力が一定値を超えるまでは、ヘッド本体111は姿勢を変えるだけでガラスディスク141からの浮上量はほとんど変化しなかった(図7)。しかし、フレキシャ121の弾性応力が一定値を超えると、突然、ヘッド本体111がガラスディスク141から離反してしまい(図8)、ヘッド本体111をガラスディスク141から連続的に離反させることができない、という問題があった。
【0011】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、ディスクの回転数変化に応じて浮上量が大きく変わり、RPMキャリブレーションが可能なヘッド浮上量測定装置および測定方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる従来の問題を解決する本発明は、ディスクの回転中に生じる気体流を利用して浮上するヘッド本体の浮上量として、ディスクの表面とこの表面に対向するヘッド本体の対向面との間隔を測定するヘッド浮上量測定装置であって、ヘッド本体を上記ディスクに対向させ、透明ディスクの回転状態では、上記ヘッド本体が上記ディスクの表面上に浮上するように上記ヘッド本体を先端部に支持するヘッド支持部材と、このヘッド支持部材の他端部を、上記ヘッド本体が上記ディスクの表面から接離する方向に微動させる微動機構とを備えたことに特徴を有する。
【0013】
別の観点に基づく本発明は、ディスクの回転中に生じる気体流を利用して浮上するヘッド本体の浮上量として、ディスクの表面とこの表面に対向するヘッド本体の対向面との間隔を測定するヘッド浮上量測定装置であって、回転する透明ディスクと、ヘッド本体を上記透明ディスクの表面に対向させ、透明ディスクの回転状態では、上記ヘッド本体が上記透明ディスクの表面上に浮上するように上記ヘッド本体を先端部に支持するヘッド支持部材と、上記透明ディスクの表面およびヘッド本体の対向面で多重反射されるように、可干渉光を上記透明ディスクへ導く光学系と、上記透明ディスクおよびヘッド本体からの反射光を受光して反射光強度データを出力する反射光検出手段と、上記反射光強度データに基づいて上記ヘッド浮上量を演算する演算手段と、上記ヘッド支持部材の他端部を、上記ヘッド本体が上記透明ディスクの表面から接離する方向に微動させてヘッド本体のロード圧を調整する微動機構とを備えたことに特徴を有する。
【0014】
実際的には、上記ヘッド支持部材は、金属材料からなり透明ディスク上に延びるロードビームと、このロードビームの透明ディスク側に位置する弾性変位可能な舌片を有し該ロードビームに結合される金属材料からなるフレキシャと、上記舌片の透明ディスク側の面に固定されたヘッド本体とを備え、上記ロードビームの他端部を支持し、ヘッド本体を記録媒体の半径方向に移動させる揺動アクチュエータとを備え、上記微動機構は、この揺動アクチュエータを支持しかつ揺動アクチュエータを上記ヘッド本体が上記透明ディスクに対して接離する方向に微動させる。
【0015】
上記微動機構は、上記透明ディスクの回転軸と平行に上記揺動アクチュエータを移動させるマイクロメータで構成できる。このマイクロメータは、手動によりまたは電動手段によって予め設定された基準位置から範囲内において駆動する。手動操作によれば、ヘッド本体または支持部材の種別にかかわらず調整が可能となり、想定外の調整も可能になる。電動手段によれば、予め調整量を設定することにより、自動制御が可能になる。
【0016】
方法にかかる本発明は、ヘッド支持部材の先端部に支持したヘッド本体を、回転する透明ディスクに対向させて上記ヘッド本体を上記透明ディスク上に浮上させ、上記透明ディスクの表面および上記ヘッド本体の対向面で多重反射されるように、可干渉光を上記透明ディスクへ導き、上記透明ディスクおよびヘッド本体からの多重反射光を受光し、受光した反射光強度に基づいて上記ヘッド浮上量を演算するヘッド浮上量測定方法であって、上記ヘッド支持部材の他端部を、上記ヘッド本体が上記透明ディスクの表面から接離する方向に微動させて上記ヘッド本体へのロード圧を調整することに特徴を有する。
【0017】
より実際的には、上記ヘッド支持部材の他端部を、上記ヘッド本体が上記透明ディスクの表面から離反する方向に微動させて上記ヘッド本体へのロード圧を下げた状態で、RPMキャリブレーションを実行する。ヘッド支持部材が全体的に透明ディスクの表面から離反してヘッド本体のロード圧が下がるので、ヘッド浮上量が透明ディスクの回転数に応じて滑らかに変化し、RPMキャリブレーションをスムースかつ高精度に実施できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のヘッド浮上量測定装置によれば、ディスクに対するヘッド本体の浮上量をディスクの回転数に応じて滑らかに変化させることが可能になり、スムースに正確なRPMキャリブレーションができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明のヘッド浮上量測定装置で測定する、一般的なヘッドジンバルアッセンブリの主要構成部材を分解して示す斜視図である。ヘッド本体11は、ハードディスクなどの記録ディスク(記録媒体)D(図1)に対向するスライダ12を有し、このスライダ12のトレーリング側端面に薄膜素子13が設けられている。スライダ12はセラミック材料などにより形成されている。薄膜素子13は、磁気抵抗効果を利用して記録ディスクDからの洩れ磁界を検出し磁気信号を読み取るGMRヘッド(読み出しヘッド)と、コイルなどがパターン形成されたインダクティブヘッド(書き込みヘッド)とを有している。
【0020】
ヘッドジンバルアッセンブリは、周知のように、回転駆動されるディスクD外に揺動支点を持ち、先端部(自由端部)がディスクD上に延びたロードビーム31と、このロードビーム31の先端部に結合されたフレキシャ21を備えている。ロードビーム31とフレキシャ21はともに、板ばね材料(金属材料、一般的にステンレス)により形成される。ロードビーム31は、大略先細の平板状をしており、その先端部付近には、媒体(ディスクD)側(図示下方向)に突出する半球状接触部(突起部)33が形成されている。
【0021】
フレキシャ21は、固定部22と、この固定部22から前方(ロードビーム31の自由端方向)に延びる左右一対のアウトリガー23と、この一対のアウトリガー23の先端から内方に延びる接続部24と、この一対の接続部24に接続された舌片25とを備えている。舌片25と、アウトリガー23及び接続部24の間にはU字形のスリット26が形成されていて、舌片25は接続部24を中心にアウトリガー23に対して弾性変形可能である。ヘッド本体11は、舌片25の媒体対向側の面に接着等によって固定される。
【0022】
固定部22には位置決め孔22aが形成されており、この位置決め孔22aと、ロードビーム31に形成された位置決め孔32aとが位置合せされた後、固定部22がロードビーム31の下表面(ディスクD側の面)にレーザ溶接などの手段により固定される。固定点(機械的結合部分)22b、31bは、図1では1箇所示しているが、ヘッド本体11側にさらに図示しない複数の固定点を持っている。
【0023】
舌片25は、ヘッド本体11を固定する側の面とは反対側の面がロードビーム31の半球状接触部33に突き当てられ、ヘッド本体11を、半球状接触部33の頂点を支点として姿勢を自由に変えることができるように弾性的に支持している。ロードビーム31は、ヘッド本体11をディスクDに接離させる方向に弾性的に撓む。ロードビーム31がヘッド本体11をディスクDに接触させる方向に作用する弾性応力をロード圧という。なお、ロードビーム31及びフレキシャ21の媒体対向側(ディスクD側の面)には、ヘッド本体11(薄膜素子13)に接続される配線パターンが設けられるが図示を省略している。以上のロードビーム31およびフレキシャ21がヘッド支持部材を構成している。
【0024】
図2は、図1に示したヘッドジンバルアッセンブリのヘッド浮上量を測定する本発明の一実施形態であるヘッド浮上量測定装置40の主要構成を示す概略構成図である。ヘッド浮上量測定装置40は、磁気ディスクに代えて、透明ディスクとしてガラスディスク41を備え、回転中のガラスディスク41の下表面41aに対して下方から、ロードビーム31およびフレキシャ21の弾性応力により保持したヘッド本体11の媒体対向面14をロードし、ヘッド本体11の浮上量Z-hを測定する。ヘッド本体11の浮上量Z-hは、ガラスディスク41の下表面41aからヘッド本体11の媒体対向面14(薄膜素子13)までの距離とする。なお、媒体対向面14は、鏡面研磨された特定の平面形状(パターン)を持つエアベアリング形成面(ABS面)である。
【0025】
ロードビーム31は、他端部が揺動アクチュエータ42に装着され、先端部のヘッド本体11をガラスディスク41の下表面41aに対向保持する。ロードビーム31は、この揺動アクチュエータ42の軸を中心として回動駆動され、ヘッド本体11をガラスディスク41の略半径方向に移動させる。ガラスディスク41は、スピンドルモータ43のスピンドルに固定され、このスピンドルモータ43によって所定回転数(rpm)で回転駆動される。ヘッド本体11は、ガラスディスク41の下表面41aと媒体対向面14との間を流れる空気流およびその粘性と、ロードビーム31の弾性応力とが均衡した浮上状態に保持され、さらにフレキシャ21の弾性応力に抗してガラスディスク41に対する姿勢を変えてディスクの凹凸等に追従する。
【0026】
光源44から射出された測定光(可干渉光)は、ビームスプリッタ45でガラスディスク41に向かって反射され、ガラスディスク41の上表面41bに垂直に入射し、一部はガラスディスク41の下表面41a(空気層との境界面)で反射してビームスプリッタ45方向に戻り、一部はガラスディスク41の下表面41aを透過してスライダ12の媒体対向面14で反射し、再びガラスディスク41の下表面41aから入射して上表面41bから射出してビームスプリッタ45に戻る。
【0027】
下表面41aおよび媒体対向面14で反射してビームスプリッタ45に戻った光束は、ビームスプリッタ45を透過し、反射光学系46で反射して撮像素子47に入射する。撮像素子47は、入射した干渉縞の強度に応じた映像信号を、画像処理装置、例えばパーソナルコンピュータ51に出力する。パーソナルコンピュータ51は、入力した映像信号の干渉縞の強度(輝度)を、公知の方法、アルゴリズムで解析して浮上量を演算する。なお、干渉縞の強度は、波長および浮上量Z-h(媒体対向面14と下表面41aとの間隔)に依存するので、光源44からは複数の波長を含む測定光を射出し、撮像素子47は各波長光に感度を有するものが使用される。
【0028】
本実施形態では、揺動アクチュエータ42をマイクロメータ53で支持している。マイクロメータ53は揺動アクチュエータ42を、ガラスディスク41の下表面41aと直交する方向(スピンドルモータ43の軸と平行)となるZ軸方向に微動させることができる。マイクロメータ53を駆動して揺動アクチュエータ42をZ軸方向に微動させると、ロードビーム31がガラスディスク41の下表面41aに対して平行に接離移動する。つまり、ロードビーム31の先端部に装着されたヘッド本体11をガラスディスク41の下表面41aに対して接離方向に微動させて、ヘッド本体11を下表面41aに対して押圧するロード圧を変化させることができる。マイクロメータ53は電動、機械式のいずれかまたは両方で駆動可能な構成でよいが、図示実施例は機械式であって、つまみ54を回転させることで、揺動アクチュエータ42を微動させることができるものとする。
【0029】
図3および図4は、ガラスディスク41に対してヘッド本体11が浮上している様子を説明する側面図である。図3は、揺動アクチュエータ42を初期位置に保持した通常作動状態を示している。図4には、揺動アクチュエータ42をこの初期位置から僅かに下降させてロード圧を下げた状態で、ガラスディスク41を高速回転させた状態を示した。
【0030】
使用者がマイクロメータ53のつまみ54を回転操作すると、揺動アクチュエータ42が上昇または下降して、ロードビーム31(の軸部)が上昇または下降する。ロードビーム31(の軸部)が上昇すると、ヘッド本体11をガラスディスク41の下表面41aに押圧することになり、ヘッド本体11を下表面41aに押圧するロード圧が増加する。一方、揺動アクチュエータ42を下降させると、ロードビーム31(の軸部)が下降し、ヘッド本体11を下表面41a方向に押圧するロード圧が減少する。
【0031】
図5には、ロード圧およびガラスディスク41の回転数(rpm)と浮上量Z-hとの関係をグラフにして示した。同図中、横軸は回転数(rpm)、縦軸は浮上量(nm)であって、菱形でプロットした折れ線グラフは通常使用状態における、ヘッド本体11を下表面41aに押圧するロード圧の場合、正方形でプロットした折れ線グラフは同ロード圧を小さくした場合の状態を示している。図5のグラフよりこの実施例では、揺動アクチュエータ42を下降させることでロード圧が小さくなり、ガラスディスク41の回転数変化に応じてヘッド本体11の浮上量Z-hを50nmから350nmを超えて変化可能なことが分かる。
【0032】
このヘッド浮上量測定装置によるRPMキャリブレーション操作について説明する。先ず、ガラスディスク41を所定回転速度で回転させた状態で揺動アクチュエータ42を駆動してヘッド本体11をガラスディスク41の下表面41aに対してロードさせ、光源44から射出された測定光がヘッド本体11の媒体対向面14で反射して撮像素子47で受光し、反射光の干渉縞の強度を測定できるように調整する。
【0033】
次に、スピンドルモータ43の回転数(rpm)を変動させてガラスディスク41の回転数を変化させながら、干渉縞の強度変化を測定する。使用者は、干渉縞の強度変化を観察しながら、マイクロメータ53のつまみ54を回動操作、例えばロード圧が小さくなる下降方向に回動操作して揺動アクチュエータ42を初期位置から下降させる。そうして、ガラスディスク41の回転数変動に応じてヘッド本体11の浮上量が、図5にロード圧小でプロットした折れ線グラフのように変動して干渉縞に強度変化が生じるように調整する。
【0034】
このようにマイクロメータ53を操作してヘッド本体11のロード圧を小さくした状態で、RPMキャリブレーション法を実行してヘッド本体11の浮上量Z-hと干渉縞の強度との関係を設定する。ヘッド本体11の浮上量と干渉縞の強度との関係を設定したら、マイクロメータ53を操作して揺動アクチュエータ42の位置を初期位置に戻し、干渉縞の強度からヘッド本体11の浮上量Z-hを求める。
【0035】
図示形態では、ロードビーム31を昇降させる微動機構としてマイクロメータ53を使用したが、マイクロメータに代えて、マイクロアクチュエータ、マイクロステージ等を使用できる。本実施形態ではRPMキャリブレーションの際にロードビーム31を昇降させる操作を使用者が手動でするものとしたが、マイクロメータ53を電動駆動として、RPMキャリブレーション開始の際および終了後に電動駆動する自動制御としてもよい。また、微動機構として連続的に微動可能なマイクロメータ53を使用したが、微動機構の他の実施例では所定微細間隔でステップ移動可能なマイクロステップモータ等により駆動する構成とし、さらに他の実施例では初期位置とロード圧を軽減する位置の二位置間を移動する構成とする。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明のヘッド浮上量測定装置で測定するヘッド本体を備えたヘッドジンバルアッセンブリの主要構成を分解して示す図である。
【図2】本発明の一実施形態であるヘッド浮上量測定装置の主要構成図である。
【図3】同ヘッド浮上量測定装置において、揺動アクチュエータを初期位置に設定し、ガラスディスクを基準回転数で回転させた状態におけるヘッド本体の浮上状態の模式図である。
【図4】同状態から、揺動アクチュエータを僅かに下降させてガラスディスクの回転数を高くした場合のヘッド本体の浮上状態の模式図である。
【図5】同ヘッド浮上量測定装置において、ロード圧およびガラスディスクの回転数(rpm)と浮上量zとの関係をグラフで示した図である。
【図6】従来のヘッド浮上量測定装置の主要構成図である。
【図7】従来のヘッド浮上量測定装置において、ロードバーによってロードビームを押圧した場合のヘッド本体の浮上状態の模式図である。
【図8】図7の状態から、ロードバーによってロードビームをさらに押し下げた場合のヘッド本体の浮上状態の模式図である。
【符号の説明】
【0037】
11 ヘッド本体
12 スライダ
13 薄膜素子
14 媒体対向面
21 フレキシャ
23 アウトリガー
24 接続部
25 舌片
26 スリット
31 ロードビーム
41 ガラスディスク
41a 下表面
42 揺動アクチュエータ
43 スピンドルモータ
44 光源
45 ビームスプリッタ
46 反射光学系
47 撮像素子
53 マイクロメータ
54 つまみ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクの回転中に生じる気体流を利用して浮上するヘッド本体の浮上量として、ディスクの表面とこの表面に対向するヘッド本体の対向面との間隔を測定するヘッド浮上量測定装置であって、
ヘッド本体を上記ディスクに対向させ、透明ディスクの回転状態では、上記ヘッド本体が上記ディスクの表面上に浮上するように上記ヘッド本体を先端部に支持するヘッド支持部材と、
このヘッド支持部材の他端部を、上記ヘッド本体が上記ディスクの表面から接離する方向に微動させる微動機構とを備えたことを特徴とするヘッド浮上量測定装置。
【請求項2】
ディスクの回転中に生じる気体流を利用して浮上するヘッド本体の浮上量として、ディスクの表面とこの表面に対向するヘッド本体の対向面との間隔を測定するヘッド浮上量測定装置であって、
回転する透明ディスクと、
ヘッド本体を上記透明ディスクの表面に対向させ、透明ディスクの回転状態では、上記ヘッド本体が上記透明ディスクの表面上に浮上するように上記ヘッド本体を先端部に支持するヘッド支持部材と、
上記透明ディスクの表面およびヘッド本体の対向面で多重反射されるように、可干渉光を上記透明ディスクへ導く光学系と、
上記透明ディスクおよびヘッド本体からの反射光を受光して反射光強度データを出力する反射光検出手段と、
上記反射光強度データに基づいて上記ヘッド浮上量を演算する演算手段と、
上記ヘッド支持部材の他端部を、上記ヘッド本体が上記透明ディスクの表面から接離する方向に微動させてヘッド本体のロード圧を調整する微動機構とを備えたことを特徴とするヘッド浮上量測定装置。
【請求項3】
請求項2記載のヘッド浮上量測定装置において、上記ヘッド支持部材は、金属材料からなり透明ディスク上に延びるロードビームと、このロードビームの透明ディスク側に位置する弾性変位可能な舌片を有し該ロードビームに結合される金属材料からなるフレキシャと、上記舌片の透明ディスク側の面に固定されたヘッド本体とを備え、上記ロードビームの他端部を支持し、ヘッド本体を記録媒体の半径方向に移動させる揺動アクチュエータとを備え、上記微動機構は、この揺動アクチュエータを支持しかつ揺動アクチュエータを上記ヘッド本体が上記透明ディスクに対して接離する方向に微動させるヘッド浮上量測定装置。
【請求項4】
請求項2記載のヘッド浮上量測定装置において、上記微動機構は、上記透明ディスクの回動軸と平行に上記揺動アクチュエータを移動させるマイクロメータであるヘッド浮上量測定装置。
【請求項5】
請求項4記載のヘッド浮上量測定装置において、上記マイクロメータは、手動によりまたは電動手段によって予め設定された基準位置から範囲内において駆動されるヘッド浮上量測定装置。
【請求項6】
ヘッド支持部材の先端部に支持したヘッド本体を、回転する透明ディスクに対向させて上記ヘッド本体を上記透明ディスク上に浮上させ、
上記透明ディスクの表面および上記ヘッド本体の対向面で多重反射されるように、可干渉光を上記透明ディスクへ導き、
上記透明ディスクおよびヘッド本体からの多重反射光を受光し、
受光した反射光強度に基づいて上記ヘッド浮上量を演算するヘッド浮上量測定方法であって、
上記ヘッド支持部材の他端部を、上記ヘッド本体が上記透明ディスクの表面から接離する方向に微動させて上記ヘッド本体へのロード圧を調整すること、を特徴とするヘッド浮上量測定方法。
【請求項7】
請求項6記載のヘッド浮上量測定方法において、上記ヘッド支持部材の他端部を、上記ヘッド本体が上記透明ディスクの表面から離反する方向に微動させて上記ヘッド本体へのロード圧を下げた状態で、RPMキャリブレーションを実行するヘッド浮上量測定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−302360(P2006−302360A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−120005(P2005−120005)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】