説明

ヘリオックスを用いるエアロゾル化した薬物の吸入のための医療デバイス

【課題】ヘリオックスガスを用いた吸入のための新規デバイスを提供する。
【解決手段】ヘリオックスガス中の薬物の肺送達のための医療デバイス10は、エアロゾル化手段12、導管手段18、ガスマスク14、およびへリオックスガス源を備え、吸入されるエアロゾルへの周囲の空気の巻き込みを防止するように、閉じた系として作動可能である。このデバイス10は、周囲空気でエアロゾルを希釈せずに、患者がこのエアロゾルを吸入する様式で、このエアロゾルを、導管手段18を通して、患者の口および鼻に固定されたガスマスク14へと流すことを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、薬物送達が必要な患者の肺への薬物送達を改善するためのデバイスおよび方法の分野にある。より詳細には、本発明は、ヘリオックス(heliox)を用いた吸入のためのエアロゾル化した薬物を提供するデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸器の病気の有効な処置について大きな必要性がありその必要性が増加している。現在の治療(これは、しばしば、最適ではない用量および/または無駄なかなりの量の薬物を送達プロセスで送達する)に対する改善の大きな余地がある。
【0003】
ヘリオックス(ヘリウムおよび酸素の混合物)の使用は、長い間、呼吸器の疾患の処置における使用について考慮されてきた。例えば、喘息の処置におけるヘリウムの使用は、1934年までさかのぼり、このとき、Barachは、急性喘息悪化を呈する患者および上気道閉塞性損傷を有する患者における改善を報告している(非特許文献1)。急性喘息の悪化の間におけるヘリオックスの使用の大部分の研究は、気道抵抗性を減少させ、流れを改善し、そして潜在的に呼吸不全をそらすかまたは機械的通気支持を促進する手段として、ヘリウムガス自体を調べている。これらの研究は、患者が能動的にヘリオックスを呼吸する間のピーク呼気流量、奇脈(非特許文献2)、機械換気の間のピーク気道圧力(非特許文献3)および動脈PaCOおよびpH(非特許文献4)のような終点の変化を測定している。
【0004】
ヘリオックスは、気管支拡張特性も抗炎症特性も有さないが、空気と比較したヘリオックスの低い密度に起因して、呼吸の作業を減少させ得る。ヘリウムの密度は、窒素の密度の7分の1であり、そしてこの低下した密度は、荒れた気道を通る所定の流量と関連する圧力勾配を有利に減少させる(非特許文献5)。すなわち、上気道の一部における乱流または移行ガスの流れが、ヘリオックスとの層流をなし得、ここで、空気と乱流になる。結果として、ヘリオックスは、正常な被験体における空気で測定される気道抵抗性の28〜49%まで気道抵抗性(Raw)を減少し得る(非特許文献6)。ヘリオックスの使用がまた、末梢気道および肺胞における酸素の拡散輸送を有利に増加し得ると考えられる。例えば、非特許文献7を参照のこと。これらの特性は、おそらく、呼吸の作業を低下し、より完成した薬理学的治療が効力を生じるときまで、一時的な利益であるとしても、有効性を提供する。
【0005】
吸入されるβアゴニスト(例えば、アルブテロール)は、急性の悪化に苦しむ喘息患者のための治療のかなめである。このような医薬は、しばしば、推進ガスとして空気または酸素を使用して、ジェット噴霧によって送達される。エアロゾル化薬物(例えば、アルブテロール)のための推進ガスとしてのヘリオックスの使用もまた企図される。酸素をヘリオックスで置き換えることの後ろにある理論は、ヘリオックスが上気道における乱流を減少すること、乱流が医療デバイス導管または患者の上気道におけるエアロゾルの早熟な堆積に少なくとも部分的に原因があること、および従って、ヘリオックスとともに吸入された薬物がより高い効率で、より遠位の気道に送達されるはずであることである(非特許文献8)。
【0006】
特定の限定された研究は、送達ガスとしてヘリオックスを使用して行われた。非特許文献9は、ヘリオックス70:30が、小児肺モデルにおける酸素噴霧器処置と比較してアルブテロール送達を改善したことを開示する。非特許文献10は、アルブテロールが定量用量吸入器によって送達されたかまたは噴霧器によって送達されたかに関わらず、機械的換気の肺モデルにおける類似の発見を開示する。Goodeらはまた、最高の送達が、ヘリオックス(80:20)換気回路内に噴霧器を駆動するために低い流量で100%Oを使用して、達成されることを開示する。さらに、非特許文献11は、誘導気管支収縮を伴うかまたは伴わない、ヒト被験体の肺胞への3.7ミクロンの直径(空気力学的)、放射線標識TEFLONTM粒子の送達を開示する。粒子は、0.5L/sおよび1.2L/sの流量を使用して空気またはヘリオックス(80:20)で吸入された。ヘリオックスガスを用いて、有意に多くの堆積が報告された。類似の結果は、安定な喘息被験体を使用する同一の研究において得られた(非特許文献12)。
【0007】
しかし、いくつかの臨床的研究は、特に急性の重篤な喘息の悪化または急性慢性閉塞性肺疾患(COPD)の悪化のためのエアロゾル化医薬の噴霧における、空気に対するヘリオックスを使用することの統計的に有意な利点を示していない。例えば、非特許文献13は、「気道における乱流を減少させるその能力および遠位肺組織に到達するその能力にも関わらず、ヘリオックスは、穏やか〜中程度の喘息の処置において、標準的な治療に対して臨床的に有意な利点を有さなかった」ことを結論づける。別の例として、非特許文献14は、「全体的にみて、気管支拡張剤の増強された送達は、喘息試験におけるポジティブな発見の説明ではないようであることが明らかである」ことを示す。なお別の例として、非特許文献15は、「急性COPDの悪化の処置の最初の2時間の間の気管支拡張剤の上昇気流噴霧のための推進ガスとしてのヘリオックスの使用は、空気の使用よりも速いFEV1を改善しなかった。処置の最初の2時間の間のFEF25−75のより速い改善は、小さく、不確かな臨床的有意性であった」と結論づける。気体流動物理学から理論的に期待されるように、増強された薬物送達あるいは急性喘息またはCOPDの悪化の増強された処置を実証するためにこれらの研究において、なぜヘリオックスが失敗したかは、文献から明らかではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Barach,Proc.Soc.Exp.Biol.Med.32:462〜64(1934)
【非特許文献2】Manthousら、「Heliox improves pulsus paradoxus and peak expiratory flow in nonintubated patients with severe asthma」Am.J.Respir.Crit.Care Med.151:310−14(1995)
【非特許文献3】Kass & Castriotta、「Heliox therapy in acute severe asthma」Chest 107:757〜60(1995)
【非特許文献4】Gluckら、「Helium−oxygen mixture in intubated patients with status asthmaticus and respiratory acidosis」Chest98:693〜98(1990)
【非特許文献5】Ballら、Clin.Intensive Care,12(3):105〜13(2001)
【非特許文献6】Manthousら、Respiratory Care,42(11):1034〜42(1997)
【非特許文献7】Nieら、Am.J.Physiol.Heart Circ.Physiol,280:H1875〜1881(2001)
【非特許文献8】Manthousら、Respiratory Care,42(11):1034〜42(1997)
【非特許文献9】Habibら、「Effect of helium−oxygen on delivery of albuterol in a pediatric volume cycled lung model;Pharmacotherapy 19:143〜49(1999)
【非特許文献10】Goodeら、「Improvement in aerosol delivery with helium−oxygen mixtures during mechanical ventilation」Am J Respir Crit Care Med 163:109〜14(201)
【非特許文献11】Svartengrenら、Experimental Lung Research、15:575〜85(1989)
【非特許文献12】Andersonら、Am.Rev.Respir.Dis.147:524〜28(1993)
【非特許文献13】Hendersonら、Ann.Emerg.Med.33:141〜46(1999)
【非特許文献14】Ballら、Clin.Intensive Care,12(3):105〜13(2001)
【非特許文献15】deBoisblancら、Crit.Care Med.28(9):3177〜80(2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、ヘリオックスによって提供される物理的特性の利点を利用するために、ヘリオックスを用いる吸入によるエアロゾル化した医薬を送達するための改善された効果的なデバイスおよび方法を開発することが望ましい。急性喘息、COPD、嚢胞性繊維症、ならびに他の呼吸性閉塞性疾患および障害を処置するための改善された方法を開発することもまた望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
改善された医療デバイスおよび方法が、薬物を患者に肺投与するために開発された。これらのデバイスおよび方法は、環境からの空気の巻き込みの問題(これは、吸気されるヘリウムの濃度を減少し、それによって、吸入されるガスの密度を増加させ、これは、ヘリオックスの有効性を制限し得る)を克服するか、または少なくとも部分的に軽減する。従って、本発明の医療デバイスは、高濃度のヘリウムおよびエアロゾル化された薬物を患者の肺に送達することを提供する。
【0011】
1つの局面において、ヘリオックスガスを使用して薬物送達が必要な患者の肺に薬物を送達するための医療デバイスが、提供される。好ましい実施形態において、デバイスは、(a)エアロゾル化サブアッセンブリであって、以下(i)第1ヘリオックスガス供給源に接続するためのガス入口;(ii)投与される薬物を含むための薬物レザバ、(iii)第1ヘリオックスガス供給源から受容されるヘリオックス推進ガス内に分散された粒子または液滴のエアロゾルを形成するための噴霧化手段であって、ここで、この粒子または液滴が薬物を含む噴霧化手段、および(iv)エアロゾルを放出するための排出出口を備える、エアロゾル化サブアッセンブリ;(b)ガスマスクであって、患者の口および鼻を覆って固定され得、供給源ガス開口部を備えるガスマスク;(c)第2ヘリオックスガス供給源に接続するための第2ガス入口;および(d)第1入口ポート、第2入口ポート、および出口ポートを備える分枝導管手段であって、ここで、この第1入口ポートが、エアロゾル化サブアッセンブリの排出出口と連絡しており、この第2入口ポートが、第2ガス入口と連絡しており、そしてこの出口ポートが、ガスマスクの供給源ガス開口部と連絡している分枝導管手段、を備え;ここで、このデバイスが、患者によるエアロゾルの吸入の前および吸入の間に、周囲の空気でのエアロゾルの希釈を妨げるために閉じた系として作動可能である。1つの実施形態において、このデバイスは、分枝導管手段の第2入口ポートと流体連絡するレザババックを備える。
【0012】
別の実施形態において、このデバイスは、噴霧器のガス入口に接続された圧縮ヘリオックスガスの供給源を備える。この圧縮ヘリオックスガスの供給源は、1つの実施形態において、第2ガス入口に接続され得る。1つの実施形態において、圧縮ヘリオックスガスの供給源は、2つの排出出口を有する単一のレギュレーター弁に接続されたタンクを備える。1つの実施形態において、単一のレギュレーター弁は、2つの排出出口の各々を通るヘリオックスの同一の流量を提供し得る。
【0013】
種々の実施形態において、エアロゾル化サブアッセンブリは、ジェット噴霧器または圧気(pneumatic)噴霧器、超音波噴霧器、または静電気噴霧器を含み得る。あるいは、エアロゾル化サブアッセンブリは、乾燥粉末送達のために適合され得る。好ましい実施形態において、デバイスは、55重量%より多くの薬物が、0.7ミクロン以上で5.8ミクロン未満の直径(MMAD)を有する粒子の形態であるエアロゾルを生成する。
【0014】
1つの実施形態において、ガスマスクは、さらに、呼息されたガスがガスマスクから吐き出され得る一方向弁を備える呼息ポートを備える。別の実施形態において、このデバイスは、分枝導管手段と第2ガス入口との間に配置される一方向弁を備え、その結果、この一方向弁は、エアロゾルが第2ガス入口を通って流れ出ることを妨げるように作動可能である。
【0015】
分枝導管手段は、種々の形態の導管構造であり得る。1つの実施形態において、分枝導管手段の第1入口ポートは、分枝導管手段の出口ポートと同軸である。別の実施形態において、分枝導管手段は、T字型導管コネクター、Y字型導管コネクター、または平行Y字型導管コネクターを備える。
【0016】
別の局面において、必要がある患者への薬物の肺投与のための方法を提供する。好ましい実施形態において、この方法は、以下の工程を包含する:(a)エアロゾル適用手段、導管手段、ガスマスクおよび少なくとも1つのヘリオックス気体供給源を備える医療用デバイスを提供する工程、ここで、医療用デバイスは、前記医療用デバイス内で生成されたエアロゾルに周囲空気の巻き込みを妨げるような閉じたシステムとして作動可能である;(b)液状形態または乾燥粉末形態での薬物の用量を提供する工程;(c)エアロゾル化手段を使用して、第1の流量で流しながら、ヘリオックス気体の第1の部分に分散された粒子または液滴のエアロゾルを形成する工程、ここで、前記粒子または液滴は、薬物を含み、そしてヘリオックス気体の第1の部分は、少なくとも1つの前記ヘリオックス気体供給原である;および(d)導管手段を通ってガスマスクへとエアロゾルを流す工程、ここで、ガスマスクは、患者によるエアロゾルの吸入の前および吸入の間に、周囲空気でエアロゾルを希釈することなく、患者がエアロゾルを吸入するような様式において、患者の口および鼻を覆って固定される。
【0017】
1つの実施形態において、導管手段、ガスマスクまたはその両方は、レザババックと流体連絡する。1つの実施形態において、導管手段は、第1の入口ポート、第2の入口ポート、および出口ポートを備える分枝導管を備え、ここで、第1の入口ポートは、エアロゾル化手段を備えるエアロゾル化サブアセンブリからの排出出口(discharge outlet)と連絡し、第2の入口ポートは、レザババックと連絡し、出口ポートは、ガスマスク中の供給気体開口部と連絡する。
【0018】
別の実施形態において、本方法は、第2の流量で、導管手段またはガスマスクへと、第2のヘリオックス部分を同時に導入する工程をさらに包含する。種々の実施形態において、第1および第2のヘリオックス部分は、それぞれまたは共に、50〜85vol.%のヘリウム、例えば、60〜85vol.%のヘリウム、70〜80vol.%のヘリウムまたは約80vol.%のヘリウムを含む。種々の実施形態において、第1の流量または第2の流量、あるいはその両方(すなわち、それぞれ同時)は、1分間あたり6〜30リットル、例えば、1分間あたり15〜20リットルである。1つの実施形態において、第1の流量および第2の流量の各々は、1分間あたり約18リットルである。なお別の実施形態において、医療用デバイスへと提供される第1および第2のヘリオックス部分の合わせた流量は、1分間あたり6〜60リットル、例えば、1分間あたり25〜45リットル、1分間あたり30〜40リットル、または約1分間あたり36リットルである。
【0019】
エアロゾル化される薬物は、液状形態(例えば、溶液または懸濁液)あるいは乾燥粉末形態で提供され得る。1つの実施形態において、薬物は、タンパク質またはペプチドである。別の実施形態において、薬物は、モノクローナル抗体を含む。本方法のなお別の実施形態において、薬物は、気管支拡張薬、抗炎症性剤、抗生物質、抗腫瘍性剤およびそれらの組み合せから選択される。なおさらなる実施形態において、薬物の他の型は適切であり得る。
【0020】
なお別の局面において、急性部分的上気道閉塞症(acute partial upper airway obstruction)および/または炎症を被る患者を処置する方法が、提供される。この方法は、好ましくは以下の工程を包含する:(a)エアロゾル化手段、導管手段、ガスマスクおよび少なくとも1つのヘリオックス気体供給源を備える医療用デバイスを提供する工程、ここで、医療用デバイスは、前記医療用デバイス内で生成されたエアロゾルに周囲空気の巻き込みを妨げるような閉じたシステムとして作動可能である;(b)液状形態または乾燥粉末形態での薬物の用量を提供する工程、前記薬物は、気管支拡張薬、抗炎症性剤またはその両方を含む;(c)医療用デバイスのエアロゾル化手段を使用して、少なくとも1つの前記ヘリオックス供給源からヘリオックス気体中に分散された粒子または液滴のエアロゾルを形成する工程、ここで、前記粒子または液滴は、前記薬物を含む;および(d)導管手段を通ってガスマスクへとエアロゾルを流す工程、ここで、ガスマスクは、エアロゾルを吸入するような患者のための様式において、患者の口および鼻を覆って固定される。好ましい実施形態において、患者によって吸入されるエアロゾルのヘリウム濃度は、75〜85vol.%、例えば、80vol.%である。
【0021】
この処置方法の1つの実施形態において、薬物は、αアゴニスト、βアゴニストまたはそのラセミ体混合物を含む気管支拡張薬である。1つの例において、気管支拡張薬としては、以下からなる群から選択されるβアゴニストが挙げられる:アルブテロール、フォルモテロール、サルメテロール(salmeterol)、ピルブテロール、メタプロテレノール、テルブタリンおよびメタンスルホン酸ビオルテロール。別の例において、薬物は、抗コリン作用性剤(例えば、臭化イプラトロピウム)を含む気管支拡張剤である。
【0022】
別の実施形態において、薬物は、ステロイド、クロモリン、ネドクロミル(nedocromil)およびロイコトリエンインヒビターから選択される抗炎症性剤である。1つの例において、抗炎症性剤としては、ステロイド、好ましくはコルチコステロイドが挙げられる。コルチコステロイドは、例えば、以下から選択され得る:ベクロメタゾン、ベタメタゾン、シクロメタゾン(ciclomethasone)、デキサメタゾン、トリアムシノロン、ブデソニド、ブチキソコート(butixocort)、シクレソニド(ciclesonide)、フルチカソン(fluticasone)、フルニソリド、イコメタゾン(icomethasone)、モメタゾン(mometasone)、チキソコルトール(tixocortol)、ロテプレドノール(loteprednol)、ブデソニド、プロピオン酸フルチカゾン(fluticasone propionate)、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、モメタゾン、ホメテロール(fometerol)、フルニソリド、トリアムシノロンアセトニド、テストステロン、プロゲステロンおよびエストラジオール。
【0023】
他の実施形態において、薬物は、抗生物質のトブラマイシンまたは抗腫瘍性剤のドキソルビシンである。
【0024】
処置方法の1つの実施形態において、薬物は液状形態で提供され、そしてエアロゾル化手段は、噴霧器を含み得る。あるいは、薬物は乾燥粉末形態で提供され得、そしてエアロゾル化手段は、適応された乾燥粉末吸入器または定量用量吸入器を含み得る。
より特定すれば、本発明は以下の項目に関し得る。
(項目1)
ヘリオックスガスを使用して、薬物を、薬物の送達を必要とする患者の肺に送達するための、医療デバイスであって、以下:
エアロゾル化サブアセンブリであって、以下:
第一のヘリオックスガス源への接続のためのガス入口、
投与されるべき薬物を収容するための薬物レザバ、
上記第一のヘリオックスガス源から受容されたヘリオックス駆動ガス中に分散した、粒子または液滴のエアロゾルを形成するための自動手段であって、上記粒子または液滴が、上記薬物を含有する、自動手段、および上記エアロゾルを排出するための排出出口を備えるエアロゾル化サブアセンブリ;
患者の口および鼻を覆って固定され得るガスマスクであって、上記ガスマスクは、源ガス開口部を備える、ガスマスク;
第二のヘリオックスガス源への接続のための二次ガス入口;ならびに
第一の入口ポート、第二の入口ポート、および出口ポートを備える、分枝導管手段であって、上記第一の入口ポートが、上記エアロゾル化サブアセンブリの上記排出出口と連絡しており、上記第二の入口ポートが、上記二次ガス入口と連絡しており、そして上記出口ポートが、上記ガスマスクの上記源ガス開口部と連絡している、分枝導管手段、を備え、ここで、上記デバイスは、上記患者による上記エアロゾルの吸入前および吸入中に、上記エアロゾルの、周囲の空気での希釈を防止するように、閉じた系として作動可能である、医療デバイス。
(項目2)
上記分枝導管手段の上記第二の入口ポートと連絡した、レザババッグをさらに備える、項目1に記載のデバイス。
(項目3)
上記エアロゾル化サブアセンブリの上記ガス入口に接続された、圧縮ヘリオックスガスの源をさらに備える、項目1に記載のデバイス。
(項目4)
上記圧縮ヘリオックスガスの源がまた、上記二次ガス入口に接続されている、項目3に記載のデバイス。
(項目5)
上記圧縮ヘリオックスガスの源が、2つの排出出口を有する単一の調整弁に結合されたタンクを備える、項目4に記載のデバイス。
(項目6)
上記単一の調整弁が、上記2つの排出出口の各々を通して、同一の流量のヘリオックスを提供する、項目5に記載のデバイス。
(項目7)
上記エアロゾル化サブアセンブリが、ジェット噴霧器または空気噴霧器を構成する、項目1に記載のデバイス。
(項目8)
上記エアロゾル化サブアセンブリが、超音波噴霧器を構成する、項目1に記載のデバイス。
(項目9) 上記エアロゾル化サブアセンブリが、静電噴霧器を構成する、項目1に記載のデバイス。
(項目10)
上記エアロゾル化サブアセンブリが、乾燥粉末薬物送達のために適合されている、項目1に記載のデバイス。
(項目11)
上記薬物レザバが、1用量の上記薬物を含むブリスタまたはパウチを備える、項目10に記載のデバイス。
(項目12)
上記ガスマスクが、呼気ポートをさらに備え、上記呼気ポートは、呼気されたガスが上記ガスマスクから追い出されることを可能にする一方向弁を備える、項目1に記載のデバイス。
(項目13)
上記分枝導管手段の上記第一の入口ポートが、上記分枝導管手段の上記出口ポートと同軸である、項目1に記載のデバイス。
(項目14)
上記分枝導管手段が、T字型導管コネクターを備える、項目13に記載のデバイス。
(項目15)
上記分枝導管手段が、Y字型導管コネクターを備える、項目1に記載のデバイス。
(項目16)
上記分枝導管が、平行なY字型導管コネクターを備える、項目1に記載のデバイス。
(項目17)
上記分枝導管手段と上記二次ガス入口との間に配置された、一方向弁をさらに備え、上記一方向弁は、上記エアロゾルが、上記二次ガス入口を通って流出することを防止するように作動可能である、項目1に記載のデバイス。
(項目18)
エアロゾルを発生させる、項目1に記載のデバイスであって、上記エアロゾルにおいて、上記薬物の55重量%より多くが、0.7ミクロン以上でありかつ5.8ミクロン未満の空気力学的直径を有する粒子の形態である、デバイス。
(項目19)
薬物の肺投与を必要とする患者に、薬物を肺投与するための方法であって、以下:
医療デバイスを提供する工程であって、上記医療デバイスは、エアロゾル化手段、導管手段、ガスマスク、および少なくとも1つのヘリオックスガスの源を備え、上記医療デバイスは、上記医療デバイス内で発生したエアロゾル内への周囲の空気の巻き込みを防止するように、閉じた系として作動可能である、工程;
1用量の薬物を、液体形態または乾燥粉末形態で提供する工程;
上記エアロゾル化手段を使用して、第一の流量で流れるヘリオックスガスの第一の部分に分散する粒子または液滴のエアロゾルを形成する工程であって、上記粒子または液滴が、上記薬物を含有し、そして上記ヘリオックスガスの第一の部分が、上記少なくとも1つのヘリオックスガスの源に由来する、工程;ならびに
上記エアロゾルを、上記導管手段を通して上記ガスマスク内へと流す工程であって、上記ガスマスクは、患者による上記エアロゾルの吸入前および吸入中に、上記エアロゾルの、周囲の空気での希釈なしで、上記患者が上記エアロゾルを吸入するための様式で、上記患者の口および鼻を覆って固定されている、工程、を包含する、方法。
(項目20)
第二のヘリオックス部分を、上記導管手段または上記ガスマスク内へと、第二の流量で同時に導入する工程をさらに包含する、項目19に記載の方法。
(項目21)
上記導管手段、上記ガスマスク、またはこれらの両方が、レザババッグと流体連絡している、項目20に記載の方法。
(項目22)
上記導管手段が、分枝導管を備え、上記分枝導管は、第一の入口ポート、第二の入口ポート、および出口ポートを備え、上記第一の入口ポートは、上記エアロゾル化手段を構成するエアロゾル化サブアセンブリからの排出出口と流体連絡しており、上記第二の入口ポートは、上記レザババッグと連絡しており、上記出口ポートは、上記ガスマスクにおける源ガス開口部と連絡している、項目21に記載の方法。
(項目23)
上記第一のヘリオックスの部分および第二のヘリオックスの部分が、ともに、約50体積%と85体積%との間のヘリウムを含有する、項目20に記載の方法。
(項目24)
上記第一のヘリオックスの部分および第二のヘリオックスの部分が、ともに、約60体積%と85体積%との間のヘリウムを含有する、項目23に記載の方法。
(項目25)
上記第一のヘリオックスの部分および第二のヘリオックスの部分が、ともに、約70体積%と80体積%との間のヘリウムを含有する、項目24に記載の方法。
(項目26)
上記第一のヘリオックスの部分および第二のヘリオックスの部分が、ともに、80体積%のヘリウムを含有する、項目20に記載の方法。
(項目27)
上記第一のヘリオックスの部分および第二のヘリオックスの部分が、各々、80体積%のヘリウムを含有する、項目20に記載の方法。
(項目28)
上記第一の流量が、1分間あたり6リットルと30リットルとの間である、項目19に記載の方法。
(項目29)
上記第一の流量が、1分間あたり15リットルと20リットルとの間である、項目28に記載の方法。
(項目30)
上記第二の流量が、1分間あたり6リットルと30リットルとの間である、項目20に記載の方法。
(項目31)
上記第二の流量が、1分間あたり15リットルと20リットルとの間である、項目30に記載の方法。
(項目32)
上記第一の流量および上記第二の流量が、各々、1分間あたり約18リットルである、項目20に記載の方法。
(項目33)
上記医療デバイスに供給される、上記第一のヘリオックス部分および第二のヘリオックス部分の合わせた流量が、1分間あたり6リットルと60リットルとの間である、項目20に記載の方法。
(項目34)
上記医療デバイスに供給される、上記第一のヘリオックス部分および第二のヘリオックス部分の合わせた流量が、1分間あたり25リットルと45リットルとの間である、項目33に記載の方法。
(項目35)
上記医療デバイスに供給される、上記第一のヘリオックス部分および第二のヘリオックス部分の合わせた流量が、1分間あたり30リットルと40リットルとの間である、項目34に記載の方法。
(項目36)
上記医療デバイスに供給される、上記第一のヘリオックス部分および第二のヘリオックス部分の合わせた流量が、1分間あたり約36リットルである、項目35に記載の方法。
(項目37)
上記エアロゾル化手段が、ジェット噴霧器または空気噴霧器を構成する、項目19に記載の方法。
(項目38)
上記薬物が、乾燥粉末形態である、項目19に記載の方法。
(項目39)
上記薬物が、モノクローナル抗体を含有する、項目19に記載の方法。
(項目40)
上記薬物が、タンパク質またはペプチドを含有する、項目19に記載の方法。
(項目41)
上記薬物が、気管支拡張剤、抗炎症性剤、抗生物質、抗腫瘍剤、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目19に記載の方法。
(項目42)
提供される上記薬物の量および上記エアロゾル化手段の作動の様式が、上記薬物を、1分間と30分間との間の時間にわたって送達するために効果的である、項目19に記載の方法。
(項目43)
上記エアロゾル化手段が、ジェット噴霧器または空気噴霧器を備え、上記第一のヘリオックス部分および第二のヘリオックス部分が、ともに、80体積%のヘリウムを含有し、そして上記医療デバイスに供給される、上記第一のヘリオックス部分および第二のヘリオックス部分の合わせた流量が、1分間あたり30リットルと40リットルとの間である、項目20に記載の方法。
(項目44)
上記用量のエアロゾル化に続いて、上記薬物の55重量%より多くが、0.7ミクロン以上でありかつ5.8ミクロン未満の直径を有する粒子の形態である、項目19に記載の方法。
(項目45)
急性部分的上気道閉塞および/または炎症に罹患する患者を処置する方法であって、以下:
医療デバイスを提供する工程であって、上記医療デバイスは、エアロゾル化手段、導管手段、ガスマスク、および少なくとも1つのヘリオックスガスの源を備え、上記医療デバイスは、上記医療デバイス内で発生したエアロゾル内への周囲の空気の巻き込みを防止するように、閉じた系として作動可能である、工程;
1用量の薬物を、液体形態または乾燥粉末形態で提供する工程であって、上記薬物が、気管支拡張剤、抗炎症性剤、またはその両方を含有する、工程;
上記医療デバイスの上記エアロゾル化手段を使用して、上記少なくとも1つのヘリオックスの源からのヘリオックスガスに分散する粒子または液滴のエアロゾルを形成する工程であって、上記粒子または液滴が、上記薬物を含有する、工程;ならびに
上記エアロゾルを、上記導管手段を通して上記ガスマスク内へと流す工程であって、上記ガスマスクは、患者が上記エアロゾルを吸入するための様式で、上記患者の口および鼻を覆って固定されている、工程、を包含する、方法。
(項目46)
上記患者によって吸入される上記エアロゾルのヘリウム濃度が、60体積%と85体積%との間である、項目45に記載の方法。
(項目47)
上記患者によって吸入される上記エアロゾルのヘリウム濃度が、80体積%である、項目45に記載の方法。
(項目48)
上記薬物が、αアゴニスト、βアゴニスト、またはこれらのラセミ混合物を含有する
管支拡張剤である、項目45に記載の方法。
(項目49)
上記気管支拡張剤が、アルブテロール、フォルモテロール、サルメテロール、ピルブテロール、メタプロテレノール、テルブタリン、およびメタンスルホン酸ビトルテロールからなる群より選択されるβアゴニストを含有する項目48に記載の方法。
(項目50)
上記気管支拡張剤が、エピネフリンのラセミ混合物を含有する、項目48に記載の方法。
(項目51)
上記薬物が、抗コリン作用薬を含有する気管支拡張剤である、項目45に記載の方法。
(項目52)
上記抗コリン作用薬が、イプラトロピウムブロマイドを含有する、項目51に記載の方法。
(項目53)
上記薬物が、ステロイド、クロモリン、ネドクロミル、およびロイコトリエンインヒビターからなる群より選択される抗炎症性剤である、項目45に記載の方法。
(項目54)
上記抗炎症性剤が、コルチコステロイドを含有する、項目53に記載の方法。
(項目55)
上記コルチコステロイドが、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、シクロメタゾン、デキサメタゾン、トリアムシノロン、ブデソニド、ブチキソコルト、シクレソニド、フルチカゾン、フルニソリド、イコメタゾン、モメタゾン、チキソコルトール、ロテプレドノール、ブデソニド、フルチカゾンプロピオネート、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、モメタゾン、フォメテロール、フルニゾリド、トリアムシノロンアセトニド、テストステロン、プロゲステロン、およびエストラジオールからなる群より選択される、項目54に記載の方法。
(項目56)
上記薬物が、液体形態で提供され、そして上記エアロゾル化手段が、噴霧器を備える、項目45に記載の方法。
(項目57)
上記薬物が、トブラマイシンである、項目19に記載の方法。
(項目58)
上記薬物が、ドキソルビシンである、項目19に記載の方法。
(項目59)
ヘリオックスガスを使用して、薬物の送達を必要とする患者の肺に、薬物を送達するための医療デバイスであって、以下:
エアロゾル化サブアセンブリであって、以下:
ヘリオックスガス源への接続のための、ガス入口、
投与されるべき薬物を収容するための、薬物レザバ、
上記ヘリオックスガス源から受容されたヘリオックス駆動ガス中に分散した、粒子または液滴のエアロゾルを形成するための、噴霧手段であって、上記粒子または液滴が、上記薬物を含有する、噴霧手段、および
上記エアロゾルの排出のための、排出出口、を備える、エアロゾル化サブアセンブリ;
患者の口および鼻を覆って固定され得るガスマスクであって、上記ガスマスクは、源ガス開口部を備える、ガスマスク;
入口および出口を備えるレザババッグであって、上記入口は、上記エアロゾル化サブアセンブリの上記排出出口と連絡しており、そして上記出口は、上記ガスマスクの源ガス開口部と連絡している、レザババッグ;ならびに
上記ガスマスクと連絡している少なくとも1つの呼気ポートであって、上記1つの呼気ポートは、一方向弁を備え、その結果、上記デバイスは、上記患者による上記エアロゾルの吸入前および吸入中に、上記エアロゾルの、周囲の空気での希釈を防止するために、閉じた系として作動し得る、呼気ポート、を備える、医療デバイス。
(項目60)
急性部分的上気道閉塞および/または炎症に罹患する患者を処置する方法であって、以下:
医療デバイスを提供する工程であって、上記医療デバイスは、エアロゾル化手段、導管手段、および第一のヘリオックスガス源を備え、上記医療デバイスは、上記医療デバイス内で発生したエアロゾル内への周囲の空気の巻き込みを防止するように、閉じた系として作動可能である、工程;
1用量の薬物を、液体形態または乾燥粉末形態で提供する工程;
呼吸補助装置を提供する工程であって、上記呼吸補助装置は、上記患者の気道に挿入される呼吸管を備え、上記装置は、ヘリオックスを、第二の源から、上記呼吸管を通して、上記患者の肺へと送達する、工程;
上記医療デバイスの上記エアロゾル化手段を使用して、上記第一のヘリオックス源からのヘリオックスガスに分散する粒子または液滴のエアロゾルを形成する工程であって、上記粒子または液滴が、上記薬物を含有する、工程;ならびに
上記第二の源からのヘリオックスを用いて、上記患者が上記エアロゾルを吸入するための様式で、上記導管手段を通して上記呼吸管内へと、上記エアロゾルを流す工程、を包含する、方法。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本明細書中に記載される医療用デバイスの1つの実施形態の斜視図である。
【図2】図2は、本明細書中に記載される医療用デバイスの噴霧器ーサブアセンブリ(上部と下部が結合していない)の1つの実施形態の斜視図である。
【図3】図3は、本明細書中に記載される医療用デバイスの噴霧器ーサブアセンブリ(上部と下部が結合している)の1つの実施形態の斜視図である。
【図4】図4は、本明細書中に記載される医療用デバイスの別の実施形態の斜視図であり、ここで分枝導管手段は、T字型コネクターを備える。
【図5】図5は、本明細書中に記載される医療用デバイス別の実施形態の斜視図であり、ここで分枝導管手段は、平行Y字型コネクターを備える。
【図6】図6は、本明細書中に記載される医療用デバイス別の実施形態の斜視図であり、ここで分枝導管手段は、ガスマスクへのヘリオックスの流動のための複数の経路を備える。
【図7】図7は、比較研究において、各3つの処置後の、コントロールおよびヘリオックスグループのについてのFEV値のボックスとホイスカー(box−and−whiskers)グラフである。
【図8】図8は、粒子サイズ試験デバイスの線画であり、カスケードインパクターに接続された本発明の医療用デバイスの噴霧器の1つの実施形態を含む。
【図9】図9は、粒子サイズ試験デバイスの線画であり、カスケードインパクターに接続された本発明の医療用デバイスの噴霧器の第2の実施形態を含む。
【図10】図10は、粒子サイズ試験デバイスの線画であり、カスケードインパクターに接続された先行技術の噴霧器を備える。
【図11】図11は、噴霧された粒子サイズ画分 対 本発明の医療用デバイスの噴霧器の1つの実施形態を使用して生成された噴霧された粒子の空気力学的直径を示すグラフである。
【図12】図12は、噴霧された粒子サイズ画分 対 本発明の医療用デバイスの噴霧器の第2の実施形態を使用して生成された噴霧された粒子の空気力学的直径を示すグラフである。
【図13】図13は、噴霧された粒子サイズ画分 対 先行技術の噴霧器を使用して生成された噴霧された粒子の空気力学的直径を示すグラフである。
【図14a】図14aは、本発明の医療用デバイスでの使用のためのヘリオックス調節コントロールバルブの、前方図である。
【図14b】図14bは、本発明の医療用デバイスでの使用のためのヘリオックス調節コントロールバルブの、横断面図である。
【図15】図15は、粒子の空気力学的直径 対 噴霧器およびサイドポートの各々に、18L/分のヘリオックス流量を使用して、噴霧されたブデソニドの質量画分のグラフである。
【図16】図16は、粒子の空気力学的直径 対 噴霧器およびサイドポートの各々に、6L/分のヘリオックス流量を使用して、噴霧されたアルブテロールの質量画分のグラフである。
【図17】図17は、粒子の空気力学的直径 対 噴霧器およびサイドポートの各々に、10L/分のヘリオックス流量を使用して、噴霧されたアルブテロールの質量画分のグラフである。
【図18】図18は、粒子の空気力学的直径 対 噴霧器に18L/分のヘリオックス流量およびサイドポートに0L/分のヘリオックス流量を使用して、噴霧されたアルブテロールの質量画分のグラフである。
【図19】図19は、粒子の空気力学的直径 対 噴霧器に10L/分のヘリオックス流量およびサイドポートに18L/分のヘリオックス流量を使用して、噴霧されたアルブテロールの質量画分のグラフである。
【図20】図20は、粒子の空気力学的直径 対 噴霧器に18L/分のヘリオックス流量およびサイドポートに10L/分のヘリオックス流量を使用して、噴霧されたアルブテロールの質量画分のグラフである。
【図21】図21は、単一のヘリオックス気体入口を使用する医療用デバイスの実施形態の斜視図である。
【図22】図22は、レザババックを用いない医療用デバイスの1つの実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(発明の詳細な説明)
改善された医療用デバイスおよび方法が、ヘリオックスを用いた薬物の患者への肺投与のために開発されている。このデバイスおよび方法は、現在利用可能な噴霧器系に対する改善物である。現在利用可能な噴霧器系においては、周囲の空気が(例えば、患者の鼻、マスク中の開放口などを介して)導入され得、従って、酸素を駆動気体として用いるか、または有効量のヘリウムも呼吸可能なサイズ範囲の粒子も送達しない補助ポートにおいて高流動ヘリオックスを用いる、現在利用可能な噴霧器系よりもヘリウム濃度を望ましくなく低下させる。現在記載されるデバイスおよび方法は、ヘリオックスを噴霧器のための駆動気体として用い、これは、高濃度のヘリウムおよび呼吸可能なサイズ範囲の薬物粒子の両方を提供し、この閉じた系は、周囲の空気によるヘリオックス希釈を実質的に回避する。
【0027】
本明細書中で用いられる場合、用語「閉じた系」は、本発明の医療用デバイスに関連して、そのガスマスクが患者の口および鼻の上に適切に固定されているデバイスが、周囲の空気が吸入されるのに作用する開口部を有効に有さないことを意味する。しかし、この閉じた系では、このマスクまたはこのデバイスの他の部分は、吐出される気体がこの系から排出されるのを可能にする1方向弁を有する開口部を備える。
【0028】
(医療用デバイス)
好ましい実施形態では、このデバイスは、以下を備える:(a)第1ヘリオックス気体供給源へと接続するための気体入口を備える、エアロゾル化サブアセンブリ;(b)患者の口および鼻の上に固定され得る、ガスマスク;(c)第2ヘリオックス気体供給源への接続のための、第2気体入口;ならびに(d)第1入口ポート、第2入口ポート、および出口ポートを備える、分枝導管手段。このエアロゾル化サブアセンブリはさらに、以下を備える:(i)投与されるべき薬物を含むための、薬物レザバ、(ii)薬物を含みかつ第1ヘリオックス気体供給源から受け取るヘリオックス駆動気体中に分散される粒子(または小滴)のエアロゾルを形成するための、噴霧化手段、ならびに(iii)このエアロゾルを放出するための排出出口。このガスマスクは、供給源気体開口部を備え、この供給源気体開口部は、分枝導管手段の出口ポートと流体連絡している。分枝導管手段の第1入口ポートは、エアロゾル化サブアセンブリの排出出口と流体連絡しており、そして第2入口ポートは、第2気体入口と流体連絡している。この医療用デバイスは、閉じた系として作動して、この患者によるこのエアロゾルの吸入の前および間での、周囲の空気によるエアロゾルの希釈を防止し得る。
【0029】
1つの実施形態では、このデバイスは、レザババッグを備える。例えば、これは、分枝導管手段の第2入口ポートと流体連絡して提供され得る。一般に、ヘリオックスの総流量が患者の呼吸のピーク流量を超える場合、この医療用デバイスは、レザババッグの使用を必要としない。レザババッグを伴わないこのデバイスの1つの実施形態を、図22に示す。一方、何人かの患者の呼吸のピーク流量およびピーク1回呼吸量については、この医療用デバイスにおけるヘリオックスの総流量および系の容量を超えることが可能である。その場合、この医療用デバイスについては、ピーク流動および1回呼吸量に適合するレザババッグを備えることが好ましい。
【0030】
なお別の実施形態では、このデバイスは、ほんの1つの気体入口を備える。例えば、このデバイスは、定量吸入器(metered dose inhaler)(MDI)についてのスペーサーと同様に機能するレザババッグを備え得る。すなわち、このエアロゾルは、調製され、そしてその後の吸入のために、レザババッグ中で仕立てられる。例えば、このヘリオックスおよび薬物は、このレザババッグ中に供給され得、次いで吸入または機械的換気を介した要求に応じて、接続された導管手段における1方向弁を通して定期的に放出され得る。図21を参照のこと。
【0031】
別の実施形態では、このデバイスは、噴霧器の気体入口に接続された圧縮ヘリオックス気体供給源をさらに備える。圧縮されたヘリオックス気体供給源は、1つの実施形態では、第2気体入口へと接続され得る。1つの実施形態では、圧縮されたヘリオックス気体供給源は、2つの排出出口を有する1つの調節弁へと連結されたタンクを備える。1つの実施形態では、1つの調節弁は、2つの排出出口の各々を通して、ヘリオックスの同一の流量を提供し得る。
【0032】
このエアロゾル化サブアセンブリは、薬学的エアロゾルを生成する。このサブアセンブリは、当該分野で公知のように、ジェット噴霧器、空気式噴霧器、超音波噴霧器、または静電噴霧器を備え得る。好ましい実施形態では、このデバイスは、エアロゾルを生成し、ここで、薬物のうちの55wt%より多くが、0.7ミクロン以上でかつ5.8ミクロン未満の直径を有する粒子の形態である。好ましい実施形態では、このエアロゾル化サブアセンブリは、AIRLIFETM MISTY−NEBTMNeblizer(Allegiance Healthcare,McGaw Park,Illinois,USA)を備える。あるいは、このエアロゾル化サブアセンブリは、乾燥粉末薬物送達のために適合され得る。すなわち、このサブアセンブリは、ヘリオックス気体の流動流(flowing stream)へと乾燥粉末用量を射出または放出するように設計され得る。これは、既知の乾燥粉末吸入器または定量吸入器を適合させることによって行われ得る。1つの実施形態では、この薬物レザバは、この用量を含む、ブリスタまたはポーチを備え得、次いで、このブリスタまたはポーチは、機械的誘因機構によって破裂され得る。次いで、気体流動は、この薬物をこのポーチまたはブリスタから排出して、このヘリオックスとともに吸入のためにこの薬物を分散させ得る。
【0033】
このガスマスクは、薬物−ヘリオックスエアロゾルを受け取るための少なくとも1つの開口部を備える。このガスマスクは必要に応じて、1以上の吐出ポートを備え得、この吐出ポートは、吐出される気体がこのガスマスクから排出されるのを可能にする1方向弁を備える。このガスマスクは、周囲の空気の巻き込みを回避するために、さもなければ閉鎖され、周囲の空気が巻き込まれると、吸入されるエアロゾルにおけるヘリウム濃度を望ましくなく希釈する。代替の実施形態では、吐出ポートは、ガスマスクにおいてというよりも、分枝導管手段の一部として備えられる。このような実施形態では、1以上の1方向弁は、分枝導管手段中に備えられて、この系に空気が巻き込まれることを回避しながらも、吐出される気体の放出を可能にする。別の実施形態では、このデバイスは、この分枝導管手段とこの第2気体入口との間に配置された1方向弁を備え、その結果、この1方向弁は、このエアロゾルが第2気体入口から流出することを防止するように作用し得る。
【0034】
この医療用デバイスは、図1〜図3に図示される例示的実施例を参照してさらに理解され得る。図1では、医療用デバイス10は、エアロゾル化サブアセンブリ12、ガスマスク14、レザババッグ16、および分枝導管手段18を備える。この分枝導管手段18は、第1入口ポート32、第2入口ポート34、および出口ポート36を備える。この第1入口ポート32は、このエアロゾル化サブアセンブリ12の排出出口24と連絡している。この第2入口ポート34は、このレザババッグ16と連絡している。この出口ポート36は、このガスマスク14の供給源気体開口部に接続している。このガスマスク14には、このマスクを患者の口および鼻の上に固定するための弾性ストラップ26が提供される。この医療用デバイス10はさらに、第2ヘリオックス気体供給源へと接続するための第2気体入口28を備える。この第2気体入口28は、このレザババッグ16へと接続される。一対の可橈性ホース(例えば、標準的または破壊抵抗性酸素チュービング)30aおよび30bは、この気体入口20およびこの第2気体入口28を、それぞれ、第1および第2のヘリオックス気体供給源へと接続する。
【0035】
図1〜図3に示されるように、このエアロゾル化サブアセンブリ12は、第1ヘリオックス気体供給源へと接続されるための気体入口20、薬物を含む液体を含むための液体レザバ22、およびこのエアロゾルを放出するための排出出口24を備える。図2は、噴霧器を備えるエアロゾル化サブアセンブリを示し、頂部部分21は、底部部分23とは切り離されていて、例えば、この液体レザバにある用量の薬物溶液または薬物懸濁液が充填されることを可能にする。図3は、連結されていて、この第1ヘリオックス気体供給源およびこの分枝導管手段18への接続準備ができている、頂部部分21および底部部分23を示す。
【0036】
この分枝導管手段は本質的に、気体またはエアロゾルの流動のための導管として作用し得る任意の構造体である。この分枝導管手段は、当該分野で利用可能な、破壊抵抗性プラスチックチュービングおよびコネクタピースから形成され得る(例えば、アセンブリされ得る)。この分枝導管手段は、種々の形態および設計で提供され得る。1つの実施形態では、この分枝導管手段のこの第1入口ポートは、この分枝導管手段の出口ポートと同軸である。別の実施形態では、この分枝導管手段としては、T型導管コネクター、Y型導管コネクター、または平行Y型導管コネクターが挙げられる。この分枝導管手段のいくつかの種々の構成が可能である。いくつかを図4〜図6に図示する。
【0037】
このヘリオックス気体供給源は代表的に、圧縮されたヘリオックス気体の1以上のタンクである。好ましい実施形態では、単一のタンクは、両方の供給源を提供する。好ましくは、このような供給源タンクは、一対の可橈性ホースへと接続するための2つの気体排出出口を有する単一の調節弁へと連結される。1つの好ましい実施形態では、この単一の調節弁は、2つの排出出口の各々を通して、同一の流量のヘリオックスを提供する。このような調節弁を、図14Aおよび図14Bに図示する。弁50は、圧縮されたヘリオックス気体のタンクの連結のためのコネクタフィッティング52を備える。放出ポート54aおよび54bを通してのヘリオックス流動は、流動制御ノブ53を調整することによって制御され得る。好ましくは、このヘリオックス流量は、指定された所定の速度に設定され、そして流動制御ノブ53は、単なる「オン/オフ」ノブとなる。代替の実施形態では、2以上の制御手段(例えば、各入口へのこの気体流量の制御のための別個の制御ノブを備える)は、気体入口および第2気体入口へのヘリオックスの流動を制御するために提供される。
【0038】
なお別の実施形態では、このデバイスは、自分では呼吸できない患者についての使用のために、呼吸支持装置(例えば、機械的に人工呼吸される患者のための)についての使用のために適合される。例えば、この装置は、患者の気道への挿入のための呼吸チューブを備え得、この呼吸チューブは、ヘリオックスを第2供給源から患者の肺へと送達する。1つの改変では、このレザババッグは、取り外され得、そしてY分枝導管上の対応するレシーバが、(ヘリオックス流動を有する)人工呼吸器からくるチュービングへと取り付けられ得、次いで、マスクが取り外され得、そして対応するレシーバが、呼吸チューブにいくこのチュービングへと接続されて、この系が人工呼吸器回路を形成するようにされることを可能にし得る。あるいは、マスクの代わりに、この系は、人工呼吸器から患者へと向かう人工呼吸器チュービングと一列に接続し得るT型アダプターを備える。このT小片は、図8および図9においてこのエアロゾル化サブアセンブリを接続する「ティー」アダプターと類似である。
【0039】
(ヘリオックス)
本明細書中で使用される場合、用語「ヘリオックス」とは、ヘリウムと酸素とのガス状混合物であって、その混合物が50体積%を超えるヘリウム(He)と、少なくとも15体積%の酸素(O)とを含む、混合物を指す。1つの実施形態において、そのヘリオックスは、75体積%を超えるヘリウム(He)と、18体積%と25体積%との間のOとを含む。好ましい実施形態において、そのヘリオックスは、約80体積%のHeと20体積%のOとから本質的になる。このヘリオックスは、薬学的ガスまたは医学的ガスについて設定された適用可能な標準(例えば、純度についての)を満たすかまたは超えるべきである。そのようなヘリオックスは、例えば、BOC Gases(Murray Hill,New Jersey,USA)から市販されている。
【0040】
本明細書中に記載される医療デバイスとの使用のために、このヘリオックスは、好ましくは、標準的な、加圧した、再充填可能なタンクにて提供される。好ましくは、このタンクは、本明細書中に記載されるフロー制御バルブを備え、それは、上記の医療デバイスに連結するための2つの排気点(例えば、チュービング接続バーブ)を有する。
【0041】
(薬物)
本明細書中で使用される場合、用語「薬物」とは、患者への肺投与に適切な、任意の治療剤、予防剤、または診断剤を包含する。用語「薬物」は、単一の薬物が明示的に示されない限り、異なる薬物の組み合わせを包含する。エアロゾル化の前に、その薬物は、純粋な液体形態であっても、薬学的に受容可能な溶媒を含む溶液状態であっても、薬学的に受容可能な液体媒体中に分散した固体粒子の懸濁物状態であっても、または乾燥粉末形態(純粋な薬物、または薬物と当該分野で公知の1つ以上の賦形剤材料との混合物)であってもよい。エアロゾル化(例えば、噴霧または乾燥粉末分散による)は、その薬物を含むエアロゾルを生じる。本明細書中で使用される場合、用語「エアロゾル」とは、ガス媒体(本方法および本デバイスにとって、これはヘリオックスである)中に分散した粒子(例えば、液体小滴、固体粒子、またはその組み合わせ)の微細な分散物を指す。
【0042】
好ましい実施形態において、その薬物は、呼吸疾患(例えば、喘息、慢性肺閉塞疾患(CPOD)、気腫、慢性気管支炎、気管支肺形成不全(BPD)、新生児呼吸窮迫症候群(RDS)、細気管支炎、クループ、抜管後喘鳴、肺線維症、肺炎、または嚢胞性線維症(CF)の処置または管理のために示される。他の好ましい実施形態において、この薬物または薬物組み合わせは、肺癌(例えば、扁平上皮癌、腺癌など)またはAIDSの処置または管理において、示されるかまたは有用である。他の実施形態において、この薬物は、肺投与によりその薬物を送達することが望ましい任意の適応症のためのものである。この薬物は、全身的、限局的、または局所的な、治療効果または診断目的のためであり得る。
【0043】
1つの実施形態において、この薬物は、タンパク質またはペプチドである。別の実施形態において、この薬物は、モノクローナル抗体とともに組込まれる。
【0044】
種々の実施形態において、この薬物は、気管支拡張剤、抗炎症剤、抗生物質、去痰薬、または粘膜生成を減少もしくは増加するに有効な薬剤、あるいはこれらの組み合わせである。
【0045】
好ましい実施形態において、この薬物は、気管支拡張剤を含む。適切な型の気管支拡張剤の代表的例としては、β−アゴニスト(長期作用性または短期作用性)、コリン作用抑制剤(例えば、イプラトロピウム)、およびメチルキサンチンが挙げられる。β−アゴニストが、代表的には好ましい。適切なβ−アゴニストの例としては、アルブテロール、サルブタモール、フォルモテロール、サルメテロール、ピルブテロール、メタプロテレノール、テルブタリン、およびビトルテロールメシレートが挙げられる。例えば、アルブテロールは、代表的には、アルブテロールスルフェート水溶液として提供される。
【0046】
適切な型の抗炎症剤の代表例としては、ステロイド、クロモリン、ネドクロミル、およびロイコトリエンインヒビター(例えば、ザフィルルカストまたはジロイトン)が挙げられる。コルチコステロイドが、代表的には吸入のための好ましいステロイドである。適切なコルチコステロイドの例としては、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、シクロメタゾン、デキサメタゾン、トリアムシノロン、ブデソニド、ブチゾコート(butixocort)、シクレソニド、フルチカゾン、フルニゾリド、イコメタゾン、モメタゾン、チゾコートール(tixocortol)、およびロテプレドノールが挙げられる。好ましいコルチコステロイドとしては、ブデソニド、フルチカゾンプロピオネート、ベクロメタゾンジプロピオネート、モメタゾン、フォメテロール、フルニゾリド、およびトリアムシノロンアセトニドが挙げられる。肺投与のために適切な他のステロイドとしては、テストステロン、プロゲステロン、およびエストラジオールが挙げられる。
【0047】
抗生物質の例としては、ペニシリン(例えば、アズロシリン)、セファロスポリン(例えば、セフォチアムまたはセフトリアキゾン)、カルバペネム、モノバタム、アミノグリコシド(例えば、ストレプトマイシン、ネオマイシン、ゲンタマイシン、アミカシンまたはトブラマイシン)、キノロン(例えば、シプロフロキサシン)、マクロライド(例えば、エリスロマイシン)、ニトロイミダゾール(例えば、チニダゾール)、リンコサミド(例えば、クリンダマイシン)、糖ペプチド(例えば、バンコマイシン)、およびポリペプチド(例えば、バシトラシン)が挙げられる。1つの実施形態において、この薬物は、トブラマイシンであり、このトブラマイシンは、襄胞性線維症を有する患者においてシュードモナス感染を管理する際に有効であることが示されている。
【0048】
他の実施形態において、この薬物は、抗腫瘍剤(例えば、パクリタキセルまたはドセタキセル);治療ペプチドまたは治療タンパク質(例えば、インスリン、カルシトニン、ロイプロリド、顆粒球コロニー刺激因子、副甲状腺ホルモン関連ペプチド、またはソマトスタチン);モノクローナル抗体;放射性薬物;あるいは抗ウイルス剤が挙げられる。
【0049】
(使用方法/処置方法)
本医療デバイスは、患者の肺に1種以上の薬物を送達するために使用され得る。好ましい実施形態において、この方法は、(a)エアロゾル化手段、導管手段、ガスマスク、および少なくとも1つのヘリオックスガス源を備える、医療デバイスを提供する工程であって、この医療デバイスは、その医療デバイス内で生成されるエアロゾル中に周囲空気が巻き込まれることを妨げるための閉じた系として作動可能である、工程;(b)液体形態または乾燥粉末形態で一定用量の薬物を提供する工程;(c)エアロゾル化手段を使用して、第1の流量にて流動するヘリオックスガスの第1部分中に分散した粒子または液滴のエアロゾルを形成する工程であって、この粒子または液滴は、上記薬物を含み、上記ヘリオックスガスの第1部分は、上記少なくとも1つのヘリオックスガス源に由来する、工程;ならびに(d)上記導管手段を通して上記ガスマスク中へと上記エアロゾルを流動する工程であって、上記ガスマスクは、患者によるエアロゾルの吸入の前および間にそのエアロゾルが周囲空気で希釈されることなくその患者がそのエアロゾルを吸入する様式で、患者の口および鼻を覆って固定されている、工程、を包含する。
【0050】
1つの実施形態において、この方法は、第2のヘリオックス部分を上記導管手段中または上記ガスマスク中へと第2の流量にて同時に導入する工程をさらに包含する。この実施形態において、上記第1のヘリオックス部分および第2のヘリオックス部分は、一緒に、好ましくは、約50体積%と85体積%との間のヘリウム(例えば、約60体積%と85体積%との間のヘリウム、70体積%と80体積%との間のヘリウム、または約80体積%のヘリウム)を含む。1例において、この第1のヘリオックス部分および第2のヘリオックス部分は、各々、80体積%のヘリウムを含む。
【0051】
他の実施形態において、上記第1の流量は、6リットル/分と30リットル/分との間であり、好ましくは、15リットル/分と20リットル/分との間である。上記導管手段またはガスマスク中に第2の流量にて同時に導入される第2のヘリオックス部分が存在する場合、その第2の流量は、好ましくは、6リットル/分と30リットル/分との間であり、より好ましくは、15リットル/分と20リットル/分との間である。1例において、第1の流量および第2の流量は、各々、約18リットル/分である。別の例において、医療デバイスに提供される第1ヘリオックス部分および第2ヘリオックス部分の合わせた流量は、6リットル/分と60リットル/分との間(例えば、25リットル/分と45リットル/分との間、30リットル/分と40リットル/分との間、または約36リットル/分)である。ジェット噴霧器または空気式噴霧器を使用する1つの実施形態において、第1のヘリオックス部分および第2のヘリオックス部分は一緒に、80体積%ヘリウムを含み、医療デバイスに提供される第1ヘリオックス部分および第2ヘリオックス部分の合わせた流量は、30リットル/分と40リットル/分との間である。
【0052】
1つの実施形態において、提供される薬物の量およびエアロゾル化手段の作動様式は、1分間と30分間との間(例えば、約5分間と15分間との間)の期間にわたって一定用量の薬物を送達するために有効である。
【0053】
一般に、一定用量の薬物が、まず、エアロゾル化サブアセンブリ中に充填され、そのエアロゾル化アセンブルは、未だ接続されていなければ、分枝導管に接続される。ヘリオックス供給ラインが、このエアロゾル化サブアセンブリに接続され、そして第2ガス入口に接続される。その後、デバイスへのヘリオックスの流れが、デバイスの両方のガス入口に向かって始まる。
【0054】
エアロゾル化サブアセンブリへのヘリオックスの流量は、好ましくは、5L/分と25L/分との間、より好ましくは15L/分と20L/分との間、最も好ましくは18L/分である。第2ガス入口へのヘリオックスの流量は、好ましくは、合わせて合計70L/分まで(例えば、10L/分、15L/分、20L/分または30L/分よりも多く、例えば、60L/分、50L/分、40L/分または35L/分未満)である。
【0055】
中程度または重度の急性喘息の憎悪または他の可逆的呼吸器上部閉塞の処置のための好ましい実施形態において、エアロゾル化サブアセンブリは、噴霧器を含み、好ましくは、AIRLIFETM MISTY−NEBTM 噴霧器を含み、この噴霧器へのヘリオックスの流量は、15L/分と20L/分との間(例えば、18L/分)であり、薬物は、気管支拡張剤(例えば、β−アゴニスト(例えば、アルブテロール))であり、(第2ガス入口から)レザババッグへのヘリオックスの流量は、15L/分と20L/分との間(例えば、18L/分)である。
【0056】
特定の適用のための実際のヘリオックス流量は、送達されるべき薬物の呼吸可能画分を最大にするために、例えば、エアロゾル形態が、約1ミクロンと5ミクロンとの間にある(好ましくは、通常約1ミクロン〜1.5ミクロン付近で分布している)空気力学的直径を有する粒子中に含まれる、薬物の高質量%を望ましい送達期間にわたって達成するために、選択されるべきである。ヘリオックス流量は重要であり得る。なぜなら、エアロゾル化薬物を生成するためのヘリオックスの使用は、現在使用されるガス(例えば、圧縮酸素または圧縮空気)と比較したヘリオックスガス密度の差異に起因して、粒径分布および噴霧器効率を変化させるからである。例えば、酸素または圧縮空気と等価な流量にて、ヘリオックスを用いたエアロゾル化は、異なる粒径分布および噴霧器から送達される減少した合計出力を生じる。ヘリオックスの流量を(代表的にはその流量を増加することによって)調整することによって、粒径分布および合計出力は、酸素または圧縮空気を用いて駆動される噴霧器と等価であるかまたはそれより良好であるように、最適化され得る。これらの因子は、流れの乱流領域を層流へと転換するヘリオックスガスの能力と組み合わせると、薬物浸透および肺における分布を最大にする。このエアロゾルは、患者における乱流を層流へと転換するために、少なくとも約60%のヘリウムを含む。
【0057】
好ましい実施形態において、本明細書中で提供される薬物送達方法は、呼吸疾患の処置または管理において有用であり、この呼吸疾患としては、喘息、慢性肺閉塞疾患(CPOD)、気腫、慢性気管支炎、気管支肺形成不全(BPD)、新生児呼吸窮迫症候群(RDS)、細気管支炎、クループ、抜管後喘鳴、肺線維症、嚢胞性線維症(CF)、細菌感染症またはウイルス感染症、腫瘍増殖、癌、肺炎、および/あるいは火傷または煙吸入に起因する肺組織損傷が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
急性の部分的上気道閉塞および/または炎症に罹患している患者を処置する好ましい方法は、以下の工程を包含する:(a)医療デバイスを提供する工程であって、この医療デバイスは、エアロゾル化手段、導管手段、ガスマスク、および少なくとも1つのヘリオックスガス源を備え、ここで、この医療デバイスは、この医療デバイス内で作製されるエアロゾルへの周囲の空気の巻き込みを防止するように、閉じた系として作動可能である、工程;(b)液体または乾燥粉末の形態の、一定用量の薬物を提供する工程であって、この薬物は、気管支拡張剤、抗炎症性剤、またはこれらの両方を含有する、工程;(c)この医療デバイスのエアロゾル化手段を使用して、少なくとも1つのヘリオックス源から、ヘリオックスガス中に分散した粒子または液滴のエアロゾルを形成する工程であって、この粒子または液滴が、この薬物を含有する、工程;ならびに(d)患者がエアロゾルを吸入するために、導管手段を通して、患者の口および鼻を覆って固定されたガスマスク内へと、エアロゾルを流す工程。好ましくは、患者によって吸入されるエアロゾル内のヘリウム濃度は、60体積%と85体積%との間(例えば、約70体積%と80体積%との間)である。
【0059】
1つの実施形態において、気管支拡張剤は、αアゴニスト、βアゴニスト、またはこれらのラセミ混合物を含有する。βアゴニストの例としては、アルブテロール、フォルモテロール(formoterol)、サルメテロール(salmeterol)、ピルブテロール、メタプロテレノール、テルブタリン、およびメタンスルホン酸ビトルテロールが挙げられる。1つの例において、気管支拡張剤は、エピネフリンのラセミ混合物を含有し、これは、αアゴニスト活性およびβアゴニスト活性を示す。
【0060】
別の実施形態において、気管支拡張剤は、抗コリン作用薬(例えば、イプラトロピウムブロマイドを含有するもの)を含有する。
【0061】
なお別の実施形態において、抗炎症性剤は、ステロイド、クロモリン、ネドクロミル、およびロイコトリエンインヒビターから選択される。1つの例において、このステロイドは、コルチコステロイドである。コルチコステロイドの例は、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、シクロメタゾン(ciclomethasone)、デキサメタゾン、トリアムシノロン、ブデソニド、ブチキソコルト(butixocort)、シクレソニド、フルチカゾン、フルニソリド、イコメタゾン(icomethasone)、モメタゾン、チキソコルトール、ロテプレドノール(loteprednol)、ブデソニド、フルチカゾンプロピオネート、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、モメタゾン、フォメテロール(fometerol)、フルニゾリド、トリアムシノロンアセトニド、テストステロン、プロゲステロン、およびエストラジオールである。
【0062】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照して、最もよく理解され得る。
【実施例】
【0063】
(実施例1:喘息のアルブテロール−ヘリオックス処置−−先行技術)
試験的な研究を、アルブテロールを噴霧するためにマウスピースおよびT字型ピースアダプタ(AirlifeTM Misty−NebTM、Allegiance Healthcare Corp.,McGaw Park、IL)を含む開放系を使用して実施した。この試験的な研究において、コントロール患者は、酸素と共に噴霧されたアルブテロールを受け、一方で研究患者は、この「開放」マウスピースおよびT字型ピースアダプタ呼吸系を通して、ヘリオックスと共に噴霧されたアルブテロールを受けた。この研究から、ヘリオックスでのアルブテロール噴霧と酸素でのアルブテロール噴霧との間には、肺活量測定の差異が検出されなかった。
【0064】
周囲の空気の巻き込みが、このシステムを用いて患者に送達されるヘリオックスの有効
濃度を減少させていることを仮定した。
【0065】
(実施例2:巻き込まれた空気によるヘリオックスの希釈のない、喘息のアルブテロール−ヘリオックス処置)
実施例1において記載された、試験的研究および空気の巻き込みに関する仮定を考慮して、新たな送達系(図1に示されるデバイスの初期の原型)を設計し、患者の気道への高濃度のヘリオックスの送達を保証した。新たな研究を実施して、この仮定を試験した。
【0066】
45人の患者を、酸素とともに噴霧されたアルブテロール(コントロール)を受けること対ヘリオックスとともに噴霧されたアルブテロールを受けることについて、無作為化した。ベースラインにおいて、集団統計学、外来患者喘息薬物適用、生命徴候、酸素飽和および1秒間での最大努力呼気肺活量(FEV)は、これら2つの群の間で異ならなかった。3回の連続したアルブテロール処置を、各群に与えた。
【0067】
(研究被験体)
研究被験体は、喘息の重篤な急性病状再燃のためにEmergency Department at the University of Chicago Medical Centerに紹介された成人患者であった。この研究は、Institutional Review Boardによって是認され、そして登録された全ての患者は、研究の開始前に、書面によるインフォームドコンセントを与えた。喘息の診断に関するAmerican Thoracic Societyの基準に適合する、50歳以下の患者が適格であった。重篤な持続性の喘息に罹患している患者のみが研究されることを保証するために、50%未満の1秒間におけるベースライン最大努力呼気肺活量(FEV)が予測された患者のみを、この研究に登録した。
【0068】
(研究設計および処置プロトコル)
患者を、駆動ガスとして酸素(コントロール)またはヘリオックス80:20のいずれかで噴霧される、アルブテロールの受容について無作為化した。ヘリオックス送達系は、一方の枝において噴霧器(AirlifeTM Misty−NebTMNebulizer)を備え、そして他方の枝において非レブリーザーバッグを備えるY字型ピースに接続された、顔面マスクからなる(図1に示されるように)。噴霧器へのヘリオックスフローを、10リットル/分に設定した(酸素較正した流量計を介し、従って、18L/分のヘリオックス流れに等価である)。ヘリオックスの10リットル/分の別の流れ(酸素較正した流量計を介し、従って、18L/分のヘリオックス流れに等価である)を、非レブリーザーバッグに送達した。コントロール患者は、この同じ半閉鎖呼吸系を通して送達される、(10L/分の)酸素で噴霧したアルブテロールを受けた。ヘリオックス群とコントロール群との両方の患者に、合計で3回の連続したアルブテロール処置を与え、各処置は、2.5mlの0.9%生理食塩水中で混合された、0.5mlの0.5%アルブテロールからなる。各処置を、噴霧器が乾燥するまで(約10分間の間、続いて15分間の洗浄時間)続けた。この研究のための全時間は、約90分であった。喘息の病状再燃のためのコルチコステロイド治療は、緊急室の医師によって指示され、この医師は、この研究には直接参加しなかった。
【0069】
(肺活量測定)
1秒間における最大努力呼気肺活量(FEV)を、ベースラインおよび各アルブテロール処置の完了15分後に、可搬型のVacumed Micro Spirometer(Ventura,CA)を使用して測定した。この研究の目的での正確さを保証するために、この肺活量計を、3リットルシリンジを使用して2週間ごとに試験した。さらに、FEV記録の正確さを、可搬型の肺活量計によって、この肺活量計がMedical Graphics 1070肺機能試験システム(このシステムを、毎日較正した)とインラインである間に、種々の流量で努力呼気肺活量の測定を被験体に実施させることによって試験した。この試験をまた、試験の最初の3ヶ月にわたって1週間おきに、そしてその後は毎月、実施した。
【0070】
患者は、最低限3回の努力呼気操作を実施し、American Thoracic Societyの推奨(American Thoracic Society:Standardization of spirometry−1994年更新、Am.J.Respir.Crit.Care Med.152:1107−36(1995))に従って、値を記録した。全ての肺活量測定は、アルブテロール噴霧のために使用したガスを知らされていない調査者によって行われた。調査者に知らせない目的で、研究の調査者は、アルブテロール処置の間はその場にいず、そして処置が完了して15分後まで、患者の部屋に入らなかった。患者は、自分が無作為化された処置枝を明白には教えられなかった;しかし、ヘリオックスを呼吸する間の潜在的な声の変化に起因して、患者が自分が受けた治療を知らないことを保証することは、不可能であった。
【0071】
(統計学的分析)
集団統計学データ、慢性喘息薬物適用、緊急室でのコルチコステロイド投与、生命徴候(心拍数、平均動脈圧、呼吸数)、パルス酸素測定法による酸素飽和、緊急室での滞在時間および緊急室からの入院を、全ての患者に対して記録した。データを、正規分布の場合には平均±SDとして、そして正規分布ではない場合には中央値(四分位数間範囲)で表す。区間のデータを、分布の正規性に従って、両側Student t検定またはMann Whitney U検定を使用して比較し、カテゴリー的資料を、適切である場合、χ二乗またはFisher Exact検定を使用して比較した。各噴霧処置後の、ベースラインからの生命徴候の測定の変化の割合([(アルブテロール処置後の生命徴候 − ベースライン生命徴候) / ベースライン生命徴候]×100)を、2方向反復測定の分散分析(ANOVA)を使用して比較した。Student−Newman−Keuls検定を使用して、適切である場合、各噴霧処置の後に、ヘリオックス群とコントロール群との間の差異を比較した。これらの2つの群について、生のFEV値およびベースラインからのFEVの変化の割合([(アルブテロール処置後のFEV − ベースラインFEV) / ベースラインFEV]×100)を、多重比較についてのBonferroniの補正を用いて、Mann−Whitney U検定を使用して、比較した。コントロール群とヘリオックス群との間の、FEVにおける変化の割合の25%の差異を、臨床的に重要とみなした。(試験的研究に基づいて)28%の標準偏差、0.05のα誤差および0.20のβ誤差を使用して、全部で42人の患者(各群に21人)が、タイプIIの過誤を回避する必要があることが推定された。3つの連続するアルブテロール処置の比較に対してBonferroniの補正を適用した場合を除いて、0.05未満のP値を、統計学的有意性を示すとみなした。この状況においては、0.0167
未満のP値を、統計学的有意性を示すとみなした。
【0072】
(結果)
全部で45人(16人の男性、29人の女性)の患者を、この研究に登録した。表1に見られるように、これらの2つの群の間で集団統計学的差異は存在しなかった。22人の患者を、酸素で噴霧されるアルブテロール(コントロール)について無作為化し、そして23人を、ヘリオックスで噴霧するアルブテロールについて無作為化した。心拍数、平均動脈血圧、呼吸数および酸素飽和は、ベースラインにおいて、これら2つの群の間で差異がなかった(表2)。しかし、表2に概説されるように、アルブテロール噴霧後の心拍数の変化の割合は、コントロール群と比較した場合に、ヘリオックス群において有意に異なった。全体として、ヘリオックス群は、コントロール群における心拍数の減少と比較して、ベースラインから増加した心拍数を示す。この研究の間のいずれの時点においても、これらの群の間でのいずれの生命徴候またはパルス酸素測定においても、他の有意な差異は存在しなかった(表2)。
【0073】
ベースラインのFEV値(生の値と予測の割合値との両方)は、2つの群の間で異ならなかった(表1)。入院率は、両方の群において類似であった(ヘリオックス群の23人のうち6人、およびコントロール群の22人のうち6人、P=0.81)。βアゴニスト、吸入されたコルチコステロイド、全身コルチコステロイド、テオフィリンまたはロイコトリエンインヒビターの外来患者の使用に関して、これら2つの群の間で差異は存在しなかった(表1)。タバコの使用は稀であり、そしてこれら2つの群の間での喫煙の習慣に、差異はなかった(表1)。ヘリオックス群の23人のうちの19人、およびコントロール群の22人のうちの20人が、緊急室において、全身コルチコステロイド処置を受けた(P=0.67)。
【0074】
携帯用スパイロメータの精度は、研究の全体にわたって、モニタリングデバイスに対するAmerican Thoracic Societyガイドラインに準拠していた。その較正の各チェックの間、FEV値は、常に肺機能研究室のスパイロメータから同時に得られる値の5%以内であった。同様の満足のいく結果は、3リットルシリンジに対して携帯用スパイロメータを試験する際に示された。研究に登録された全ての患者は、American Thoracic Society推奨(American Thoracic Society:Standardization of spirometry−−−1994更新、Am.J.Respir.Crit.Care Med.152:1107−36(1995))に従って3回の強制呼吸操作を実施し得た。
【0075】
各3回のアルブテロール試験の後、ヘリオックス群は、コントロール群より高いパーセントのFEV変化を有した。アルブテロール処置1の後、FEVの中間パーセント変化は、コントロール群において14.6%であり、ヘリオックス群において32.4%であった(P=0.007)。処置2後、結果は、それぞれ22.7%対51.5%であった(P=0.007)。処置3後、結果は、それぞれ26.6%対65.1%であった(P=0.016)。多数の比較のためのBonferroniの収集を使用して、各噴霧器処理後の差は、有意であった。これらの結果を、図7においてグラフによって詳述し、これは、3回の各処置の後、コントロール群およびヘリオックス群についてのFEV値を示す。ボックスの中の水平の実線は、中間値である。ボックスは、四分位数間領域を詳細に示す。補椅子カーは、ボックスから最高値および最小値まで線を引き、アウトライアーを除く。(第1のアルブテロール噴霧器処置後、コントロールFEVとヘリオックスFEVとの間の比較について、P=0.007。**第2のアルブテロール噴霧器処置後、コントロールFEVとヘリオックスFEVとの間の比較について、P=0.007。第3のアルブテロール噴霧器処置後、コントロールFEVとヘリオックスFEVとの間の比較について、P=0.016。)。
【0076】
ヘリオックス群におけるFEVのパーセント変化は、ベースラインで同程度の気流閉塞を有する患者におけるコントロールより、有意に大きかった。患者は、これらのベースラインパーセント予測FEV値に基づく重篤な気流閉塞を有した。ヘリオックス群において、FEVのパーセント変化は、研究された3つ全ての点で、コントロール群の2倍であった。各処置後スパイロメータ測定時において、差は、Mann−Whitney U試験によって有意であり、Bonferroni収集後、そのままであった。
【0077】
(考察)
本研究は、重篤な急性喘息の増悪を有する患者が、緊急治療室で診察を受ける際の、酸素を使用してネブライズされたアルブテロールと比較される場合、ヘリオックスを使用してネブライズされたアルブテロールが、より効果的な気管支拡張を生じることを示す。このことは、ヘリオックスが、喘息増悪の間、アルブテロールのジェットネブライゼーションのためのビヒクルとして、酸素より効率的であることを示唆する。従って、十分高い濃度で吸入される場合、ヘリウムは、ネブライズされたアルブテロールを、急性喘息増悪を有する患者において、酸素より効率的にその作用部位まで送達し得る。2つの群における心拍数応答の差は、ヘリオックス群において遠位気道までのより効率的なアルブテロール送達の結果のように、この仮定を支持する。
【0078】
(表1:患者の概要)
【0079】
【表1】

年齢、身長およびベースラインFEV(リットルおよび%予測)は、平均±SDとして報告される。
【0080】
(表2:生存信号およびパルス酸素測定法)
【0081】
【表2】

HR=心拍数、RM ANOVA=反復測定二元配置分散分析、S−N−K=Student Newman Keuls、MAP=平均動脈圧、RR=呼吸速度、SpO=パルス酸素測定法による酸素飽和、NS=有意でない。全ての値は、平均±SDとして報告
される。
【0082】
直感的に、いくらかの患者において、標準的療法の影響(吸入βアゴニストおよび全身コルチコステロイド)は、ヘリオックスに由来する任意のさらなる利益に大いに勝る。この推測は、ヘリオックスが使用され、その物理的気体特性または気体としての活性に基づいて呼吸作用を減少するかどうかに適用され、アルブテロールをその作用部位にネブライズする可能性がある。実用的な観点から、ヘリオックスを用いてアルブテロールをネブライズすることは、以下の2つの特徴を提供する:気体の物理的特性に基づく気流の改善および、おそらく、肺におけるその作用部位に対するアルブテロールの送達の改善からの肺活量測定の改善。
【0083】
この研究は、アルブタロールのヘリオックスを用いるジェットネブライゼーションが、急性の喘息を有する患者において標準的な酸素駆動アルブテロールネブライゼーションより肺活量測定を改善すること、およびヘリオックスが、重篤な急性の喘息増悪を有する患者におけるアルブテロールネブライゼーションのためのビヒクルとして考慮するべきであることを示す。その物理的気体特性に対して呼吸するためにヘリオックスを与えられた全ての喘息患者は、高い流量の非再吸入性閉鎖送達システムを使用するこの処置を受容すべきである。さらに、ヘリオックスを既に受容している喘息患者は、噴霧器に流入する気体として、ヘリオックスでネブライズされたアルブテロール処置を有するべきである。
【0084】
(実施例3:ネブライズされた粒子サイズの分布−−−現在のヘリオックスネブライゼーションシステム 対 先行技術の気体ネブライジングシステム)
空気によって駆動される市販の噴霧器(HOPETM,B&B Medical Technologies,Inc.,Orangevale,California,USA)を使用した本明細書中に記載されるヘリオックスネブライゼーションシステム(RES−Q−NebTM噴霧器といわれる)の2つの実施形態の能力を比較するために、研究を実施した。
【0085】
測定を、28.3L/分の気体流量で操作されるAnderson Cascade Impactor(ACI)を使用して実施した。この噴霧器を、同じT部分およびカラーに一度に1つずつ連結した。ACIは、8の段階、バックアップフィルター、およびインレット(USP咽頭部)からなった。カットサイズを、表3に示した。
【0086】
(表3:ACI操作パラメーター)
【0087】
【表3】

噴霧器およびインパクターによる気流を、ロタメーターを用いて制御し、このロタメーターは、DryCal Flow Calubrator(BIOS International Co.,Pomton Plains,NJ)と共に設定される。
【0088】
18L/分でのヘリオックス(80%ヘリウム、20%酸素)を使用してRES−Q−Neb Nebulizerを駆動し、ヘリオックスのもう18L/分を、レザババッグサイドポートに導入した。1つの実施形態において、RES−Q−Neb Nebulizerは、図8に示されるように「Y字」アダプター(分枝導管手段)を含んだ。別の実施形態において、RES−Q−Nebは、図9に示されるような「T字」アダプター(別の分枝導管手段)を含んだ。アダプターの選択は、噴霧器の角度位置に影響し、この角度位置は、次いで、噴霧器からの全出力に影響し、そしてどれほどの長さの噴霧器が、スパッタリングの前に操作し得るかに影響する。「Y字」アダプターは、噴霧器を45°で配置し、レザバ中の3mLのみの薬物を用いて、噴霧器は、スパッタリングの前の約1分間作動する;しかし、5mL(最大量)の薬物が、レザバ中に配置される場合、液体レベルは、噴霧器の1つの側面の最大線を越えるが、スパッタリングが開始する前に約4分の操作をとる。対照的に、「T字」アダプターは、垂直位置で噴霧器を配置し、噴霧器は、5mLの薬物が、レザバに充填される場合、約4分間作動し得る。特に、噴霧器の位置の違いは、エアロゾル発生速度に影響しない。HOPE噴霧器を、圧縮空気を用いて10L/分で駆動し(その標識および指示において指向されるように)、18L/分のヘリオックスを、図10に示されるように、サイドポートでシステムに導入した。
【0089】
予備作動時間を、各試験について使用し、エアロゾルの発生を安定化した。このRES−Q−Neb噴霧器を、15秒間プレランし、HOPE噴霧器を30秒間プレランした。6の試験を、同じ条件でRES−Q−Neb噴霧器を用いて行い(3は、「Y字」アダプターを用いて、そして3は、「T字」アダプターを用いて)、5の試験を、同じ条件でHOPE噴霧器を用いて行った。
【0090】
各試験の後、ACIおよび空の噴霧器を分解し、そして脱イオン水を用いて洗浄した。洗浄水を回収し、残存する薬物の量および回収された薬物の量を、224nmで分光光度的分析を使用して決定した。吸光度測定を、較正曲線に基づいてAlbuterol濃度値に変換した。既知の濃度値と洗浄体積から、各ACI段階で回収されたアルブテロールサルフェートの量を、計算した。
【0091】
粒子サイズを、50%質量中間空力直径(MMAD)として示す。
【0092】
各噴霧器システムの平均に対する粒子サイズ分布を、表4〜6および図11〜13に示す。RES−Q−Nebの「Y字」アダプター実施形態と「T字」アダプター実施形態との間には有意な差は存在しない。HOPE噴霧器は、2つのピークの分布を示すが、RES−Q−Neb噴霧器は、単一のピークを示す。Y設計およびT設計の平均出力速度は、類似する(それぞれ、0.59mL/分 対 0.54mL/分)。
【0093】
(表4:RES−Q−Neb噴霧器(「T字型」)を使用した結果)
【0094】
【表4】


(表5;RES−Q−Neb噴霧器(「Y字型」)を使用した結果)
【0095】
【表5】

(表6;HOPE噴霧器を使用した結果)
【0096】
【表6】

当業者は、吸入され沈着され得る粒子を同定することを示し、これらを同定するための重要なパラメーターである臨界粒子部分に気づく。例えば、呼吸に適した範囲の粒子は、最もしばしば、1μmと5μmとの間にサイズ分けされる。なぜなら、5μmを超える粒子は、口腔部、鼻部、および咽頭部において沈着するか、または濾過される傾向がある一方、0.5μmより小さな粒子は、沈着することなく吸入され、吐き出される傾向がある。ましいエアロゾル生成デバイスは、1μmと1.5μmとの間に最も近く分布するサイズを有する粒子を生成するデバイスである。なぜなら、このサイズは、肺胞沈着を最大にする傾向があるからである。この知見に基づいて、データは、先行技術のHOPE噴霧器を超える、本発明悪医療デバイスを備えるRES−Q−Nebの有意な改善を示し、このことは、本発明のデバイスおよび方法が、好ましいヘリオックスエアロゾル化システムを提供することを示す。
【0097】
例えば、表7は、肺沈着に対して適切であると一般的に考えられるサイズ範囲内およびその外側で、粒子の平均部分によって示されるように、本発明のデバイスおよび方法のいくつかの異なる実施形態とHOPE噴霧器のデバイスおよび方法のいくつかの異なる実施形態との間の有意な差を示す。1μmおよび5μmとわずかに異なるカットオフを生じるACI試験方法パラメーターは、それぞれ、0.7μmおよび5.8μmであり、従って、分類目的のために適切であった。
【0098】
(表7.臨界粒子サイズ画分の比較)
【0099】
【表7】

0.7μm以上で5.8μm未満の粒子の平均画分の比較により、本発明のデバイス/方法が、呼吸可能範囲において約20%を超える、有意により巨大な粒子の画分を作製したことが示される。5.8μm以上の粒子の平均画分の比較により、本発明のデバイス/方法が、肺に送達され得ないより巨大な粒子の、有意により少ない(約34%未満)の粒子を作製したことが示される。さらに、本発明のデバイス/方法は、0.7μm未満の、約15%を超える粒子を作製し、本発明のデバイス/方法は、これらのサイズ決定された粒子が代表的に沈着されないにもかかわらず、数人の患者に利点を提供し得る。例えば、これらのサイズの粒子を、実際に、通常は薬物が送達されない重篤な炎症を有する肺(例えば、重篤な急性ぜん息患者)に送達および沈着し得る。最終的に、本発明のデバイス/方法は、(1.1μmのカットオフプレート上に収集された粒子から示されるように)1.52μmの中間直径を有する、有意により多くの(約22%を超える)粒子を作製し、従って、有意に高い肺胞薬物沈着をもたらすはずである。
【0100】
本発明のデバイス/方法は、ヘリオックス濃度差によって、HOPE噴霧器よりも良好な粒子送達を提供するともまた考えられている。本明細書中に記載されるデバイスおよび方法は、希釈されていない一定のヘリオックス濃度を提供し得る。対照的に、HOPE噴霧器は、2つの巨大な開口部を有する現在利用可能なエアロゾルマスクを必要とし、従って、周囲空気を巻き込み得る開口系を生成する。さらに、HOPEシステムは、その噴霧器を作動させるのに酸素または圧縮空気を必要とするので、このHOPEシステムは、酸素または圧縮空気およびヘリウムまたはヘリオックスの等しい流量の使用に基づいて、少なくとも50%、このヘリウムまたはヘリオックスのフローを希釈する。これは、最適状況下および周囲空気をほとんど巻き込まない場合でさえも、50%のヘリウム濃度を生じる。これは、高度に変動性のヘリウム濃度の送達を生じるだけでなく、その有効濃度より低いヘリウムも希釈する。
【0101】
(実施例4.液状薬物懸濁液を用いるヘリオックス噴霧システムおよび種々のヘリオックス流量)
実施例3に記載されるACIを用いてさらなる試験を行って、デバイスが液状薬物懸濁液を噴霧しそして種々のヘリオックス流量の組み合わせを評価する性能を評価した。「Y字」型デバイスを、噴霧器およびそのサイドポートの各々に流れる18L/分のヘリオックス(80/20)とともに使用して、ブデソニド吸入懸濁液(Pulmicort RespulesTM)を噴霧および送達した。さらに、表9に示されるヘリオックス流量の組み合わせを、アルブテロール吸入溶液を用いて評価した。
【0102】
これらの粒子サイズを、50%の空気動力学質量中央径(MMAD)として表わす。
【0103】
これらの試験の各々についての粒子サイズ分布を、表10および図15〜20に示す。表11は、実施例3について以前に同定されたような粒子の臨界特性の特徴付けをしており、比較目的のために、表8からのY字型配置の値を含む。
【0104】
(表9.ヘリオックス流量の組み合わせの要約)
【0105】
【表9】


(表10.粒子サイズ)
【0106】
【表10】


(表11.臨界粒子サイズ画分の比較)
【0107】
【表11】

「ブデソニド」で標識されない全てのカラムを、アルブテロールを使用して試験した。
【0108】
本明細書中に記載される方法およびデバイスの改変およびバリエーションは、前出の詳細な説明から、当業者に明らかである。このような改変およびバリエーションは、添付の特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。
【符号の説明】
【0109】
10 医療用デバイス
12 エアロゾル化サブアセンブリ
14 ガスマスク
16レザババッグ
18 分岐導管手段
26 弾性ストラップ
28 気体入口
32 第1入口ポート
34 第2入口ポート
36 出口ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
図1に示される噴霧器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14a】
image rotate

【図14b】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2010−88864(P2010−88864A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102508(P2009−102508)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【分割の表示】特願2003−550840(P2003−550840)の分割
【原出願日】平成14年12月4日(2002.12.4)
【出願人】(509110910)