説明

ヘルド及び二重織物の織成方法

【課題】表ヘルドと裏ヘルドとを兼ねることのできる同一形状のヘルドを提供する。
【解決手段】上下両端を綜絖枠に取り付けたヘルド14において、当該ヘルドの上半部及び下半部に長孔16を形成する。また前記ヘルド14の長さ方向の中央に、前記長孔16から分離したメール17を形成する。
【効果】同一形状のヘルドの上半部と下半部とに長孔を形成し、上半部の長孔に表たて糸を、下半部の長孔に裏たて糸を挿通することにより、そのヘルドが前記方法における表ヘルドと裏ヘルドとを兼ねるので、予めその組織に応じて表ヘルドと裏ヘルドとを用意する必要がなく、前準備が簡単である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は織機のヘルド及び、当該ヘルドを使用して二重織物を織成するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来二重織物を織成する場合には、最低でも四枚の綜絖を必要としていた。すなわち二重織物における表組織と裏組織とがそれぞれ平織り組織である場合においては、表組織と裏組織を織成するためにそれぞれ二枚ずつの綜絖が必要であり、且つその両者を兼ねることができないため、四枚の綜絖が必要となるのである。
【0003】
図1は表組織裏組織共に平織り組織により織成された二重織物Aの組織図であり、図2は当該二重織物Aの平面図である。これらの図面において1aは表たて糸、1bは裏たて糸であり、2aは表よこ糸、2bは裏よこ糸であって、表たて糸1aと表よこ糸2aとを平織り組織で織成して表組織3が形成され、裏たて糸1bと裏よこ糸2bとを平織り組織で織成して裏組織4が形成されており、これら表組織3と裏組織4とで二重織物Aが形成されている。
【0004】
而して図3はこの二重織物Aを織成する工程を示すものである。図3においては綜絖5は後方から5a〜5dの四枚設けられており、そのうち5a及び5cは表組織3を織成する表綜絖であり、5b及び5dは裏組織4を織成する裏綜絖である。そしてその各綜絖5には複数のヘルド6が取り付けられており、各ヘルド6にはその中央にたて糸1を挿通するメール7が形成されている。
【0005】
そして先ず図3(a)においては、表綜絖5a、5cはいずれも上動しており、裏綜絖5dは上動し5bは下動していて、裏たて糸1bが開口し、そこにシャトル8が通過して裏よこ糸2bが挿入される。
【0006】
次に図3(b)において、裏綜絖5b、5dをいずれも下動せしめ、表綜絖5aを下動せしめると共に5cを上動せしめ、これにより表たて糸1aを開口させてそこにシャトル8を通過させ、表よこ糸2aを挿入して表組織3を織成する。
【0007】
さらに図3(c)において、表綜絖5a、5cはいずれも上動せしめ、裏綜絖5bは上動して5dは下動せしめ、これにより裏たて糸1bが開口してそこにシャトル8が通過し、裏よこ糸2bが挿入されて裏組織4が織成される。
【0008】
次に図3(d)において、裏綜絖5b、5dをいずれも下動せしめ、表綜絖5aを上動せしめると共に5cを下動せしめ、これにより表たて糸1aを開口させてそこにシャトル8を通過させ、表よこ糸2aを挿入して表組織3を織成する。
【0009】
以下これらの工程を繰り返すことにより、表組織3及び裏組織4を織成し、二重織物Aを織成するのである。そしてこの方法により二重織物Aを織成するためには、表綜絖5aが二枚、裏綜絖5bが二枚必要であり、四枚の綜絖5を必要とする。さらに表組織3と裏組織4とをたて糸で接結するためには、その接結たて糸を操作するためのさらに別の綜絖を必要とし、綜絖の枚数がさらに増える。
【0010】
また表組織と裏組織とが綾織り組織や朱子織組織である場合には、綾織り組織は三枚以上の綜絖を必要とし、朱子織組織は五枚以上の綜絖が必要であるので、かかる組織で二重織物を形成するためには、その表裏の組織の種類に応じて、その二倍の枚数の綜絖が必要となる。
【0011】
そこで出願人は、表たて糸と裏たて糸とを一枚の綜絖で操作し、綜絖の枚数を半減して二重織物を織成する方法を発明して特許出願し、特開2009−68144として出願公開されている。
【0012】
この発明は図4に示すように、二枚の綜絖5にそれぞれ、上半部に長孔9を形成した表ヘルド10aと、下半部に長孔9を形成した裏ヘルド10bとを所定の配列で配置し、表ヘルド10aの長孔9に表たて糸1aを挿通し、裏ヘルド10bの長孔に裏たて糸1bを挿通し、この綜絖5を二枚設けている。
【0013】
而してこの二枚の綜絖5を交互に上下動させる。図4においては綜絖5aを上動させ、綜絖5bを下動させることにより、綜絖5aに設けられた表ヘルド10aは表たて糸1aを上動せしめると共に、裏ヘルド10bが裏たて糸1bを長孔9の中間位置で保持し、下動せしめられた綜絖5bに設けられた表ヘルド10aは表たて糸1aを長孔の中間位置に保持すると共に、裏ヘルド10bは裏たて糸1bを下動せしめる。
【0014】
すなわち二枚の綜絖5a、5bを交互に上下動せしめることにより、表たて糸1aは上動位置と中間位置とを採り、裏たて糸1bは下動位置と中間位置とを採ることとなり、上下に二段の開口が形成される。
【0015】
この状態で、前記上下二段の開口のうちの、上段の開口に表よこ糸11aを打ち込むことにより、当該表よこ糸11aと前記表たて糸1aとにより表組織3を織成し、下段の開口に裏よこ糸11bを打ち込むことにより、当該裏よこ糸11bと前記裏たて糸1bとにより裏組織4を織成するのである。
【0016】
上下の開口に選択的に表よこ糸11a又は裏よこ糸11bを打ち込むには、図4に示すようにその挿入方向の先端13が中心より高い位置又は低い位置で突出したシャトル12a、12bを使用し、表シャトル12aが中立位置のたて糸を押し下げながら上部開口を通過して表よこ糸11aを打ち込み、裏シャトル12bが中立位置のたて糸を押し上げながら下部開口を通過して裏よこ糸11bを打ち込むことにより、上下の開口を選択してよこ糸を挿入することができる。
【0017】
この方法によれば、従来の二重織物を織成する場合に比べて、綜絖の枚数を半分に減らすことができ、織機の構造が簡単になると共に、開口運動が簡単になると言う利点があるが、その反面予め各綜絖5に所定の順序に従って表ヘルド10aと裏ヘルド10bとを設ける必要があり、前準備が面倒である。
【0018】
前記図3に示される従来例の方法によれば、ヘルド6は一種類のみであって、特定の綜絖5のメール7にたて糸1を挿通するかしないかにより、そのたて糸1の性質が定まるのであるが、図4の織機においては表ヘルド10aと裏ヘルド10bとの形状が異なり、それを所定の順序で取り付けた綜絖5を準備しなければならず、二重織物Aの組織が異なればヘルド10の順序も変えなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2009−68144
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】文部省著作教科書、実教出版株式会社発行、「高等学校用織物組織改訂版」(昭和43年3月25日初版発行、昭和44年2月25日発行)p72〜75、色刷り4−13図〜4−19図
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明はかかる事情に鑑みなされたものであって、前記方法に用いるヘルドであって、表ヘルドと裏ヘルドとを兼ねることのできる同一形状のヘルドを提供することを目的とするものである。
【0022】
さらに本発明の他の目的としては、前記ヘルドを使用して、一本のヘルドで表たて糸と裏たて糸とを同時に操作し、全体のヘルドの数を半減して、さらに簡単な織機で二重織物を織成することも可能な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
而して本発明のヘルドは、上下両端を綜絖枠に取り付けたヘルドにおいて、当該ヘルドの上半部及び下半部に長孔を形成したことを特徴とするものである。本発明のヘルドにおいては、前記ヘルドの長さ方向の中央に、前記長孔から分離したメールを形成することも可能である。
【0024】
また本発明の二重織物の織成方法は、複数の綜絖にそれぞれ、前記請求項1に記載の複数のヘルドを設け、当該ヘルドの上半部の長孔に表たて糸を、下半部の長孔に裏たて糸をそれぞれ挿通し、当該複数の綜絖を所定の順序で上下動せしめることにより、上動した綜絖のヘルドが上半部の長孔に挿通された表たて糸を上動せしめると共に、下半部の長孔に挿通された裏たて糸を前記長孔の中間位置で中立に保持し、下動した綜絖のヘルドが下半部の長孔に挿通された裏たて糸を下動せしめると共に、上半部の長孔に挿通された表たて糸を前記長孔の中間位置で中立に保持して、上下二段の開口を形成し、所定の順序で形成された開口状態において、上部開口に表よこ糸を挿入することにより表たて糸と表よこ糸とによって表組織を織成する工程と、下部開口に裏よこ糸を挿入することにより裏たて糸と裏よこ糸とによって裏組織を織成する工程とを、所定の順序で行って一サイクルとし、当該サイクルを繰り返すことにより、表組織と裏組織とにより二重織物を形成することを特徴とするものである。
【0025】
本発明の二重織物の織成方法においては、前記表よこ糸を挿入する表シャトルが、その挿入方向の先端が中心より高い位置で突出しており、中立位置のたて糸を押し下げながら上部開口を通過し、前記裏よこ糸を挿入する裏シャトルが、その挿入方向の先端が中心より低い位置で突出しており、中立位置のたて糸を押し上げながら下部開口を通過することができる。
【0026】
また本発明の方法において、前記複数の綜絖にそれぞれ、前記長孔から分離したメールを有するヘルドを設け、当該ヘルドの前記メールに接結たて糸を挿通し、その綜絖の上下動に伴って表よこ糸及び裏よこ糸を接結たて糸に対して同一の位置に挿入することにより、二重織物を接結することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、同一形状のヘルドの上半部と下半部とに長孔を形成し、上半部の長孔に表たて糸を、下半部の長孔に裏たて糸を挿通することにより、そのヘルドが前記方法における表ヘルドと裏ヘルドとを兼ねるので、予めその組織に応じて表ヘルドと裏ヘルドとを用意する必要がなく、前準備が簡単である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】表組織裏組織共に平織り組織により織成された二重織物の組織図
【図2】図1の二重織物の平面図
【図3】従来の方法で二重織物を織成する工程図
【図4】他の従来の織機で二重織物を織成する状態を示す正面図
【図5】本発明のヘルドの正面図
【図6】本発明の方法の一形態により二重織物を織成する工程図
【図7】本発明の方法の他の形態により二重織物を織成する固定図
【図8】本発明の方法のさらに他の形態により二重織物を織成する固定図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下本発明を図面に基づいて説明する。図5は本発明のヘルド14の一例を示すものであって、細幅の板15の上半部及び下半部にそれぞれ長孔16が形成されている。そして好ましくは、その板15の中央の長孔16、16の間の位置に接結糸用のメール17が形成されている。
【0030】
図6は前記ヘルド14を使用して二重織物Aを織成する工程を示すものであって、二枚の綜絖5a、5bにそれぞれ前記ヘルド14が複数枚取り付けられている。前記ヘルド14は上下対称であって、すべてが同一の形状を有しており、その上半部及び下半部に長孔16が形成されている。
【0031】
そして各綜絖5a、5bにおいて、当該綜絖5a、5bに設けられたヘルド14に、上半部の長孔16に表たて糸1aを挿通したものと、下半部の長孔16に裏たて糸1bを挿通したものとが交互に形成されている。
【0032】
而して綜絖5a、5bを交互に上下動せしめることにより、先ず図6(a)において上動した綜絖5aに設けられたヘルド14の、上半部の長孔16に挿通された表たて糸1aは上動せしめられ、同じ綜絖5aに設けられたヘルド14における下半部の長孔16に挿通された裏たて糸1bは、下半部の長孔16の中間位置の保持される。また下動した綜絖5bに設けられたヘルド14の、下半部の長孔16に挿通された裏たて糸1bは下動せしめられ、同じ綜絖に設けられたヘルド14における上半部の長孔16に挿通された表たて糸1aは、上半部の長孔16の中間位置に保持される。
【0033】
これによりたて糸1は、表たて糸1aは上動位置と中間位置との間で開口し、裏たて糸1bは中間位置と下動位置との間で開口せしめられることとなり、全体として上下二段に開口せしめられる。この状態で表シャトル12aを上段の開口に打ち込むことにより、表よこ糸11aはすべての裏たて糸1bの上で表たて糸1aの間に打ち込まれることとなり、表組織3の一部が織成される。
【0034】
次に綜絖5a、5bを上下に入れ替えて、図6(a)において下動していた綜絖5bを図6(b)に示すように上動せしめると、当該綜絖5bのヘルド14の上半部の長孔16に挿通された表たて糸1aは、長孔16の中間位置から上動せしめられ、下半部の長孔16に挿通されていた裏たて糸1bは、下動位置から下半部の長孔16の中間位置に保持されることとなる。
【0035】
また先に上動していた綜絖5aを図6(b)のように下動せしめると、その綜絖5aに設けられたヘルド14の下半部の長孔16に挿通された裏たて糸1bは、長孔16の中間位置から下動せしめられ、同じ綜絖5aに設けられたヘルド14における上半部の長孔16に挿通された表たて糸1aは、上半部の長孔16に上動せしめられていたのが、長孔16の中間位置に保持される。
【0036】
これによりたて糸1は、表たて糸1aは上動位置と中間位置との間で開口が入れ替わり、裏たて糸1bは中間位置と下動位置との間で開口が入れ替わることとなり、全体として上下二段に開口せしめられつつ、表たて糸1a及び裏たて糸1bがそれぞれ開口位置が入れ替わることとなる。
【0037】
この状態で再度表シャトル12aを上段の開口に打ち込むことにより、表よこ糸11aはすべての裏たて糸1bの上で、図6(a)とは入れ替わった開口状態の表たて糸1aの間に打ち込まれることとなり、表組織3が織成される。
【0038】
次に図6(c)において、再度綜絖5a、5bを上下に入れ替えて綜絖5a、5bを図6(a)と同じ状態とし、前述のように上下二段に開口せしめる。この状態で裏シャトル12bを下段の開口に打ち込むことにより、裏よこ糸11bはすべての表たて糸1aの下で、上下に開いた裏たて糸1bの間に打ち込まれることとなり、裏組織4の一部が織成される。
【0039】
さらに図6(d)において再度綜絖5a、5bの上下を入れ替えることにより、再度図6(b)と同じ状態とする。この状態で上下二段の開口の下段の開口に裏シャトル12bを打ち込むことにより、裏よこ糸11bは下段の開口で開いた裏たて糸1bの間に打ち込まれ、裏組織4が織成される。
【0040】
以下図6(a)〜図6(b)の工程を繰り返すことにより、二枚の綜絖5a、5bを交互に上下動せしめ、形成される上下二段の開口に表よこ糸11aと裏よこ糸11bとを打ち込むことにより、表組織3と裏組織4とを交互に織成し、二重織物Aを織成することができる。
【0041】
なおたて糸1の上下の開口に選択的に表よこ糸11a又は裏よこ糸11bを打ち込むには、先に図4において説明したように、その挿入方向の先端13が中心より高い位置又は低い位置で突出したシャトル12a、12bを使用するのが良い。
【0042】
すなわち、表シャトル12aは先端13が高い位置で突出しているので、中立位置のたて糸1a、1bを押し下げながら上部開口を通過して表よこ糸11aを打ち込んで表組織3を織成し、裏シャトル12bは先端13が低い位置で突出しているので、中立位置のたて糸1a、1bを押し上げながら下部開口を通過して裏よこ糸11bを打ち込むことにより裏組織4を織成し、上下の開口を選択してよこ糸11a、11bを挿入し、二重織物Aを織成することができる。
【0043】
次に図7は本発明のヘルド14を使用して、接結二重織物Aを織成する工程を示す。すなわち綜絖5a、5bに取り付けられたヘルド14のうちの一部のもの14´に、前記長孔16には上下のたて糸1a、1bを挿通せず、中央のメール17に接結たて糸18を挿通している。
【0044】
この例においては、長孔16にたて糸1を挿通したヘルド14においては、先に図6において説明したのと同様にたて糸1を操作して上下二段の開口を形成し、シャトル12a、12bをその開口に選択的に打ち込むことにより、表組織3及び裏組織4を織成し、二重織物Aを織成する。
【0045】
しかしながらヘルド14´に挿通された接結たて糸18は、ヘルド14´の中央のメールに挿通されているため、そのヘルド14´を取り付けた綜絖5が上動したときには接結たて糸18は上動位置を採り、綜絖5が下動したときには下動位置を採って、中間位置に保持されることはない。
【0046】
従って接結たて糸18が上動位置を採るときには、表よこ糸11aも裏よこ糸11bもすべて接結たて糸18の下を通り、接結たて糸18が下動位置を採るときには表よこ糸11aも裏よこ糸11bもすべて接結たて糸18の上を通ることとなり、接結たて糸18は表よこ糸11aの上と裏よこ糸11bの下とを交互に縫うように通り、表組織3と裏組織4とを接結するのである。
【0047】
図3に示す従来の方法により接結二重織物を織成するためには、地組織を織成するための四枚の綜絖5の外に、接結たて糸を操作するための一枚乃至二枚の綜絖を必要とし、織機の構造が複雑なものとなる。
【0048】
また図4に示す方法で織成する場合には綜絖5は二枚でよいが、各綜絖5に表ヘルド10aと裏ヘルド10b以外に接結たて糸を操作するためのメールのみを設けたヘルドが必要であり、前準備がさらに面倒である。
【0049】
これに対し本発明のヘルド14を使用すれば、上半部の長孔16にたて糸を挿通すればそのたて糸は表たて糸1aとなり、下半部の長孔16にたて糸を挿通すればそのたて糸は裏たて糸1bになり、さらに中央のメール17に挿通すれば接結たて糸18になるのであって、織物の設計が極めて容易である。
【0050】
次に図8は、本発明のヘルド14を使用した織成方法の他の例を示すものである。すなわちヘルド14の上半部の長孔16に表たて糸1aを、下半部の長孔16に裏たて糸1bを、それぞれ同時に挿通しており、表たて糸1aと表よこ糸11aとで表組織3を、裏たて糸1bと裏よこ糸11bとで裏組織4を織成している。またヘルド14´のメール17には接結たて糸18も挿通されている。
【0051】
この例においては、一本のヘルド14によって表たて糸1a及び裏たて糸1bを同時に操作し、さらに接結たて糸18も同時の操作することができるので、綜絖5の数を減少せしめるだけでなく各綜絖5におけるヘルド14の数をも節約することができ、織機の構造が極めて簡単になる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上の説明においては、本発明のヘルド14及び本発明の方法を通常の力織機について適用するものとして述べているが、かかる力織機に限らず、環状織機についても全く同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 たて糸
3 表組織
4 裏組織
5 綜絖
11 よこ糸
12 シャトル
13 先端
14 ヘルド
16 長孔
17 メール
18 接結たて糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下両端を綜絖枠に取り付けたヘルド(14)において、当該ヘルドの上半部及び下半部に長孔(16)を形成したことを特徴とする、ヘルド
【請求項2】
前記ヘルド(14)の長さ方向の中央に、前記長孔(16)から分離したメール(17)を形成したことを特徴とする、請求項1に記載のヘルド
【請求項3】
複数の綜絖(5)にそれぞれ、前記請求項1に記載の複数のヘルド(14)を設け、当該ヘルド(14)の上半部の長孔(16)に表たて糸(1a)を、下半部の長孔(16)に裏たて糸(1b)をそれぞれ挿通し、当該複数の綜絖(5)を所定の順序で上下動せしめることにより、上動した綜絖(5)のヘルド(14)が上半部の長孔(16)に挿通された表たて糸(1a)を上動せしめると共に、下半部の長孔(16)に挿通された裏たて糸(1b)を前記長孔(16)の中間位置で中立に保持し、下動した綜絖(5)のヘルド(14)が下半部の長孔(16)に挿通された裏たて糸(1b)を下動せしめると共に、上半部の長孔(16)に挿通された表たて糸(1a)を前記長孔(16)の中間位置で中立に保持して、上下二段の開口を形成し、所定の順序で形成された開口状態において、上部開口に表よこ糸(11a)を挿入することにより表たて糸(1a)と表よこ糸(11a)とによって表組織(3)を織成する工程と、下部開口に裏よこ糸(11b)を挿入することにより裏たて糸(1b)と裏よこ糸(11b)とによって裏組織(4)を織成する工程とを、所定の順序で行って一サイクルとし、当該サイクルを繰り返すことにより、表組織(3)と裏組織(4)とにより二重織物(A)を形成することを特徴とする、二重織物の織成方法
【請求項4】
前記表よこ糸(11a)を挿入する表シャトル(12a)が、その挿入方向の先端(13)が中心より高い位置で突出しており、中立位置のたて糸(1a、1b)を押し下げながら上部開口を通過し、前記裏よこ糸(11b)を挿入する裏シャトル(12b)が、その挿入方向の先端(13)が中心より低い位置で突出しており、中立位置のたて糸(1a、1b)を押し上げながら下部開口を通過することを特徴とする、請求項1に記載の二重織物の織成方法
【請求項5】
前記複数の綜絖(5)にそれぞれ前記請求項2に記載の複数のヘルド(14)を設け、当該ヘルド(14)の前記メール(17)に接結たて糸(18)を挿通し、その綜絖(5)の上下動に伴って表よこ糸(11a)及び裏よこ糸(11b)を接結たて糸(18)に対して同一の位置に挿入することを特徴とする、請求項1に記載の接結二重織物の織成方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−252242(P2011−252242A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125454(P2010−125454)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】