説明

ベイジアン解析を利用する動的プリンター性能調整のための方法および装置

【課題】
動的なプリンター性能調整のための方法を実装する方法および印刷方法を提供する。
【解決手段】
当該方法は、印刷されるページのディスプレイリストを生成するために、当該ページをプリンター記述言語(PDL)インタープリターによって処理するステップと、ディスプレイリストのデータから、プリンター性能に影響するページの内容の属性を選択するステップと、各PDLインタープリターの調整パラメーターについて性能データを取得するために、選択されたページ内容属性について、当該調整パラメーターを解析するステップと、ページを印刷するために、調整パラメーターのレンダリングの設定を調整するステップと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的に、プリンター性能調整方法および装置に関し、特に、ページ内容の統計的分析に基づくプリンター性能調整のための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ページ記述言語(PDL)インタープリターおよびレンダラーは、デスクトップ・パブリッシングからプリントショップにおける生産まで、近年のプリンターでは広く利用されている。たとえば、ポストスクリプト(PS)(登録商標)は、主としてレーサープリンターにおける文書印刷のための、オブジェクトベースのPDLであるが、他種のプリンターにおいて画像を生成するためにも適用されてきた。ポストスクリプト言語を使用するプリンターでは、ポストスクリプト言語は、画像をレンダリングするために、ラスターイメージプロセッサー(“RIP”)としても知られるインタープリターによって駆動される。ポストスクリプト言語のインタープリターおよびレンダラーの例としては、アドビ(登録商標)のコンフィギュラブル・ポストスクリプトインタープリター(CPSI)、アラジン(登録商標)のゴーストスクリプト等を含む。その他のPDLの例としては、HPのプリンター制御言語(PCL)、アドビ(登録商標)のポータブルドキュメントフォーマット(PDF)、マイクロソフト(登録商標)のXMLペーパースペシフィケーション(XPS)等を含む。
【0003】
PDLインタープリターおよびレンダラーは、プリンターの性能に影響する可能性のある多くの設定を有する。これらの設定のうちのいくつかは、ある特定のプリントジョブには理想的である一方で、その他のプリントジョブにはそれ程理想的ではない。しかしながら、全ての可能な設定から調整パラメーターの最適な組合せを見つけ出すことは、異なる目的について妥協したり、典型的なジョブが何を含む(テキスト、画像、ベクトルグラフィックス)かを推測したりすることに他ならない。
【0004】
プリンター性能は、ある特定のジョブの最適性能を見つけるためにその場でインタープリターの設定を変更することによって「手動で」いくらか調整されうる一方、そのような方法は、多くの場合あまり実用的ではない。たとえば、「手動」調整は、まず最初にインタープリターのデフォルト設定を使用して数ページをレンダリングし、これらのページの内容および性能についていくらかのデータを取得して、その後若干調整して、性能が向上したかまたは低下したかを確かめる。この方法は、印刷ジョブが非常に大きく、非常に似たページからなる場合には有効かもしれない。すなわち、印刷ジョブ初期での最初の数ページについて有効となる性能調整は、当該プリントジョブの残りのページについても有効となると予測される。あいにくそのようなことは滅多になく、印刷、計測、調整、印刷、計測、調整…を繰り返す手動プロセスは、最適な性能設定が見つかる前に、非常に多大な労力と時間を必要とする。
【0005】
さらに、「手動」調整の問題は、同じ結果が全ての印刷ジョブの全てのページに対して適用される、「静的な」調整プロセスであるという点である。これは動的プロセスではないし、「万能設定」型の解決策を見つけることはほぼ不可能である。
【0006】
プリンター性能調整は、上述のような「手動」プロセスではなく、PDLインタープリターの「自己学習」機能に基づく、動的プロセスにより実現できることが好ましい。ここで、当該インタープリターは、ページの内容に基づいて各ページにどの設定が有効かを学習および記憶でき、この「自己学習」プロセスを、数ページを含むページのセットが既にレンダリングされた後ではなく、各ページが処理されている間に適用する。
【0007】
統計データに基づく自己学習および調整の概念は、ベイズの定理を利用するその他の応用に適用されてきた。たとえば、電子メールのスパムフィルタリング技術では、ベイジアン解析を利用する「ベイジアンスパムフィルタリング」は、正規の電子メールから、非正規の電子メールすなわち「スパム」を区別するための、一般的な方法となっている。
【0008】
ベイジアンスパムフィルタリングは、特定の単語が特定の確率でスパム電子メールおよび正規の電子メールに存在するという、統計的な知見に基づく。たとえば、「リファイナンス」という単語は、スパム電子メールでは高い出現率を有するが、その他の電子メールでは非常に低い出現率を有する。電子メールフィルターは、事前にこれらの確率についての知識を持ち合わせていないが、知識を蓄積できるようにまずトレーニングされなくてはならない。電子メールフィルターをトレーニングするために、ユーザーは一般的に、まず手動で新しい電子メールがスパムであるか否かを示す必要がある。各トレーニング用電子メール内の全ての単語について、フィルターは、そのデータベースに、各単語がスパムまたはハム電子メールに出現する確率を調整する。たとえば、ベイジアンスパムフィルターは、典型的に、単語「リファイナンス」については非常に高いスパム確率を学習するが、友人および家族の名前のような正規の電子メールにしか見られない単語については、非常に低いスパム確率を学習することになる。
【0009】
トレーニング後、単語の特定の組合せを有する電子メールが、スパムまたは正規電子メールのカテゴリーに属する確率を算出するために、単語出現確率(「尤度関数」とも知られる)が使用される。電子メール内の各単語(または最も注意を引く単語)は、電子メールのスパム確率に寄与する。この寄与は、「事後確率」とも呼ばれ、ベイズの定理を利用して算出される。それから、電子メールのスパム確率が、電子メール内の全ての単語にわたって算出され、総計がある閾値(たとえば95%)を越える場合、フィルターは、当該電子メールをスパムとして特定する。
【0010】
ソフトウェアから間違った判断が特定される(誤った警告をするか誤って警告をしない)場合は、ユーザーが手動で電子メールをスパムカテゴリーから正規電子メールカテゴリーに、またはその逆に変更する時、初期トレーニングは一般的に改善される。こうすることで、フィルターソフトウェアは、その精度を動的に向上でき、スパム電子メールの進化に適応することができる。
【0011】
プリンターが各ページのページ内容に基づいて、どの設定が各ページについて最適に作用するかを学習および記憶できる、性能調整方法を有することは好ましい。ここで、このプロセスが、数ページを含むあるセットが既にレンダリングされた後ではなく、各ページが処理されている間に適用され、また、調整データは一つのジョブから保存され、将来のジョブに適用されうる。
【0012】
ベイジアン解析を利用して、ページ内容の統計的解析に基づいて、動的な性能調整を提供できる、改善されたプリンター性能調整方法を有することはまた望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、ベイジアン解析を利用するプリンター性能調整のための方法および装置を提供することである。
【0014】
本発明の目的は、ベイジアン解析を利用することによって各ページが処理され、印刷ページを処理するための最適な設定が適用されている間、プリンターのPDL言語インタープリターが、ページ内容に基づいて各ページについての最適な性能調整データを学習でき、一つのジョブで保存された調整データが将来のジョブにも適用されうる、動的性能調整方法および当該方法を実装するプリンターを提供することである。
【0015】
本発明は、PS、PCL、PDL、XPS等の種々のPDLおよびその他の言語に適用可能であり、ディスプレイリスト(DL)またはそれに同等なものが生成される。いくつかのPDL言語では、いかなる中間フォーマットを生成することなく、本発明の方法を直接元のPDL(ソースファイル)に適用できる。重要な側面は、各ページを分離でき、どの種類(および個数、大きさ等)のオブジェクトが各ページに出現するかを計測することができることである。これは、PSのようなある種のPDLにとっては難しい可能性があるので、ディスプレイリスト(DL)を生成して、解析をDLに適用することがより有効である。PCL等のその他のPDLでは、PDLからページオブジェクト情報を取得することはより容易であるので、DLを生成することは必要なくなる。
【0016】
本発明のさらなる特徴および利点は、以下の記載に説明され、当該記載から部分的に明らかであり、または本発明の実施から理解されうる。本発明のこれらの目的およびその他の利点は、記述された記載、その特許請求の範囲および添付の図面において特に指摘された構成により、認識され達成される。
【課題を解決するための手段】
【0017】
具体的かつ広義に記載されるとおり、これらおよび/またはその他の目的を達成するために、本発明は、動的なプリンター性能調整方法を提供する。当該方法は、印刷されるページのディスプレイリストを生成するために、当該ページをプリンター記述言語(PDL)インタープリター/レンダラーによって処理するステップと、前記ディスプレイリストのデータから、プリンター性能に影響する前記ページの内容の属性を選択するステップと、各前記PDLインタープリター/レンダラーの調整パラメーターについて性能データを取得するために、前記選択されたページ内容属性について、当該調整パラメーターを解析するステップと、前記ページを印刷するために、各前記調整パラメーターの前記性能データに基づいて、前記調整パラメーターのレンダリングの設定を調整するステップと、を含む。
【0018】
当該動的なプリンター性能調整方法はまた、トレーニングプロセスを含み、当該トレーニングプロセスは、前記ベイジアン解析手段によって解析されるトレーニング用ページのセットを生成するステップと、各前記調整パラメーターについて、最適な性能設定を計測するために、各前記ページをレンダリングするステップと、前記調整パラメーターの設定に基づいて、前記ページをグループ化するステップと、各前記トレーニング用ページの前記ディスプレイリストデータを生成するステップと、前記調整パラメーターの設定についてトレーニングデータをまとめるために、各前記グループの前記トレーニング用ページをレンダリングして、当該トレーニングデータを保存するステップと、をさらに含む。
【0019】
その他の側面では、本発明の一実施形態は、動的な性能調整を提供可能なプリンターを提供する。当該プリンターは、コンピューター読取り可能なプログラムコードを格納するメモリを含む制御部と、前記制御部に接続される画像処理部と、前記制御部により制御されるプリントエンジンと、プリンターを制御するために前記コードを実行するプロセッサーと、を備え、前記コンピューター読取り可能なプログラムコードは、動的なプリンター性能調整のための処理を、前記プリンターに実行させるように構成され、前記処理は、印刷されるページのディスプレイリストを生成するために、当該ページをプリンター記述言語(PDL)インタープリター/レンダラーによって処理するステップと、前記ディスプレイリストのデータから、プリンター性能に影響する前記ページの内容の属性を選択するステップと、各前記PDLインタープリター/レンダラーの調整パラメーターについて性能データを取得するために、前記ページ内容属性について、当該調整パラメーターを解析するステップと、前記ページを印刷するために、各前記調整パラメーターの前記性能データに基づいて、前記調整パラメーターのレンダリングの設定を調整するステップと、を含む。前記処理は、前記ベイジアン解析処理をトレーニングする処理をさらに含み、当該トレーニング処理は、前記ベイジアン解析手段によって解析されるトレーニング用ページのセットを生成するステップと、各前記調整パラメーターについて、最適な性能設定を計測するために、各前記ページをレンダリングするステップと、前記調整パラメーターの設定に基づいて、前記ページをグループ化するステップと、各前記トレーニング用ページの前記ディスプレイリストデータを生成するステップと、前記調整パラメーターの設定についてトレーニングデータをまとめるために、各前記グループの前記トレーニング用ページをレンダリングして、当該トレーニングデータを保存するステップと、をさらに含む。
【0020】
前述の一般的な記載および以下の詳細な記載の両方は、例示的かつ解説的なものであるにすぎず、特許請求される本発明の説明をさらに提供することを意図されるものと解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態による、ベイジアン解析を利用する動的性能調整を適用する、例示的な印刷処理を示すフローチャートである。
【図2】本発明の一実施形態による、ベイジアン解析を利用する動的性能調整を適用する、例示的なトレーニングプロセスを示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態による、例示的な印刷システムを示す概略ブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態による、動的性能調整方法の例示的な変換(RIP)処理を示す、部分的なフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態による、動的性能調整方法の例示的なベイジアン解析処理を示す、部分的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態は、ベイジアン解析を利用する、動的なプリンター性能調整のための方法を提供する。
【0023】
本発明の方法の一実施形態は、ページ内容の統計的解析に基づく処理によって実装される。ほとんどのPDLインタープリターは、「ディスプレイリスト処理」として知られるプログラムを用いる。当該プログラムは、ページ記述データストリームを読み、ファイルまたはディスプレイリスト命令を含むその他のデータオブジェクトを書き出す、フロントエンドのプロセッサーから構成される。これらの命令は、容易に操作され、かつ効率的に処理されうる、非常に基本的な描画コマンドおよびデータである。当該プログラムの第2の部分は、ディスプレイリストデータを読んで、用紙またはその他の媒体上に実際に印刷するためのハードウェア(たとえば、プリントエンジン)に送信されるビットマップを生成する、バックエンドのレンダラーである。
【0024】
ディスプレイリストの一つの目的および利点は、データがページ内容に基づいて解析されうるという点である。これは、典型的に、レンダラーのメモリ要求が低減されるように、データを「バンド」にソートするために使用される。各バンドは、ディスプレイリストの対応する部分(たとえばサブリスト)を表す。割り当てられるメモリ容量および/またはビットマップ画像の必要とされる解像度に高度に依存するが、たとえば、典型的なバンドは、1ページの縦半インチの短冊部分に相当する。その他のソート方法は、特定のルール(たとえば、テキストは、画像またはベクトルオブジェクトとは異なってレンダリングされる等)を使用して、異なるオブジェクトタイプをレンダリングするために、ディスプレイリスト内の「オブジェクトタイプ」データを使用することである。
【0025】
ディスプレイリストは、様々な属性を有するオブジェクトを含む。これらの属性のいくつかは性能に関連し、いくつかは関連しない。しかし、おそらくディスプレイリスト内の全てのオブジェクトは、性能に影響する。したがって、解析は、ページ内容中のオブジェクトに集中され、関連しない属性は、解析から除外される。たとえば、ディスプレイリスト内に2つのビットマップがある場合、これらは、サイズ、ロケーション、カラー等の属性を有し、ロケーション属性は無視されるが、サイズおよびカラー属性は、解析のために利用される。ロケーションを無視すれば、これらの2つのビットマップは、その他の属性という観点からは、同一となるかもしれない。したがって、統計的解析としては、2つの別の固有なオブジェクトを見ているというよりは、むしろ同じオブジェクトを2回見ているようなものである。
【0026】
本発明の一実施形態によると、理想的な性能特性および調整パラメーターを計測するために、ディスプレイリストデータが解析される。ディスプレイリストデータは、ベイジアン解析を利用して解析される。ベイジアンシステムは、解析されているデータの詳細を知っている必要はない。なぜなら、そのようなシステムは、フィードバックによってトレーニングされるからである。ベイジアン解析をディスプレイリストデータに適用することによって、各ページはその内容に従って分類され、理想的な性能調整パラメーターが、当該ページを処理するために適用されうる。
【0027】
ディスプレイリスト内のデータオブジェクトの多くの属性は、性能調整処理、たとえばバンド高さまたは幅、レンダリング方向、スレッド数等に関連する。これらの属性のそれぞれは複数の設定を有し、当該設定を変更することは、印刷ジョブのレンダリングに顕著な効果を奏しうる。これらの属性のいくつかは、ベイジアン解析に適している(たとえば、オブジェクトタイプ、サイズ、カラー、透明度、パターン、配置等)。これらの適した属性は、様々な調整パラメーターのそれぞれについての理想的な設定を測定するために、ベイジアン解析中に抽出されて使用される必要がある。これらの調整パラメーターは、関連しない情報を除く一方、関連するデータを保持するように選択される必要がある。
【0028】
図1を参照すると、本発明の一実施形態による、ベイジアン解析を利用する動的性能調整を適用する、例示的な印刷処理が示されている。まず、印刷される各ページは、PDLインタープリターによって処理される(ステップS110)。PDLインタープリターは、処理された各ページについてディスプレイリストを生成する。(通常、ページをレンダリングするために、バンド順またはその他の順にディスプレイリストデータをソートすることによって、各ページのディスプレイリストが準備される。しかし、この手順は選択的であり、本発明の処理の手順には関連しない。)次に、ベイジアン解析に適したページ内容の重要な属性のグループが、ディスプレイリストデータから選択され、抽出される(ステップS120)。選択されたオブジェクト属性(たとえば、ページ上の画像オブジェクトのサイズ、カラーおよび配置等)の調整パラメーターについてベイジアン解析が実行され、各調整パラメーターについてスコアが生成される(ステップS130)。ページについて取得されたスコアに基づいて、ページ設定のレンダリングが、(トレーニングデータに基づいて)最適な性能を達成するように調整される(ステップS140)。なお、各スコアは、予め設定された閾値と比較されてもよい。スコアが閾値より上である場合、設定がレンダリングに適用される。上記ステップが、その後続くページについて反復される(ステップS150)。
【0029】
上記プロセスでは、ベイジアン解析は、ページのディスプレイリスト内の各属性またはオブジェクトにではなく、1ページの各調整パラメーターに適用される。ページをレンダリングする性能に影響する複数の調整パラメーターがあるが、我々は、各調整パラメーターについて、最適なレンダリング設定を知っておく必要がある。そこで、各調整パラメーターについてスコアが生成される必要がある。したがって、各調整パラメーターについてのトレーニングデータがまとめられる必要があり、ベイジアン解析は、これら複数のスコアに到達するために、トレーニングデータの各セットを使用して実行されなくてはならない。
【0030】
図2を参照すると、本発明の一実施形態による、ベイジアン解析を利用する動的性能調整に使用されるための、トレーニングデータをまとめる例示的なトレーニングプロセスが示されている。まず、解析されるトレーニング用ページが1セット生成される(ステップS210)。これらの各トレーニング用ページは、調整パラメーターの調整に集中させることに資するある特性を有するように設計される。たとえば、あるトレーニング用ページは画像を多く含む一方、その他はテキストのみの内容を有する、等である。当然、トレーニング用ページは、いかなるタイプのオブジェクト(ビットマップ、テキスト、ベクトル等)またはこれらの組合せと共に生成されてもよい。それから、各調整パラメーターについての最適な性能設定が、手動で計測される。これは、各調整パラメーターについて最適な設定を見つけるために、各ページを複数回レンダリングして、手動のトレーニングを実行することによってなされる(ステップ220)。たとえば、トレーニング用ページは、まず、インタープリターのデフォルト属性設定を使用してレンダリングされ、トレーニング用ページの内容および性能についてのいくらかのデータが収集される。そして、レンダリング設定に調整がなされ、性能が改善したか否かを確認するために、ページは再度レンダリングされる。最適なレンダリング設定が見つかるまで、この処理が繰り返される必要がある。たとえば、2つの調整パラメーターは、「マルチスレッドレンダリング」および「バンド高さ」であり、これらの最適な性能設定は、「マルチスレッドレンダリング=オン」および「バンド高さ=120」である。
【0031】
次に、トレーニング用ページが、グループ化(または「タグ付け」)される(ステップS230)。グループに基づく当該ページに対して、レンダリング設定は最適である。これらのグループは、各調整パラメーターの各設定に基づく。これは、トレーニングデータ(ジョブ)の各セットを複数の「パラメーターおよび設定」カテゴリーにグループ化する(ステップS232)こと、または、各ジョブにどの設定がそのジョブに最適かを示す複数のタグを適用する(ステップS234)ことによって達成されうる。タグ付けシステムの使用は、トレーニングプロセスを最適化する選択的な実装に過ぎず、トレーニングプロセスの必須の手順ではない。
【0032】
各トレーニング用ページのディスプレイリストデータは、トレーニング用ページがトレーニングプロセスを通じてレンダリングできるように生成される必要がある(ステップS240)。ベイジアン解析を複数のレンダリング設定を有する動的性能調整に適用するために、トレーニングプロセス中、統計データの別テーブルが作成されなくてはならない。したがって、ベイジアン解析手段が「トレーニングモード」に設定される場合、各グループについて、(一致するページ内容属性および設定を有する)当該グループ内の全てのトレーニング用ページが、レンダリングされる(ステップS250)。トレーニング用ページは、複数回処理されるか(各パラメーターおよび各設定につき一回)(ステップS252)、または、トレーニングデータが各(調整パラメーターおよびその設定に対応する)タグについてまとめられるタグ付けシステムにより1回で処理される(ステップS254)。繰り返しになるが、タグ付けシステムの使用は、トレーニングプロセスを最適化する選択的な実装に過ぎず、トレーニングプロセスの必須の手順ではない。調整データは保存され、複数ページにわたって蓄積し、当該調整データは、将来の印刷ジョブについて上記動的調整処理において使用されうる(ステップS260)。当然、全処理は、より多くのトレーニングデータを取得してまとめるために、必要に応じて繰り返されうる。
【0033】
各設定で同じジョブを複数回印刷して結果を比較することなく、ジョブのある組合せおよびその設定が、「速く」または「遅く」印刷するかをプリンターが自動で検出することは、容易ではない。このような状況は、そのような検出をしなくてはならないエンドユーザーにとっては、(各印刷ジョブは長時間要するため)受け入れ難いことである。しかし、本発明の方法を実装する例示的な処理は、ユーザーの典型的なジョブの例を提供することによって、ユーザーにより使用できる(「工場出荷時設定」トレーニングデータを受け入れるのとは対照的に)トレーニングモードを提供する。
【0034】
上記方法は、プリンター、コンピューター、プリンターサーバーまたはその他いかなる適切なデータ処理システムの一部となりうる、インタープリターまたはラスターイメージプロセッサー(RIP)の一部として実装されてもよい。プリンターで印刷させたり、表示装置上で表示させたり、記憶装置に記憶させたり、他の装置に転送させたりする等、いかなる所望の態様で利用される画像を生成するために、上記方法が使用されうる。
【0035】
図3を参照すると、本発明の一実施形態による、例示的な印刷システム10が示されている。印刷システム10は、シリアルバスまたはケーブル、ローカルエリアネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)、その他の有線または無線通信チャンネル等のようなデータ通信ライン14を介して接続された、コンピューター12およびプリンター20を含む。印刷されるべき文書がアプリケーションプログラムを使用して生成され、ユーザー指示に起因して、当該文書がPDLデータの形式でプリンター20に送信されるという、一般的に知られる構成をコンピューター12は有する。プリンター20は、概略的に、制御部22、画像処理部24、プリントエンジン26および入出力(I/O)ポート28を含む。制御部22は、中央演算処理部(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)および読取り専用メモリ(ROM)を含む。CPUは、プリンター20の内部構成および操作を制御するために、ROMに格納された様々なソフトウェアプログラムを、RAMに読み出す。CPU(およびRAM)はまた、ROMにも格納されるソフトウェアプログラムを実行することによって、インタープリターまたはRIPとして作動する。コンピューター12から送信されるPDLデータは、一時的にRAMに格納され、RIPとして機能するCPUによりラスタライズされる。画像処理部24は、CPU22の制御の下、ラスタライズされた画像データについて様々な画像処理を実行し、処理された画像データをプリントエンジン26に送信する。たとえば電子写真処理を実行するプリントエンジンは、画像処理部24から送信された画像データに基づいて、記録用紙上に画像を形成する。入出力部は、コンピューター12からPDL形式の印刷データを受け付ける。上述の動的ポストスクリプト性能調整方法は、インタープリターまたはRIPとして作動する制御部22のCPUにより実行される。すなわち、CPUは、ベイジアン解析を実行するソフトウェアプログラム(「ベイジアン解析手段」)を実行することにより当該方法を実行する。
【0036】
インタープリター(RIP)プログラムおよびベイジアン解析プログラムは、ROMに格納される。これらは、CPUによって実行されている時、CPUによる実行のために、ROMからRAMに読み出される。図4に示されるように、インタープリター(RIP)プログラムが実行される時、印刷ジョブのページP1,P2,…,Pnから、ディスプレイリストDL1,DL2,…,DLnがそれぞれ生成される。ここで、nは、印刷ジョブ内のページ数である。図5に示されるように、ベイジアン解析プログラムが実行される時、スコアS1,S2,…,Smが、調整パラメーターTP1,TP2,…,TPmそれぞれについて生成される。ここで、mは、印刷ジョブのページからインタープリター(RIP)によって生成されたディスプレイリストデータから抽出され、選択された調整パラメーターの数である。
【0037】
図5にさらに示されるように、予め設定された閾値Q1,Q2,…,Qmが使用可能である場合、各スコアSは、対応する閾値Qと比較され、スコアSが閾値Qよりも高い場合(S>Q)、調整パラメーターの対応するレンダリング設定は、レンダリングにおいて印刷ジョブに適用されうる。
【0038】
本発明の例示的な動的性能調整方法は、多くの利点を有する。それは、ページ内容の統計的解析に基づいて動的な性能調整を提供する。それはまた、ベイジアン解析を利用する動的な性能調整を適用する印刷処理と、ベイジアン解析を利用する動的な性能調整を適用するトレーニングプロセスとを提供する。それは、各ページが処理されている間、ページ内容に基づいて、各ページについて最適な性能調整データを、プリンターのPDLインタープリターに学習させることができる、動的な性能調整方法をさらに提供する。さらに、それは、1つのジョブからの調整データが保存され、将来のジョブに適用させることができる。
【0039】
本発明の思想および範囲から乖離することなく、様々な改変および変形が本発明の方法になされうることは、当業者にとって明らかである。したがって、本発明は、添付された請求の範囲およびそれと同等な範囲内での改変および変形を包含するものと解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷されるページのディスプレイリストを生成するために、当該ページをプリンター記述言語(PDL)インタープリターによって処理するステップと、
前記ディスプレイリストのデータから、プリンター性能に影響する前記ページの内容の属性を選択するステップと、
各前記PDLインタープリターの調整パラメーターについて性能データを取得するために、前記選択されたページ内容属性について、当該調整パラメーターを解析するステップと、
前記ページを印刷するために、各前記調整パラメーターの前記性能データに基づいて、前記調整パラメーターのレンダリングの設定を調整するステップと、
を含む動的なプリンター性能調整方法。
【請求項2】
前記調整パラメーター解析の前記性能データは、各前記調整パラメーターについて生成されるスコアである、請求項1に記載の動的なプリンター性能調整方法。
【請求項3】
前記調整パラメーターの前記スコアを予め設定された閾値と比較するステップをさらに含み、
前記スコアが前記予め設定された閾値よりも高い場合に、前記調整パラメーターの設定は前記レンダリングに使用される、請求項2に記載の動的なプリンター性能調整方法。
【請求項4】
前記調整パラメーターを解析するステップは、前記調整パラメーターについてベイジアン解析を実行するために、ベイジアン解析手段を使用する、請求項1に記載の動的なプリンター性能調整方法。
【請求項5】
前記ベイジアン解析手段をトレーニングするステップをさらに含む、請求項1に記載の動的なプリンター性能調整方法。
【請求項6】
前記トレーニングするステップは、
前記ベイジアン解析手段によって解析されるトレーニング用ページのセットを生成するステップと、
各前記調整パラメーターについて最適な性能設定を計測するために、各前記ページをレンダリングするステップと、
前記調整パラメーターの設定に基づいて、前記ページをグループ化するステップと、
各前記トレーニング用ページの前記ディスプレイリストデータを生成するステップと、
前記調整パラメーターの設定についてトレーニングデータをまとめるために、各前記グループの前記トレーニング用ページをレンダリングして、当該トレーニングデータを保存するステップと、
をさらに含む請求項5に記載の動的なプリンター性能調整方法。
【請求項7】
前記トレーニング用ページの各まとまりを、前記属性の設定の複数カテゴリーにグループ化するステップをさらに含む、請求項6に記載の動的なプリンター性能調整方法。
【請求項8】
前記調整パラメーター設定の各前記カテゴリーに対応する前記トレーニング用ページのセットを、複数印刷するステップをさらに含む、請求項7に記載の動的なプリンター性能調整方法。
【請求項9】
各前記トレーニング用ページに複数のタグを適用するステップをさらに含む、請求項6に記載の動的なプリンター性能調整方法。
【請求項10】
全ての前記トレーニング用ページの一回の印刷で、各前記タグについて前記調整パラメーターデータをまとめるステップをさらに含む、請求項9に記載の動的なプリンター性能調整方法。
【請求項11】
コンピューター読取り可能なプログラムコードを格納するメモリを含む制御部と、
前記制御部に接続される画像処理部と、
前記制御部により制御されるプリントエンジンと、
プリンターを制御するために前記コードを実行するプロセッサーと、を備える当該プリンターにおいて、
前記コンピューター読取り可能なプログラムコードは、動的なプリンター性能調整のための処理を、前記プリンターに実行させるように構成され、
前記処理は、
印刷されるページのディスプレイリストを生成するために、当該ページをプリンター記述言語(PDL)インタープリターによって処理するステップと、
前記ディスプレイリストのデータから、プリンター性能に影響する前記ページの内容の属性を選択するステップと、
各前記PDLインタープリターの調整パラメーターについて性能データを取得するために、前記ページ内容属性について、当該調整パラメーターを解析するステップと、
前記ページを印刷するために、各前記調整パラメーターの前記性能データに基づいて、前記調整パラメーターのレンダリングの設定を調整するステップと、
を含むプリンター。
【請求項12】
前記調整パラメーター解析の前記性能データは、各前記調整パラメーターについて生成されるスコアである、請求項11に記載のプリンター。
【請求項13】
前記処理は、前記調整パラメーターの前記スコアを予め設定された閾値と比較するステップをさらに含み、
前記スコアが前記予め設定された閾値よりも高い場合に、前記調整パラメーターの設定は前記レンダリングに使用される、請求項12に記載のプリンター。
【請求項14】
前記調整パラメーターを解析するステップは、前記調整パラメーターについてベイジアン解析を実行するために、ベイジアン解析手段を使用する、請求項11に記載のプリンター。
【請求項15】
前記処理は、前記ベイジアン解析手段をトレーニングするステップをさらに含む、請求項11に記載のプリンター。
【請求項16】
前記トレーニングするステップは、
前記ベイジアン解析手段によって解析されるトレーニング用ページのセットを生成するステップと、
各前記調整パラメーターについて最適な性能設定を計測するために、各前記ページをレンダリングするステップと、
前記調整パラメーターの設定に基づいて、前記ページをグループ化するステップと、
各前記トレーニング用ページの前記ディスプレイリストデータを生成するステップと、
前記調整パラメーターの設定についてトレーニングデータをまとめるために、各前記グループの前記トレーニング用ページをレンダリングして、当該トレーニングデータを保存するステップと、
をさらに含む請求項15に記載のプリンター。
【請求項17】
前記トレーニングするステップは、前記トレーニング用ページの各まとまりを、前記属性の設定の複数カテゴリーにグループ化するステップをさらに含む、請求項16に記載のプリンター。
【請求項18】
前記トレーニングするステップは、前記調整パラメーター設定の各前記カテゴリーに対応する前記トレーニング用ページのセットを、複数印刷するステップをさらに含む、請求項17に記載のプリンター。
【請求項19】
前記トレーニングするステップは、各前記トレーニング用ページに複数のタグを適用するステップをさらに含む、請求項16に記載のプリンター。
【請求項20】
前記トレーニングするステップは、全ての前記トレーニング用ページの一回の印刷で、各前記タグについて前記調整パラメーターデータをまとめるステップをさらに含む、請求項19に記載のプリンター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−253527(P2011−253527A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−104624(P2011−104624)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(507031918)コニカ ミノルタ ラボラトリー ユー.エス.エー.,インコーポレイテッド (157)
【Fターム(参考)】