説明

ベゼル

【課題】縦長のアウトサイドドアハンドルを備える車両であっても、窓開口から上体を車外へ乗り出した体勢を無理なく維持することが可能なベゼルを提供する。
【解決手段】ベゼル20の凹部30は、窓開口7よりも下方でアウトサイドドアハンドル40の上方に配置され、運転席に着座した運転者が窓開口から車外の下方へ延ばした手の複数の指の先を当該指の腹を上向きにした状態で挿入可能な横幅で車幅方向内側へ凹むとともに、挿入された指の腹が引っ掛かる上面部33を有する。運転者は、窓開口から車外へ乗り出した上体を凹部30の上面部33に引っ掛けた手によって容易に且つ確実に支持することができ、かかる体勢を無理なく維持することができる。従って、車両の後進時に後方を直接目視するために窓開口から車外へ上体を乗り出してステアリングを操作する際に、一方の手で体勢を無理なく維持しながら他方の手でステアリングを操作することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアパネルのアウトサイドドアハンドル周囲に配置されるベゼルに関する。
【背景技術】
【0002】
キャブオーバートラックのドアパネルのアウタパネルの開口を覆うベゼルに支持される縦長のアウトサイドドアハンドルが知られている。
【0003】
アウトサイドドアハンドルを備えたドアパネルを、キャブの高さの異なる車両間で共通化する場合、横長のアウトサイドドアハンドルよりも縦長のアウトサイドドアハンドルの方が上下方向に広い範囲で操作することが可能なため、縦長のアウトサイドドアハンドルをドアパネルの所定の箇所に配置することによって、当該車両間で地上からのアウトサイドドアハンドルの高さが異なるときでも操作性が良好となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−121250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
キャブオーバートラックの運転者は、車両の後進時に後方を直接目視するために、ステアリングを操作していない一方の手を窓開口から外側下方へ延ばし、その一方の手でアウトサイドドアハンドルを掴み、窓開口から車外へ上体を乗り出し、その体勢を一方の手で支持しながら他方の手でステアリングを操作する場合がある。
【0006】
しかし、縦長のアウトサイドドアハンドルは、上方から掴み難いため、窓開口から車外へ上体を乗り出した体勢の支持を維持することが難しい。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、縦長のアウトサイドドアハンドルを備える車両であっても、窓開口から上体を車外へ乗り出した体勢を無理なく維持することが可能なベゼルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく、本発明は、車両の運転席の側方の窓開口よりも下方に形成されたアウタパネルの開口に装着され、縦長のアウトサイドドアハンドルを露出させた状態で開口を覆うベゼルであって、凹部を備える。
【0009】
凹部は、アウトサイドドアハンドルの上方に配置され、運転席に着座した運転者が窓開口から車外の下方へ延ばした手の複数の指の先を当該指の腹を上向きにした状態で挿入可能な横幅で車幅方向内側へ凹むとともに、挿入された指の腹が引っ掛かる上面部を有する。
【0010】
上記構成では、運転席に着座した運転者は、一方の手を窓開口から車外の下方に延ばし、その延ばした手の複数の指を凹部に挿入して引き上げることにより、指の腹を上面部に引っ掛けることができる。これにより、窓開口から車外へ乗り出した上体を凹部の上面部に引っ掛けた手によって容易に且つ確実に支持することができ、かかる体勢を無理なく維持することができる。従って、車両の後進時に後方を直接目視するために窓開口から車外へ上体を乗り出してステアリングを操作する際に、運転者は、一方の手で体勢を無理なく維持しながら他方の手でステアリングを操作することができる。
【0011】
また、上記ベゼルを備えたドアパネルをキャブの高さの異なる車両間で共通化してもよい。この場合、これらの車両間では窓開口から凹部への距離が同じであるため、例えば標準的な成人男性の腕の長さに合わせて窓開口から凹部への距離を設定することによって、いずれの車両に対しても同様の使い易さとなる凹部を提供することができる。なお、アウトサイドドアハンドルは縦長であり、上下方向に広い範囲で操作することが可能であるため、アウトサイドドアハンドルをドアパネルの所定の箇所に配置することによって、これらの車両間で地上からのアウトサイドドアハンドルの高さが異なる場合であってもアウトサイドドアハンドルの操作性は確保される。
【0012】
また、上面部に下方に突出するリブを有してもよい。
【0013】
上記構成では、凹部の上面部に引っ掛けた指の腹にリブが接触するため、凹部から車幅方向外側へ抜ける方向への指の移動を抑えることができる。従って、窓開口から上体を車外へ乗り出した運転者の車幅方向外側への重心の移動を容易に且つ確実に抑えることができ、一方の手で上体を支持して他方の手でステアリングを操作するときに、より安定した体勢でステアリングを操作することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、縦長のアウトサイドドアハンドルを備える車両であっても、窓開口から上体を車外へ乗り出した体勢を無理なく維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。図1は本実施形態に係るベゼルを備えた車両の要部斜視図、図2は図1の要部拡大図、図3は図2のIII-III方向視の断面図をそれぞれ示したものである。なお、図中FRは車両前方を、図中UPは車両上方を、図中INは車幅内側方向をそれぞれ示す。また、以下の説明において、前後は車両の進行方向の前後方向を示す。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係る車両1は、キャブ2内の運転席3の着座位置が概ねエンジン(図示省略)より前方に位置するキャブオーバトラックであり、キャブ2の運転席3側の側方にドアパネル10とベゼル20とアウトサイドドアハンドル40とガスケット50とを備えている。
【0017】
ドアパネル10は、アウタパネル11と、アウタパネル11の車幅方向内側に対向して配置されるインナパネル(図示省略)とを有し、支持部12と係止部13と窓枠部14とウィンドウパネル収容部15と開口18とが設けられる。アウタパネル11とインナパネルとは、それぞれの外周縁部が当接した状態で固着されている。かかる固着状態では、アウタパネル11とインナパネルとの間に閉断面が形成される。
【0018】
支持部12は、ドアパネル10の前端に設けられ、ドア開口4を有するサイドパネル5に対して回転自在に支持される。係止部13は、ドアパネル10の後端に設けられ、サイドパネル5に対してドアパネル10を解除可能に係止する。ドアパネル10は、係止部13がサイドパネル5に対して係止されているときに閉止状態となり、係止部13がサイドパネル5に対して係止されていないときに、サイドパネル5に対して回転自在な開放状態とになる。窓枠部14は、ウィンドウパネル6が昇降する窓開口7をサイドパネル5とともに形成する。具体的には、ドアパネル10の窓枠部14が窓開口7の下縁部を形成し、サイドパネル5のドア開口4が窓開口7の上縁部と前縁部と後縁部とを形成する。ウィンドウパネル収容部15は、窓枠部14に形成された開口部16と、ドアパネル10の閉断面内に設けられ、ウィンドウパネル6が開口部16を降下したときにウィンドウパネル6の少なくとも一部を収容する収容部17とを有する。開口18は、窓枠部14の後部よりも下方でアウタパネル11に略矩形縦長形状に形成される。窓枠部14から開口18の上部までの距離は、運転席3に着座した運転者が窓開口7から車外の下方へ延ばした手が届く位置として、標準的な成人男性の腕の長さに合わせて設定される。
【0019】
図2及び図3に示すように、ベゼル20は、アウタパネル11の開口18よりも僅かに大きい略矩形縦長形状の樹脂製部材であって、膨出部21とハンドル上支持部22とハンドル下支持部25と凹部30とを有する基部26と、外縁部27とが一体形成され、アウタパネル11の開口18に装着されて開口18を覆う。
【0020】
膨出部21は、ベゼル20の上下方向略中央部分に形成され、車幅方向内側へ膨出する。ハンドル上支持部22は、膨出部21の上方でベゼル20の前後方向略中央部分に配置され、支軸挿通孔23を有し、膨出部21よりも車幅方向外側で車幅方向内側へ凹む凹状に形成される。支軸挿通孔23は、支軸24が挿通可能な孔状部である。ハンドル下支持部25は、膨出部21の下方でベゼル20の前後方向略中央部分に配置され、膨出部21よりも車幅方向外側からドアパネル10の閉断面側へ貫通した孔状部である。
【0021】
凹部30は、ハンドル上支持部22の上方であってベゼル20の上部に形成され、開口部31とガイド部32と上面部33とリブ36を有し、車幅方向内側へ凹む。
【0022】
開口部31は、車幅方向にアウタパネル11と略同じ位置に形成され、標準的な成人男性の第一指を除く4本の指の先を指の腹を上向きにした状態で挿入可能な横長の開口である。ガイド部32は、凹部30の下面であり、開口部31の下縁から車幅方向内側へ上方へ傾斜し、指の腹を上向きにした状態で凹部30に指の先が挿入されるときに指の甲が接触すると、指の先を上面部33へガイドする。上面部33は、庇部34と天井部35とを有する。庇部34は、アウタパネル11の開口18の上部を車幅方向にアウタパネル11と略連続した面で覆い、その下縁が開口部31の上縁を形成する略矩形横長形状に形成される。天井部35は、凹部30の上面であり、開口部31の上縁よりも上方に形成される。庇部34と天井部35とは、凹部30内に上方へ凹んだ空間を区画する。上面部33は、指の腹を上向きにした状態で凹部30に挿入された手が引き上げられると指の腹が引っ掛かる。リブ36は、上面部34に横長で車幅方向に3つ形成され、湾曲面状の先端を有し、上面部34の天井部35から下方に突出する。車幅方向外側のリブ36は、車幅方向内側のリブ36よりも突出長さが長い。
【0023】
基部26は、アウタパネル11の開口18と略同じ大きさの略矩形縦長形状に形成され、アウタパネル11よりも車幅方向内側に略全体が配置される。
【0024】
外縁部27は、基部26の周縁で、アウタパネル11の開口18よりも僅かに大きい略矩形縦長枠形状に形成される。
【0025】
窓枠部14から凹部30までの距離は、上記した窓枠部14から開口18の上部までの距離として、標準的な成人男性の腕の長さに合わせて設定される。これらにより、凹部30は、運転席3に着座した運転者が窓開口7から車外の下方へ延ばし、その延ばした手の複数の指の先をその指の腹を上向きにした状態で挿入可能である。
【0026】
図2及び図3に示すように、アウトサイドドアハンドル40は、車幅方向外側へ膨出する断面略アーチ形状の樹脂製部材であり、上連結部41と下連結部43とを有する。上連結部41は、支軸24が挿通可能な支軸挿通孔42を有し、ベゼル20のハンドル上支持部22に挿入された状態で支軸挿通孔23とともに支軸24が挿通し、支軸24を中心としてベゼル20に回転自在に支持される。下連結部43は、ベゼル20のハンドル下支持部25に挿通され、ドアパネル10の係止部13に連結されている。アウトサイドドアハンドル40とベゼル20の膨出部21とは、アウトサイドドアハンドル40を使用者が操作するときに手を挿入可能な空間を区画する。図1に示すように、アウトサイドドアハンドル40は、下連結部43が上連結部41の下へ配置された縦長の状態で、ドアパネル10に対して固定される。
【0027】
図2及び図3に示すように、ガスケット50は、ベゼル20の外縁部27よりも僅かに大きい略矩形縦長枠形状を有する。ガスケット50は、ベゼル20の外縁部27に装着された状態で、アウタパネル11の開口18とベゼル20との間をシールする。
【0028】
上記のようにドアパネル10に対して支持されたアウトサイドドアハンドル40を、使用者が車幅方向外側へ引くように操作(以下、ドア開け操作)すると、支軸24を中心にアウトサイドドアハンドル40が回転し、ベゼル20のハンドル下支持部25に覆われた下連結部43の下部が図2の状態から所定長まで露出する。閉止状態のドアパネル10をドア開け操作すると、下連結部43に連結された係止部13によってサイドパネル5とドアパネル10の係止状態が解除され、ドアパネル10が開放状態になる。なお、アウトサイドドアハンドル40は、上部が回転自在に支持される構成に限らず、下部が回転自在に支持される構成であってもよい。
【0029】
以上説明したように、本実施形態では、運転席3に着座した運転者は、一方の手を窓開口7から車外の下方に延ばし、その延ばした手の複数の指を凹部30に挿入して引き上げることにより、指の腹を上面部33に引っ掛けることができる。これにより、窓開口7から車外へ乗り出した上体を凹部30の上面部33に引っ掛けた手によって容易に且つ確実に支持することができ、かかる体勢を無理なく維持することができる。従って、車両1の後進時に後方を直接目視するために窓開口7から車外へ上体を乗り出してステアリング8を操作する際に、運転者は、一方の手で体勢を無理なく維持しながら他方の手でステアリング8を操作することができる。
【0030】
また、上記ベゼル20を備えたドアパネル10をキャブ2の高さの異なる車両間で共通化してもよい。この場合、これらの車両間では窓開口7から凹部30への距離が同じであるため、例えば標準的な成人男性の腕の長さに合わせて窓開口7から凹部30への距離を設定することによって、いずれの車両に対しても同様の使い易さとなる凹部30を提供することができる。なお、アウトサイドドアハンドル40は縦長であり、上下方向に広い範囲で操作することが可能であるため、アウトサイドドアハンドル40をドアパネル10の所定の箇所に配置することによって、これらの車両間で地上からのアウトサイドドアハンドル40の高さが異なる場合であってもアウトサイドドアハンドル40の操作性は確保される。
【0031】
また、凹部30は、アウトサイドドアハンドル40の上方に配置されているため、上方から手を挿入するときに、アウトサイドドアハンドル40などの構造物が邪魔になり難い。
【0032】
また、凹部30は、アウタパネル11よりも車幅方向外側へ突出しないため、運転者が上体を支持するために凹部30に対して体重をかけて使用することがない。このため、ドアパネル10に対してベゼル20を固定する構造が複雑化しない。
【0033】
また、運転者が上体を支持するために凹部30に対して体重をかけて使用することがないため、例えば体重をかけて上体を支持する構成のように、運転者がウインドウパネル6の上縁に脇を乗せてその脇を痛めてしまうことがない。
【0034】
また、凹部30は、ドアパネル10よりも車幅方向外側へ突出せず、また、庇部34によってその一部が覆われるため、車両1の意匠を大きく設計変更することなく設けることができる。
【0035】
また、凹部30の上面部33に引っ掛けた指の腹にリブ36が接触するため、凹部30から車幅方向外側へ抜ける方向への指の移動を抑えることができる。従って、窓開口7から上体を車外へ乗り出した運転者の車幅方向外側への重心の移動を容易に且つ確実に抑えることができ、一方の手で上体を支持して他方の手でステアリング8を操作するときに、より安定した体勢でステアリング8を操作することができる。
【0036】
また、リブ36の先端が湾曲形状であるため、指の腹に接触したときに指が痛くならない。これにより、運転者が凹部30の上面部33に手を引っ掛け、上体を支持した体勢を長く維持することができる。
【0037】
また、上面部33にリブ36を設けているため、凹部30の剛性が高くなる。
【0038】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施形態に係るベゼルを備えた車両の要部斜視図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】図2のIII-III方向視の断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1:車両
2:キャブ
3:運転席
7:窓開口
8:ステアリング
10:ドアパネル
11:アウタパネル
18:開口
20:ベゼル
30:凹部
33:上面部
36:リブ
40:アウトサイドドアハンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転席の側方の窓開口よりも下方に形成されたアウタパネルの開口に装着され、縦長のアウトサイドドアハンドルを露出させた状態で前記開口を覆うベゼルであって、
前記アウトサイドドアハンドルの上方に配置され、前記運転席に着座した運転者が前記窓開口から車外の下方へ延ばした手の複数の指の先を当該指の腹を上向きにした状態で挿入可能な横幅で車幅方向内側へ凹むとともに、前記挿入された指の腹が引っ掛かる上面部を有する凹部を備えた
ことを特徴とするベゼル。
【請求項2】
請求項1に記載のベゼルであって、
前記上面部に下方に突出するリブを有する
ことを特徴とするベゼル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−222836(P2010−222836A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71095(P2009−71095)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)