説明

ベタ基礎工法

【課題】 安定材付きベタ基礎工法を提供する。
【解決手段】 住宅基礎構築部分の施工前に所定幅の溝を計画し、この溝を対象に、振動及び転圧を同時に与えられる機械を走行させ、スウエーデン式サウンディング工法により基礎下端より2メートル以深に1キロニュートンの自沈層がないことを確かめ、その上部にベタ基礎を構築する工法である。この際、転圧と振動を与える工事の前に、基礎構築部分の数箇所に前記スウエーデン式サウンディング工法を行い、工事完了後に工事前と同じ場所でのスウエーデン式サウンディング工法の試験結果を照合して前記省令に合致していることを確かめたのち、前記安定地盤上面のベタ基礎となる部分に配筋しコンクリートを打設して地盤改良基礎部(安定材)11とベタ基礎10とを一体化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不同沈下を抑止する安定材付きベタ基礎工法に関する。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤では、粘性土の性質上、圧密、塑性変形によって不同沈下が生じると、建物の使用に支障を来すことになる。軟弱地盤の場合には不同沈下があり、基礎の剛性が小さいので地震発生時に割裂を生じ、建物に多大の被害を与える。多少の沈下が許容される場合の基礎工法としてベタ基礎、摩擦杭の打ち込み、またはその両者の併用等が行われている。例えば、住宅等を構築する場合に、基礎設置部分を掘削して地中梁を形成させたり(例えば特許文献1)、掘削部の地質サンプルを採取して地盤土砂の組成や含水量等を検査し、掘削した部分にセメントミルク、モルタル、ベントナイト、水ガラス、繊維、砂等の地盤改良材を添加し、機械により締固めたのち基盤設置用の溝を形成させてプレキャストコンクリート製の基礎構造物を設けたりすることが行われている。(例えば特許文献1、2)
【0003】
【特許文献1】特開平3−96520号公報(第2頁左欄第4〜20行、図6,7)
【特許文献2】特開平5−280036号公報(第3頁右欄12〜17、第4頁左欄第33〜35行、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の布基礎工法に代え住宅基礎設置部分を掘削して地中梁を形成させる場合には掘削排土量が多くなり、基礎そのものの剛性が小さいし、更に型枠施工や配筋等の作業工数も多い。また、締固めたのち基盤設置用の溝を形成させてプレキャストコンクリート製の基礎構造物を設け、或いは基礎構造物と摩擦杭を併用したベタ基礎工法は、コストが高く工期の短縮も望めない。
一般に、家屋等を建築する場合に、敷地領域面内に所定幅の溝掘削を計画し、その溝(幅は一定とする)を対象に、振動機及び土を締め固める機械を走行(手動でも可)させ、その溝の内部(下部)の土を地表より2メートル以上転圧締固めの効果を出す。指標としては建築基準法施行令第93条に基づき公布された、平成13年7月2日に告示第1113号(以下省令という)によって、地盤の許容応力度及び基礎杭の許容支持力を求めるためのスウェーデン式サウンディング工法による地盤調査を行ない、その結果に基づき地盤の許容応力度及び基礎杭の許容支持力を定める方法等が定められている。
【0005】
本発明者は、さきに特許第2797066号及び実用新案登録第3059058号において、基礎構築部分近くの地盤の強弱により幅及び深さを調整した安定材造成用の溝を掘削すると同時に、ソイルセメントと土とを混合した土質と置換し、土質置換部分をランマー等で転圧して土質強度をもたせた改良土質による安定材を造り、該安定材の上面にベタ基礎配筋を定着したのち、コンクリートを打設して安定材とべた基礎とを一体化した安定材付べた基礎工法について発明した。
本発明は、上記特許工法を基礎にし、かつ前記スウェーデン式サウンディング工法について鋭意研究の結果、土質強度を一層改善して基礎地盤の脆弱に基づく建築物の不同沈下を防止すべく創案したものであって、不同沈下のおそれが少なく、等沈下を前提とした低コストのベタ基礎工法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1は、住宅基礎構築部分の施工前に所定幅の溝を計画し、この溝を対象に、振動及び転圧を同時に与えられる機械を走行させ、建築基準法施行令第93条に基づき公布された平成13年7月2日に告示第1113号により規定された方法で地盤の許容応力度及び基礎部の許容支持力を確かめるために用いるスウエーデン式サウンディング工法により基礎下端より2メートル以深に1キロニュートンの自沈層がないことを確かめ、その上部にベタ基礎を構築する工法であって;この際、転圧と振動を与える工事の前に、基礎構築部分の数箇所に前記スウエーデン式サウンディング工法を行い、工事完了後に工事前と同じ場所でのスウエーデン式サウンディング工法の試験結果を照合して前記省令に合致していることを確かめたのち、前記安定地盤上面のベタ基礎となる部分に配筋しコンクリートを打設して安定地盤による地盤改良基礎部とベタ基礎とを一体化することを特徴とするベタ基礎工法である。
請求項2は、前記地盤改良基礎部の上部またはその近傍に布基礎を打設する請求項1に記載のベタ基礎工法である。
このように、土質強度をもたせた土質改良基礎部ないし地盤改良部(安定材)の上面にベタ基礎配筋を配置しコンクリートを打設して安定材とベタ基礎とを一体化するものであるから、住宅の基礎という限定された地盤の強化のためには新規で適切な工法である。
【0007】
通常、振動及び転圧を加える際に、ランマーを使用していたが、ランマーは埋め戻しのあとの転圧や、地表を均す程度にとどまり、所定の深さまでの地盤を締め固めるというものに使用されていない。
本発明は、前述のように、建築する敷地領域面内に所定幅の溝を計画し、住宅基礎構築部分の施工前に前記溝を対象に、振動機及び土を締め固める機械を走行させ、その溝の内部ないし下部の土を地表より2メートル以上転圧締固めの効果を出して建築基準法施行令第93条に基づき公布された平成13年7月2日に告示第1113号によって規定されたスウェーデン式サウンディング工法に沿って、地盤の許容応力度及び基礎部の許容支持力を求めるための地盤調査を行い、その結果に基づき地盤の許容応力度及び土質改良基礎部(すなわち安定材)の許容支持力を確かめたのち、土質改良基礎部の上部の溝の転圧によって凹没した部分に、現場土とセメント固化材とを混合した土質を充填し締固めることで、基礎下端より2メートル以深に1キロニュートンの自沈以下にならないよう強化した土質改良基礎部(安定材)を造る。さらに、安定材の上面にベタ基礎配筋を配置し、コンクリートを打設して地盤改良部(安定材)とベタ基礎とを一体化することを特徴とするベタ基礎工法である。
【0008】
さらに詳しく説明すると、住宅基礎構築部分の施工前に、振動機及び土を締め固める機械として、例えばスウェーデン式サウンディングマシンを用いて地盤の強度を確かめたのち、サウンディング試験によって凹んだ地盤に基礎構築部分の土とセメント固化材とを混合した土質を充填し、施工前と同じ場所でスウェーデン式サウンディング工法を行ってその効果を確認する。このように、前記土質部分を転圧により締固めて土質強度をもたせて土質を改良することにより、上記省令に基づく最低地耐力σc=3.0t/m(長期)を期待することができる地盤となり、その所定の溝の上部に住宅のベタ基礎を造成する。この際、振動、転圧により、地表より凹没した部分は最終的には現場の土とセメント固化材を混入して所定の地表面まで転圧等により転圧振動を与えて強度を付与する。振動、転圧を与えるには通常、一台の機械で行い、地盤により一台当たりの作業時間を調整し、近隣への防音対策等についても充分な措置を施しておく。
【発明の効果】
【0009】
上記のように、本発明によれば、住宅基礎構築部分の施工前に振動機及び土を締め固める機械、例えばスウェーデン式サウンディングマシンにより地盤の強度を試験したのち、予め地盤に所定の溝を計画し、その溝に振動と転圧の効果を具えた機械を作動させて、前記省令に規定された深さ2メートル以深に1キロニュートンの自沈以下にならないよう地盤を強化し、さらに振動転圧によって標準地盤より下がった部分に基礎構築部分の土とセメント固化材とを混合した土質を充填し、締固めて土質強度をもたせた安定材を造り、該安定材の上面にベタ基礎配筋を配置しコンクリートを打設して一体化したものであるから、安定地盤による地盤改良部(安定材)とベタ基礎とで囲まれた土は剛体となり、建物の不同沈下を防止できる。
なお、従来、住宅の地盤調査はスウェーデン式サウンディング試験という作業により確認するよう指導されているが、殆んど施工前のみの調査に留まり、施工後に確認しているものはなく、他の工法は時間、経費がかかる等の難点があったが、本発明は、基礎下端より2メートル以深までの効果を出すことを主体としており、低廉な経費で土質改良を確実に達成できる。また、現場作業時の資料も、イメージデータをスキャナーしてインターネット送信することにより、リアルタイムで建築主に提示することができ、現場に立会わなくても、工事の内容を確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、上述のように、建築する敷地領域面内に所定幅の溝を計画し、住宅基礎構築部分の施工前に前記溝を対象に、振動機及び土を締め固める機械を走行させ、基礎下端より2メートル以深に転圧締固めの効果を出して建築基準法施行令第93条に基づき公布された平成13年7月2日に告示第1113号によって規定された方法に沿って、地盤の許容応力度及び基礎部の許容支持力を求めるための地盤調査を行い、その結果に基づき地盤の許容応力度及び土質改良基礎部(すなわち安定材)の許容支持力を確かめたのち、土質改良基礎部の上部の溝の転圧によって凹没した部分に、現場土とセメント固化材とを混合した土質を充填し締固めることで、基礎下端より2メートル以深に1キロニュートンの自沈以下にならないよう強化した土質改良基礎部(安定材)を造る。
この際、転圧と振動を与える工事の前に、基礎構築部分の数箇所に前記スウエーデン式サウンディング工法を行い、工事完了後に工事前と同じ場所でのスウエーデン式サウンディング工法の試験結果を照合して前記省令に合致していることを確かめたのち、前記安定地盤上面のベタ基礎となる部分に配筋しコンクリートを打設して安定地盤による地盤改良基礎部とベタ基礎とを一体化する。土質改良基礎部ないし地盤改良部(安定材)とベタ基礎とで囲まれた土は剛体となり、建物の不同沈下を防止できる。
【0011】
次に図面に基づいて本発明を具体的に説明する。図1は本発明の1実施態様の断面図である。
図示のように、建築する敷地領域面内に所定幅の溝を計画し、住宅基礎構築部分の施工前に前記溝(幅50〜60cm)を対象に、振動機及び土を締め固める機械を走行させ、その溝の土を基礎下端2メートル以深に転圧締固めの効果を出して建築基準法施行令第93条に基づき公布された平成13年7月2日に告示第1113号によって規定された方法に沿って、地盤の許容応力度及び基礎部の許容支持力を求めるための地盤調査を行い、その結果に基づき地盤の許容応力度及び土質改良基礎部(すなわち安定材)11の許容支持力を確かめる。この際、転圧と振動を与える工事の前に、基礎構築部分の数箇所に前記スウエーデン式サウンディング工法を行い、工事完了後に工事前と同じ場所でのスウエーデン式サウンディング工法の試験結果を照合して前記省令に合致していることを確かめたのち、前記安定地盤上面のベタ基礎となる部分に配筋しコンクリートを打設して地盤改良基礎部とベタ基礎とを一体化する。
施工前のスウェーデン式サウンディングにより地盤の強度を確かめる際の振動転圧によって標準地盤より下がった凹没部分hは、現場土とセメント固化材とを混合した土質を充填し、ランマー等で転圧して土質強度をもたせた改良土質の安定材11としたのち、ベタ基礎10及び基礎立ち上がり12とを一体化することもできる。なお、地盤改良基礎部(安定材11)の上部またはその近傍に布基礎(図示省略)を打設してベタ基礎10及び基礎立ち上がり12とを一体化することもできる。
【0012】
図1に示すように、上屋からの荷重P、最終設置面(初期設置面の条件による土質改良の位置を決める)S、地盤改良ないし筋目改良部分の底面積Am、同深さH(調査により決定)、地盤改良部で囲まれた内側領域(A)、建屋全体の重量をWtonとすると、地盤改良部分の底面積のみの地反力、σcはW/σc(ton/m)となる。スウエーデン式サウンディング法の調査結果より想定地耐力以下になるように土質改良を行う(ベタ基礎部分は余力として存在する)。なお、図中、ベタ基礎配筋等の図示を省略してある。
【0013】
上述のように、施工前にスウェーデン式サウンディングにより地盤の強度を確かめたのち、予め地盤に溝(幅50〜60cm)を計画し、その溝に振動と転圧の効果を具えた機械を作動させて、前記省令に規定された基礎下端より2メートル以深に1キロニュートンの自沈以下にならないよう地盤を強化する。振動、転圧によって標準地盤より下がった凹没部分hに基礎構築部分の土とセメント固化材とを混合した土質を充填してGLの高さとし、該土質部分を締固めて土質強度をもたせた安定材を造り、該安定材の上面にベタ基礎配筋を配置しコンクリートを打設して一体化する。
【0014】
前述のように、土質改良部または筋目改良部分の底面積をAmとし、建屋全体の重量をWtonとすると、改良底面積のみの地反力σcは、σc=W/A(ton/m)であるから、スウェーデン式サウンディング試験の結果より、想定地耐力以下になるように土質改良を行うことで、ベタ基礎部分は余力として存在する。この土質改良部(安定材)11の上面にベタ基礎配筋を配筋し、ベタ基礎10を打設し、基礎立ち上がり部分12を造成したのち、通常のとおり上部構造を構築する。基礎立ち上がり部分12は、普通の型枠を建て込み、コンクリート打設後に型枠外しとしても良いが、基礎立ち上がり部分の外周部にコンクリートとの付着性をよくした仕上げ材(図示省略)をそのまま型枠として用い、内側に捨て型枠を建て込み基礎立ち上がり部造成用のコンクリートを打設することにより、コンクリート硬化後の型枠外し作業を省略するようにしてもよい。なお、図中、符号Pは上家からの荷重、Hは土質改良部の深さで地盤調査により決定する。
【0015】
表1は地盤改良前の、所定の測点位置におけるスウェーデン式サウンディング試験結果〔荷重W、半回転数Na、貫入深さD(m)、貫入量L(cm)及び貫入状況、推定柱状図、荷重Wsw/kN、貫入量1m当り半回転数Nsw、換算N値、換算qu(kN/m)〕を示す。表2は地盤改質後における試験結果であって、貫入深さ1m以上における地盤改質後の換算N値、換算quが大幅に改善されていることを示している。
【表1】

【表2】

【0016】
図1において上屋より伝わる荷重Pは、地中に作られた節目による地盤改良の先端に伝わって若干の沈下が生じる。その際、生じた土の移動は地盤改良の内側(A)に入って圧縮され、周囲が拘束されているので固い地盤となる。従って、建築後、半年から1年で改良地盤の先端の水平位置が設置面となる。すなわち、地盤を全体にわたって改良したものと同等の形態となるが、むしろ全体を同じ深さで改良した場合より、地盤のなじみがよくなって経済的にも優れた基礎構築工法となる。
【0017】
なお、安定材と現場打設杭(図示を省略)とを併用する場合には、軟弱地盤であるベタ基礎施工領域内に、所要数の現場打設杭を構築する。この場合も、現場打設杭で補強された土質周囲を囲んで連続する土質改良部造成用の溝を計画して前記と同様に土質強度をもたせた土質改良部(安定材)を造る。安定材の上面にベタ基礎配筋と定着したのち、安定材と現場打設杭頂部並びにベタ基礎部分にコンクリートを打設して一体化する。現場打設杭は、穿孔した杭孔に、ソイルセメントを掘削土に混合撹拌(例えば300kg/m)し、これに水を加えたスラリーを充填することで施工される。この現場打設杭は、支持杭ではなく安定材的な目的をもっているので、土質強度と靭性とをもたせた改良土質による安定材上面と現場打設杭の頂部とに配筋してベタ基礎コンクリートを打設することで基礎部の施工を完了する。
【0018】
上述のように、本発明によれば、建築物の基礎部に土質改良して造成した安定材上部に配筋してベタ基礎部分と一体化したため、安定材とベタ基礎部分とで囲まれた土は剛体となる。また、安定材と現場打設杭とを併用する場合には、周囲の土質より著しく強固なものとなり、建造物の不同沈下を確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明工法によるべた基礎の断面図である。
【符号の説明】
【0020】
10 ベタ基礎 11 地盤改良部(安定材)
12 基礎立ち上がり部 S 最終接地面
H 強化地盤の深さ h 凹没部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
住宅基礎構築部分の施工前に所定幅の溝を計画し、この溝を対象に、振動及び転圧を同時に与えられる機械を走行させ、建築基準法施行令第93条に基づき公布された平成13年7月2日に告示第1113号により規定された方法で地盤の許容応力度及び基礎部の許容支持力を確かめるために用いるスウエーデン式サウンディング工法により基礎下端より2メートル以深に1キロニュートンの自沈層がないことを確かめ、その上部にベタ基礎を構築する工法であって、
この際、転圧と振動を与える工事の前に、基礎構築部分の数箇所に前記スウエーデン式サウンディング工法を行い、工事完了後に工事前と同じ場所でのスウエーデン式サウンディング工法の試験結果を照合して前記省令に合致していることを確かめたのち、前記安定地盤上面のベタ基礎となる部分に配筋しコンクリートを打設して安定地盤による地盤改良基礎部とベタ基礎とを一体化することを特徴とするベタ基礎工法。
【請求項2】
前記地盤改良基礎部の上部またはその近傍に布基礎を打設する請求項1に記載のベタ基礎工法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−75374(P2008−75374A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257254(P2006−257254)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(591042263)
【Fターム(参考)】