説明

ベルトサンダー機における舵取ローラの揺動角度範囲調整装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、無端サンディングベルトを幅方向の一定の軌道範囲内で走行させるために設けられる舵取ローラを備えたベルトサンダー機に関する。
【0002】
【従来の技術】無端サンディングベルトは、その製造時のばらつきや、後発的理由により、周長を幅方向において均一にすることが困難であり、その周長の偏差により、その走行にともない案内ローラの軸方向に沿って移動して、ついには脱離を生じてしまうことがある。そこで、走行案内ローラとして舵取ローラを適用し、該舵取ローラを左右方向へ揺動するようにして、該サンディングベルトを一定の軌道範囲内で走行させて、その離脱を防止するようにしている。この揺動制御は、常に往復揺動させる方法と、ベルトの側端位置を検知して、偏りを生じた場合にのみ揺動させて調整する方法がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、舵取ローラの毎回の揺動角度は一定であるため、該舵取ローラの揺動角度範囲が固定されていると、前記無端サンディングベルトの周長の偏差による移動を良好に補正できない。そこで前記舵取ローラの揺動角度範囲を調整するために、実開昭49−119885号に開示された構成が提案された。この構成は、前記舵取ローラを揺動させるための駆動源となるエアーシリンダのシリンダロッドと、舵取ローラを枢支する揺動フレームとの連係位置を、該ロッドに設けた螺子に直接螺合したハンドルを回転操作することにより、送材方向に沿って調整し、これによって舵取ローラの揺動角度範囲を調整しようとするものである。
【0004】ところが、この手段にあって、この調整は、シリンダロッドに対してハンドルを回転操作するものであり、無端サンディングベルトの近傍で行なわなければならず、しかも無端サンディングベルトの走行状態を確認しながら行なう必要がああり、その走行速度は20m/sの高速であるため、安全に留意する必要から調整作業に慎重を要し、作業能率が悪かった。本発明は、かかる調整作業の能率化を図り得る舵取ローラの揺動角度範囲調整装置を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、無端サンディングベルトが掛渡され、上下方向の支軸線を中心として所定角度往復揺動する舵取ローラを備えたベルトサンダーにおいて、固定面に対して送材方向に沿って移動可能に装架板を装着し、該装架板に舵取ローラ支軸線を中心に往復揺動する往復駆動機構を装架すると共に、前記固定面に、外端部に回転ハンドルが付装された操作軸を、送材方向と直交する方向に沿って、回転可能に支持し、同じく固定面に、前記装架板に固着した螺着片に螺合する連係軸を送材方向に沿って支持し、前記操作軸に固着した操作歯車を、連係軸に固着した被動歯車と連係して、回転ハンドルの回動調整により連係軸を回動し、装架板を送材方向へ移動するようにしたことを特徴とするベルトサンダー機における舵取ローラの揺動角度範囲調整装置である。
【0006】この構成にあって、サンディングヘッドを内蔵する装置筐体の、その装架空隙を遮蔽する保守扉に、外端に回転ハンドルを備えたハンドル軸を、回動可能に挿通し、該保守扉を閉じた状態でハンドル軸の内端を、前記操作軸に連係するようにして、回転ハンドルを操作軸に脱着可能に付装するようにしても良い。
【0007】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施例を、添付図面について説明する。図1はベルトサンダー機の一例を示したものであって、下部フレーム1の上方にはハンドル2によって昇降操作される昇降フレーム3が配設され、該昇降フレーム3の前後位置に駆動ローラ4と従動ローラ5が軸支されるとともに、両ローラ4,5には送材ベルト6が掛け渡される。
【0008】また、前記下部フレーム1の後部から立上がる装置筐体7の装架空隙にはヘッドフレーム8が取付けられる。該フレーム8の上部には、支軸14により軸支され、公知装置により上下動を自在にした軸支枠9が回動可能に設けられ、これに案内ローラ及びテンションローラを兼ねる舵取ローラ10が軸支される。ヘッドフレーム8の下部の前後には駆動案内ローラ11と従動案内ローラ12とが軸支され、両ローラ11,12と前記舵取ローラ10とを案内ローラ群として無端サンディングベルト13が掛け渡される。
【0009】前記舵取ローラ10の舵取操作は、軸支枠9の側面から垂下した腕杆14を往復駆動機構を構成するエアー又は油圧シリンダ23により往復移動させ、これにより、該軸支枠9を支軸17を中心に左右方向へ揺動して行なわれる。
【0010】かかる舵取ローラ10を支軸17(支軸線)を中心として往復揺動させるための往復駆動機構の構成を図2〜5に従って、さらに詳細に説明する。
【0011】前記ヘッドフレーム8の側面には装着板20が固着される、この装着板20の上部には、左右方向のガイド21に嵌着してその案内作用により左右に移動可能とした装架板22が嵌着されている。この装架板22には、シリンダ23が左右方向に固着され、図3に示すように、ピストン24の図中右方から突出するシリンダロッド25aの端部に、円環状溝が形成された連結輪27をボルト26により固着し、前記腕杆14を円環状溝に嵌装している。そして、前記シリンダ23内へのエアーまたは油圧供給制御によりピストン24を該シリンダ23内で往復移動させ、これにより、シリンダロッド25aの左右方向の進退により、腕杆14を往復移動して、上述したように舵取ローラ10を往復揺動させている。
【0012】かかる構成にあって、前記腕杆14の左右移動ストロークは、ピストン24の図中左方から突出するシリンダロッド25bの端部に形成した雄螺子30に螺合する規制片31の位置をその螺進位置の調整により決定することにより、定められる。この規制片31はロックナット33により位置保持される。すなわち、図3で示すように、前記シリンダロッド25a,25bは、そのピストン24がシリンダ23内の左内壁に当接した位置で、最大左位置が定まり、前記規制片31がシリンダ23の左外壁に当接した位置で、最大右位置が定まる。このため間隔sが腕杆14の左右移動幅となり、かかる間隔sにより舵取ローラ10の揺動角度が決定されることとなる。この構成にあって、揺動角度範囲はシリンダ23(装架板22)の位置と、その揺動角度により決定されることとなる。
【0013】ところで、該舵取ローラの揺動角度範囲が固定されていると、前記無端サンディングベルトの周長の偏差による移動を良好に補正できない。この場合に、前記規制片31の位置調整は、間隔sの調整による揺動角度を目的としたものであり、その揺動角度範囲を調整することはできない。
【0014】そこで、本第1実施例では本発明の要部に係る次の構成を備える。前記装着板20には、ギヤーボックス34が設けられ、該ギヤーボックス34から側方に、回転ハンドル40aが付装された操作軸37aが突出している。すなわち、このギヤーボックス34は、軸支板35,36を備えてなり、側方の軸支板35に形成された側方へ突出する軸受部38に操作軸37aを幅方向に挿通して、その内端部に固着した操作傘歯車(操作歯車)39をギヤーボックス34内に配置させている。また該軸受部38の外端に、前記操作軸37aに固着させた前記回転ハンドル40aを外接している。また図中左側の軸支板36には連係軸42が回転可能に左右方向へ挿通されており、ギヤーボックス34内において、その内端に固着した被動傘歯車(被動歯車)43を操作傘歯車39に噛み合わせている。またこの連係軸42の外端には雄螺子44が形成されている。
【0015】一方、前記装架板22には、その垂下端に雌螺子48が形成された螺着片47が固着されており、前記雌螺子48に連係軸42の雄螺子44を螺合している。
【0016】而して、前記回転ハンドル40aを回転すると、操作傘歯車39と、被動傘歯車43の噛み合いにより連係軸42が回転し、雄螺子44の送り作用により、該連係軸42に沿って螺着片47が左右方向へ移動し、これにより、螺着片47が固着された装架板22が左右に追動する。そして、装架板22には、シリンダ23が装架されているから、前記舵取ローラ10の揺動角度範囲そのものが移動することとなる。このため、無端サンディングベルト13の周長の幅方向偏位に対して、舵取ローラ10を最適に揺動できることとなる。この回転ハンドル40aは、軸受部38に螺装した螺子49により回転不能に保持される。
【0017】かかる構成にあって、回転ハンドル40aは、軸支板35の操作傘歯車39を介して側方へ突出している。このため、作業者は、無端サンディングベルト13の走行状態をみながら、ヘッドフレーム8の側方で回転操作することができ、その調整作業が簡易となる。
【0018】図6は、第2の実施例を示すものであり、前記軸支板35に挿通する操作軸37bの外端に断面四角形の連係端50を形成する。そして、一方、装置筐体7の装架空隙を遮蔽する保守扉55に設けた軸受56に、ハンドル軸51を挿通する。このハンドル軸51は内端に前記連係端50に嵌合する連係子52が形成され、外端に回転ハンドル40bが固着される。そして、保守扉55を閉じると(矢線参照)、連係端50と連係子52との嵌着によりハンドル軸51が操作軸37bに連結される。これにより、保守扉55の外側からの回転ハンドル40bの操作により、螺着片47を左右方向へ移動調整することができ、舵取ローラ10の揺動角度範囲の調整を容易に行ない得ることができる。尚、舵取ローラ10に掛渡された無端サンディングベルト13の走行状態を確認するためには、保守扉55に開口部を形成する等種々の確認手段が適用され得る。
【0019】図7は、第3実施例を示し、図5で示した第1実施例において、操作歯車として操作軸37aの内端にウオーム60を固着し、被動歯車として連係軸42の内端にウオーム歯車61を固着したことを特徴とするものである。この構成にあっては、歯車比が大きく、微妙な調整が可能となる利点がある。勿論、前記操作軸37aの内端にウオーム歯車を、前記連係軸42の内端にウオームを夫々固着しても良い。その他の構成は、上述と同様であり、同一符号を付して説明を省略する。
【0020】図8も、同様に図6で示した第2実施例において、前記操作軸37aの内端にウオーム60を固着し、前記連係軸42の内端にウオーム歯車61を固着してなる第4実施例を示すものである。その他の構成は、上述と同様であり、同一符号を付して説明を省略する。
【0021】
【発明の効果】本発明は、上述のように、送材方向に沿って移動可能に装着した装架板に、舵取ローラを往復揺動する往復駆動機構を装架すると共に、固定面に側方へ突出する外端部に回転ハンドルが付装された操作軸を回転可能に支持し、同じく固定面に、前記装架板に固着した螺着片に螺合する送材方向の連係軸を支持し、前記操作軸に固着した操作歯車を、連係軸に固着した被動歯車と連係して、回転ハンドルの回動調整により連係軸を回動して、装架板を送材方向に沿って移動するようにしたから、前記回転ハンドルを無端サンディングベルトの走行方向に対して外側方へ突出することができ、無端サンディングベルトから離間した位置で、舵取ローラの揺動角度範囲の調整が可能となり、保守効率が向上する。
【0022】また、サンディングヘッドを内蔵する装置筐体の、その装架空隙を遮蔽する保守扉に、外端に回転ハンドルを備えたハンドル軸を、回動可能に挿通し、該保守扉を閉じた状態でハンドル軸の内端を、前記操作軸に連係するようにした構成にあっては、回転ハンドルが装置筐体の外側に位置するから、さらに保守が容易となる等の優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】サンディングベルト片寄り検出装置を備えたベルトサンダー機の概要正面図である。
【図2】第1実施例を示す要部の拡大正面図である。
【図3】シリンダ23のみを横断して示す第1実施例の要部の平面図である。
【図4】第1実施例の左側面図である。
【図5】図2のA−A断面図である。
【図6】第2実施例の横断面図である。
【図7】第3実施例の横断面図である。
【図8】第4実施例の横断面図である。
【符号の説明】
7 装置筐体
8 ヘッドフレーム
9 軸支枠
10 舵取ローラ
13 無端サンディングベルト
14 腕杆
23 シリンダ
22 装架板
24 ピストン
31 規制片
37a,37b 操作軸
39 操作傘歯車(操作歯車)
40a,40b 回転ハンドル
42 連係軸
43 被動傘歯車(被動歯車)
42 連係軸
44 雄螺子
47 螺着片
48 雌螺子
50 連係端
51 ハンドル軸
55 保守扉
60 ウオーム
61 ウオーム歯車

【特許請求の範囲】
【請求項1】無端サンディングベルトが掛渡され、上下方向の支軸線を中心として所定角度往復揺動する舵取ローラを備えたベルトサンダーにおいて、固定面に対して送材方向に沿って移動可能に装架板を装着し、該装架板に舵取ローラ支軸線を中心に往復揺動する往復駆動機構を装架すると共に、前記固定面に、外端部に回転ハンドルが付装された操作軸を、送材方向と直交する方向に沿って、回転可能に支持し、同じく固定面に、前記装架板に固着した螺着片に螺合する連係軸を送材方向に沿って支持し、前記操作軸に固着した操作歯車を、連係軸に固着した被動歯車と連係して、回転ハンドルの回動調整により連係軸を回動し、装架板を送材方向へ移動するようにしたことを特徴とするベルトサンダー機における舵取ローラの揺動角度範囲調整装置。
【請求項2】サンディングヘッドを内蔵する装置筐体の、その装架空隙を遮蔽する保守扉に、外端に回転ハンドルを備えたハンドル軸を、回動可能に挿通し、該保守扉を閉じた状態でハンドル軸の内端を、前記操作軸に連係するようにして、回転ハンドルを操作軸に脱着可能に付装したことを特徴とする請求項1記載のベルトサンダー機における舵取ローラの揺動角度範囲調整装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【図8】
image rotate


【特許番号】特許第3018224号(P3018224)
【登録日】平成12年1月7日(2000.1.7)
【発行日】平成12年3月13日(2000.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−276682
【出願日】平成7年9月29日(1995.9.29)
【公開番号】特開平9−94751
【公開日】平成9年4月8日(1997.4.8)
【審査請求日】平成9年10月24日(1997.10.24)
【出願人】(000210377)アミテック株式会社 (7)
【参考文献】
【文献】特開 平2−116464(JP,A)
【文献】特開 昭50−100772(JP,A)
【文献】特開 平6−190710(JP,A)
【文献】実開 昭61−54453(JP,U)
【文献】実開 平1−66956(JP,U)