説明

ベルト斜行補正制御方法、ベルト搬送装置、記録装置

【課題】 無端ベルトの斜行速度を低減、安定させることができるベルト斜行補正制御方法を提供すること。
【解決手段】 ベルト斜行補正制御方法は、巻回された無端ベルトの斜行速度を検出する斜行速度検出工程(S2)と、該斜行速度検出工程(S2)において得た斜行速度と、初期目標値との差を算出する偏差算出工程(S3)と、該偏差算出工程(S3)において得た値が所定範囲内であるか否かを判定する所定範囲内判定工程(S4)と、該所定範囲内判定工程(S4)において範囲内と判定した場合、前記無端ベルトに巻回され傾動可能な斜行補正ローラの角度を保持するローラ角度保持工程と、前記所定範囲内判定工程において範囲内でないと判定した場合、前記偏差算出工程において得た値が前記初期目標値に近づく側へ、前記斜行補正ローラの角度を変位させるローラ角度変位工程(S7、S11)と、を具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、斜行補正ローラの角度を変位させるローラ角度変位工程を具備するベルト斜行補正制御方法、前記斜行補正ローラを備えたベルト搬送装置および記録装置に関する。
【0002】
本願において、記録装置には、インクジェットプリンタ、ワイヤドットプリンタ、レーザープリンタ、ラインプリンタ、複写機、ファクシミリ、印刷機等の種類が含まれるものとする。
【背景技術】
【0003】
従来では、特許文献1および2に示す如く、ベルト搬送装置は、駆動ローラと、従動ローラと、無端ベルトと、傾動ローラとを有していた。このうち、無端ベルトは、前記駆動ローラ、前記従動ローラおよび前記傾動ローラに巻回されていた。そして、センサが、前記無端ベルトのエッジの全周面にわたって該無端ベルトの幅方向における位置を検出するように構成されていた。さらに、検出した位置に基づいて、前記傾動ローラの向きを変位させ、前記無端ベルトの斜行を制御するように構成されていた。従って、幅方向における前記無端ベルトの位置をある程度の範囲内に納めることができた。
【特許文献1】特許第3082452号公報
【特許文献2】特開2002−287527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のベルト搬送装置は、常に傾動ローラの傾動手段を駆動させる構成であった。従って、前記無端ベルトの斜行速度が変動し、幅方向における振動が発生していた。例えば、記録装置においては、記録精度が低下する虞がある。
また、特許文献2に記載のベルト搬送装置は、無端ベルトの位置のみを補正するために前記傾動ローラの傾動手段を駆動させる構成であった。そして、幅方向中央の基準位置に対して前記無端ベルトの位置が大きくずれたとき、前記傾動手段によって前記傾動ローラを大きく傾動させていた。従って、前記無端ベルトの位置を前記基準位置に近づけることができるが、斜行速度が非常に大きくなる虞がある。係る場合、記録装置においては、記録精度が低下する虞がある。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、無端ベルトの斜行速度を低減、安定させることができるベルト斜行補正制御方法、ベルト搬送装置および記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様のベルト斜行補正制御方法は、巻回された無端ベルトの斜行速度を検出する斜行速度検出工程と、該斜行速度検出工程において得た斜行速度と、初期目標値との差を算出する偏差算出工程と、該偏差算出工程において得た値が所定範囲内であるか否かを判定する所定範囲内判定工程と、該所定範囲内判定工程において範囲内と判定した場合、前記無端ベルトに巻回され傾動可能な斜行補正ローラの角度を保持するローラ角度保持工程と、前記所定範囲内判定工程において範囲内でないと判定した場合、前記偏差算出工程において得た値が前記初期目標値に近づく側へ、前記斜行補正ローラの角度を変位させるローラ角度変位工程と、を具備していることを特徴とする。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、前記ベルト斜行補正制御方法は、前記斜行速度検出工程と、前記偏差算出工程と、前記所定範囲内判定工程と、前記ローラ角度保持工程と、前記ローラ角度変位工程と、を具備している。従って、前記ローラ角度保持工程において、前記斜行補正ローラの角度を保持する所謂、不感帯を設けることができる。
ここで、「不感帯」とは、検出器等による検出動作に基づく斜行補正ローラの角度変更を実行しない時間、領域をいう。
その結果、例えば、前記無端ベルトが記録装置において記録中の被記録媒体を搬送する場合、不感帯によって搬送方向に対する被記録媒体の幅方向における記録精度を向上させることができる。即ち、常に斜行補正ローラの角度を変位させて斜行速度を制御している場合と比較して、振動や速度変動の発生が抑制され幅方向における記録精度を向上させることができる。
【0008】
また、前記所定範囲内判定工程において、前記斜行速度検出工程で得た斜行速度と初期目標値との差の値が所定範囲内であるか否かを判定する。即ち、斜行速度に基づいて判定する。従って、斜行速度が比較的速い場合は、前記ローラ角度変位工程を実行し、斜行速度を遅くすることができる。一方、斜行速度が比較的遅い場合は、不感帯とすることができる。
【0009】
例えば、無端ベルトの位置のみに基づいて判定した場合、無端ベルトの位置が許容範囲内であっても斜行速度が速い場合が起こり得る。係る場合、幅方向の記録精度が低下する虞がある。
即ち、本態様は、斜行速度に基づいて判定するので、無端ベルトの位置のみに基づいて判定した場合と比較して、確実に幅方向の記録精度を向上させることができる。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記所定範囲内判定工程において範囲内でないと判定した場合、前記偏差算出工程において得た値が正か負かを判定する正負判定工程と、該正負判定工程において、前記値が正と判定した場合、目標値を前記所定範囲の正側の値に設定し、前記値が負と判定した場合、目標値を前記所定範囲の負側の値に設定する目標値設定工程と、を具備し、前記ローラ角度変位工程は、前記偏差算出工程において得た値を、前記目標値設定工程において設定された設定目標値に近づけるように、前記斜行補正ローラの角度を変位させることを特徴とする。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様と同様の作用効果に加え、前記正負判定工程と、前記目標値設定工程と、を具備し、前記ローラ角度変位工程は、前記偏差算出工程において得た値を、前記目標値設定工程において設定された設定目標値に近づけるように、前記斜行補正ローラの角度を変位させる。
ここで、前記偏差算出工程において得た値を前記設定目標値に近づけた後、前記偏差算出工程において得た値が前記設定目標値を通り過ぎる所謂、オーバーシュートする場合がある。
【0012】
係る場合、前記偏差算出工程において得た値を前記所定範囲内の前記初期目標値近傍に留めることができる。即ち、前記偏差算出工程において得た値を、最も理想な前記初期目標値にゆっくりと近づけて安定させることができる。
このとき、前記偏差算出工程において得た値が前記所定範囲をオーバーシュートする虞を、前記目標値設定工程を具備していない場合と比較して、低減することができる。
【0013】
その結果、前記偏差算出工程において得た値が前記所定範囲内に留まる時間を長くすることができる。即ち、斜行速度を低減・安定させることができる。
例えば、比例・積分・微分を組み合わせた公知技術である所謂、PID制御によって前記偏差算出工程において得た値を、前記目標値設定工程において設定された設定目標値に近づけるように制御する場合に有効である。
【0014】
本発明の第3の態様は、第2の態様において、前記目標値設定工程における前記正側の値は、前記所定範囲内における最大値であり、前記負側の値は、前記所定範囲内における最小値であることを特徴とする。
本発明の第3の態様によれば、第2の態様と同様の作用効果に加え、前記目標値設定工程における前記正側の値は、前記所定範囲内における最大値であり、前記負側の値は、前記所定範囲内における最小値である。従って、前記偏差算出工程において得た値が前記所定範囲をオーバーシュートする虞を、前記目標値設定工程を具備していない場合と比較して、より一層低減することができる。
【0015】
本発明の第4の態様は、第1から第3のいずれか一の態様において、前記所定範囲内判定工程において範囲内と判定した場合、前記無端ベルトの幅方向位置検出センサによって前記無端ベルトの位置が許容範囲内か否かを判定する幅方向ベルト位置判定工程を具備し、該幅方向ベルト位置判定工程において前記無端ベルトの位置が許容範囲内であると判定した場合、前記ローラ角度保持工程を実行し、前記無端ベルトの位置が許容範囲内でないと判定した場合、前記無端ベルトの位置が許容範囲内になる側へ、前記斜行補正ローラの角度を変位させる前記ローラ角度変位工程を実行することを特徴とする。
【0016】
本発明の第4の態様によれば、第1から第3のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、前記幅方向ベルト位置判定工程を具備している。従って、前記無端ベルトの位置が許容範囲内でないと判定した場合、前記無端ベルトの位置が許容範囲内になる側へ、前記斜行補正ローラの角度を変位させる前記ローラ角度変位工程を実行することができる。その結果、前記無端ベルトの位置を精度良く前記許容範囲内に安定させることができる。
例えば、ゆっくりとした斜行速度で前記無端ベルトが斜行する場合に有効である。そして、前記無端ベルトが記録装置において記録中の被記録媒体を搬送する場合、搬送方向に対する被記録媒体の幅方向における記録精度を向上させることができる。
【0017】
本発明の第5の態様のベルト搬送装置は、動力源によって駆動する駆動ローラと、回動自在に保持された従動ローラと、前記駆動ローラおよび前記従動ローラに巻回された無端ベルトと、該無端ベルトの面と当接することによって前記無端ベルトの斜行を補正する斜行補正ローラと、前記無端ベルトの幅方向における該無端ベルトの斜行速度を検出する斜行速度検出器と、該斜行速度検出器によって得た斜行速度と、初期目標値との差を算出し、該算出した値が所定範囲内であるか否かを判定し、範囲内と判定した場合、前記斜行補正ローラの角度を保持し、範囲内でないと判定した場合、前記算出した値が前記初期目標値に近づく側へ、前記斜行補正ローラの角度を変位させる制御部と、を備えていることを特徴とする。
本発明の第5の態様によれば、前記ベルト搬送装置において、前記第1の態様と同様の作用効果を得ることができる。
【0018】
本発明の第6の態様の記録装置は、被記録媒体を保持、搬送する搬送部と、搬送された被記録媒体に対して記録を実行する記録実行部と、を備え、前記搬送部は、第5の態様のベルト搬送装置であることを特徴とする。
本発明の第6の態様によれば、前記搬送部は、第5の態様のベルト搬送装置である。従って、前記記録装置において、第5の態様と同様の作用効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本願発明に係るベルト斜行補正装置、該ベルト斜行補正装置を備えたベルト搬送装置及び該ベルト搬送装置を備えた記録装置について説明する。最初に本願発明の記録装置を実施するための最良の形態として被記録材(以下、用紙ともいう)Pの搬送手段としてベルト搬送装置を搭載したインクジェットプリンタ100を採り上げて、その全体構成の概略を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は本発明のベルト斜行補正装置を適用したベルト搬送装置を備えたインクジェットプリンタの内部構造の概略を模式的に示す側断面図、図2は本発明のベルト斜行補正装置を適用したベルト搬送装置の概略を示す平面図である。また、図3は無端ベルトの通常時(a)と、左側斜行時(b)と、右側斜行時(c)の各状態をそれぞれ模式的に示す平面図である。
【0021】
インクジェットプリンタ100は、記録装置本体の一例である図示しないプリンタ本体を備えており、該プリンタ本体の内部に用紙Pを保持、搬送する搬送手段2と、該搬送手段2によって保持、搬送された用紙Pに記録を実行する記録実行部3とが設けられている。前記搬送手段2は、図示のインクジェットプリンタ100ではベルト搬送装置20が適用されており、図示しない給送手段によって給送された用紙Pは、一対のニップローラによって構成されているゲートローラ4を経て前記ベルト搬送装置20上に供給されるようになっている。
【0022】
ベルト搬送装置20は、搬送方向Aの上流側に従動ローラ5、搬送方向Aの下流側に駆動ローラ6、従動ローラ5と駆動ローラ6の間の位置の下方に後述する本発明に係るベルト斜行補正装置1の構成部材であるベルト斜行補正ローラ7を配置し、これら3つのローラ5、6、7間に無端ベルト8をループ状に巻回することによって基本的に構成されている。
【0023】
従動ローラ5と駆動ローラ6は、直管状又は丸棒状の部材で、軸方向Bに一様な同径ローラである。このうち駆動ローラ6は、無端ベルト8に搬送方向Aへの搬送力を付与するローラであり、軸方向Bの一端には該駆動ローラ6に動力を伝える搬送駆動モータ9が一例としてダイレクトに接続されている。一方、従動ローラ5は、前記駆動ローラ6と同一の高さで、一定の距離を隔てて平行に対向配置されているローラである。そして、駆動ローラ6と従動ローラ5の間には無端ベルト8を緊張状態で水平に張って成る、用紙Pの搬送面10が形成されている。
【0024】
無端ベルト8は、合成ゴムや樹脂フィルム等の弾性を有する材料によって形成されている無端帯状の部材である。無端ベルト8には、図示のように多数の通気孔11、11、・・・が形成されており、当該通気孔11を通じて図示しない吸着装置による用紙Pの吸着、保持作用が実行されて無端ベルト8の搬送面10上に用紙Pが吸着、保持されるようになっている。
尚、前記吸着装置の吸着方式としては、負圧による吸引や静電吸着が一例として採用可能である。また、記録実行部3は、用紙Pの上面に各色のインクを吐出して記録を実行する記録ヘッド13を主要な構成部材として備えている。
【0025】
[実施例]
次に、このようにして構成されているインクジェットプリンタ100に搭載されているベルト搬送装置20に対して適用される本発明のベルト斜行補正装置1について図面に基づいて具体的に説明する。
【0026】
図4は本発明のベルト斜行補正装置における傾動機構を示す側断面図、図5は本発明のベルト斜行補正装置におけるベルト斜行補正ローラの種々の形状(a)〜(d)を示す正面図である。
また、図6に示すのは、無端ベルトの斜行補正制御の一例を示すフローチャートである。またさらに、図7に示すのは、本発明に係る斜行補正制御の効果を示す図である。また、図8に示すのは、本発明に係る斜行速度センサの原理を示す概略図である。
【0027】
本実施例のベルト斜行補正装置1は、前記駆動ローラ6と従動ローラ5との間に巻回されている無端ベルト8の裏面に当接することによって無端ベルト8の斜行を補正するベルト斜行補正ローラ7を備えている。ベルト斜行補正ローラ7は、図5(a)〜図5(d)に示すように、ローラ径が両端部よりも中央部が大きくなる異径ローラになっている。因みに本実施例では、中央部のローラ径をD、両端部のローラ径をdとした場合にD−d=0.3mm程度、中央部のローラ径Dの方が両端部のローラ径dよりも大きくなるように設定されている。
【0028】
図5(a)及び(b)には、ローラ径が全長に亘って連続的に変化するように形成されているベルト斜行補正ローラ7A、7Bが記載されている。図5(a)に示したベルト斜行補正ローラ7Aは、両端に小径部21、21、中央部に大径部22を有し、左右の小径部21、21から中央部の大径部22にかけて外表面が凸曲面となる異径ローラとして形成されている。すなわち、ベルト斜行補正ローラ7Aは、いわゆるクラウン形状に形成されている。一方、図5(b)に示したベルト斜行補正ローラ7Bは、同じく両端に小径部21、21、中央部に大径部22を有し、左右の小径部21、21から中央の大径部22にかけてローラ径が直線的に大きくなるように形成されている。
【0029】
また、図5(c)及び(d)には、ローラ径が軸方向の一部の範囲に亘って変化するように形成されているベルト斜行補正ローラ7C、7Dが記載されている。このうち図5(c)に示したベルト斜行補正ローラ7Cは、両端のコーナー部に面取りを施した大径部22の範囲の広い異径ローラであり、一方、図5(d)に示したベルト斜行補正ローラ7Dは、中央部のみを盛り上げた小径部21、21の範囲が広い異径ローラである。
【0030】
そして、このような形状のベルト斜行補正ローラ7を使用することによって、ベルト斜行補正ローラ7に対する無端ベルト8の滑りが抑えられ、ベルト斜行補正ローラ7が無端ベルト8の斜行を補正しようとする力が高効率で無端ベルト8に伝達されるようになる。また、前記形状のベルト斜行補正ローラ7を使用することによって、無端ベルト8自体に中央に寄ろうとする力が発生し、無端ベルト8の斜行の発生自体を抑え、無端ベルト8の皺の発生も防止される。
【0031】
また、図2に示したように、ベルト斜行補正装置1には、前記ベルト斜行補正ローラ7に加えて、無端ベルト8のベルト幅方向(軸方向Bと一致する)の左右のエッジ23、24の一方のエッジ23のみのエッジ位置を検出するON、OFFスイッチ式の第1エッジセンサ25と、第2エッジセンサ26との2基のエッジセンサが設けられている。図3(a)に示す通常時には、第1エッジセンサ25はOFF状態であり、一方の第2エッジセンサ26はON状態である。
【0032】
そして、図3(b)に示す左側斜行時に第1エッジセンサ25および第2エッジセンサ26がON状態、図3(c)に示す右側斜行時に第1エッジセンサ25および第2エッジセンサ26がOFF状態になるように設定されている。また、第1エッジセンサ25および第2エッジセンサ26としては、発光部27と受光部28とを備える光センサ等の非接触式センサが一例として採用されている。
【0033】
ここで、両側のエッジ23、24にエッジセンサをそれぞれ設けた場合、両側のエッジ23、24の形状によるバラツキである公差を考慮する必要がある。
そこで、一方のエッジ側のみに第1エッジセンサ25および第2エッジセンサ26を設けることによって、考慮する公差を半減させることができる。即ち、幅方向における無端ベルト8の位置の検出精度を向上させることができる。
【0034】
また、図2に示したように、ベルト斜行補正装置1には、第1エッジセンサ25および第2エッジセンサ26に加えて、無端ベルト8のベルト幅方向(軸方向Bと一致する)の左右のエッジ23、24におけるそれぞれのエッジ位置を検出するON、OFFスイッチ式の左側のリミットセンサ51と、右側のリミットセンサ52との2基のリミットセンサが設けられている。
【0035】
左側のリミットセンサ51および右側のリミットセンサ52は、無端ベルト8の位置が許容範囲内のとき、OFF状態となり、無端ベルト8の位置が許容範囲外となったとき、ON状態となるように設けられている。そして、ベルト斜行補正装置1は、左側のリミットセンサ51および右側のリミットセンサ52の少なくとも一方がON状態となると駆動ローラ6の駆動を停止するように構成されている。
【0036】
即ち、左側のリミットセンサ51および右側のリミットセンサ52は、何らかの原因によって無端ベルト8の傾きおよび位置が許容範囲外となったとき、駆動ローラ6の駆動を停止する所謂、安全装置の役割を果たすことができる。その結果、無端ベルト8の脱落を防止することができる。
尚、左側のリミットセンサ51および右側のリミットセンサ52としては、発光部53と受光部54とを備える光センサ等の非接触式センサが一例として採用されている。ここで、接触式センサでもよいのは勿論である。
【0037】
またさらに、図2に示したように、ベルト斜行補正装置1には、無端ベルト8の斜行速度を算出する斜行速度センサ47が設けられている。
図8に示す如く、斜行速度センサ47は、発光部47aと受光部47bとを備えている。このうち、受光部側には複数のスリット48a、48b…(48)が設けられている。そして、無端ベルト8に設けられたマークMがスリット48a、48b…(48)と対向する位置に位置したとき、該スリット48a、48b…(48)においてマークMを認識することができるように設けられている。即ち、複数のスリット48a、48b…(48)のうち、どのスリット48a、48b…(48)においてマークMを認識するかによって幅方向の位置を認識することができる。
【0038】
そして、無端ベルト8がさらに回転し、今回にマークMを認識するスリット(例えば48g)と、前回にマークM’を認識したスリット(例えば48c)との距離dxを制御装置46において求めることができる。
また、制御装置46は、前回にスリット(例えば48c)がマークM’を認識してから今回にスリット(例えば48g)がマークMを認識するまでの時間dtを求めることができる。
【0039】
従って、Vx(斜行速度)=dx(幅方向の移動距離)/dt(時間)で斜行速度を算出することができる。
尚、斜行速度センサ47は、幅方向における無端ベルト8の位置を検出することができるので、前述した第1エッジセンサ25、第2エッジセンサ26、左側のリミットセンサ51および右側のリミットセンサ52を省略することが可能である。
【0040】
更に、図2に示したように、ベルト斜行補正装置1には、ベルト斜行補正ローラ7を無端ベルト8の斜行を補正する方向に傾動させる傾動機構29が設けられている。該傾動機構29は、動力源としての駆動体であるカム動作モータ33と、該カム動作モータ33の回転駆動量に対応して前記ベルト斜行補正ローラ7の傾動量が決まる関係をもって、該カム動作モータ33の回転駆動を前記ベルト斜行補正ローラの傾動に変換する変換機構19を備えている。該変換機構19は、ローラ支持フレーム30と、カム機構39を成すカムフォロワ31と、同じくカム機構39を成す傾動カム32と、付勢手段34とを備えることによって構成されている。
【0041】
また、傾動カム32の回転軸40上には、傾動カム32の回転角度を設定するために例えば放射状に多数のスリットが形成されている検出板41が設けられている。該検出板41の回転量は、近傍に設けられるカム位置センサ42によって検出できるようになっている。尚、前記検出板41及びカム位置センサ42は設けなくてもよい。
更に、本実施例では、ベルト斜行補正ローラ7をテンションローラとしても使用するために、揺動アーム35とテンションバネ36とが備えられている。
【0042】
ローラ支持フレーム30は、ベルト斜行補正ローラ7を回転可能な状態で支持し、図4中、右上部に設けられている回動支点Oを中心にして、図4中の矢印Gで示すように所定の角度回動する支持部材である。そして、該ローラ支持フレーム30の回動自由端側の左上部には軸部37が立ち上げられており、該軸部37に回転可能な状態で小径円板状のカムフォロワ31が取り付けられている。
【0043】
尚、前記カムフォロワ31には、前記ローラ支持フレーム30に駆動を伝達する傾動カム32が常時当接状態で設けられている。該傾動カム32は、カム高さが徐々に変化するように形成されているカム面38を周面の一部に有しており、カムフォロワ31の周面に当接するカム面38の当接位置を変化させることによってベルト斜行補正ローラ7の傾動角度θを調整できるようになっている。
【0044】
すなわち、本実施例に係るベルト斜行補正装置1においては、前記傾動機構29は、単位駆動量で間欠的に駆動するカム動作モータ33と、該カム動作モータ33の回転駆動量に対応して前記ベルト斜行補正ローラ7の傾動量が決まる関係をもって、該カム動作モータ33の駆動を前記ベルト斜行補正ローラ7の傾動に変換する変換機構19とを備えている。
【0045】
また、付勢手段34は、前記カムフォロワ31を前記傾動カム32に常時当接させるようにローラ支持フレーム30を付勢する部材であり、一例として引張りコイルバネによって構成されている。尚、付勢手段34の一端はローラ支持フレーム30の図4中の右下部において係止されており、付勢手段34の他端は図示しないプリンタ本体の適宜の固定フレームに係止されている。
【0046】
ローラ支持フレーム30の図4中の左下部には、軸部43が立ち上げられており、該軸部43を揺動支点Qとして揺動アーム35が、図4中の矢印Hで示す緊張方向及び弛緩方向に揺動可能な状態で設けられている。また、前記揺動支点Qを挟んで図4中の左上部に位置する揺動アーム35の基端部44と、前記ローラ支持フレーム30の回動支点Oとの間には、一例として引張りコイルバネによって構成されている上述のテンションバネ36が張設されている。
更に、ベルト斜行補正装置1は、いずれか一方の前記エッジセンサ(例えば25)がON状態を検出したときに、カム動作モータ33を算出した駆動量だけ駆動させて前記無端ベルト8の斜行補正制御を実行する制御装置46を備えている。
【0047】
[斜行補正動作の説明]
次に、図3、図6および図7に基づいて制御装置46による具体的な斜行補正動作を説明する。
先ず、起動スイッチ50(図2)を押して搬送駆動モータ9を駆動し、無端ベルト8の搬送動作を開始する。また、同時に第1エッジセンサ25、第2エッジセンサ26による無端ベルト8の一方のエッジ23の検出が可能な状態に移行する。
【0048】
そして、図6のステップS1において、リミットセンサがOFF状態か否かを判定する。具体的には、左側のリミットセンサ51および右側のリミットセンサ52の少なくとも一方がOFF状態か否かを判定する。ここで、両方OFF状態でない場合、即ち、いずれか一方がON状態であれば、無端ベルトが外れる虞や他の部材と接触する虞がある。そして、OFF状態と判定した場合、ステップS2へ進む。一方、OFF状態でないと判定した場合、ステップS8へ進む。
【0049】
ステップS2において、斜行速度検出を行う。具体的には、前述したように斜行速度センサ47によって無端ベルト8の前回および今回のマークMの位置を認識し、マークMの位置の差から斜行速度を算出する。そして、ステップS3へ進む。
ステップS3において、偏差算出を行う。具体的には、ステップS2において算出した斜行速度の値と、基準目標値0との差を算出する。そして、ステップS4へ進む。
【0050】
ステップS4において、ステップS3で算出した偏差の値の絶対値が、目標範囲より小か否かを判定する。即ち、前記偏差の値の絶対値が目標範囲内か否かを判定する。
ここで、目標範囲の設定の仕方について説明する。例えば、搬送速度が254mm/sでA2サイズの用紙Pを一枚送る間に、幅方向において±10μmまでは許容することができるとすると、±9μm/s程度となる。
そして、絶対値が目標範囲内と判定した場合、ステップS5へ進む。一方、絶対値が目標範囲内ではないと判定した場合、ステップS9へ進む。
【0051】
ステップS5において、第1エッジセンサ25および第2エッジセンサ26が同じ状態か否かを判定する。具体的には、第1エッジセンサ25および第2エッジセンサ26が共にON状態か、共にOFF状態か否かを判定する。
ここで、共にON状態であれば、図3(b)に示す左側斜行時であると判断することができる。一方、共にOFF状態であれば、図3(c)に示す右側斜行時であると判断することができる。
【0052】
そして、第1エッジセンサ25および第2エッジセンサ26が同じ状態ではないと判定した場合、ステップS1へ戻る。ステップS1、S2、S3、S4、S5をループすることによって、ベルト斜行補正ローラ7のステアリングの制御を行わずにいることができる。これを「不感帯(図7参照)」という。従って、カム動作モータ33等の駆動手段を駆動させないことで振動や無端ベルト8の速度変動を抑えることができる。その結果、用紙Pに対する記録精度を向上させることができる。
一方、同じ状態であると判定した場合、ステップS6へ進む。
【0053】
ステップS6において、モータ駆動量設定を行う。具体的には、無端ベルト8の位置が図3(a)に示す中央に戻る側へベルト斜行補正ローラ7を傾動させるために、カム動作モータ33の所定駆動量を設定する。そして、ステップS7へ進む。
ここで、カム動作モータ33の駆動量は、エッジセンサ25、26に位置検出可能なものを用いてステップS11において後述する斜行速度と同様に無端ベルト8の目標位置との偏差により、公知技術である所謂、PID制御によって算出して設定してもよい。
【0054】
ステップS7において、モータ駆動を実行する。具体的には、ステップS6または後述するステップS11において設定された駆動量に基づいて、カム動作モータ33を駆動させる。そして、ステップS1へ戻る。
ステップS8において、警告および停止を行う。具体的には、搬送駆動モータ9を停止させる。そして、ユーザに対して無端ベルト8の位置の確認を促すように警告する。警告音、音声、液晶表示部等に警告文を表示してもよい。
【0055】
ステップS9において、ステップS3で算出した偏差の値が正か否かを判定する。そして、前記偏差の値が正であると判定した場合、ステップS10へ進む。一方、前記偏差の値が正ではない、即ち、負であると判定した場合、ステップS12へ進む。
ステップS10において、目標値を+(プラス)側に設定する(以下、設定された目標値を設定目標値という)。具体的には、図7における目標範囲のプラス側(例えば0〜9μm/s)に設定する。
【0056】
ここで、目標設定値をプラス側の上限(最大値)である9μm/sとすることが望ましい。係る場合、その後の速度偏差が目標範囲の下限(−9μm/s)をオーバーシュートする虞を最も小さくすることができる。そして、基準目標値0近傍で安定させることができるので、不感帯に保つ時間を長くすることができる。
そして、ステップS11へ進む。
【0057】
ステップS11において、モータ駆動量算出を行う。具体的には、設定目標値が9μm/sの場合、カム動作モータ33の駆動量を、公知技術である所謂、PID制御によって図7に示す速度偏差が設定目標値9μm/sへ近づく方向へベルト斜行補正ローラ7が傾動するようにカム動作モータ33の駆動量を算出する。
一方、設定目標値が−9μm/sの場合、PID制御によって図7に示す速度偏差が設定目標値−9μm/sへ近づく方向へベルト斜行補正ローラ7が傾動するようにカム動作モータ33の駆動量を算出する。
ここで、カム動作モータ33の駆動量は、所定の規定量であってもよい。
そして、ステップS7へ進む。
【0058】
ステップS12において、目標値を−(マイナス)側に設定する。具体的には、図7における目標範囲のマイナス側(例えば−9〜0μm/s)に設定する。
ここで、目標設定値をマイナス側の下限(最小値)である−9μm/sとすることが望ましい。係る場合、その後の速度偏差が目標範囲の上限(9μm/s)をオーバーシュートする虞を最も小さくすることができる。そして、基準目標値0近傍で安定させることができるので、不感帯に保つ時間を長くすることができる。
そして、ステップS11へ進む。
【0059】
本実施形態のベルト斜行補正制御方法は、巻回された無端ベルト8の斜行速度Vxを検出する斜行速度検出工程(S2)と、斜行速度検出工程(S2)において得た斜行速度と、初期目標値0との差を算出する偏差算出工程(S3)と、偏差算出工程(S3)において得た値が所定範囲内であるか否かを判定する所定範囲内判定工程(S4)と、所定範囲内判定工程(S4)において範囲内と判定した場合、無端ベルト8に巻回され傾動可能な斜行補正ローラであるベルト斜行補正ローラ7の角度を保持するローラ角度保持工程(S1〜S5のループ)と、所定範囲内判定工程(S4)において範囲内でないと判定した場合、偏差算出工程(S3)において得た値が初期目標値0に近づく側へ、ベルト斜行補正ローラ7の角度を変位させるローラ角度変位工程(S7、S11)と、を具備することを特徴とする。
【0060】
また、本実施形態において、所定範囲内判定工程(S4)において範囲内でないと判定した場合、偏差算出工程(S3)において得た値が正か負かを判定する正負判定工程(S9)と、正負判定工程(S9)において、前記値が正と判定した場合、目標値を所定範囲の正側の値に設定し、前記値が負と判定した場合、目標値を所定範囲の負側の値に設定する目標値設定工程(S10、S12)と、を具備し、ローラ角度変位工程(S7)は、偏差算出工程(S3)において得た値を、目標値設定工程(S10、S12)において設定された設定目標値に近づけるように、ベルト斜行補正ローラ7の角度を変位させることを特徴とする。
【0061】
またさらに、本実施形態において、目標値設定工程(S10、S12)における前記正側の値は、所定範囲内における最大値であり、前記負側の値は、所定範囲内における最小値であることを特徴とする。
また、本実施形態において、所定範囲内判定工程(S4)において範囲内と判定した場合、無端ベルト8の幅方向位置検出センサによって無端ベルト8の位置が許容範囲内か否かを判定する幅方向ベルト位置判定工程(S5)を具備し、幅方向ベルト位置判定工程(S5)において無端ベルト8の位置が許容範囲内であると判定した場合、ローラ角度保持工程を実行し、無端ベルト8の位置が許容範囲内でないと判定した場合、無端ベルト8の位置が許容範囲内になる側へ、ベルト斜行補正ローラ7の角度を変位させるローラ角度変位工程(S6、S7)を実行することを特徴とする。
【0062】
本実施形態のベルト搬送装置20は、動力源の一例である搬送駆動モータ9によって駆動する駆動ローラ6と、回動自在に保持された従動ローラ5と、駆動ローラ6および従動ローラ5に巻回された無端ベルト8と、無端ベルト8の面と当接することによって無端ベルト8の斜行を補正するベルト斜行補正ローラ7と、無端ベルト8の幅方向における無端ベルト8の位置を検出し斜行速度を算出する(S2)斜行速度検出器である斜行速度センサ47と、斜行速度センサ47によって得た斜行速度と、初期目標値0との差を算出し(S3)、該算出した値が所定範囲内であるか否かを判定し(S4)、範囲内と判定した場合、ベルト斜行補正ローラ7の角度を保持し、範囲内でないと判定した場合、前記算出した値が初期目標値0に近づく側へ、ベルト斜行補正ローラ7の角度を変位させる(S7、S11)制御部としての制御装置46と、を備えていることを特徴とする。
【0063】
本実施形態の記録装置100は、被記録媒体の一例である用紙Pを保持、搬送する搬送部としての搬送手段2と、搬送された用紙Pに対して記録を実行する記録実行部3と、を備え、搬送手段2は、上記ベルト搬送装置20であることを特徴とする。
【0064】
[他の実施形態1]
図9に示すのは、他の実施形態1に係るサンプリングポイントを示す概略側面図である。特に説明する第1マーク〜第5マーク以外は、前述した実施形態と同様であるので、同じ符号を用いると共にその説明は省略する。
図9に示す如く、無端ベルト一周をn分割(例えばn=5分割)した位置に、第1マークM1〜第5マークM5を設ける。そして、斜行速度センサ47が、第1マークM1〜第5マークM5を認識して、それぞれにおいて斜行速度を算出するように構成されている。
【0065】
具体的には、前回認識した第1マークM1の位置と、今回認識した第1マークM1の位置との差dxを、前述した実施形態と同様に求めることができる。そして、第1マークM1における斜行速度を算出することができる。同様に、第2マークM2、第3マークM3…における斜行速度を算出することができる。
例えば、サンプリングポイントであるマークMが一箇所のみで、無端ベルト8が一周する時間が長い(例えば20秒)場合、一定時間内にサンプリングできる回数が十分でない虞がある。係る場合、次回のサンプリングまでに無端ベルト8が外れる虞や、左側のリミットセンサ51および右側のリミットセンサ52が作動する虞がある。
【0066】
そこで、無端ベルト一周をn分割(例えばn=5分割)して、それぞれのマークM(第1マークM1〜第5マークM5)について斜行速度を算出することによって、20秒毎に得た斜行速度を、4秒毎に斜行速度を得ることができる。従って、次回のサンプリングまでに無端ベルト8が外れる虞や、左側のリミットセンサ51および右側のリミットセンサ52が作動する虞がない。
【0067】
また、それぞれのマークM(第1マークM1〜第5マークM5)について斜行速度を算出するので、第1マークM1〜第5マークM5相互の位置の公差を考慮する必要がない。即ち、マークMを一箇所のみ設けた場合と同じ高精度で斜行速度を算出することができる。
尚、サンプリングポイントは、無端ベルト8が一周する時間をn分割することも可能である。
【0068】
他の実施形態1のベルト斜行補正制御方法は、巻回された無端ベルト8の斜行速度を検出する斜行速度検出工程(S2)と、斜行速度検出工程(S2)において得た斜行速度と、初期目標値0との差を算出する偏差算出工程(S3)と、偏差算出工程(S3)において得た値が初期目標値0に近づく側へ、無端ベルト8に巻回され傾動可能な斜行補正ローラであるベルト斜行補正ローラ7の角度を変位させるローラ角度変位工程(S6、S7、S10〜S12)と、を具備し、斜行速度検出工程(S2)は、無端ベルト一周をn分割(nは2以上の整数)して定めたサンプリングポイントである第1マークM1〜第5マークM5(例えばn=5の場合)をそれぞれ計測して無端ベルト8の斜行速度を算出することを特徴とする。
尚、他の実施形態1において、n=5分割としたがこれに限られるものではない。
【0069】
また、他の実施形態1において、サンプリングポイントである第1マークM1〜第5マークM5は無端ベルト一周の長さを分割して定めた位置であることを特徴とする。
尚、長さを均等に分割することが望ましい。係る場合、制御装置46の負荷を集中させずに分散させることが可能である。
【0070】
他の実施形態1のベルト搬送装置20は、動力源の一例である搬送駆動モータ9によって駆動する駆動ローラ6と、回動自在に保持された従動ローラ5と、駆動ローラ6および従動ローラ5に巻回された無端ベルト8と、無端ベルト8の面と当接することによって無端ベルト8の斜行を補正する斜行補正ローラであるベルト斜行補正ローラ7と、無端ベルト8の幅方向における無端ベルト8の位置を検出する検出器としての斜行速度センサ47と、前記無端ベルト一周をn分割(nは2以上の整数)して定めたサンプリングポイントである第1マークM1〜第5マークM5(例えばn=5の場合)のそれぞれにおいて斜行速度センサ47からの信号によってそれぞれ算出した斜行速度と、初期目標値0との差を算出し、該算出した値が初期目標値0に近づく側へ、ベルト斜行補正ローラ7の角度を変位させる制御部としての制御装置46と、を備えていることを特徴とする。
【0071】
他の実施形態1の記録装置100は、被記録媒体の一例である用紙Pを保持、搬送する搬送部としての搬送手段2と、搬送された用紙Pに対して記録を実行する記録実行部3と、を備え、搬送手段2は、上記ベルト搬送装置20であることを特徴とする。
【0072】
[他の実施形態2]
本願発明に係るベルト斜行補正装置1、該ベルト斜行補正装置1を備えたベルト搬送装置20及び該ベルト搬送装置20を備えた記録装置100は、以上述べたような構成を基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
【0073】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明のベルト搬送装置を適用したインクジェットプリンタの内部構造の概略を示す側断面図。
【図2】本発明のベルト斜行補正装置を適用したベルト搬送装置を示す平面図。
【図3】無端ベルトの通常時(a)と、左側斜行時(b)と、右側斜行時(c)の各状態を示す平面図。
【図4】傾動機構を示す側断面図。
【図5】(a)〜(d)はベルト斜行補正ローラの種々の形状を示す正面図。
【図6】無端ベルトの斜行補正制御の一例を示すフローチャート。
【図7】本発明に係る斜行補正制御の効果を示す図。
【図8】本発明に係る斜行速度センサの原理を示す概略図。
【図9】他の実施形態1に係るサンプリングポイントを示す概略側面図。
【符号の説明】
【0075】
1 ベルト斜行補正装置、2 搬送手段、3 記録実行部、4 ゲートローラ、
5 従動ローラ、6 駆動ローラ、7 ベルト斜行補正ローラ、8 無端ベルト、
9 搬送駆動モータ、10 搬送面、11 通気孔、13 記録ヘッド、
19 変換機構、20 ベルト搬送装置、21 小径部、22 大径部、
23 左側のエッジ、24 右側のエッジ、25 第1エッジセンサ、
26 第2エッジセンサ、27 発光部、28 受光部、29 傾動機構、
30 ローラ支持フレーム、31 カムフォロワ、32 傾動カム、
33 カム動作モータ、34 付勢手段、35 揺動アーム、36 テンションバネ、
37 軸部、38 カム面、39 カム機構、40 回転軸、41 検出板、
42 カム位置センサ、43 軸部、44 基端部、46 制御装置、
47 斜行速度センサ、47a 発光部、47b 受光部、48 スリット、
48a〜48i 第1〜第9スリット、M マーク、M1〜M5 第1〜第5マーク、
50 起動スイッチ、51 左側のリミットセンサ、52 右側のリミットセンサ、
53 発光部、54 受光部、100 インクジェットプリンタ(記録装置)、
A 搬送方向、B 軸方向、D 中央部のローラ径、d 両端部のローラ径、G 矢印、
H 矢印、O 回動支点、P 用紙(被記録材)、Q 揺動支点、θ 傾動角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回された無端ベルトの斜行速度を検出する斜行速度検出工程と、
該斜行速度検出工程において得た斜行速度と、初期目標値との差を算出する偏差算出工程と、
該偏差算出工程において得た値が所定範囲内であるか否かを判定する所定範囲内判定工程と、
該所定範囲内判定工程において範囲内と判定した場合、前記無端ベルトに巻回され傾動可能な斜行補正ローラの角度を保持するローラ角度保持工程と、
前記所定範囲内判定工程において範囲内でないと判定した場合、前記偏差算出工程において得た値が前記初期目標値に近づく側へ、前記斜行補正ローラの角度を変位させるローラ角度変位工程と、を具備するベルト斜行補正制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載のベルト斜行補正制御方法において、前記所定範囲内判定工程において範囲内でないと判定した場合、前記偏差算出工程において得た値が正か負かを判定する正負判定工程と、
該正負判定工程において、前記値が正と判定した場合、目標値を前記所定範囲の正側の値に設定し、
前記値が負と判定した場合、目標値を前記所定範囲の負側の値に設定する目標値設定工程と、を具備し、
前記ローラ角度変位工程は、前記偏差算出工程において得た値を、前記目標値設定工程において設定された設定目標値に近づけるように、前記斜行補正ローラの角度を変位させるベルト斜行補正制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載のベルト斜行補正制御方法において、前記目標値設定工程における前記正側の値は、前記所定範囲内における最大値であり、前記負側の値は、前記所定範囲内における最小値であるベルト斜行補正制御方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のベルト斜行補正制御方法において、前記所定範囲内判定工程において範囲内と判定した場合、前記無端ベルトの幅方向位置検出センサによって前記無端ベルトの位置が許容範囲内か否かを判定する幅方向ベルト位置判定工程を具備し、
該幅方向ベルト位置判定工程において前記無端ベルトの位置が許容範囲内であると判定した場合、前記ローラ角度保持工程を実行し、
前記無端ベルトの位置が許容範囲内でないと判定した場合、前記無端ベルトの位置が許容範囲内になる側へ、前記斜行補正ローラの角度を変位させる前記ローラ角度変位工程を実行するベルト斜行補正制御方法。
【請求項5】
動力源によって駆動する駆動ローラと、
回動自在に保持された従動ローラと、
前記駆動ローラおよび前記従動ローラに巻回された無端ベルトと、
該無端ベルトの面と当接することによって前記無端ベルトの斜行を補正する斜行補正ローラと、
前記無端ベルトの幅方向における該無端ベルトの斜行速度を検出する斜行速度検出器と、
該斜行速度検出器によって得た斜行速度と、初期目標値との差を算出し、該算出した値が所定範囲内であるか否かを判定し、範囲内と判定した場合、前記斜行補正ローラの角度を保持し、
範囲内でないと判定した場合、前記算出した値が前記初期目標値に近づく側へ、前記斜行補正ローラの角度を変位させる制御部と、を備えたベルト搬送装置。
【請求項6】
被記録媒体を保持、搬送する搬送部と、
搬送された被記録媒体に対して記録を実行する記録実行部と、を備え、
前記搬送部は、請求項5に記載のベルト搬送装置であることを特徴とする記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−203035(P2009−203035A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48299(P2008−48299)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】