説明

ベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物の製造方法

【課題】ベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物の効率的な製造方法の提供。
【解決手段】下記一般式(A)で表されるベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物を、下記一般式(B)で表されるスルフィン酸塩化合物に対しシリル化剤または塩素化剤を反応させて製造する。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物の効率的な製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物は、種々の機能性を持つことが報告されている。たとえば、膀胱内圧高圧時に生ずる排尿収縮を制御する作用(特許文献1)、回避条件反射を遮断する作用や5-ヒドロキシトリプタミン結合阻害といった作用(非特許文献1)、抗菌剤としての作用(特許文献2)が知られている。また、酸化することにより1,1-ジオキシド化合物となり、これらの化合物もサッカリン誘導体として生理活性を示すことが知られている。
【0003】
従来、ベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物は、ベンゾイソチアゾリノン化合物を酸化剤によって酸化することによって製造されている。しかし、この反応を完全に終了させるためには小過剰量の酸化剤が用いられるが、時として酸化が進みすぎてジオキシド化合物(スルホン化合物)が不純物として生成してしまい、温度制御により注意深く反応を行わなければならない欠点があった(非特許文献2)。また、スルフィド化合物からスルホキシド化合物を選択的に得る方法として、塩素ガスやNCS等のハロゲン化剤を用いる方法(非特許文献3、非特許文献4)が知られているが、これらの試薬は有害であり取り扱いに細心の注意をする必要があった。そこで、より簡便なベンゾイソチアゾリノン−1−オキシドの製造方法が望まれている。
【0004】
また、酸化に対して反応性を持つ置換基を有するベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物を製造する場合は、ベンゾイソチアゾリノン化合物を酸化する製造方法では、当該置換基が酸化されてしまい、目的の化合物を製造することはできなかった。そこで、酸化反応に対して活性な置換基を有する場合でも可能なベンゾイソチアゾリノン−1−オキシドの製造方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-278125号公報
【特許文献2】特公昭52-31343号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】M. Abou-Gharbinら、J. Med. Chem., 32, 1024 (1989).
【非特許文献2】E. A. Serebryakov, P. G. Kislitsin, V.V. Semenov, and S. G. Zlotin, Synthesis, 2001, 1659.
【非特許文献3】J. Drabowicz, M. Midura, and M. Mikolajczyk, Synthesis, 1979, 39.
【非特許文献4】M. Haake, H. Gebbing, and H. Benack, Synthesis, 1979, 97.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の事情を解決するためになされたものであり、生理活性物質となるベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物を高収率かつ簡便に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、2-カルバモイルベンゼンスルフィン酸塩化合物に対してシリル化剤や塩素化剤を反応させることにより、閉環反応が効果的に進行して、生理活性物質となり極めて有用な、ベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物が得られることを見いだし、本発明を完成させたものである。
【0009】
この出願は、以下の発明を提供するものである。
(1)下記一般式(A)で表されるベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物を製造する方法において、下記一般式(B)で表される2-カルバモイルベンゼンスルフィン酸塩化合物に対して、シリル化剤を反応させることを特徴とするベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物の製造方法。
【化1】

(式中、置換基Rは、水素原子、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の環状のアルキル基、炭素数1〜8の鎖状のアルキルチオ基、炭素数3〜8の鎖状のアルケン基、フェニル基を表す。このフェニル基は、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜8の鎖状のアルキルチオ基、炭素数2〜8の鎖状のアルケン基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を置換基として有していてもよい。置換基Rは、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、フェニル基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を表す。Rが複数ある場合は、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、nは0または1〜4の整数である。)

【化2】

(式中、置換基Rは、水素原子、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の環状のアルキル基、炭素数1〜8の鎖状のアルキルチオ基、炭素数3〜8の鎖状のアルケン基、フェニル基を表す。このフェニル基は、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜8の鎖状のアルキルチオ基、炭素数2〜8の鎖状のアルケン基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を置換基として有していてもよい。置換基Rは、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、フェニル基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を表す。Rが複数ある場合は、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、nは0または1〜4の整数である。Mは陽イオンを示し、アルカリ金属イオン、及びアンモニウムイオンを表す。)
【0010】
(2)上記(1)においてシリル化剤として下記一般式(C)で示される化合物を使用することを特徴とするベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物の製造方法。
【化3】

(式中、置換基R、R、Rは、炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基を表す。)
【0011】
(3)上記(1)において、スルフィン酸塩化合物として下記一般式(D)で表される化合物を用いることを特徴とするベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物の製造方法。
【化4】

(式中、置換基Rは、水素原子、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の環状のアルキル基、炭素数1〜8の鎖状のアルキルチオ基、炭素数3〜8の鎖状のアルケン基、フェニル基を表す。このフェニル基は、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜8の鎖状のアルキルチオ基、炭素数2〜8の鎖状のアルケン基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を置換基として有していてもよい。置換基Rは、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、フェニル基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を表す。Rが複数ある場合は、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、nは0または1〜4の整数である。置換基R〜Rは、水素原子、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の環状のアルキル基、炭素数1〜8の鎖状のアルキルチオ基、炭素数2〜8の鎖状のアルケン基、フェニル基を表す。このフェニル基は、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜8の鎖状のアルキルチオ基、炭素数2〜8の鎖状のアルケン基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を置換基として有していてもよい。)
【0012】
(4)上記(3)においてシリル化剤として下記一般式(C)で示される化合物を使用することを特徴とするベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物の製造方法。
【化5】

(式中、置換基R、R、Rは、炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基を表す。)
【0013】
(5)下記一般式(A)で表されるベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物を製造する方法において、下記一般式(B)で表される2-カルバモイルベンゼンスルフィン酸塩化合物に対して、塩素化剤を反応させることを特徴とするベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物の製造方法。
【化6】

(式中、置換基Rは、水素原子、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の環状のアルキル基、炭素数1〜8の鎖状のアルキルチオ基、炭素数3〜8の鎖状のアルケン基、フェニル基を表す。このフェニル基は、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜8の鎖状のアルキルチオ基、炭素数2〜8の鎖状のアルケン基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を置換基として有していてもよい。置換基Rは、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、フェニル基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を表す。Rが複数ある場合は、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、nは0または1〜4の整数である。)
【化7】

(式中、置換基Rは、水素原子、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の環状のアルキル基、炭素数1〜8の鎖状のアルキルチオ基、炭素数3〜8の鎖状のアルケン基、フェニル基を表す。このフェニル基は、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜8の鎖状のアルキルチオ基、炭素数2〜8の鎖状のアルケン基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を置換基として有していてもよい。置換基Rは、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、フェニル基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を表す。Rが複数ある場合は、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、nは0または1〜4の整数である。Mは陽イオンを示し、アルカリ金属イオン、及びアンモニウムイオンを表す。)
【0014】
(6)上記(5)において塩素化剤として塩化チオニル、三塩化リン、五塩化リン、オキシ塩化リンから選ばれる化合物を用いることを特徴とするベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物の製造方法。
【0015】
(7)上記(5)において、スルフィン酸塩化合物として下記一般式(D)で表される化合物を用いることを特徴とするベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物の製造方法。
【化8】

(式中、置換基Rは、水素原子、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の環状のアルキル基、炭素数1〜8の鎖状のアルキルチオ基、炭素数3〜8の鎖状のアルケン基、フェニル基を表す。このフェニル基は、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜8の鎖状のアルキルチオ基、炭素数2〜8の鎖状のアルケン基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を置換基として有していてもよい。置換基Rは、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、フェニル基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を表す。Rが複数ある場合は、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、nは0または1〜4の整数である。置換基R〜Rは、水素原子、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の環状のアルキル基、炭素数1〜8の鎖状のアルキルチオ基、炭素数2〜8の鎖状のアルケン基、フェニル基を表す。このフェニル基は、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜8の鎖状のアルキルチオ基、炭素数2〜8の鎖状のアルケン基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を置換基として有していてもよい。)
【0016】
(8)上記(7)において塩素化剤として塩化チオニル、三塩化リン、五塩化リン、オキシ塩化リンから選ばれる化合物を用いることを特徴とするベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明で得られる前記一般式(A)で示されるベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物は、生理活性物質として極めて有用なものである。本発明の前記一般式(A)で示されるベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物の製造方法は、前記一般式(B)で示されるスルフィン酸塩化合物に前記一般式(C)で示されるシリル化剤または塩素化剤を反応させることによるものであるから、簡便にしかも収率よく合成することができる。また、出発原料である前記一般式(B)で示されるスルフィン酸塩化合物は容易に入手できる化合物である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の目的化合物は、以下の一般式(A)により示されるベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物である。
【化9】

前記式中、置換基Rは、水素原子、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の環状のアルキル基、炭素数1〜8の鎖状のアルキルチオ基、炭素数3〜8の鎖状のアルケン基、フェニル基を表す。このフェニル基は、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜8の鎖状のアルキルチオ基、炭素数2〜8の鎖状のアルケン基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を置換基として有していてもよい。置換基Rは、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、フェニル基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を表す。Rが複数ある場合は、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、nは0または1〜4の整数である。
【0019】
前記置換基Rの鎖状のアルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル基等が挙げられる。
前記置換基Rの環状のアルキル基の具体例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンチル基等が挙げられる。
前記置換基Rの鎖状のアルキルチオ基の具体例としては、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、t−ブチルチオ、イソブチルチオ、ペンチルチオ、イソペンチルチオ、ヘキシルチオ、イソヘキシルチオ、ヘプチルチオ、オクチルチオ基等が挙げられる。
前記置換基Rの鎖状のアルケン基の具体例としては、アリル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ブテン−3−イル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、5−ヘキセニル、6−ヘプテニル、7−オクテニル基等が挙げられる。
前記置換基Rのフェニル基の置換基の具体例としては、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基としてメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル基等、炭素数1〜8のアルコキシル基としてメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、シクロプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ、ペンチロキシ、ヘキシロキシ、シクロヘキシロキシル基等、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基としてメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、シクロプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、ペンチロキシカルボニル、ヘキシロキシカルボニル、シクロヘキシロキシルカルボニル基等、炭素数1〜8のアルキルチオ基としてメチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、t−ブチルチオ、イソブチルチオ、ペンチルチオ、イソペンチルチオ、ヘキシルチオ、イソヘキシルチオ、ヘプチルチオ、オクチルチオ基等、炭素数2〜8の鎖状のアルケン基としてビニル、アリル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ブテン−3−イル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、5−ヘキセニル、6−ヘプテニル、7−オクテニル基等が、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
前記置換基Rのアルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル基等が挙げられる。
前記置換基Rのアルコキシル基の具体例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、シクロプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ、ペンチロキシ、ヘキシロキシ、シクロヘキシロキシル基等が挙げられる。
前記置換基Rのアルコキシカルボニル基の具体例としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、シクロプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、ペンチロキシカルボニル、ヘキシロキシカルボニル、シクロヘキシロキシルカルボニル基等が挙げられる。
前記Rのハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0020】
前記一般式(A)で表されるベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物を製造する方法は、以下の通りである。
下記一般式(B)で表されるスルフィン酸塩化合物に対し、下記一般式(C)で表されるシリル化剤または塩素化剤を反応させる。
【化10】

前記式中、置換基R、Rは、前記一般式(A)により示されるベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物のR、Rの場合と同じである。
前記Mの具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、メチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ベンジルアンモニウム、シクロペンチルアンモニウム、シクロヘキシルアンモニウム、アダマンチルアンモニウム、アニリニウム、トリエチルアンモニウム、ピリジニウム等が挙げられる。
この方法で用いられるシリル化剤は、以下の一般式(C)で表されるものである。
【化11】

前記式中、置換基R、R、Rは、炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基を表す。
前記置換基R、R、Rのアルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル基等が挙げられる。
また、この方法で用いられる塩素化剤としては、塩化チオニル、三塩化リン、五塩化リン、オキシ塩化リン等が挙げられる。
【0021】
この新規反応をスルフィン酸塩(b)(一般式(B)においてR=ベンジル基、R=H、M=ベンジルアンモニウム)と、塩化トリメチルシラン(c)(一般式(C)においてR=R=R=メチル基)を反応させてスルフィン酸塩化合物(a)(一般式(A)においてR=ベンジル基、R=H)を合成する場合を例にとり説明する。
この反応は、下記の反応機構により進行する。
【化12】

すなわち、シリル化剤の塩化トリメチルシリルがスルフィン酸の酸素原子と反応してトリメチルシリルエステルを与える。これにアミド基の窒素原子が硫黄原子を攻撃してトリメチルシラノールが脱離して環化反応が進行し、目的のベンゾイソチアゾリノン−1−オキシドを与えるものである。
【0022】
ここで、シリル化剤として用いる化合物(C)の量は、スルフィン酸塩化合物に対して2倍モル量でよいが、2.2〜3.0倍モル等量加えるのがよい。
【0023】
また、この新規反応をスルフィン酸塩(b)(一般式(B)においてR=ベンジル基、R=H、M=ベンジルアンモニウム)と、塩素化剤として塩化チオニルを反応させてスルフィン酸塩化合物(a)(一般式(A)においてR=ベンジル基、R=H)を合成する場合を例にとり説明する。
この反応は、下記の反応機構により進行する。
【化13】

すなわち、塩素化剤によりスルフィン酸が塩素化されスルフィン酸塩化物を与える。これにアミド基の窒素原子が硫黄原子を攻撃して塩化水素が脱離して環化反応が進行し、目的のベンゾイソチアゾリノン−1−オキシドを与えるものである。
【0024】
ここで、塩素化剤の量は、スルフィン酸塩化合物に対して等モル量でよいが、アミン類と反応して失活することを考え、2.0〜5.0倍モル等量加えるのがよい。
【0025】
これらの反応機構からみて、一般式(B)で示される化合物としては、Rがベンジル基、RがH、Mがベンジルアンモニウムである化合物(b)だけでなく、置換基Rが、水素原子、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の環状のアルキル基、炭素数1〜8の鎖状のアルキルチオ基、炭素数3〜8の鎖状のアルケン基、フェニル基を表し、このフェニル基は、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜8の鎖状のアルキルチオ基、炭素数2〜8の鎖状のアルケン基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を置換基として有していてもよく、また、置換基Rが、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、フェニル基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を表し、Rが複数ある場合は、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、nは0または1〜4の整数であり、Mが陽イオンを示し、アルカリ金属イオン、及びアンモニウムイオンを表す化合物であっても、同様な反応が進行することは明かである。
【0026】
この反応は、反応溶媒中で行われる。溶媒としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、トルエン、アセトニトリル、アセトン、酢酸エチル、塩化メチレン、クロロホルム等の非水性溶媒が挙げられ、これらの混合溶媒の形で使用してもかまわない。
【0027】
反応温度は、0℃〜120℃の範囲の温度で行う事ができる。この温度範囲以下の低温の場合には反応速度が遅くなり、この範囲を超えて高すぎる場合には、異常な分解反応や副反応が多い結果となる。このようなことから、前記温度範囲は20〜100℃の範囲であることが好ましい。
反応時間は、反応温度に左右され、一般に定めることができないが、通常は0.2〜5時間である。
【0028】
前記反応の原料物質である(B)の一部は既知化合物であり、(B)の製法の一例を挙げれば、1,3-ベンゾオキサチイン-4-オン-1,1-ジオキシド化合物とアミン類を反応させる製造方法を挙げることができる(例えば、T. P. Vasileva and V. V. Znamenskii, Pharm. Chem.J., 28, 47-50 (1994).や、T. P. Vasileva, N. I. Lisina, and V. V. Znamenskii, Pharm. Chem. J., 31, 258-261 (1997)等、参照)。また、化合物(D)は、市販の化合物を用いることができる。
【0029】
本反応で得られるベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物の具体例について例示すると、以下の化学式(1)〜(11)で示される化合物である。しかしながら、これらの化合物は代表例であって、本発明はこれらのものに限定されるものではない。
【化14】

【0030】
本発明で得られる前記一般式(A)で示されるベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物は、生理活性物質の原料として極めて有用なものである。
【実施例】
【0031】
次に、本発明を実施例により詳細に説明する。
以下に述べる実施例は本発明の理解を容易にするために代表的な化合物の一例をあげたものであり、本発明はこれに限定されるものではない。また、製造された化合物(1)〜(11)は、前記で示した化合物(1)〜(11)に対応するものである。
【0032】
実施例1
内容積50mLのガラス製容器中にN-ベンジルカルバモイルベンゼンスルフィン酸ベンジルアンモニウム塩(191mg,0.5mmol)をアセトニトリル(5ml)に懸濁させ、トリメチルクロロシラン(109mg、1.0mmol)を滴下した。室温で5時間攪拌させた後、溶媒を減圧下留去させた。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(溶媒 塩化メチレン:酢酸エチル=10:1)で精製して化合物(1)のベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物を得た(収率95%)。化合物(1)は酢酸エチル−ヘキサンより再結晶することでさらに精製できた。
m.p. 91.0-92.7℃
1H NMR (CDCl3): d 4.74 (1H, d, J=15.6 Hz), 5.31 (1H, d, J=15.6 Hz), 7.30-7.38 (3H, m), 7.43 (2H, dd, J=8.2, 1.4 Hz), 7.74-7.82 (2H, m), 7.89 (1H, dd, J=7.3, 0.9 Hz), 8.03 (1H, dd, J=7.3, 1.4 Hz).
13C NMR (CDCl3): d 44.3, 125.2, 126.3, 128.2, 128.3, 128.7, 128.9, 133.3, 134.2, 135.8, 145.7, 165.2.
IR (KBr): nmax 3376, 3088, 3022, 2972, 1693, 1454, 1305, 1253, 1111, 1011, 751, 702, 679, 561, 516 cm-1.
元素分析:計算値C14H11NO2S C: 65.35%, H: 4.31%, N: 5.44%。実測値C: 65.35%, H: 4.23%, N: 5.44%。
【0033】
実施例2
実施例1において出発物質のスルフィン酸塩化合物としてN-フェネチルカルバモイルベンゼンスルフィン酸フェネチルアンモニウム塩を用いることにより、化合物(2)のベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物を得た(収率:85%)。化合物(2)は酢酸エチル−ヘキサン混合溶媒により再結晶することで精製できた。
m.p. 97.5-97.9℃
1H NMR (CDCl3): d 3.05-3.17 (m, 2H), 3.47-4.01 (1H, m), 4.19-4.26 (1H, m), 7.22-7.33 (5H, m), 7.76 (1H, td, J=7.3, 1.4 Hz), 7.80 (1H, td, J=7.3, 1.4 Hz), 7.87-7.89 (1H, m), 7.99-8.01 (1H, m).
13C NMR (CDCl3): d 35.5, 42.6, 125.1, 126.2, 126.8, 128.3, 128.7, 128.9, 133.2, 134.2, 137.7, 145.7, 165.3.
IR (KBr): nmax 3371, 3069, 3022, 2967, 2935, 2865, 1695, 1452, 1325, 1305, 1098, 979, 761, 685, 571, 519 cm-1.
元素分析:計算値C15H13NO2S C: 66.40%, H: 4.83%, N: 5.16%。実測値C: 66.39%, H: 4.74%, N: 5.08%。
【0034】
実施例3
実施例1において出発物質のスルフィン酸塩化合物としてN-(1-フェニルエチル)カルバモイルベンゼンスルフィン酸(1-フェニルエチル)アンモニウム塩を用いることにより、化合物(3)のベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物を得た(収率:94%)。
1H NMR (CDCl3): d 1.94 (3H, d, J=7.3 Hz), 1.99 (3H, d, J=7.3 Hz), 5.53 (1H, q, J=7.3 Hz), 5.77 (1H, q, J=7.3 Hz), 7.25-7.41 (6H, m), 7.49-7.55 (4H, m), 7.72-7.77 (5H, m), 7.91-7.95 (3H, m).
13C NMR (CDCl3): d 19.7, 20.8, 53.3, 54.9, 124.9, 125.0, 126.0, 126.2, 127.1, 127.8, 128.4, 128.5, 128.6, 128.8, 133.0, 133.1, 134.1, 139.7, 141.0, 145.6, 145.8, 165.1.
【0035】
実施例4
実施例1において出発物質のスルフィン酸塩化合物としてN-シクロプロピルカルバモイルベンゼンスルフィン酸シクロプロピルアンモニウム塩を用いることにより、化合物(4)のベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物を得た(収率:93%)。化合物(4)は酢酸エチル−ヘキサン混合溶媒により再結晶することで精製できた。
m.p. 103.3-103.7℃
1H NMR (CDCl3): d 0.99-1.16 (3H, m), 1.26-1.32 (1H, m), 2.97-3.03 (1H, m), 7.75 (1H, td, J=7.3, 1.4 Hz), 7.80 (1H, td, J=7.3, 1.4 Hz), 7.87 (1H, dd, J=7.3, 1.4 Hz), 7.99 (1H, dd, J=7.3, 1.4 Hz).
13C NMR (CDCl3): d 5.8, 6.7, 24.0, 125.1, 126.1, 128.6, 133.2, 134.3, 143.7, 166.5.
IR (KBr): nmax 3420, 3089, 3021, 1718, 1451, 1314, 1110, 757, 678, 574, 518 cm-1.
元素分析:計算値C10H9NO2S C: 57.95%, H: 4.38%, N: 6.76%。実測値C: 57.88%, H: 4.31%, N: 6.65%。
【0036】
実施例5
実施例1において出発物質のスルフィン酸塩化合物としてN-シクロヘキシルカルバモイルベンゼンスルフィン酸シクロヘキシルアンモニウム塩を用いることにより、化合物(5)のベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物を得た(収率:78%)。化合物(5)は酢酸エチル−ヘキサン混合溶媒により再結晶することで精製できた。
m.p. 93.5-94.4℃
1H NMR (CDCl3): d 1.26-1.31 (1H, m), 1.38-1.52(1H, m), 1.74 (1H, d, J=12.8 Hz), 1.79-1.98 (4H, m), 2.06 (1H, d, J=12.8 Hz), 2.21 (1H, d, J=12.8 Hz), 4.31 (1H, tt, J=12.8, 3.9 Hz), 7.74 (1H, td, J=7.3, 1.4 Hz), 7.79 (1H, td, J=7.3, 1.4 Hz), 7.88 (1H, J=7.3, 1.4 Hz), 7.99 (1H, J=7.3, 1.4 Hz).
13C NMR (CDCl3): d 25.6, 26.0, 26.1, 32.5, 33.1, 54.5, 124.9, 126.1, 128.8, 133.0, 134.0, 145.7, 165.3.
IR (KBr): nmax 2934, 2849, 1686, 1309, 1249, 1100, 1065, 977, 680, 570 cm-1.
元素分析:計算値C13H15NO2S C: 62.62%, H: 6.06%, N: 5.62%。実測値C: 62.35%, H: 6.05%, N: 5.70%。
【0037】
実施例6
実施例1において出発物質のスルフィン酸塩化合物としてN-(1-アダマンチル)カルバモイルベンゼンスルフィン酸(1-アダマンチル)アンモニウム塩を用いることにより、化合物(6)のベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物を得た(収率:38%)。化合物(6)は酢酸エチル−ヘキサン混合溶媒により再結晶することで精製できた。
m.p. 188.0-189.7℃(文献値 172-173℃)
1H NMR (CDCl3): d 1.75 (3H, d, J=11.9 Hz), 1.83 (3H, d, J=11.9 Hz), 2.22 (3H, s), 2.47 (3H, d, J=11.9 Hz), 2.53 (3H, d, J=11.9 Hz), 7.70 (1H, td, J=7.3, 1.4 Hz), 7.75 (1H, td, J=7.3, 1.4 Hz), 7.82 (1H, td, J=7.3, 1.4 Hz), 7.91 (1H, td, J=7.3, 1.4 Hz).
IR (KBr): nmax 2895, 2857, 1692, 1456, 1296, 1246, 1096, 1059, 753, 681, 563, 514 cm-1.
【0038】
実施例7
実施例1において出発物質のスルフィン酸塩化合物としてN-フェニルカルバモイルベンゼンスルフィン酸アニリニウム塩を用いることにより、化合物(7)のベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物を得た(収率:88%)。化合物(7)は酢酸エチル−ヘキサン混合溶媒により再結晶することで精製できた。
m.p. 136-137℃(文献値 136-137℃)
1H NMR (CDCl3): d 7.43 (5H, m), 7.82 (1H, td, J=7.3, 1.4 Hz), 7.88 (1H, td, J=7.3, 1.4 Hz), 7.97 (1H, dt, J=7.3, 1.4 Hz), 8.11 (1H, dt, J=7.3, 1.4 Hz)..
13C NMR (CDCl3): d 126.2, 126.8, 127.4, 128.2, 128.9, 129.8, 133.9, 134.6, 145.6, 164.5.
IR (KBr): nmax 3064, 1716, 1592, 1495, 1454, 1308, 1109, 1091, 752, 695, 675, 569, 516 cm-1.
【0039】
実施例8
実施例1において出発物質のスルフィン酸塩化合物としてN-(p-トリル)カルバモイルベンゼンスルフィン酸(p-トルイジニウム)塩を用いることにより、化合物(8)のベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物を得た(収率:95%)。化合物(8)は酢酸エチル−ヘキサン混合溶媒により再結晶することで精製できた。
m.p. 170.0-171.7℃(文献値 167.5-168.5℃)
1H NMR (CDCl3): d 2.43 (3H, s), 7.32 (2H, dt, J=8.2, 2.1 Hz), 7.40 (2H, dt, J=8.2, 2.1 Hz), 7.81 (1H, td, J=7.3, 1.4 Hz), 7.87 (1H, td, J=7.3, 1.4 Hz), 7.96 (1H, dt, J=7.3, 1.4 Hz), 8.10 (1H, dt, J=7.3, 1.4 Hz).
13C NMR (CDCl3): d 21.3, 125.2, 126.7, 127.4, 128.3, 130.4, 131.1, 133.4, 134.5, 139.2, 145.6, 164.6.
IR (KBr): nmax 3034, 1706, 1508, 1313, 1118, 1094, 758, 678, 571, 511 cm-1.
【0040】
実施例9
実施例1において出発物質のスルフィン酸塩化合物としてカルバモイルベンゼンスルフィン酸アンモニウム塩を用いることにより、化合物(9)のベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物を得た(収率:79%)。化合物(9)は酢酸エチル−ヘキサン混合溶媒により再結晶することで精製できた。
m.p. 158.8-161.0℃(文献値 157-158℃)
1H NMR (CDCl3): d 7.80 (1H, td, J=7.3, 1.4 Hz), 7.86 (1H, td, J=7.3, 1.4 Hz), 7.96 (1H, d, J=7.3 Hz), 8.04 (1H, d, J=7.3 Hz), 8.78 (1H, s).
13C NMR (CDCl3): d 125.5, 126.4, 127.1, 133.3, 134.8, 147.9, 167.6.
IR (KBr): nmax 3126, 2679, 1719, 1671, 1591, 1299, 749, 691, 677, 594, 568, 522 cm-1.
【0041】
実施例10
実施例1において出発物質のスルフィン酸塩化合物としてN-(3-メチルチオ)プロピルカルバモイルベンゼンスルフィン酸(3-メチルチオ)プロピルアンモニウム塩を用いることにより、化合物(10)のベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物を得た(収率:85%)。化合物(10)は酢酸エチル−ヘキサン混合溶媒により再結晶することで精製できた。
1H NMR (CDCl3): d 2.08-2.13 (2H, m), 2.13 (3H, s), 2.56-2.67 (2H, m), 3.92-4.08 (2H, m), 7.77 (1H, td, J=7.4, 0.9 Hz), 7.82 (1H, td, J=7.4, 0.9 Hz), 7.92 (1H, dd, J=6.9, 0.9 Hz), 8.01 (1H, dd, J=6.9, 0.9 Hz).
13C NMR (CDCl3): d 15.4, 28.4, 31.3, 40.4, 125.1, 126.1, 128.2, 133.2, 134.2, 145.6, 165.4.
IR (KBr): nmax 3384, 3100, 3072, 3011, 2965, 2912, 2867, 1703, 1301, 1093, 754, 678, 571, 520 cm-1.
【0042】
実施例11
実施例1において出発物質のスルフィン酸塩化合物としてN-アリルカルバモイルベンゼンスルフィン酸アリルアンモニウム塩を用いることにより、化合物(11)のベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物を得た(収率:90%)。化合物(11)は酢酸エチル−ヘキサン混合溶媒により再結晶することで精製できた。
1H NMR (CDCl3): d 4.31 (1H,ddt, J=16.0, 6.9, 1.4 Hz), 4.66 (1H, ddt, J=16.0, 5.0, 1.4 Hz), 5.32 (1H, dq, J=10.1, 1.4 Hz), 5.39 (1H, dq, J=16.9, 1.4 Hz), 5.9-6.01 (1H, m), 7.77 (1H, td, J=7.3, 1.4 Hz), 7.82 (1H, td, J=7.3, 1.4 Hz), 7.92 (1H, dd, J=7.3, 1.4 Hz), 8.02 (1H, dd, J=7.3, 1.4 Hz).
13C NMR (CDCl3): d 43.1, 119.2, 125.1, 126.1, 128.2, 131.7, 133.1, 134.2, 145.6, 165.0.
IR (KBr): nmax 3393, 3084, 3022, 2927, 1712, 1429, 1310, 1251, 1102, 752, 679, 563, 515 cm-1.
【0043】
実施例12
実施例1においてトリメチルクロロシランの代わりにt-ブチルジメチルクロロシラン(151mg、1.0mmol)を用いて同様な反応を行い、化合物(1)のベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物を得た(収率:71%)。
【0044】
実施例13
内容積50mLのガラス製容器中にN-ベンジルカルバモイルベンゼンスルフィン酸ベンジルアンモニウム塩(191mg,0.5mmol)をアセトニトリル(5ml)に懸濁させ、塩化チオニル(0.1ml、1.3mmol)を滴下した。室温で6時間攪拌させた後、溶媒を減圧下留去させた。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(溶媒 塩化メチレン:酢酸エチル=10:1)で精製して化合物(1)のベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物を得た(収率97%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(A)で表されるベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物を製造する方法において、下記一般式(B)で表される2-カルバモイルベンゼンスルフィン酸塩化合物に対して、シリル化剤を反応させることを特徴とするベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物の製造方法。
【化1】

(式中、置換基Rは、水素原子、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の環状のアルキル基、炭素数1〜8の鎖状のアルキルチオ基、炭素数3〜8の鎖状のアルケン基、フェニル基を表す。このフェニル基は、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜8の鎖状のアルキルチオ基、炭素数2〜8の鎖状のアルケン基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を置換基として有していてもよい。置換基Rは、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、フェニル基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を表す。Rが複数ある場合は、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、nは0または1〜4の整数である。)
【化2】

(式中、置換基Rは、水素原子、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の環状のアルキル基、炭素数1〜8の鎖状のアルキルチオ基、炭素数3〜8の鎖状のアルケン基、フェニル基を表す。このフェニル基は、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜8の鎖状のアルキルチオ基、炭素数2〜8の鎖状のアルケン基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を置換基として有していてもよい。置換基Rは、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、フェニル基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を表す。Rが複数ある場合は、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、nは0または1〜4の整数である。Mは陽イオンを示し、アルカリ金属イオン、及びアンモニウムイオンを表す。)
【請求項2】
上記請求項1においてシリル化剤として下記一般式(C)で示される化合物を使用することを特徴とするベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物の製造方法。
【化3】

(式中、置換基R、R、Rは、炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基を表す。)
【請求項3】
上記請求項1において、スルフィン酸塩化合物として下記一般式(D)で表される化合物を用いることを特徴とするベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物の製造方法。
【化4】

(式中、置換基Rは、水素原子、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の環状のアルキル基、炭素数1〜8の鎖状のアルキルチオ基、炭素数3〜8の鎖状のアルケン基、フェニル基を表す。このフェニル基は、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜8の鎖状のアルキルチオ基、炭素数2〜8の鎖状のアルケン基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を置換基として有していてもよい。置換基Rは、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、フェニル基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を表す。Rが複数ある場合は、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、nは0または1〜4の整数である。置換基R〜Rは、水素原子、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の環状のアルキル基、炭素数1〜8の鎖状のアルキルチオ基、炭素数2〜8の鎖状のアルケン基、フェニル基を表す。このフェニル基は、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜8の鎖状のアルキルチオ基、炭素数2〜8の鎖状のアルケン基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を置換基として有していてもよい。)
【請求項4】
上記請求項3においてシリル化剤として下記一般式(C)で示される化合物を使用することを特徴とするベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物の製造方法。
【化5】

(式中、置換基R、R、Rは、炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基を表す。)
【請求項5】
下記一般式(A)で表されるベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物を製造する方法において、下記一般式(B)で表される2-カルバモイルベンゼンスルフィン酸塩化合物に対して、塩素化剤を反応させることを特徴とするベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物の製造方法。
【化6】

(式中、置換基Rは、水素原子、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の環状のアルキル基、炭素数1〜8の鎖状のアルキルチオ基、炭素数3〜8の鎖状のアルケン基、フェニル基を表す。このフェニル基は、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜8の鎖状のアルキルチオ基、炭素数2〜8の鎖状のアルケン基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を置換基として有していてもよい。置換基Rは、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、フェニル基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を表す。Rが複数ある場合は、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、nは0または1〜4の整数である。)
【化7】

(式中、置換基Rは、水素原子、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の環状のアルキル基、炭素数1〜8の鎖状のアルキルチオ基、炭素数3〜8の鎖状のアルケン基、フェニル基を表す。このフェニル基は、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜8の鎖状のアルキルチオ基、炭素数2〜8の鎖状のアルケン基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を置換基として有していてもよい。置換基Rは、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、フェニル基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を表す。Rが複数ある場合は、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、nは0または1〜4の整数である。Mは陽イオンを示し、アルカリ金属イオン、及びアンモニウムイオンを表す。)
【請求項6】
上記請求項5において塩素化剤として塩化チオニル、三塩化リン、五塩化リン、オキシ塩化リンから選ばれる化合物を用いることを特徴とするベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物の製造方法。
【請求項7】
上記請求項5において、スルフィン酸塩化合物として下記一般式(D)で表される化合物を用いることを特徴とするベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物の製造方法。
【化8】

(式中、置換基Rは、水素原子、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の環状のアルキル基、炭素数1〜8の鎖状のアルキルチオ基、炭素数3〜8の鎖状のアルケン基、フェニル基を表す。このフェニル基は、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜8の鎖状のアルキルチオ基、炭素数2〜8の鎖状のアルケン基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を置換基として有していてもよい。置換基Rは、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、フェニル基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を表す。Rが複数ある場合は、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、nは0または1〜4の整数である。置換基R〜Rは、水素原子、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の環状のアルキル基、炭素数1〜8の鎖状のアルキルチオ基、炭素数2〜8の鎖状のアルケン基、フェニル基を表す。このフェニル基は、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜8の鎖状のアルキルチオ基、炭素数2〜8の鎖状のアルケン基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を置換基として有していてもよい。)
【請求項8】
上記請求項7において塩素化剤として塩化チオニル、三塩化リン、五塩化リン、オキシ塩化リンから選ばれる化合物を用いることを特徴とするベンゾイソチアゾリノン−1−オキシド化合物の製造方法。

【公開番号】特開2011−162465(P2011−162465A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25207(P2010−25207)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】