ベント部材を備えたセンサー
センサー(10)は、ハウジング(20)と、そのハウジング内部の少なくとも2つの電極(50、60、70)と、その電極間のイオン導電性を提供する電解質と、ベント部材(80)とを含む。このベント部材(80)は、ハウジングにおける流通口(24)を通って延びる部分(84)を含む第1セクション(82)を含む。また、ベント部材は、ハウジングの内部の少なくとも一部分を通って延びる第1セクションに接続される少なくとも1つの延伸部材(83)を含む。ベント部材の第1セクション(82)は、ガスがベント部材を通ってハウジングの内部からハウジングの外部に拡散し得るように多孔質である。センサーの内部からガスを排出する対応する方法も開示される。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本明細書において使用する用語は、本明細書において明確に別段に記述しない限り、なんらかの特定の狭義の解釈に限定されるようには意図されていない。本明細書において引用されるいかなる参考文献も、参照によって本願に組み込まれる。
【0002】
アンペロメトリック電気化学的ガスセンサーは、構造および操作においてバッテリおよび燃料電池に類似した電気化学的電池である。このため、これらの3つの装置はいくつかの構造を共通に有する。これには、(i)アノードまたはアノード隔室(ここで電気化学的酸化が生起する)、(ii)カソードまたはカソード隔室(ここで電気化学的還元が生起する)、(iii)導イオン性電解質(2つの電極間のイオンによる電気接触を維持する)、(iv)ハウジング(電極および電解質を閉囲する)、(v)接点または極(概して電極および外部回路間の金属電気接点である)、および、(vi)これらの装置と接続して用いられる外部電子回路、が含まれる。バッテリおよび燃料電池は、主として電源として機能し、それらが電気的に接続され得る回路に対して設計上の制限を設けることはほとんどない。アンペロメトリックガスセンサーは、適正に機能するために特定の駆動回路(例えばポテンシオスタット)を必要とする場合が多い。しかし、燃料電池と同様に機能するアンペロメトリックガスセンサーであって、目標ガスまたは被分析ガスが存在する場合にアノードおよびカソード間に流れる電流の測定方法のみを必要とするアンペロメトリックガスセンサーも存在する。
【0003】
バッテリは自己充足型の電気化学的エネルギー貯蔵および変換装置である。それは、アノードおよびカソードの両方が、異なる電気化学的エネルギーを有する相対的に大量の物質を含むか、あるいはそのような物質と緊密に電気接触するように構成される。バッテリのアノード極およびカソード極が電子回路に接続されると、有意義かつ有用な量の電流が電子回路に流れる。この電流の源泉は、アノードおよびカソード材料の電気化学的転化(酸化および還元)である。電気化学的な観点からは、バッテリは、それが、有用な寿命または電気エネルギー量を供給するのに十分なアノード材料およびカソード材料をもって製造されるという点で、自己充足的である。そのため、バッテリは通常しっかりと封止され、多くの設計において、バッテリは気密に封止される。バッテリの一般的な例には、ルクランシェ電池(「乾」電池)およびプランテ電池(鉛蓄電池)が含まれる。
【0004】
一方、燃料電池は、アノード材料、カソード材料、あるいはその両者の外部供給を必要とする電気化学的エネルギー変換装置である。燃料電池の電極は、通常、本質的に電極触媒性のものである。この点で、燃料電池の電極は、電気化学的な活性表面を備え、電池の電気化学的反応を補助するが、その反応に化学的に実際に関与することはない。バッテリは、電気化学的に活性な電極材料が消尽されると一般的にその有効寿命が終息するが、燃料電池は、バッテリとは異なって、電気化学的な活性材料(アノード材料)および酸化剤(カソード材料)が装置に供給される限り連続的に作動するであろう。一般的な燃料電池の例は、グローブ電池もしくは水素−酸素燃料電池である。グローブ電池においては、水素が燃料であり、酸素が酸化剤である。
【0005】
アンペロメトリック電気化学的ガスセンサーは燃料電池の特殊な場合である。それは、通常、寸法が(発電用として用いられる燃料電池に比べて)小型であり、分析の対象となる目標ガス(すなわち被分析ガス)を燃料として用いるように設計される。目標ガスが存在しなければ、電極において生起するバルク電気化学的転化(ファラデー反応)が生じることはなく、従って、センサーに流れる電流は本質的にゼロである。被分析ガスが存在すると、それは電気化学的酸化または還元を受け、その結果としてファラデー電流が発生する。結果的に生じるこの電流が外部の駆動回路によって感知され、センサーの分析信号を提供する。通常、観察される電流は被分析ガスの濃度に正比例する。
【0006】
上記のように、バッテリと、燃料電池と、アンペロメトリック電気化学的ガスセンサーとは多くの点で類似している。しかし、アンペロメトリックガスセンサーの製造には、いくつかの特有の難点が存在する。第1に、バッテリとは異なって、被分析ガスのセルへの流入を可能にするガス流入口がなければならない。また、電流を電極表面から外部回路に伝送する接点または極も必要である。最後に、センサーは、多くの場合腐食性の高い酸または塩基の水溶液であるイオン性電解質を保持するように製造しなければならない。被分析ガスの流入と、生じる電流の捕集とを可能にしながら、アンペロメトリック電気化学的ガスセンサーを内部の液体電解質の漏洩に対して封止することは、電気化学的ガスセンサーの機械的設計の明らかに重要な特徴である。
【0007】
酸素センサーはアンペロメトリック電気化学的ガスセンサーの特殊な場合である。通常、電気化学的酸素センサーは、貴金属の作用電極と、通常鉛または亜鉛の犠牲金属アノードとを含む。このタイプのセンサーは、多様な用途における酸素濃度の検出用および測定用として多年にわたって使用されてきた。鉛ベースのセンサーは、寿命の制限および毒性金属の使用を含むいくつかの欠点を免れない。
【0008】
それにも拘らず、酸素センサーの犠牲金属アノードは通常鉛アノードである。センサーに流入する酸素が作用電極において還元される一方、鉛アノードは酸化鉛に酸化される。センサーは、センサー内に電気化学的にアクセス可能な鉛が存在する限り作動する。稼働寿命を延ばすためには、鉛含有量を増大するか、あるいは酸素の流入量を低減しなければならない。センサーの寿命を増大するためのこれらの方策のそれぞれに、利点および欠点がある。しかし、いかなる場合にも、センサーの寿命はセンサー内に存在する鉛の量によって決まり、その鉛の量は製造時に決定される。
【0009】
近年、一般的に「酸素ポンプ」センサーと呼称される新しいタイプの酸素センサーが開示された。酸素ポンプセンサーは犠牲卑金属アノードを含まない。その代りに、酸素ポンプセンサーは電極触媒アノードまたはカウンタ電極を含む。センサーに流入する酸素は作用電極において酸化物イオンに還元される。同時に、電解質がカウンタ電極において酸化され、分子ベースで1対1で、酸素が生成される。このタイプの酸素センサーは、犠牲アノードを含むセンサーよりも遥かに長い有効稼働寿命を有することができる。しかし、酸素ポンプセンサーの適正な作動を確保するためには、カウンタ電極で生成される酸素を除去する必要がある。酸素が効率的に除去されなければ、内部で生成される酸素がセンサーに圧力を加えて作用電極へ入り込み、その結果、センサーの分析信号に影響が及ぶ可能性がある。さらに、内部圧力が上昇すると、液体の電解質がセンサーハウジングの内部部分から漏出することがある。
【0010】
酸素ポンプの原理に基づいて作動する種々のセンサーが開発されてきた。これらのセンサーは、発生した酸素を排出するベントシステムを構成するために、薄い多孔質の疎水性膜を含んでいる。この膜ベースのベントシステムは、センサーハウジングの内部から酸素を排出する拡散通路を形成できる一方で、センサーハウジングは、薄い多孔質の疎水性膜によって覆われた流通口または孔を含まなければならない。このような孔または流通口には、電解質漏出の可能性が増大するというリスクが伴う。さらに、膜ベースのベントシステムの効率的な機能または作動は、センサーの方向によって影響を受ける可能性がある。例えば、特定の方向においては、膜の内面が液体電解質によって完全に濡らされるか、あるいは膜の内面に液体電解質が接触することがあり、これは、ガスを排出する膜の働きに重大な悪影響を及ぼす可能性がある。2つ以上の流通口/膜ベントを異なる位置に設けると、位置または方向による影響を低減できるが、液体電解質がセンサーから漏出する可能性が増大することがあり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様において、センサーは、ハウジングと、そのハウジング内部の少なくとも2つの電極と、その電極間のイオン導電性を提供する電解質と、ベント部材とを含む。このベント部材は、ハウジングにおける流通口を通って延びる部分を含む第1セクションを含み、この流通口を通って延びる部分は、ハウジングの内部の少なくとも一部分を通って延びる第1セクションに接続される。ベント部材の第1セクションは、ガスがベント部材を通ってハウジングの内部からハウジングの外部に拡散し得るように、多孔質である。ベント部材は、例えば、それを透過する電解質の流れに抵抗できる。
【0012】
いくつかの実施態様においては、ベント部材が、さらに、流通口を通って延びる部分に接続される第2セクションを含む。この第2セクションは、例えば多孔質とすることができ、例えば、ハウジングの外面に取り付けることが可能である。第2セクションは、例えば、流通口を覆うために流通口の周囲を超えて広がることができる。第2セクションは、例えば、流通口を通って延びる部分に対してある角度で延びることができる。いくつかの実施態様においては、第2セクションは、流通口を通って延びる部分に対して概ね垂直に延びる。
【0013】
第1セクションおよび第2セクションは、それらを透過するガスの拡散通路を設けるために、例えば、ポリマー材料の個々の粒子からモノリシックに形成できる。
【0014】
延伸部材は、(流通口を通って延びる部分および第2セクションも同様に)例えば、ポリマー材料の個々の粒子から成形することが可能である。個々の粒子の少なくとも一部分は、例えば、ポリテトラフルオロエチレンを含む、あるいはそれから形成できる。
【0015】
いくつかの実施態様においては、少なくともベント部材の延伸部材が、疎水性、疎油性、または多疎性である。
【0016】
延伸部材は、例えば、ハウジングの内部の延伸部材の表面積に電解質が完全には接触できないように、ハウジングの内部を通って延びることができる。
【0017】
作用電極は、例えば、酸素を酸化物イオンに還元するように調整することができ、センサーは、例えば、酸素を感知するように調整することができる。
【0018】
別の態様においては、ハウジングと、ハウジング内部の少なくとも2つの電極と、電極間のイオン導電性を提供する電解質とを含むセンサーの内部からガスを排出する方法が、ハウジングにおける流通口を通って延びる部分と、その流通口を通って延びる部分に接続される少なくとも1つの延伸部材とを含む第1セクションを含むベント部材を設けることを含む。この延伸部材は、ハウジングの内部の一部分を少なくとも部分的に通って延びており、第1セクションは、ガスがベント部材を通ってハウジングの内部からハウジングの外部に拡散し得るように、多孔質である。
【0019】
さらに別の態様においては、コンテナがハウジングおよびベント部材を含み、このベント部材は、ハウジングにおける流通口を通って延びる部分であって、ハウジングの内部の少なくとも一部分を通って延びる少なくとも1つの延伸部材に接続される部分を含む第1セクションを含む。この第1セクションは、ガスがハウジングの内部からハウジングの外部に拡散し得るように、多孔質である。ベント部材の第1セクションは、例えば、それを透過する液体の流れに抵抗できる。
【0020】
ベント部材は、例えば、通路を通って延びる部分に接続される第2セクションをさらに含むことができる。この第2セクションは、例えば、多孔質とすることができ、かつ、例えば、ハウジングの外面に取り付けることが可能である。
【0021】
いくつかの実施態様においては、延伸部材が、ハウジングの内部におけるその延伸部材の表面積にハウジング内部の液体が完全には接触し得ないように、ハウジングの内部を通って延びる。液体は、例えば、電解質を含むことができる。第2セクションは、例えば、流通口を通って延びる部分に対してある角度で延びることができる。
【0022】
いくつかの実施態様においては、第1セクションおよび第2セクションが、ポリマー材料の個々の粒子からモノリシックに形成される。
【0023】
本明細書に記述するベント部材は、センサー(または他の)ハウジングにおける複数の流通口の形成に伴う電解質漏出の可能性を増大することなく、位置依存性または方向依存性を低減し、センサー(または他の)ハウジングの内部からガス(例えば酸素)を排出するための堅牢かつ効率的なシステムを提供する。
【0024】
本明細書に記述する装置、システムおよび/または方法は、その属性および付帯的利点と共に、添付の図面と関連付けて記述される以下の詳細な説明を参照することによって、最もよく認識されかつ理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1A】ベント部材を含むセンサーの実施態様の側断面図を示す。
【図1B】ベント部材がセンサーハウジングから分離された状態の図1Aのセンサーの斜視図を示す。
【図2】図1の延伸ベント部材の側面図を示す。
【図3】図1のベント部材の正面図を示す。
【図4】図1のベント部材の斜視図を示す。
【図5】図1のベント部材の別の側面図を示す。
【図6】ベント部材の一実施態様の一部分の顕微鏡写真を示す。
【図7】ベント部材の別の実施態様の斜視図を示す。
【図8A】ベント部材のさらに別の実施態様を示す。
【図8B】ベント部材のさらに別の実施態様を示す。
【図8C】ベント部材のさらに別の実施態様を示す。
【図9】ベント部材を含む酸素ポンプセンサーの一実施態様の代表的な試験研究結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書および添付の請求項において使用する単数形の「a」、「an」および「the」は、その文脈がそうでないことを明確に表明していない限り、複数形に関する言及を含む。従って、例えば、「延伸部材(an extending member)」への言及は、複数のそのような延伸部材、および当業者に知られるその均等物などを含み、「延伸部材(the extending member)」への言及は、1つ以上のそのような延伸部材、および当業者に知られるその均等物などへの言及である。
【0027】
いくつかの実施態様において、ベント部材は少なくとも第1セクションを含み、この第1セクションは、例えばセンサーのハウジング内部に延びる少なくとも1つの3次元の部材または構造を含んで、ハウジング内部からハウジングの外部への、1種以上のガスのためのベント通路を提供する。
【0028】
1つまたは複数の延伸部材の寸法および形状は、任意の適切な方法で定めることができる。いくつかの実施態様においては、延伸部材は、ガスがハウジングから流出するためのベント通路を提供する延伸部材の機能が、ハウジングの位置または方向から重大な影響を受けないような態様で、ハウジングを通って延びる。この点で、いくつかの実施態様においては、延伸部材が、センサーハウジングの位置または方向に関係なく、ハウジング内部の延伸部材の部分の全表面にわたって、電解質が延伸部材の表面を濡らすかまたはそれに接触することがないように、ハウジングを通って延びる。その際、延伸部材の少なくとも一部分がセンサーハウジング内部のガスの塊(例えば気泡)に接触すると、延伸部材は、センサーハウジングの内部からガスを排出するようにさらに効率的に機能する。延伸部材は、例えば、ハウジングを通っていかなる方向にも、例えば、概ね直線状におよび/または概ね曲線状に延びることができる。
【0029】
ベント部材は、例えば、ハウジングとは別個に製造して、それと組み合わせることができる。また、ベント部材は、センサーハウジングの部品またはその一部分として機能することもできる。
【0030】
延伸部材は、例えば、多孔質のポリマー材料またはプラスチック材料を含むか、あるいはそれらの材料から形成することができる。水性電解質の場合には、延伸部材の多孔質ポリマーまたは他の材料は、それを透過する水性電解質のいかなる流れをも最小化または除去するために、概して本質的に疎水性のものとすることができる。非水性電解質(例えば有機電解質)の場合には、多孔質プラスチックまたは他の材料は、それを透過する非水性電解質のいかなる流れをも最小化または除去するために、概して本質的に疎油性のものとすることができる。多孔質プラスチック材料は、疎水性かつ疎油性のものとすることも可能である。このような材料は「多疎性(multiphobic)」と呼称される。延伸部材は、それを透過する液体電解質の流れまたは漏出を最小化または除去するために、化学的に、あるいは他の方法で処理することも可能である。
【0031】
概して、本明細書で用いる「疎水性(hydrophobic)」という用語は、電気化学的センサーの内部で発生する圧力において水による濡れに対して実質的にまたは完全に抵抗性を示す材料(従って、延伸部材の場合には、それを透過する水性電解質の流れを制限する材料)のことを言う。概して、本明細書で用いる「疎油性(oleophobic)」という用語は、電気化学的センサーの内部で発生する圧力において、非水性電解質系のような低表面張力の液体による濡れに対して実質的にまたは完全に抵抗性を示す材料(従って、延伸部材の場合には、それを透過する非水性電解質の流れを制限する材料)のことを言う。ここで用いる「低表面張力の液体(low−surface tension liquids)」という用語は、概して、水より低い表面張力を有する液体のことを言う。疎水性、疎油性および多疎性の材料については、例えば、米国特許第5,944,969号明細書において検討されている。
【0032】
また、延伸部材の材料(例えば多孔質プラスチック材料)は、電気化学的センサーが通常使用される条件の下で、実質的に化学的かつ熱的に不活性であることが望ましい。
【0033】
いくつかの実施態様においては、延伸部材が多孔質のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)から形成された。しかし、例えば、多孔性、疎水性および/または疎油性に関する所望の特性を有する任意のポリマー材料または他の材料を使用できる。
【0034】
上記のように、1つまたは複数の延伸部材は、事実上任意の形状のものとすることができる。試験研究した形状は円形または長方形断面のロッドを含んでいたが、概して任意の断面形状を有する1つまたは複数の延伸部材を使用できる。いくつかの試験研究においては、部材または形状が、予備成形されたロッドから、またはシート材から切断加工された。複雑な3次元の形状は、例えば、個々のポリマー粒子を所望の3次元構造に成形することによって製造できる。いくつかの実施態様においては、成形または焼結ポリマー構造が、20〜200μmの範囲の粒子サイズ(直径)を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子から形成された。いくつかの実施態様においては、粒子を篩い分け処理して、150μmより小さい、あるいは108μmより小さい、あるいは90μmより小さい粒子サイズ/直径を有するように分級した。結果的に得られた3次元構造は0.5μm以下の有効細孔径を有していた。
【0035】
焼結ポリマー構造の場合には、ポリマー粒子を、例えば、ガラス転移温度(Tg)を超えているが融解温度(Tm)未満の温度に加熱できる。ガラス転移温度を超えて加熱される間、ポリマー粒子は相互に付着する。粒子間の間隙間隔または容積によって、制御された多孔性が提供される。いくつかの実施態様においては、付着および/または成形を容易にするため、加熱されたポリマー粒子に圧力を印加できる。ポリマー粒子は、所望の3次元要素を得るために、事実上任意の形状の型内で焼結することが可能である。
【0036】
代わりの方式として、開放セル発泡体を形成することが可能である。開放セル発泡体においては、細孔は結合され、相互結合された多孔質ネットワークが形成される。例えば、ポリウレタンおよび/またはポリ尿素発泡体を、重合の間に、水のような発泡剤を用いて形成できる。
【0037】
いくつかの代表的な試験研究において、PTFE粒子の焼結によって形成された多孔質の延伸部材を含むベント部材が、例えば、熱かしめ、超音波溶接、レーザ溶接、接着および射出成形を含む多様な方法によって、センサーハウジングの中に組み込まれた。当業者には明らかなように、ベント部材をセンサーハウジングの中に取り付けるまたは組み込む他の方法も適している。すべての試験研究において、3次元の多孔質ポリマー製延伸部材を含むベント部材が、電解質漏出を阻止するセンサーハウジングの堅牢さを維持しながら、効率的かつ効果的なガス拡散通路を提供した。
【0038】
図1Aおよび1Bは、ハウジング20を含むセンサー10の一実施態様を示す。センサー支持部材30がハウジング20の内部に配置され、そのことにより、例えば少なくとも2つの電極(例えば作用電極およびカウンタ電極)を支持することができる。支持部材30は、例えば、当分野で知られる基準電極を含む1つ以上の他の電極を支持することができる。一般的に、基準電極は、作用電極を既知の電圧または電位に維持するために用いられる。被分析ガスは、流入流通口22からハウジング20に流入できる。
【0039】
電解質は、例えば、センサー分野で知られるウィッキング材料40であって、センサー支持材30によって支持されるウィッキング材料40(図1Aにおいては模式的に表現されている)に、少なくとも部分的に吸収させることができる。電解質は、電極50、60および70(例えば、作用または感知電極、基準電極およびカウンタ電極)の間のイオン導電性を提供する。ウィッキング材料40は、電極50、60および70を物理的に分離してそれらの間の短絡回路を防止するようにも作用する。センサーハウジング20は、例えば、(図1の方向において)センサー支持材30の下に、例えば、吸湿性の電解質の場合に水分を吸収した結果として電解質の容積が増大した場合にも、電解質に対して付加的な容積を提供するための保留容積を含む。
【0040】
図1Aおよび1Bの実施態様においては、ベント部材80が、ハウジング20の内部容積の少なくとも一部分を通って延びる(すなわち、延びる長さを有する)少なくとも1つの延伸部材83を含む第1セクション82を含む。上記のように、第1延伸部材83は、延伸部材83の表面積全体に電解質が接触すること、あるいは表面積全体が電解質によって濡らされることがないようにハウジング20を通って延びることができる。従って、図1Aおよび1Bの実施態様(並びに他の実施態様)においては、方向または位置とは無関係なガス排出が実現され、その場合、ガス排出用の単一の流通口(すなわち流通口24)だけがハウジング20に形成される。このため、延伸部材83の少なくとも一部分がガスの容積と接触した状態で保たれ、このことは、ガス(例えば、酸素ポンプタイプのセンサーの場合は酸素)を除去するためのその効率的な作動を維持するのに役立つ。酸素ポンプセンサーのいくつかの実施態様においては、延伸部材83が、カウンタ電極から流入流通口22への拡散通路よりもカウンタ電極から延伸部材83への拡散通路の方が容易になるように配置される。
【0041】
ベント部材80は、図2〜5にも表現されている。図示の実施態様においては、延伸部材83は概して円筒形状である。図示の実施態様においては、ベント部材80の第1セクション82は、ベント部材80がハウジング20と作動結合される場合に流通口24に隣接すると共にその流通口24を貫通して延びる部分84であって、延伸部材83に接続される部分84をも含む。部分84は、例えば、延伸部材83よりも大きな直径を有することができ、その寸法を、流通口24の直径よりも僅かに小さい直径を有するように定めることができる。いくつかの実施態様においては、(部分84および延伸部材83を含む)第1セクション80がモノリシックに形成された。
【0042】
図示の実施態様においては、ベント部材80は、さらに、第1セクション80の部分84に対して概ね垂直に延びる第2セクションまたは部材86を含む。第2セクション86は、例えば、ハウジング20の外部との適切な接続の形成を容易にすることができる。その際、第1セクション80の部分84は、上記のようにハウジング20の流通口24を貫通して延びており、1つまたは複数の延伸部材83と接続されている。図示の実施態様においては、第2セクション86は、部分84の直径より大きい幅を有しており(すなわち流通口24の直径または周囲を超えて広がっており)、流通口24を覆って(液体電解質の脱出の可能性を抑えるための)シールを形成すると共に、ハウジング20との確実な係合あるいはベント部材80のハウジング20との接続を確保するための表面積を提供する。第2セクション86は、例えば、熱かしめ、超音波溶接、レーザ溶接、接着、射出成形によって、あるいは任意の他の適切な取り付け方法を介して、ハウジング20に取り付けることができる。ハウジング20へのベント部材80の取り付け方法がいかなるものであれ、ガスをハウジング20の内部からその外部に排出するための、ベント部材80によって設けられる拡散通路を破壊しないように注意しなければならない。図1Bに示すように、ハウジング20は、例えば、第2部材84を受け入れてそれを載せる座26を含むことができる。
【0043】
図示の実施態様においては、第2セクション86は、部分84に対してある角度で(図示の実施態様においては垂直に)延びており、これによって、流通口24を覆うことと、ハウジング20の表面に合致しかつその表面との結合を形成する表面積を設けることとが容易になる。図示の実施態様においては、第2セクション86は、概して長方形でフラットな材料のリボンとして形成される。上記のように、概してフラットな第2セクション86によって、ハウジング20との結合が容易になる。
【0044】
延伸部材83およびその部分84を含む第1セクション82と第2セクション86とのそれぞれは、例えば、多孔質材料であって、それを通じた電解質の通過を防止しながら、それを透過してガス(例えば酸素)を拡散させるような材料から形成できる。いくつかの実施態様においては、第1セクション82および第2セクション86が、そのような多孔質材料から一体的にまたはモノリシックに形成された。代わりの方式として、例えば、第1セクション82を別個に形成して第2セクション86に取り付けることができる。同様に、例えば、延伸部材83を部分84とは別個に形成してそれに取り付けることができる。しかし、取り付けの間には、ベント部材80を透過する拡散通路が確実に保持されるように注意しなければならない。いくつかの実施態様においては、ベント部材20は、疎水性の多孔質構造を形成するように成形されたPTFE粒子からモノリシックに形成された。約100μmの最大粒子サイズを有するPTFEの成形された粒子から形成されたベント部材の一部分の顕微鏡写真を図6に示す。
【0045】
図7は、ハウジング20との結合に用いるベント部材80’の別の実施態様を示す。図7の実施態様においては、第1セクション82’が、テーパ形状を有する延伸部材83’を含む。すなわち、延伸部材83’の直径が、第2セクション86’に接続されるその第1端部において、その第2端部または末端端部におけるよりも大きい。第2セクション86’に近接する延伸部材83’の部分は、ベント部材80’がハウジング20と作動結合されると、ハウジング20における流通口24を貫通する。延伸部材83’および第2セクション86’の接合部における延伸部材83’の直径は、例えば、流通口24の直径よりも僅かに小さくなるように定めることができる。第1セクション82’および第2セクション86’は、例えば、上記のようにモノリシックに形成することが可能である。
【0046】
図8Aおよび8Bは、それぞれ、ベント部材80aおよび80bの代替的な実施態様を示す。このベント部材80aおよび80bは、それぞれ、少なくとも第1セクション82aおよび82bを含み、この第1セクション82aおよび82bは、センサーハウジング20のようなセンサーハウジングの内部を通って曲線状に延びる延伸部材83aおよび83bを有する。ベント部材80aおよび80bの部分または部材84aおよび84bは、それぞれ、ガスをセンサーハウジングの内部からセンサーハウジングの外部に排出するように、センサーハウジングにおける流通口を貫通して延びている。ベント部材80aおよび80bは、さらに、(ベント部材80の第2セクション86に類似の、あるいはそれと同じ)第2部材またはセクションを含むことができる。この第2部材またはセクションは、ハウジングの外面と連携して、ハウジングと共に(液体)シールの形成を容易にし、かつハウジングへの十分な結合または取り付けの形成を容易にする。
【0047】
図8Aおよび8Bの実施態様においては、延伸部材83aおよび83bは閉ループを形成している。図8Cはさらに別の実施態様のベント部材80cを示すが、このベント部材80cは、少なくとも、センサーハウジング20のようなセンサーハウジングの内部を通って曲線状(例えば、カンチレバー状)に延びる複数の延伸部材83cを有する第1セクション82cを含んでいる。ベント部材80cの部分または部材84cは、ガスをセンサーハウジングの内部からセンサーハウジングの外部に排出するように、センサーハウジングにおける流通口を貫通して延びている。
【0048】
図8A〜8Cに示される延伸部材は、例えばセンサーハウジング20の内部においてほぼ横方向に延びているが、その延伸部材は、そのハウジング内部において縦方向に延びることも可能である。さらに、そのベント部材の1つ以上の延伸部材(1つ以上のその部分)は、例えば、1つ以上の面または方向に延びる分岐構造を有することができる。
【0049】
図9は、上記のようなベント部材80を含む酸素ポンプセンサーの一実施態様に関する代表的な試験研究の結果を示す。この試験研究の酸素ポンプセンサーの実施態様においては、作用電極、カウンタ電極および基準電極は、それぞれ、多孔質のPTFE膜の片面に塗布された白金(Pt)黒を含んでいた。各膜は支持構造として機能し、作用電極の場合には、Pt黒と共に、アンペロメトリックガスセンサー分野において知られるガス拡散電極を形成した。作用電極は、外部のポテンシオスタット回路によって、基準電極に対して−600mVの電位に保持された。
【0050】
図9は、センサーを空気流れおよび窒素(N2)流れ(すなわちガスはゼロ容積%の酸素を含む)に曝露した場合の試験研究の典型的な結果を示す。実験においては、空気(20.8容積%のO2を含む)を約250mL/分の流量でセンサーに流した。図9の5分の標識点において、流れを突然N2(すなわち0.0容積%のO2のガス)に切り替えた。図9の10分の標識点において、流れを突然空気(20.8容積%のO2含有量)に戻した。表1はこのようなセンサーの典型的な性能特性を表している。
【表1】
【0051】
試験研究したセンサーの多孔質のベント部材は、効率的に作用してセンサーからガスを排出した。センサーからのガス排出が効率的に行われなければ、センサーは、実施された試験研究の期間に故障していたであろう。
【0052】
多孔質のベント部材は、一般的に、ガスを、(例えば、センサー、バッテリ等のコンテナ/ハウジングの内部からその外部に)排出しなければならないような(例えばセンサーやバッテリ内にある)任意のコンテナまたはハウジングと組み合わせて用いることができる。上記のように、コンテナまたはハウジングの内部は(電解質のような)液体を含むことができるが、その場合、このベント部材は、液体がコンテナの内部からその外部に流出することを抑えあるいはそれを防止するが、ガス排出用の拡散通路は確保するのである。
【0053】
以上の記述および添付の図面は現時点における実施態様を述べている。当然のことながら、当業者には、以上に述べた教示に照らして、以上の記述よりも以下の請求項によって示される本発明の範囲から逸脱することのない種々の修正、追加および代替的な設計が明らかになるであろう。請求項の意味および均等物の範囲内のすべての変更および変形は、この範囲内に含入されるべきである。
【0054】
関連出願の相互参照
本願は、米国仮特許出願第61/256,712号の利益を主張する。この仮特許出願の内容は参照によって本願に組み込まれる。
【背景技術】
【0001】
本明細書において使用する用語は、本明細書において明確に別段に記述しない限り、なんらかの特定の狭義の解釈に限定されるようには意図されていない。本明細書において引用されるいかなる参考文献も、参照によって本願に組み込まれる。
【0002】
アンペロメトリック電気化学的ガスセンサーは、構造および操作においてバッテリおよび燃料電池に類似した電気化学的電池である。このため、これらの3つの装置はいくつかの構造を共通に有する。これには、(i)アノードまたはアノード隔室(ここで電気化学的酸化が生起する)、(ii)カソードまたはカソード隔室(ここで電気化学的還元が生起する)、(iii)導イオン性電解質(2つの電極間のイオンによる電気接触を維持する)、(iv)ハウジング(電極および電解質を閉囲する)、(v)接点または極(概して電極および外部回路間の金属電気接点である)、および、(vi)これらの装置と接続して用いられる外部電子回路、が含まれる。バッテリおよび燃料電池は、主として電源として機能し、それらが電気的に接続され得る回路に対して設計上の制限を設けることはほとんどない。アンペロメトリックガスセンサーは、適正に機能するために特定の駆動回路(例えばポテンシオスタット)を必要とする場合が多い。しかし、燃料電池と同様に機能するアンペロメトリックガスセンサーであって、目標ガスまたは被分析ガスが存在する場合にアノードおよびカソード間に流れる電流の測定方法のみを必要とするアンペロメトリックガスセンサーも存在する。
【0003】
バッテリは自己充足型の電気化学的エネルギー貯蔵および変換装置である。それは、アノードおよびカソードの両方が、異なる電気化学的エネルギーを有する相対的に大量の物質を含むか、あるいはそのような物質と緊密に電気接触するように構成される。バッテリのアノード極およびカソード極が電子回路に接続されると、有意義かつ有用な量の電流が電子回路に流れる。この電流の源泉は、アノードおよびカソード材料の電気化学的転化(酸化および還元)である。電気化学的な観点からは、バッテリは、それが、有用な寿命または電気エネルギー量を供給するのに十分なアノード材料およびカソード材料をもって製造されるという点で、自己充足的である。そのため、バッテリは通常しっかりと封止され、多くの設計において、バッテリは気密に封止される。バッテリの一般的な例には、ルクランシェ電池(「乾」電池)およびプランテ電池(鉛蓄電池)が含まれる。
【0004】
一方、燃料電池は、アノード材料、カソード材料、あるいはその両者の外部供給を必要とする電気化学的エネルギー変換装置である。燃料電池の電極は、通常、本質的に電極触媒性のものである。この点で、燃料電池の電極は、電気化学的な活性表面を備え、電池の電気化学的反応を補助するが、その反応に化学的に実際に関与することはない。バッテリは、電気化学的に活性な電極材料が消尽されると一般的にその有効寿命が終息するが、燃料電池は、バッテリとは異なって、電気化学的な活性材料(アノード材料)および酸化剤(カソード材料)が装置に供給される限り連続的に作動するであろう。一般的な燃料電池の例は、グローブ電池もしくは水素−酸素燃料電池である。グローブ電池においては、水素が燃料であり、酸素が酸化剤である。
【0005】
アンペロメトリック電気化学的ガスセンサーは燃料電池の特殊な場合である。それは、通常、寸法が(発電用として用いられる燃料電池に比べて)小型であり、分析の対象となる目標ガス(すなわち被分析ガス)を燃料として用いるように設計される。目標ガスが存在しなければ、電極において生起するバルク電気化学的転化(ファラデー反応)が生じることはなく、従って、センサーに流れる電流は本質的にゼロである。被分析ガスが存在すると、それは電気化学的酸化または還元を受け、その結果としてファラデー電流が発生する。結果的に生じるこの電流が外部の駆動回路によって感知され、センサーの分析信号を提供する。通常、観察される電流は被分析ガスの濃度に正比例する。
【0006】
上記のように、バッテリと、燃料電池と、アンペロメトリック電気化学的ガスセンサーとは多くの点で類似している。しかし、アンペロメトリックガスセンサーの製造には、いくつかの特有の難点が存在する。第1に、バッテリとは異なって、被分析ガスのセルへの流入を可能にするガス流入口がなければならない。また、電流を電極表面から外部回路に伝送する接点または極も必要である。最後に、センサーは、多くの場合腐食性の高い酸または塩基の水溶液であるイオン性電解質を保持するように製造しなければならない。被分析ガスの流入と、生じる電流の捕集とを可能にしながら、アンペロメトリック電気化学的ガスセンサーを内部の液体電解質の漏洩に対して封止することは、電気化学的ガスセンサーの機械的設計の明らかに重要な特徴である。
【0007】
酸素センサーはアンペロメトリック電気化学的ガスセンサーの特殊な場合である。通常、電気化学的酸素センサーは、貴金属の作用電極と、通常鉛または亜鉛の犠牲金属アノードとを含む。このタイプのセンサーは、多様な用途における酸素濃度の検出用および測定用として多年にわたって使用されてきた。鉛ベースのセンサーは、寿命の制限および毒性金属の使用を含むいくつかの欠点を免れない。
【0008】
それにも拘らず、酸素センサーの犠牲金属アノードは通常鉛アノードである。センサーに流入する酸素が作用電極において還元される一方、鉛アノードは酸化鉛に酸化される。センサーは、センサー内に電気化学的にアクセス可能な鉛が存在する限り作動する。稼働寿命を延ばすためには、鉛含有量を増大するか、あるいは酸素の流入量を低減しなければならない。センサーの寿命を増大するためのこれらの方策のそれぞれに、利点および欠点がある。しかし、いかなる場合にも、センサーの寿命はセンサー内に存在する鉛の量によって決まり、その鉛の量は製造時に決定される。
【0009】
近年、一般的に「酸素ポンプ」センサーと呼称される新しいタイプの酸素センサーが開示された。酸素ポンプセンサーは犠牲卑金属アノードを含まない。その代りに、酸素ポンプセンサーは電極触媒アノードまたはカウンタ電極を含む。センサーに流入する酸素は作用電極において酸化物イオンに還元される。同時に、電解質がカウンタ電極において酸化され、分子ベースで1対1で、酸素が生成される。このタイプの酸素センサーは、犠牲アノードを含むセンサーよりも遥かに長い有効稼働寿命を有することができる。しかし、酸素ポンプセンサーの適正な作動を確保するためには、カウンタ電極で生成される酸素を除去する必要がある。酸素が効率的に除去されなければ、内部で生成される酸素がセンサーに圧力を加えて作用電極へ入り込み、その結果、センサーの分析信号に影響が及ぶ可能性がある。さらに、内部圧力が上昇すると、液体の電解質がセンサーハウジングの内部部分から漏出することがある。
【0010】
酸素ポンプの原理に基づいて作動する種々のセンサーが開発されてきた。これらのセンサーは、発生した酸素を排出するベントシステムを構成するために、薄い多孔質の疎水性膜を含んでいる。この膜ベースのベントシステムは、センサーハウジングの内部から酸素を排出する拡散通路を形成できる一方で、センサーハウジングは、薄い多孔質の疎水性膜によって覆われた流通口または孔を含まなければならない。このような孔または流通口には、電解質漏出の可能性が増大するというリスクが伴う。さらに、膜ベースのベントシステムの効率的な機能または作動は、センサーの方向によって影響を受ける可能性がある。例えば、特定の方向においては、膜の内面が液体電解質によって完全に濡らされるか、あるいは膜の内面に液体電解質が接触することがあり、これは、ガスを排出する膜の働きに重大な悪影響を及ぼす可能性がある。2つ以上の流通口/膜ベントを異なる位置に設けると、位置または方向による影響を低減できるが、液体電解質がセンサーから漏出する可能性が増大することがあり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様において、センサーは、ハウジングと、そのハウジング内部の少なくとも2つの電極と、その電極間のイオン導電性を提供する電解質と、ベント部材とを含む。このベント部材は、ハウジングにおける流通口を通って延びる部分を含む第1セクションを含み、この流通口を通って延びる部分は、ハウジングの内部の少なくとも一部分を通って延びる第1セクションに接続される。ベント部材の第1セクションは、ガスがベント部材を通ってハウジングの内部からハウジングの外部に拡散し得るように、多孔質である。ベント部材は、例えば、それを透過する電解質の流れに抵抗できる。
【0012】
いくつかの実施態様においては、ベント部材が、さらに、流通口を通って延びる部分に接続される第2セクションを含む。この第2セクションは、例えば多孔質とすることができ、例えば、ハウジングの外面に取り付けることが可能である。第2セクションは、例えば、流通口を覆うために流通口の周囲を超えて広がることができる。第2セクションは、例えば、流通口を通って延びる部分に対してある角度で延びることができる。いくつかの実施態様においては、第2セクションは、流通口を通って延びる部分に対して概ね垂直に延びる。
【0013】
第1セクションおよび第2セクションは、それらを透過するガスの拡散通路を設けるために、例えば、ポリマー材料の個々の粒子からモノリシックに形成できる。
【0014】
延伸部材は、(流通口を通って延びる部分および第2セクションも同様に)例えば、ポリマー材料の個々の粒子から成形することが可能である。個々の粒子の少なくとも一部分は、例えば、ポリテトラフルオロエチレンを含む、あるいはそれから形成できる。
【0015】
いくつかの実施態様においては、少なくともベント部材の延伸部材が、疎水性、疎油性、または多疎性である。
【0016】
延伸部材は、例えば、ハウジングの内部の延伸部材の表面積に電解質が完全には接触できないように、ハウジングの内部を通って延びることができる。
【0017】
作用電極は、例えば、酸素を酸化物イオンに還元するように調整することができ、センサーは、例えば、酸素を感知するように調整することができる。
【0018】
別の態様においては、ハウジングと、ハウジング内部の少なくとも2つの電極と、電極間のイオン導電性を提供する電解質とを含むセンサーの内部からガスを排出する方法が、ハウジングにおける流通口を通って延びる部分と、その流通口を通って延びる部分に接続される少なくとも1つの延伸部材とを含む第1セクションを含むベント部材を設けることを含む。この延伸部材は、ハウジングの内部の一部分を少なくとも部分的に通って延びており、第1セクションは、ガスがベント部材を通ってハウジングの内部からハウジングの外部に拡散し得るように、多孔質である。
【0019】
さらに別の態様においては、コンテナがハウジングおよびベント部材を含み、このベント部材は、ハウジングにおける流通口を通って延びる部分であって、ハウジングの内部の少なくとも一部分を通って延びる少なくとも1つの延伸部材に接続される部分を含む第1セクションを含む。この第1セクションは、ガスがハウジングの内部からハウジングの外部に拡散し得るように、多孔質である。ベント部材の第1セクションは、例えば、それを透過する液体の流れに抵抗できる。
【0020】
ベント部材は、例えば、通路を通って延びる部分に接続される第2セクションをさらに含むことができる。この第2セクションは、例えば、多孔質とすることができ、かつ、例えば、ハウジングの外面に取り付けることが可能である。
【0021】
いくつかの実施態様においては、延伸部材が、ハウジングの内部におけるその延伸部材の表面積にハウジング内部の液体が完全には接触し得ないように、ハウジングの内部を通って延びる。液体は、例えば、電解質を含むことができる。第2セクションは、例えば、流通口を通って延びる部分に対してある角度で延びることができる。
【0022】
いくつかの実施態様においては、第1セクションおよび第2セクションが、ポリマー材料の個々の粒子からモノリシックに形成される。
【0023】
本明細書に記述するベント部材は、センサー(または他の)ハウジングにおける複数の流通口の形成に伴う電解質漏出の可能性を増大することなく、位置依存性または方向依存性を低減し、センサー(または他の)ハウジングの内部からガス(例えば酸素)を排出するための堅牢かつ効率的なシステムを提供する。
【0024】
本明細書に記述する装置、システムおよび/または方法は、その属性および付帯的利点と共に、添付の図面と関連付けて記述される以下の詳細な説明を参照することによって、最もよく認識されかつ理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1A】ベント部材を含むセンサーの実施態様の側断面図を示す。
【図1B】ベント部材がセンサーハウジングから分離された状態の図1Aのセンサーの斜視図を示す。
【図2】図1の延伸ベント部材の側面図を示す。
【図3】図1のベント部材の正面図を示す。
【図4】図1のベント部材の斜視図を示す。
【図5】図1のベント部材の別の側面図を示す。
【図6】ベント部材の一実施態様の一部分の顕微鏡写真を示す。
【図7】ベント部材の別の実施態様の斜視図を示す。
【図8A】ベント部材のさらに別の実施態様を示す。
【図8B】ベント部材のさらに別の実施態様を示す。
【図8C】ベント部材のさらに別の実施態様を示す。
【図9】ベント部材を含む酸素ポンプセンサーの一実施態様の代表的な試験研究結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書および添付の請求項において使用する単数形の「a」、「an」および「the」は、その文脈がそうでないことを明確に表明していない限り、複数形に関する言及を含む。従って、例えば、「延伸部材(an extending member)」への言及は、複数のそのような延伸部材、および当業者に知られるその均等物などを含み、「延伸部材(the extending member)」への言及は、1つ以上のそのような延伸部材、および当業者に知られるその均等物などへの言及である。
【0027】
いくつかの実施態様において、ベント部材は少なくとも第1セクションを含み、この第1セクションは、例えばセンサーのハウジング内部に延びる少なくとも1つの3次元の部材または構造を含んで、ハウジング内部からハウジングの外部への、1種以上のガスのためのベント通路を提供する。
【0028】
1つまたは複数の延伸部材の寸法および形状は、任意の適切な方法で定めることができる。いくつかの実施態様においては、延伸部材は、ガスがハウジングから流出するためのベント通路を提供する延伸部材の機能が、ハウジングの位置または方向から重大な影響を受けないような態様で、ハウジングを通って延びる。この点で、いくつかの実施態様においては、延伸部材が、センサーハウジングの位置または方向に関係なく、ハウジング内部の延伸部材の部分の全表面にわたって、電解質が延伸部材の表面を濡らすかまたはそれに接触することがないように、ハウジングを通って延びる。その際、延伸部材の少なくとも一部分がセンサーハウジング内部のガスの塊(例えば気泡)に接触すると、延伸部材は、センサーハウジングの内部からガスを排出するようにさらに効率的に機能する。延伸部材は、例えば、ハウジングを通っていかなる方向にも、例えば、概ね直線状におよび/または概ね曲線状に延びることができる。
【0029】
ベント部材は、例えば、ハウジングとは別個に製造して、それと組み合わせることができる。また、ベント部材は、センサーハウジングの部品またはその一部分として機能することもできる。
【0030】
延伸部材は、例えば、多孔質のポリマー材料またはプラスチック材料を含むか、あるいはそれらの材料から形成することができる。水性電解質の場合には、延伸部材の多孔質ポリマーまたは他の材料は、それを透過する水性電解質のいかなる流れをも最小化または除去するために、概して本質的に疎水性のものとすることができる。非水性電解質(例えば有機電解質)の場合には、多孔質プラスチックまたは他の材料は、それを透過する非水性電解質のいかなる流れをも最小化または除去するために、概して本質的に疎油性のものとすることができる。多孔質プラスチック材料は、疎水性かつ疎油性のものとすることも可能である。このような材料は「多疎性(multiphobic)」と呼称される。延伸部材は、それを透過する液体電解質の流れまたは漏出を最小化または除去するために、化学的に、あるいは他の方法で処理することも可能である。
【0031】
概して、本明細書で用いる「疎水性(hydrophobic)」という用語は、電気化学的センサーの内部で発生する圧力において水による濡れに対して実質的にまたは完全に抵抗性を示す材料(従って、延伸部材の場合には、それを透過する水性電解質の流れを制限する材料)のことを言う。概して、本明細書で用いる「疎油性(oleophobic)」という用語は、電気化学的センサーの内部で発生する圧力において、非水性電解質系のような低表面張力の液体による濡れに対して実質的にまたは完全に抵抗性を示す材料(従って、延伸部材の場合には、それを透過する非水性電解質の流れを制限する材料)のことを言う。ここで用いる「低表面張力の液体(low−surface tension liquids)」という用語は、概して、水より低い表面張力を有する液体のことを言う。疎水性、疎油性および多疎性の材料については、例えば、米国特許第5,944,969号明細書において検討されている。
【0032】
また、延伸部材の材料(例えば多孔質プラスチック材料)は、電気化学的センサーが通常使用される条件の下で、実質的に化学的かつ熱的に不活性であることが望ましい。
【0033】
いくつかの実施態様においては、延伸部材が多孔質のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)から形成された。しかし、例えば、多孔性、疎水性および/または疎油性に関する所望の特性を有する任意のポリマー材料または他の材料を使用できる。
【0034】
上記のように、1つまたは複数の延伸部材は、事実上任意の形状のものとすることができる。試験研究した形状は円形または長方形断面のロッドを含んでいたが、概して任意の断面形状を有する1つまたは複数の延伸部材を使用できる。いくつかの試験研究においては、部材または形状が、予備成形されたロッドから、またはシート材から切断加工された。複雑な3次元の形状は、例えば、個々のポリマー粒子を所望の3次元構造に成形することによって製造できる。いくつかの実施態様においては、成形または焼結ポリマー構造が、20〜200μmの範囲の粒子サイズ(直径)を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子から形成された。いくつかの実施態様においては、粒子を篩い分け処理して、150μmより小さい、あるいは108μmより小さい、あるいは90μmより小さい粒子サイズ/直径を有するように分級した。結果的に得られた3次元構造は0.5μm以下の有効細孔径を有していた。
【0035】
焼結ポリマー構造の場合には、ポリマー粒子を、例えば、ガラス転移温度(Tg)を超えているが融解温度(Tm)未満の温度に加熱できる。ガラス転移温度を超えて加熱される間、ポリマー粒子は相互に付着する。粒子間の間隙間隔または容積によって、制御された多孔性が提供される。いくつかの実施態様においては、付着および/または成形を容易にするため、加熱されたポリマー粒子に圧力を印加できる。ポリマー粒子は、所望の3次元要素を得るために、事実上任意の形状の型内で焼結することが可能である。
【0036】
代わりの方式として、開放セル発泡体を形成することが可能である。開放セル発泡体においては、細孔は結合され、相互結合された多孔質ネットワークが形成される。例えば、ポリウレタンおよび/またはポリ尿素発泡体を、重合の間に、水のような発泡剤を用いて形成できる。
【0037】
いくつかの代表的な試験研究において、PTFE粒子の焼結によって形成された多孔質の延伸部材を含むベント部材が、例えば、熱かしめ、超音波溶接、レーザ溶接、接着および射出成形を含む多様な方法によって、センサーハウジングの中に組み込まれた。当業者には明らかなように、ベント部材をセンサーハウジングの中に取り付けるまたは組み込む他の方法も適している。すべての試験研究において、3次元の多孔質ポリマー製延伸部材を含むベント部材が、電解質漏出を阻止するセンサーハウジングの堅牢さを維持しながら、効率的かつ効果的なガス拡散通路を提供した。
【0038】
図1Aおよび1Bは、ハウジング20を含むセンサー10の一実施態様を示す。センサー支持部材30がハウジング20の内部に配置され、そのことにより、例えば少なくとも2つの電極(例えば作用電極およびカウンタ電極)を支持することができる。支持部材30は、例えば、当分野で知られる基準電極を含む1つ以上の他の電極を支持することができる。一般的に、基準電極は、作用電極を既知の電圧または電位に維持するために用いられる。被分析ガスは、流入流通口22からハウジング20に流入できる。
【0039】
電解質は、例えば、センサー分野で知られるウィッキング材料40であって、センサー支持材30によって支持されるウィッキング材料40(図1Aにおいては模式的に表現されている)に、少なくとも部分的に吸収させることができる。電解質は、電極50、60および70(例えば、作用または感知電極、基準電極およびカウンタ電極)の間のイオン導電性を提供する。ウィッキング材料40は、電極50、60および70を物理的に分離してそれらの間の短絡回路を防止するようにも作用する。センサーハウジング20は、例えば、(図1の方向において)センサー支持材30の下に、例えば、吸湿性の電解質の場合に水分を吸収した結果として電解質の容積が増大した場合にも、電解質に対して付加的な容積を提供するための保留容積を含む。
【0040】
図1Aおよび1Bの実施態様においては、ベント部材80が、ハウジング20の内部容積の少なくとも一部分を通って延びる(すなわち、延びる長さを有する)少なくとも1つの延伸部材83を含む第1セクション82を含む。上記のように、第1延伸部材83は、延伸部材83の表面積全体に電解質が接触すること、あるいは表面積全体が電解質によって濡らされることがないようにハウジング20を通って延びることができる。従って、図1Aおよび1Bの実施態様(並びに他の実施態様)においては、方向または位置とは無関係なガス排出が実現され、その場合、ガス排出用の単一の流通口(すなわち流通口24)だけがハウジング20に形成される。このため、延伸部材83の少なくとも一部分がガスの容積と接触した状態で保たれ、このことは、ガス(例えば、酸素ポンプタイプのセンサーの場合は酸素)を除去するためのその効率的な作動を維持するのに役立つ。酸素ポンプセンサーのいくつかの実施態様においては、延伸部材83が、カウンタ電極から流入流通口22への拡散通路よりもカウンタ電極から延伸部材83への拡散通路の方が容易になるように配置される。
【0041】
ベント部材80は、図2〜5にも表現されている。図示の実施態様においては、延伸部材83は概して円筒形状である。図示の実施態様においては、ベント部材80の第1セクション82は、ベント部材80がハウジング20と作動結合される場合に流通口24に隣接すると共にその流通口24を貫通して延びる部分84であって、延伸部材83に接続される部分84をも含む。部分84は、例えば、延伸部材83よりも大きな直径を有することができ、その寸法を、流通口24の直径よりも僅かに小さい直径を有するように定めることができる。いくつかの実施態様においては、(部分84および延伸部材83を含む)第1セクション80がモノリシックに形成された。
【0042】
図示の実施態様においては、ベント部材80は、さらに、第1セクション80の部分84に対して概ね垂直に延びる第2セクションまたは部材86を含む。第2セクション86は、例えば、ハウジング20の外部との適切な接続の形成を容易にすることができる。その際、第1セクション80の部分84は、上記のようにハウジング20の流通口24を貫通して延びており、1つまたは複数の延伸部材83と接続されている。図示の実施態様においては、第2セクション86は、部分84の直径より大きい幅を有しており(すなわち流通口24の直径または周囲を超えて広がっており)、流通口24を覆って(液体電解質の脱出の可能性を抑えるための)シールを形成すると共に、ハウジング20との確実な係合あるいはベント部材80のハウジング20との接続を確保するための表面積を提供する。第2セクション86は、例えば、熱かしめ、超音波溶接、レーザ溶接、接着、射出成形によって、あるいは任意の他の適切な取り付け方法を介して、ハウジング20に取り付けることができる。ハウジング20へのベント部材80の取り付け方法がいかなるものであれ、ガスをハウジング20の内部からその外部に排出するための、ベント部材80によって設けられる拡散通路を破壊しないように注意しなければならない。図1Bに示すように、ハウジング20は、例えば、第2部材84を受け入れてそれを載せる座26を含むことができる。
【0043】
図示の実施態様においては、第2セクション86は、部分84に対してある角度で(図示の実施態様においては垂直に)延びており、これによって、流通口24を覆うことと、ハウジング20の表面に合致しかつその表面との結合を形成する表面積を設けることとが容易になる。図示の実施態様においては、第2セクション86は、概して長方形でフラットな材料のリボンとして形成される。上記のように、概してフラットな第2セクション86によって、ハウジング20との結合が容易になる。
【0044】
延伸部材83およびその部分84を含む第1セクション82と第2セクション86とのそれぞれは、例えば、多孔質材料であって、それを通じた電解質の通過を防止しながら、それを透過してガス(例えば酸素)を拡散させるような材料から形成できる。いくつかの実施態様においては、第1セクション82および第2セクション86が、そのような多孔質材料から一体的にまたはモノリシックに形成された。代わりの方式として、例えば、第1セクション82を別個に形成して第2セクション86に取り付けることができる。同様に、例えば、延伸部材83を部分84とは別個に形成してそれに取り付けることができる。しかし、取り付けの間には、ベント部材80を透過する拡散通路が確実に保持されるように注意しなければならない。いくつかの実施態様においては、ベント部材20は、疎水性の多孔質構造を形成するように成形されたPTFE粒子からモノリシックに形成された。約100μmの最大粒子サイズを有するPTFEの成形された粒子から形成されたベント部材の一部分の顕微鏡写真を図6に示す。
【0045】
図7は、ハウジング20との結合に用いるベント部材80’の別の実施態様を示す。図7の実施態様においては、第1セクション82’が、テーパ形状を有する延伸部材83’を含む。すなわち、延伸部材83’の直径が、第2セクション86’に接続されるその第1端部において、その第2端部または末端端部におけるよりも大きい。第2セクション86’に近接する延伸部材83’の部分は、ベント部材80’がハウジング20と作動結合されると、ハウジング20における流通口24を貫通する。延伸部材83’および第2セクション86’の接合部における延伸部材83’の直径は、例えば、流通口24の直径よりも僅かに小さくなるように定めることができる。第1セクション82’および第2セクション86’は、例えば、上記のようにモノリシックに形成することが可能である。
【0046】
図8Aおよび8Bは、それぞれ、ベント部材80aおよび80bの代替的な実施態様を示す。このベント部材80aおよび80bは、それぞれ、少なくとも第1セクション82aおよび82bを含み、この第1セクション82aおよび82bは、センサーハウジング20のようなセンサーハウジングの内部を通って曲線状に延びる延伸部材83aおよび83bを有する。ベント部材80aおよび80bの部分または部材84aおよび84bは、それぞれ、ガスをセンサーハウジングの内部からセンサーハウジングの外部に排出するように、センサーハウジングにおける流通口を貫通して延びている。ベント部材80aおよび80bは、さらに、(ベント部材80の第2セクション86に類似の、あるいはそれと同じ)第2部材またはセクションを含むことができる。この第2部材またはセクションは、ハウジングの外面と連携して、ハウジングと共に(液体)シールの形成を容易にし、かつハウジングへの十分な結合または取り付けの形成を容易にする。
【0047】
図8Aおよび8Bの実施態様においては、延伸部材83aおよび83bは閉ループを形成している。図8Cはさらに別の実施態様のベント部材80cを示すが、このベント部材80cは、少なくとも、センサーハウジング20のようなセンサーハウジングの内部を通って曲線状(例えば、カンチレバー状)に延びる複数の延伸部材83cを有する第1セクション82cを含んでいる。ベント部材80cの部分または部材84cは、ガスをセンサーハウジングの内部からセンサーハウジングの外部に排出するように、センサーハウジングにおける流通口を貫通して延びている。
【0048】
図8A〜8Cに示される延伸部材は、例えばセンサーハウジング20の内部においてほぼ横方向に延びているが、その延伸部材は、そのハウジング内部において縦方向に延びることも可能である。さらに、そのベント部材の1つ以上の延伸部材(1つ以上のその部分)は、例えば、1つ以上の面または方向に延びる分岐構造を有することができる。
【0049】
図9は、上記のようなベント部材80を含む酸素ポンプセンサーの一実施態様に関する代表的な試験研究の結果を示す。この試験研究の酸素ポンプセンサーの実施態様においては、作用電極、カウンタ電極および基準電極は、それぞれ、多孔質のPTFE膜の片面に塗布された白金(Pt)黒を含んでいた。各膜は支持構造として機能し、作用電極の場合には、Pt黒と共に、アンペロメトリックガスセンサー分野において知られるガス拡散電極を形成した。作用電極は、外部のポテンシオスタット回路によって、基準電極に対して−600mVの電位に保持された。
【0050】
図9は、センサーを空気流れおよび窒素(N2)流れ(すなわちガスはゼロ容積%の酸素を含む)に曝露した場合の試験研究の典型的な結果を示す。実験においては、空気(20.8容積%のO2を含む)を約250mL/分の流量でセンサーに流した。図9の5分の標識点において、流れを突然N2(すなわち0.0容積%のO2のガス)に切り替えた。図9の10分の標識点において、流れを突然空気(20.8容積%のO2含有量)に戻した。表1はこのようなセンサーの典型的な性能特性を表している。
【表1】
【0051】
試験研究したセンサーの多孔質のベント部材は、効率的に作用してセンサーからガスを排出した。センサーからのガス排出が効率的に行われなければ、センサーは、実施された試験研究の期間に故障していたであろう。
【0052】
多孔質のベント部材は、一般的に、ガスを、(例えば、センサー、バッテリ等のコンテナ/ハウジングの内部からその外部に)排出しなければならないような(例えばセンサーやバッテリ内にある)任意のコンテナまたはハウジングと組み合わせて用いることができる。上記のように、コンテナまたはハウジングの内部は(電解質のような)液体を含むことができるが、その場合、このベント部材は、液体がコンテナの内部からその外部に流出することを抑えあるいはそれを防止するが、ガス排出用の拡散通路は確保するのである。
【0053】
以上の記述および添付の図面は現時点における実施態様を述べている。当然のことながら、当業者には、以上に述べた教示に照らして、以上の記述よりも以下の請求項によって示される本発明の範囲から逸脱することのない種々の修正、追加および代替的な設計が明らかになるであろう。請求項の意味および均等物の範囲内のすべての変更および変形は、この範囲内に含入されるべきである。
【0054】
関連出願の相互参照
本願は、米国仮特許出願第61/256,712号の利益を主張する。この仮特許出願の内容は参照によって本願に組み込まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジング内部の少なくとも2つの電極と、
前記電極間のイオン導電性を提供する電解質と、
前記ハウジングにおける流通口を通って延びる部分であり、前記ハウジングの内部の少なくとも一部分を通って延びる少なくとも1つの延伸部材に接続された部分を有する第1セクションを備えるベント部材であって、前記第1セクションは、ガスが前記ベント部材を通って前記ハウジングの内部から前記ハウジングの外部に拡散し得るように多孔質であるベント部材と、
を備えるセンサー。
【請求項2】
前記ベント部材が、それを透過する電解質の流れに抵抗する、請求項1に記載のセンサー。
【請求項3】
前記ベント部材が、さらに、前記流通口を通って延びる部分に接続される第2セクションを備え、該第2セクションは多孔質であり、かつ前記ハウジングの外面に取り付けられる、請求項1に記載のセンサー。
【請求項4】
前記第2セクションが、前記流通口を覆うために前記流通口の周囲を超えて広がる、請求項3に記載のセンサー。
【請求項5】
前記第2セクションが、前記流通口を通って延びる部分に対してある角度で延びる、請求項4に記載のセンサー。
【請求項6】
前記第2セクションが、前記流通口を通って延びる部分に対して概ね垂直に延びる、請求項5に記載のセンサー。
【請求項7】
前記第1セクションおよび前記第2セクションが、それらを透過するガスの拡散通路を提供するために、ポリマー材料の個々の粒子からモノリシックに形成される、請求項4に記載のセンサー。
【請求項8】
前記少なくとも1つの延伸部材がポリマー材料の個々の粒子から成形される、請求項1に記載のセンサー。
【請求項9】
少なくとも前記ベント部材の延伸部材が、疎水性、または疎油性、または多疎性有する、請求項8に記載のセンサー。
【請求項10】
前記第1セクションおよび前記第2セクションがポリマー材料の個々の粒子からモノリシックに形成される、請求項5に記載のセンサー。
【請求項11】
前記個々の粒子の少なくとも一部分がポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項10に記載のセンサー。
【請求項12】
前記少なくとも1つの延伸部材が、前記ハウジングの内部における前記少なくとも1つの延伸部材の表面積に電解質が完全には接触し得ないように、前記ハウジングの内部を通って延びる、請求項1に記載のセンサー。
【請求項13】
前記作用電極が酸素を酸化物イオンに還元するように調整され、前記センサーが酸素を感知するように調整される、請求項1に記載のセンサー。
【請求項14】
ハウジングと、前記ハウジング内部の少なくとも2つの電極と、前記電極間のイオン導電性を提供する電解質とを備えるセンサーの内部からガスを排出する方法であって、
前記ハウジングにおける流通口を通って延びる部分と、前記流通口を通って延びる部分に接続される少なくとも1つの延伸部材であり前記ハウジングの内部の一部分を少なくとも部分的に通って延びる延伸部材とを有する第1セクションを備えるベント部材を設けることであって、前記第1セクションは、ガスが前記ベント部材を通って前記ハウジングの内部から前記ハウジングの外部に拡散し得るように多孔質であるベント部材を設けること、
を含む方法。
【請求項15】
ハウジングと、
前記ハウジングにおける流通口を通って延びる部分であり、前記ハウジングの内部の少なくとも一部分を通って延びる少なくとも1つの延伸部材に接続される部分を有する第1セクションを備えるベント部材であって、前記第1セクションは、ガスが前記ハウジングの内部から前記ハウジングの外部に拡散し得るように多孔質であるベント部材と、
を備えるコンテナ。
【請求項16】
前記第1セクションがそれを透過する液体の流れに抵抗する、請求項15に記載のコンテナ。
【請求項17】
前記ベント部材が、前記流通口を通って延びる部分に接続される第2セクションをさらに備え、前記第2セクションは多孔質であり、かつ、前記ハウジングの外面に取り付けられる、請求項15に記載のコンテナ。
【請求項18】
前記少なくとも1つの延伸部材が、前記ハウジングの内部における前記少なくとも1つの延伸部材の表面積に前記ハウジング内部の液体が完全には接触し得ないように、前記ハウジングの内部を通って延びる、請求項15に記載のコンテナ。
【請求項19】
前記液体が電解質を含む、請求項18に記載のコンテナ。
【請求項20】
前記第2セクションが、前記流通口を通って延びる部分に対してある角度で延びる、請求項17に記載のコンテナ。
【請求項21】
前記第1セクションおよび前記第2セクションが、ポリマー材料の個々の粒子からモノリシックに形成される、請求項20に記載のセンサー。
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジング内部の少なくとも2つの電極と、
前記電極間のイオン導電性を提供する電解質と、
前記ハウジングにおける流通口を通って延びる部分であり、前記ハウジングの内部の少なくとも一部分を通って延びる少なくとも1つの延伸部材に接続された部分を有する第1セクションを備えるベント部材であって、前記第1セクションは、ガスが前記ベント部材を通って前記ハウジングの内部から前記ハウジングの外部に拡散し得るように多孔質であるベント部材と、
を備えるセンサー。
【請求項2】
前記ベント部材が、それを透過する電解質の流れに抵抗する、請求項1に記載のセンサー。
【請求項3】
前記ベント部材が、さらに、前記流通口を通って延びる部分に接続される第2セクションを備え、該第2セクションは多孔質であり、かつ前記ハウジングの外面に取り付けられる、請求項1に記載のセンサー。
【請求項4】
前記第2セクションが、前記流通口を覆うために前記流通口の周囲を超えて広がる、請求項3に記載のセンサー。
【請求項5】
前記第2セクションが、前記流通口を通って延びる部分に対してある角度で延びる、請求項4に記載のセンサー。
【請求項6】
前記第2セクションが、前記流通口を通って延びる部分に対して概ね垂直に延びる、請求項5に記載のセンサー。
【請求項7】
前記第1セクションおよび前記第2セクションが、それらを透過するガスの拡散通路を提供するために、ポリマー材料の個々の粒子からモノリシックに形成される、請求項4に記載のセンサー。
【請求項8】
前記少なくとも1つの延伸部材がポリマー材料の個々の粒子から成形される、請求項1に記載のセンサー。
【請求項9】
少なくとも前記ベント部材の延伸部材が、疎水性、または疎油性、または多疎性有する、請求項8に記載のセンサー。
【請求項10】
前記第1セクションおよび前記第2セクションがポリマー材料の個々の粒子からモノリシックに形成される、請求項5に記載のセンサー。
【請求項11】
前記個々の粒子の少なくとも一部分がポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項10に記載のセンサー。
【請求項12】
前記少なくとも1つの延伸部材が、前記ハウジングの内部における前記少なくとも1つの延伸部材の表面積に電解質が完全には接触し得ないように、前記ハウジングの内部を通って延びる、請求項1に記載のセンサー。
【請求項13】
前記作用電極が酸素を酸化物イオンに還元するように調整され、前記センサーが酸素を感知するように調整される、請求項1に記載のセンサー。
【請求項14】
ハウジングと、前記ハウジング内部の少なくとも2つの電極と、前記電極間のイオン導電性を提供する電解質とを備えるセンサーの内部からガスを排出する方法であって、
前記ハウジングにおける流通口を通って延びる部分と、前記流通口を通って延びる部分に接続される少なくとも1つの延伸部材であり前記ハウジングの内部の一部分を少なくとも部分的に通って延びる延伸部材とを有する第1セクションを備えるベント部材を設けることであって、前記第1セクションは、ガスが前記ベント部材を通って前記ハウジングの内部から前記ハウジングの外部に拡散し得るように多孔質であるベント部材を設けること、
を含む方法。
【請求項15】
ハウジングと、
前記ハウジングにおける流通口を通って延びる部分であり、前記ハウジングの内部の少なくとも一部分を通って延びる少なくとも1つの延伸部材に接続される部分を有する第1セクションを備えるベント部材であって、前記第1セクションは、ガスが前記ハウジングの内部から前記ハウジングの外部に拡散し得るように多孔質であるベント部材と、
を備えるコンテナ。
【請求項16】
前記第1セクションがそれを透過する液体の流れに抵抗する、請求項15に記載のコンテナ。
【請求項17】
前記ベント部材が、前記流通口を通って延びる部分に接続される第2セクションをさらに備え、前記第2セクションは多孔質であり、かつ、前記ハウジングの外面に取り付けられる、請求項15に記載のコンテナ。
【請求項18】
前記少なくとも1つの延伸部材が、前記ハウジングの内部における前記少なくとも1つの延伸部材の表面積に前記ハウジング内部の液体が完全には接触し得ないように、前記ハウジングの内部を通って延びる、請求項15に記載のコンテナ。
【請求項19】
前記液体が電解質を含む、請求項18に記載のコンテナ。
【請求項20】
前記第2セクションが、前記流通口を通って延びる部分に対してある角度で延びる、請求項17に記載のコンテナ。
【請求項21】
前記第1セクションおよび前記第2セクションが、ポリマー材料の個々の粒子からモノリシックに形成される、請求項20に記載のセンサー。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【公表番号】特表2013−509590(P2013−509590A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537083(P2012−537083)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/054582
【国際公開番号】WO2011/053739
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(503158947)マイン セイフティ アプライアンセス カンパニー (3)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/054582
【国際公開番号】WO2011/053739
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(503158947)マイン セイフティ アプライアンセス カンパニー (3)
[ Back to top ]