説明

ベース付きランプ

【課題】発光管内の発光素子に給電する外部リードと、該外部リードに被覆された酸化防止層と、前記外部リードに電気的に接続された箔を封止するシール部と、該シール部に接着剤を介して固定されたベースと、を備えたベース付きランプにおいて、外部リードに被覆された酸化防止層が接着剤によって、その酸化防止機能を損なわれないような構造を提供すること。
【解決手段】前記ベースを固定する接着剤が、前記外部リードの酸化防止層に直接に接触することがないようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はベース付きランプに関するものであり、特に、発光管内の発光素子に給電する外部リードを封止するシール部に接着剤によってベースが固定されたベース付きランプに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、発光管内に配置された発光素子に給電する外部リードが、外気にさらされた状態で高温になって酸化されるのを防止するために、その外周に酸化防止層を被覆することが行われていた。
特表2006−525637号公報や特開2004−139959号公報などがそれである。
【0003】
図5にその概要構成が示されている。同図にはフィラメントランプが示されており、ランプ1の発光管2内には発光素子であるフィラメント3が配置され、その両端は内部リード5を介して金属箔6に接続され、該金属箔6には外部リード7が接続されていて、該外部リード7を介して前記発光素子(フィラメント)3に給電される。内部リード5、金属箔6、外部リード7はシール部4で封止される。
そして、前記外部リード7にはその外周に酸化防止層8が被覆されていて、これにより、外部リード7の酸化を防止している。
【0004】
この酸化防止層としては、外部リードを構成する部材よりもイオン化傾向の小さな部材が選択され、外部リードがたとえばモリブデンで形成された場合、酸化防止層は、錫、鉛、銅、銀、カドミウム、白金、金などから形成される。
外部リードの外表面に酸化防止層を被覆したので、酸化防止層が外気にさらされることになり、酸化防止層の方が先に酸化される。しかし、該酸化防止層は、外部リードの部材よりもイオン化傾向の小さい部材で構成されるので、酸化の侵食速度が外部リードの部材よりも低速であり、時間経過に対して体積膨張量が、外部リードが酸化された場合に比べて小さい。以上のことから、外部リードに被覆した酸化防止層は、シール部のクラック抑制に効果的である。
【0005】
しかして、この種のランプを灯具に設置する場合、シール部にはベースが取り付けられるものであるが、このベースの取り付けは、接着剤を用いてシール部に固定することが一般的である。
図6にこの構造が示されていて、外部リード7には酸化防止層8が被覆されており、その外方端部には端子12が取り付けられている。そして、シール部4には接着剤11によってベース10が固定される。すなわち、ベース10内に外部リード7の外周を含めて接着剤11が充填されて該ベース10がシール部に固定されるものである。
接着剤11としては、無機接着剤(例えばその成分:AL 49%、LiO 1%以下、NaO 1%以下、SiO 31%、HO 残り)が用いられる。
【0006】
ところで、かかるベース付き構造のランプにおいては、ベースを持たない構造のランプとの比較で、シール部にクラックが入るまでの時間が短くなることが多く見られた。
これについて、本発明者らが検討したところ、外部リードに接着剤が接触した状態では、接着剤中に含まれるアルカリ(Li、Na)が外部リード外面の酸化防止層と反応し、酸化防止膜を侵食してしまい、該酸化防止膜の酸化抑制機能を低下させてしまうことに起因するものであるとの知見を得た。
このように酸化防止膜の酸化抑制機能が低下すると、外部リードの酸化が促進されてしまい、膨張していく。シール部に埋設された外部リードが膨張していくと、シール部が膨張する外部リードに押されてクラックを生じてしまい、破損に至ることが多かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2006−525637号公報
【特許文献2】特開2004−139959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発光管内に配置された発光素子と、該発光素子に給電する外部リードと、該外部リードに被覆された酸化防止層と、前記外部リードに電気的に接続された箔を封止するシール部と、該シール部に接着剤を介して固定されたベースと、を備えたベース付きランプにおいて、前記ベースを固定する接着剤によって前記酸化防止層が浸食されて酸化防止機能を損ねることのないような構造を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明のベース付きランプでは、ベースをシール部に固定する接着剤が外部リードに被覆した酸化防止層と直接接触しないようにしていることを特徴とする。
【0010】
また、前記接着剤がベースとシール部の間にのみに設けられて、酸化防止剤とは接触しないようにしたことを特徴とする。
【0011】
さらに、前記外部リードの酸化防止層の周囲に、接着剤中のアルカリと非反応性の素材からなる中間層を設け、該中間層の外周に前記接着剤を介在させて前記ベースを固定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、シール部にベースを固定する接着剤が、外部リードに被覆された酸化防止層と直接に接触することがないので、酸化防止層が接着剤中のアルカリに侵食されることがなく、その酸化防止機能が損なわれる心配もない。その結果、外部リードの酸化によるシール部のクラックや破損といったこと不具合が生じることがない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のベース付きランプの部分断面図。
【図2】本発明のベース付きランプの他の実施例の部分断面図。
【図3】本発明の他の適用例。
【図4】本発明の更に他の適用例。
【図5】従来技術の断面図。
【図6】従来技術の部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1はこの発明に係るベース付きランプの部分断面図を示す。
シール部4には、ベース10が接着剤11によって固定されている。該接着剤11は、シール部4とベース10の間にのみ設けられていて、外部リード7の周囲には存在していない。つまり、外部リード7に被覆された酸化防止層8とは直接には接触していない。
なお、他の符号は、それぞれ図6に示す同一の符号が示す部材と同様な部材を示す。
【0015】
図2はこの発明の別の実施例であって、外部リード7の酸化防止層8の周囲に、接着剤11中のアルカリと反応しない材料からなる中間層13が設けられている。該中間層13は、例えば、ガラスやカーボンなどのチューブを外部リード7に被覆して形成したものや、該ガラスやカーボンのテープを巻き付けて形成してもよい。そして、接着剤11はベース10内で、前記中間層13の周囲に設けられている。
なお、同図において、中間層13はシール部4の端部まで覆うように設けられているが、必ずしもそうである必要はなく、外部リード7の酸化防止層8の外周にのみ設けるものであってもよい。
【0016】
なお、ランプの形状や大きさなどによって、ベース10のシール部4への固定が十分に確保できる場合には、図1の取付け構造を採用すればよいし、更に強化な固定が求められる場合には、図2の取付け構造を採用することができる。
【0017】
上記実施例では、ダブルエンドのフィラメントランプを示したが、他の形式のランプにも適用できる。
図3にはシングルエンドのフィラメントランプが示されている。図において、発光管20内に配置されたフィラメント21は、その両端が内部リード22a、22bに接続され、これら内部リード22a、22bは金属箔23a、23bを介して外部リード24a、24bに接続される。これらの外部リード24a、24bには、図示しないが、図1及び図2と同様に酸化防止層が被覆されている。
そして、外部リード24a、24bにはガラスチューブ26が被せられており、ベース27が接着剤28によってシール部25に固定される。
なお、29はヒューズ線、30は端子である。
【0018】
図4は更に別の適用例であり、発光管31内には、発光素子として放電管32が配置されている。
なお、他の構成については、図3の例と同様である。
【0019】
上記の図3および図4示す適用例では、外部リード24に中間層26を被せて、ベース27内に接着剤28を充填させる構造を示したが、図1のように、ベース27とシール部25の間にのみ接着剤28を設けて、接着剤がリード部の酸化防止層に直接に接触しないような構造としてもよいことは勿論である。
【0020】
本発明の効果を示すための実験結果を以下に示す。
実験には、本発明のランプとして、図1の構成のランプ(A)および図2の構成のランプ(B)、そして比較例として図6に示すランプ(C)を用いた。
これらのランプの仕様は以下のとおりである。
フィラメントのコイル長:65mm、
発光管直径:φ13mm、
発光管全長:118mm
酸化防止層:外部リードに1mol/Lの硝酸銀水溶液を塗布し、80℃
で乾燥。
接着剤:AL 49%、LiO 1%以下、NaO 1%以下、
SiO 31%、HO 残り

その点灯条件は、
灯具:1KW×6本用の撮影用機材
点灯条件:100V・1KW
以上の条件で点灯し、シール部が破損するまでの時間を10時間単位で観察した。
なお、この灯具では、ランプ点灯時に480〜500℃の温度環境となり、各ランプともこの温度環境で連続点灯された。
【0021】
以上の実験結果を以下の表1にまとめる。
<表1>

【0022】
以上のように、シール部にベースを取り付けるとき、比較例(従来例)で示したように、酸化防止層を被覆した外部リードを覆うように接着剤を設けた場合、本発明と比較して短時間(120時)でクラックが発生して破損した。
これは、酸化防止層が接着剤中のアルカリ成分によって侵食されて、その酸化防止機能が損なわれた結果である。
これに対して、本発明構造(A)(B)ともに、240時間を経過しても、シール部にクラックや破損が見られずに、大幅な寿命改善が図られている。
【0023】
上記のように、本発明によれば、シール部にベースを取り付ける接着剤を外部リードの酸化防止層に直接に接触させないような構造としたことにより、接着剤中のアルカリ成分によって酸化防止層が侵食されることなく、その酸化防止機能が損なわれることがないので、シール部でのクラックや破損の発生がなく、長寿命化できるという効果を奏するものである。
【符号の説明】
【0024】
1 ベース付きランプ
2 発光管
3 発光素子(フィラメント)
4 シール部
5 内部リード
6 金属箔
7 外部リード
8 酸化防止層
10 ベース
11 接着剤
13 中間層
20 発光管
21 発光素子(フィラメント)
24 外部リード
26 中間層
27 ベース
28 接着剤
31 発光管
32 発光素子(放電管)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光管内に配置された発光素子と、該発光素子に給電する外部リードと、該外部リードに被覆された酸化防止層と、前記外部リードに電気的に接続された箔を封止するシール部と、該シール部に接着剤を介して固定されたベースと、を備えたベース付きランプにおいて、
前記ベースを固定する接着剤が前記酸化防止層と直接接触しないようにしてなることを特徴とするベース付きランプ。
【請求項2】
前記接着剤が、前記ベースとシール部との間のみに設けられ、前記酸化防止層とは接触しないようにしたことを特徴とする請求項1に記載のベース付きランプ。
【請求項3】
前記外部リードの酸化防止層の周囲に、前記接着剤中のアルカリと非反応性の素材からなる中間層を設け、該中間層の外周に前記接着剤を介在させて前記ベースを固定したことを特徴とする請求項1に記載のベース付きランプ。
【請求項4】
前記発光素子がフィラメントからなることを特徴とする請求項1に記載のベース付きランプ。
【請求項5】
前記発光素子が放電管からなることを特徴とする請求項1に記載のベース付きランプ。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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