説明

ベース付き放電ランプ及び紫外線照射装置

【課題】内部に放電用ガスが充填された誘電体よりなる発光管を有し、該発光管の外面に一対の電極が対向配置され、該発光管の一方の端部に前記電極への給電機構が設けられたベース付き放電ランプにおいて、長尺化した放電ランプを紫外線照射装置の冷却管ないに円滑かつ容易に挿入できるようにした構造を提供することにある。
【解決手段】前記発光管の給電機構側端部と反対の非給電側端部にベースが装着され、該ベースには発光管を滑動・案内するガイド機構が設けられていることを特徴としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベース付き放電ランプ及び該ベース付き放電ランプを用いた紫外線照射装置に関するものであり、特に、テレビジョンやディスプレイ等の液晶基板の製造に使用する、とりわけ感光性の材料を含む液晶材料を用いた液晶製造に使用されるベース付き放電ランプ及び紫外線照射装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置においては、液晶が有する屈折率異方性を利用し、液晶に電圧を印加してこの屈折率異方性の軸の向きを変えることにより、液晶パネルの透過光の明るさを制御している。このような液晶表示装置においては、液晶に電圧が印加されていない状態での液晶分子の並び方を制御することが、非常に重要である。
近時、液晶パネルの製造方法において、明るくて高速応答性のMVAパネルを得るため、重合性成分を含有する液晶組成物を基板間に挟持し、電圧を印加しながら前記重合性成分を重合させることにより液晶分子の傾斜方向を規定する技術が知られている。
このような技術は、PSVA(Polymer Stabilized Vertically Aligned nematic)と呼ばれ、例えば、特許文献1等に記載されている。この技術において、重合性成分として、紫外線によってポリマー化するようなモノマー材が用いられることがある。
モノマー材を使用した液晶基板では、表示ムラに関連していくつかの問題があって、これは、重合が不十分であり、高分子が変形するためと考えられている。このような重合不良を防止するためには、モノマー材に対して過不足のない光照射が必要であると共に、厳密な温度管理が必要といわれている。
【0003】
重合に使用される光は、モノマー材の種類にもよるが、おおむね波長帯が310nm〜380nmの紫外線であるといわれている。重合を完遂させるには、概して長時間の光照射が必要となるため、使用する光源用ランプにおいても効率の良いものが望ましい。
【0004】
このような事情に鑑み、本発明者らは、図11に示すような光源用ランプを開発した。
この放電ランプ1は、誘電体からなる扁平角状の発光管2の上下面に、放電空間Sを挟んで一対の電極3、4が対向配置されている。放電空間S内には、希ガス(例えばキセノンガス)が封入され、前記電極3、4間に高周波電圧を印加すると該放電空間内に誘電体バリア放電が生成される。
そして、発光管1の内面には、ユ−ロピウム付活ホウ酸ストロンチウム(Sr−B−O:Eu(以下SBEと称する。))蛍光体、セリウム付活アルミン酸マグネシウムランタン(La−Mg−Al−O:Ce(以下、LAMと称する。))蛍光体、ガドリニウム、プラセオジム付活リン酸ランタン(La−P−O:Gd、Pr(以下、LAP:Pr、Gdと称する)蛍光体などの蛍光体5が塗布される。
【0005】
このようなランプによれば、紫外線のスペクトルにおいて、310〜380nmに最大エネルギーピークを有する光を放出することができ、高効率の光源用放電ランプとして、十分に利用できるものとなる。
【0006】
ところがこの放電ランプにおいては、発光管1の管壁の温度が高温になることが知られている。このため、図12のように、放電ランプ1、1と基板(パネル)Wとを直接対向させて光を照射した場合には、放電ランプの熱によってモノマーが温度上昇し、重合処理が行えなくなるという問題がある。
【0007】
このため、モノマー材を保持するパネル基板においても最適な温度状態に維持する必要がある。
万が一、パネル基板の温度管理が不十分で、モノマー材の温度管理が適正に行われなければ、重合不良が発生し、最終製品である液晶パネルに焼き付きが生じるという不具合がある。
【0008】
このようなことに鑑み、ランプの温度制御を確実に行えるよう、例えば特許文献2のように冷却ジャケットなどを用いて、ランプを個別に冷却する方法を検討することができる。
しかしながら、近時においては、ワークとなる液晶パネルは大きさが2000mmを超す大きなものが珍しくなく、これを処理するためのランプの長さも、当然これを超える長さのものが必要となる。そのため、上記の冷却構造を有する装置を採用するにしても、長尺の放電ランプの取り扱いが極めて煩雑化し、特に、ランプを冷却ジャケットに出し入れする作業が極めて困難であるという問題が生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−123008号公報
【特許文献2】特開2008−235678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて、誘電体よりなる発光管の外面に一対の電極が対向配置され、該発光管の一方の端部に前記電極への給電機構が設けられたベース付き放電ランプにおいて、紫外線照射装置における冷却管への該放電ランプの挿入を容易にし、紫外線照射装置の筐体への脱着を簡単に行えるようにしたベース付き放電ランプを提供しようするものである。
【0011】
更には、筐体と、該筐体に装着される放電ランプを備えた紫外線照射装置において、該筐体に設けられた冷却管内に上記ベース付き放電ランプを容易に、かつ円滑に挿入できて、該ランプを筐体に着脱可能な状態で容易に装着できるようにした紫外線照射装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、この発明に係るベース付き放電ランプ及び紫外線照射装置は、前記発光管の給電機構側端部と反対の非給電側端部にベースが装着され、該ベースには発光管を滑動・案内するガイド機構を設けたことを特徴とする。
【0013】
また、前記発光管のベースには複数の摺動体を設けたことを特徴とし、更には、該ベースが発光管に着脱自在であることを特徴とする。
【0014】
紫外線照射装置の筐体に冷却管を設け、該冷却管内に前記ガイド機構によって上記ベース付き放電ランプが滑動・案内されて挿入され、前記ベースによって前記筐体の係合部材に着脱可能に係合されていることを特徴とする。
【0015】
更には、前記ベース付き放電ランプが、給電機構によって筐体の支持機構に着脱可能に支持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ベース付き放電ランプの非給電側端部にベースを取り付け、該ベースにガイド機構を設けたことにより、紫外線照射装置に設けられた冷却管内に放電ランプを挿入する際に、例え長尺のランプであっても、該ガイド機構を利用して円滑かつ容易に放電ランプを挿入できて、ランプ交換作業がきわめてスムースに行えるという効果を奏する。
【0017】
また、ガイド機構が、複数の摺動体を備えることにより、冷却管内にランプを挿入するとき、安定したランプ姿勢が保たれて、その挿入作業が一層容易になる。
【0018】
更には、ベースが発光管に対して着脱自在であることにより、ランプ交換に際しては、ベースを取り外して発光管のみを交換すればよく、経済的である。
【0019】
また、ベース付き放電ランプは、紫外線照射装置の筐体の冷却管に挿入していくと、その非給電側端部において筐体と自動的に着脱可能に係合できて、作業時間の短縮化が図れるものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る紫外線照射装置の部分断面図。
【図2】本発明に係るベース付き放電ランプの全体斜視図。
【図3】図1の部分斜視断面図。
【図4】図3の横断面図。
【図5】図1の要部斜視図。
【図6】図1の別の要部斜視図。
【図7】図6の支持機構のみの作用説明図。
【図8】係合部材の別の実施例。
【図9】摺動体の別の実施例。
【図10】ベースの別の実施例。
【図11】従来の放電ランプ。
【図12】従来の紫外線照射の概念図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
紫外線照射装置10において、筐体11は一対の外壁12a、12bを有し、多くの場合、作業環境からその一方の外壁12aのみに開閉部13が形成されている。
筐体11の内部には、光透過性部材、例えば石英ガラスからなる冷却管14が設けられている。なお、この冷却管14は図においては1本のみが示されているが、複数本備えられていることが普通である。
該冷却管14は、筐体11の天井部15から垂設された内壁16a、16bに支持されている。そして、該内壁16と前記外壁12との間には冷却空気通路17a、17bが形成される。
ベース付き放電ランプ20は冷却管14内に挿入支持されていて、冷却空気通路17a→冷却管14→冷却空気通路17bを流れる空気によって冷却される。
【0022】
図2に本発明のベース付き放電ランプ20が示されていて、その基本的なランプ構造は、図11のものと同一である。即ち、扁平角形状の発光管21の上下表面に一対の外部電極22、23が設けられている。
前記発光管21の一端には給電機構24が設けられていて、給電線25、26により、前記電極22、23に高周波電圧が印加される。これにより、発光管21の内部の放電空間では誘電体バリア放電が発生する。
例えば、放電ガスがキセノンの場合、発光される波長172nmの紫外線によって、発光管内部に塗布した蛍光体が励起され、例えば、310〜380nmの紫外線を放射する。
【0023】
一方、前記給電機構24が設けられた端部とは反対側の非給電側端部には、ベース30が設けられている。図3及び図4を参照して、該ベース30には、ガイド機構31として下面と両側面に摺動体32、33、33が設けられている。この実施例では、下面の下方摺動体32のみにコロ32aが設けられているが、左右の側方摺動体33、33にもコロを設けるようにしてもよい。そして、これらの摺動体32、33、33はそれぞれが冷却管14の内周面に当接している。
【0024】
再び図1を参照して、冷却管14内に挿入されたベース付き放電ランプ20はその前端(図の左端)において、筐体11の外壁12bに設けられた係合部材40に着脱自在に係合している。
【0025】
図5に示されるように、該係合部材40は垂直板41と水平板42とからなり、垂直板41が筐体11の外壁12bに固着されている。そして、水平板41には前端辺の中央に切欠き43が形成されている。
放電ランプ20が図1の右方の開閉部13から冷却管14内に挿入されると、図3及び図4に示されるように、放電ランプ20のベース30に設けられたガイド機構31の摺動体32、33、33が冷却管14の内周面を滑動して案内され、その姿勢を保持しながら左方の係合部材40に係合される。
その際、ベース30の下面が係合部材40の水平板42に乗り上げて支持される。このとき、ベース30の下方の摺動体32は、水平板42の切欠き43内に収まり、該水平板43と干渉することはない。
【0026】
なお、上記係合部材40とベース30のガイド機構31とは、該ベース30の下方の摺動体32が冷却管14から外れる前に、ベース30が前記係合部材40の水平板42に乗り上げて支持されるような位置関係に保たれている。
【0027】
再度図1を参照して、冷却管14の右方端の外部には、筐体11の外壁12aと内壁16aとの間に、支持機構50が設けられている。
該支持機構50は、図6に示されるように、放電ランプ20の給電機構24を支持するためのものである。
図7に示されるように、支持機構50は、門型部材51と、これに一端で回動可能に連結された水平部材52とからなる。門型部材51には放電ランプ20の給電機構24を上方から押圧する垂直バネ53が設けられており、一方、水平部材52には給電機構24を後方から押圧する水平バネ54が設けられている。
また、門型部材51の側面には係合ピン55が、そして、水平部材54にはこの係合ピン55と係合する係合片56がそれぞれ設けられている
【0028】
放電ランプ20を冷却管14に挿入するときは、図7bに示すように、押圧部材52は開放されており、この状態で放電ランプ20が挿入されていく。放電ランプ20の先端が、図1に示すように、係合部材40に係合して所定位置に位置決めされると、図7bに示すように、水平部材52を回動して係合片56を係合ピン55に係合させる。
この状態では、水平部材52は放電ランプ20の給電機構24の下方から支持し、水平バネ54によって放電ランプ20を後方から押圧する。
一方、門型部材51の垂直バネ53が給電機構24を上方から水平部材52方向に押圧して支持する。
【0029】
こうして、放電ランプ20は前方の非給電側端部のベース30を係合部材40によって、給電側端部の給電機構24を支持機構50によって、それぞれ支持されて所定の位置に位置決めされる。
【0030】
なお、上記においては、係合部材40の水平板42はベース30自体を下方から支持するものを示したが、図8には、ベース30と係合部材40の水平板42との異なる位置関係を示す他の実施例が示されている。
図において、水平板42はベース30の側方摺動体33、33を下方から支持するような位置関係に設定されている。
このときも、下方の摺動体32が冷却管14から外れる前に、水平板42が側面摺動体33、33と係合するような位置関係にあることはいうまでもない。
【0031】
図9に摺動体の別の実施例が示されており、摺動体35、36は2つであって、放電ランプを下方で支えるように、図示で、略ハの字状に下方に開いた状態で設けられている。この場合も、該摺動体35、36にコロを設けてもよい。
【0032】
更に、図10には、ベース30の別の実施例が示されている。該ベース30は放電ランプ20の発光管21に着脱可能に取り付けられている。発光管21には保護部材37が取り付けられ、ベース30が該保護部材37に装着され、取付けネジ38などによって固着されている。
【0033】
以上のように、本発明のベース付き放電ランプでは、発光管の非給電側の端部にベースを取り付け、該ベースにガイド機構を設けたことにより、放電ランプを紫外線照射装置の冷却管内に組み込む際に、前記ガイド機構によって円滑にかつ容易に挿入できて、長尺のランプの交換作業が大幅に短縮化されて、かつ確実に作業できるという効果を奏するものである。
【符号の説明】
【0034】
10 紫外線照射装置
11 筐体
14 冷却管
20 ベース付き放電ランプ
21 発光管
22、23 電極
24 給電機構
30 ベース
31 ガイド機構
32 下方摺動体
33、33 側方摺動体
40 係合部材
41 垂直板
42 水平板
43 切欠き
50 支持機構
51 門型部材
52 水平部材




【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に放電用ガスが充填された誘電体よりなる発光管を有し、該発光管の外面に一対の電極が対向配置され、該発光管の一方の端部に前記電極への給電機構が設けられたベース付き放電ランプにおいて、
前記発光管の給電機構側端部と反対の非給電側端部にベースが装着され、該ベースには発光管を滑動・案内するガイド機構が設けられていることを特徴とするベース付き放電ランプ。
【請求項2】
前記ガイド機構が複数の摺動体を有することを特徴とする請求項1に記載のベース付き放電ランプ。
【請求項3】
前記ベースが、発光管に対して着脱自在であることを特徴とする請求項1に記載のベース付き放電ランプ。
【請求項4】
筐体と、該筐体に装着される放電ランプとを備えた紫外線照射装置において、
前記筐体には内部に冷却気体が流される冷却管が設けられ、請求項1に記載のベース付き放電ランプが該冷却管内に前記ガイド機構によって滑動・案内されて挿入され、前記ベースによって前記筐体の係合部材に着脱可能に係合されてなることを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項5】
前記ベース付き放電ランプが、前記発光管の給電機構によって筐体の支持機構に着脱可能に支持されていることを特徴とする請求項3に記載の紫外線照射装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−76994(P2011−76994A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230076(P2009−230076)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】