説明

ペダル演奏補助装置

【課題】下半身が不自由な演奏者であっても、上半身によりペダルを連続量で操作可能にして、豊かな演奏表現を可能にする。
【解決手段】ペダル演奏補助装置の本体の内部において、ピアノのペダル24を把持するペダル把持部が、ペダルアクチュエータ34に連結され、ペダル24を連続量で駆動する。CPU11は、検出信号sdに基づいて電流指示値up(t)を生成して、この電流指示値up(t)を、ペダルアクチュエータ34に供給する。検出装置は、演奏者の頭部に装着され、演奏者の吸気及び排気の動作を検出して、検出信号sdとして連続量で出力する。検出信号sdに応じた電流指示値up(t)が、ペダルアクチュエータ34に供給されると、プランジャが駆動され、それに連動して、ペダル把持部を介してペダル24が連続量で変位する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピアノのペダルを上半身の動作で駆動可能にすることができるペダル演奏補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主に足の不自由な演奏者用として、アコースティックピアノのペダルを、演奏者の足以外による操作で駆動することを可能としたペダル演奏補助装置が知られている。例えば、下記特許文献1では、3つのペダルの各下部に電磁石を設置すると共に、いすに3つの背当てを揺動自在に設け、背当てのいずれかが押圧されると、対応するリミットスイッチがオン状態となって、対応する電磁石が励磁されて、対応するペダルが引き下げられることで駆動される。
【0003】
また、下記特許文献2では、棚板の高さに配置した腹部当接部材を連絡部材によりラウドペダルに連結し、腹部当接部材を演奏者が腹部で押圧操作すると、その操作に応じて、連絡部材を介してラウドペダルが押し上げられるようにすることで、足による操作を伴わずに、ラウドペダルを足で踏んだ場合と同等の離弦動作を行わせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭53−150143号公報
【特許文献2】特許3331055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1では、スイッチ手段により、各電磁石のオンオフが切り替えられるものであるので、ハーフペダル領域のコントロール等、微妙なペダル操作ができず、演奏表現力の点では満足できるものではなかった。
【0006】
また、上記特許文献2では、演奏者は、腰掛けた状態で腹部を前後に動かして腹部当接部材を押圧しなければならないので、ストローク量を多くとれないだけでなく、また、力の入れ加減が難しいため、微妙なペダル操作を行うことが容易でなく、豊かな演奏表現力を発揮するのが困難であるという問題があった。
【0007】
しかも、上記特許文献1では、背当てを押圧するためには、体を後方及びやや側方に反らす必要があるが、そうすると、鍵盤からの腕の位置が変化するので、鍵盤操作が行い難くなる。また、不自由な部位が膝下のみであれば、体のバランスを維持することは多少容易であるが、腰から下の広範囲が不自由な演奏者の場合は、しっかり踏ん張ることができないため、腰掛けた状態で上半身を前後及び左右に自由に動かすことは実際上困難で、ペダル操作のために体勢を崩しやすいという問題もある。一方、上記特許文献2でも、腰から下が不自由な演奏者の場合は同様の問題が生じる。このことからも、演奏者の障害の程度によっては、ペダル操作による豊かな演奏表現を可能にすることが事実上困難であるという問題があった。
【0008】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、下半身が不自由な演奏者であっても、上半身によるペダルの連続量での操作を可能にして、豊かな演奏表現を可能にすることができるペダル演奏補助装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の請求項1のペダル演奏補助装置は、ピアノのペダルを連続量で駆動するペダル駆動部と、演奏者に装着され、該演奏者の上半身の動作を連続量で検出する動作検出手段と、前記動作検出手段により検出される検出信号の値と前記ペダルが位置すべき目標ストロークとの対応関係を規定する制御テーブルを予め記憶した記憶手段と、前記記憶手段に記憶された制御テーブルを参照して、前記動作検出手段により検出された検出信号に対応する目標ストロークを求め、該目標ストロークに基づいて前記ペダル駆動部を駆動制御することで、前記ペダルを連続量で変位させる制御手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、下半身が不自由な演奏者であっても、上半身によりペダルを連続量で操作可能にして、豊かな演奏表現を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態に係るペダル演奏補助装置をピアノに装着した状態を示す外観斜視図である。
【図2】ペダル演奏補助装置の制御ユニット及びそれに関連する要素の構成を示すブロック図である。
【図3】ペダル演奏補助装置の左側面図であり、本体から左側板を外した状態を示している。
【図4】ペダル演奏補助装置の背面図(図(a))、及びペダル演奏補助装置の平面図(図(b))である。
【図5】ペダル演奏補助装置の左側面図である。
【図6】ペダル演奏補助装置の要部の左側面図である。
【図7】動作センサを備えた検出装置の斜視図(図(a))、同検出装置の回路構成を示す図(図(b))、及び、他の検出装置の例を示す図(図(c)〜(h))である。
【図8】他の検出装置の例を示す図である。
【図9】検出信号とそれに基づき制御されるペダルの目標ストロークとの関係を示す制御テーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施の形態に係るペダル演奏補助装置をピアノに装着した状態を示す外観斜視図である。このペダル演奏補助装置100は、ペダルを有するピアノに対して装着されることで、ペダルを、通常の足操作によることなく駆動できるようにしたものである。ペダル演奏補助装置100が装着されるピアノPNとしては、主にアコースティックピアノが想定され、図1ではグランドピアノが例示されている。詳細は後述するが、ペダル演奏補助装置100は、グランドピアノ、アップライトピアノのいずれにも装着可能に構成されており、アップライトピアノに装着した状態は、図5に例示されている(後述)。
【0014】
図1に示すように、ペダル演奏補助装置100は、床面25に載置されるベースプレート60と、ベースプレート60上に配設された本体30及びジャッキユニット61とから構成され、グランドピアノであるピアノPNのペダル柱21の下部に設けられたペダルボックス22に対して固定される。本体30には、制御ユニット31、ピアノPNのペダル24を把持するペダル把持部46等が設けられている(詳細は後述する)。
【0015】
図2は、ペダル演奏補助装置100の制御ユニット31及びそれに関連する要素の構成を示すブロック図である。制御ユニット31は、CPU11に、バス10を通じて、タイマ12、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)インターフェイス(MIDII/F)13、記憶部14、ROM16、RAM17及びペダルドライブユニット18が接続されて構成される。タイマ12はCPU11にも接続されている。
【0016】
本体30には、後述するペダルアクチュエータ34及び位置センサ49も配設されており、ペダルドライブユニット18はペダルアクチュエータ34に電流指示値up(t)を供給し、位置センサ49の検出信号ypがCPU11に供給される。また、演奏者の上半身の動作を検出する動作センサMS(図7、図8で後述する)の検出信号sdが不図示のA/D変換器でデジタル信号に変換されてCPU11に供給される。
【0017】
ピアノPNは、すべては図示はしないが、鍵の運動をハンマに伝達するアクションメカニズムと、ハンマにより打撃される弦19と、弦19の振動を止めるためのダンパ20とを備えている。ペダル24は、例えば、ダンパ20を駆動するラウドペダルである。以降、ピアノPNに装着状態にあるペダル演奏補助装置100において、奏者側を「前方」と称する。
【0018】
CPU11は、本ペダル演奏補助装置100全体の制御を司る。ROM17は、CPU11が実行する制御プログラムやテーブルデータ等の各種データを記憶する。RAM16は、演奏データ、テキストデータ等の各種入力情報、各種フラグやバッファデータ及び演算結果等を一時的に記憶する。MIDII/F13は、不図示のMIDI機器等との間でMIDI信号のやりとりを行う。タイマ12は、タイマ割り込み処理における割り込み時間や各種時間を計時する。記憶部14は、フラッシュメモリ等の不揮発メモリで構成され、演奏データ等の各種データを記憶することができる。
【0019】
CPU11は、検出信号sdに基づいて、各時刻におけるペダル24の各位置に対応した位置制御データを生成し、この位置制御データに応じた励磁電流として上記電流指示値up(t)を生成して、この電流指示値up(t)を、ペダルドライブユニット18を介してペダルアクチュエータ34に供給する。この電流指示値up(t)は、実際には、ペダルアクチュエータ34のソレノイドコイル(図示せず)に流すべき平均電流の目標値に応じたデューティ比となるようにパルス幅変調を施したPWM信号である。
【0020】
ペダル24の駆動制御においては、上記位置制御データと位置センサ49から供給される検出信号ypとを比較し、両者が一致するように電流指示値up(t)を随時更新して出力することでサーボ制御を行う。これにより、演奏者の動作に基づき随時供給される検出信号sdに従って、ペダル24が自動的に駆動される。
【0021】
次に、図3〜図6を用いて、ペダル演奏補助装置100の構造及び動作を説明する。図3は、ペダル演奏補助装置100の左側面図であり、本体30から左側板を外した状態を示している。図4(a)は、ペダル演奏補助装置100の背面図、同図(b)はペダル演奏補助装置100の平面図である。図5は、ペダル演奏補助装置100の左側面図である。ここで、図3では、ペダル演奏補助装置100をグランドピアノに装着した状態を例示し、図5では、アップライトピアノに装着した状態を例示している。後述する突き当て部材52は、ペダル演奏補助装置100をグランドピアノに装着する場合にのみ用いられる。また、図3は、ペダル24を駆動していない初期状態を示す。
【0022】
図4(b)に示すように、本体30の上面には、電源スイッチ56、動作ランプ57のほか、動作センサMSの検出信号sdが入力される信号端子58が設けられている。また、本体30の右側面下部には、電源コネクタ55が設けられている。
【0023】
図3に示すように、装着状態にあるペダル演奏補助装置100のベースプレート60上においては、本体30が前方、ジャッキユニット61が後方に位置する。ジャッキユニット61は、調節ボルト63の回転操作により上下する可動プレート62を有する。
【0024】
ペダル演奏補助装置100の本体30は、直方体状に形成され、本体30の後面下部には、ペダル24を本体30内部に挿通させるための窓部54が開口して設けられる(図4(a)参照)。また、本体30の後部の適所に突き当て板50、51が設けられる(図3、図4(b)、図5参照)。図3、図4(a)に示すように、上記突き当て部材52は、長穴52aを有し、本体30の上部において前後方向にスライド自在に取り付けられる。突き当て部材52は、左右のつまみ53A、53Bによって、前後方向における任意の位置に固定状態とすることができる。
【0025】
そして、特に、グランドピアノであるピアノPNに対する装着時においては、まず、可動プレート62を下げた状態で可動プレート62をペダルボックス22の下方に潜り込ませるようにし、それと同時に、突き当て板51を、ペダルボックス22の前面22aに当接させる。これにより、本体30とピアノPNとの前後方向の位置関係が規定される。その後、調節ボルト63を回転操作して可動プレート62を上昇させてペダルボックス22の下面22bに突き当て、調節ボルト63さらに回動操作し、床面25とペダルボックス22の下面22bとの間でジャッキユニット61を突っ張らせて反発力を生じさせることで、ペダル演奏補助装置100を床面25及びピアノPNに対して固定状態とする。さらに、突き当て部材52をスライドさせてピアノPNのペダル柱21に当接させる。これらにより、ペダル24の駆動動作時において本体30の振動を抑制し、動作を安定させることができる。
【0026】
上記制御ユニット31、ペダル把持部46、ペダルアクチュエータ34、位置センサ49は、ペダル演奏補助装置100の本体30の内部に配設される。ペダルアクチュエータ34は、ステイ34を介して本体30の前板32に固定され、駆動信号(電流指示値up(t))が供給されるとプランジャ33を下方に移動させる。位置センサ49は、プランジャ33の現在位置を検出して検出信号ypを出力する。プランジャ33の下端部にはプランジャシャフト36が固定され、プランジャシャフト36にはスプリングプレート35が固定され、従って、プランジャシャフト36及びスプリングプレート35が、プランジャ33と共に上下方向に移動するようになっている。
【0027】
また、スプリングプレート35より下方において、前板32には、ステイ40を介してスプリング受け板39が固定されている。スプリングプレート35とスプリング受け板39との間には、スプリング37が介装され、スプリング37は、スプリングプレート35を、スプリング受け板39に対して離間させる方向(上方)に常に付勢している。これにより、プランジャシャフト36は、駆動信号の供給が停止されている状態では、スプリング37の付勢力により初期位置に保たれる。
【0028】
プランジャシャフト36の下端部には、ユニバーサルジョイント38を介して連結バー41が連結され、連結バー41にはパイプ状の連結部材42が固定されている。また、連結部材42の下半部には、長さ調節用の調節用バー43が摺動可能に内挿されており、連結部材42からの調節用バー43の突き出し長さを任意に調節して、調節つまみ44A、44B(図3、図4参照)により固定できるようになっている。
【0029】
上記ペダル把持部46は、調節用バー43の下端部に、ユニバーサルジョイント45を介して連結されている。ユニバーサルジョイント38によって、プランジャシャフト36に対して連結部材42乃至調節用バー43の角度を任意に変えることができ、さらに、ユニバーサルジョイント45によって、調節用バー43に対してペダル把持部46の角度を任意に変えることができる。これらにより、あらゆる機種のピアノPNにおいても、そのペダル24をペダル把持部46が確実且つ容易に把持することができるようになっている。
【0030】
ペダル把持部46は、後方が開口した袋状で且つ縦断面コ字状に形成される。ペダル把持部46の下部には、ペダル24を締め付け固定するためのロックボルト47が取り付けられ、このロックボルト47が、ロック操作部48の回転操作により上下するようになっている。グランドピアノであるピアノPNのペダル24は、その下部が凹部となっている。ペダル24を固定する際には、上記のように、本体30を床面25及びピアノPNに対して固定状態にした後、ペダル把持部46の袋状部分にペダル24を挿入し、ロック操作部48を回転操作してロックボルト47を上昇させる。すると、ペダル24の上記凹部の下面24aに、ロックボルト47の上端部が当接し、ペダル把持部46の上部下面46aとロックボルト47とによってペダル24が挟持、固定される。
【0031】
ところで、ピアノPNがアップライトピアノである場合は、ペダル演奏補助装置100は、図5に示すように装着される。すなわち、アップライトピアノであるピアノPNは、ペダルボックスを有さず、下前板23を有し、下前板23の下部からペダル24が前方に延びている。アップライトピアノであるピアノPNに対する装着時においては、まず、突き当て部材52を本体30側(最前端)に寄せて固定し、可動プレート62を下げた状態で、可動プレート62をピアノPNの底板26前部の下面26aの下方に潜り込ませるようにし、それと同時に、突き当て板50を、下前板23の前面23aに当接させる。これにより、本体30とピアノPNとの前後方向の位置関係が規定される。
【0032】
その後、グランドピアノの場合と同様に、調節ボルト63を回転操作して可動プレート62を上昇させて下面26aに突き当て、調節ボルト63をさらに回転操作し、床面25と下面26aとの間でジャッキユニット61を突っ張らせて反発力を生じさせることで、ペダル演奏補助装置100を床面25及びピアノPNに対して固定状態とする。突き当て部材52は用いられないが、突き当て板50が突き当て板51に比し上方にあるので、ペダル24の駆動動作時において本体30の振動が抑制され、動作が安定する。なお、アップライトピアノにおいても、突き当て部材52を下前板23の前面23aに当接させてもよい。
【0033】
ところで、上述のように、ピアノPNがグランドピアノである場合は、突き当て板51とペダルボックス22の前面22aとの当接によって、本体30とピアノPNとの前後方向の位置関係が規定される。すなわち、突き当て板51が、ペダル演奏補助装置100の装着状態時の前後方向における位置決め基準となる。また、このとき、突き当て板51と前面22aとの当接位置からペダル演奏補助装置100の本体30の最前位置までの距離は、図3に示す「L1」である。一方、ピアノPNがアップライトピアノである場合は、突き当て板50と下前板23の前面23aとの当接によって、本体30とピアノPNとの前後方向の位置関係が規定される。このとき、突き当て板50と前面23aとの当接位置から本体30の最前位置までの距離は、図5に示す「L2」である。ここで、L1、L2はいずれも、12cm以下の値、例えば、11cmに設定されている。
【0034】
一般に、車椅子を利用する演奏者がこのペダル演奏補助装置100を利用してピアノ演奏を行う場合、ペダル演奏補助装置100が足下に配置されることで、邪魔にならないように配慮する必要がある。演奏者がピアノPNに対向して、車椅子を演奏に適した場所に位置させたとき、一般的な車椅子のフットレストの奏者からみた前端(図3、図5でいう後端)は、ペダルボックス22の前面22a、あるいは下前板23の前面23aから前方に約12cmの位置より前方に位置する。そこで、距離L1、L2を12cm以下に設定することで、車椅子のフットレストや演奏者の足等が本体30に干渉することを確実に回避し、演奏の邪魔にならないようにしている。すなわち、ペダルアクチュエータ34をペダル24乃至ペダル把持部46の近傍に配置せずに、ペダル24乃至ペダル把持部46から(上方に)離間した位置に配置することで、本体30の前後方向の厚みを抑制し、これにより、上記のように距離L1、L2を12cm以下に設定する構成を可能としている。
【0035】
次に、図3、図6を用いて、ペダル演奏補助装置100の動作の一例を説明する。ペダル演奏補助装置100の動作は、ピアノPNがグランドピアノであってもアップライトピアノであっても同様であるので、ピアノPNがグランドピアノである場合を例にとって説明する。
【0036】
図6は、ペダル演奏補助装置100の要部の左側面図である。図3が初期状態、すなわち、非駆動状態であってペダル24の非押下状態を示すのに対し、図6は、駆動状態であってペダル24の押下状態を示す。
【0037】
動作センサMSの検出信号sdが、信号端子58を通じて制御ユニット31に入力され、それに応じた電流指示値up(t)が、上述のようにペダルアクチュエータ34に供給されると、図6に示すように、プランジャ33と共に、プランジャシャフト36及びスプリングプレート35が下方に移動し、スプリング37は縮む。プランジャシャフト36に連動して、連結バー41、連結部材42及び調節用バー43を介して、ペダル把持部46も下方に移動する。その際、ユニバーサルジョイント38、45間の部材(連結バー41等)、及びペダル把持部46は、各々の上下及び前後方向の位置が変化するだけでなく、各々の角度もペダル24の回動に合わせて前後方向に変化する必要があるが、それらの角度変化の自由度は、ユニバーサルジョイント38、45によって確保されている。従って、プランジャ33の動作としては単純な上下動作であるが、ペダル24の回動に追従してペダル把持部46が姿勢を変え、ペダル24の動作は、足で押下された場合と同様の回動動作となる。検出信号sdに応じたペダル24の動作の量(ペダル深さ)については後述する。
【0038】
検出信号sdに基づき、電流指示値up(t)が初期状態に対応する値となると、スプリング37の付勢力によってスプリングプレート35が上昇する。これに連動してペダル把持部46も上昇するので、ペダル24も上方に回動して元の初期位置に復帰する。
【0039】
次に、図7〜図9を用いて、動作センサMSと、動作センサMSの検出信号sdに基づくペダル24の動作の詳細な態様を説明する。
【0040】
図7(a)は、本実施の形態で採用される動作センサMSを備えた検出装置の斜視図である。図7(b)は、同検出装置の回路構成を示す図である。なお、図7(c)〜(h)、及び図8(a)〜(e)は、いずれも演奏者の上半身に装着される検出装置の他の例を示し、これらについては後述する。
【0041】
図7(a)に示すように、本実施の形態のペダル演奏補助装置100に接続されて用いられる検出装置70は、ブローセンサとして構成され、動作センサMSとして、演奏者の呼気の吸排を検出するセンサMS1を備える。検出装置70は、演奏者の頭部に装着するためのベルト部71と、ベルト部71の一方の端部から延びて演奏者の口元付近に位置するマウスピース72とを備え、上記センサMS1は、ベルト部71の上記一方の端部に設けられる。
【0042】
検出装置70のセンサMS1は、ダイヤフラム、マグネット及びホール素子等を備え、図7(b)に示す回路によって、演奏者の吸気及び排気による圧力変化を抵抗変化に変え、この抵抗変化による電圧変化を検出信号sdとして連続量で出力するものである。
【0043】
図9(a)は、検出信号sdとそれに基づき制御されるペダル24の目標ストロークstとの関係を示す制御テーブルであり、本実施の形態におけるペダル24の制御例を示す図である。なお、図9(b)〜(d)は、他の制御テーブル例を示し、これらについては後述する。
【0044】
本実施の形態では、図9(a)に示すように、ブローセンサである検出装置70において、演奏者の排気動作のみに基づいてペダル24を駆動制御する。図9(a)の横軸には、検出信号sdの値をとり、縦軸にはペダル24が位置すべき目標ストロークstをとる。目標ストロークstは、「0」が、踏み込みされていない初期位置に対応する。目標ストロークstの上限値(最大踏み込み位置)と下限値(初期位置)を予め求め、上限値と下限値との間を、プランジャ33の物理位置としてマッピングしておく。本実施の形態では、検出信号sdと目標ストロークstとがリニアに対応するようにマッピングするが、必ずしもリニアでなくてもよく、例えば、ハーフペダル領域を制御しやすいような曲線で対応させてもよい。
【0045】
ここで、ハーフペダル領域とは、ラウドペダルであるペダル24の踏み込み行程において、弦19に対するダンパ20の押接力の減少が開始される状態からダンパ20が弦19に対して非接触状態となるまでの領域であり、ハーフペダル領域中のハーフポイントHPは、事前に特定されているものとする。そして、検出信号sdの最小値である「0」に対して目標ストロークstの「0」を対応させ、検出信号sdの最大値maxに対して目標ストロークstの上限値を対応させる。また、検出信号sdの最小値と最大値maxとの中間値midに対して、ハーフポイントHPを対応させる。なお、センサMS1の出力電圧値が所定値以上であるときは、検出信号sdとして、一定値である最大値maxが出力されるものとする。
【0046】
ペダル24の駆動制御においては、図9(a)に示す制御テーブルを参照して検出信号sdに応じた目標ストロークstが求められ、ペダル24の位置が目標ストロークstと一致するように、電流指示値up(t)が生成される。
【0047】
上記のような設定により、演奏者がベルト部71を頭部に装着し、マウスピース72をくわえて排気すると、その排気の強さが連続量で検出されて検出信号sdとして出力される。そして、刻々と変化する検出信号sdに応じてプランジャ33が連続的に変位し、ペダル24も連続的に変位する。
【0048】
本実施の形態によれば、ペダル演奏補助装置100の装着状態時において、グランドピアノにおいては、ペダルボックス22の前面22aに突き当て板51が当接すると共に、突き当て部材52がペダル柱21に当接し、一方、アップライトピアノにおいては、下前板23の前面23aに突き当て板50が当接する。また、ジャッキユニット61が床面25とペダルボックス22の下面22bまたは底板26の下面26aとの間に介在し、床面25からの反力を利用して、ジャッキユニット61がペダルボックス22または底板26を上方に付勢して、両者間に突っ張り力を発生させることで、ペダル演奏補助装置100がピアノPNに対して安定した固定状態とされる。すなわち、ピアノPNの自重を利用して装着がなされる。
【0049】
これらにより、ピアノPNに対して穴明けや貼付等の特別な加工処理を必要とすることなく、ペダル演奏補助装置100を安定して装着でき、取り外しも容易である。また、ペダル演奏補助装置100は、ピアノPNに対して、ペダルボックス22の前面22a等と下面22b等の、相平行でない2つの当接面で拘束されることから、駆動動作時において本体30の振動が少なく位置が安定維持されて、本体30が位置ずれすることが回避され、ペダル駆動動作も安定する。しかも、グランドピアノにおいては、突き当て部材52とペダル柱21とも当接するのでペダル駆動動作が一層安定する。よって、ピアノPNに対して加工を要することなく外部から安定した状態で装着すると共に、着脱を容易にすることができる。しかも、グランドピアノとアップライトピアノとの間だけでなく、異なる機種間でも同一のペダル演奏補助装置100を使い回すことが容易である。
【0050】
さらに、ペダル演奏補助装置100の装着状態時において、本体30の最前端が、ペダルボックス22の前面22aまたは下前板23の前面23aから前方に12cmの位置より後方に位置するので、演奏者が楽器に対向したとき、ペダル演奏補助装置100に演奏者の足や車椅子のフットレスト等が当たらず、邪魔にならないことから、円滑な演奏を確保することができる。
【0051】
本実施の形態によればまた、演奏者に装着した検出装置70で該演奏者の上半身の動作として呼気の排気動作を検出し、その検出結果である検出信号sdに応じてペダル24を連続量で変位させ、しかも、制御テーブルに基づき、ペダル24の位置が、検出信号sdに応じた位置となるようにサーボ駆動制御するようにしたので、下半身が不自由な演奏者であっても、上半身によりペダルを連続量で忠実に操作可能にして、しかもハーフペダル領域のコントロール等、微妙なペダル操作をも可能にして、豊かな演奏表現を実現することができる。
【0052】
さらに、検出装置70は、ブローセンサであって、従来のペダル演奏補助装置のように、腹部や背中で外部の部材を駆動するような動作を必要としないので、演奏者の上半身の動作によって、当該演奏者が外部固定物から反力を受けない。従って、腰から下の広範囲が不自由な演奏者の場合であっても、動作のために下半身で踏ん張らなくても良く、体勢を崩すことなく所望のペダル操作を行うことができる。しかも、動作においてストローク量の制約がないので、制御が容易であり、力の入れ加減も容易である。さらには、大きな姿勢の変化がないので、鍵盤からの腕の位置にも影響を与えず、鍵盤操作が行い難くなることもない。
【0053】
なお、突き当て板51は、ピアノPNがアップライトピアノである場合は不要で、突き当て板50は、ピアノPNがグランドピアノである場合は不要であるが、いずれのピアノに対して装着される場合も、両突き当て板50、51が邪魔になることはないので、使い回す際に都合がよく、わざわざ取り外す煩わしさがなく、構成も複雑化しなくて済む。
【0054】
なお、本実施の形態では、床面25からの反力を利用してペダルボックス22等を上方に付勢する付勢手段として、ジャッキユニット61を示したが、これは例示であり、ピアノPNの底面等と床面25との間に突っ張り力を発生させる機構であれば、他の構成であってもよい。例えば、カム機構を利用したもの、圧力を利用したもの等であってもよい。
【0055】
なお、本実施の形態では、演奏者の排気動作のみをペダル駆動に反映させ、吸排気がない状態を、ペダル24の初期位置に対応させて、いわゆる片側方向制御を採用したが、これに限るものでなく、吸気動作をも反映させて、双方向制御を行ってもよい。例えば、図9(b)に示すように、検出信号sdの「0」に対して目標ストロークstのハーフポイントHPを対応させ、検出信号sdの(+)側の最大値(+)maxに対して目標ストロークstの上限値を対応させ、検出信号sdの(−)側の最大値(−)maxに対して目標ストロークstの下限値を対応させた制御テーブルを用いる。
【0056】
このような設定により、吸排気を行わない初期状態では、ペダル24はハーフポイントHPに位置し、排気すると、ペダル24の位置は、それに応じて押下方向にリニアに変位し、吸気すると、ペダル24の位置は、それに応じて非押下位置の方向にリニアに変位する。このような設定によれば、特に、ハーフペダル領域の微妙なコントロールが容易となる。
【0057】
なお、本実施の形態では、排気による圧力変化を検出したが、吸排気の流速を検出して、それをペダル24の駆動制御に用いてもよい。あるいは、吸排気の流速を検出した値を積分して、吸排気の総流量に相当する値を求め、この値に応じてペダル24を駆動制御してもよい。なお、他の検出装置を用いた場合においても、検出信号sdを直接用いるのではなく、検出信号sdの積分値あるいは微分値を用いて制御してもよい。
【0058】
なお、検出装置としては、図7(a)、(b)に示すブローセンサの他にも、各種採用可能である。腰から下が不自由な演奏者であっても体勢を崩すことなく所望のペダル操作を行えるようにするためには、ペダル駆動のための演奏者の動作によって演奏者が外部固定物から反力を受けないような検出装置であればよい。すなわち、演奏者には、吸排気による大気からの反力のような微小な反力を除いて、内力しかかからず、演奏者自身の中で力の釣り合いがとれるような検出装置であればよい。
【0059】
以下、図7(c)〜(h)、及び図8(a)〜(e)で、このような他の検出装置を例示する。なお、図7(c)〜(h)、及び図8(a)〜(c)の例は、演奏者の上半身の動作を連続量で検出可能なものであるが、図8(d)、(e)の例は、2値(オンオフ)で検出するものである。図7(c)〜(h)、及び図8(a)〜(c)の例では、図7(a)、(b)の例と同様に、図9(a)の制御テーブルを用いた片側方向制御が可能で、ペダル24を連続量で変位させることができる。
【0060】
例えば、図7(c)に示す検出装置は、演奏者が口にくわえるバイトセンサとして構成され、動作センサMSとして、歯で噛む力を検出する感圧センサMS2を有する。同図(e)に示すように、センサMS2の上下には、それぞれ、柔らかい部材76、77を介して硬い板部材74、75が貼着されている。演奏者の歯78、78が板部材74、75を噛むと、部材76、77を介して圧力が広がり、圧力の1点集中による検出誤差が少なくなっている。感圧センサMS2が、同図(d)に示す回路構成によって、圧力に応じた電圧を検出信号sdとして出力する。演奏者は、噛む力を調節することで、ペダル24の押下位置を制御することができる。
【0061】
また、図7(f)に示す検出装置は、動作センサMSとして、ボリュームセンサMS3を有する。ボリュームセンサMS3は、腰巻きベルト80に固定され、演奏者の腰の後部に装着される。一方、演奏者の頭部には装着具79が装着され、演奏者の背中において、装着具79とボリュームセンサMS3との間がワイヤで結ばれている。演奏者が頭部を前に下げると、ワイヤ81が引き込まれ、その引き込み量に応じた電圧がボリュームセンサMS3で検出されて、検出信号sdとして出力される。従って、演奏者は、頭部の前後方向における傾きを調節することで、ペダル24の押下位置を制御することができる。
【0062】
また、図7(g)に示す検出装置は、動作センサMSとして、ボリュームセンサMS4を有する。この検出装置は、2つの回動軸部84、85間に首巻きベルト82が接続されると共に、回動軸部84、85を中心として顎受け部材83が回動自在に設けられている。ボリュームセンサMS4は、一方の回動軸部、例えば、回動軸部84内に配設され、顎受け部材83の回動位置に応じた電圧を検出信号sdとして出力する。首巻きベルト82を演奏者が首に巻き、顎受け部材83が顎の下に位置するように当該検出装置を装着する。顎受け部材83は、顎によって下方に押圧されて回動し、顎を上げると不図示のバネによって元の位置に復帰するようになっている。従って、演奏者は、顎を引く(下げる)量によって、ペダル24の押下位置を制御することができる。
【0063】
なお、この図7(g)の例では、顎受け部材83の回動反力をペダル24の押圧反力に似せて設定することで、実際のペダル操作に近い感触での操作が可能となる。その場合、例えば、ハーフペダル領域以降から重くなる等のように負荷特性を設定してもよい。さらには、ハーフポイントHPが明確に認識されるように、ハーフポイントHPにおいて所定のクリック感が生じるような機構を設けてもよいし、ハーフポイントHPにおいて所定の発音、振動を生じさせてもよい。また、クリック感を複数段階で生じさせて、押下行程の進行を認識させるように構成してもよい。なお、これらのことは、図7(f)の例でも可能である。
【0064】
図7(h)に示す検出装置は、動作センサMSとして、ホール素子で成るセンサMS5を有する。この検出装置は、首巻きベルト86にセンサMS5が設けられ、センサMS5が演奏者の首の前部に位置するように装着される。さらに、演奏者の顎下に、マグネット87が装着される。マグネット87は、粘着または不図示の耳掛け型または頭部巻型のベルト等によって装着される。そして、センサMS5は、マグネット87との距離に応じた電圧を検出信号sdとして出力する。演奏者は、顎を引く(下げる)量によって、ペダル24の押下位置を制御することができる。
【0065】
図8(a)、(b)に示す検出装置は、動作センサMSとして、プレッシャセンサMS6を備える。この検出装置は、首巻きベルト88に風船等の軟性体89が設けられ、軟性体89が演奏者の首の前部に位置するように装着される。プレッシャセンサMS6は、演奏者の顎下に、粘着または不図示の耳掛け型または頭部巻型のベルト等によって装着される。演奏者が顎を引いて(下げて)、プレッシャセンサMS6が軟性体89に当接することによって、プレッシャセンサMS6が軟性体89に押圧される。プレッシャセンサMS6は、その圧力に応じた電圧を検出信号sdとして出力する。演奏者は、顎を引く強さによって、ペダル24の押下位置を制御することができる。
【0066】
なお、このほか、図8(c)に示すような、演奏者が口にくわえて、舌による押圧操作をすると、それによる左右方向の押圧力を各々検出する押圧検出部90、91を備えた検出装置も採用可能である。また、図示はしないが、加速度センサを備え、演奏者の上半身(頭部)等に装着されて、傾きを検出する検出装置も採用可能である。なお、採用可能な検出装置はこれらに限られない。
【0067】
図8(d)、(e)の例は、検出信号sdを、連続量でなく2値(オンオフ)で出力するものであるが、検出信号sdの利用の態様によって、ペダル24の連続量での制御が可能である。
【0068】
まず、図8(d)に示す検出装置は、いわゆるリーフスイッチとして構成され、例えば、演奏者の頭部に、不図示のカチューシャ等の頭部装着用部材で装着される。上記頭部装着用部材に、リーフ94が揺動自在に設けられ、リーフ94の下端部に錘93が設けられる。さらに、上記頭部装着用部材に接点92を固定、配設し、接点92が、垂直状態のリーフ94に近接するようにする。演奏者が頭部を前後(あるいは左右)に振るのに伴い、リーフ94が接点92と離接する。この当接/離間によって、スイッチがオン/オフとなる。
【0069】
図8(e)に示す検出装置は、いわゆる水銀スイッチとして構成され、密閉された直方体状の本体95内に水銀96が適量封入されている。また、本体95内の一方側寄りには、電極97、98が近接して設けられている。本体95は、例えば、演奏者の頭部に、不図示のカチューシャ等の頭部装着用部材で装着される。演奏者が頭部を前後(あるいは左右)に傾けることで、同図(e)に示すように、水銀96が本体95内を移動する。水銀96が電極97、98の双方を包むような位置に移動すると、電極97、98が短絡してスイッチオンとなり、水銀96が電極97、98から離れるとスイッチオフとなる。
【0070】
かかる構成において、図8(d)または図8(e)に示す検出装置を用いた場合は、制御テーブルは、図9(a)に示すものに代えて、スイッチオンとなっている時間の長さに応じてペダル24の押下深さが設定された制御テーブルを用いる。従って、演奏者は、スイッチオンの継続時間でペダル深さを調節することができる。
【0071】
なお、2値(オンオフ)検出型の検出装置としては、これらの他に、例えば、2メイク式の押下スイッチを用いてもよい。その場合は、接点時間差で(オン)ベロシティが検出されるので、例えば、ベロシティが高いほどペダル24の押下速度が高くなるように設定された制御テーブルを用いればよい。従って、ベロシティとオン継続時間でペダル深さが決まることから、演奏者は、スイッチ押下の速度と押下継続時間でペダル押下速度とペダル深さを調節することができる。あるいは、ベロシティが高いほどペダル24の押下深さが深くなるように設定された制御テーブルを用いてもよい。この場合は、演奏者は、スイッチ押下の速度でペダル深さを調節することができる。
【0072】
なお、以上説明した態様は、いずれも、ペダル24を連続量で変位させる連続制御であったが、構成を簡単にする観点から、ペダル24を2値的に駆動制御(2値制御)することも可能である。
【0073】
図9(c)は、検出信号sdとそれに基づき2値制御されるペダル24の目標ストロークstとの関係を示す制御テーブルである。図7(a)〜(h)、または図8(a)〜(c)に示すいずれかの検出装置を用いると共に、制御テーブルとしては、図9(c)に示すような、検出信号sdの「0」〜中間値midに対して目標ストロークstの「0」を対応させ、中間値mid〜最大値maxに対して目標ストロークstの上限値を対応させた制御テーブルを用いる。この場合、中間値midを境にペダル24がハーフポイントHPを通過することになる。この制御テーブルは、図8(d)または図8(e)の検出装置を用いた場合は、オン/オフに対して、max/0が対応、すなわち、目標ストロークstの上限値/下限値が直接対応することになる。
【0074】
なお、このような2値制御においても、双方向制御が可能である。例えば、図7(a)に示す検出装置を用いると共に、制御テーブルとしては、図9(d)に示すような、検出信号sdの「0」を境に、検出信号sdの(−)側に対して目標ストロークstの下限値を対応させ、検出信号sdの(+)側に対して目標ストロークstの上限値を対応させた制御テーブルを用いる。
【0075】
なお、上記2値制御の場合は、制御テーブルにおいて、上限値と下限値との間の移行に際し、押下方向及び復帰方向双方にヒステリシスを設けることが望ましい。
【0076】
なお、上記図7(a)〜(h)、または図8(a)〜(c)に示す検出装置は、例示した用い方に限らず、動作回数に応じてペダル24を駆動制御するように構成してもよい。例えば、図7(c)に示すバイトセンサでは、所定時間内における噛む回数に応じてペダル24の目標ストロークstを設定した制御テーブルを用いることで、演奏者は、噛む回数でペダル24の押下深さを制御することができる。
【0077】
なお、3メイク以上の多数メイク式の押下スイッチを用い、メイクの数に応じてペダル24の押下深さを制御するようにしてもよい。
【0078】
なお、上記各種検出装置は、上半身の動作を検出可能であれば、演奏者の頭部に限らず、肩や腕等の動作を検出するものであってもよい。
【0079】
なお、ペダル24の駆動制御に用いる検出装置は、上記例示したものの1つに限定されず、2つ以上の検出装置を組み合わせて、より繊細な制御を行うようにしてもよい。
【0080】
なお、ペダル24はラウドペダルであるとしたが、他のペダル(ソフトペダル等)の駆動制御についても同様に本発明を適用可能である。また、複数種類のペダルを並行して駆動制御するためには、ペダル演奏補助装置100の本体30を複数設けるか、あるいは、本体30内に、アクチュエータ34からペダル把持部46までの一連の機構を複数設けてもよい。
【0081】
なお、本実施の形態では、ペダル演奏補助装置100は、入力される検出信号sdに基づきペダルアクチュエータ34が動作するようにしたが、MIDII/F13からMIDI信号を入力し、あるいは、検出信号sd自体をMIDI形式に変換したものを入力し、これら入力されたMIDI信号に基づきペダルアクチュエータ34が動作できるように構成してもよい。これらのように構成すれば、ペダルアクチュエータ34はMIDI信号で動作できるので、例えば、ペダル操作用に作成されたMIDIデータを外部から入力してペダル24を自動操作することが可能となる。さらには、ペダル操作を教える先生のペダル操作に応じてMIDI信号がペダル演奏補助装置100に供給されるようにすれば、先生によるペダル24の遠隔操作も可能になり、先生によるペダル操作補助等によって、生徒である演奏者のペダル操作の練習にも利用できる。
【符号の説明】
【0082】
22 ペダルボックス、 24 ペダル、 30 本体、 31 制御ユニット、 34 ペダルアクチュエータ、 46 ペダル把持部(ペダル駆動部)、 70 検出装置(動作検出手段)、 100 ペダル演奏補助装置、 PN ピアノ、 sd 検出信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピアノのペダルを連続量で駆動するペダル駆動部と、
演奏者に装着され、該演奏者の上半身の動作を連続量で検出する動作検出手段と、
前記動作検出手段により検出される検出信号の値と前記ペダルが位置すべき目標ストロークとの対応関係を規定する制御テーブルを予め記憶した記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された制御テーブルを参照して、前記動作検出手段により検出された検出信号に対応する目標ストロークを求め、該目標ストロークに基づいて前記ペダル駆動部を駆動制御することで、前記ペダルを連続量で変位させる制御手段とを有することを特徴とするペダル演奏補助装置。
【請求項2】
前記動作検出手段が検出する前記演奏者の上半身の前記動作は、当該動作によって前記演奏者が外部固定物から反力を受けないような動作であることを特徴とする請求項1記載のペダル演奏補助装置。
【請求項3】
前記動作検出手段は、前記演奏者の上半身の前記動作として前記演奏者の排気の動作を検出することを特徴とする請求項1記載のペダル演奏補助装置。
【請求項4】
前記動作検出手段は、前記演奏者の上半身の前記動作として前記演奏者の顎の動作を検出することを特徴とする請求項1記載のペダル演奏補助装置。
【請求項5】
前記動作検出手段は、前記演奏者の上半身のうち腕部以外の第1の部分により操作される被操作部を有し、該被操作部に対する操作を前記演奏者の上半身の前記動作として検出し、前記被操作部は、床面に載置または固定された外部固定物に前記第1の部分による操作力に起因する反力を生じさせることなく、前記第1の部分による操作力と、前記演奏者の上半身のうち腕部以外の第2の部分で前記第1の部分による前記操作力に対して生じる反力とによって、操作が実現されるように構成されたことを特徴とする請求項1記載のペダル演奏補助装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−138160(P2011−138160A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52593(P2011−52593)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【分割の表示】特願2004−347061(P2004−347061)の分割
【原出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)