説明

ペダル装置

【課題】 ペダルを短くして楽器全体の設置スペースを小さくしても、ペダルの踏み込み操作に違和感が生じることなく、良好にペダル操作ができるペダル装置を提供する。
【解決手段】 ペダルケース8に設けられたペダルシャーシ9と、このペダルシャーシ9に対して上下方向に回転移動するペダル10と、このペダル10の後部をペダルシャーシ9に対して上下方向に移動可能に保持する回転保持機構11とを備えた。従って、ペダル10を踏み込んだ際に、そのペダル10の回転動作に応じてペダル10の後部を回転保持機構11によって下側に移動させることができる。このため、ペダル10の前後方向の長さを短くしても、ペダル10全体を下側に回転移動させることができるので、ペダル10の回転角度を小さくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子ピアノや電子オルガンなどの鍵盤楽器に用いられるペダル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子ピアノなどの鍵盤楽器においては、鍵盤部が設けられた楽器ケースと、この楽器ケースを支持する脚部と、楽器ケースの下側に位置する脚部に設けられたペダル装置とを備えた構成のものがある。
【0003】
このような鍵盤楽器のペダル装置においては、特許文献1に記載されているように、ペダルを保持する装置本体に支点部となる支点孔を設け、ペダルの後端部に支点軸部を後方に突出させて設け、このペダルの支点軸部を装置本体の支点孔に挿入させることにより、ペダルを装置本体に対して上下方向に回転するように保持した構成のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−219542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来のペダル装置では、電子ピアノの鍵盤部の奥行きを短くして楽器ケースの奥行きを短くした場合に、ペダルが演奏者に近づきすぎてしまうため、ペダルを楽器ケースの下側における奥側にずらして配置するか、あるいはペダルの前後方向の長さを短くする必要がある。
【0006】
しかしながら、前者のように、ペダルを楽器ケースの奥側にずらして配置するだけでは、ペダル装置が楽器ケースの奥側に突出してしまうことがあるため、鍵盤部の奥行きを短くして楽器ケースの奥行きを短くしても、楽器全体の設置スペースを小さくすることができないという問題がある。
【0007】
また、後者のように、ペダルの前後方向の長さを単に短くすると、ペダルの支点部とペダルの前端部との長さが短くなるため、ペダルを踏み込んだ際におけるペダルの上下方向のストロークを同じにした場合、ペダルの上下方向の回転角度が大きくなり、これによりペダルの踏み込み操作に違和感が生じ、良好にペダル操作ができないという問題がある。
【0008】
この発明が解決しようとする課題は、ペダルを短くして楽器全体の設置スペースを小さくしても、ペダルの踏み込み操作に違和感が生じることなく、良好にペダル操作ができるペダル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような構成要素を備えている。
請求項1に記載の発明は、装置本体と、この装置本体に対して上下方向に回転移動するペダルと、このペダルの後部を上下方向に移動可能な状態で前記装置本体に対して保持する回転保持機構と、を備えていることを特徴とするペダル装置である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記回転保持機構が、前記ペダルの後方延長上に位置する仮想支点を中心とする円弧に沿って前記ペダルの前記後部を上下方向に移動可能にガイドすることを特徴とする請求項1に記載のペダル装置である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記回転保持機構が、前記装置本体に設けられ、前記ペダルの後方延長上に位置する前記仮想支点を中心とする円弧状のガイド溝が上下方向に沿って設けられたガイド保持部材と、前記ペダルの前記後部に設けられ、前記ガイド保持部材の前記ガイド溝内を前記ペダルの回転動作に応じて移動する複数のガイド軸を有するガイド連結部材と、を備えていることを特徴とする請求項2に記載のペダル装置である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記ガイド溝が、前記ガイド保持部材に設けられた摺動性を有する合成樹脂製のガイド板に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のペダル装置である。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記ペダルを常に上方に向けて付勢する付勢部材を備えていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のペダル装置である。
【0014】
請求項6に記載の発明は、前記ペダルの下限位置を弾力的に規制する下限ストッパを備えていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のペダル装置である。
【0015】
請求項7に記載の発明は、前記下限ストッパが、前記ペダルを踏み込んで接触させた際に、前記ペダルの前端下部が前記装置本体に対する設置面に接触し、この状態で前記ペダルによって弾力的に押し下げられることを特徴とする請求項6に記載のペダル装置である。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、ペダルを踏み込んだ際に、そのペダルの回転動作に応じてペダルの後部を回転保持機構によって下側に移動させることができる。このため、ペダルの前後方向の長さを短くしても、ペダル全体を下側に移動させることができるので、ペダルを踏み込んだ際におけるペダルの回転角度を小さくすることができる。これにより、ペダルを短くして楽器全体の設置スペースを小さくすることができると共に、ペダルを短くしても、ペダルの踏み込み操作に違和感が生じることがなく、良好にペダル操作ができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明を適用した鍵盤楽器の一実施形態を示した斜視図である。
【図2】図1に示された鍵盤楽器におけるペダル装置のA−A矢視における拡大断面図である。
【図3】図2に示されたペダル装置において、ペダルケースを取り除いた状態の要部を示した拡大平面図である。
【図4】図2に示されたペダル装置の要部を更に拡大して示した断面図である。
【図5】図4に示されたペダル装置においてペダルを踏み込んだ状態を示した要部の拡大断面図である。
【図6】図2に示されたペダル装置のペダルを示した拡大斜視図である。
【図7】図2に示されたペダル装置のペダル保持部材を示した拡大斜視図である。
【図8】図3に示されたペダル装置のB−B矢視において、ペダル保持部材がペダルシャーシに取り付けられている状態を示した要部の拡大断面図である。
【図9】図8に示されたペダル保持部材のC−C矢視における要部の拡大断面図である。
【図10】図2に示されたペダル装置のペダル連結部材に設けられたスイッチ押圧部材を示した拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1〜図10を参照して、この発明を鍵盤楽器に適用した一実施形態について説明する。
この鍵盤楽器は、図1に示すように、楽器ケース1を備えている。この楽器ケース1は、鍵盤ボックス2と、この鍵盤ボックス2の左右両側に設けられた一対の側板3と、鍵盤ボックス2の背面に設けられた背面板4とを備えている。
【0019】
鍵盤ボックス2の内部には、図1に示すように、鍵盤部5が設けられている。この鍵盤部5は、白鍵および黒鍵などの複数の鍵5aが音階順に配列された構成になっている。この鍵盤ボックス2には、鍵盤部5を開閉可能に覆う鍵盤蓋6が設けられている。また、一対の側板3と背面板4とは、鍵盤ボックス2を支持する脚部を兼ねている。
【0020】
この楽器ケース1内における下部には、図1に示すように、ペダル装置7が設けられている。このペダル装置7は、図2および図3に示すように、ペダルケース8と、このペダルケース8内に配置されたペダルシャーシ9と、このペダルシャーシ9に対して上下方向に回転する複数のペダル10と、この複数のペダル10をペダルシャーシ9に対してそれぞれ上下方向に移動可能な状態で保持する複数の回転保持機構11とを備えている。
【0021】
ペダルケース8は、合成樹脂かなり、図1および図2に示すように、鍵盤ボックス2の下側に位置した状態で、背面板4の下部における内面に配置されている。このペダルケース8は、図1〜図3に示すように、複数のペダル10の各後部(図2では右側部)がそれぞれ挿入された状態で、複数のペダル10が左右方向(図3では上下方向で、図1における鍵盤部5の鍵5aの配列方向)に沿って配列されるように、左右方向に長い箱形状に形成されている。
【0022】
この場合、ペダルケース8には、図1および図2に示すように、複数のペダル10の各後部(図2では右側部)がそれぞれ挿入する複数のペダル挿入孔8aが設けられている。この複数のペダル挿入孔8a内における各上端部には、図2に示すように、ペダル10の上限位置を規制するための上限ストッパ12がそれぞれ設けられている。この上限ストッパ12は、ゴムなどの弾性材料で形成されている。
【0023】
ペダルシャーシ9は、金属板からなり、図2〜図4に示すように、ペダルケース8の下部に配置されている。すなわち、このペダルシャーシ9は、図3に示すように、複数のペダル10を左右方向(図3では上下方向)に沿って配列させるために、左右方向に長く形成されている。この場合、ペダルシャーシ9は、図2〜図4に示すように、ペダルケース8の前面下部(図2では左側面の下部)に位置する第1支持部9aと、この第1支持部9aの後部に隣接する底部に位置する第2支持部9bと、この第2支持部9bの後方に位置する第3支持部9cとを備えている。
【0024】
すなわち、第1支持部9aは、図2および図4に示すように、ペダル10に対応する箇所がペダルケース8の前面(図4では左側面)に沿って立ち上がり、この立ち上がった上部がペダル10の下面に沿ってペダルケース8の前方(図4では左側)に向けて突出した構成になっている。第2支持部9bは、第1支持部9aの後部(図4では右側部)に位置する底部に設けられ、ペダル10と対応する箇所に凹部9dが設けられた構成になっている。
【0025】
また、第3支持部9cは、図2および図4に示すように、ペダルシャーシ9の後部(図4では右側部)に位置し、ペダルケース8の後部における内面に沿って立ち上がり、この立ち上がった上部がペダル10の後側上部(図4では右側上部)に向けて少し前下がり(図4では左下がり)に傾斜して突出し、この突出した前端部9eが櫛歯状に形成された構成になっている。
【0026】
複数のペダル10は、図1〜図6に示すように、それぞれ前後方向(図2では左右方向)に細長い形状に形成されている。すなわち、このペダル10は、図6に示すように、その上面部10aの前部(図6では左下側の部分)におけるペダル10の配列方向の長さ(幅)が上面部10aの後部(図6では右上側の部分)におけるペダル10の配列方向の長さ(幅)よりも少し長く形成され、この上面部10aの外周における縁部に側壁部10bが垂れ下がった状態でほぼ枠状に設けられた構成になっている。
【0027】
複数の回転保持機構11は、図2〜図5に示すように、それぞれペダル10の後部(図2では右側部)をペダルシャーシ9に対して保持すると共に、ペダル10の後方延長上で、且つペダルシャーシ9の後方(図2では右方向)に位置する仮想支点Pを中心とする円弧に沿ってペダル10の後部をそれぞれ上下方向に移動可能にガイドするように構成されている。
【0028】
すなわち、この回転保持機構11は、図4および図5に示すように、ペダルシャーシ9上に設けられたガイド保持部材13と、ペダル10の後部(図4では右側部)に設けられたガイド連結部材14とを備えている。これにより、この回転保持機構部11は、図2および図4に示すように、ガイド保持部材13でガイド連結部14を上下方向に移動可能に保持した状態で、仮想支点Pを中心とする円弧に沿ってペダル10の後部を上下方向にガイドするように構成されている。
【0029】
この場合、ガイド保持部材13は、図7および図8に示すように、縦方向(図8では上下方向)に長い金属板の両側を後方(図8では右側)に向けてほぼ直角に折り曲げると共に、その下部を前側(図8では左側)に向けてほぼ直角に折り曲げた構成になっている。これにより、ガイド保持部材13は、図7および図8に示すように、前面部13aと、その両側に設けられた一対の側面部13bと、前面部13aの下部に設けられた取付部13cとを有し、この取付部13cがペダルシャーシ9の第2支持部9b上に取り付けられるように構成されている。
【0030】
すなわち、ガイド保持部材13の取付部13cは、図3、図7および図8に示すように、複数のペダル10の配列方向(図3では上下方向)に沿って連続して形成されている。この取付部13cには、複数のねじ孔15aが複数のペダル10の各間に位置して設けられていると共に、複数のばね挿入孔22aが複数のペダル10に対応して設けられている。これにより、取付部13cは、図8に示すように、ビス15がペダルシャーシ9の第2支持部9bの下側からねじ孔15aに螺着することにより、ガイド保持部材13をペダルシャーシ9の第2支持部9b上に取り付けるように構成されている。
【0031】
このガイド保持部材13の前面部13aには、図2および図7に示すように、ペダル10の後部が挿入する開口部16がペダルケース8のペダル挿入孔8aに対応して設けられている。また、このガイド保持部材13における一対の側面部13bには、図7〜図9に示すように、その上下方向に沿ってガイド板17がそれぞれ埋め込まれている。このガイド板17は、ナイロン(登録商標)であるポリアミド(PA)や、ポリアセタール(POM)などの摺動性(滑り性)を有する合成樹脂によって形成されている。
【0032】
また、このガイド板17は、図8および図9に示すように、一対の側面部13bにそれぞれ上下方向に沿ってほぼ円弧状に設けられた装着溝19に嵌め込まれることにより、一対の側面部13bにそれぞれ取り付けられている。すなわち、このガイド板17は、図9に示すように、その外周部に沿って連続して設けられた嵌着溝部17aに、ガイド保持部材13の側面部13bにおける装着溝19の縁部が挿入して嵌着することにより、一対の側面部13bにそれぞれ取り付けられている。
【0033】
このガイド板17には、図2に示すように、ペダル10の後方延長上で、且つペダルシャーシ9から後方(図2では右側)に離れた位置の仮想支点Pを中心とする円弧状のガイド溝18が、上下方向に沿って湾曲して設けられている。この仮想支点Pは、図2に示すように、ペダル10の前後方向の長さを十分に長く形成したと仮定した場合において、この仮定したペダル10の後端部に位置する箇所のことであり、図2に実線で示すように、ほぼ水平な状態のペダル10の後方に向けて延びた延長線S上に位置する箇所である。
【0034】
一方、ガイド連結部材14は、図4〜図6に示すように、ペダル10の後部(図4では右側部)に起立して設けられた立上り部14aと、この立上り部14aの両側にその後方に向けて折り曲げられた一対の側部14bと、ペダル10の側壁部10bにおける後端部14cとを有し、図3に示すように、ガイド保持部材13の内部、つまりガイド保持部材13の前面部13aと一対の側面部13bとの間に、接触することなく配置されるように構成されている。
【0035】
すなわち、このガイド連結部材14の立上り部14aは、図4〜図6に示すように、その上下方向の長さがガイド保持部材13の前面部13aの上下方向の長さよりも短く形成され、図3に示すように、ペダル10の配列方向(図3では上下方向)における長さがガイド保持部材13における一対の側面部13b間の長さよりも少し短く形成されている。
【0036】
また、ガイド連結部材14の両側に位置する一対の側部14bも、図4〜図6に示すように、ガイド保持部材13の側面部13bの上下方向の長さよりも短く形成され、図2および図3に示すように、前後方向(図2では左右方向)の長さがガイド保持部材13の側面部13bの前後方向の長さよりも短く形成されている。さらに、ガイド連結部材14におけるペダル10の後端部14cは、図2、図4および図5に示すように、立上り部14aとほぼ同じ位置で、立上り部14aの下側にするペダル10の側壁部10bに形成されている。
【0037】
これにより、ガイド連結部材14は、図2〜図5に示すように、その立上り部14aがガイド保持部材13の前面部13aに対面し、一対の側部14bおよびペダル10の後端部14cがガイド保持部材13の一対の側面部13bに対面し、この状態でこれらに接触することなく、ガイド保持部材13の前面部13aと一対の側面部13bとの間に配置されるように構成されている。この場合、ガイド連結部材14は、図5に示すように、ペダル10が踏み込まれて下側に傾いて移動した際にも、立上り部14aがガイド保持部材13の前面部13aに接触しない程度の隙間をもって配置されるように構成されている。
【0038】
また、このガイド連結部材14には、図2〜図6に示すように、ガイド保持部材13のガイド溝18内をペダル10の回転動作に応じて移動する第1、第2の各ガイド軸20、21が取り付けられている。この第1、第2の各ガイド軸20、21は、図5に示すように、それぞれスプリングピンである。このスプリングピンとは、パイプ状に形成され、その表面がその軸方向に沿って波状に形成されたものであり、ガイド連結部材14の各取付孔20a、21a内に挿入された際に、任意の位置で固定されるように構成されている。
【0039】
この第1、第2の各ガイド軸20、21のうち、第1のガイド軸20は、図4〜図6に示すように、ガイド連結部14の一対の側部14bにおける各上部に設けられた各取付孔20aに挿入されて取り付けられ、この状態で第1のガイド軸20の両端部がガイド保持部材13の一対の側面部13bに設けられた各ガイド板17の各ガイド溝18内における上部側に移動可能に挿入されている。
【0040】
また、第2のガイド軸21は、図4および図5に示すように、ガイド連結部材14の後端部14c、つまりペダル10の側壁部10bにおける後端部14cに設けられた各取付孔21aに挿入されて取り付けられ、この状態で第2のガイド軸21の両端部がガイド保持部材13の一対の側面部13bに設けられた各ガイド板17の各ガイド溝18内における下部側に移動可能に挿入されている。
【0041】
これにより、第1、第2の各ガイド軸20、21は、図4および図5に示すように、ガイド保持部材13の各ガイド板17に設けられた各ガイド溝18内における上下部に移動可能に挿入されていることにより、ペダル10の後部に設けられたガイド連結部材14をガイド保持部材13に対して保持し、この状態で仮想支点Pを中心とする円弧状のガイド溝18に沿って上下方向に移動することにより、仮想支点Pを中心としてペダル10を上下方向に回転移動させるように構成されている。
【0042】
ところで、複数のペダル10は、図2および図4に示すように、それぞれ付勢部材であるコイルばね20によって上方に付勢されている。すなわち、このコイルばね22は、ガイド保持部材13の取付部13cに設けられたばね挿入孔22aを通して、ペダル10内の下面とこれに対応するペダルシャーシ9の第2支持部9bにおける凹部9dとの間に配置されている。これにより、このコイルばね22は、そのばね力によってペダル10を押し上げてペダル10の上面部10aをペダルケース8のペダル挿入孔8a内の上縁部に設けられた上限ストッパ12に弾接させるように構成されている。
【0043】
また、この複数のペダル10は、図5に示すように、それぞれコイルばね22のばね力に抗して押し下げられた際に、下限ストッパ23にそれぞれ当接するように構成されている。この下限ストッパ23は、上限ストッパ12と同様、ゴムなどの弾性材料からなり、ペダルシャーシ9の第1支持部9a上に設けられている。これにより、この下限ストッパ23は、ペダル10が踏み込まれた際に、ペダル10内の下面が弾接することにより、ペダル10を下限位置に規制するように構成されている。
【0044】
この場合、この下限ストッパ23は、図2に2点鎖線で示すように、ペダル10が下側に回転移動してペダル10内の下面が下限ストッパ23の上面に接触した際に、ペダル10の前端下部が楽器ケース1の設置された床などの設置面Kにほぼ同時に接触するように構成されている。これにより、この下限ストッパ23は、ペダル10内の下面が下限ストッパ23の上面に接触すると共に、ペダル10の前端下部が楽器ケース1の設置された床などの設置面Kにほぼ同時に接触した状態で、更にペダル10によって弾力的に押し下げられた際に、下限ストッパ23を支点としてペダル10の後部が浮き上がらないように構成されている。
【0045】
一方、ペダルシャーシ9の第3支持部9cには、図2〜図5に示すように、スイッチ部24が設けられている。この場合、ペダルシャーシ9の第3支持部9cは、図2および図3に示すように、その上部に位置する傾斜した前端部9eの各櫛歯部がガイド連結部材14における一対の側部14b間に接触することなく挿入し、この挿入した部分にスイッチ部24が設けられた構成になっている。
【0046】
このスイッチ部24は、図2に示すように、スイッチ基板25と、このスイッチ基板25上に設けられたドーム状の膨出部26とを備えている。スイッチ基板25は、図3に示すように、ペダルシャーシ9の第3支持部9c上に複数のペダル10の配列方向(図3では上下方向)に沿って連続して設けられている。また、ドーム状の膨出部26は、図4に示すように、ゴムなどの弾性シートを膨出形成したものであり、その内部に可動接点26aが設けられ、この可動接点26aがスイッチ基板23上に設けられた固定接点25aに接離可能に接触するように構成されている。
【0047】
これにより、このスイッチ部24は、図4および図5に示すように、ドーム状の膨出部26が上方から押されて弾性変形すると、その内部に設けられた可動接点26aがスイッチ基板25の固定接点25aに接触することにより、スイッチ動作してスイッチ信号を出力するように構成されている。この場合、ガイド連結部材14には、図4および図5に示すように、ペダル10の上下方向の回転動作に応じて、スイッチ部24の膨出部26を押圧するスイッチ押圧部材27が設けられている。
【0048】
このスイッチ押圧部材27は、図4および図10に示すように、ガイド連結部材14の立上り部14aの内面にビス28によって取り付けられた取付片27aと、この取付片27aの下部に補強片27cを介して設けられた押圧片27bとを備えている。これにより、スイッチ押圧部材27は、図5に示すように、ペダル10が踏み込まれて、第1、第2の各ガイド軸20、21がガイド保持部材13のガイド溝18に沿って下側に移動した際に、ガイド連結部材14と共に下側に移動して、押圧片27bがスイッチ部24の膨出部26を押圧するように構成されている。
【0049】
次に、このような鍵盤楽器におけるペダル装置7の作用について説明する。
ペダル10が踏み込まれていない通常の状態では、図2および図4に示すように、ペダル10がコイルばね22のばね力によって押し上げられていることにより、ペダル10が下限ストッパ23の上方に離れて、ペダル10の上面部10aがペダルケース8のペダル挿入孔8aに設けられた上限ストッパ12に弾接し、この状態でペダル10の上限位置が規制されている。
【0050】
この状態では、図2および図4に示すように、ペダル10の後部も、上側に押し上げられているので、ガイド連結部材14がガイド保持部材13内においてほぼ垂直な状態で上側に位置する。このときには、第1、第2の各ガイド軸20、21が上側に位置していることにより、第1のガイド軸20がガイド保持部材のガイド溝18の上端近傍に位置し、第2のガイド軸21がガイド保持部材のガイド溝18の下端部から上方に離れた位置にある。
【0051】
また、このときには、図4に示すように、ガイド連結部材14に設けられたスイッチ押圧部材27がスイッチ部24の上方に移動しているため、スイッチ部24の膨出部256が弾性復帰してドーム状に膨らみ、その内部の可動接点26aがスイッチ基板25の固定接点25aから離れて、スイッチ部24がオフ状態になっている。
【0052】
このような状態で、ペダル10の前部(図2では左側部)をコイルばね22のばね力に抗して踏み込むと、ペダル10が下側に向けて回転移動する。このときには、図5に示すように、ペダル10がコイルばね22を圧縮させながら下側に移動するので、これに伴ってペダル10の後部に設けられたガイド連結部材14が下側に移動すると共に、このガイド連結部材14に伴って第1、第2の各ガイド軸20、21がガイド保持部材13のガイド溝18に沿って下側に移動する。
【0053】
すなわち、図2に示すように、ガイド溝18がペダル10の後方延長上で、且つシャーシ9から後方に離れた仮想支点Pを中心とする円弧状に形成されているので、第1、第2の各ガイド軸20、21がガイド溝18に沿って下側に移動する。これにより、ペダル10全体が仮想支点Pを中心に回転移動することになる。
【0054】
このときには、図5に示すように、ペダル10の後部が第1、第2の各ガイド軸20、21と共に下側に移動しながら、ペダル10の前部も下側に移動する。このため、ペダル10の前後方向の長さを短くしても、ペダル10の前後方向の長さを仮想支点Pまで長く形成した場合のときと、同じ回転動作をするので、ペダル10の回転角度が小さくなる。
【0055】
このように、ペダル10が下側に回転移動すると、これに伴ってガイド連結部材14も下側に移動するので、このガイド連結部材14に設けられたスイッチ押圧部材27がスイッチ部24を押圧する。すると、スイッチ部24の膨出部26が弾性変形して、その内部の可動接点26aがスイッチ基板25の固定接点25aに接触する。これにより、スイッチ部24がスイッチ動作して、スイッチ信号を出力する。
【0056】
この後、ペダル10が更に下側に回転移動すると、ペダル10内の下面がペダルシャーシ9の第1支持部9a上に設けられた下限ストッパ23に弾力的に当接して、ペダル10の下限位置が規制される。このときには、図2に2点鎖線で示すように、ペダル10内の下面が下限ストッパ23の上面に接触すると、ペダル10の前端下部が楽器ケース1の設置された床などの設置面Kにほぼ同時に接触する。
【0057】
この状態で、更にペダル10が踏み込まれると、下限ストッパ23がペダル10によって弾力的に押し下げられる。このときには、ペダル10の前端下部が設置面Kに接触していることにより、この設置面Kに接触しているペダル10の前端下部を中心にペダル10が回転するので、下限ストッパ23を支点としてペダル10が回転してペダル10の後部が浮き上がることがない。
【0058】
また、この状態で、ペダル10から足を離して外力を取り除くと、ペダル10はコイルばね22のばね力によって押し上げられて初期位置に戻る。このときにも、ペダル10の後方延長上で、且つペダルシャーシ9から後方に離れた仮想支点Pを中心とする円弧状に形成されたガイド溝18に沿って、第1、第2の各ガイド軸20、21が上側に移動するので、ペダル10全体が仮想支点Pを中心に上側に向けて回転移動する。
【0059】
これにより、ガイド連結部材14も上側に移動するので、このガイド連結部材14に設けられたスイッチ押圧部材27がスイッチ部24から上方に離れて、スイッチ部24をオフにする。この後、ペダル10が更に上側に移動し、ペダル10の上面部10aがペダルケース8のペダル挿入孔8aに設けられた上限ストッパ12に弾接し、ペダル10が上限位置に規制されて初期位置に戻る。
【0060】
このように、このペダル装置7によれば、ペダルケース8に設けられたペダルシャーシ9と、このペダルシャーシ9に対して上下方向に回転移動するペダル10と、このペダル10の後部を上下方向に移動可能な状態でペダルシャーシ9に対して保持する回転保持機構11と、を備えているので、ペダル10を短くして楽器全体の設置スペースを小さくしても、ペダル10の踏み込み操作に違和感が生じることなく、良好にペダル操作ができる。
【0061】
すなわち、このペダル装置7では、ペダル10を踏み込んだ際に、そのペダル10の回転動作に応じてペダル10の後部を回転保持機構11によって下側に移動させることができる。このため、ペダル10の前後方向の長さを短くしても、ペダル10の全体が下側に移動するので、ペダル10の回転角度を小さくすることができる。これにより、ペダル10を短くして楽器全体の設置スペースを小さくすることができると共に、ペダル10を短くしても、ペダル10の踏み込み操作に違和感が生じることなく、良好にペダル操作をすることができる。
【0062】
この場合、回転保持機構11は、ペダル10の後方延長上に位置する仮想支点Pを中心とする円弧に沿ってペダル10の後部を上下方向に移動可能にガイドする構成であることにより、ペダル10の後方延長上に位置する仮想支点Pを中心にペダル10を上下方向に回転させることができる。このため、ペダル10の前後方向の長さを短くしても、ペダル10の前後方向の長さが長い一般的なペダルの場合と同様のペダル操作ができるので、より一層、ペダル10の踏み込み操作に違和感が生じることなく、良好にペダル操作ができる。
【0063】
また、この回転保持機構11は、ペダルシャーシ9に設けられ、ペダル10の後方延長上に位置する仮想支点Pを中心とする円弧状のガイド溝18が上下方向に沿って設けられたガイド保持部材13と、ペダル10の後部に設けられ、ガイド保持部材13のガイド溝18内をペダル10の回転動作に応じて移動する第1、第2の各ガイド軸20、21を有するガイド連結部材14と、を備えていることにより、第1、第2の各ガイド軸20、21によってペダル10に設けられたガイド連結部材14をペダルシャーシ9に設けられたガイド保持部材13に対して上下方向に移動可能に連結することができる。
【0064】
このため、この回転保持機構11では、ペダル10が上下方向に回転移動する際に、ペダル10の後方延長上で、且つペダルシャーシ9の後方に離れた位置の仮想支点Pを中心とする円弧状に形成されたガイド溝18に沿って第1、第2の各ガイド軸20、21を移動させることができるので、ペダル10全体が仮想支点Pを中心に回転移動させることができ、これによりペダル10の前後方向の長さを短くしても、ペダル10の回転角度を小さくことができるので、ペダル10の踏み込み操作に違和感が生じることなく、良好にペダル操作ができる。
【0065】
すなわち、ペダル10の後部が第1、第2の各ガイド軸20、21と共に下側に移動しながら、ペダル10の前部も下側に移動することにより、ペダル10の前後方向の長さを短くしても、ペダル10の前後方向の長さを仮想支点Pまで長くした場合のときと、同じ回転動作をするので、ペダル10の回転角度を確実に小さくすることができる。これにより、ペダル10を短くしても、ペダル10の踏み込み操作に違和感が生じることなく、ペダル10の前後方向の長さが長い一般的なペダルの場合と同様のペダル操作ができるので、より一層、良好にペダル操作をすることができる。
【0066】
この場合、ガイド溝18は、ガイド保持部材13に設けられた摺動性を有する合成樹脂製のガイド板17に形成されていることにより、ペダル10の回転動作に応じて第1、第2の各ガイド軸20、21がガイド溝18内を移動する際に、ガイド板17の摺動性(滑り性)によって第1、第2の各ガイド軸20、21を円滑に且つ良好に滑らせる移動させることができ、これによりペダル10の踏み込み操作性を向上させることができる。
【0067】
また、このペダル装置7では、ペダル10を常に上方に向けて付勢する付勢部材としてコイルばね22を備えていることにより、ペダル10が操作されていないときに、常にペダル10を所定の位置(上限位置)に押し上げることができる。このため、このペダル10は、コイルばね22のばね力に抗して踏み込まれたときに、仮想支点Pを中心に下側に回転移動しても、踏み込み力が取り除かれたときに、コイルばね22のばね力によって押し上げられて自動的に元の所定の位置に戻ることができる。
【0068】
この場合、ペダルケース8には、ペダル10の上限位置を弾力的に規制する上限ストッパ12が設けられていることにより、コイルばね22のばね力によってペダル10が押し上げられた際に、この上限ストッパ12によってペダル10を上限位置に規制することができると共に、この上限ストッパ12がゴムなどの弾性材料で形成されているので、ペダル10が上限ストッパ12に弾力的に当接することにより、異音の発生を防ぐことができる。
【0069】
また、このペダル装置7では、ペダル10の下限位置を弾力的に規制する下限ストッパ23を備えていることにより、ペダル10が踏み込まれて仮想支点Pを中心に下側に回転した際に、ペダル10を下限位置に規制することができると共に、この下限ストッパがゴムなどの弾性材料で形成されていることにより、ペダル10が下限ストッパ23に弾力的に当接するので、これにより異音の発生を防ぐことができ、良好にペダル操作をすることができる。
【0070】
この場合、下限ストッパ23は、ペダル10が踏み込まれて接触した際に、ペダル10の前端下部が楽器ケース1の設置面Kに接触し、この状態でペダル10によって弾力的に押し下げられることにより、ペダル10内の下面が下限ストッパ23の上面に接触すると共に、ペダル10の前端下部が楽器ケース1の設置された床などの設置面Kにほぼ同時に接触させることができる。
【0071】
このため、ペダル10によって下限ストッパ23が弾力的に押し下げられる際には、ペダル10の前端下部が設置面Kに接触していることにより、この設置面Kに接触しているペダル10の前端下部を中心にペダル10が回転するので、下限ストッパ23を支点としてペダル10が回転してペダル10の後部が浮き上がるのを防ぐことができ、これによってもペダル操作の向上を図ることができる。
【0072】
さらに、このペダル装置7によれば、ペダル10の回転動作に応じてスイッチ動作するスイッチ部24を備えていることにより、ペダル10の踏み込み操作に応じて楽音を良好に制御することができる。この場合、ガイド連結部材14には、ペダル10の回転動作に応じてスイッチ部24を押圧するスイッチ押圧部材27が設けられているので、ペダル10が踏み込まれたときに、スイッチ押圧部材27によってスイッチ部24を確実に且つ良好に押圧してスイッチ動作させることができる。
【0073】
なお、上述した実施形態では、ガイド保持部材13のガイド溝18がペダル10の後方延長上に位置する仮想支点Pを中心とする円弧状に形成されている場合について述べたが、必ずしもガイド溝18は円弧状に形成されている必要はなく、ほぼ垂直な直線状に形成されていても良く、また垂直方向に対して傾斜する直線状や曲線状に形成されていても良い。
【0074】
また、上述した実施形態では、ペダル10を押し上げる付勢部材として、コイルばね22を用いた場合について述べたが、必ずしもコイルばね22である必要はなく、板ばね、ねじれコイルばね、あるいはゴムなどの弾性部材を用いた構成であっても良い。
【0075】
さらに、上述した実施形態では、ガイド連結部材14に取り付けてガイド保持部材13のガイド溝18内を移動する第1、第2の各ガイド軸20、21のうち、第2のガイド軸21がガイド連結部材14であるペダル10の側壁部10bの後端部14cに取り付けられている場合について述べたが、これに限らず、ガイド連結部材14の一対の側部14bの下部に取り付けられた構成であっても良い。
【符号の説明】
【0076】
1 楽器ケース
7 ペダル装置
8 ペダルケース
9 ペダルシャーシ
10 ペダル
11 回転保持機構
12 上限ストッパ
13 ガイド保持部材
14 ガイド連結部材
17 ガイド板
18 ガイド溝
20、21 第1、第2の各ガイド軸
22 コイルばね
23 下限ストッパ
24 スイッチ部
27 スイッチ押圧部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、
この装置本体に対して上下方向に回転移動するペダルと、
このペダルの後部を上下方向に移動可能な状態で前記装置本体に対して保持する回転保持機構と、
を備えていることを特徴とするペダル装置。
【請求項2】
前記回転保持機構は、前記ペダルの後方延長上に位置する仮想支点を中心とする円弧に沿って前記ペダルの前記後部を上下方向に移動可能にガイドすることを特徴とする請求項1に記載のペダル装置。
【請求項3】
前記回転保持機構は、
前記装置本体に設けられ、前記ペダルの後方延長上に位置する前記仮想支点を中心とする円弧状のガイド溝が上下方向に沿って設けられたガイド保持部材と、
前記ペダルの前記後部に設けられ、前記ガイド保持部材の前記ガイド溝内を前記ペダルの回転動作に応じて移動する複数のガイド軸を有するガイド連結部材と、
を備えていることを特徴とする請求項2に記載のペダル装置。
【請求項4】
前記ガイド溝は、前記ガイド保持部材に設けられた摺動性を有する合成樹脂製のガイド板に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のペダル装置。
【請求項5】
前記ペダルを常に上方に向けて付勢する付勢部材を備えていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のペダル装置。
【請求項6】
前記ペダルの下限位置を弾力的に規制する下限ストッパを備えていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のペダル装置。
【請求項7】
前記下限ストッパは、前記ペダルが踏み込まれて接触した際に、前記ペダルの前端下部が前記装置本体に対する設置面に接触し、この状態で前記ペダルによって弾力的に押し下げられることを特徴とする請求項6に記載のペダル装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−58616(P2012−58616A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203673(P2010−203673)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】