説明

ペットサプリメント又はペットフード用組成物

【課題】血糖値抑制効果を発現されるために必要とされる投与量を低減させ、継続投与可能なペットサプリメント又はペットフード用組成物を提供する。
【解決手段】ヒドロキシプロポキシル基の水酸基が更にメトキシル基で置換された置換ヒドロキシプロポキシル基更と、メトキシル基で置換されていない非置換ヒドロキシプロポキシル基を有する水溶性ヒドロキシプロピルメチルセルロースであって、該非置換ヒドロキシプロポキシル基のモル分率(B)に対する、該置換ヒドロキシプロポキシル基のモル分率(A)の比(A/B)が0.4以上である水溶性ヒドロキシプロピルメチルセルロースを少なくとも含んでなるペットサプリメント又はペットフード用組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血糖値抑制効果を維持しながら摂取量の削減を付与するペットサプリメント又はペットフード用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、インスリンの作用が不足することによって血糖が上昇したときの調節能力(耐糖能)が低下するために発症する病気であり、血糖値(血液中のブドウ糖濃度)が病的に高まることによって様々な特徴的な合併症をきたす危険のある病気である。
【0003】
昨今、糖尿病はヒトに限らず、ペットにも多くの発症が確認されてきた疾患である。 治療法としてはヒトと同様の治療法であり、血糖値が高くなるとインスリン療法(注射)を開始する。しかし、ペットに毎日インスリンを注射することは費用の面を考慮した場合、非常に莫大な金額になる。加えて、その効果等を理解し得ない動物に、動物に対しての治療等に不慣れな飼い主が毎日注射をすることに、ペットと飼い主の安全性を考えた場合に難点があることは容易に理解できる。そのため、動物で糖尿病が発症した場合に、放置されている症例が殆どである。
【0004】
ここで、糖尿病について説明する。 血糖値が上昇したときインスリンが作用するためには血中にインスリンが必要なだけ分泌されることに加えて、血中からインスリンが必要なだけ消費されることの両方が必要である。血中へインスリンを分泌するのは膵臓にあるランゲルハンス島のβ細胞と呼ばれる内分泌細胞であり、逆に血中のインスリンを消費するのは肝臓、脂肪、筋肉等である。 インスリンは血糖値に応じてランゲルハンス島から分泌され肝臓等各組織でグリコ−ゲンの合成や脂肪の合成に加えてタンパク同化を促す作用を示す。糖尿病は、発生するメカニズムによりI型糖尿病とII型糖尿病に分けられる。
【0005】
II型糖尿病は、「インスリン非依存型糖尿病」ともいい、インスリン分泌低下と感受性低下の2つを原因とする糖尿病である。 患者の割合としてII型糖尿病が糖尿病全体の90%を占める。
【0006】
II型糖尿病が「インスリン非依存型糖尿病」と呼ばれるのに対して、I型糖尿病は「インスリン依存型糖尿病」と呼ばれる。原因は膵臓にあるランゲルハンス島のβ細胞と呼ばれる内分泌細胞が死滅するために発症する。飲み薬は無効で患者は必ず注射薬であるインスリンを常に携帯し自分で注射をしなければならない。
【0007】
経口投与による血糖値抑制効果を有する化合物として、発明者は、水溶性ヒドロキシプロピルメチルセルロースに注目した。セルロースにメトキシル基及びヒドロキシプロポキシル基をエーテル置換したヒドロキシプロピルメチルセルロースは、その構造の特徴としてメトキシル置換が局在化している部分がある。その構造特徴により水溶液は加熱すると分子内で局在化しているメトキシル置換が多く行われている部分が疎水和を生じ含水されたゲル状物となり、冷却するとこの疎水和が減少して元の水溶液にもどる熱可逆ゲル化性という特徴を有している。加えて、その特徴的な構造により水溶液の状態では非常に粘性が高い。 この特徴は、生体内の消化液に溶解した場合も維持される。この特徴を用いてヒドロキシプロピルメチルセルロースは、血糖値抑制効果があることが発表(非特許文献-1)されており、その効能を示した健康食品等も発売されている。
【0008】
しかし、その必要な投与量は体重1kgあたり0.05g以上が必要であり、正常人(60〜80kg)で3〜4g(粉体時の予想体積10〜20cm)となるため、一度に食事前後等の一時に投与するには多すぎる量となる。一方、投与量として少なくしうる体重の少ない動物ペットへの投与量を考えると平均的な大きさの犬(10kg)で0.5g(粉体時の予想体積2.5cm)であり、人への投与に比べれば、投与しやすくはなるものの、まだ動物に対して、継続的に、投与することは投与量的には多くて難しく、必要な投与量をより少なくできる血糖値抑制用のベットフード組成物が望まれていた。
【非特許文献1】Diabetes Care,30,1039−1043,2007
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みたもので、血糖値抑制効果を発現されるために必要とされる投与量を低減させ、継続投与可能なペットサプリメント又はペットフード用組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、発明者らは上述のような現状と糖尿病の病態及び治療方法を考慮して、必ずインスリンを注射しないといけない疾患であるI型糖尿病のモデルマウスに着目し実験を実施した。 つまり、病態モデルとしてI型糖尿病のマウスを用いて、経口投与で血糖値を抑制することが出来れば、その効果は、II型糖尿病でも有効に効果を発揮することは容易に類推される理由からである。加えて、I型、II型に関わらず経口投与による血糖値抑制とその作用による糖尿病の病態の治療が可能であれば、その発症原因が不明確な動物における糖尿病の治療が可能になり、予備軍を含めた予防効果も期待できる。
【0011】
各種のヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いて上記にかかる実験を行い、鋭意検討した結果、ヒドロキシプロポキシル基の水酸基部分が更にメトキシル基で置換されていない非置換ヒドロキシプロポキシル基のモル分率(B)に対する、該ヒドロキシプロポキシル基の水酸基がメトキシル基で置換された置換ヒドロキシプロポキシル基のモル分率(A)の比(A/B)が0.4以上である水溶性ヒドロプロピルメチルセルロースを用いることにより、血糖値抑制効果を発現するために必要とされる投与量の低減を見いだし本発明を完成した。
【0012】
本発明は、具体的には、ヒドロキシプロポキシル基の水酸基が更にメトキシル基で置換された置換ヒドロキシプロポキシル基更と、メトキシル基で置換されていない非置換ヒドロキシプロポキシル基を有する水溶性ヒドロキシプロピルメチルセルロースであって、該非置換ヒドロキシプロポキシル基のモル分率(B)に対する、該置換ヒドロキシプロポキシル基のモル分率(A)の比(A/B)が0.4以上である水溶性ヒドロキシプロピルメチルセルロースを少なくとも含んでなるペットサプリメント又はペットフード用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により,血糖値抑制効果を発現させるために、犬、猫等のペットに対して投与するペットサプリメント又はペットフード用組成物の必要とされる投与量を低減させることが可能となり、継続投与可能なペットサプリメント又はペットフード用組成物が提供できる。その結果、動物の健康管理が容易となることで、 動物の健康状態が向上し、医療費等の削減が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を具体的に詳述する。
本発明で用いる水溶性ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、好ましくは、ヒドロキシプロポキシル基の置換モル数が0.05〜1.00であって、メトキシル基の置換度が1.65〜1.88であるペットサプリメント又はペットフードに添加可能なものである。ヒドロキシプロポキシル基の置換モル数及びメトキシル基の置換度がこの範囲外となると、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが水又は消化液溶液に溶解しにくくなり、本発明の効果を充分に発揮しない場合があるからである。
また、この水溶性ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、消化液に溶解することで粘性発現する液体となる。
この水溶性ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、特に限定されるものではないが、特開2001-302701号公報に提示されているように、セルロースにアルカリ水溶液を所定量含浸させた後、必要量のメチルエーテル化剤としてのメチルクロライド及びヒドロキシプロポキシル基によるエーテル化剤としてプロピレンオキサイド等を反応させて製造する。
ここで、ヒドロキシプロポキシル基の置換モル数とは、セルロースのグルコース環単位当たりに付加したヒドロキシプロポキシル基の平均モル数をいい、メトキシル基の置換度とは、セルロースのグルコース環単位当たり、メトキシル基で置換された水酸基の平均個数をいう。
【0015】
ヒドロキシプロポキシル基の水酸基部分が更にメトキシル基で置換されていない非置換ヒドロキシプロポキシル基のモル分率(B)に対する、ヒドロキシプロポキシル基の水酸基が更にメトキシル基で置換された置換ヒドロキシプロポキシル基のモル分率(A)の比(A/B)を0.4以上にするため、先にヒドロキシプロポキシル基の置換が多く行われた後、メチル基のエーテル置換が行われるようにエーテル化剤の仕込み順序又は仕込み速度を調整する。この手法によりセルロースに導入されたヒドロキシプロピル置換基の水酸基に更にメトキシル基を導入することを可能にする。
更に詳しくは、セルロ−スと必要量のアルカリ(好ましくはカセイソーダ溶液)を反応させてアルカリセルロ−スを調製した後、ヒドロキシプロピルエ−テル化剤(例えばプロピレンオキサイド)を仕込み、好ましくは50〜95℃の温度でエーテル化反応を行なう。その後に、メチルエ−テル化剤(例えば塩化メチル(メチルクロライド))を仕込み反応させる。
あるいは、ヒドロキシプロピルエ−テル化剤(例えばプロピレンオキサイド)を仕込み、仕込まれたこのエ−テル化剤のストイチオメトリック量の好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上反応が終了した時点においても、塩化メチルのストイチオメトリック量の好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上反応が終了していないように、ヒドロキシプロピルエ−テル化剤(例えばプロピレンオキサイド)及びメチルエーテル化剤(例えば塩化メチル)を連続又は適宜仕込みながら製造する。具体的には、ヒドロキシプロピルエーテル化剤とメチルエーテル化剤は、同時に添加してもどちらかを先に添加してもよいが、ヒドロキシプロピルエ−テル化剤の仕込み時間に対するメチルエーテル化剤の仕込み時間の比が、1.3〜3、特に1.5〜3が好ましい。
【0016】
ヒドロキシプロポキシル基の置換が行われた後にメトキシ置換が行われると、ヒドロキシプロポキシル基の水酸基に更にメトキシル基が置換することができる。しかし、セルロ−スの水酸基にメトキシル基が置換してしまうと、メトキシル基には水酸基がないのでメトキシル基の置換部位に更にヒドロキプロピル基が置換することはない。
【0017】
ここで、メトキシル基と、非置換ヒドロキシブロピル基と、置換ヒドロキシプロポキシル基と、メトキシル基及びヒドロキシプロポキシル基のいずれとも置換されていない無置換基(OH)との総モル数が測定できて、更にヒドロキシプロポキシル基の水酸基部分が更にメトキシル基で置換されている置換ヒドロキシプロポキシル基の置換モル数が別途測定されるならば、置換ヒドロキシプロポキシル基の置換モル数を上記総モル数で除することで、置換ヒドロキシプロポキシル基の置換モル分率として求めることができる。
【0018】
更に、ヒドロキシプロポキシル基の水酸基部分にメトキシル基が置換されてない非置換ヒドロキシプロポキシル基の置換モル数が測定できれば、非置換ヒドロキシプロポキシル基の置換モル数を前記総モル数で除することで、非置換ヒドロキシプロポキシル基の置換モル分率として求めることができる。
【0019】
このヒドロキシプロポキシル基の置換モル数及びメトキシル基の置換度は、例えば第15改正日本薬局方記載のヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)の置換度分析方法により測定できる。この置換度の分析は核磁気共鳴法や赤外吸収分析方法でも測定は可能である。
【0020】
このヒドロキシプロピル置換部位の水酸基に更にメトキシ置換されたヒドロキシプロピル置換基のモル分率に対するヒドロキシプロピル置換基の水酸基部分に更にメトキシル置換されていないヒドロキシプロピル置換モル分率の比が0.4以上であるヒドロキシプロピルメチルセルロースであることを分析測定する方法としては、Macromolecules 20, 2413(1987)や繊維学会誌第40巻第T−504頁(1984年)に記載されているようにかかるセルロースエーテルを硫酸中で加水分解した後、中和して濾過精製したものをアセチル化して13C−NMR、液体クロマトグラフ、あるいはガスクロマトグラフにかけ質量分析装置を用いて同定した各々の検出グラフ特性から求めることができる。
【0021】
得られたヒドロキシプロビルメチルセルロースの質量平均重合度については高分子論文集第39巻第4号第293〜298頁(1982)に記載の分子量測定方法によりゲルバーミエーションクロマトグラフと光散乱法のくみあわせによる方法で重量平均分子量を測定し、単位ヒドロキシプロピルメチルセルロース分子あたりの分子量で除して質量平均重合度を測定することができる。なお、平均重合度の測定での溶媒種類や条件、温度、使用カラムや光散乱装置の波長等は前記高分子論文集に記載の条件に限定されるものでなく適宜選定できる。また重量平均分子量は、超遠心分離方法や粘度平均分子量からの換算によって求めることも可能である。
【0022】
一般的に重合度については、高いものの方が同一濃度水溶液での粘度は高くなる傾向を示す。本発明では水溶性ヒドロキシプロピルメチルセルロースの高粘度品を用いるので添加量が少なく血糖値抑制力が強いヒドロキシプロピルメチルセルロースを得ることが出来る。
【0023】
本発明で使用するヒドロキシプロピルメチルセルロースの重合度に対応する粘度としては、特には限定されないが、上記のごとく2質量%の水溶液の20℃における粘度として1000〜200000mPa・s以下が好ましい。
かかるヒドロキシプロビルメチルセルロースの粘度は、得られたヒドロキシプロピルメチルセルロース2質量%水溶液が調製できるように300mLビーカー内にヒドロキシプロピルメチルセルロース粉と熱水を入れ400rpmで攪拌しながら溶液を5℃以下に冷却し得られた水溶液を、20℃とした時の粘度を第15改正日本薬局方記載の粘度測定法の回転粘度径測定法で測定する。
本発明では、粘度が低いと血糖値抑制に必要な添加量が体重あたり0.05gを越える場合がおこることになり、実質的に動物への連続投与が難しくなる場合がある。また、この粘度が高すぎると添加したペットサプリメント又はペットフードを食した時に口の中で粘性が高まり、食感が悪くなってしまう場合がある。
本発明におけるヒドロキシプロピルメチルセルロースの水溶液は、加熱によってゲル状になることが知られている。このゲル化の温度は、塩類や糖類を含む食事成分の溶液中では低くなることがわかっており、腸内の温度においてもゲル化に近い状態になりうるこ
とが予測される。従って、ヒドロキシプルメチルセルロースは腸内においてゲル状態となり、そのゲルの強度が高くなって腸内壁に付着した状態になっていると、栄養分の腸壁への吸収が抑えられて、血糖値の早い上昇を抑制するものと考えられる。
この熱ゲル強度の評価方法としては、2質量%の水溶液を80℃でゲル化させ、そのゲルを上部から貫入棒等を一定速度で貫入させた際の貫入に必要な力を測定することによって評価することができる。
【0024】
水溶性ヒドロキシプロピルメチルセルロースのペットサプリメント又はペットフード用組成物中の含有量は、一回の摂食時に投与できるヒドロキシプロピルメルチルセルロ−ス量として体重1kgあたり好ましくは0.025g〜0.045gとなるようにする。この量が0.025gより少ないと血糖値抑制並びに食餌の摂取量の抑制の効果がない場合があり、0.045g以上であると量が多すぎて、実際の投与が困難となる場合がある。これらの投与用を実現するために、ペットフ−ドへのヒドロキシプロピルメチルセルロースの添加量は、好ましくは0.1〜10質量%、更に好ましくは0.5〜2質量%とする。ペットフ−ド風味をそこなわず効果を期待する量として好ましいからである。
【0025】
本発明のペットサプリメント又はペットフード用組成物中は、水溶性ヒドロキシプロピルメチルセルロース以外に、小麦粉等の穀物、澱粉類、糖類、油脂類、種実類、豆類、魚介類、肉類、卵類、乳類、野菜類、植物蛋白エキス、果実類、キノコ類、藻類、酵母、牧草、セルロース、酸、水等を含むことができる。その好ましい含有量は、10〜90質量%である。
【実施例】
【0026】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
木材由来の日本製紙社製の高純度溶解パルプをローラーミルにより粉砕し、目開き600μmの篩いを通過させ、栗本鐵工所製の2軸混練機KRCニーダーS1型(パドル径25mm、外径255mm、L/D=10.2、内容積0.12リットル、回転数100rpm)に10g/分で定量供給し、同時に49質量%水酸化ナトリウム溶液をパルプ供給口に設けた注入口より12.7g/分で定量供給した。約30分の連続運転により得られたアルカリセルロースのうち585.0gをプロシェア型内部攪拌羽つきの圧力容器に仕込み −97kPaまで減圧後、窒素を封入して大気圧までもどして更に−97kPaまで再減圧した。プロピレンオキサイド20.0g、塩化メチル212.6gを加圧ポンプにて(塩化メチル仕込み時間)/(プロピレンオキサイド仕込み時間)比を2とし、プロピレンオキサイドが塩化メチルより先に仕込み終わるように仕込みながら、内温を60℃に保ちながら2時間反応し、その後昇温して90℃に30分間保ってエーテル化反応を完結させた。
【0027】
反応物を、85℃以上の熱水にて洗浄し、乾燥後、更に小型ウィリーミルにて乾燥し第15改正日本薬局方記載のヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)の置換度分析方法により分析した置換度分析値よりメトキシル基の置換度1.75、ヒドロキシプロポキシルの置換モル数0.07のヒドロキシプロピルメチルセルロースを得た。
得られたヒドロキシプロピルメチルセルロースを高分子論文集第39巻第4号第293〜298頁(1982年)に記載の分子量測定方法により分子量測定し、重合度を算出したところ3700であった。
【0028】
得られたヒドロキシプロピルメチルセルロース50mgに3質量%の硫酸水溶液2mLを加え140℃にて3時間加水分解を行った後、炭酸バリウムを約0.7gを加えて中和した後、3mLのメタノールを加えて加水分解物を溶解分散し、500Gにて遠心分離した後上澄み液を0.45μmの目開きのフィルターで濾過し、1.5gのNaBHを0.2規定のNaOH水溶液10mL中に溶かした溶液120μLを加えてグルコース環の還元を37〜38℃にて1時間行った後、酢酸100μLを加え、溶媒を蒸発させ除去し、残渣物を乾固させ、ピリジン2mLと無水酢酸1mLを加えて120℃にて3時間アセチル化した。500Gにて遠心分離した後に、上澄み液を0.45μmの目開きのフィルターで濾過した。再び溶媒を除去し、ジエチレングリコールジメチルエーテル1mLに再溶解した後、150〜220℃に昇温したJ&W社のDB−5カラムに1μLを通し、FID検出器にて各分解成分の保持時間体検出時間を測定した。
予め各検出ピークについて質量分析装置にて分解成分の構造を同定したピークによる同定と面積比により、ヒドロキシプロピル基の水酸基部分が更にメトキシル基で置換されていないヒドロキシプロピル置換基のモル分率(B)に対する、ヒドロキシプロピル置換基の水酸基が更にメトキシル基で置換されたヒドロキシプロピル置換モル分率(A)の比(A/B)を求めたところ0.8であった。
【0029】
得られたヒドロキシプロピルメチルセルロース1質量%水溶液が調製できるように300mLビーカー内にヒドロキシプロピルメチルセルロース粉と熱水を入れ、400rpmで攪拌しながら溶液を10分かけて2℃ずつ冷却し、水溶液の粘度を水溶液の温度に対して測定し、粘度対温度のプロット値を結ぶ直線の傾きが大きく鈍化し始め溶解温度を測定したところ25℃であった。
【0030】
得られたヒドロキシプロピルメチルセルロースの2質量%水溶液を調製した後、50mLのビーカー内に入れ80℃のバス内で30分熱ゲル化させ、レオテック社製のレオメーターによりゲルの上部より15mm直径の円筒棒を5cm/分にて2cm観入させた時の円筒棒にかかる力を測定し円筒棒の断面積で除して熱ゲル強度g/cmを求めたところ150g/cmであった。
また、調整したヒドロキシプロピルメチルセルロースの2質量%水溶液を20℃のバス内で回転粘度計で測定したところ100000mPa・sであった。
【0031】
[実施例2〜4及び比較例1〜2]
実施例1に示した方法で作製した2質量%濃度水溶液の20℃における粘度100000mPa・sのヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いて、I型糖尿病モデルマウスに食後投与量を下記に変えて投与し、その血糖値の抑制効果を測定した。
比較例として、実施例1でのヒドロキシプロピルメチルセルロースの製造時の塩化メチル仕込み時間)/(プロピレンオキサイド仕込み時間比を1とし、メトキシル置換度1.75、ヒドロキシプロポキシル置換度0.06で、実施例1と同様の方法で求めたヒドロキシプロピル置換部位の水酸基に更にメトキシル置換されたヒドロキシプロピル置換基のモル分率に対するヒドロキシプロピル置換基の水酸基部分に更にメトキシ置換されていないヒドロキシプロピル置換モル分率の比が0.3であり、実施例1の測定方法と同様に求めた重合度3700の2質量%水溶液粘度100000mPa・sのヒドロキシプロピルメチルセルロースで実施例1と同様に実験した結果を下記に示した。比較例で用いたヒドロキシプロピルメチルセルロースについて、実施例1と同様にして測定した溶解温度と熱ゲル強度は、各々22℃、80g/cmであった。
【0032】
<実験試料>
実施例2:投与量 0.025g/kg
実施例3:投与量 0.040g/kg
実施例4:投与量 0.045g/kg
比較例1:投与量 0.025g/kg
比較例2:投与量 0.045g/kg
【0033】
<実験動物>
マウス:Balb/c種 ♂ 7週齢 各実施例 6匹使用
(ストレプトゾトシン投与、I型糖尿病 モデル)
体重18〜22g個体に限定
【0034】
<実験方法>
(1)前日17:00以降絶食状態とする。
(2)事前血糖値を測定する (血糖値0分データ)。
(3)15分間食餌を与える(最初の一匹が食べ始めた時間をスタート(0分)として計測)。
(4)15分後、飼料を外す。
(5)2質量%HPMC水溶液を経口投与する。
(0.025g/kg:25μL、0.04g/kg:40μL、0.05g/kg:50μL)
(6)投与後、血糖値を測定する。
(標準測定時間:15、45、75、105、135、180分)。
(7)各例平均値をプロットし血糖値を比較する。
【0035】
時間と血糖値のプロットを図1に示す。比較例1と比較例2は、食餌を与えて最初の一匹が食べ始めた0分から飼料を外す15分まで血糖値が急激に上昇し、15分以降は血糖値が減少した。実施例2〜4では、血糖値の上昇は低く緩やかであった。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】時間と血糖値のプロットを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシプロポキシル基の水酸基が更にメトキシル基で置換された置換ヒドロキシプロポキシル基と、メトキシル基で置換されていない非置換ヒドロキシプロポキシル基を有する水溶性ヒドロキシプロピルメチルセルロースであって、該非置換ヒドロキシプロポキシル基のモル分率(B)に対する、該置換ヒドロキシプロポキシル基のモル分率(A)の比(A/B)が0.4以上である水溶性ヒドロキシプロピルメチルセルロースを少なくとも含んでなるペットサプリメント又はペットフード用組成物。
【請求項2】
上記水溶性ヒドロキシプロピルメチルセルロースが、その2質量%濃度水溶液の20℃における粘度として1000〜200000mPa・sを有する請求項1に記載のペットサプリメント又はペットフード用組成物。
【請求項3】
上記水溶性ヒドロキシプロピルメチルセルロースが、0.05〜1.00のヒドロキシプロポキシル基の置換モル数と、1.65〜1.88のメトキシル基の置換度を有する請求項1又は請求項2に記載のペットサプリメント又はペットフード用組成物。
【請求項4】
上記水溶性ヒドロキシプロピルメチルセルロースが、消化液に溶解することで粘性発現する液体となる請求項1〜3のいずれかに記載のペットサプリメント又はペットフード用組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2010−44(P2010−44A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162217(P2008−162217)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】