説明

ペット用吸収性物品

【課題】ペットの胴回りに装着した後に回転しにくいペット用吸収性物品を提供すること。
【解決手段】液透過性の表面シート2、液不透過性の裏面層3及び表面シート2及び裏面層3の間に配置される吸収体4を備えると共に、互いに対向する第1端部11及び第2端部12と、第1端部11及び第2端部12に直交し互いに対向する一対の側部17と、を有して矩形形状に構成され、ペットの胴回りに巻きつけられて装着されるペット用吸収性物品1であって、第1端部11の近傍の表面シート2側に設けられる第1係合部7と、第2端部12の近傍の裏面層3側に設けられ第1係合部7に係合可能な第2係合部8と、第2端部12の近傍の表面シート2側に配置される滑り止め部材91と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、犬やネコ等のペットの胴回りに巻きつけて用いられるペット用吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、犬やネコ等のペットに用いられるペット用使い捨ておむつが提案されている。このようなペット用使い捨ておむつは、装着状態において、ペットの肛門部及び後足の付け根間に位置する尿道口を覆うことで、ペットの糞及び尿を捕捉している。
【0003】
ところで、ペットの種類(例えば、胴長短足犬であるミニチュアダックスフンド)によっては、尿道口の位置が後足の付け根間よりも前方に位置する場合がある。また、雄犬は、雌犬に比して、尿道口が前方に位置する。このように、尿道口が後足の付け根間よりも前方に位置するペットに、ペット用使い捨ておむつを装着した場合には、おむつから尿道口が露出してしまい、ペットの尿がもれてしまう場合があった。
【0004】
そこで、帯状に構成されると共に、ペットの胴回り部に巻きつけて装着されるペット用吸収性物品が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
このような、帯状に構成されたペット用吸収性物品によれば、尿道口の位置にかかわらず、確実に尿道口を覆って装着させられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−20533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ペットの胴回りに巻きつけて装着するペット用吸収性物品は、装着後のペットの動きによって回転してしまったり、ペットが排泄した尿等の重みにより重心の位置が変わることで回転してしまったりする場合があった。このように、装着後にペット用吸収性物品が回転してしまうと、ペット用吸収性物品における尿等の吸収性に優れた位置と尿道口の位置とがずれてしまい、排泄された尿等を適切に吸収できなくなってしまう。
【0007】
従って、本発明は、ペットの胴回りに装着した後に回転しにくいペット用吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、液透過性の表面シート、液不透過性の裏面層及び該表面シート及び該裏面層の間に配置される吸収体を備えると共に、互いに対向する第1端部及び第2端部と、該第1端部及び該第2端部に直交し互いに対向する一対の側部と、を有して矩形形状に構成され、ペットの胴回りに巻きつけられて装着されるペット用吸収性物品であって、前記第1端部の近傍の前記表面シート側に設けられる第1係合部と、前記第2端部の近傍の前記裏面層側に設けられ前記第1係合部に係合可能な第2係合部と、前記第2端部の近傍の前記表面シート側に配置される滑り止め部材と、を備えるペット用吸収性物品に関する。
【0009】
また、前記第1係合部は、複数のフック部を有するフック部材により構成され、前記第2係合部は、前記フック部材に係合可能なループ材により構成されることが好ましい。
【0010】
また、前記滑り止め部材は、前記第1係合部を構成するフック部材と同じ部材により構成されることが好ましい。
【0011】
また、ペット用吸収性物品は、前記第1端部の近傍の前記裏面層側に設けられ、前記滑り止め部材に係合可能な第3係合部を更に備えることが好ましい。
【0012】
また、前記裏面層は、前記フック部材に係合可能な不織布を含んで構成され、前記第2係合部及び前記第3係合部は、前記裏面層を構成する不織布により構成されることが好ましい。
【0013】
また、ペット用吸収性物品は、前記第1端部の近傍の前記表面シート側における前記第1係合部よりも前記第2端部側に配置される補助滑り止め部材を更に備えることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、ペット用吸収性物品の製造方法であって、帯状の表面シートと帯状の裏面層との間に、長手方向に所定間隔をあけて吸収体を配置して吸収性物品本体の連続体を形成する連続体形成工程と、前記吸収性物品本体の連続体における前記帯状の表面シート側に、長手方向に所定間隔をあけてフック部材を配置するフック部材配置工程と、前記吸収性物品の連続体における前記フック部材が配置された位置において、該吸収性物品の連続体を幅方向に切断する切断工程と、を備えるペット用吸収性物品の製造方法に関する。
【0015】
また、前記フック部材配置工程において、前記フック部材は、前記吸収性物品の連続体における前記吸収体が配置されていない領域に配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のペット用吸収性物品によれば、ペットの胴回りに装着した後に回転しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係るペット用吸収性物品を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態のペット用吸収性物品を表面シート側から視た平面図である。
【図3】第1実施形態のペット用吸収性物品を裏面層側から視た平面図である。
【図4】図2のA−A線断面図である。
【図5】図1のB−B線断面図である。
【図6】図2のC−C線断面図である。
【図7】第1実施形態のペット用吸収性物品をペットに装着する過程を示す図であり、第2端部側をペットの背中に位置させた状態を示す図である。
【図8】第1実施形態のペット用吸収性物品をペットの胴回りに装着した状態を示す図である。
【図9A】第1実施形態のペット用吸収性物品の製造方法における連続体形成工程を模式的に示す平面図である。
【図9B】第1実施形態のペット用吸収性物品の製造方法におけるフック部材配置工程を模式的に示す平面図である。
【図9C】第1実施形態のペット用吸収性物品の製造方法における切断工程を模式的に示す平面図である。
【図10】第2実施形態のペット用吸収性物品を表面シート側から視た平面図である。
【図11】第2実施形態のペット用吸収性物品を裏面層側から視た平面図である。
【図12】第3実施形態のペット用吸収性物品を表面シート側から視た平面図である。
【図13】図12のD−D線断面図である。
【図14】第4実施形態のペット用吸収性物品を表面シート側から視た平面図である。
【図15A】突起部材の第1変形例を示す図である。
【図15B】突起部材の第2変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のペット用吸収性物品の好ましい各実施形態について、図面を参照しながら説明する。まず、第1実施形態のペット用吸収性物品1について、図1〜図6を参照しながら説明する。
【0019】
第1実施形態のペット用吸収性物品1は、図1〜図3に示すように、互いに対向する第1端部11及び第2端部12と、これら第1端部11及び第2端部12に直交し互いに対向する一対の側部17と、を有して矩形形状に構成され、ペットの胴回り部に巻きつけて装着される。このペット用吸収性物品1は、尿道口が後足の付け根間よりも前方に位置するペット(例えば、ミニチュアダックスフンド等の胴長短足犬)に特に好適に用いられる。
【0020】
ペット用吸収性物品1は、図1〜図6に示すように、液透過性の表面シート2と、液不透過性の裏面層3を構成する裏面シート31及び防水シート32と、吸収体4と、一対のサイドシート5と、第1弾性部材61及び第2弾性部材62と、第1係合部7と、第2係合部8と、滑り止め部材91と、第3係合部92と、を備える。
【0021】
表面シート2は、矩形形状に構成される。表面シート2は、主として、装着対象のペットの身体に当接する側の面を構成する。表面シート2としては、有孔又は無孔の不織布や多孔性プラスティックシートを用いることができる。
【0022】
裏面シート31は、図3〜図6に示すように、表面シート2よりも幅広で、表面シート2と略等しい長さの矩形形状に構成される。裏面シート31は、ペット用吸収性物品1の反身体側の面を構成する。
防水シート32は、裏面シート31よりも幅狭、かつ、表面シート2よりも幅広に構成され、裏面シート31における表面シート2側の面に配置される。
裏面シート31及び防水シート32としては、疎水性の不織布、不透水性のプラスティックフィルム、不織布と不透水性プラスティックフィルムとのラミネートシート、耐水性の高いメルトブローン不織布を強度の強いスパンボンド不織布で挟んだSMS不織布等を用いることができる。第1実施形態では、裏面シート31は、後述のフック部材に係合可能な不織布により構成される。
【0023】
吸収体4は、図5に示すように、重ね合わせられた表面シート2及び裏面層3の間に介在配置される。吸収体4は、図2及び図3に示すように、表面シート2及び裏面シート31よりも幅が狭く、かつ、長さの短い矩形形状に構成される。吸収体4は、平面視において、表面シート2及び裏面シート31の幅方向の略中央部に、長手方向の一端側から他端側に亘って配置される。吸収体4としては、フラッフ状パルプ及び高吸収ポリマーを、ティッシュ等のコアラップ材により被覆したものを用いることができる。
吸収体4に用いられるフラッフ状パルプとしては、例えば、化学パルプ、セルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維が挙げられる。高吸収ポリマーとしては、デンプン系、アクリル酸系、アミノ酸系の粒子状又は繊維状のポリマーが挙げられる。
【0024】
一対のサイドシート5は、図2に示すように、細長い矩形形状に構成され、表面シート2の長手方向に沿う側部の身体側にそれぞれ配置される。一対のサイドシート5の長さは、表面シート2及び裏面シート31の長さと略等しく構成される。一対のサイドシート5の外側縁は、図4及び図5に示すように、裏面シート31の側縁の位置と一致している。一対のサイドシート5の外側縁側は、裏面シート31の側部に接合されている。
【0025】
一対のサイドシート5の内側縁の一部は、図1及び図5に示すように、自由端となっている。より具体的には、一対のサイドシート5の内側縁は、図4及び図6に示すように、ペット用吸収性物品1の長手方向LDの一端側に位置する第1端部11近傍、及び他端側に位置する第2端部12近傍において、表面シート2に接合されている。そして、一対のサイドシート5の内側縁は、図1及び図5に示すように、一対のサイドシート5における長手方向LDの一端部及び他端部を除く部分において、自由端となっている。
【0026】
サイドシート5としては、撥水性又は疎水性を有するものが好ましく用いられ、具体的には、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、サーマルボンド不織布、メルトブローン不織布、ニードルパンチ不織布、エアスルー不織布等の各種不織布を用いることができる。不織布を構成する素材繊維としてはポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0027】
第1弾性部材61は、図1〜図3に示すように、一対のサイドシート5それぞれの内側縁近傍に配置される。より具体的には、第1弾性部材61は、図5に示すように、内側縁側で折り返されたサイドシート5の間に挟まれると共に、ホットメルト接着剤により伸長状態でサイドシート5に固定される。第1弾性部材61は、図2及び図3に示すように、伸長状態において、吸収体4の長手方向の長さと略同じ長さで一対のサイドシート5に配置される。
【0028】
第2弾性部材62は、図1〜図3に示すように、ペット用吸収性物品1の長手方向LDに沿う一対の側部17それぞれに配置される。より具体的には、第2弾性部材62は、図5に示すように、一対のサイドシート5と裏面シート31との間に配置される。また、第2弾性部材62は、伸長状態で、ホットメルト接着剤により、サイドシート5及び裏面シート31に固定される。
第2弾性部材62は、伸長状態において、吸収体4の長手方向の長さと略同じ長さでペット用吸収性物品1の長手方向LDに沿う一対の側部17それぞれに配置される。
【0029】
第1弾性部材61及び第2弾性部材62としては、細長く、伸び縮みする材料であればよく、天然ゴムからなる糸状ゴム、平ゴム等や、ウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、PE等の熱可塑性エラストマーを用いることができる。更に具体的には、熱可塑性エラストマーとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−αオレフィン共重合体等を糸状に成形するか又はフィルムに成型し細幅にスリットしたものが挙げられる。
【0030】
第1係合部7は、図1〜図3に示すように、第1端部11の近傍の内面(表面シート2側の面)に配置される。
尚、本明細書において、第1端部11の近傍とは、第1端部11から、ペット用吸収性物品1の長手方向LDの長さの30%程度の長さの範囲を示す。また、後述の第2端部12の近傍とは、第2端部12から、ペット用吸収性物品1の長手方向LDの長さの30%程度の長さの範囲を示す。
第1実施形態では、第1係合部7は、矩形形状のフック部材により構成される。このフック部材は、長手方向がペット用吸収性物品1の幅方向WDに沿うように配置されて、第1端部11の内面に接合される。より具体的には、図2及び図4に示すように、フック部材は、長手方向における中央領域が表面シート2に接合され、長手方向の一端側及び他端側がサイドシート5に接合される。
【0031】
第1係合部7を構成するフック部材の長手方向の長さW1は、吸収体4の幅W2よりも長く構成される。このフック部材の長手方向の長さW1は、ペット用吸収性物品1をペットに装着する場合の第1端部11と第2端部12との係合力を好適に得る観点から、ペット用吸収性物品1の幅方向WDの長さW3の30%〜80%であることが好ましく、45%〜70%であることがより好ましい。
【0032】
フック部材は、図4に示すように、矩形形状の基部73と、この基部71の一方の面に設けられる複数のフック部72と、を備える。
フック部材は、ポリプロピレン等の合成樹脂材により基部71及び複数のフック部72が一体的に形成される。
【0033】
第2係合部8は、図1〜図3に示すように、第2端部12の近傍の外面(裏面層3側)に設けられる。第1実施形態では、第2係合部8は、フック部材に係合可能なループ材により構成される。このループ材は、図1及び図2に示すように、帯状に構成され、ループ材の長手方向がペット用吸収性物品1の幅方向WDに沿うように配置される。ループ材の長手方向における長さ(ペット用吸収性物品1の幅方向WDに沿う方向における長さ)W4は、第1係合部7を構成するフック部材の長さW1よりも長く構成される。また、ループ材の幅方向における長さ(ペット用吸収性物品1の長手方向LDに沿う方向における長さ)L2は、第1係合部7を構成するフック部材の長さL1よりも長く構成される。
【0034】
ループ材は、図6に示すように、帯状の基部81と、この基部81の一方の面に設けられる複数のループ部82と、を備える。ループ材は、複数のループ部82が形成された面がペット用吸収性物品1の外面となるように、裏面シート31に取り付けられる。
ループ材は、ポリエステル等の合成樹脂材により基部81及び複数のループ部82が一体的に形成される。
【0035】
滑り止め部材91は、図1〜図3に示すように、第2端部12の近傍の内面(表面シート2側)に配置される。この滑り止め部材91は、ペット用吸収性物品1をペットの胴回りに装着した後に、このペット用吸収性物品1が胴回り方向に回転することを防ぐ(詳細は後述する)。滑り止め部材91は、ペットの胴回りに装着した場合に、ペットの体毛に食い込んで胴回り方向へのペット用吸収性物品1の回転を好適に防ぐ観点から、複数の突起状の部材を備えて構成されることが好ましい。
【0036】
第1実施形態では、滑り止め部材91は、第1係合部7を構成するフック部材と同じ部材により構成される。また、滑り止め部材91の長さ及び幅は、第1係合部7を構成するフック部材の長さW1及び幅L1と同じ大きさに構成される。滑り止め部材91は、複数のフック部72が設けられた面がペット用吸収性物品1の内面となるように、表面シート2及び一対のサイドシート5に取り付けられる。
【0037】
第3係合部92は、図1及び図3に示すように、第1端部11の近傍の外面(裏面層3側)に設けられる。第1実施形態では、第3係合部92は、第1端部11の近傍に配置された滑り止め部材91を構成するフック部材に係合可能な裏面シート31により構成される。
【0038】
以上のペット用吸収性物品1は、第1弾性部材61がペット用吸収性物品1の長手方向LDに沿って伸長状態で一対のサイドシート5に固定されている。また、第2弾性部材62がペット用吸収性物品1の長手方向LDに沿って伸長状態でサイドシート5と裏面シート31との間に固定されている。
そのため、ペット用吸収性物品1は、自然状態(外力を付加しない状態)では、第1弾性部材61及び第2弾性部材62が収縮して、図1に示すように、表面シート2側が内面を構成するように第1端部11と第2端部12とが近づいた立体的な形状となる。これにより、ペット用吸収性物品1の長手方向LDに沿う一対の側部17に、長手方向LDに伸縮可能な一対の胴回りギャザー部13が形成される(図1参照)。また、一対のサイドシート5における自由端側が立ち上がり、一対のサイドシート5の内面と表面シート2の外面との間に、それぞれ、ポケット部14,15が形成される(図5参照)。
【0039】
次に、第1実施形態のペット用吸収性物品1をペットに取り付ける手順について、図7及び図8を参照しながら説明する。図7及び図8は、第1実施形態のペット用吸収性物品1をペットに装着する過程を示す図であり、図7は、第2端部12をペットの背中に位置させた状態を示す図であり、図8は、ペット用吸収性物品1をペットの胴回りに装着した状態を示す図である。
【0040】
まず、図7に示すように、ペット用吸収性物品1の第2端部12をペットの背中に位置させて、この第2端部12の近傍を装着者の片方の手で押さえる。次いで、第2端部12の近傍を片方の手で押さえたまま、ペット用吸収性物品1の第1端部11を他方の手で持って、ペット用吸収性物品1をペットの腹側を覆うように巻きつける。
【0041】
次いで、ペット用吸収性物品1の第1端部11を引っ張って、一対の胴回りギャザー部13をペットの胴回りと密着させる。
次いで、図8に示すように、ペット用吸収性物品の第1端部11の内面(表面シート2側の面)に配置されたフック部材(第1係合部)7を第2端部12の外面(裏面シート31側の面)に設けられたループ材(第2係合部)8に係合させる。これにより、ペット用吸収性物品1がペットの胴回りに巻きつけられる。
【0042】
ここで、第2端部12の近傍の内面側には、複数のフック部72を備えるフック部材(滑り止め部材91)が配置されている。そのため、ペット用吸収性物品1をペットの胴回りに巻きつけたときに、滑り止め部材91における複数のフック部72がペットの背中に生えている体毛に食い込む。これにより、ペット用吸収性物品1をペットに装着した後に、ペットが動き回ったり、ペットが排泄した尿等の重みにより重心の位置が変わったりした場合であっても、ペット用吸収性物品1は、装着した位置から胴回り方向に回転しにくい。
【0043】
また、第1実施形態では、滑り止め部材91を、第1係合部7を構成するフック部材と同じ部材により構成し、また、第1端部11の外面側に、フック部材に係合可能な第3係合部92を設けた。これにより、ペット用吸収性物品1を装着する場合に、第2端部12ではなく、第1端部11をペットの背中に位置させても、ペット用吸収性物品1を、ペットに装着させられる。
【0044】
次に、第1実施形態のペット用吸収性物品1の製造方法について、図9A〜図9Cを参照しながら説明する。図9A〜図9Cは、ペット用吸収性物品1の製造方法におけるそれぞれの工程の平面図を示す。
【0045】
本発明のペット用吸収性物品1の製造方法は、連続体形成工程S1と、フック部材配置工程S2と、切断工程S3と、を備える。
【0046】
連続体形成工程S1では、ペット用吸収性物品本体の連続体100が形成される。より具体的には、連続体形成工程S1では、図9Aに示すように、帯状の表面シート200と帯状の裏面層300との間に、長手方向に所定間隔をあけて吸収体4が配置される。また、帯状の表面シート200の一対の側部17に、それぞれ、帯状のサイドシート500が配置される。
【0047】
フック部材配置工程S2では、図9Bに示すように、ペット用吸収性物品本体の連続体100における帯状の表面シート200側に、長手方向に所定間隔をあけてフック部材700が配置される。このフック部材700は、ペット用吸収性物品本体の連続体100における吸収体4が配置されていない領域に配置される。また、フック部材配置工程S2では、ペット用吸収性物品本体の連続体100における帯状の裏面層300側に、ループ材8が配置される。ループ材8は、フック部材700を、ペット用吸収性物品本体の連続体100の流れ方向に二等分した場合における一方に重なるように配置される。
【0048】
切断工程S3では、図9Cに示すように、フック部材配置工程S2においてフック部材700及びループ材8が配置されたペット用吸収性物品本体の連続体100が、長手方向に所定間隔をあけて幅方向に切断される。より具体的には、切断工程S3では、ペット用吸収性物品本体の連続体100が、フック部材700を流れ方向に二等分する位置において切断される。これにより、二等分されたフック部材700の一方により第1係合部7が形成され、二等分されたフック部材700の他方により滑り止め部材91が形成された第1実施形態のペット用吸収性物品1が製造される。
【0049】
以上説明した第1実施形態のペット用吸収性物品1及びペット用吸収性物品1の製造方法によれば、以下のような作用効果を奏する。
【0050】
(1)ペット用吸収性物品1を、第1端部11の近傍の表面シート2側に設けられる第1係合部7と、第2端部12の近傍の裏面層3側に設けられる第2係合部8と、第2端部12の近傍の表面シート2側に配置される滑り止め部材91と、を含んで構成した。これにより、ペット用吸収性物品1をペットの胴回りに巻きつけたときに、滑り止め部材91がペットの背中に密着して、装着後のペット用吸収性物品1が胴回り方向に回転することを規制する。よって、ペット用吸収性物品1をペットに装着した後に、ペットが動き回ったり、ペットが排泄した尿等の重みにより重心の位置が変わったりした場合においても、ペット用吸収性物品1が装着した位置から胴回り方向に回転しにくい。
【0051】
(2)第1係合部7をフック部材により構成し、第2係合部8をループ材8により構成した。これにより、裏面層3のフック部材に対する係合力に依存することなく、裏面層3を構成する素材を選択できるので、裏面層3を構成する素材の選択の自由度を向上できる。
【0052】
(3)滑り止め部材91を、第1係合部7を構成するフック部材と同じ部材により構成した。これにより、第1係合部7を構成するフック部材と同じ部材を利用して滑り止め部材91を構成できる。よって、ペット用吸収性物品1を構成する部材の点数を増やすことなく、滑り止め部材91を備えるペット用吸収性物品を製造できる。
【0053】
(4)ペット用吸収性物品1を、第1端部11の近傍の裏面層3側に設けられ滑り止め部材91に係合可能な第3係合部92を含んで構成した。これにより、滑り止め部材91と第3係合部92とを係合させることによっても、ペット用吸収性物品1をペットの胴回りに巻きつけて装着させられる。よって、ペット用吸収性物品1を装着する場合に、第2端部12ではなく、第1端部11をペットの背中に位置させても、ペット用吸収性物品1を、ペットに装着させられる。また、この場合、第1係合部7を、滑り止め部材として機能させられる。
【0054】
(5)ペット用吸収性物品1を、ペット用吸収性物品の連続体100におけるフック部材700が配置された位置において、このペット用吸収性物品の連続体100を幅方向に切断する切断工程S3を含む製造方法により製造した。これにより、フック部材配置工程S2で配置したフック部材700を切断工程S3において切断することで、第1係合部7及び滑り止め部材91を備えるペット用吸収性物品1を簡易に製造できる。よって、ペット用吸収性物品1の製造効率を向上できる。
【0055】
次に、本発明の第2実施形態に係るペット用吸収性物品1について、図10及び図11を参照しながら説明する。図10は、第2実施形態のペット用吸収性物品1を表面シート2側から視た平面図である。図11は、第2実施形態のペット用吸収性物品1を裏面層3側から視た平面図である。
尚、第2実施形態以降の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0056】
第2実施形態のペット用吸収性物品1Aは、主として、第2係合部材8Aの構成、及び滑り止め部材91Aの構成において、第1実施形態と異なる。
第2実施形態では、第2係合部材8Aは、図10及び図11に示すように、裏面層3を構成する不織布である裏面シート31により構成される。また、滑り止め部材91Aの幅(ペット用吸収性物品1Aの長手方向LDに沿う方向における長さ)L3は、第1係合部7を構成するフック部材の幅(ペット用吸収性物品1Aの長手方向LDに沿う方向における長さ)L1よりも長く構成される。言い換えれば、第2実施形態では、滑り止め部材91Aの面積は、第1係合部7の面積よりも広く構成される。
【0057】
(6)滑り止め部材91Aの幅L3を、第1係合部7の幅L1よりも長く構成した。これにより、滑り止め部材91Aの面積を第1係合部7よりも広く構成できるので、滑り止め部材91Aによるペット用吸収性物品1Aの回転防止効果をより向上できる。
【0058】
(7)裏面層3を、フック部材に係合可能な不織布により構成される裏面シート31を含んで構成し、この裏面シート31により第2係合部8及び第3係合部92を構成した。これにより、フック部材に係合可能な部材を別途配置することなく、第1係合部7又は滑り止め部材91を、第2係合部8又は第3係合部92に係合させられるので、ペット用吸収性物品1の製造に係る部材の点数を削減できる。
【0059】
次に、本発明の第3実施形態に係るペット用吸収性物品1Bについて、図12及び図13を参照しながら説明する。図12は、第3実施形態のペット用吸収性物品1Bを表面シート側から視た平面図であり、図13は、図12のD−D線断面図である。
第3実施形態のペット用吸収性物品1は、滑り止め部材91Bの構成において第1実施形態と異なる。
【0060】
第3実施形態では、滑り止め部材91Bは、図12及び図13に示すように、矩形形状の基部911Bと、この基部911Bの一方の面に設けられる複数の突起部材912Bとを備える。複数の突起部材912Bは、軸部913Bと、この軸部913Bの先端部に設けられ、軸部913Bの直径よりも大きな径を有する拡径部914Bと、を備える。複数の突起部材912Bは、図13に示すように、先端側が第1端部11側に向かって傾斜して設けられる。また、複数の突起部材912Bそれぞれにおける拡径部914Bの先端部は、丸みを帯びた形状となっている。複数の突起部材912Bそれぞれの長さH1は、ペットの体毛に対する食い込み性を高める観点から、好ましくは150μm〜1000μm、より好ましくは250μm〜500μmである。
第3実施形態のペット用吸収性物品1によれば、上述の(1)、(2)、(4)、(5)の作用効果を奏する他、以下のような作用効果を奏する。
【0061】
(8)滑り止め部材91Bを、複数の突起部材912Bの先端側を第1端部11側に向かって傾斜させて構成した。これにより、滑り止め部材91Bをペットの身体に当接させてペット用吸収性物品1Bをペットの胴回りに巻きつけた場合に、複数の突起部材912Bをペットの体毛に好適に食い込ませられる。よって、滑り止め部材912Bによるペット用吸収性物品1の回転防止効果をより向上できる。
【0062】
(9)複数の突起部材912Bを、軸部913Bと、この軸部913Bの先端部に設けられる拡径部914Bと、を含んで構成し、この拡径部914Bの先端部を、丸みを帯びさせて構成した。これにより、ペット用吸収性物品1Bをペットに装着した場合に、複数の突起部材912Bがペットの身体に与える刺激を低減できるので、滑り止め部材91Bによりペットの身体を傷つけにくくできる。
【0063】
次に、本発明の第4実施形態に係るペット用吸収性物品1Cについて、図14を参照しながら説明する。図14は、第3実施形態のペット用吸収性物品1Cを表面シート側から視た平面図である。
第3実施形態のペット用吸収性物品1Cは、補助滑り止め部材93を具備する点で、第1実施形態と異なる。
補助滑り止め部材93は、図14に示すように、第1端部11の近傍の表面シート2側における第1係合部7よりも第2端部12側に配置される。この補助滑り止め部材93は、第1係合部7及び滑り止め部材91を構成するフック部材と同じ部材により構成される。
【0064】
第4実施形態のペット用吸収性物品1Cによれば、上述の(1)〜(5)の作用効果を奏する他、以下のような作用効果を奏する。
【0065】
(10)ペット用吸収性物品1Cを、補助滑り止め部材93を含んで構成した。これにより、滑り止め部材91が配置された第2端部12側だけでなく、第1端部11側においても、装着後のペット用吸収性物品1Cが胴回り方向に回転することを規制できる。よって、ペット用吸収性物品1を、装着した位置から胴回り方向により回転しにくくできる。
【0066】
以上、本発明の好ましい各実施形態について説明したが、本発明は、上述した各実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0067】
例えば、上述した各実施形態では、裏面層3を、裏面シート31及び防水シート32の2層により構成したが、これに限らない。即ち、裏面層を、裏面シート又は防水シートのみにより構成してもよい。
【0068】
また、第1実施形態、第2実施形態及び第4実施形態では、滑り止め部材91を、フック部材により構成したが、これに限らない。即ち、滑り止め部材を、粘着材やゴム等の摩擦係数の大きな部材により構成してもよい。
【0069】
また、第1実施形態〜第4実施形態では、第1係合部7をフック部材により構成し、第2係合部8をループ材又はフック部材に係合可能な裏面シート31により構成したが、これに限らない。即ち、第2係合部をフック部材により構成し、第1係合部をループ材又はフック部材に係合可能な表面シート及びサイドシートにより構成してもよい。
【0070】
また、第3実施形態では、複数の突起部材912Bを、軸部913Bと拡径部914Bとを含んで構成したが、これに限らない。即ち、図15Aに示すように、複数の突起部材912Dを、拡径部を含まずに構成し、軸部の先端側を屈曲させて構成してもよく、また、図15Bに示すように、複数の突起部912Eを、軸部の先端側を分岐させ、かつ、屈曲させて構成してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 ペット用吸収性物品
2 表面シート
3 裏面層
4 吸収体
5 サイドシート
7 第1係合部(フック部材)
8 第2係合部(ループ材)
11 第1端部
12 第2端部
17 側部
31 裏面シート
32 防水シート
71 基部
72 フック部
91 滑り止め部材(フック部材)
92 第3係合部
93 補助滑り止め部材
S1 連続体形成工程
S2 フック部材配置工程
S3 切断工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性の表面シート、液不透過性の裏面層及び該表面シート及び該裏面層の間に配置される吸収体を備えると共に、互いに対向する第1端部及び第2端部と、該第1端部及び該第2端部に直交し互いに対向する一対の側部と、を有して矩形形状に構成され、ペットの胴回りに巻きつけられて装着されるペット用吸収性物品であって、
前記第1端部の近傍の前記表面シート側に設けられる第1係合部と、
前記第2端部の近傍の前記裏面層側に設けられ前記第1係合部に係合可能な第2係合部と、
前記第2端部の近傍の前記表面シート側に配置される滑り止め部材と、を備えるペット用吸収性物品。
【請求項2】
前記第1係合部は、複数のフック部を有するフック部材により構成され、
前記第2係合部は、前記フック部材に係合可能なループ材により構成される請求項1に記載のペット用吸収性物品。
【請求項3】
前記滑り止め部材は、前記第1係合部を構成するフック部材と同じ部材により構成される請求項2に記載のペット用吸収性物品。
【請求項4】
前記第1端部の近傍の前記裏面層側に設けられ、前記滑り止め部材に係合可能な第3係合部を更に備える請求項3に記載のペット用吸収性物品。
【請求項5】
前記裏面層は、前記フック部材に係合可能な不織布を含んで構成され、
前記第2係合部及び前記第3係合部は、前記裏面層を構成する不織布により構成される請求項4に記載のペット用吸収性物品。
【請求項6】
前記第1端部の近傍の前記表面シート側における前記第1係合部よりも前記第2端部側に配置される補助滑り止め部材を更に備える請求項1〜5のいずれかに記載のペット用吸収性物品。
【請求項7】
請求項3〜5のいずれかに記載のペット用吸収性物品の製造方法であって、
帯状の表面シートと帯状の裏面層との間に、長手方向に所定間隔をあけて吸収体を配置して吸収性物品本体の連続体を形成する連続体形成工程と、
前記吸収性物品本体の連続体における前記帯状の表面シート側に、長手方向に所定間隔をあけてフック部材を配置するフック部材配置工程と、
前記吸収性物品本体の連続体における前記フック部材が配置された位置において、該吸収性物品本体の連続体を幅方向に切断する切断工程と、を備えるペット用吸収性物品の製造方法。
【請求項8】
前記フック部材配置工程において、前記フック部材は、前記吸収性物品本体の連続体における前記吸収体が配置されていない領域に配置される請求項7に記載のペット用吸収性物品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【公開番号】特開2013−46587(P2013−46587A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186390(P2011−186390)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)