説明

ペット用焼き麩

【課題】低カロリーで高蛋白質食品である焼き麩にペットが食しやすいように工夫を凝らして、もってペットが焼き麩を食することによりペットのダイエットを可能にするペット用食品を提供する。
【解決手段】ペット、特にペット犬にとって嗜好性のある香料が含まれているペット用焼き麩である。前記嗜好性のある香料としては、天然由来の成分を含まないことを特徴とする。また前記嗜好性のある香料として、乳製品系、甘味系、畜肉系および魚介系のうちの一種以上を含むことを特徴とする。また当該ペット用焼き麩は、ユッカエキス、オリゴ糖およびカルシウム塩類のうちの二種以上を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペット用、特にペット犬用のダイエット飼料として用いられる焼き麩に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ペット、特にペット犬はマンションなどの狭い住環境で育てられることが多く、また飼い主は手間のかかる散歩などを省く傾向にあり、これらを原因として運動不足の肥満した犬が多くなっている。
【0003】
さらに犬は雑食であるため、飼い主の飼い方によっては高カロリーの食事を与えてしまい、肥満犬となってしまうなどの問題が多く見られる。
【0004】
このような問題に対して、小麦グルテンおよび小麦粉を主成分として焼成してなる焼き麩様の食品中に、炭の粉末が分散して含まれている犬用のダイエット食品を製造する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、この提案は、炭で全体のカロリーを低下させるものであり、犬の嗜好性にはなんら関係なく、嗜好性物質としてチキンエキスなど動物エキスを添加することは記載されているが、エキスを使用するためアレルギーを起こしやすいペプチドなどが含まれている可能性が高く、犬種によっては必ずしも好ましいものではない。
【0006】
また、本来食用でない炭を与えることは犬にとって必ずしも好ましいことではなく、飼い主においても黒い炭の塊を食べさせるなどの違和感を覚えるなどの問題がある。
【0007】
また、この提案においては、腸内細菌層の改善や糞便臭の低減効果などには触れていない。
【0008】
また、ペット用ではなく人が食べる麩様小麦グルテン食品が提案されている(特許文献2参照)。
【0009】
しかしながら、この提案では、栄養強化を目的として栄養強化剤、調味料、甘味料、食物繊維などを練り込み、またはその麩様食品の表面に乳酸菌、ヨーグルト、チョコレート、オリゴ糖、黒糖、醤油、味噌などを塗布することは記載されているが、犬などペットにとっての嗜好性香料に関しては、なんら記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4444365号公報
【特許文献2】特開2002−369661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は以上の点に鑑みて、低カロリーで高蛋白質食品である焼き麩にペットが食しやすいように工夫を凝らして、もってペットが焼き麩を食することによりペットのダイエットを可能にするペット用食品を提供することを目的とする。また、もともと低カロリーで高蛋白質食品である焼き麩などにペットの嗜好性のある物質をわざわざ炭などに吸着させることなく、アレルギーの心配がない低カロリーでペットの健康状態の向上と糞便臭の低減ができるペット用食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明者らは上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、焼き麩に嗜好性の高い香料を含有させることで、ペットが何の抵抗もなく好んで焼き麩を摂食することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明の請求項1に係る発明は、ペット、特にペット犬にとって嗜好性のある香料を含むことを特徴とするペット用焼き麩に関する。
【0014】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記嗜好性のある香料は、天然由来の成分を含まないことを特徴とする請求項1記載のペット用焼き麩に関する。
【0015】
また、本発明の請求項3に係る発明は、前記嗜好性のある香料は、乳製品系、甘味系、畜肉系および魚介系のうちの一種以上を含むことを特徴とする請求項1または2記載のペット用焼き麩に関する。
【0016】
更にまた、本発明の請求項4に係る発明は、当該ペット用焼き麩は、ユッカエキス、オリゴ糖およびカルシウム塩類のうちの二種以上を含むことを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載のペット用焼き麩に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、低カロリーで高蛋白質の焼き麩をペットに無理なく摂食させることができるとともに、ペットの腸内細菌の健全化および糞便臭の低減なども同時に行うことが可能となった。
【0018】
本発明に用いる焼き麩の原料配合は、特に限定されるものではない。例えば原料には、冷凍グルテン、活性グルテン粉末、強力小麦粉、粳粉など以外に蕎麦粉、米粉、とうもろこしなどの穀類粉;馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉、コーン澱粉、小麦澱粉、米澱粉などの澱粉類;これら澱粉の酢酸エステル、プロピオン酸エステル、リン酸エステル、リン酸架橋、エーテル化、酸化などの加工を施した化工澱粉;卵黄、卵白、乳蛋白、大豆蛋白などの動植物性蛋白質類(ただし、アレルギーを気にする場合は好ましくない);グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、レシチン、酵素処理レシチンなどの乳化剤類;クエン酸、乳酸、酢酸、リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸、リン酸、炭酸、塩酸、硫酸などの酸類;それら酸のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの塩類;糖質;蜂蜜;糖アルコール;甘味料;油脂類;香辛料;色素;野菜粉末;クロレラ;スピルリナ粉末;ビタミンA、B、C、D、Eなどのビタミン類などを挙げることができる。
【0019】
一般的に焼き麩の食感は小麦粉が少なくなると軽くなり、小麦粉が多くなると重くなり、粳やとうもろこしの粉が入るときめの細かな軽い焼き麩となる。好ましくはペット用の場合には価格の安いとうもろこし粉の入ったきめの細かい焼き麩である。更に好ましくは捏ね生地の5〜20重量%の量である。
【0020】
本発明の焼き麩の製造方法は、特に限定されない。例えば製造方法は、原料を加水混合した後、練り、分割細工、水槽ねかせ、焼成、戻し、切断、乾燥、選別が基本的な工程で、焼成工程には直化焼、オーブン焼、型釜焼、連続オーブン焼の4種類があり、麩の種類で異なる。さらに詳しく説明すると、冷凍グルテンを解凍したものに強力小麦粉と穀粉類などの副原料に捏ね水を加えて混合し、混合生地を乾燥しないようにして約1時間ねかせる。この生地を約1kgの大きさに分割し、練り機で練った後、約1時間同様にねかせる。この生地を更に分割し、着色、渦巻きなどの細工をした後、水槽に入れ再びねかせる。この生地を更に細分化し、焼成機で焼成(170〜280℃、5〜30分間)し、乾燥して焼き麩を得る方法を挙げることができる。
【0021】
本発明における焼き麩に香料を含有させる方法は、特に限定されない。例えば加水混合生地に直接添加する方法、分割工程で混入する方法、焼成後の焼き麩に香料を注入や塗布する方法、乾燥工程後に香料を注入または塗布する方法などを挙げることができる。好ましくは簡単な方法としては、加水混合時の生地に添加混合する方法であり、香料の使用量をコントロールしやすい焼成生地または乾燥生地に注入または塗布する方法である。
【0022】
また、塗布する方法には、刷毛で塗る方法や噴霧する方法、レボリングパンなどで通称どらがけで吸着する方法などがある。
【0023】
本発明に用いる嗜好性のある香料の種類は、特に限定されない。例えばクリーム、バター、チーズなどの乳製品系香料、コンデンスミルクやキャラメルなどの甘味系香料、ビーフやポークやチキンなどの畜肉系香料、魚や干物や鰹節や貝類などの魚介類香料などを挙げることができる。好ましくは乳製品系香料や甘味系香料である。
【0024】
また、嗜好性のある香料には、合成香料と天然香料と合成と天然とを混合した混合香料があり、特にアレルギーなど考慮する場合には天然物を含まない合成香料である。
【0025】
本発明に用いる嗜好性のある香料の添加量は、特に限定されない。例えば加水混合生地に直接添加する方法では焼成および乾燥生地に対して約0.1%〜3%の添加量になり、その添加量もそれぞれの香料の種類によって異なる。
【0026】
さらに本発明品にユッカエキス、オリゴ糖、カルシウム塩類などの二種以上を添加することにより、低カロリーだけではなくオリゴ糖などで腸内細菌の活性化やユッカエキスで糞臭の低減、カルシウム塩類で骨の強化などの機能を付加することができる。
【0027】
また、ユッカエキス、オリゴ糖、カルシウム塩類などの添加方法および添加量は、特に限定されない。好ましくは加水混合生地に直接添加する方法であり、添加量は混捏生地に対して0.05〜0.2重量%である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に実施例を挙げて、本発明に係る犬にとって嗜好性のある香料を含むことを特徴とするペット用焼き麩について、更に詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0029】
<実施例1および比較例1>
冷凍グルテン4.0kg、強力小麦粉6.0kg、とうもろこし粉1.2kg、水1.0kg、コンデンスミルク香料0.2kgを混合混捏し、混捏生地を約1時間乾燥しないように室温に放置(以後、ねかしという)した後、生地を細分化(1〜2kg)して練り機で15〜20分間練り、再び約1時間ねかせた後、更に生地を細分化(50〜200g)したものを水槽に漬けながらねかせた。この生地を細長く(径8〜16mm)伸ばして4〜8mmの長さに切断した生地を焼成機で上釜250℃、下釜200℃、約6分間焼成し、直径約10〜20mmの粒状の焼き麩を得た。焼き麩は木箱などの中に12〜24時間保管(以後、戻しという)した後、約60℃の低温の風で乾燥し粒状の焼き麩を得た(実施例1)。また、コンデンスミルク香料を添加しないものを同様にして得た(比較例1)。
【0030】
ウェルシュ・コーギー・ペンブローク(オス2歳、体重11.0kg、去勢あり)、パピヨン(メス1.5歳、体重4.5kg、去勢なし)、ヨークシャーテリア(オス3歳、体重3.5kg、去勢あり)の3種類の小型犬に通常の給餌量(ウェルシュ・コーギー・ペンブローク:ドライフーズ171g・580kcal、パピヨン:ドライフーズ82g・300kcal、ヨークシャーテリア:ドライフーズ66g・241gを朝晩2回に分けて与えた)と水自由摂取で1週間飼った後、この給餌状態で朝の給餌後、実施例1に係る焼き麩と比較例1に係る焼き麩をそれぞれの給餌器に各50g(約200粒)入れ、3分間自由摂取を行い、残量の差を見た。
【0031】
その結果、実施例1に係る焼き麩は、どの犬においても全て無くなったが、比較例1に係る焼き麩は、ウェルシュ・コーギー・ペンブロークは30g、パピヨンは45g、ヨークシャーテリアは49gを残した。
【0032】
さらに同様の試験を翌日行ったところ、実施例1に係る焼き麩は、前日と同様に全てを食べたが、比較例1に係る焼き麩は、全ての犬で殆んど(48g以上)残してしまったことより、実施例1に係る焼き麩は非常に嗜好性の高いことを確認することができた。
【0033】
<実施例2>
連続式の焼き麩製造機で未活性グルテンを水戻ししたグルテン4.3kg、強力小麦粉6.0kg、とうもろこし粉1.0kg、水1.0kg、ミルクキャラメル香料0.3kgを混合混捏し、混捏生地を約1時間乾燥しないように室温に放置(以後、ねかしという)した後、再び練り機で15〜20分間練り、圧延機で厚さ5mm〜10mmに生地を圧延した後、幅5mm〜10mmに切断し、さらに長さ5〜10mmに切断した生地を一段目の焼成機で上釜250℃、下釜200℃、約6分間焼成した後、二段目の焼成機で上釜160℃、下釜160℃、約2分間焼成し、直径約10〜20mmの粒状の焼き麩を得た。その後粒状の焼き麩は自然乾燥した(実施例2)。
【0034】
肥満になりやすいウェルシュ・コーギー・ペンブロークの比較的体格の似た2匹の小型犬(a:2歳オス、体重11.30kg、去勢あり、b:2歳オス、体重11.20kg、去勢あり)を下記のドライドッグフードで170g/日を朝晩2回に分けて1箇月育てた後、室内で特別の運動を行わずに340kcal/100gのドライドッグフードを用いて、aの犬には、140gを朝晩2回に分けて与え、途中空腹を訴えると実施例2に係る焼き麩100粒(25g)を数回に分けて与えて1箇月育てた(供試例1)。また、bの犬には、通常通りに前記ドライドッグフード170gを朝晩2回に分けて与えて1箇月育てた(供試例2)。
【0035】
1箇月の飼育において、供試例1の犬aは、空腹によるストレスもなく体重は10.7kgとダイエットになり、これに対し供試例2の犬bは、空腹によるストレスは出なかったが、体重は11.8kgと肥満気味になった。
【0036】
<実施例3および比較例3>
連続式の焼き麩製造機で未活性グルテンを水戻ししたグルテン4.3kg、強力小麦粉6.0kg、とうもろこし粉1.0kg、水1.0kg、コンデンスミルク香料0.2kg、オリゴ糖0.1kg、ユッカ抽出物0.01kgを混合混捏し、混捏生地を約1時間乾燥しないように室温に放置(以後、ねかしという)した後、再び練り機で15〜20分間練り、圧延機で厚さ5mm〜10mmに生地を圧延した後、幅5mm〜10mmに切断し、さらに長さ5〜10mmに切断した生地を一段目の焼成機で上釜250℃、下釜200℃、約6分間焼成した後、二段目の焼成機で上釜160℃、下釜160℃、約2分間焼成し、直径約10〜20mmの粒状の焼き麩を得た。その後、粒状の焼き麩は自然乾燥した(実施例3)。また、オリゴ糖、ユッカ抽出物を添加していないものを同様にして粒状の焼き麩を得た(比較例3)。
【0037】
パピヨン(メス1.5歳、体重4.5kg、去勢なし)をドライフーズ82g・300kcalで1週間飼育し、そのときに使用した部屋の臭いをなくした後、前記パピヨンにドライフーズ82g・300kcalと実施例3に係る焼き麩を間食(おやつ)として50粒を数回に分けて1週間飼育した(供試例3)。また、同様に比較例3に係る焼き麩を同様に間食として50粒を数回に分けて1週間飼育した(供試例4)。また、供試例3、供試例4とも摂食に問題は起こらなかった。
【0038】
1週間飼育後の部屋の臭気をニオイセンサー(XP−329−3R)で測定した結果、供試例3(実施例3)に係る部屋の臭気レベル値は170であったのに対し、供試例4(比較例3)に係る部屋の臭気レベル値は280に達し、よって実施例3に係る焼き麩に消臭効果があることを確認することができた。
【0039】
<実施例4>
連続式の焼き麩製造機で未活性グルテンを水戻ししたグルテン4.3kg、強力小麦粉6.0kg、とうもろこし粉1.0kg、水1.0kg、オリゴ糖0.1kg、ユッカ抽出物0.01kg、乳酸カルシウム0.01kgを混合混捏し、混捏生地を約1時間乾燥しないように室温に放置した(以後、ねかしという)後、再び練り機で15〜20分間練り、圧延機で厚さ5mm〜10mmに生地を圧延した後、幅5mm〜10mmに切断し、さらに長さ5〜10mmに切断した生地を一段目の焼成機で上釜250℃、下釜200℃、約6分間焼成した後、二段目の焼成機で上釜160℃、下釜160℃、約2分間焼成し、直径約10〜20mmの粒状の焼き麩を得た。この粒状焼き麩をレボリングパンに入れ、焼き麩に対してコンデンスミルク香料0.1kgを2倍量のアルコールに溶解したものを噴霧器で噴霧吸着させた。その後粒状の焼き麩はアルコール臭がなくなるまで自然乾燥した(実施例4)。
【0040】
ヨークシャーテリア(オス5歳、体重3.6kg、去勢あり)の少し肥満気味の犬を通常の給餌量(ドライフーズ63g・230kcalを朝晩の2回に分けて与えた)と水自由摂取で育てていたものを、給餌量(ドライフーズ56g・205kcal)に変え、間食(おやつ)として実施例4に係る焼き麩を50〜60粒/1日の量で与え、3月間飼った。
【0041】
その結果、少し後ろ足を引きずっていた状態が治り、体重も3.0kgとなり、その間特に食事不足によるストレスも見られず、毛の色艶も良くなった。よって実施例4に係る焼き麩にダイエット効果および体質改善効果があることを確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上説明したように本発明によれば、ペット、特にペット犬の健康維持のための嗜好性の強い高蛋白低カロリーでアレルギー性の低い焼き麩を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペット、特にペット犬にとって嗜好性のある香料を含むことを特徴とするペット用焼き麩。
【請求項2】
前記嗜好性のある香料は、天然由来の成分を含まないことを特徴とする請求項1記載のペット用焼き麩。
【請求項3】
前記嗜好性のある香料は、乳製品系、甘味系、畜肉系および魚介系のうちの一種以上を含むことを特徴とする請求項1または2記載のペット用焼き麩。
【請求項4】
当該ペット用焼き麩は、ユッカエキス、オリゴ糖およびカルシウム塩類のうちの二種以上を含むことを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載のペット用焼き麩。

【公開番号】特開2012−24046(P2012−24046A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167924(P2010−167924)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(596051905)株式会社常陸屋本舗 (2)
【Fターム(参考)】