説明

ペプチドを精製するための分取RP−HPLC法

RP-HPLCシステム上にて対象のポリペプチドを少なくとも1つの不要な成分から分離する方法であって、溶出ステップの少なくとも1つを対象のペプチドのpI値またはそのpI値の極めて近くで実施する方法が記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RP-HPLCシステム上にて対象のポリペプチドを少なくとも1つの不要な成分から分離する方法であって、溶出ステップの少なくとも1つを対象ペプチドのpI値またはそのpI値の極めて近くで実施する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質およびペプチド(ポリペプチド)の精製(すなわち不純物からの分離)および分析用として、クロマトグラフィーは周知であり広く使用されている方法である。これらの逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)には、いくつかの異なるクロマトグラフィー原理が適用されている。RP-HPLCの分離原理は、ポリペプチド溶質とクロマトグラフィー樹脂表面上の疎水性リガンドとの疎水性会合に基づいている。RP-HPLC精製は、通常以下の部分の1つまたは複数から成る:平衡化、添加、洗浄、溶出および再生。
【0003】
精製しようとする標的分子のpIより低いまたは高いpHを有する液相で実行される伝統的なRP-HPLCでは、いくつかの不純物が十分に分離されない。pIでの溶出は、生成物(すなわち対象のペプチド)の制御の効かない沈殿の危険性があるため、通常好ましい操作方式ではない。ペプチドを分離するためのpH勾配について、Talanta、ScienceDirect、75(2008年)、76〜82頁に開示された。ここでは、2.5〜10.5の同じpH勾配を繰り返すことによる、反復pH勾配を適用した。
【0004】
様々な分取逆相クロマトグラフィー法が、記述されている。米国特許第2009036652号は、分取逆相クロマトグラフィーを使用するタンパク質の精製に関し、WO2007071767は、分取逆相クロマトグラフィーを使用するビタミンK依存性ポリペプチドの精製に関し、米国特許第20060211616号は、グルカゴン様ペプチドの精製に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第2009036652号
【特許文献2】WO2007071767
【特許文献3】米国特許第20060211616号
【特許文献4】WO98/08871
【特許文献5】WO97/46584
【特許文献6】米国特許第5424286号
【特許文献7】WO01/04156
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Talanta、ScienceDirect、75(2008年)、76〜82頁
【非特許文献2】Siegelら Regul. Pept. (1999年) 79:93〜102頁
【非特許文献3】Mentleinら Eur. J. Biochem. (1993年) 214:829〜35頁
【非特許文献4】GreeneおよびWuts Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley & Sons (1999年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、反復pH勾配を含む大規模な工程の使用を必要とすることなく良好な精製が得られる、最適化されたRP-HPLC精製法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、RP-HPLCシステム上にて対象のポリペプチドを液体混合物中の少なくとも1つの不要な成分から分離する方法に関し、この方法は
a.対象のポリペプチドを含む混合物をRP-HPLCシステムに導入するステップであり、その混合物が移動相中に溶解されており、その移動相が対象のポリペプチドのpI値から少なくとも1単位離れたpH値を有するステップと、
b.移動相のpHを対象のポリペプチドのpI値から1単位未満離れたpH値へ調整するステップであり、pH調整を段階操作またはpH勾配で行うステップと、
c.対象のポリペプチドを溶出して、精製されたその組成物を得るステップとを含む。
【0009】
本発明の一態様において、ステップbとステップcの間に更なるステップを追加し、精製しようとするペプチドまたはタンパク質のpI値から少なくとも1単位離れたpH値へpHを再調整し、前記調整を段階操作またはpH勾配で行う。
【0010】
本発明の一態様において、本方法は、ステップbと同時に有機変性剤の勾配を適用して標的のペプチドをRP-HPLCシステム上に保持したまま不要な不純物を除去するステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】分取分離時間に対するAU280のクロマトグラムの図である。溶出はpH4.5で実施した。
【図2】分離時間に対するAU280のクロマトグラムの図である。溶出はpH5.2で実施した。
【図3】分離時間に対するAU280のクロマトグラムの図である。溶出はpH5.5で実施した。
【図4】異なるpH4.5、5.2および5.5で実施した実験からのクロマトグラムを重ねた図である。
【図5】分離時間に対するAU280のクロマトグラムの図である。溶出は、最初にpH(中性〜pIまたはpI近く)およびEtOH勾配(対象のペプチドのピークが出現する直前まで)の組合せによって、次いで4.5〜中性のpH勾配によって実施した。
【図6】分離時間に対するDesB30ヒトインスリンのAU280のクロマトグラムの図である。溶出は、最初にpH(4.0からpIまたはpI近くまで増加させる)およびEtOH勾配(対象のペプチドのピークが出現する直前まで)の組合せによって、その後にpIまたはpI近くのpHでの段階溶出、次いで5.8〜8.0のpH勾配によって実施した。
【図7】分離時間に対するArg34,Lys26(Nε-(γ-Glu(Nα-ヘキサデカノイル)))-GLP-1(7〜37)ペプチドのAU280のクロマトグラムの図である。溶出は、最初にpH(pH8.0からpIまたはpI近くまで減少させる)およびEtOH勾配(対象のペプチドのピークが出現する直前まで)の組合せによって、その後にpIまたはpI近くのpHでの段階溶出、次いで5.1〜4.0のpH勾配によって実施した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、ポリペプチドを精製するための分取RP-HPLC法であって、溶出ステップの少なくとも1つを対象ペプチドのpI値またはそのpI値の極めて近くで実施する方法に関する。
【0013】
より具体的には、本発明は対象のポリペプチドを含む混合物を精製するための分取RP-HPLC法に関し、この方法は
a.対象のポリペプチドを含む混合物をRP-HPLCシステムに導入するステップであり、その混合物が移動相中に溶解されており、その移動相が対象のポリペプチドのpI値から少なくとも1単位離れたpH値を有するステップと、
b.RP-HPLCシステムのpHを対象のポリペプチドのpI値から1単位未満離れたpH値へ調整するステップであり、pH調整を段階操作またはpH勾配で行うステップと、
c.対象のポリペプチドを溶出して、精製されたその組成物を得るステップとを含む。
【0014】
本発明の一態様において、ステップbにおいてpH勾配を使用してpHを調整する。
【0015】
本発明の方法を適用すると、不純物が対象のペプチドから驚くほど良好に分離されることが本発明者らによって見出された。特に、従来のRP-HPLC法による他法では除去することが困難な不純物、例えば関連不純物を分離することが可能になった。
【0016】
また、本発明の精製法を適用することによって、対象のポリペプチドを少なくとも1つの不要な成分から所望通りに分離するための複雑な精製法の必要性も回避される。
【0017】
本明細書で使用する際の「クロマトグラフィー」という用語は、混合物と成分とを化学的に分離するために使用されるいずれかの技術を指し、その技術は、混合物の成分間の固定相に対する選択的な引力を利用する。例には、吸着クロマトグラフィー、分配形クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーおよび親和性クロマトグラフィーがある。
【0018】
本明細書において使用されるとき、「RP-HPLC」という用語は、逆相高速液体クロマトグラフィーまたは逆相高圧液体クロマトグラフィーを意味する。HPLCを使用して、化合物をその極性およびカラムの固定相との相互作用に基づいて分離する。逆相クロマトグラフィーは、移動相が固定相より著しく強い極性を持つ液体クロマトグラフィーにおいて使用される溶出手順である。
【0019】
本明細書において使用されるとき、「液体混合物を導入する」という用語は、対象のポリペプチドおよび少なくとも1つの不要な成分を含む混合物を移動相の流れに導入することを意味する。
【0020】
本明細書において使用されるとき、「pI」という用語は等電点を意味し、ポリペプチドなどの特定の分子が正味電荷を保有しないpHである。
【0021】
そのpIでのタンパク質は正味電荷を持たず、そのため水溶解度はこの点で最低となる。したがって、タンパク質濃度の増加で沈殿の危険性がある。pIから1pH単位上または下では、正味電荷は著しく増加し(含まれるアミノ酸に依存して、その正味電荷は最大正味電荷のおよそ90%まで増加する)、その溶解度は約10倍高くなると推定することができ、結果的にそのタンパク質は沈殿しにくくなる。ペプチドまたはタンパク質のpI値からおよそ1.5〜2pH単位離れたpH値で沈殿は最も回避されるというのが一般的な認識であり、特定のタンパク質領域および他の属性がこれらの値に影響を及ぼす可能性がある。
【0022】
本明細書において使用されるとき、対象のポリペプチドのpI値に関連する「単位」という用語は、pH測定の基準値として使用される一定の大きさを意味する。例えば、対象のポリペプチドのpI値が4.5である場合、前記ポリペプチドのpI値から1単位とは3.5または5.5であり、前記ポリペプチドのpI値から1.5単位とは3.0または6.0である。
【0023】
本明細書において使用されるとき、RP-HPLCなどのクロマトグラフィーに関連する「分取」という用語は、クロマトグラフィーによって、精製された形態でさらに使用しようとする十分量の物質、例えばポリペプチドを精製することを意味する。したがって、分取クロマトグラフィーは分析目的だけに使用される分析クロマトグラフィーとは対照的である。
【0024】
本発明の一態様において、本方法では、pHと有機変性剤の勾配との組合せが第1のステップとして使用され、ペプチドのpI値またはそのpI値の極めて近くで開始されるpH勾配が第2のステップとして使用される。これらの態様によると、対象のポリペプチドのpI値から少なくとも1単位離れたpH値で開始し、前記対象のポリペプチドのpI値またはそのpI値に近いpHまで変化するpH勾配を、対象のポリペプチドをシステム上に保持したまま、対象のポリペプチドより速く溶出される1つまたは複数の不純物がRP-HPLCシステムから溶出されるまで適用する有機変性剤の勾配と組み合わせて含む第1のステップと、更なるpH勾配を対象のポリペプチドのpIまたはそのpIに極めて近いpHから適用し、対象のポリペプチドのpI値から少なくとも1単位離れたpH値まで変化させる第2のステップとを含む方法が使用される。したがって、このようにpHと有機変性剤とを組み合わせた調整により、特に望ましい精製が得られることが本発明者らによって見出された。
【0025】
本発明の一態様において、pHが対象のポリペプチドのpI値であるまたはそのpI値に極めて近いステップの後、追加的ステップにおいて、移動相のpHを対象のポリペプチドのpI値より少なくとも1単位高く調整する。本発明者らは、前記追加的ステップが不要な生成物の沈殿をなおさらに最小化することを見出した。
【0026】
本明細書において使用されるとき、「移動相」という用語は、カラムに導入される溶媒を意味する。
【0027】
本発明の一態様において、pHおよび/または有機変性剤の濃度についての定組成溶離が、少なくとも1つの溶出ステップにおいて使用される。
【0028】
本明細書において使用されるとき「定組成溶離」という用語は、pHまたは有機変性剤の濃度について使用される場合、溶出組成物中のpHまたは有機変性剤濃度が、手順の全体を通して一定のままである条件下での溶出を意味する。
【0029】
本発明の一態様において、HPLC法は20℃以上で実施される。別の態様において、HPLC法は高温、すなわち室温を超える温度、例えば30℃〜70℃の間で実施される。別の態様において、温度は40℃〜60℃の間である。さらに別の態様において、温度は約50℃である。一態様において、温度は約室温である。
【0030】
本発明に使用される固定相は、例えば置換シリカゲルまたはポリマー基材などの任意の適切な材料であってもよい。本発明の一態様において、固定相は、最高で20個までの炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル(C20)-シリカゲルまたはフェニル-もしくはベンゼン-置換シリカゲルから成る群から選択される。別の態様において、固定相は逆相(RP)ゲル、すなわち有機溶剤で溶出され得る任意の固定相である。RPゲルは当業者にとって公知であり、例えばポリスチレン-またはポリ(ジビニル)ベンゼンシリカゲルを含む。別の態様において、RPゲルはODDMS(オクタデシル-ジメチルシリル,C18-)置換シリカゲルである。
【0031】
本明細書で使用する際の「固定相」という用語は、クロマトグラフィーにおいて使用される固定相を指し、移動相成分はこれに対して選択的な親和性を示す。このような親和性は吸着以外の様々な形態(サイズ排除または複合体形成を含む)を取り得るので、その用語は液体混合物の成分を吸着する固定相、および移動相から技術的には成分を吸着しない固定相を指すが、その固定相は、そうとはいえ、クロマトグラフィーシステムにおいて1つの成分の移動速度を他の成分と比較して減速させることによって吸着剤として挙動する。吸着剤の非限定的な例、すなわちクロマトグラフィー固定相の材料には、例えばC-4シリカ、C-6シリカ、C-12シリカ、C-18シリカおよびフェニル系シリカなどの置換シリカならびにポリスチレンなどのポリマー材料がある。クロマトグラフィー固定相の追加的例には、膜、モノリス材料および濾材がある。
【0032】
RPゲルを固定相として使用する場合、それをリガンドにより置換できる。一態様において、RPゲルはC4-、C6-、C8-、C12-、C16-、C18-、C20-リガンドから成る群から選択されるリガンドにより置換される。一態様において、RPゲルはC18(オクタデシル-ジメチルシリル)リガンドにより置換される。
【0033】
固定相がRPゲルである場合、その粒子は直径2μm〜200μmでもよい。本発明の一態様において、RPゲルの粒子は直径約15μmである。RPゲルの孔径は100Å〜1000Åでもよい。一態様において、RPゲルの孔径は50Å〜150Å、例えば孔径約100Åである。
【0034】
「精製された」という用語が成分または画分を指す場合、その相対濃度(液体混合物中の全成分または全画分の重量で割った成分または画分の重量)が少なくとも20%増加することを示す。一連の態様において、相対濃度は少なくとも40%、50%、60%、75%、100%、150%もしくは200%、300%、400%または500%増加する。その成分または画分が精製される成分の相対濃度(液体混合物中の全成分または全画分の重量で割ったその成分または画分が精製される成分または画分の重量)が、少なくとも20%、40%、50%、60%、75%、85%、95%、98%または100%減少する場合も、成分または画分が精製されたと言うことができる。さらに別の一連の態様において、その成分または画分は少なくとも50%、65%、75%、85%、90%、97%、98%または99%の相対濃度まで精製される。いくつかの態様において、成分または画分が他の成分または画分から「分離された」と言われるとき、その成分または画分は「精製された」と理解されたい。
【0035】
本明細書で使用する際の「対象のポリペプチド」という用語は、精製された形態であることが必要な任意のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を指す。その用語は、合成、半組換えまたは組換えペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質を含む。いくつかの態様において、「対象のポリペプチド」は、例えばインスリンペプチド(例えばヒトインスリン、インスリン類似体またはインスリン誘導体)、グルカゴン様ペプチド、GLP-1ペプチド(例えばヒトGLP-1、GLP-1類似体またはGLP-1誘導体)またはアミリンペプチドなどの糖尿病の治療に適切なペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質である。
【0036】
本発明の一態様において、対象のポリペプチドは例えばGLP-1、GLP-1類似体、GLP-1誘導体、エキセンディン-4またはエキセンディン-3などのグルカゴン様ペプチドである。本発明の一態様において、対象のポリペプチドはGLP-1類似体または誘導体である。本発明の一態様において、対象のポリペプチドはGLP-1誘導体である。本発明の一態様において、対象のポリペプチドは組換え技術で産生される。
【0037】
本明細書で使用する際の「不純物」という用語は、対象のポリペプチドを含有する液体混合物中に存在する成分であるが対象のポリペプチドではなく、対象のポリペプチドから分離しなければならない成分を指す。この「不純物」は、宿主細胞のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチド、他の不要な形態の組換えポリペプチド(グリコシル化形態、脱アミド化形態または酸化形態など)、および液体混合物中に存在する他の成分を含み得る。
【0038】
いくつかの態様において、不純物は組換えタンパク質である。いくつかの態様において、「不純物」は対象のポリペプチドに類似のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質(本明細書において、「関連不純物」とも記述される)であり、そのペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は前記対象のポリペプチドのグリコシル化形態、脱アミド化形態、切断形態、伸長形態、誤って折り畳まれた形態または酸化形態、望ましくないグリコシル化を有する形態、ラセミ化に起因する形態、ペプチド鎖内のアミノ酸を欠いている形態、ペプチド鎖内に余分なアミノ酸がある形態および所望の残基とは別の残基にアシル化が生じた形態などの対象のポリペプチドと構造的類似性を有する。いくつかの態様において、関連不純物は対象のポリペプチドに類似の疎水性を有するペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質である。いくつかの態様において、関連不純物は、対象のポリペプチドに類似の構造的類似性および疎水性を有するペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質である。
【0039】
本発明の方法により精製しようとする液体混合物中の「対象のポリペプチド」と「不要な成分」との関係は、例えば少なくとも1:1、例えば2:1でよく、すなわち液体混合物中に1当量の「不要な成分」があるとき、少なくとも2当量の「対象のポリペプチド」がある。本発明の一態様において、液体混合物中の「対象のポリペプチド」と「不要な成分」との関係は少なくとも4:1であり、別の態様において、その関係は少なくとも6:1であり、別の態様において、その関係は少なくとも8:1であり、別の態様において、その関係は少なくとも9:1であり、別の態様において、その関係は少なくとも14:1であり、別の態様において、その関係は少なくとも19:1であり、別の態様において、その関係は少なくとも20:1であり、別の態様において、その関係は少なくとも50:1であり、さらに別の態様において、その関係は少なくとも90:1である。
【0040】
本明細書で使用する際の「約」または「およそ」という用語は、記載された数値の合理的な近さ、例えばプラスマイナス10%またはpH値についてはプラスマイナス0.2などを意味する。
【0041】
本明細書で使用する際の「グルカゴン様ペプチド」という用語は、グルカゴンファミリーのペプチド、エキセンディンならびにその類似体および誘導体を意味する。グルカゴンファミリーのペプチドは、グルカゴン前駆体遺伝子によってコードされ、高い相同性を有する3つの小ペプチド、すなわちグルカゴン(1〜29)、GLP-1(1〜37)およびGLP-2(1〜33)を包含する。エキセンディンはトカゲにおいて発現するペプチドであり、GLP-1のようにインスリン分泌性である。エキセンディンの例には、エキセンディン-3およびエキセンディン-4がある。
【0042】
本明細書で使用する際の「類似体」という用語は、修飾されたグルカゴン様ペプチドを指し、ここでグルカゴン様ペプチドの1つもしくは複数のアミノ酸残基は他のアミノ酸残基により置換されている、および/または1つもしくは複数のアミノ酸残基はグルカゴン様ペプチドから欠失している、および/または1つもしくは複数のアミノ酸残基はグルカゴン様ペプチドに付加されている。これらのアミノ酸残基の付加または欠失は、例えばグルカゴン様ペプチドのN末端および/またはそのペプチドのC末端で起こり得る。単純な規則を使用して類似体を記述する:例えばArg34-GLP-1(7〜37)は、GLP-1(7〜37)類似体を示し、ここで天然に存在する34位のリシンはアルギニンにより置換されている。光学異性体について記載されていなければ、「アミノ酸」という用語が使用されるときはいつでもL-異性体を示すことを理解されたい。
【0043】
「アミノ酸」という用語にはタンパク新生アミノ酸(遺伝コードによってコードされ、天然アミノ酸および標準的なアミノ酸含む)、ならびに非タンパク新生アミノ酸(タンパク質中に見出されない、および/または標準的な遺伝コード中にコードされていない)、および合成アミノ酸が含まれる。したがって、アミノ酸はタンパク新生アミノ酸、非タンパク新生アミノ酸、および/または合成アミノ酸の群から選択し得る。
【0044】
遺伝コードによってコードされないアミノ酸の非限定的な例には、γ-カルボキシグルタミン酸、オルニチンおよびホスホセリンがある。合成アミノ酸の非限定的な例には、D-アラニンおよびD-ロイシンなどのアミノ酸のD-異性体、Aib(α-アミノイソ酪酸)、β-アラニンならびにデスアミノヒスチジン(desH、代替名イミダゾプロピオン酸、Impとも略記される)がある。
【0045】
同様に、IUPAC-IUB命名法に従って、アミノ酸の標準的な1文字略記が使用される。
【0046】
一態様において、本発明による類似体は、グルカゴン様ペプチドと比較して最高で17個の修飾(置換、欠失、付加)を含む。一態様において、類似体は、グルカゴン様ペプチドと比較して16個未満の修飾(置換、欠失、付加)を含む。一態様において、類似体は、グルカゴン様ペプチドと比較して15個未満の修飾(置換、欠失、付加)を含む。別の態様において、類似体は、グルカゴン様ペプチドと比較して14個未満の修飾(置換、欠失、付加)を含む。別の態様において、類似体は、グルカゴン様ペプチドと比較して13個未満の修飾(置換、欠失、付加)を含む。別の態様において、類似体は、グルカゴン様ペプチドと比較して12個未満の修飾(置換、欠失、付加)を含む。別の態様において、類似体は、グルカゴン様ペプチドと比較して11個未満の修飾(置換、欠失、付加)を含む。別の態様において、類似体は、グルカゴン様ペプチドと比較して10個未満の修飾(置換、欠失、付加)を含む。別の態様において、類似体は、グルカゴン様ペプチドと比較して9個未満の修飾(置換、欠失、付加)を含む。別の態様において、類似体は、グルカゴン様ペプチドと比較して8個未満の修飾(置換、欠失、付加)を含む。一態様において、類似体は、グルカゴン様ペプチドと比較して7個未満の修飾(置換、欠失、付加)を含む。一態様において、類似体は、グルカゴン様ペプチドと比較して6個未満の修飾(置換、欠失、付加)を含む。別の態様において、類似体は、グルカゴン様ペプチドと比較して5個未満の修飾(置換、欠失、付加)を含む。別の態様において、類似体は、グルカゴン様ペプチドと比較して4個未満の修飾(置換、欠失、付加)を含む。別の態様において、類似体は、グルカゴン様ペプチドと比較して3個未満の修飾(置換、欠失、付加)を含む。別の態様において、類似体は、グルカゴン様ペプチドと比較して2個未満の修飾(置換、欠失、付加)を含む。
【0047】
本明細書で使用する際の「親油化ペプチド」という用語は、ペプチドの1つまたは複数のアミノ酸に共有結合した親油性側鎖などの1つまたは複数の親油基を含むペプチドである。本発明による一態様において、親油基は親油性側鎖である。親油化ペプチドは任意の適切な方法、例えばアルキル化、アシル化、エステル形成、アミド形成またはマレイミドカップリングなどによるコンジュゲーション化学反応によって親油基を結合させることによって調製できる。本発明による一態様において、本発明により親油化ペプチドは、親油化されていない同じペプチドと比較して実質的に同じ活性を有する。
【0048】
一態様において、本発明の医薬組成物中に含められる親油化グルカゴン様ペプチドは、ペプチド結合で連結された少なくとも5個の構成アミノ酸およびそれに結合したアシル基から構成されたGLP-1作動薬である。
【0049】
本明細書で使用する際の「GLP-1作動薬(アゴニスト)」という用語は、ヒトGLP-1受容体を完全にまたは部分的に活性化する任意の親油化グルカゴン様ペプチドを指す。好ましい態様において、「GLP-1作動薬」は、好ましくは1μΜ未満、例えば100nM未満の親和定数(KD)または力価(EC50)(当技術分野において公知の方法(例えば、WO98/08871を参照されたい)により測定される)でGLP-1受容体に結合しかつインスリン分泌活性を示す任意の親油化グルカゴン様ペプチドであり、ここでインスリン分泌活性は当業者に公知のin vivoまたはin vitroアッセイで測定できる。例えば、GLP-1作動薬を動物に投与し、インスリン濃度を経時的に測定してもよい。
【0050】
一態様において、本発明の親油化グルカゴン様ペプチドはアシル化されており、すなわち親油的修飾として結合したアシル基を有する。
【0051】
アシル基(IUPAC名:アルカノイル)は、オキソ酸から1つまたは複数のヒドロキシル基を除去することによって得られる官能基である。有機化学において、通常アシル基はRCOOH形態のカルボン酸から得られる。したがって、アシル基は式RC(=O)-を有し、炭素原子と酸素原子との間に二重結合(すなわち、カルボニル基)があり、Rと炭素との間に一重結合がある。アシル基は、スルホン酸、ホスホン酸、その他などの他の種類の酸から得ることもできる。
【0052】
本発明のアシル化修飾されたグルカゴン様ペプチド化合物において、アシル基は官能基を含有し、これはグルカゴン様親ペプチドのアミノ酸の以下の官能基の1つと結合していてもよい:
(a)N末端アミノ酸のα-炭素に結合したアミノ基、
(b)C末端アミノ酸のα-炭素に結合したカルボキシ基、
(c)任意のLys残基のε-アミノ基、
(d)任意のAspおよびGlu残基のR基のカルボキシ基、
(e)任意のTyr、SerおよびThr残基のR基の水酸基、
(f)任意のTrp、Asn、Gln、ArgおよびHis残基のR基のアミノ基、または
(g)任意のCys残基のR基のチオール基。
【0053】
一態様において、アシル基はR基のカルボキシ基(すなわち、任意のAspおよびGlu残基の側鎖)に結合している。別の態様において、アシル基はC末端アミノ酸のα-炭素に結合したカルボキシ基に結合している。さらに別の態様において、アシル基は任意のLys残基のε-アミノ基に結合している。
【0054】
本発明の一態様において、アシル基はスペーサを用いてグルカゴン様親ペプチドに結合している。スペーサは少なくとも2つの官能基を含有しなければならず、一方はアシル基の官能基に結合するためのものであり、他方はグルカゴン様親ペプチドの官能基に結合するためのものである。
【0055】
一態様において、アシル基は直鎖または分枝鎖脂肪酸である。一態様において、アシル基は式CH3(CH2)nCO-を有し、式中、nは4〜38の整数、例えば12〜38の整数である。一態様において、アシル基はCH3(CH2)12CO-、CH3(CH2)14CO-、CH3(CH2)16CO-、CH3(CH2)18CO-、CH3(CH2)20CO-およびCH3(CH2)22CO-から成る群から選択される。別の態様において、アシル基はテトラデカノイルである。さらに別の態様において、アシル基はヘキサデカノイルである。
【0056】
本発明の更なる態様において、アシル基は、カルボン酸基などの負に荷電している基を有する。例えばアシル基は、式HOOC(CH2)mCO-の直鎖または分枝鎖アルカンα,ω-ジカルボン酸であってよく、式中、mは4〜38の整数、例えば12〜38の整数である。一態様において、アシル基は、HOOC(CH2)14CO-、HOOC(CH2)16CO-、HOOC(CH2)18CO-、HOOC(CH2)20CO-またはHOOC(CH2)22CO-から成る群から選択される。
【0057】
一態様において、スペーサはGly-LysなどのジペプチドまたはCysもしくはMetを除くアミノ酸残基である。本発明の目的を達成するために、「Gly-Lysなどのジペプチド」という句は、CysまたはMetを除く2つのアミノ酸の任意の組合せを意味し、一態様において、C末端アミノ酸残基が、Lys、HisまたはTrp、例えばLysであり、N末端アミノ酸残基が、Ala、Arg、Asp、Asn、Gly、Glu、Gln、Ile、Leu、Val、Phe、Pro、Ser、Tyr、Thr、Lys、HisおよびTrpであるジペプチドである。一態様において、親ペプチドのアミノ基はアミノ酸残基またはジペプチドスペーサのカルボキシ基とアミド結合を形成し、アミノ酸残基またはジペプチドスペーサのアミノ基はアシル基のカルボキシ基とアミド結合を形成する。
【0058】
本発明によるスペーサの例にはリジル、グルタミル、アスパラギル、グリシル、β-アラニルおよびγ-アミノブタノイルがあり、これらのそれぞれが独立の態様を構成する。一態様において、スペーサはグルタミルおよびβ-アラニルである。スペーサがLys、GluまたはAspである場合、そのカルボキシ基はアミノ酸残基のアミノ基とアミド結合を形成することができ、そのアミノ基はアシル基のカルボキシ基とアミド結合を形成できる。Lysをスペーサとして使用する場合、場合によってはLysのε-アミノ基とアシル基との間に更なるスペーサを挿入できる。一態様において、このような更なるスペーサは、Lysのε-アミノ基およびアシル基に存在するアミノ基とアミド結合を形成するコハク酸である。別の態様において、このような更なるスペーサはGluまたはAspであり、これはLysのε-アミノ基とアミド結合を形成し、アシル基に存在するカルボキシ基と別のアミド結合を形成する、すなわちアシル基はNε-アシル化リシン残基である。
【0059】
別の態様において、スペーサは1〜7個のメチレン基を有する分枝していないアルカンα,ω-ジカルボン酸基であり、そのスペーサは親ペプチドのアミノ基と置換基のアミノ基との間でブリッジを形成する。一態様において、そのスペーサはコハク酸である。
【0060】
更なる態様において、スペーサが結合したアシル基は、式CH3(CH2)pNH-CO(CH2)qCO-の基であり、式中、pは8〜33の整数、あるいは12〜28の整数であり、qは1〜6の整数あるいは2である。
【0061】
更なる態様において、スペーサが結合したアシル基は、式CH3(CH2)rCO-NHCH(COOH)(CH2)2CO-の基であり、式中、rは4〜24の整数、例えば10〜24の整数である。
【0062】
更なる態様において、スペーサが結合したアシル基は、式CH3(CH2)sCO-NHCH((CH2)2COOH)CO-の基であり、式中、sは4〜24の整数、例えば10〜24の整数である。
【0063】
更なる態様において、アシル基は、式COOH(CH2)tCO-の基であり、式中、tは6〜24の整数である。
【0064】
更なる態様において、スペーサが結合したアシル基は、式-NHCH(COOH)(CH2)4NH-CO(CH2)uCH3の基であり、式中、uは8〜18の整数である。
【0065】
更なる態様において、スペーサが結合したアシル基は、式CH3(CH2)vCO-NH-(CH2)z-COの基であり、式中、vは4〜24の整数であり、zは1〜6の整数である。
【0066】
更なる態様において、スペーサが結合したアシル基は、式-NHCH(COOH)(CH2)4NH-COCH((CH2)2COOH)NH-CO(CH2)wCH3の基であり、式中、wは10〜16の整数である。
【0067】
更なる態様において、スペーサが結合したアシル基は、式-NHCH(COOH)(CH2)4NH-CO(CH2)2CH(COOH)NHCO(CH2)xCH3の基であり、式中、xは0または1〜22の整数、例えば10〜16の整数である。
【0068】
本発明はまた、親油化グルカゴン様ペプチドも提供し、そのグルカゴン様ペプチドは、Arg34GLP-1(7〜37)、Aib8,22,35GLP-1(7〜37)、Aib8,35GLP-1(7〜37)、Aib8,22GLP-1(7〜37)、Aib8,22,35Lys37GLP-1(7〜37)、Aib8,35Lys37GLP-1(7〜37)、Aib8Arg34GLP-1(7-37)およびAib8,22Lys37GLP-1(7〜38)、[デスアミノHis7,Glu22,Arg26,Arg34,Lys37]GLP-1(7〜37)アミド、[デスアミノHis7,Arg34]GLP-1-(7〜37)、[Aib8,Glu22,Arg26,Arg34,Lys37]GLP-1-(7〜37)アミド、[デスアミノHis7,Glu22,Arg26,Arg34,Phe(m-CF3)28]GLP-1-(7〜37)アミド、[デスアミノHis7,Glu22,Arg26,Arg34]GLP-1-(7〜37)-Lys、[デスアミノHis7,Arg26,Arg34]GLP-1-(7〜37)-Lys、[デスアミノHis7,Glu22,Arg26,Arg34,Lys37]GLP-1-(7〜37)アミド、[デスアミノHis7,Arg26,Arg34,Lys37]GLP-1-(7〜37)アミド、[デスアミノHis7,Glu22,Arg26,Arg34,Lys37]GLP-1-(7〜37)、[デスアミノHis7,Arg26,Arg34,Lys37]GLP-1-(7〜37)、[デスアミノHis7,Glu22,Arg26,Glu30,Arg34,Lys37]GLP-1-(7〜37)、[Aib8,Glu22,Arg26,Arg34]GLP-1-(7-37)-LysおよびGly8-GLP-1(7〜36)から成る群から選択されるGLP-1(7〜37)類似体であり、前記GLP-1類似体はアシル化されている。
【0069】
さらに別の態様において、本明細書で使用する場合の親油化グルカゴン様ペプチドは、アシル化されたGLP-1(7〜37)およびそのインスリン分泌性類似体を意味する。GLP-1類似体およびアシル化されたGLP-1類似体の非限定的な例には、GLP-1(7〜36)アミド、Arg34-GLP-1(7〜37)、Gly8-GLP-1(7〜37)、Val8-GLP-1(7〜36)-アミド、Val8,Asp22-GLP-1(7〜37)、デスアミノ-His7,Arg26,Lys34(Nε-(γ-Glu(Nα-ヘキサデカノイル)))-GLP-1(7〜37)、デスアミノ-His7,Arg26,Lys34(Nε-オクタノイル)-GLP-1(7〜37)、Arg26,34,Lys38(Nε-(ω-カルボキシペンタデカノイル))-GLP-1(7〜38)、Arg26,34,Lys36(Nε-(γ-Glu(Nα-ヘキサデカノイル)))-GLP-1(7〜36)およびArg34,Lys26(Nε-(γ-Glu(Nα-ヘキサデカノイル)))-GLP-1(7〜37)がある。
【0070】
一態様において、本発明の親油化グルカゴン様ペプチドは、ジペプチジルアミノペプチダーゼIVから保護されている。本明細書で使用する際の「ジペプチジルアミノペプチダーゼIVから保護されている」という用語は、ジペプチジルアミノペプチダーゼIV(DPP-IV)に対して、天然化合物、例えばGLP-1(7〜37)より抵抗性の高い化合物、例えばアシル化GLP-1類似体を意味する。ジペプチジルアミノペプチダーゼIVによる分解に対する親油化グルカゴン様ペプチドの抵抗性は、以下に記述される分解アッセイにより決定される。
【0071】
親油化グルカゴン様ペプチドの一定分量(5nmol)を、酵素活性5mUに相当する1μlの精製されたジペプチジルアミノペプチダーゼIVと一緒に、100μlの0.1Mトリエチルアミン-HCl緩衝液、pH7.4中で、37℃で10〜180分間インキュベートする。5μlの10%トリフルオロ酢酸を添加することによって酵素反応を停止させ、HPLC分析を使用してペプチド分解生成物を分離して定量化する。この分析を実施するための一方法において、混合物をVydac C18 widepore(30nmの孔、5μmの粒子)250x4.6mmカラム(C18-置換(オクタデシル-ジメチルシリル)シリカ樹脂)上に適用し、Siegelら[Regul. Pept. (1999年) 79:93〜102頁]およびMentleinら[Eur. J. Biochem. (1993年) 214:829〜35頁]による0.1%トリフルオロ酢酸中のアセトニトリルの段階的直線勾配(0%アセトニトリル3分間、0〜24%アセトニトリル17分間、24〜48%アセトニトリル1分間)を用いて、1ml/分の流速で溶出する。ペプチドおよびその分解生成物は、220nm(ペプチド結合)または280nm(芳香族アミノ酸)におけるこれらの吸光度によって監視することができ、標準物質と比較したそれらのピーク領域の積分によって定量化する。ジペプチジルアミノペプチダーゼIVによる親油化グルカゴン様ペプチドの加水分解率は、加水分解される親油化グルカゴン様ペプチドが10%未満になるインキュベーション時間で推定される。
【0072】
さらに別の態様において、本発明の医薬組成物に含められる親油化グルカゴン様ペプチドは、親油化GLP-2またはその類似体である。本発明の医薬組成物に含められる親油化グルカゴン様ペプチドが、親油化GLP-2またはその類似体である場合、親油化GLP-2またはその類似体は、約1mg/ml〜約100mg/mlの濃度で、より好ましくは約1mg/ml〜約10mg/mlの濃度で存在する。
【0073】
さらに別の態様において、親油化グルカゴン様ペプチドは、親油化エキセンディン-4もしくは親油化エキセンディン-3またはそれらの類似体である。本発明内に含められるそのエキセンディンおよびその類似体の例は、WO97/46584、米国特許第5424286号およびWO01/04156に開示されているものである。米国特許第5424286号は、エキセンディンペプチドを用いてインスリン放出を刺激する方法について記述している。WO97/46584は、エキセンディンペプチドの切断型に関して記述している。開示されたペプチドは、インスリンの分泌および生合成を増加させるが、グルカゴンのそれらを低下させる。WO01/04156は、エキセンディン-4類似体および誘導体ならびにこれら分子の調製に関して記述している。
【0074】
本明細書で使用する際の「エキセンディン-4ペプチド」という用語は、エキセンディン-4(1〜39)、エキセンディン-4(1〜39)類似体、エキセンディン-4(1〜39)誘導体またはエキセンディン-4(1〜39)類似体の誘導体、そのインスリン分泌性断片、そのインスリン分泌性類似体およびそのインスリン分泌性誘導体を意味する。エキセンディン-4のインスリン分泌性断片は、その全配列をエキセンディン-4の配列中に見出すことができるインスリン分泌性ペプチドであり、ここで少なくとも1つの末端アミノ酸が欠失している。エキセンディン-4(1〜39)のインスリン分泌性断片の例には、エキセンディン-4(1〜38)およびエキセンディン-4(1〜31)がある。
【0075】
化合物のインスリン分泌性特性は、当技術分野で周知のin vivoまたはin vitroアッセイによって決定できる。例えば、化合物を動物に投与してインスリン濃度を経時的に監視してもよい。エキセンディン-4(1〜39)のインスリン分泌性類似体とは、アミノ酸残基の1つもしくは複数が他のアミノ酸残基と交換されている、および/または1つもしくは複数のアミノ酸残基が欠失している、および/または1つもしくは複数のアミノ酸残基が付加されているそれぞれの分子を指すが、ただし前記類似体はインスリン分泌性、またはインスリン分泌性化合物のプロドラッグである。エキセンディン-4(1〜39)のインスリン分泌性類似体の例には、Ser2Asp3-エキセンディン-4(1〜39)があり、2位および3位のアミノ酸残基がそれぞれセリンおよびアスパラギン酸により置換されている(この特定の類似体は、当技術分野においてエキセンディン-3としても公知である)。エキセンディン-4(1〜39)のインスリン分泌性誘導体およびその類似体は、これらペプチドの誘導体であると当業者がみなすものであり、すなわち親ペプチド分子には存在しない少なくとも1つの置換基を有するが、ただし前記誘導体はインスリン分泌性、またはインスリン分泌性化合物のプロドラッグである。置換基の例には、アミド、炭水化物、アルキル基、エステルおよび親油性置換基がある。エキセンディン-4(1〜39)のインスリン分泌性誘導体およびその類似体の例には、Tyr31-エキセンディン-4(1〜31)-アミドがある。
【0076】
本明細書で使用する際の「安定エキセンディン-4化合物」という用語は、従来法で決定したとき、ヒトにおいて少なくとも10時間のin vivo血漿中消失半減期を示す化学修飾したエキセンディン-4(1〜39)、すなわちアシル化エキセンディン-3またはアシル化エキセンディン-4類似体を意味する。
【0077】
一態様において、本発明の親油化グルカゴン様ペプチドは、インスリン分泌性である。本明細書で使用する場合の親油化グルカゴン様ペプチドについての「インスリン分泌性」という用語は、血漿グルコース濃度の増加に応答してインスリンの分泌を刺激する能力を意味する。インスリン分泌性のペプチドおよび化合物は、GLP-1受容体の作動薬である。化合物のインスリン分泌性特性は、当技術分野において公知のin vitroまたはin vivoアッセイで決定できる。次のin vitroアッセイを使用して、ペプチドなどの化合物のインスリン分泌性の性質を決定できる。以下のアッセイにおいて、インスリン分泌性化合物は好ましくは5nM未満のEC50値を、さらにより好ましくは500pM未満のEC50値を示す。
【0078】
クローン化したヒトGLP-1受容体(BHK 467-12A)を発現している仔ハムスターの腎臓(BHK)細胞を、100IU/mlペニシリン、100μl/mlストレプトマイシン、10%ウシ胎仔血清、および1mg/ml Geneticin G-418 (Life Technologies)を添加したDMEM培地で増殖させる。緩衝液(5mg/mlロイペプチン(Sigma)、5mg/lペプスタチン(Sigma)、100mg/lバシトラシン(Sigma)、および16mg/lアプロチニン(Calbiochem-Novabiochem、La Jolla、CA)を追加で含有する10mMトリス-HCl、30mM NaClおよび1mMジチオスレイトール、pH7.4)中で均質化することによって、原形質膜を調製する。ホモジネートを、41%w/wショ糖の層上で遠心分離する。2つの層の間の白い帯を緩衝液で希釈して遠心分離する。原形質膜をさらに使用するまで-80℃で貯蔵する。
【0079】
インスリン分泌性ペプチドまたはインスリン分泌性化合物による刺激に対する応答としてcAMPを測定することによって、機能的受容体アッセイを実行する。96ウェルマイクロプレート中で、総体積140μlで以下に示す終濃度を用いてインキュベートする:50mMトリス-HCl、1mM EGTA、1.5mM MgS04、1.7mM ATP、20mM GTP、2mM 3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)、0.01%w/v Tween-20、pH7.4。化合物を緩衝液中に溶解して希釈する。GTPは実験ごとに新たに調製する:2.5μgの膜を各ウェルに添加して、その混合物を90分間室温で暗所において振盪させながらインキュベートする。0.5M塩酸を25μl添加することによって反応を停止させる。形成されたcAMPを、シンチレーション近接アッセイ (RPA 542、Amersham、UK)で測定する。化合物に対して用量反応曲線をプロットし、GraphPad Prismソフトウェアを使用してEC50値を算出できる。
【0080】
親油化グルカゴン様ペプチドなどのポリペプチドおよびペプチドの産生は、当技術分野で周知である。例えばポリペプチドまたはペプチドは、古典的ペプチド合成、例えばt-BocもしくはFmocの化学反応を使用する固相ペプチド合成または他のよく確立された技術によって産生でき、例えばGreeneおよびWuts [Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley & Sons (1999年)]を参照されたい。(ポリ)ペプチドをコードしているDNA配列を含有し(ポリ)ペプチドを発現することができる宿主細胞を、適切な栄養培地中でペプチドの発現を可能にする条件で培養することを含む方法によって、ポリペプチドまたはペプチドを産生することもできる。非天然のアミノ酸残基を含む(ポリ)ペプチドに関しては、例えばtRNA変異体を使用することにより非天然のアミノ酸が(ポリ)ペプチドに組み込まれるように組換え細胞を改変すべきである。
【0081】
本明細書で使用する際の「リラグルチド」という用語は、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)誘導体、Arg34,Lys26(Nε-(γ-Glu(Nα-ヘキサデカノイル)))-GLP-1(7〜37)に使用される。
【0082】
以下の段落において、本発明をさらに要約する:
1.RP-HPLCシステム上にて対象のポリペプチドを液体混合物中の少なくとも1つの不要な成分から分離する方法であって、
a.対象のポリペプチドを含む混合物をRP-HPLCシステムに導入するステップであり、その混合物が移動相中に溶解されており、その移動相が対象のポリペプチドのpI値から少なくとも1単位離れたpH値を有するステップと、
b.移動相のpHを対象のポリペプチドのpI値から1単位未満離れたpH値へ調整するステップであり、pH調整を段階操作またはpH勾配で行うステップと、
c.対象のポリペプチドを溶出して、精製されたその組成物を得るステップとを含む方法。
2.ステップbとステップcの間にステップを追加し、精製しようとするペプチドまたはタンパク質のpI値から少なくとも1単位離れたpH値へpHを再調整し、前記調整を段階操作またはpH勾配で行う、態様1に記載の方法
3.ステップa.におけるpH値が、精製しようとするペプチドまたはタンパク質のpI値から少なくとも1.5単位である、態様1または2に記載の方法
4.ステップa.におけるpH値が、精製しようとするペプチドまたはタンパク質のpI値から少なくとも2単位である、上記態様のいずれか1つに記載の方法
5.ステップa.におけるpH値が、精製しようとするペプチドまたはタンパク質のpI値から少なくとも2.5単位である、上記態様のいずれか1つに記載の方法
6.ステップa.におけるpH値が、精製しようとするペプチドまたはタンパク質のpI値より高い、上記態様のいずれか1つに記載の方法
7.ステップa.におけるpH値が5.5〜9.0の間である、上記態様のいずれか1つに記載の方法
8.ステップa.におけるpH値が6.0〜8.5の間である、上記態様のいずれか1つに記載の方法
9.ステップa.におけるpH値が7.0〜8.0の間である、上記態様のいずれか1つに記載の方法
10.ステップa.におけるpH値が7.0〜9.0の間である、上記態様のいずれか1つに記載の方法
11.ステップa.におけるpH値がおよそ8.0である、上記態様のいずれか1つに記載の方法
12.ステップa.におけるpH値が2.5〜5.0の間である、上記態様のいずれか1つに記載の方法
13.ステップa.におけるpH値が2.5〜4.0の間である、上記態様のいずれか1つに記載の方法
14.ステップa.におけるpH値が2.5〜3.5の間である、上記態様のいずれか1つに記載の方法
15.ステップbにおけるpH値が、精製しようとするペプチドまたはタンパク質のpI値から0.8単位未満である、上記態様のいずれか1つに記載の方法
16.ステップbにおけるpH値が、精製しようとするペプチドまたはタンパク質のpI値から0.6単位未満である、上記態様のいずれか1つに記載の方法
17.ステップbにおけるpH値が、精製しようとするペプチドまたはタンパク質のpI値から0.5単位未満である、上記態様のいずれか1つに記載の方法
18.ステップbにおけるpH値が、精製しようとするペプチドまたはタンパク質のpI値より高い、上記態様のいずれか1つに記載の方法
19.ステップbにおけるpH値が3.5〜5.5の間である、上記態様のいずれか1つに記載の方法
20.ステップbにおけるpH値が4.0〜5.5の間である、上記態様のいずれか1つに記載の方法
21.ステップbにおけるpH値が4.5〜5.2の間である、上記態様のいずれか1つに記載の方法
22.ステップbにおけるpH値が4.5〜7.0の間である、上記態様のいずれか1つに記載の方法
23.ステップbにおけるpH値が4.8〜6.5の間である、上記態様のいずれか1つに記載の方法
24.ステップbにおけるpH値が5.0〜6.0の間である、上記態様のいずれか1つに記載の方法
25.ステップbにおける移動相のpHをpH勾配で調整する、上記態様のいずれか1つに記載の方法
26.ステップbと同時に有機変性剤の勾配を適用して標的のペプチドをRP-HPLCシステム上に保持したまま不要な不純物を除去するステップを含む、上記態様のいずれか1つに記載の方法
27.ステップbにおける有機変性剤の勾配が約25%〜約48%であり、そのpH勾配がpH7.4〜4.5である、態様26に記載の方法
28.ステップb)におけるpH勾配が約7.4〜約4.5である、上記態様のいずれか1つに記載の方法
29.RPゲルの温度が高温である、上記態様のいずれか1つに記載の方法
30.RPゲルの温度が摂氏20〜70度の間である、態様1〜28のいずれか1つに記載の方法。
31.RPゲルの温度が摂氏40〜60度の間の高温である、上記態様のいずれか1つに記載の方法
32.RPゲルの温度が約摂氏50度の高温である、上記態様のいずれか1つに記載の方法
33.RPゲルの温度が約室温である、態様1〜28のいずれか1つに記載の方法
34.RP-HPLCシステムにおいて使用される吸着剤がC-4シリカ、C-6シリカ、C-12シリカ、C-18シリカおよびフェニル系シリカなどの置換シリカ、ポリスチレンなどのポリマー材料、膜、モノリス材料ならびに濾材から成る群から選択される、上記態様のいずれか1つに記載の方法
35.RP-HPLCシステムにおいて使用される吸着剤が、C18(オクタデシル-ジメチルシリル)リガンドにより置換され、約15μmおよび孔径約100Åの粒子を有するゲルである、上記態様のいずれか1つに記載の方法
36.ペプチドまたはタンパク質が、GLP-1ペプチド、エキセンディンペプチドまたはGLP-1誘導体から成る群から選択される、上記態様のいずれか1つに記載の方法。
37.有機変性剤がエタノール、メタノール、プロパノールおよびアセトニトリルから成る群から選択される、態様26または27に記載の方法。
38.対象のポリペプチドが糖尿病の治療に適切なポリペプチドである、上記態様のいずれか1つに記載の方法
39.対象のポリペプチドがグルカゴン様ペプチドまたはGLP-1作動薬である、上記態様のいずれか1つに記載の方法。
40.対象のポリペプチドがGLP-1(1〜37)またはその類似体もしくは誘導体である、上記態様のいずれか1つに記載の方法。
41.GLP-1(1〜37)またはその類似体もしくは誘導体を組換えによって得る、上記態様のいずれか1つに記載の方法。
42.前記少なくとも1つの不要な成分が、前記ポリペプチドのグリコシル化形態、脱アミド化形態、または酸化形態などの前記ポリペプチドの別の形態である、上記態様のいずれか1つに記載の方法。
43.対象のポリペプチドと前記少なくとも1つの不要な成分との関係が、少なくとも4:1である、上記態様のいずれかに記載の方法。
44.対象のポリペプチドと前記少なくとも1つの不要な成分との関係が、少なくとも10:1である、上記態様のいずれかに記載の方法。
45.対象のポリペプチドと前記少なくとも1つの不要な成分との関係が、少なくとも20:1である、上記態様のいずれかに記載の方法。
46.対象のポリペプチドと前記少なくとも1つの不要な成分との関係が、少なくとも50:1である、上記態様のいずれかに記載の方法。
47.対象のポリペプチドと前記少なくとも1つの不要な成分との関係が、少なくとも80:1である、上記態様のいずれかに記載の方法。
【0083】
(実施例)
(実施例1)
N-ε26-[2-(-2-[2-(2-[2-(2-[4-(17-カルボキシヘプタデカノイルアミノ)-4(S)-カルボキシブチリルアミノ]エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ)アセチル][AIB8,ARG34]GLP-1(7〜37)ペプチドのRP-HPLC精製
N-ε26-[2-(-2-[2-(2-[2-(2-[4-(17-カルボキシヘプタデカノイルアミノ)-4(S)-カルボキシブチリルアミノ]エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ)アセチル][Aib8,Arg34]GLP-1(7〜37)ペプチドを合成によって産生した。アシル化された混合物をまず従来の陰イオン交換によって精製し、次いで、N-ε26-[2-(-2-[2-(2-[2-(2-[4-(17-カルボキシヘプタデカノイルアミノ)-4(S)-カルボキシブチリルアミノ]エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ)アセチル][Aib8,Arg34]GLP-1(7〜37)ペプチドおよび関連不純物を含有する得られたプールを水で希釈した。約120mlの10mmol/kgクエン酸緩衝液、50mmol/kg NaCl、25%(w/w)エタノール、pH4.5で平衡化した20mlのC18-置換(オクタデシル-ジメチルシリル)シリカ樹脂(粒径:15μm)上へ、10mLの液体混合物(4.5mg/mL)を添加した。カラムを60mlの平衡化溶液で洗浄し、400mlに対して41〜46%(w/w)エタノール(10mmol/kgクエン酸緩衝液、50mmol/kg NaCl)の直線勾配によって溶出を実施した。クロマトグラフィー温度は50℃に維持した。
【0084】
分取精製のクロマトグラムを図1に示す。クロマトグラフィープロファイルから、不純物2が対象のペプチドのピークから分離していることを観察できる。対象のペプチドに対する不純物2の相対保持容量は約0.93であり、pI値で不純物2と対象のペプチドとの良好な分離が観察された。
【0085】
(実施例2)
N-ε26-[2-(-2-[2-(2-[2-(2-[4-(17-カルボキシヘプタデカノイルアミノ)-4(S)-カルボキシブチリルアミノ]エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ)アセチル][AIB8,ARG34]GLP-1(7〜37)ペプチドのRP-HPLC精製
N-ε26-[2-(-2-[2-(2-[2-(2-[4-(17-カルボキシヘプタデカノイルアミノ)-4(S)-カルボキシブチリルアミノ]エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ)アセチル][Aib8,Arg34]GLP-1(7〜37)ペプチドを合成によって産生した。アシル化された混合物をまず従来の陰イオン交換によって精製し、次いで、N-ε26-[2-(-2-[2-(2-[2-(2-[4-(17-カルボキシヘプタデカノイルアミノ)-4(S)-カルボキシブチリルアミノ]エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ)アセチル][Aib8,Arg34]GLP-1(7〜37)ペプチドおよび関連不純物を含有する得られたプールを水で希釈した。約120mlの10mmol/kgクエン酸緩衝液、50mmol/kg NaCl、25%(w/w)エタノール、pH5.2で平衡化した20mlのC18-置換(オクタデシル-ジメチルシリル)シリカ樹脂(粒径:15μm)上へ、10mlの液体混合物(4.5mg/ml)を添加した。カラムを60mlの平衡化溶液で洗浄し、400mlに対して39〜44%(w/w)エタノール(10mmol/kgクエン酸緩衝液、50mmol/kg NaCl)の直線勾配によって溶出を実施した。クロマトグラフィー温度は50℃に維持した。
【0086】
分取精製のクロマトグラムを図2に示す。クロマトグラフィープロファイルから、不純物2が対象のペプチドのピークから分離していることを観察できる。対象のペプチドに対する不純物2の相対保持容量は約0.94であり、pI値近くのpHで不純物2と対象のペプチドとの良好な分離が得られた。
【0087】
(実施例3)
N-ε26-[2-(-2-[2-(2-[2-(2-[4-(17-カルボキシヘプタデカノイルアミノ)-4(S)-カルボキシブチリルアミノ]エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ)アセチル][AIB8,ARG34]GLP-1(7〜37)ペプチドのRP-HPLC精製
N-ε26-[2-(-2-[2-(2-[2-(2-[4-(17-カルボキシヘプタデカノイルアミノ)-4(S)-カルボキシブチリルアミノ]エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ)アセチル][Aib8,Arg34]GLP-1(7〜37)ペプチドを合成によって産生した。アシル化された混合物をまず従来の陰イオン交換によって精製し、次いで、N-ε26-[2-(-2-[2-(2-[2-(2-[4-(17-カルボキシヘプタデカノイルアミノ)-4(S)-カルボキシブチリルアミノ]エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ)アセチル][Aib8,Arg34]GLP-1(7〜37)ペプチドおよび関連不純物を含有する得られたプールを水で希釈した。約120mlの10mmol/kgクエン酸緩衝液、50mmol/kg NaCl、25%(w/w)エタノール、pH5.5で平衡化した20mlのC18-置換(オクタデシル-ジメチルシリル)シリカ樹脂(粒径:15μm)上へ、10mlの液体混合物(4.5mg/ml)を添加した。カラムを60mlの平衡化溶液で洗浄し、400mlに対して38〜43%(w/w)エタノール(10mmol/kgクエン酸緩衝液、50mmol/kg NaCl)の直線勾配によって溶出を実施した。クロマトグラフィー温度は50℃に維持した。
【0088】
分取精製のクロマトグラムを図3に示す。クロマトグラフィープロファイルから、不純物2が対象のペプチドのピークから分離していることを観察できる。対象のペプチドに対する不純物2の相対保持容量は約0.96である。この結果から、不純物2の最良の分離はpIまたはpI近くのpHで得られることが示された。5.5より高いpHでは、不純物2と対象のペプチドとの分離は観察されなかった(図示せず)。
【0089】
(実施例4)
N-ε26-[2-(-2-[2-(2-[2-(2-[4-(17-カルボキシヘプタデカノイルアミノ)-4(S)-カルボキシブチリルアミノ]エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ)アセチル][AIB8,ARG34]GLP-1(7〜37)ペプチドのRP-HPLC精製
N-ε26-[2-(-2-[2-(2-[2-(2-[4-(17-カルボキシヘプタデカノイルアミノ)-4(S)-カルボキシブチリルアミノ]エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ)アセチル][Aib8,Arg34]GLP-1(7〜37)ペプチドを合成によって産生した。アシル化された混合物をまず従来の陰イオン交換によって精製し、次いで、N-ε26-[2-(-2-[2-(2-[2-(2-[4-(17-カルボキシヘプタデカノイルアミノ)-4(S)-カルボキシブチリルアミノ]エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ)アセチル][Aib8,Arg34]GLP-1(7〜37)ペプチドおよび関連不純物を含有する得られたプールを水で希釈した。約40mlの10mmol/kgクエン酸緩衝液、125mmol/kg NaCl、25%(w/w)エタノール、pH7.4で平衡化した20mlのC18-置換(ジメチルシリル)シリカ樹脂(粒径:15μm)上へ、10mlの液体混合物(4.5mg/ml)を添加した。カラムを60mlに対して25〜48%(w/w)エタノール(10mmol/kgクエン酸緩衝液、125mmol/kg NaCl、pH4.5)の直線勾配によって洗浄し、次いで40mlに対して48%(w/w) EtOHおよびpH4.5(10mmol/kgクエン酸緩衝液、50mmol/kg NaCl、pH4.5)での定組成洗浄によって洗浄した。次いで300mlに対するpH4.5〜7.4(10mmol/kgクエン酸緩衝液、125mmol/kg NaCl、EtOH 48%w/w)の直線pH勾配溶出によって標的のポリペプチドを溶出した。クロマトグラフィー温度は50℃に維持した。
【0090】
分取精製のクロマトグラムを図5に示す。クロマトグラフィープロファイルから、不純物2が対象のペプチドのピークから分離していることを観察できる。対象のペプチドに対する不純物2の相対的保持容量は約0.96〜0.97であり、不純物2と対象のペプチドとの満足いく分離は、pI値から始めるpH勾配によって得られた。
【0091】
(実施例5)
インスリンアスパルトのRP-HPLC精製
ヒトインスリンアスパルトdesB30はヒトインスリンアスパルト前駆体のALP切断により産生され、その前駆体は酵母発酵から産生された。インスリンアスパルトdesB30および関連不純物を含有する0.52gの結晶を、40mlの20mmol/kgクエン酸緩衝液、16%(w/w)エタノール、pH4.0中に溶解し、pHを約3.7へ調整してdesB30を可溶化した。約60mlの20mmol/kgクエン酸緩衝液、16%(w/w)エタノール、pH4.0で平衡化した20mlのC18-置換(オクタデシル-ジメチルシリル)シリカ樹脂(粒径:15μm)上へ、20mlの液体混合物(11mg/ml)を添加した。カラムを20mlの平衡化溶液で洗浄し、200mlに対して16〜29%(w/w)エタノール(20mmol/kgクエン酸緩衝液、pH5.8)の直線勾配によって、次いで、40mlに対して29%(w/w) EtOHおよびpH5.8(20mmol/kgクエン酸緩衝液、pH5.8)での定組成洗浄によって溶出を実施した。次いで200mlに対するpH5.8〜8.0(20mmol/kgトリス緩衝液、EtOH 29% w/w、pH8.0)の直線pH勾配溶出によって標的のヒトインスリンdesB30を溶出した。クロマトグラフィーは室温で実施した。
【0092】
分取精製のクロマトグラムを図6に示す。クロマトグラフィープロファイルから、不純物のピークは対象のペプチドのピークの直前に溶出されることが観察できる。
【0093】
(実施例6)
パルミトイル-γ-GLU-LYS26-ARG34GLP-1(7〜37)ペプチドのRP-HPLC精製
パルミトイル-γ-Glu-Lys26-Arg34GLP-1(7〜37)ペプチドは、酵母発酵から産生された。パルミトイル-γ-Glu-Lys26-Arg34GLP-1(7〜37)ペプチドおよび関連不純物を含有するアシル化混合物を水で希釈した。約60mlの20mmol/kgトリス緩衝液、20%(w/w)エタノール、pH7.5で平衡化した20mlのC18-置換(オクタデシル-ジメチルシリル)シリカ樹脂(粒径:15μm)上へ、36mlの液体混合物(4mg/ml)を添加した。カラムを20mlの平衡化溶液で洗浄し、200mlに対して20〜50%(w/w)エタノール(20mmol/kgクエン酸緩衝液、pH5.1)の直線勾配によって、次いで、40mlに対して50%(w/w) EtOHおよびpH5.1 (20mmol/kgクエン酸緩衝液、pH5.1)での定組成洗浄によって溶出を実施した。次いで200mlに対するpH5.1〜4.0(20mmol/kgクエン酸緩衝液、EtOH 50% w/w、pH4.0)の直線pH勾配溶出によって標的パルミトイル-γ-Glu-Lys26-Arg34GLP-1(7〜37)ペプチドを溶出した。クロマトグラフィー温度は60℃に維持した。
【0094】
分取精製のクロマトグラムを図7に示す。クロマトグラフィープロファイルから、不純物のピークが対象のペプチドのピークから分離していることを観察できる。
【0095】
本明細書に引用する刊行物、特許出願および特許を含めた全ての参照文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれており、各参照文献が、参照により組み込まれていることが個別におよび具体的に示されており、かつその全体が本明細書において記載されている場合と同程度に(法律により許される最大限の程度まで)、参照により本明細書に組み込まれている。
【0096】
全ての見出しおよび小見出しは、便宜上のためにのみ本明細書において使用されており、本発明を限定するものとして決して解釈されるべきでない。
【0097】
本明細書におけるあらゆる例または例示的な言語(例えば「など」)の使用は、本発明のよりよい理解を容易にすることを単に意図しており、特に主張しない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる言語も、特許請求されていないいずれの要素も本発明の実施に不可欠であることを示すと解釈されるべきでない。
【0098】
本明細書における特許文献の引用および組込みは、単に便宜上のものであり、そのような特許文献の有効性、特許性および/または権利行使可能性についての見解を反映させるものではない。
【0099】
本発明は、準拠法で許されているように、本明細書に添付された特許請求の範囲に記載の主題の修正および均等物をすべて含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RP-HPLCシステム上にて対象のポリペプチドを液体混合物中の少なくとも1つの不要な成分から分離する方法であって、
a.対象のポリペプチドを含む混合物をRP-HPLCシステムに導入するステップであって、混合物が移動相中に溶解されており、移動相が対象のポリペプチドのpI値から少なくとも1単位離れたpH値を有するステップと、
b.移動相のpHを対象のポリペプチドのpI値から1単位未満離れたpH値へ調整するステップであり、pH調整を段階操作またはpH勾配で行うステップと、
c.対象のポリペプチドを溶出して、精製されたその組成物を得るステップとを含む方法。
【請求項2】
ステップbとステップcの間にステップを追加し、精製しようとするペプチドまたはタンパク質のpI値から少なくとも1単位離れたpH値へpHを再調整し、前記調整を段階操作またはpH勾配で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップaにおけるpH値が、精製しようとするペプチドまたはタンパク質のpI値より高い、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップaにおけるpH値が5.5〜9.0の間である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップbにおけるpH値が3.5〜5.5の間である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップb.における移動相のpHをpH勾配で調整する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップbと同時に有機変性剤の勾配を適用して、標的のペプチドをRP-HPLCシステム上に保持したまま不要な不純物を除去するステップを含む、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ステップbにおける有機変性剤の勾配が約25%から約48%までであり、移動相のpHをpH7.4から4.5までのpH勾配で調整する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップb.における移動相のpHを約7.4から約4.5へ調整する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
RPゲルの温度が摂氏20〜70度の間である、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
RP-HPLCシステムにおいて使用される吸着剤が、C-4シリカ、C-6シリカ、C-12シリカ、C-18シリカおよびフェニル系シリカなどの置換シリカ、ポリスチレンなどのポリマー材料、膜、モノリス材料ならびに濾材から成る群から選択される、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
有機変性剤が、エタノール、メタノール、プロパノールおよびアセトニトリルから成る群から選択される、請求項7から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
対象のポリペプチドが、糖尿病の治療に適切なポリペプチドである、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
対象のポリペプチドが、グルカゴン様ペプチドまたはGLP-1アゴニストである、請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの不要な成分が、前記ポリペプチドのグリコシル化形態、脱アミド化形態、または酸化形態などの前記ポリペプチドの別の形態である、請求項1から14のいずれかに記載の方法。

【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−521485(P2013−521485A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555389(P2012−555389)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【国際出願番号】PCT/EP2011/052964
【国際公開番号】WO2011/107447
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(509091848)ノヴォ ノルディスク アー/エス (42)