ペルチエユニット及びペルチエユニットを含む医療機器並びに人工心肺装置
【課題】関連設備が嵩張る、不衛生である、といった問題を改善し、さらにはプライミングボリュームの増加に起因する患者への負担が発生しないペルチエユニット及びペルチエユニットを含む医療機器並びに人工心肺装置を提供すること。
【解決手段】熱交換部の少なくとも一部に、ペルチエ素子PDを装着し、当該ペルチエ素子PDに放熱部材を装着したペルチエユニット。熱交換部の少なくとも一部に、熱伝導体、ペルチエ素子PDを順次積層し、当該ペルチエ素子PDに放熱部材を装着した。
【解決手段】熱交換部の少なくとも一部に、ペルチエ素子PDを装着し、当該ペルチエ素子PDに放熱部材を装着したペルチエユニット。熱交換部の少なくとも一部に、熱伝導体、ペルチエ素子PDを順次積層し、当該ペルチエ素子PDに放熱部材を装着した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペルチエユニット及びペルチエユニットを含む医療機器並びに構成部品の少なくとも一部にペルチエ素子を装着することにより、当該構成部品を熱交換部と兼用する、または、極めて熱交換効率の良い小型熱交換チャンバーにペルチエ素子を装着することを特徴とする人工心肺装置に関するものである。
本発明によれば、人工心肺装置における熱交換器関連設備を大幅に小型化でき、血液のプライミングボリュームを低減できる。また冷媒として循環水を使用しないため、医療従事者の負担の軽減、患者の負担の軽減、衛生面における安全性の向上等を図る事が可能であるため、医療分野における用途において極めて有効な発明である。
【背景技術】
【0002】
近年生体内各種臓器の代用、補助として様々な人工臓器が開発、臨床応用されている。現在、熱交換器と称されている装置(本願明細書に記載された熱交換部に相当するもので、体外循環中の血液の温度を調節する装置である)を利用し、血液温を調節することにより、体温を上下させることが可能となる。現在の人工心肺装置(人工肺)は、そのほとんどすべてが熱交換器を内蔵している。
血液の温度を下げることにより低体温にした場合shiveringや筋肉のふるえが無ければ全身の代謝を抑制し、組織の酸素消費量を低下させることで、非拍動流の定常流循環による非生理的環境を改善することが可能である。
【0003】
現在、体外循環心臓手術においては低体温を利用することが多い。体外循環心臓手術における低体温法として、体外循環回路内の熱交換器を用いて血液の温度を下げる方法が主流である。低体温はmild(33〜32℃)、moderate(32〜28℃)、intermediate(28〜20℃)、deep(20℃以下)に分類される。
【0004】
従来の熱交換器の材質の多くはステンレス製またはアルミ製である。現在、臨床で使用されている熱交換器は人工心肺装置(人工肺)の形状により異なるが、多管式型、またはベローズ管式型(ラセンコイル型)に製作され、血液が通過する面を抗血栓性に表面加工してある。多管式型の場合、管の内腔を血液が通り、外側を熱交換水が還流する型と管の内腔を熱交換水が通り、外側を血液が通る型のものがある。ベローズ管式型のものでは、一般的には、内腔を熱交換水が還流し、外側を血液が通る。人工肺の膜とは別に直列に配置されるが、最近では膜の中に組み込まれるものもある。
【0005】
以上のような熱交換器は共通の問題点として、熱交換の為に高流量の熱交換水(温水または冷水)を循環させるため、熱交換器へ熱交換水を循環させるためのポンプ、および熱交換水を溜めるための恒温層が必要となり、大きなスペースが必要となる点が挙げられる。また、水を用いて熱交換を行うため不衛生である。さらに、熱交換器内の熱交換水が循環する部位は内圧が高く、破損の恐れもある。そのため、現在の医療現場では装置の小型化が可能であり、衛生的な熱交換器が求められている。
このような熱交換媒体として水を使用する熱交換方法では(A)小型化かつ(B)衛生的な熱交換器という課題は達成できないと考えられる。また、熱交換のために新たな熱交換チャンバーを設けるとその熱交換チャンバーの熱交換効率が高くない限り(C)プライミングボリュームの増加による患者への負担がない装置という課題が達成されない。
【0006】
これら需要に応えるための技術について、いくつかの技術が提案されている。
例えば、特許文献1には加温冷却自在型CHDF(持続的血液濾過透析)装置に関する技術が開示されている。これは、ろ過フィルタの血液流入口に脱血ラインが接続され血液流出口に返血ラインが接続されると共に、ろ過フィルタの透析液流入口に透析液ラインが接続され透析液流出口に除水ラインが接続されたCHDF装置において、返血ラインと透析液ラインのいずれか一方に、ペルチエ素子への供給電圧の極性切替制御によって返血ラインの血液を加温もしくは冷却し得る加温冷却器を配置した発明である。しかしながら、この発明は、血液の加温と冷却を反復するCHDFを対象とした発明であり、人工心肺装置へ転用するには大掛かりであって実質実用に到っていない。
【0007】
さらに特許文献2には、医療用液体の熱交換用容器及び温度調節装置に関する技術が開示されている。これは、医療用液体を流入させる入口部、前記液体を流通させる空間を内部に有する金属製シェルからなる本体部、及び本体部の内部を通過した液体を流出させる出口部を有し、シェルの内側方向には畝状に突出する1又はそれ以上の流路案内壁を有しており、本体部の内部には流路案内壁によって液体の流れを導く液体流路が形成されており、液体流路の全体としての長さが金属製シェルの最も長い辺の長さよりも長く設定されている熱交換用容器を提供するものである。本技術は熱交換の方法として、ペルチエ素子の使用などについても言及しているが、別途シェルを設ける必要があるため、血液のプライミングボリュームが増加し、患者の負担という面では充分に目的を達成できていない。このプライミングボリューム増加の原因は金属性シェルの構造に起因する熱交換効率の悪さにある。循環液の流路に別途熱交換用のチャンバーを設置するのであれば、熱交換効率が高くない限りプライミングボリュームの増加が避けられない。特許文献2記載の金属シェルは、それ自体が熱伝導体といえるが、このような畝構造ではチャンバーのプライミングボリュームに対する、流体と熱伝導体との接触面積を多くとる事が難しい。さらに決定的なのは、このような畝構造のチャンバー内を流れる液体は層流であり、同じ液層が常に熱伝導体と接触しているため、全体としての熱交換効率は低いと考えられる。上記のごとくであるから、従来提案されている人工心肺装置における理想的な熱交換器は、現実的にはほとんど実施されてはいない状況にある。
【0008】
【特許文献1】特開2000−93449号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2001−231853号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする問題点は、(A)熱交換器へ熱交換水を循環させるためのポンプ、熱交換水を溜めるための恒温層が必要となり、大きなスペースが必要となる点、(B)また水を用いて熱交換を行うため不衛生である。(C)さらに、熱交換器内の熱交換水が循環する部位は内圧が高く、破損の恐れがある点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、従来技術の上記のごとき問題に鑑み、従来の人工心肺装置と比較して(A)小型化かつ(B)衛生的な熱交換器で、(C)プライミングボリュームの増加による患者への負担がない、医療機器(人工心肺装置、人工肺)並びにこれらの構成部品兼熱交換部材を提供することである。
以上の結果より、本発明者らはペルチエ素子(熱電半導体素子)を用いて温度制御部分に電気的な制御を適用することで装置の小型化かつ衛生的な熱交換器を実現する事が可能であり、ペルチエ素子を人工心肺装置の構成部品に装着し、当該構成部品を熱交換部と兼用する、または、極めて熱交換効率の良い小型熱交換チャンバーにペルチエ素子を装着することで、プライミングボリュームの増加を防ぐ事が可能であることを見いだし、本発明を完成した。すなわち、本発明によれば、以下のようにペルチエ素子を用いたペルチエユニット及びペルチエユニットを含む医療機器並びに人工心肺装置が提供される。
[1]本発明は、熱交換部(2)の少なくとも一部に、ペルチエ素子(PD)を装着し、当該ペルチエ素子(PD)の発熱面または吸熱面に放熱部材(5)を装着したペルチエユニット(1)を提供する。
[2]本発明は、熱交換部(2)の少なくとも一部に、熱伝導体(3)、ペルチエ素子(PD)を順次積層し、当該ペルチエ素子(PD)に放熱部材(5)を装着した[1]に記載のペルチエユニット(1)を提供する。
[3]本発明は、熱交換部(2)のチャンバー(2C)の少なくとも一面に、ペルチエユニット(1)を装着し、
前記チャンバー(2C)内に複数の熱伝導部材(9)を配置し、当該熱伝導部材(9)は、チャンバー(2C)の底面または天面を貫通するように立設し、当該熱伝導部材(9)の上部(下部)は前記ペルチエユニット(1)と接触し、
前記チャンバー(2C)の流体入口(7)からチャンバー(2C)内に導入され、当該流体が、前記熱伝導部材(9)に衝突し、当該熱伝導部材(9)間の隙間を経て、流体出口(8)より流出するように形成した、[1]ないし[2]に記載のペルチエユニット(1)を提供する。
[4]本発明は、[1]ないし[3]に記載のペルチエユニット(1)を構成部材の一部に含む医療機器を提供する。
[5]本発明は、熱交換部(2)が、人工肺(20)、貯血槽(30)、血液ポンプ(40)、血液フィルタ(50)、回路(60)のいずれかであり、当該熱交換部(2)の少なくとも一部、または複数部に、ペルチエ素子(PD)を装着し、当該ペルチエ素子(PD)に放熱部材(5)を装着した人工心肺装置(10)を提供する。
[6]本発明は、前記熱交換部(2)の少なくとも一部に、熱伝導体(3)、ペルチエ素子(PD)を順次積層し、当該ペルチエ素子(PD)に放熱部材(5)を装着した[4]に記載の人工心肺装置(10)を提供する。
[7]本発明は、熱交換部(2)のチャンバー(2C)の少なくとも一面に、ペルチエユニット(1)を装着し、
前記チャンバー(2C)内に複数の熱伝導部材(9)を配置し、当該熱伝導部材(9)は、チャンバー(2C)の底面または天面を貫通するように立設し、当該熱伝導部材9の上部(下部)は前記ペルチエユニット(1)と接触し、
前記チャンバー(2C)の流体入口(7)からチャンバー(2C)内に導入され、当該流体が、前記熱伝導部材(9)に衝突し、当該熱伝導部材(9)間の隙間を経て、流体出口(8)より流出するように形成した、[5]ないし[6]に記載の人工心肺装置(10)を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ペルチエ素子を用いたペルチエユニットを使用することで、従来技術においては、熱交換媒体として水を使用していたために生じていた、(A)関連設備が嵩張る、(B)不衛生である等の問題が改善され、さらには(C)プライミングボリュームの増加に起因する患者への負担が発生しない。(D)人工心肺装置の用途では、術中はもっぱら冷却装置として使用されるが、術後、電流の向きを変えて、低温面(吸熱面)を加熱面に変えれば、必要に応じて、血液の加熱装置としても使用できる。等の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
(ペルチエ素子PD)
本発明において、ペルチエ素子PDとしては、図1に例示するように、従来公知で汎用されているものがいずれも好適に使用される。ペルチエ素子PDとは機能的に電子冷凍素子と呼ばれるが、発明者の名にちなんでペルチエ(Peitier)素子とも呼ばれることが多い。
n型とp型の半導体(熱電素子HDともいう)を銅などの金属電極MPで接合した素子であり、電流の向きによって片方の接合面が低温(以下吸熱面ともいう)に、他方の接合面が高温(以下放熱面ともいう)になる。ペルチエ素子PDの特徴は以下のとおりである。(A)冷媒のための配管やコンプレッサがなく、構造も単純で、小型軽量である。(B)機械的な運動がなく、振動、騒音、摩擦がない。(C)直流電源のみが必要であり、電流の大きさを変えれば熱交換能力を連続的に変えることができ、操作が簡単である。(D)電流の向きを変えて、低温面(吸熱面)を加熱面に変えれば、加熱装置となる。(E)保守が簡単である:保守・検査・整備が容易である。
【0013】
(使用条件)
本発明においてペルチエ素子PDのサイズ、形態、駆動電圧、駆動電流、投入電力等は、目的とする温度、処理血液流量、周囲温度などによって任意に調節することができる。言い換えれば、これら使用条件を変更する事で、従来の熱交換器と比較してより高精度に血液温度を調節可能である。
【0014】
(ペルチエユニット1)
図2は、本発明のペルチエユニット1の一例を示す概念図である。
ペルチエユニット1は、熱交換部2の少なくとも一部に、ペルチエ素子PDを装着し、当該ペルチエ素子PDに放熱部材5を装着するか、あるいは熱交換部2の少なくとも一部、または複数部に、熱伝導体3、ペルチエ素子PD、断熱材4を順次積層し、当該断熱材4に放熱部材5を装着している。
前記放熱部材5は、ペルチエ素子PDによって液温を冷却する場合はペルチエ素子PDの高温面の熱を吸熱できる部材、液温を加温する場合はペルチエ素子PDの低温面を加温できる部材により形成されている。
ペルチエ素子PDの放熱面は50℃以上に温度が上がるため、図2に例示するように放熱部材5を用いてペルチエ素子PDの放熱面から熱を奪い、これを冷やすことでペルチエ素子PDの破壊を防止するのが実用的である。図2の例示では、放熱部材5としてヒートシンク5を使用している。ヒートシンク5は、空冷式で中が空洞となっている。さらにDCファン6より一方向から他方向に送風することにより、ヒートシンク5内に溜まった熱を放出し、ヒートシンク5の吸熱能力を高めることができるのでより効果的である。なお、放熱部材5の一例として空冷式を記載しているが、水冷式を使用しても全く問題はない。
また、通常ペルチエ素子PDはフラットなプレートであるが、医療機器(人工心肺装置10、これらの構成部品)の一部外壁(フラットな面のみではなく、湾曲面もある)を介して熱交換を行うためには、ペルチエ素子PDと医療機器(人工心肺装置10、これらの構成部品)の熱交換部2の少なくとも一部に密着させる必要がある。
このため、ペルチエ素子PDと熱交換部2の間には、当該熱交換部2の外壁に沿う(フィットする)形状で、熱伝導体3(例えば銅板のような熱伝導度が高い材料)を介するのが良い。
さらにペルチエ素子PDの放熱面と放熱部材5の間に断熱材4を配置することにより、熱交換効果を高めることができる。
【0015】
(人工心肺装置)
本発明における人工心肺装置(人工肺)とは、体外循環によって血液のガス交換を行う装置全般を意味する。例えば、通常の膜型人工心肺に加えて、ECMO(Extra Corporeal Membrane Oxygenation;体外膜型酸素供給)、PCPS(Percutaneous
Cardio Pulmonary Support :経皮的心肺補助)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
(人工心肺装置10並びに人工心肺装置の構成部品と熱交換部の一体化)
図3は代表的な人工心肺装置10の一例を示す概略図、図4は熱交換部(貯血槽部位)にペルチエ素子を装着した人工心肺の一例を示す概略図、図5は熱交換部(血液ポンプ部位)にペルチエ素子を装着した人工心肺の一例を示す概略図、図6は熱交換部(人工肺部位)にペルチエ素子を装着した人工心肺の一例を示す概略図、図7は熱交換部(異物除去フィルタ部位)にペルチエ素子を装着した人工心肺の一例を示す概略図、図8は熱交換部(回路、チューブ)の外面にペルチエ素子を装着した人工心肺の一例を示す概略図である。
本発明の人工心肺装置10の特徴は、図4から図8に例示するように、熱交換部2が、人工肺20、貯血槽30、血液ポンプ40、血液フィルタ50、回路(チューブ)60のいずれかであり、当該熱交換部2の少なくとも一部の外壁に、熱伝導体3、ペルチエ素子PD、断熱材4を順次積層し、当該断熱材4に放熱部材5を装着した人工心肺装置10を例示している。
これらのように、人工心肺装置10の一部または複数の構成部材に、ペルチエ素子PDを装着し、熱交換部2と兼用することにより、従来のように、熱交換用のチャンバーを別途設ける必要がなくなり、人工心肺装置10全体のプライミングボリュームを低減することができる。
図4から図8の形態(貯血槽30外壁を覆う形態、血液ポンプ40外壁を覆う形態、人工肺20外壁を覆う形態、異物除去フィルター50外壁を覆う形態、人工心肺回路60の外面を覆う形態)はあくまでも例示であり、これらに限定されない。人工心肺装置10の内部を循環する血液に対して、人工心肺装置の構成部品の外壁を介してペルチエ素子による熱交換が実施できる形状であれば何でも良い。
【0017】
(熱交換チャンバー)
図13は熱交換部2のチャンバーの実施例を示す概略図ある。熱交換部2のチャンバー2Cの少なくとも一面(底面又は天面)に、ペルチエユニット1を装着し、前記チャンバー2C内に複数の熱伝導部材9を配置している。
当該熱伝導部材9は、チャンバー2Cの底面または天面を貫通するように立設し、当該熱伝導部材9の上部(底部)は前記ペルチエユニット1と接触している。
流体は、前記チャンバー2Cの流体入口7からチャンバー2C内に導入され、当該流体が、前記熱伝導部材9に衝突し、当該熱伝導部材9間の隙間を経て、流体出口8より流出するように形成されている。さらに詳述すれば、流体は、前記熱伝導部材9に接触を繰りかえして、攪拌されながら流体出口8より流出する。
チャンバー2Cの底面若しくは天面にペルチエユニットPDを取り付けることにより、チャンバー2C内部を流れる流体の温度を極めて効率よく変化させることが可能である。このような構造をとることで、チャンバー2Cのプライミングボリュームが小さいにもかかわらず、流体と熱伝導部材9との接触面積を多くとることが可能である。
さらに詳述すれば、図13に例示するように、複数の熱伝導部材9を、交互に配列することにより、流体は、前記熱伝導部材9に何度も接触を繰りかえして、何度も攪拌されながら流体出口8より流出する。このように、熱伝導部材9と接触する流体の液層が常に異なるという特徴をもつので、そのため、全体としての熱交換効率が極めて高くなる。
熱伝導部材9の材質は、鉄、アルミニウム、銅、金、銀、ステンレス等が挙げられるが、特に限定されない。
熱伝導部材9の少なくとも一方の端部はチャンバー2C外部に露出しており、その端部(上部又は下部)と直接的または間接的にペルチエユニットPDを接続することで、熱交換を行う。チャンバー2Cと熱伝導部材9の接続(接触)部は気密性が保たれており、チャンバー2C内は無菌状態を維持したまま熱交換可能である。
熱伝導部材9の形態は、図13に例示するように細長い円注状が好ましいが(このため熱伝導部材9は「熱伝導芯」ともいう)の太さ、形状、本数等は限定されるものではなく、目的に沿ったものを選択する事ができる。
要するに、チャンバー2Cの底面または天面を貫通するように立設し、当該熱伝導部材9の上部(底部)が、前記ペルチエユニット1と接触しているものであれば、本発明の目的は達成できる。
【実施例】
【0018】
以下、実施例により本発明を説明する。ただし、これらは単なる実施の態様の一例であり、本発明の技術的範囲がこれらによりなんら限定的に解釈されるものではない。
【0019】
〔実施例1〕
(1)本実施例では、恒温槽、ローラーポンプ、貯血槽30兼熱交換部材を、臨床で使用される代表的な人工心肺回路(川澄化学工業株式会社製)で接続した簡易回路を使用した。その他、電源、デジタルマルチメータ、熱電対を使用した。
2枚のペルチエ素子PDの吸熱面を、熱伝導体3(銅板)を介して人工心肺装置10の貯血槽30底部に密着させ、貯血槽30底部外壁を通じて熱交換を行った。人血液を模して、循環する水は恒温槽を用いて37℃一定に調整した。本実験回路は閉回路循環法を用いて水をローラーポンプにて流量Q=1〜5L/minで熱交換部2(貯血槽30)に2分間循環し、水温を下げ、貯血槽30からの流出部の水温を熱電対で測定し、デジタルマルチメータを用いて10秒ごとに読み取った。また、ペルチエ素子PDに流す電流も1A−5Aまで変化させた。
【0020】
(2)流量1L/min時の温度変化を図9、流量3L/min時の温度変化を図10、流量4L/min時の温度変化を図11、流量5L/min時の温度変化を図12に示した。
【0021】
図9から図12より、以下のことが云える。まず、2Aもしくは3A以下の電流を流した時、40秒程度経過すると水温が一定に保たれた。しかし、それ以上の電流を流した時、徐々に水温が下がらなくなった。また、さらに長時間実験を行った場合、水温が上昇していくことが示唆された。これらの原因はペルチエ素子PDの放熱面を効率良く冷却することが出来なかったためであると思われる。それにより、4A以上では冷却の用途に使用することができなかった。よってこの結果はペルチエ素子用の冷却部材5(ヒートシンク)の熱抵抗値が影響していると考えられ、これ以上の電流を流す場合、ペルチエ素子用の冷却部材5(ヒートシンク)の熱抵抗値を減少させる必要がある。なお、水温をさらに低下させるには熱交換部2の表面積を増加させるなどの改良により、可能である。また、流量が上昇するにつれて水温があまり変化しなかった。この原因は熱交換部2と水が接している時間が短くなったため水温の変化量が少なくなった。
【0022】
〔実施例2〕
(1)2枚のペルチエ素子の吸熱面を、熱伝導体3(銅板)を介して人工心肺装置10の人工心肺回路部60に密着させ、人工心肺回路60外壁を通じて熱交換を行った。〔実施例1〕と同様の簡易回路を作製し、貯血槽直前の人工心肺回路部60を被う形態でペルチエ素子ユニットPDを密着させた。ペルチエ素子PDと人工心肺回路60の間に介在する熱伝導体3(銅板)は、ペルチエ素子PDの吸熱面と接する面はフラットで、人工心肺回路60と接する面は回路(チューブ)外壁に沿って密着しやすいように半円筒状に切削した。閉回路循環法を用いて水をローラーポンプにて流量Q=1〜5L/minで熱交換部(貯血槽直前の人工心肺回路60)に2分間循環し、水温を下げ、貯血槽からの流出部の水温を熱電対で測定し、デジタルマルチメータを用いて10秒ごとに読み取った。また、ペルチエ素子PDに流す電流も1A−5Aまで変化させた。
【0023】
(2)以上の評価の結果、2分後における水温を表1に示す。
【表1】
【0024】
表1のとおり、実施例1と同様の傾向が見られたが、熱交換効率は実施例1より若干低下した。この原因は、ペルチエ素子PDと循環水の間に介する物[貯血槽30(材料:ポリカーボネート)と回路部60(材料:ポリ塩化ビニル)]の違い及びそれら材料の厚さの違いに起因する。ペルチエ素子と循環水の間に介する物は、熱伝導度が高いほど、厚さが薄いほど熱交換効率が高くなると考えられる。
【0025】
〔実施例3〕
(1)8枚のペルチエ素子PDの吸熱面を、熱伝導体3(銅板)を介して人工心肺装置10の貯血槽30底部に密着させ、貯血槽30底部外壁を通じて熱交換を行った。〔実施例1〕と同様の簡易回路を作製し、〔実施例1〕と同様に、閉回路循環法を用いて水をローラーポンプにて流量Q=1〜5L/minで熱交換部(貯血槽)に2分間循環し、水温を下げ、貯血槽からの流出部の水温を熱電対で測定し、デジタルマルチメータを用いて10秒ごとに読み取った。また、ペルチエ素子PDに流す電流も1A−5Aまで変化させた。
【0026】
(2)以上の評価の結果、2分後における水温を表2に示す。
【表2】
【0027】
表2のとおり、実施例1と同様の傾向が見られたが、熱交換効率は実施例1より向上した。この原因は、ペルチエ素子PDが循環水と接する表面積の違い(2枚と8枚)に起因する。熱交換部の表面積をさらに増加させることにより、さらなる熱交換効率の向上が可能になると考えられる。
〔実施例4〕
(1)本実施例では、恒温槽、ローラーポンプ、図13の(熱交換部2の)チャンバー2Cを、臨床で使用される代表的な人工心肺回路(川澄化学工業株式会社製)で接続した簡易回路を使用した。その他、電源、デジタルマルチメータ、熱電対を使用した。
試験条件:
循環流体として血液の代わりに純水を用い、人血液を模して、循環する水は恒温槽を用いて37℃一定に調整した。ペルチエ素子PDは2枚使用し、供給電圧は26V、ペルチエ素子1枚あたりの入力電流は6A、吸熱量は45Wとした。閉回路循環法を用いて水をローラーポンプにて流量Q=0.3〜5L/minで熱交換部2に2分間循環し、水温を下げ、熱交換部2からの流出部の水温を熱電対で測定し、デジタルマルチメータを用いて読み取った。
熱交換部2(図13)の設置:
2枚のペルチエ素子PDの吸熱面を、熱伝導体3(銅板)を介してチャンバー2Cの底部に密着させ、チャンバー2C底部外壁より露出した熱伝導芯9を通じて熱交換を行った。ペルチエ素子PDの発熱面の下部には冷却部材5(ヒートシンク)を設置した。
熱交換部2(図13)の設計:
チャンバー2Cは、サイズ;幅140mm×80mm×20mmを使用し、熱伝導芯9はアルミニウム製で、図13の通り円柱状のものを使用した。熱伝導芯9は、図13に示すとおり、各熱伝導芯9が交互に並ぶように規則的に配列した。
熱伝導芯9の太さと熱交換効率の相関を見るため、熱伝導芯9と循環流体との接触面積を約6000mm2に統一し、熱伝導芯9の径を3mmと5mmの2種類に対して評価した。なお熱伝導芯9と熱伝導芯9の間隔は2mmであった。
結果:
【表3】
【表4】
表3および表4のとおり、図13の熱交換部2を使用することで、ペルチエ素子PD2枚においても高い熱交換効率(流速0.3(l/min)のとき、37℃から31.0ないし28.5(℃)まで、温度が低下している)を発揮することが確認された。熱伝導芯9の径が5mmの方が熱交換効率が高い結果であるが、これは熱伝導芯9が熱伝導体(銅板)3を介してペルチエ素子PDとの接触する面積が大きいことに起因すると考えられる。またそれぞれのチャンバー2Cのプライミングボリュームは、熱伝導芯9の径が3mmの場合、約178ml、熱伝導芯9の径が5mmの場合、約155mlと極めて少量であった。
本結果より、熱伝導芯9の径、充填率を変更することで、目的に沿ったプライミングボリュームおよび熱交換効率を発揮し得る熱交換部2を提供することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、ペルチエ素子PD(熱電半導体素子)を用いて温度制御部分に電気的な制御を適用することで、装置の小型化かつ衛生的な熱交換器を実現し、具体的には本熱交換装置を人工心肺装置の構成部品と一体化して兼熱交換部2とする、あるいは熱交換効率の高い熱交換部2取り付けることで、プライミングボリュームを減少させた結果、従来の人工心肺装置と比較して(A)小型化かつ(B)衛生的な熱交換器で、(C)プライミングボリュームの増加による患者への負担がない、熱交換器一体型人工心肺装置を供するものであり、産業上の利用可能性はきわめて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に使用するペルチエ素子の概念図
【図2】本発明のペルチエユニットの一例を示す概念図
【図3】代表的な人工心肺の一例を示す概略図
【図4】熱交換部(貯血槽部位)にペルチエ素子を装着した人工心肺の一例を示す概略図
【図5】熱交換部(血液ポンプ部位)にペルチエ素子を装着した人工心肺の一例を示す概略図
【図6】熱交換部(人工肺部位)にペルチエ素子を装着した人工心肺の一例を示す概略図
【図7】熱交換部(異物除去フィルタ部位)にペルチエ素子を」装着した人工心肺の一例を示す概略図
【図8】熱交換部(回路、チューブ)の外面にペルチエ素子を装着した人工心肺の一例を示す概略図
【図9】循環水の温度変化を示すグラフ
【図10】循環水の温度変化を示すグラフ
【図11】循環水の温度変化を示すグラフ
【図12】循環水の温度変化を示すグラフ
【図13】熱交換部のチャンバーの実施例を示す概略図
【符号の説明】
【0030】
PD ペルチエ素子
MP 金属電極
HD 熱電素子
1 ベルチェユニット
2 熱交換部
2C (熱交換部)チャンバー
3 熱伝導体(銅板)
4 断熱材
5 放熱部材(ヒートシンク)
6 DCファン
7 流体入口
8 流体出口
9 熱伝導部材
10 医療機器(人工心肺装置)
20 人工肺
30 貯血槽
40 血液ポンプ
50 血液フィルタ
60 人工心肺回路(チューブ)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペルチエユニット及びペルチエユニットを含む医療機器並びに構成部品の少なくとも一部にペルチエ素子を装着することにより、当該構成部品を熱交換部と兼用する、または、極めて熱交換効率の良い小型熱交換チャンバーにペルチエ素子を装着することを特徴とする人工心肺装置に関するものである。
本発明によれば、人工心肺装置における熱交換器関連設備を大幅に小型化でき、血液のプライミングボリュームを低減できる。また冷媒として循環水を使用しないため、医療従事者の負担の軽減、患者の負担の軽減、衛生面における安全性の向上等を図る事が可能であるため、医療分野における用途において極めて有効な発明である。
【背景技術】
【0002】
近年生体内各種臓器の代用、補助として様々な人工臓器が開発、臨床応用されている。現在、熱交換器と称されている装置(本願明細書に記載された熱交換部に相当するもので、体外循環中の血液の温度を調節する装置である)を利用し、血液温を調節することにより、体温を上下させることが可能となる。現在の人工心肺装置(人工肺)は、そのほとんどすべてが熱交換器を内蔵している。
血液の温度を下げることにより低体温にした場合shiveringや筋肉のふるえが無ければ全身の代謝を抑制し、組織の酸素消費量を低下させることで、非拍動流の定常流循環による非生理的環境を改善することが可能である。
【0003】
現在、体外循環心臓手術においては低体温を利用することが多い。体外循環心臓手術における低体温法として、体外循環回路内の熱交換器を用いて血液の温度を下げる方法が主流である。低体温はmild(33〜32℃)、moderate(32〜28℃)、intermediate(28〜20℃)、deep(20℃以下)に分類される。
【0004】
従来の熱交換器の材質の多くはステンレス製またはアルミ製である。現在、臨床で使用されている熱交換器は人工心肺装置(人工肺)の形状により異なるが、多管式型、またはベローズ管式型(ラセンコイル型)に製作され、血液が通過する面を抗血栓性に表面加工してある。多管式型の場合、管の内腔を血液が通り、外側を熱交換水が還流する型と管の内腔を熱交換水が通り、外側を血液が通る型のものがある。ベローズ管式型のものでは、一般的には、内腔を熱交換水が還流し、外側を血液が通る。人工肺の膜とは別に直列に配置されるが、最近では膜の中に組み込まれるものもある。
【0005】
以上のような熱交換器は共通の問題点として、熱交換の為に高流量の熱交換水(温水または冷水)を循環させるため、熱交換器へ熱交換水を循環させるためのポンプ、および熱交換水を溜めるための恒温層が必要となり、大きなスペースが必要となる点が挙げられる。また、水を用いて熱交換を行うため不衛生である。さらに、熱交換器内の熱交換水が循環する部位は内圧が高く、破損の恐れもある。そのため、現在の医療現場では装置の小型化が可能であり、衛生的な熱交換器が求められている。
このような熱交換媒体として水を使用する熱交換方法では(A)小型化かつ(B)衛生的な熱交換器という課題は達成できないと考えられる。また、熱交換のために新たな熱交換チャンバーを設けるとその熱交換チャンバーの熱交換効率が高くない限り(C)プライミングボリュームの増加による患者への負担がない装置という課題が達成されない。
【0006】
これら需要に応えるための技術について、いくつかの技術が提案されている。
例えば、特許文献1には加温冷却自在型CHDF(持続的血液濾過透析)装置に関する技術が開示されている。これは、ろ過フィルタの血液流入口に脱血ラインが接続され血液流出口に返血ラインが接続されると共に、ろ過フィルタの透析液流入口に透析液ラインが接続され透析液流出口に除水ラインが接続されたCHDF装置において、返血ラインと透析液ラインのいずれか一方に、ペルチエ素子への供給電圧の極性切替制御によって返血ラインの血液を加温もしくは冷却し得る加温冷却器を配置した発明である。しかしながら、この発明は、血液の加温と冷却を反復するCHDFを対象とした発明であり、人工心肺装置へ転用するには大掛かりであって実質実用に到っていない。
【0007】
さらに特許文献2には、医療用液体の熱交換用容器及び温度調節装置に関する技術が開示されている。これは、医療用液体を流入させる入口部、前記液体を流通させる空間を内部に有する金属製シェルからなる本体部、及び本体部の内部を通過した液体を流出させる出口部を有し、シェルの内側方向には畝状に突出する1又はそれ以上の流路案内壁を有しており、本体部の内部には流路案内壁によって液体の流れを導く液体流路が形成されており、液体流路の全体としての長さが金属製シェルの最も長い辺の長さよりも長く設定されている熱交換用容器を提供するものである。本技術は熱交換の方法として、ペルチエ素子の使用などについても言及しているが、別途シェルを設ける必要があるため、血液のプライミングボリュームが増加し、患者の負担という面では充分に目的を達成できていない。このプライミングボリューム増加の原因は金属性シェルの構造に起因する熱交換効率の悪さにある。循環液の流路に別途熱交換用のチャンバーを設置するのであれば、熱交換効率が高くない限りプライミングボリュームの増加が避けられない。特許文献2記載の金属シェルは、それ自体が熱伝導体といえるが、このような畝構造ではチャンバーのプライミングボリュームに対する、流体と熱伝導体との接触面積を多くとる事が難しい。さらに決定的なのは、このような畝構造のチャンバー内を流れる液体は層流であり、同じ液層が常に熱伝導体と接触しているため、全体としての熱交換効率は低いと考えられる。上記のごとくであるから、従来提案されている人工心肺装置における理想的な熱交換器は、現実的にはほとんど実施されてはいない状況にある。
【0008】
【特許文献1】特開2000−93449号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2001−231853号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする問題点は、(A)熱交換器へ熱交換水を循環させるためのポンプ、熱交換水を溜めるための恒温層が必要となり、大きなスペースが必要となる点、(B)また水を用いて熱交換を行うため不衛生である。(C)さらに、熱交換器内の熱交換水が循環する部位は内圧が高く、破損の恐れがある点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、従来技術の上記のごとき問題に鑑み、従来の人工心肺装置と比較して(A)小型化かつ(B)衛生的な熱交換器で、(C)プライミングボリュームの増加による患者への負担がない、医療機器(人工心肺装置、人工肺)並びにこれらの構成部品兼熱交換部材を提供することである。
以上の結果より、本発明者らはペルチエ素子(熱電半導体素子)を用いて温度制御部分に電気的な制御を適用することで装置の小型化かつ衛生的な熱交換器を実現する事が可能であり、ペルチエ素子を人工心肺装置の構成部品に装着し、当該構成部品を熱交換部と兼用する、または、極めて熱交換効率の良い小型熱交換チャンバーにペルチエ素子を装着することで、プライミングボリュームの増加を防ぐ事が可能であることを見いだし、本発明を完成した。すなわち、本発明によれば、以下のようにペルチエ素子を用いたペルチエユニット及びペルチエユニットを含む医療機器並びに人工心肺装置が提供される。
[1]本発明は、熱交換部(2)の少なくとも一部に、ペルチエ素子(PD)を装着し、当該ペルチエ素子(PD)の発熱面または吸熱面に放熱部材(5)を装着したペルチエユニット(1)を提供する。
[2]本発明は、熱交換部(2)の少なくとも一部に、熱伝導体(3)、ペルチエ素子(PD)を順次積層し、当該ペルチエ素子(PD)に放熱部材(5)を装着した[1]に記載のペルチエユニット(1)を提供する。
[3]本発明は、熱交換部(2)のチャンバー(2C)の少なくとも一面に、ペルチエユニット(1)を装着し、
前記チャンバー(2C)内に複数の熱伝導部材(9)を配置し、当該熱伝導部材(9)は、チャンバー(2C)の底面または天面を貫通するように立設し、当該熱伝導部材(9)の上部(下部)は前記ペルチエユニット(1)と接触し、
前記チャンバー(2C)の流体入口(7)からチャンバー(2C)内に導入され、当該流体が、前記熱伝導部材(9)に衝突し、当該熱伝導部材(9)間の隙間を経て、流体出口(8)より流出するように形成した、[1]ないし[2]に記載のペルチエユニット(1)を提供する。
[4]本発明は、[1]ないし[3]に記載のペルチエユニット(1)を構成部材の一部に含む医療機器を提供する。
[5]本発明は、熱交換部(2)が、人工肺(20)、貯血槽(30)、血液ポンプ(40)、血液フィルタ(50)、回路(60)のいずれかであり、当該熱交換部(2)の少なくとも一部、または複数部に、ペルチエ素子(PD)を装着し、当該ペルチエ素子(PD)に放熱部材(5)を装着した人工心肺装置(10)を提供する。
[6]本発明は、前記熱交換部(2)の少なくとも一部に、熱伝導体(3)、ペルチエ素子(PD)を順次積層し、当該ペルチエ素子(PD)に放熱部材(5)を装着した[4]に記載の人工心肺装置(10)を提供する。
[7]本発明は、熱交換部(2)のチャンバー(2C)の少なくとも一面に、ペルチエユニット(1)を装着し、
前記チャンバー(2C)内に複数の熱伝導部材(9)を配置し、当該熱伝導部材(9)は、チャンバー(2C)の底面または天面を貫通するように立設し、当該熱伝導部材9の上部(下部)は前記ペルチエユニット(1)と接触し、
前記チャンバー(2C)の流体入口(7)からチャンバー(2C)内に導入され、当該流体が、前記熱伝導部材(9)に衝突し、当該熱伝導部材(9)間の隙間を経て、流体出口(8)より流出するように形成した、[5]ないし[6]に記載の人工心肺装置(10)を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ペルチエ素子を用いたペルチエユニットを使用することで、従来技術においては、熱交換媒体として水を使用していたために生じていた、(A)関連設備が嵩張る、(B)不衛生である等の問題が改善され、さらには(C)プライミングボリュームの増加に起因する患者への負担が発生しない。(D)人工心肺装置の用途では、術中はもっぱら冷却装置として使用されるが、術後、電流の向きを変えて、低温面(吸熱面)を加熱面に変えれば、必要に応じて、血液の加熱装置としても使用できる。等の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
(ペルチエ素子PD)
本発明において、ペルチエ素子PDとしては、図1に例示するように、従来公知で汎用されているものがいずれも好適に使用される。ペルチエ素子PDとは機能的に電子冷凍素子と呼ばれるが、発明者の名にちなんでペルチエ(Peitier)素子とも呼ばれることが多い。
n型とp型の半導体(熱電素子HDともいう)を銅などの金属電極MPで接合した素子であり、電流の向きによって片方の接合面が低温(以下吸熱面ともいう)に、他方の接合面が高温(以下放熱面ともいう)になる。ペルチエ素子PDの特徴は以下のとおりである。(A)冷媒のための配管やコンプレッサがなく、構造も単純で、小型軽量である。(B)機械的な運動がなく、振動、騒音、摩擦がない。(C)直流電源のみが必要であり、電流の大きさを変えれば熱交換能力を連続的に変えることができ、操作が簡単である。(D)電流の向きを変えて、低温面(吸熱面)を加熱面に変えれば、加熱装置となる。(E)保守が簡単である:保守・検査・整備が容易である。
【0013】
(使用条件)
本発明においてペルチエ素子PDのサイズ、形態、駆動電圧、駆動電流、投入電力等は、目的とする温度、処理血液流量、周囲温度などによって任意に調節することができる。言い換えれば、これら使用条件を変更する事で、従来の熱交換器と比較してより高精度に血液温度を調節可能である。
【0014】
(ペルチエユニット1)
図2は、本発明のペルチエユニット1の一例を示す概念図である。
ペルチエユニット1は、熱交換部2の少なくとも一部に、ペルチエ素子PDを装着し、当該ペルチエ素子PDに放熱部材5を装着するか、あるいは熱交換部2の少なくとも一部、または複数部に、熱伝導体3、ペルチエ素子PD、断熱材4を順次積層し、当該断熱材4に放熱部材5を装着している。
前記放熱部材5は、ペルチエ素子PDによって液温を冷却する場合はペルチエ素子PDの高温面の熱を吸熱できる部材、液温を加温する場合はペルチエ素子PDの低温面を加温できる部材により形成されている。
ペルチエ素子PDの放熱面は50℃以上に温度が上がるため、図2に例示するように放熱部材5を用いてペルチエ素子PDの放熱面から熱を奪い、これを冷やすことでペルチエ素子PDの破壊を防止するのが実用的である。図2の例示では、放熱部材5としてヒートシンク5を使用している。ヒートシンク5は、空冷式で中が空洞となっている。さらにDCファン6より一方向から他方向に送風することにより、ヒートシンク5内に溜まった熱を放出し、ヒートシンク5の吸熱能力を高めることができるのでより効果的である。なお、放熱部材5の一例として空冷式を記載しているが、水冷式を使用しても全く問題はない。
また、通常ペルチエ素子PDはフラットなプレートであるが、医療機器(人工心肺装置10、これらの構成部品)の一部外壁(フラットな面のみではなく、湾曲面もある)を介して熱交換を行うためには、ペルチエ素子PDと医療機器(人工心肺装置10、これらの構成部品)の熱交換部2の少なくとも一部に密着させる必要がある。
このため、ペルチエ素子PDと熱交換部2の間には、当該熱交換部2の外壁に沿う(フィットする)形状で、熱伝導体3(例えば銅板のような熱伝導度が高い材料)を介するのが良い。
さらにペルチエ素子PDの放熱面と放熱部材5の間に断熱材4を配置することにより、熱交換効果を高めることができる。
【0015】
(人工心肺装置)
本発明における人工心肺装置(人工肺)とは、体外循環によって血液のガス交換を行う装置全般を意味する。例えば、通常の膜型人工心肺に加えて、ECMO(Extra Corporeal Membrane Oxygenation;体外膜型酸素供給)、PCPS(Percutaneous
Cardio Pulmonary Support :経皮的心肺補助)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
(人工心肺装置10並びに人工心肺装置の構成部品と熱交換部の一体化)
図3は代表的な人工心肺装置10の一例を示す概略図、図4は熱交換部(貯血槽部位)にペルチエ素子を装着した人工心肺の一例を示す概略図、図5は熱交換部(血液ポンプ部位)にペルチエ素子を装着した人工心肺の一例を示す概略図、図6は熱交換部(人工肺部位)にペルチエ素子を装着した人工心肺の一例を示す概略図、図7は熱交換部(異物除去フィルタ部位)にペルチエ素子を装着した人工心肺の一例を示す概略図、図8は熱交換部(回路、チューブ)の外面にペルチエ素子を装着した人工心肺の一例を示す概略図である。
本発明の人工心肺装置10の特徴は、図4から図8に例示するように、熱交換部2が、人工肺20、貯血槽30、血液ポンプ40、血液フィルタ50、回路(チューブ)60のいずれかであり、当該熱交換部2の少なくとも一部の外壁に、熱伝導体3、ペルチエ素子PD、断熱材4を順次積層し、当該断熱材4に放熱部材5を装着した人工心肺装置10を例示している。
これらのように、人工心肺装置10の一部または複数の構成部材に、ペルチエ素子PDを装着し、熱交換部2と兼用することにより、従来のように、熱交換用のチャンバーを別途設ける必要がなくなり、人工心肺装置10全体のプライミングボリュームを低減することができる。
図4から図8の形態(貯血槽30外壁を覆う形態、血液ポンプ40外壁を覆う形態、人工肺20外壁を覆う形態、異物除去フィルター50外壁を覆う形態、人工心肺回路60の外面を覆う形態)はあくまでも例示であり、これらに限定されない。人工心肺装置10の内部を循環する血液に対して、人工心肺装置の構成部品の外壁を介してペルチエ素子による熱交換が実施できる形状であれば何でも良い。
【0017】
(熱交換チャンバー)
図13は熱交換部2のチャンバーの実施例を示す概略図ある。熱交換部2のチャンバー2Cの少なくとも一面(底面又は天面)に、ペルチエユニット1を装着し、前記チャンバー2C内に複数の熱伝導部材9を配置している。
当該熱伝導部材9は、チャンバー2Cの底面または天面を貫通するように立設し、当該熱伝導部材9の上部(底部)は前記ペルチエユニット1と接触している。
流体は、前記チャンバー2Cの流体入口7からチャンバー2C内に導入され、当該流体が、前記熱伝導部材9に衝突し、当該熱伝導部材9間の隙間を経て、流体出口8より流出するように形成されている。さらに詳述すれば、流体は、前記熱伝導部材9に接触を繰りかえして、攪拌されながら流体出口8より流出する。
チャンバー2Cの底面若しくは天面にペルチエユニットPDを取り付けることにより、チャンバー2C内部を流れる流体の温度を極めて効率よく変化させることが可能である。このような構造をとることで、チャンバー2Cのプライミングボリュームが小さいにもかかわらず、流体と熱伝導部材9との接触面積を多くとることが可能である。
さらに詳述すれば、図13に例示するように、複数の熱伝導部材9を、交互に配列することにより、流体は、前記熱伝導部材9に何度も接触を繰りかえして、何度も攪拌されながら流体出口8より流出する。このように、熱伝導部材9と接触する流体の液層が常に異なるという特徴をもつので、そのため、全体としての熱交換効率が極めて高くなる。
熱伝導部材9の材質は、鉄、アルミニウム、銅、金、銀、ステンレス等が挙げられるが、特に限定されない。
熱伝導部材9の少なくとも一方の端部はチャンバー2C外部に露出しており、その端部(上部又は下部)と直接的または間接的にペルチエユニットPDを接続することで、熱交換を行う。チャンバー2Cと熱伝導部材9の接続(接触)部は気密性が保たれており、チャンバー2C内は無菌状態を維持したまま熱交換可能である。
熱伝導部材9の形態は、図13に例示するように細長い円注状が好ましいが(このため熱伝導部材9は「熱伝導芯」ともいう)の太さ、形状、本数等は限定されるものではなく、目的に沿ったものを選択する事ができる。
要するに、チャンバー2Cの底面または天面を貫通するように立設し、当該熱伝導部材9の上部(底部)が、前記ペルチエユニット1と接触しているものであれば、本発明の目的は達成できる。
【実施例】
【0018】
以下、実施例により本発明を説明する。ただし、これらは単なる実施の態様の一例であり、本発明の技術的範囲がこれらによりなんら限定的に解釈されるものではない。
【0019】
〔実施例1〕
(1)本実施例では、恒温槽、ローラーポンプ、貯血槽30兼熱交換部材を、臨床で使用される代表的な人工心肺回路(川澄化学工業株式会社製)で接続した簡易回路を使用した。その他、電源、デジタルマルチメータ、熱電対を使用した。
2枚のペルチエ素子PDの吸熱面を、熱伝導体3(銅板)を介して人工心肺装置10の貯血槽30底部に密着させ、貯血槽30底部外壁を通じて熱交換を行った。人血液を模して、循環する水は恒温槽を用いて37℃一定に調整した。本実験回路は閉回路循環法を用いて水をローラーポンプにて流量Q=1〜5L/minで熱交換部2(貯血槽30)に2分間循環し、水温を下げ、貯血槽30からの流出部の水温を熱電対で測定し、デジタルマルチメータを用いて10秒ごとに読み取った。また、ペルチエ素子PDに流す電流も1A−5Aまで変化させた。
【0020】
(2)流量1L/min時の温度変化を図9、流量3L/min時の温度変化を図10、流量4L/min時の温度変化を図11、流量5L/min時の温度変化を図12に示した。
【0021】
図9から図12より、以下のことが云える。まず、2Aもしくは3A以下の電流を流した時、40秒程度経過すると水温が一定に保たれた。しかし、それ以上の電流を流した時、徐々に水温が下がらなくなった。また、さらに長時間実験を行った場合、水温が上昇していくことが示唆された。これらの原因はペルチエ素子PDの放熱面を効率良く冷却することが出来なかったためであると思われる。それにより、4A以上では冷却の用途に使用することができなかった。よってこの結果はペルチエ素子用の冷却部材5(ヒートシンク)の熱抵抗値が影響していると考えられ、これ以上の電流を流す場合、ペルチエ素子用の冷却部材5(ヒートシンク)の熱抵抗値を減少させる必要がある。なお、水温をさらに低下させるには熱交換部2の表面積を増加させるなどの改良により、可能である。また、流量が上昇するにつれて水温があまり変化しなかった。この原因は熱交換部2と水が接している時間が短くなったため水温の変化量が少なくなった。
【0022】
〔実施例2〕
(1)2枚のペルチエ素子の吸熱面を、熱伝導体3(銅板)を介して人工心肺装置10の人工心肺回路部60に密着させ、人工心肺回路60外壁を通じて熱交換を行った。〔実施例1〕と同様の簡易回路を作製し、貯血槽直前の人工心肺回路部60を被う形態でペルチエ素子ユニットPDを密着させた。ペルチエ素子PDと人工心肺回路60の間に介在する熱伝導体3(銅板)は、ペルチエ素子PDの吸熱面と接する面はフラットで、人工心肺回路60と接する面は回路(チューブ)外壁に沿って密着しやすいように半円筒状に切削した。閉回路循環法を用いて水をローラーポンプにて流量Q=1〜5L/minで熱交換部(貯血槽直前の人工心肺回路60)に2分間循環し、水温を下げ、貯血槽からの流出部の水温を熱電対で測定し、デジタルマルチメータを用いて10秒ごとに読み取った。また、ペルチエ素子PDに流す電流も1A−5Aまで変化させた。
【0023】
(2)以上の評価の結果、2分後における水温を表1に示す。
【表1】
【0024】
表1のとおり、実施例1と同様の傾向が見られたが、熱交換効率は実施例1より若干低下した。この原因は、ペルチエ素子PDと循環水の間に介する物[貯血槽30(材料:ポリカーボネート)と回路部60(材料:ポリ塩化ビニル)]の違い及びそれら材料の厚さの違いに起因する。ペルチエ素子と循環水の間に介する物は、熱伝導度が高いほど、厚さが薄いほど熱交換効率が高くなると考えられる。
【0025】
〔実施例3〕
(1)8枚のペルチエ素子PDの吸熱面を、熱伝導体3(銅板)を介して人工心肺装置10の貯血槽30底部に密着させ、貯血槽30底部外壁を通じて熱交換を行った。〔実施例1〕と同様の簡易回路を作製し、〔実施例1〕と同様に、閉回路循環法を用いて水をローラーポンプにて流量Q=1〜5L/minで熱交換部(貯血槽)に2分間循環し、水温を下げ、貯血槽からの流出部の水温を熱電対で測定し、デジタルマルチメータを用いて10秒ごとに読み取った。また、ペルチエ素子PDに流す電流も1A−5Aまで変化させた。
【0026】
(2)以上の評価の結果、2分後における水温を表2に示す。
【表2】
【0027】
表2のとおり、実施例1と同様の傾向が見られたが、熱交換効率は実施例1より向上した。この原因は、ペルチエ素子PDが循環水と接する表面積の違い(2枚と8枚)に起因する。熱交換部の表面積をさらに増加させることにより、さらなる熱交換効率の向上が可能になると考えられる。
〔実施例4〕
(1)本実施例では、恒温槽、ローラーポンプ、図13の(熱交換部2の)チャンバー2Cを、臨床で使用される代表的な人工心肺回路(川澄化学工業株式会社製)で接続した簡易回路を使用した。その他、電源、デジタルマルチメータ、熱電対を使用した。
試験条件:
循環流体として血液の代わりに純水を用い、人血液を模して、循環する水は恒温槽を用いて37℃一定に調整した。ペルチエ素子PDは2枚使用し、供給電圧は26V、ペルチエ素子1枚あたりの入力電流は6A、吸熱量は45Wとした。閉回路循環法を用いて水をローラーポンプにて流量Q=0.3〜5L/minで熱交換部2に2分間循環し、水温を下げ、熱交換部2からの流出部の水温を熱電対で測定し、デジタルマルチメータを用いて読み取った。
熱交換部2(図13)の設置:
2枚のペルチエ素子PDの吸熱面を、熱伝導体3(銅板)を介してチャンバー2Cの底部に密着させ、チャンバー2C底部外壁より露出した熱伝導芯9を通じて熱交換を行った。ペルチエ素子PDの発熱面の下部には冷却部材5(ヒートシンク)を設置した。
熱交換部2(図13)の設計:
チャンバー2Cは、サイズ;幅140mm×80mm×20mmを使用し、熱伝導芯9はアルミニウム製で、図13の通り円柱状のものを使用した。熱伝導芯9は、図13に示すとおり、各熱伝導芯9が交互に並ぶように規則的に配列した。
熱伝導芯9の太さと熱交換効率の相関を見るため、熱伝導芯9と循環流体との接触面積を約6000mm2に統一し、熱伝導芯9の径を3mmと5mmの2種類に対して評価した。なお熱伝導芯9と熱伝導芯9の間隔は2mmであった。
結果:
【表3】
【表4】
表3および表4のとおり、図13の熱交換部2を使用することで、ペルチエ素子PD2枚においても高い熱交換効率(流速0.3(l/min)のとき、37℃から31.0ないし28.5(℃)まで、温度が低下している)を発揮することが確認された。熱伝導芯9の径が5mmの方が熱交換効率が高い結果であるが、これは熱伝導芯9が熱伝導体(銅板)3を介してペルチエ素子PDとの接触する面積が大きいことに起因すると考えられる。またそれぞれのチャンバー2Cのプライミングボリュームは、熱伝導芯9の径が3mmの場合、約178ml、熱伝導芯9の径が5mmの場合、約155mlと極めて少量であった。
本結果より、熱伝導芯9の径、充填率を変更することで、目的に沿ったプライミングボリュームおよび熱交換効率を発揮し得る熱交換部2を提供することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、ペルチエ素子PD(熱電半導体素子)を用いて温度制御部分に電気的な制御を適用することで、装置の小型化かつ衛生的な熱交換器を実現し、具体的には本熱交換装置を人工心肺装置の構成部品と一体化して兼熱交換部2とする、あるいは熱交換効率の高い熱交換部2取り付けることで、プライミングボリュームを減少させた結果、従来の人工心肺装置と比較して(A)小型化かつ(B)衛生的な熱交換器で、(C)プライミングボリュームの増加による患者への負担がない、熱交換器一体型人工心肺装置を供するものであり、産業上の利用可能性はきわめて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に使用するペルチエ素子の概念図
【図2】本発明のペルチエユニットの一例を示す概念図
【図3】代表的な人工心肺の一例を示す概略図
【図4】熱交換部(貯血槽部位)にペルチエ素子を装着した人工心肺の一例を示す概略図
【図5】熱交換部(血液ポンプ部位)にペルチエ素子を装着した人工心肺の一例を示す概略図
【図6】熱交換部(人工肺部位)にペルチエ素子を装着した人工心肺の一例を示す概略図
【図7】熱交換部(異物除去フィルタ部位)にペルチエ素子を」装着した人工心肺の一例を示す概略図
【図8】熱交換部(回路、チューブ)の外面にペルチエ素子を装着した人工心肺の一例を示す概略図
【図9】循環水の温度変化を示すグラフ
【図10】循環水の温度変化を示すグラフ
【図11】循環水の温度変化を示すグラフ
【図12】循環水の温度変化を示すグラフ
【図13】熱交換部のチャンバーの実施例を示す概略図
【符号の説明】
【0030】
PD ペルチエ素子
MP 金属電極
HD 熱電素子
1 ベルチェユニット
2 熱交換部
2C (熱交換部)チャンバー
3 熱伝導体(銅板)
4 断熱材
5 放熱部材(ヒートシンク)
6 DCファン
7 流体入口
8 流体出口
9 熱伝導部材
10 医療機器(人工心肺装置)
20 人工肺
30 貯血槽
40 血液ポンプ
50 血液フィルタ
60 人工心肺回路(チューブ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換部(2)の少なくとも一部に、ペルチエ素子(PD)を装着し、当該ペルチエ素子(PD)の発熱面または吸熱面に放熱部材(5)を装着したことを特徴とするペルチエユニット(1)。
【請求項2】
熱交換部(2)の少なくとも一部に、熱伝導体(3)、ペルチエ素子(PD)を順次積層し、当該ペルチエ素子(PD)に放熱部材(5)を装着したことを特徴とする請求項1に記載のペルチエユニット(1)。
【請求項3】
熱交換部(2)のチャンバー(2C)の少なくとも一面に、ペルチエユニット(1)を装着し、
前記チャンバー(2C)内に複数の熱伝導部材(9)を配置し、当該熱伝導部材(9)は、チャンバー(2C)の底面または天面を貫通するように立設し、当該熱伝導部材(9)の上部(下部)は前記ペルチエユニット(1)と接触し、
前記チャンバー(2C)の流体入口(7)からチャンバー(2C)内に導入され、当該流体が、前記熱伝導部材(9)に衝突し、当該熱伝導部材(9)間の隙間を経て、流体出口(8)より流出するように形成した、請求項1ないし請求項2に記載のペルチエユニット(1)。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3に記載のペルチエユニット(1)を構成部材の一部に含むことを特徴とする医療機器。
【請求項5】
熱交換部(2)が、人工肺(20)、貯血槽(30)、血液ポンプ(40)、血液フィルタ(50)、回路(60)のいずれかであり、当該熱交換部(2)の少なくとも一部、または複数部に、ペルチエ素子(PD)を装着し、当該ペルチエ素子(PD)に放熱部材(5)を装着したことを特徴とする人工心肺装置(10)。
【請求項6】
前記熱交換部(2)の少なくとも一部に、熱伝導体(3)、ペルチエ素子(PD)を順次積層し、当該ペルチエ素子(PD)に放熱部材(5)を装着したことを特徴とする請求項4に記載の人工心肺装置(10)。
【請求項7】
熱交換部(2)のチャンバー(2C)の少なくとも一面に、ペルチエユニット(1)を装着し、
前記チャンバー(2C)内に複数の熱伝導部材(9)を配置し、当該熱伝導部材(9)は、チャンバー(2C)の底面または天面を貫通するように立設し、当該熱伝導部材9の上部(下部)は前記ペルチエユニット(1)と接触し、
前記チャンバー(2C)の流体入口(7)からチャンバー(2C)内に導入され、当該流体が、前記熱伝導部材(9)に衝突し、当該熱伝導部材(9)間の隙間を経て、流体出口(8)より流出するように形成した、請求項5ないし請求項6に記載の人工心肺装置(10)。
【請求項1】
熱交換部(2)の少なくとも一部に、ペルチエ素子(PD)を装着し、当該ペルチエ素子(PD)の発熱面または吸熱面に放熱部材(5)を装着したことを特徴とするペルチエユニット(1)。
【請求項2】
熱交換部(2)の少なくとも一部に、熱伝導体(3)、ペルチエ素子(PD)を順次積層し、当該ペルチエ素子(PD)に放熱部材(5)を装着したことを特徴とする請求項1に記載のペルチエユニット(1)。
【請求項3】
熱交換部(2)のチャンバー(2C)の少なくとも一面に、ペルチエユニット(1)を装着し、
前記チャンバー(2C)内に複数の熱伝導部材(9)を配置し、当該熱伝導部材(9)は、チャンバー(2C)の底面または天面を貫通するように立設し、当該熱伝導部材(9)の上部(下部)は前記ペルチエユニット(1)と接触し、
前記チャンバー(2C)の流体入口(7)からチャンバー(2C)内に導入され、当該流体が、前記熱伝導部材(9)に衝突し、当該熱伝導部材(9)間の隙間を経て、流体出口(8)より流出するように形成した、請求項1ないし請求項2に記載のペルチエユニット(1)。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3に記載のペルチエユニット(1)を構成部材の一部に含むことを特徴とする医療機器。
【請求項5】
熱交換部(2)が、人工肺(20)、貯血槽(30)、血液ポンプ(40)、血液フィルタ(50)、回路(60)のいずれかであり、当該熱交換部(2)の少なくとも一部、または複数部に、ペルチエ素子(PD)を装着し、当該ペルチエ素子(PD)に放熱部材(5)を装着したことを特徴とする人工心肺装置(10)。
【請求項6】
前記熱交換部(2)の少なくとも一部に、熱伝導体(3)、ペルチエ素子(PD)を順次積層し、当該ペルチエ素子(PD)に放熱部材(5)を装着したことを特徴とする請求項4に記載の人工心肺装置(10)。
【請求項7】
熱交換部(2)のチャンバー(2C)の少なくとも一面に、ペルチエユニット(1)を装着し、
前記チャンバー(2C)内に複数の熱伝導部材(9)を配置し、当該熱伝導部材(9)は、チャンバー(2C)の底面または天面を貫通するように立設し、当該熱伝導部材9の上部(下部)は前記ペルチエユニット(1)と接触し、
前記チャンバー(2C)の流体入口(7)からチャンバー(2C)内に導入され、当該流体が、前記熱伝導部材(9)に衝突し、当該熱伝導部材(9)間の隙間を経て、流体出口(8)より流出するように形成した、請求項5ないし請求項6に記載の人工心肺装置(10)。
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【公開番号】特開2006−296452(P2006−296452A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−117952(P2005−117952)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(000200035)川澄化学工業株式会社 (103)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(000200035)川澄化学工業株式会社 (103)
【Fターム(参考)】
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