説明

ペレット飼料

【課題】 生菌剤を配合しても死滅しにくいペレット飼料を提供する。
【解決手段】 生菌剤及び脂肪酸塩類を含有することを特徴とするペレット飼料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生菌剤を配合したペレット飼料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、畜産分野や水産分野などにおいて、抗菌性物質の使用規制や消費者の安全指向等により、抗菌性物質に代わるものとして生菌剤等が期待されている。また、生菌剤に関する研究も進んできており、腸内菌叢の改善、消化吸収改善、便性改善など従来からの効果の他に、サルモネラ症やO157などの細菌感染症の抑制、免疫賦活作用、家畜糞尿処理による環境改善等様々な研究がされ、生産者による生菌剤の応用例が年々増え続けている。しかしながら、これら生菌剤の応用は、粉状飼料への生菌剤の混合が殆どであり、ペレット飼料への応用例は非常に少ない。特に芽胞を持たない乳酸菌のペレット飼料への応用例は皆無である。
【0003】
飼料のペレット化の利点は、飼料の散乱(ロス)防止、取扱いが容易、家畜の好みに適す、飼料の虫害防止などを挙げることができる。飼料をペレット化するには、配合した飼料原料を加熱しながら強い圧力をかけてダイの孔から押し出して成形するので、ペレットミルやエクストルーダーの本体から出たばかりの固形飼料製品の品温は80〜85℃、ときには100〜110℃にも達する。このため、ペレット飼料に生菌剤を添加してあっても、生菌が死滅してしまうという問題がある。
【0004】
バチルス属(芽胞形成菌)の生菌ペレットは販売されているが、乳酸菌等芽胞を持たず、高温高湿で破壊される生菌剤でペレット化に耐える技術は見当たらない
ペレット成形後、油や水に生菌剤を懸濁させて成形したペレットにコーティングあるいは、吸着させる方法も検討されているが、製造工程の煩雑さや流通面でのデメリットがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、配合した生菌が死滅しにくいペレット飼料の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、特定の脂肪酸の塩類を配合してペレット化することにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、下記の通りである。
(1) 生菌剤及び脂肪酸塩類を含有することを特徴とするペレット飼料。
(2) 前記生菌剤が、乳酸菌から得られる生菌剤であることを特徴とする(1)に記載のペレット飼料。
(3) 前記生菌剤が、乳酸菌、酪酸菌及び糖化菌から得られる配合生菌剤であることを特徴とする(1)に記載のペレット飼料。
【発明の効果】
【0008】
本発明方法により得られるペレット飼料は、過度に加熱されずにペレット化されるため、配合した生菌が死滅しにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明における生菌剤とは、乳酸菌(ストレプトコッカス、エンテロコッカス、ラクトコッカス、ロイコノストック、ラクトバチルス、ビフィドバクテリウム)から得られる生菌剤または乳酸菌、酪酸菌及び糖化菌から得られる配合生菌剤である。乳酸菌、酪酸菌および糖化菌の配合生菌剤は、乳酸菌、酪酸菌および糖化菌を培養し、培養終了後、遠心分離機により集菌、安定化剤を混合し凍結乾燥する。乾燥後、粉砕しデンプン、デキストリンなどの好ましい基剤と混合し、乳酸菌、酪酸菌および糖化菌により構成されたものである。乳酸菌単独で生菌剤としてもよい。
【0010】
本発明の生菌剤の配合量は、ペレット飼料あたり 0.01 〜 20 Wt%、好ましくは
0.1 〜 10 Wt%である。
【0011】
本発明のペレット飼料において配合原料として用いられる脂肪酸塩類とは、例えばパーム油、米油、大豆油、アマニ油等の植物油から得られる脂肪酸のマグネシウムやカルシウム等を挙げることができる。脂肪酸塩類は、ペレット飼料あたり、30〜80Wt%、好ましくは30〜50Wt%用いればよい。
【0012】
本発明におけるペレット飼料には、通常のペレット飼料に用いる原料を任意に配合することができる。任意成分としては通常のペレット飼料に配合される原料であれば特に限定されないが、例えば、デンプン、アルファルファミール、コーンスターチ、小麦粉、ふすま、乳糖、ブドウ糖、脱脂粉乳、白糖、脱脂米糠等を配合してもよい。
【0013】
本発明のペレット飼料の製造方法は、上記の生菌剤、脂肪酸塩類および必要に応じて他の成分を混合し、ペレット化すればよい。ペレット化手段は特に限定されない。
【0014】
通常ペレット製造では成形性を向上させる為に原料に水や蒸気により水分を加えることが多い。しかしながら、乳酸菌のように芽胞を持たない生菌は特に高温高湿に弱い性質がある。
【0015】
ペレット径は、特に限定されるものではないが、2〜10mmの範囲で適宜選択すればよい。
【0016】
本発明では、脂肪酸塩類を配合することにより、原料がスムーズにディスクを通り抜け、熱、摩擦の発生などを極力抑えることにより、生菌の生存率が向上する。
【実施例1】
【0017】
下記成分原料をそれぞれ指定した比率で秤量した後、よく混練しペレットに成形した。比較例は、それぞれ指定した比率で秤量した配合原料を混練しペレットに成形した。
【0018】
実施例 比較例
乳酸菌、酪酸菌、糖化菌混合物1) 5% 5%
脂肪酸塩類2) 30% −
その他賦形剤混合物 残量 残量
【0019】
1)乳酸菌、酪酸菌、糖化菌混合物
乳酸菌(ストレプトコッカス フェカーリスT-110株)、酪酸菌(クロストリディウム
ブチリカムTO-A株)、糖化菌(バチルス メッセンテリカスTO-A株)にデンプンを混合して、ペレット飼料中に乳酸菌1×108個/g、酪酸菌1×106個/g、糖化菌1×106個/gなるように調製した。
【0020】
2)脂肪酸塩類
パーム油由来脂肪酸のマグネシウム塩
【0021】
・ ペレット径
実施例 : 6m/m 比較例 : 4m/m
以上の条件で成形したペレット中の乳酸菌、酪酸菌、糖化菌の生菌数を測定した。
試験成績を表1に示した。
【0022】
【表1】

【0023】
表1の結果から明らかなように、本発明の実施例の乳酸菌、酪酸菌および糖化菌の残存率は、比較例(従来技術)に比べて大幅に改善されていた。特に芽胞を有しない乳酸菌においては顕著な改善が認められた。
【0024】
これらのことから、本発明により生菌剤をペレット飼料に容易に安定に添加でき、生菌剤の持つ効果を十分に発揮出来る。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明方法により得られるペレット飼料中に含まれる生菌剤は生残率が高いので、本発明方法により得られるペレット飼料は、生菌剤の持つ本来の能力を十分に発揮して家畜動物を健全に飼育することができるので極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生菌剤及び脂肪酸塩類を含有することを特徴とするペレット飼料。
【請求項2】
前記生菌剤が、乳酸菌から得られる生菌剤であることを特徴とする請求項1に記載のペレット飼料。
【請求項3】
前記生菌剤が、乳酸菌、酪酸菌及び糖化菌から得られる配合生菌剤であることを特徴とする請求項1に記載のペレット飼料。

【公開番号】特開2006−340635(P2006−340635A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−167782(P2005−167782)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(392003432)東亜薬品工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】