説明

ペンレタリングマシンのレールキャリッジ案内装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、コンピュータ制御によって図面等に文字や記号を記入するペンレタリングマシンに関するものであり、特に、ペンレタリングマシンのレールキャリッジ案内装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来のペンレタリングマシンのレールキャリッジ案内装置を図7及び図8に従って説明する。図7R>7はペンレタリングマシン1を示し、フレーム2の左右に一対のラックレール3,3がY方向に配設されている。ラックレール3,3は下面にラック3aが刻設され,前後両端部に設けた脚部3b,3bを介してベースフレーム2上に架設されている。ラックレール3,3に係合するレールキャリッジ4,5は、X方向のガイドレール6によって連結されており、ガイドレール6と平行な回転軸7が左右のレールキャリッジ4,5を貫通し、回転軸7の両端部に夫々ローラ8,8とローラ8よりも小径のピニオンギヤ9,9が嵌着されて左右のローラ8,8並びにピニオンギヤ9,9が連動するように形成されている。
【0003】図8に示すように、ローラ8はベースフレーム2の上面に接し、ピニオンギヤ9が上方のラックレール3のラック3aに噛合してレールキャリッジ4,5の上下動を規制している。そして、図7に示すように一方のラックレール3(同図において左)の近傍には前後にギヤプーリ10,11が軸支されて該ギヤプーリ10,11にタイミングベルト12が架装されており、タイミングベルト12の一点がレールキャリッジ4に止着されている。そして前方のプーリ11は第2のタイミングベルト13を介してY軸駆動モータ14により駆動され、前記タイミングベルト12に係合しているレールキャリッジ4がガイド溝15に沿って移動する。このとき、ローラ8がベースフレーム2上を転動するとともに、ラックレール3のラック3aに噛合しているピニオンギヤ9が連動して回転し、回転軸7を介して連結されている他方のピニオンギヤ9が連動することにより、左右のレールキャリッジ4,5が同期してベースフレーム2上を走行する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ベースフレーム上に接地しているローラと同軸にピニオンギヤを設け、ベースフレーム上に架設したラックをピニオンギヤに噛合させて左右のローラ並びにピニオンギヤを同期させる従来のレールキャリッジ支持装置は、ベースフレームのローラ転動面とベースフレーム上のラックとの間隔精度が重要であり、間隔が過大な場合はピニオンギヤとラックとのバックラッシュが大となって走行音が増大するとともに、作図精度が悪化する。一方、間隔が狭い場合はピニオンギヤ及びローラの回転抵抗が増加し、過大な走行荷重によってピニオンギヤとラック及びベースフレームの転動面の摩耗が加速されたり、ステッピングモータの脱調によりレールキャリッジの位置と指示位置とに変位が生じて作画不良が発生する等の不都合を生じる。しかしながら、例えばプラスチック射出成形やアルミニウムの押出し加工等によって成形したベースフレームを使用する場合は、フレーム面の平面度の公差を一定値以下に管理することは困難であり、ローラ転動面の平面研削加工を要することが多く、生産コストを上昇させる原因となっている。
【0005】そこで、追加工程を不要として生産性を向上するとともに、作図精度並びに耐久性を向上するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明は上記課題を解決することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記目的を達成するために提案するものであり、ペンキャリッジを係合させたガイドレールの両端部にレールキャリッジを固定し、前記一対のレールキャリッジにて回転軸の両端部位を軸支し、前記回転軸の両端部に夫々ローラとピニオンギヤを嵌着するとともに、下面にラックを刻設したラックレールの前後両端部に脚部を設け、一対の前記ラックレールをベースフレーム上に平行に設置し、前記一対のラックレール間に前記ガイドレールを配置して前記ローラをベースフレームに接地させ、且つ、前記ピニオンギヤを夫々前記ラックレールのラックに噛合させてレールキャリッジの同期機構を構成したペンレタリングマシンのレールキャリッジ案内装置に於て、前記ベースフレームのローラ転動面にばね材或いはゴム等の弾性材料のレールを敷設し、前記レールの弾発力によって前記ピニオンギヤを前記ラックに圧接させたことを特徴とするペンレタリング装置のレールキャリッジ案内装置を提供するものである。
【0007】
【作用】ペンキャリッジを走行自在に装着したガイドレールの両端部にはレールキャリッジが固着されている。両端のレールキャリッジには回転軸が架設され、回転軸の両端部には夫々ローラとピニオンギヤとが嵌着されている。ベースフレームには板バネ或いはゴム等の弾性材料にて成形されたレールが平行に設置され、前記ガイドレールがレール間に配置されて両端のレールキャリッジのローラがレールの上面に接地している。そして、レールの上方にはラックレールが架設され、ラックレールの下面に設けたラックがベースフレームに対向しており、レールキャリッジのピニオンギヤにラックが上方から噛合して前記レールとラックレールとによってレールキャリッジの上下位置を規制し、且つ前後方向へ走行自在としている。
【0008】レールキャリッジ及びガイドレールが走行する際は、回転軸によって連結されたローラ及びピニオンギヤが同期して回転し、ガイドレールと一対のレールキャリッジがレールとラックレールに沿って走行する。このとき、弾性材にて成形されたレールがその弾力によりレールキャリッジのピニオンギヤをその上方のラックへ圧接させてバックラッシュを制限するとともに、ピニオンギヤとラックとの接触圧力に応じて変形して接触圧力を制限することによりレールキャリッジを円滑且つ高精度に走行させる。
【0009】
【実施例】以下、この発明の一実施例を図1乃至図6に従って詳述する。尚、説明の都合上、従来公知に属する技術事項も同時に説明する。図1はペンレタリングマシン21の外筐を取外した状態を示し、ペンアーム22を上下回動自在に枢着したペンキャリッジ23にはガイドローラ24が後部に2個並びに前部に1個(図示せず)軸着され、このガイドローラ24,24,24がX方向のガイドレール25の前後両縁部に係合している。ガイドレール25の左右両端部にはレールキャリッジ26,27が固着され、左右のレールキャリッジ26,27にて軸支した回転軸28の両端部に夫々ローラ29,29とピニオンギヤ30,30が嵌着されている。
【0010】レールキャリッジ26,27を案内する左右一対のラックレール31,31は下面にラック31aが刻設され、前後両端の脚部31b,31bを介してベースフレーム32上のレール33,33に固定されてベースフレーム32から浮上しており、ラック31aにレールキャリッジ26,27のピニオンギヤ30,30が噛合している。従って、レールキャリッジ26,27はローラ29,29が接しているレール33,33と、ピニオンギヤ30,30に上方から噛合するラックレール31,31とによって上下移動を規制され、レール33,33上をY方向へ平行移動することができる。
【0011】また、左右のレールキャリッジ26,27にはギヤプーリ34,35が取付けられており、左右のギヤプーリ34,35に架装されたX軸タイミングベルト36にペンキャリッジ23が結合されている。そして、同図において左のレールキャリッジ26に回転自在に嵌着されたギヤプーリ34には、図3に示すようにD形断面の中心孔34aが開穿され、この中心孔34aと同一のD形断面のX駆動軸37がレールキャリッジ26を貫通してギヤプーリ34の中心孔34aへ遊嵌されている。
【0012】図1に示すように、X駆動軸37の前後両端部位はベースフレーム32に立設した軸受38,38にて支持され、後端部に嵌着したギヤプーリ39とX軸駆動モータ40のギヤプーリ41とにタイミングベルト42が架装されている。また、前後の軸受38,38上に設けたギヤプーリ43,43に架装したY軸タイミングベルト44はレールキャリッジ26に結合されており、前部(同図において上方)のギヤプーリ43と同軸のギヤプーリ45をタイミングベルト46を介してY軸駆動モータ47によって駆動することにより、Y軸タイミングベルト44に止着されたレールキャリッジ26がX駆動軸37に沿ってY方向へ走行する。このとき、回転軸28によって連結された左右のピニオンギヤ30,30が同期して回転することにより、左右のレールキャリッジ26,27がレール33,33並びにラックレール31,31に沿って連動して走行し、ガイドレール25が平行移動する。
【0013】一方、X軸駆動モータ40を駆動するとX駆動軸37が回転し、X駆動軸37に遊嵌したレールキャリッジ26のギヤプーリ34が連動して回転し、X軸タイミングベルト36に結合されたペンキャリッジ23がX軸タイミングベルト36と連動してガイドレール25上を走行する。
【0014】また、ラックレール31,31の前部間にはリフトレバー48が設けられ、待機状態においては該リフトレバー48はバネ49の付勢によってペンアーム22の下面に圧接してペンアーム22を上昇させている。リフトレバー48はケーブル50を介してソレノイドアクチュエータ51に接続されており、ソレノイドアクチュエータ51がオンすることによりリフトレバー48が倒回され、ペンキャリッジ23に設けたバネ52の付勢によってペンアーム22が下降して筆記具53が紙面に圧接する。
【0015】図2及び図3はレールキャリッジ案内装置を示し、レール33は板バネ材を断面クランク形状に成形し、上段のローラ転動部33aをベースフレーム32から浮上させている。そして、下段部33bをネジ54或いはリベット等にてベースフレーム32に固着してレールキャリッジ26,27及びガイドレール25の重量を支承する。無負荷状態におけるレール33とラック31aとの間隔は、図2に示すレールキャリッジ26,27装着時に於ける間隔Sと等しいか或いは若干狭くなるように形成し、ピニオンギヤ30とラック31aとにバックラッシュが生じないようにしている。また、レールキャリッジ26,27の走行時において、ラックレール31の反り等によるレールキャリッジ26,27の上下変位に対しては、レール33がローラ29の転圧力に応じて変形して圧力変動を吸収する。斯くして、レールの弾性によりピニオンギヤとラックの噛合い圧力が一定値以下に制限され、且つ、バックラッシュが解消されてレールキャリッジを極めて円滑に走行させることができる。
【0016】図4乃至図6は他の実施例を示し、図4に示すものは、レール33の取付位置を変更してローラ29の小径部29aを接地させている。また、図5に示すものは、ベースフレーム32のレール敷設部位にローラ29の転動範囲に亘る長孔32aを開穿し、この長孔32aを遮蔽するように平板状の板ばねレール55を敷設したものである。
【0017】図6に示すものは、ベースフレーム32のレール敷設部位に断面円形のゴムレール56を敷設して、ローラ29の小径部29aをこのゴムレール56に接地させている。尚、本発明は上記一実施例に限定されるべきものではなく、本発明の精神を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができることは当然であり、本発明がそれらの改変されたものに及ぶことは当然である。
【0018】
【発明の効果】この発明は、上記一実施例において詳述したように、ラックレールをレールキャリッジの同期用ピニオンギヤに上方から噛合させてベースフレーム上をレールキャリッジのローラが転動するように構成したペンレタリングマシンにおいて、弾性材にて成形したレールをベースフレームに敷設し、レールキャリッジのローラがレール上を転動するように形成したので、荷重に応じて変形するレールによりピニオンギヤとラックの噛合い圧力が一定値以下に制限され、且つ、バックラッシュが解消される。従って、従来のベースフレームの上面をローラが転動するものとは異なり、ベースフレームの平面度の公差によってレールキャリッジの位置精度や走行抵抗等が影響を受けることがなく、作画精度が向上するとともに走行機構の磨耗や走行騒音の発生を防止でき、作画品質並びに耐久性の向上に効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示し、ペンレタリングマシンの斜視図。
【図2】図1に示すレールキャリッジ案内装置の正面図。
【図3】図2のA−A線矢視図。
【図4】他の実施例を示し、レールキャリッジ案内装置の縦断面図。
【図5】他の実施例を示し、レールキャリッジ案内装置の縦断面図。
【図6】他の実施例を示し、レールキャリッジ案内装置の縦断面図。
【図7】従来例を示し、ペンレタリングマシンの斜視図。
【図8】図7に示すレールキャリッジ案内装置の正面図。
【符号の説明】
21 ペンレタリングマシン
22 ペンアーム
23 ペンキャリッジ
25 ガイドレール
26,27 レールキャリッジ
28 回転軸
29 ローラ
30 ピニオンギヤ
31 ラックレール
31a ラック
31b 脚部
32 ベースフレーム
33 レール
36 X軸タイミングベルト
37 X駆動軸
44 Y軸タイミングベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ペンキャリッジ(23)を係合させたガイドレール(25)の両端部にレールキャリッジ(26,27)を固着し、前記一対のレールキャリッジ(26,27)にて回転軸(28)の両端部位を軸支し、前記回転軸(28)の両端部に夫々ローラ(29)とピニオンギヤ(30)とを嵌着するとともに、下面にラック(31a)を刻設したラックレール(31)の両端部に脚部(31b,31b)を設け、一対の前記ラックレール(31,31)をベースフレーム(32)上に平行に設置し、前記一対のラックレール(31,31)間に前記ガイドレール(25)を配置して前記ローラ(29)を前記ベースフレーム(32)に接地させ、且つ、前記ピニオンギヤ(30)を夫々前記ラックレール(31)のラック(31a)に噛合させてレールキャリッジ(26,27)の同期機構を構成したペンレタリングマシンのレールキャリッジ案内装置に於て、前記ベースフレーム(32)のローラ転動面にばね材或いはゴム等の弾性材料のレール(33)を敷設し、前記レール(33)の弾発力によって前記ピニオンギヤ(30)を前記ラック(31a)に圧接させたことを特徴とするペンレタリングマシンのレールキャリッジ案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図7】
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【特許番号】第2820032号
【登録日】平成10年(1998)8月28日
【発行日】平成10年(1998)11月5日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−156250
【出願日】平成6年(1994)7月7日
【公開番号】特開平8−20194
【公開日】平成8年(1996)1月23日
【審査請求日】平成9年(1997)4月16日
【出願人】(000006301)マックス株式会社 (1,275)
【参考文献】
【文献】実開 平5−72487(JP,U)