説明

ペースト状乳化組成物

【課題】本発明は、パンに対して、油脂のクリーミィなこくのある油味と、果物の爽快な酸味との両方をバランスよく付与することのできるペースト状乳化組成物を提供することを目的とする。【解決手段】本発明は、パンに付けてオーブントースター等で焼いて食するためのペースト状乳化組成物であって、果汁を含有し、該ペースト状乳化組成物の全体に対して25〜70質量%の油脂と10〜30質量%の水分とを含み、水中油滴型に乳化されていることを特徴とするペースト状乳化組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンに付けて食するためのペースト状乳化組成物に関する。より詳細には、特に、パンに付けてパンと一緒にオーブントースター等で焼いて食するのに適したペースト状乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
パンに付けるペースト状乳化組成物としては、マーガリン、ファットスプレッドがある。非特許文献1には、マーガリンとは、食用油脂に水等を加えて乳化した後、急冷練り合わせをし、又は急冷練り合わせをしないでつくられた可そ性のもの又は流動状のものであって、油脂含有率が80%以上のものをいうと定義されている。
【0003】
また、非特許文献1には、ファットスプレッドとは、食用油脂に水等を加えて乳化した後、急冷練り合わせをし、又は急冷練り合わせをしないでつくられた可そ性のもの又は流動状のものであって、油脂含有率が80%未満のものをいうと定義されている。
【0004】
このマーガリンとファットスプレッドは、油中水滴型の乳化組成物であるのが一般的であり、オーブントースター等で焼いたパン又は生のパンに塗って食され、パンに対して食用油脂によってもたらされるクリーミィなこくのある油味を付与する。
【0005】
また、最近では、パンに付けるペースト状乳化組成物として、食用油脂に糖類や卵黄を加えた油中水滴型のペースト状乳化組成物を、搾り出し容器に収容した製品が販売されている。この製品は、パンを焼く前に、生のパンの上に搾り出し容器から上記乳化組成物を搾り出して塗り、オーブントースター等でパンと一緒に焼いて食する。この製品は、上記乳化組成物をパンに塗るのに、バターナイフ等の器具を使う必要がないので簡便であり、パンに対して、クリーミィなこくのある油味と糖類の甘みを付与する。
【0006】
更に、パンに付けて食するペースト状物として、ジャムがある。非特許文献2には、一般に、ジャムとは果肉と糖類とを形を残すことなく、適当な濃度にまで煮詰めたものをいうと記載されている。このジャムは、パンに対して、果物の爽快な酸味と糖類の甘みを付与する。
【非特許文献1】荘村多加志,「日本農林規格品質表示基準 食品編」,中央法規出版株式会社,昭和62年12月10日,p.2871−2875
【非特許文献2】五十嵐脩、外2名,「丸善食品総合辞典」,丸善株式会社,平成10年3月25日,p.499
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したペースト状乳化組成物のうち、マーガリンとファットスプレッドは、パンに対して、クリーミィなこくのある油味を付与することができるが、果物の爽快な酸味を付与することはできない。このことは、上述した油中水滴型の乳化組成物を搾り出し容器に収容した製品についても同様である。一方、ジャムは、果物の爽快な酸味を付与することはできるが、クリーミィなこくのある油味を付与することはできない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、パンに対して、油脂のクリーミィなこくのある油味と、果物の爽快な酸味との両方を付与することのできるペースト状乳化組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる技術的課題は、パンに付けてオーブントースター等で焼いて食するためのペースト状乳化組成物であって、果汁を含有し、該ペースト状乳化組成物の全体に対して25〜70質量%の油脂と10〜30質量%の水分とを含み、水中油滴型に乳化されていることを特徴とするペースト状乳化組成物により達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明のペースト状乳化組成物は、パンに対して、油脂のクリーミィなこくのある油味と、果物の爽快な酸味との両方をバランスよく付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のペースト状乳化組成物は、パンに付けて、オーブントースターやオーブン等で焼いて食べるのに適している。すなわち、パンに塗るなどしてパンと一緒に焼くことにより、油脂の共存下で果汁が加熱されて香ばしい甘みを発現し、また、当該乳化組成物の中から果汁がパンに染み出して、パンに果物の爽快な酸味と香ばしい甘みを良好に付与することができる。但し、本発明のペースト状乳化組成物は、消費者がパンを焼いた後から付けて食することを排除するものではない。このペースト状乳化組成物は、いわゆる食パンに付けて食べるのに適しているが、食パンに限らず、ホテルブレッド、フランスパン、コッペパン、クロワッサン、電子レンジパンなどの各種のパンに適用することができる。
【0012】
本発明のペースト状乳化組成物は、果汁及び油脂並びに水分を必須成分とし、更にその他の任意の成分を含有させる。ここで、果汁としては、果物の酸味と甘みを好適に付与する上で、濃縮果汁を使用するのがよい。また、濃縮果汁としては、ペースト状乳化組成物の水分を後述する範囲に調整する上で、例えば2〜7倍濃縮の果汁を使用するのが好ましい。但し、果汁は、ストレートの果汁を使用してもよく、また、果肉の粉砕物等からもたらされるものでもよい。
【0013】
この濃縮果汁は、濃縮度によって異なり、例えば、ペースト状乳化組成物の全体に対して3〜40質量%、より好ましくは、5〜35質量%の割合で含まれるように使用することができる。但し、ペースト状乳化組成物の水分が後述する範囲内になるように調整する必要がある。
【0014】
また、果汁の種類としては、種々のものを使用することができる。具体的には、例えば、リンゴ、オレンジ、パインアップル、ブルーベリー、レモン、バナナ、みかん、グレープフルーツ、ゆず、ぶどう、クランベリー、ラズベリー、いちご、キーウィフルーツ、スイカ、メロン、バナナ、マンゴ、アプリコット、ピーチ、パパイヤ、スウィーティー、ライチ、カリン、アセロラ、プラム等の果汁を挙げることができる。
【0015】
ペースト状乳化組成物に含有させる油脂としては、ペースト状乳化組成物の流動性を確保するという観点から、常温で液状の油脂、より好ましくは、上昇融点が0℃以下の油脂がよい。とりわけ、その中でも、風味面でパンとの相性がよいことから、菜種油、コーン油、大豆油、米油、ごま油、紅花油等の植物性油脂、又はこれらの加工油脂を好適なものとして例示することができる。
【0016】
ペースト状乳化組成物に含有させる他の成分としては、蜂蜜、果糖ブドウ糖液糖等の液糖、水飴、糖アルコール、食酢、水などの水性成分、ショ糖、食塩、香辛料、ショ糖脂肪酸エステルやグリセリン脂肪酸エステルなどの乳化剤、卵、キサンタンガムやローカストビーンガムなどの増粘剤、香料などが挙げられる。
【0017】
これらのうち、蜂蜜は、果汁(特にリンゴの果汁)と組合わせると、果汁の酸味・甘みと蜂蜜の甘みがマッチした味覚のペースト状乳化組成物を得ることができる。この場合の蜂蜜の含有量としては、例えばペースト状乳化組成物の全体に対して1〜20質量%であるのが好ましい。また、香辛料としては、特に、桂皮、シナモン、クローブ、ジンジャー、スターアニス、バニラのうちの1種以上を使用すると、果汁の酸味・甘みを引き立てることができるのでよい。
【0018】
本発明のペースト状乳化組成物は、上記のような成分を含有し、当該ペースト状乳化組成物の全体に対して、25〜70質量%、好ましくは30〜60質量%の油脂と、10〜30質量%、好ましくは12〜25質量%、より好ましくは13〜23質量%の水分とを含む。このような割合で油脂と水分を含ませることにより、水中油滴型の乳化状態を好適に形成させることができる。また、油脂のクリーミーなコクのある油味を付与することができるとともに、水相中に果汁を十分に含ませて果汁の酸味と甘みを付与することができる。更に、パンに付けて焼いたときに、パンが適度にしっとりし、かつ、サクサクとした食感を有するのでよい。
【0019】
尚、本発明において、「水分(%)」とは、秤量缶(口の内径55mm、底の内径50mm、深さ35mmのもので、恒量を求めたもの)に、ペースト状乳化組成物を約3g秤量し、これを105℃で16時間乾燥し、これにより蒸発した水分量(g/100g)を測定したものをいう。
【0020】
本発明のペースト状乳化組成物は、25℃における粘度が10000〜30000mpa・s、より好ましくは10000〜20000mpa・sの範囲にあるのがよい。これにより、パンに塗って焼くまでは、スプレッドの乳化状態を安定に保持することができ、それでいて適度な流動性があってパンに塗りやすく、また、パンに付けてオーブントースター等で焼いたときに、水中油滴型の乳化状態が適度に壊れ、水相中の果汁の酸味と甘みが際立つからである。
【0021】
上記粘度は、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアガム、カラギーナン、ペクチン等の増粘剤、水飴、液糖類、乳化剤などを水相部に含ませるとことにより調整することができる。
【0022】
本発明のペースト状乳化組成物の好ましい製造方法としては、例えば、油相部を構成する原料と、水相部を構成する原料とを、カッターミキサー((株)カジワラ社製)等の攪拌装置を用いて油相部の粒度が比較的粗い状態の予備乳化を行い、次いで、コロイドミル((株)イワキ社製)等の乳化装置やホモミックラインミル(特殊機化工業(株)社製)等の粉砕・分散機を用いて油相部を微粒化する仕上げ乳化を行うことによって、水中油滴型に乳化させたペースト状乳化組成物を得ることができる。
【0023】
また、ここで、水相部を構成する原料は、予備乳化を行う前に予め混合しておくことによって、予備乳化を円滑に行うことができる。また、水相部を構成する原料に対して、親水性乳化剤を添加することによって、水中油滴型に好適に乳化させることができる。この親水性乳化剤としては、HLB値が8〜18の乳化剤が挙げられ、より具体的には、グリセリン脂肪酸エステルやシュガーエステル等が挙げられる。
【0024】
水中油滴型に乳化させて得られたペースト状乳化組成物は、容器に充填し、好ましくは保存性を高めるためにヘッドスペース部を不活性ガス(窒素)と置換してから密封して市場に供することができる。
【0025】
ペースト状乳化組成物を収容する容器としては、絞り出し容器を好ましいものとして挙げることができる。この絞り出し容器は、本発明の絞り出し容器は、容器を手や指で押して変形させることにより、容器口部から内容物を絞り出すことができるものであればよく、その材質、形状は特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチック材料を用いて形成されたものがよい。
【0026】
絞り出し容器に入れたペースト状乳化組成物は、使用時には、容器口部からペースト状乳化組成物を絞り出して、スプーン等を使わずにそのままパンの表面に塗り、パンと一緒にオーブントースターに入れて3〜5分間程度焼くことによって、好適に食することができる。
【実施例】
【0027】
(実施例1〜3並びに比較例1〜3)
下記表1に示す配合でペースト状乳化組成物を調製し、絞り出し容器に入れたペースト状乳化組成物を得た。但し、比較例1については、ペースト状乳化組成物を調製することができなかった。なお、表中、部は質量部を表す。
【0028】
【表1】

【0029】
(比較評価)
実施例1〜3並びに比較例1〜3の各ペースト状乳化組成物を、絞り出し容器から絞り出して食パンの上に塗りオーブントースターに入れて3分間焼き、5名のパネラーにより評価を行った。その結果を表2に示す。
【0030】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0031】
パンに付けて食することができ、特に、パンに付けてパンと一緒にオーブントースター等で焼いて食するのに適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンに付けてオーブントースター等で焼いて食するためのペースト状乳化組成物であって、果汁を含有し、該ペースト状乳化組成物の全体に対して25〜70質量%の油脂と10〜30質量%の水分とを含み、水中油滴型に乳化されていることを特徴とするペースト状乳化組成物。
【請求項2】
前記果汁が濃縮果汁である、請求項1に記載のペースト状乳化組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のペースト状乳化組成物を、搾り出し容器に収容してなる容器入りペースト状乳化組成物。

【公開番号】特開2006−149288(P2006−149288A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−345196(P2004−345196)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000111487)ハウス食品株式会社 (262)
【Fターム(参考)】