説明

ホイールユニット

【課題】破損のおそれが少ない空気圧調整装置を備えたホイールユニットを提供する。
【解決手段】タイヤが装着されるホイールと、タイヤ13の内部空気圧を調整すべくホイールに取り付けられる空気圧調整装置16とを備えるホイールユニットであって、空気圧調整装置16は、シリンダと、該シリンダ内に設けられるピストンとを備えている。空気圧調整装置16は、ピストンがホイールの回転により生じる遠心力によってシリンダ内を移動することにより、外部からシリンダ内に導入された空気をタイヤ13の内部空間13aに注入する。ホイールには、該ホイールの径方向に延びてタイヤ13の内部空間13aに向かって開口する取付孔17が形成され、空気圧調整装置16は、シリンダの移動方向がホイールの径方向に沿うように、且つタイヤ13の内部空間13aを除いてホイールの外面から外部に露出しないように、取付孔17に取り付けられる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等の車両のホイールに設けられ、該ホイールに装着されたタイヤ内の空気圧を自動的に調整する空気圧調整装置が知られている。空気圧調整装置は、タイヤの内部空間に連通するシリンダを備えており、該シリンダ内のピストンをタイヤの回転に伴う遠心力を利用して移動させることによって、大気からシリンダ内に取り込んだ空気をタイヤ内部へ供給するものである(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−341320号公報
【特許文献2】特開2004−330820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1,2に記載された空気圧調整装置は、外部に露出するようにホイールに取り付けられている。このため、車両の運転中において、飛び石等が装置に衝突し易く、その結果、装置が破損する虞がある。
【0004】
本発明の目的は、破損のおそれが少ない空気圧調整装置を備えたホイールユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目標を達成するため、本願発明は、タイヤが装着されるホイールと、前記タイヤの内部空気圧を調整すべくホイールに取り付けられる空気圧調整装置とを備えるホイールユニットであって、前記空気圧調整装置は、シリンダと、該シリンダ内に設けられるピストンとを備え、該ピストンがホイールの回転により生じる遠心力によってシリンダ内を移動することにより、外部からシリンダ内に導入された空気をタイヤの内部空間に注入し、前記ホイールには、該ホイールの径方向に延びて前記タイヤの内部空間に向かって開口する孔が形成され、前記空気圧調整装置は、前記シリンダの移動方向がホイールの径方向に沿うように、且つタイヤの内部空間を除いてホイールの外面から外部に露出しないように、前記孔に取り付けられることを要旨とする。
【0006】
これによれば、空気圧調整装置は、タイヤの内部空間を除いてホイールの外面から外部に露出しないようにホイールに取り付けられている。従って、空気圧調整装置の飛び石等の衝突による損傷のおそれが減少する。
【0007】
前記ホイールは、外気を前記シリンダ内に導入すべくシリンダを外部に連通させる連通路を有し、前記連通路は、シリンダに繋がる端部からホイールの径方向外側に向かって延びてホイールの外面に開口していてもよい。
【0008】
これによれば、連通路は、シリンダに繋がる端部からホイールの径方向外側に向かって延びてホイールの外面に開口していることから、自動車の走行に伴いホイールが回転したときに連通路内に浸入した雨水等の水がホイールユニットの回転により自身に作用する遠心力によって連通路を通ってホイールの外面から排出される。従って、空気圧調整装置に雨水等の水が浸入しない。
【0009】
前記ピストンはシリンダの内部空間を、前記連通路に連通する第1室と、前記タイヤの
内部空間に連通可能な第2室とに区画しており、前記ピストンには、前記第1室に連通可能であると共に前記第2室に連通する内部通路が形成され、前記空気圧調整装置は、前記第1室から前記内部通路への空気の流れを許容し、且つ前記内部通路から前記第1室への空気の流れを阻止する第1逆止弁と、前記第2室から前記タイヤの内部空間への空気の流れを許容し、且つ前記タイヤの内部空間から前記第2室への空気の流れを阻止する第2逆止弁とを備えてもよい。
【0010】
これによれば、ピストンが第2室の容積が小さくなるように移動するときに第1逆止弁によって内部通路から第1室への空気の流れが阻止されるので、第2室の圧力が高められる。このとき、第2逆止弁によって第2室からタイヤの内部空間への空気の流れが許容されることから、第2室内にて圧縮された空気はタイヤの内部空間に注入される。ピストンが第2室の容積が大きくなるように移動するときに第1逆止弁によってタイヤの内部空間から第2室への空気の流れが阻止されるので、タイヤの内部空間の空気がシリンダを通って外部へ流れ出ることはないので、タイヤの内部空間内の圧力が保持される。
【0011】
前記第1逆止弁及び前記第2逆止弁のうち、少なくともいずれか一方はアンブレラバルブであってもよい。
これによれば、第1逆止弁及び第2逆止弁を簡単な構成で実現できる。また、空気圧調整装置を小型化することが可能となる。
【0012】
前記ピストンは、ホイールの回転により生じる遠心力によって、前記第2室の容積を縮小する方向への移動力を与えられてもよい。
これによれば、ホイールが回転すると、ピストンにホイールが回転による遠心力が働き、ピストンは、第2室の容積が縮小するように移動する。従って、第2室内に充填された空気は圧縮されタイヤの内部空間に注入される。また、ピストンに遠心力が働いていないときでは、第2逆止弁によってタイヤの内部空間から第2室には空気が流れないので、タイヤの内部空間内の圧力が保持される。
【0013】
前記空気圧調整装置は、第2室の容積を拡大する方向にピストンを付勢する付勢部材を備えていてもよい。
これによれば、タイヤが回転せずピストンに遠心力が加わっていない場合では、ピストンは第2室の容積は最大に維持される。従って、タイヤが回転する際に、第2室に充填されている空気を十分な圧力に圧縮させることができるので、確実にタイヤの内部へ空気を注入させることができる。
【0014】
前記連通路と前記第1室との間には、水分を通さず空気を通すフィルタが設けられてもよい。
これによれば、シリンダ内には水が流れ込まないので、水によってシリンダ内が劣化することはない。この結果、空気圧調整装置の長寿命化を図ることができる。
【0015】
前記ピストンの外周壁と前記シリンダの内周壁との間にはシール部材が設けられていてもよい。
これによれば、ピストンの移動によってタイヤの内部空間の空気がピストンの外周壁と前記シリンダの内周壁との間を通って外に漏れることはないので、確実にタイヤの内部へ空気を注入することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した一実施形態について図1〜図5に従って説明する。
図1は、自動車に設けられる複数のホイール11のうちの一つと、そのホイール11に装着されるタイヤ13と、ホイール11に取り付けられる空気圧調整装置16とを示して
いる。ホイール11及び空気圧調整装置16はホイールユニット10を構成する。ホイール11は、環状のリム12と、タイヤ13の回転軸線14からリム12にまで放射状に延びる6本のスポーク15とを有する。空気圧調整装置16は、6本のスポーク15のうちの一つと対応する箇所において、ホイール11に内蔵されている。尚、図1において、空気圧調整装置16の取付位置が明確になるように、タイヤ13を破線で示している。
【0017】
詳述すると、図2に示すように、スポーク15の一つには、リム12を貫通してタイヤ13の内部空間13aに繋がる円筒状の孔としての取付孔17が形成されている。この孔17は、ホイール11の径方向、すなわちスポーク15の長手方向に沿って延びており、タイヤ13の内部空間13aに連通するようにリム12の外周面に開口する第1の孔部17aと、該第1の孔部17aに連続する第2の孔部17bとを備えている。第1の孔部17aの内周面には雌ねじが形成されており、空気圧調整装置16の外周面には雄ネジが形成されている。そして、空気圧調整装置16は第1の孔部17aに螺着され、これにより、該空気圧調整装置16がリム12に固定されている。空気圧調整装置16の一部はリム12の外周面から突出して、タイヤ13の内部空間13aに露出している。図3に示すように、第1の孔部17aの開口縁には環状の溝22が形成されており、該溝22に嵌めこまれたシールリング22aによってリム12と空気圧調整装置16との間の気密が保持されている。
【0018】
図2に示すように、第2の孔部17bは、空気圧調整装置16に導入される空気を貯留する貯留部20を形成している。
また、スポーク15には、貯留部20(第2の孔部17b)に連通する連通路24が形成されている。連通路24は、ホイール11の径方向(スポーク15の長手方向)に対して斜めに延びている。連通路24は、貯留部20からホイール11の径方向外側に向かって延びて、スポーク15の外側面に開口している。この連通路24を通じて、外気が貯留部20に導入される。なお、雨水等の水が連通路24を通って貯留部20に浸入することがある。しかし、貯留部20に侵入した水は、自動車の走行に伴いホイール11が回転したときに遠心力を受け、径方向外側に向かって延びる連通路24を通って外部へ排出される。
【0019】
また、連通路24の外部に対する開口には第1フィルタ25が取着されている。この第1フィルタ25は、貯留部20に異物が侵入するのを阻止する。
次に、空気圧調整装置16の構成について、図3に従って説明する。
【0020】
空気圧調整装置16は、シリンダ31(ハウジング)と、該シリンダ31内に往復移動可能に設けられたピストン32とを有している。ピストン32の移動方向は、スポーク15の長手方向、即ちホイール11の径方向と一致しており、ホイールユニット10の回転より生じる遠心力によってシリンダ31内を移動する。
【0021】
シリンダ31の先端開口部には、フィルタホルダ33が取り付けられている。フィルタホルダ33は第2フィルタ34を保持している。第2フィルタ34は、固体状の異物だけでなく水分の通過をも阻止する。従って、シリンダ31の内部には、貯留部20から第2フィルタ34を通じて清浄な空気が流れ込む。
【0022】
シリンダ31の基端に設けられた隔壁35には、シリンダ31の内部空間をタイヤ13の内部空間13aに連通させる流路36が形成されている。隔壁35には、流路36を開閉する第2逆止弁としての第1アンブレラバルブ37が取り付けられている。第1アンブレラバルブ37は公知のものであって、タイヤ13の内部空間13aからシリンダ31内(具体的には、後述する第2室S2)への空気の流れを阻止する逆止弁として機能する。第1アンブレラバルブ37は、シリンダ31内の空気圧がタイヤ13の内部空間13aの
空気圧に比べて大きい場合に流路36を開放して、シリンダ31内からタイヤ13の内部空間13aへの空気の流れを許容する。また、第1アンブレラバルブ37は、シリンダ31内の空気圧がタイヤ13の内部空間13aの空気圧に比べて小さい場合に流路36を閉鎖して、タイヤ13の内部空間13aからシリンダ31内への空気の流れを阻止する。
【0023】
隔壁35は、第1アンブレラバルブ37の周囲において、シリンダ31の内部空間に向かって延びる環状の突部38を有している。
ピストン32は、シリンダ31の内部空間を、第1室S1と第2室Sとに区画している。第1室S1は前記フィルタ34を通じて前記貯留部20に連通している。第2室S2は前記流路36を介してタイヤ13の内部空間13aに連通している。第1室S1内の圧力は、大気圧とほぼ等しい。ピストン32の外周壁32aには環状溝40が形成されており、該溝40にはシール部材としてのシールリング41が嵌着されている。このシールリング41によって、ピストン32の外周壁32aとシリンダ31の内周壁31aとの間がシールされる。
【0024】
第1室S1に露出するピストン32の端部32bには、第1の凹部42が形成されている。凹部42の軸方向中間部には環状の段差部43が形成されている。段差部43上には隔壁44が固定されており、この隔壁44は、前記第1室S1から区画された第3室S3を凹部42内に形成している。隔壁44には、第1室S1を第3室S3に連通させる貫通孔45が形成されている。
【0025】
隔壁44には、貫通孔45を開閉する第1逆止弁としての第2アンブレラバルブ46が取り付けられている。第2アンブレラバルブ46は、第3室S3内の空気圧が第1室S1内の空気圧に比べて大きい場合に貫通孔45を閉鎖して、第3室S3から第1室S1への空気の流れを阻止する。また、第2アンブレラバルブ46は、第3室S3内の空気圧が第1室S1内の空気圧に比べて小さい場合に貫通孔45を開放して、第1室S1から第3室S3への空気の流れを許容する。
【0026】
ピストン32の内部には、前記第3室S3に連通する軸孔48が形成されている。軸孔48は、ピストン32に形成された径方向孔52を介して前記第2室S2に連通している。第3室S3、軸孔48及び径方向孔52は、第1室S1に連通可能で且つ第2室S2に連通する内部通路を構成している。
【0027】
第2室S2に露出するピストン32の端部32dには第2の凹部50が形成され、該凹部50には前記突部38に当接可能な当接部材51が嵌め込まれている。当接部材51が突部38に当接することによって、ホイール11の径方向外側に向かう方向(図3の下方)、つまり第2室S2の容積を減少させる方向へのピストン32の移動が規制される。
【0028】
ピストン32とシリンダ31の内部空間の底面との間には、ピストン32を第1室S1に向かって付勢する付勢部材としてのコイルばね53が配置されている。ばね53のばね定数は、自動車が50Km/hを超える速度で走行した際に、ピストン32に生じる遠心
力によってばね53が収縮する値に設定されている。つまり、ピストン32は、ホイールユニット10の回転により生じる遠心力によって、第2室S2の容積を縮小する方向への移動力を与えられる。自動車の走行速度が0Km/hから50Km/hの範囲では、ばね53はピストン32によって収縮させられず、その結果、第2室S2の容積は最大に維持される。自動車が50Km/hを超える速度で走行した際には、ピストン32は遠心力によ
って、ばね53を収縮させながら第2室S2の容積を縮小させるように移動して、第2室S2内の空気を加圧する。
【0029】
次に、ホイールユニット10の作用について説明する。
図2に示すように、ホイール11には、該ホイール11の径方向に延びてタイヤ13の内部空間13aに向かって開口する孔17が形成されている。空気圧調整装置16はその孔17に装着されることにより、ホイール11に埋め込まれるとともに、その一部がタイヤ13の内部空間13aに露出している。すなわち、空気圧調整装置16は、タイヤ13の内部空間13aを除いてホイール11の外面から外部に露出しないように、ホイール11に取り付けられる。このため、飛び石等の障害物が空気圧調整装置16に対して衝突することはないので、空気圧調整装置16の損傷のおそれが減少する。
【0030】
また、貯留部20に空気を導入するための連通路24はホイール11の外面に開口しているが、その連通路24の開口には第1フィルタ25が取着されているので、貯留部20には異物が除去された空気が導入される。さらに、連通路24は、貯留部20に繋がる端部からホイール11の径方向外側に向かって延びているので、貯留部20に水が浸入したとしても、自動車の走行に伴いホイール11が回転したときに、貯留部20に浸入した水は自身に作用する遠心力によって連通路24を通って外部へ自動的に排出される。
【0031】
空気圧調整装置16において、ピストン32は、コイルばね53により、ホイールユニット10の回転時にピストン32に作用する遠心力の方向と反対方向に向かって付勢されている。そのため、自動車が停止してホイールユニット10の回転が停止しているときは、図4に示すように、ピストン32は、コイルばね53の付勢力によって、第1室S1の容積を最小にし、且つ第2室S2の容積を最大にする位置に配置される。このとき、第2室S2及びピストン32の内部通路の空気圧は大気圧とほぼ等しいので、第1アンブレラバルブ37は流路36を閉鎖している。
【0032】
自動車が発進し、ホイールユニット10が回転すると、ピストン32に遠心力が働く。ホイールユニット10の回転速度が増大して、自動車が50Km/hを超える速度で走行
すると、ピストン32は、コイルばね53の付勢力に抗して、第2室S2の容積を縮小させるように移動する。
【0033】
ピストン32の移動に伴って第2室S2の容積が小さくなることにより、第2室S2内の空気圧が徐々に高められる。この際、第2アンブレラバルブ46は貫通孔45を閉鎖した状態で維持される。また、第1アンブレラバルブ37が流路36を閉鎖した状態で当接部材51が突部38に当接するまでピストン32が移動したときに第2室S2内の空気圧が基準空気圧に達するように、空気圧調整装置16が構成されている。従って、タイヤ13の内部空間13aの空気圧が基準空気圧に維持されている状態では、遠心力によりピストン32が突部38に当接するまで移動しても、第1アンブレラバルブ37は開放されず、第2室S2からタイヤ13の内部空間13aへの空気の導入は行われない。しかし、タイヤ13の内部空間13aの空気圧が基準空気圧よりも低い状態では、遠心力によりピストン32が移動する過程で第1アンブレラバルブ37が開き、第2室S2内の空気が流路36を通ってタイヤ13の内部空間13aに注入される(図5参照)。この結果、タイヤ13の内部空間13aの圧力が高められる。尚、基準空気圧とは、自動車が走行するのに適正なタイヤの圧力値である。
【0034】
尚、シールリング41によってピストン32の外周壁32aとシリンダ31の内周壁31aとの間はシールされているので、ピストン32が移動する際にピストン32の外周壁32aとシリンダ31の内周壁31aとの間を通って空気が流動することはない。従って、遠心力に基づくピストン32の移動によって第2室S2内の空気が確実に基準空気圧になるまで加圧される。
【0035】
自動車の減速に伴いホイールユニット10の回転速度が減少すると、ピストン32に作用する遠心力が減少する。自動車の走行速度が50Km/hを下回ると、コイルばね53
の付勢力により、ピストン32は第2室S2の容積を拡大する方向に移動する。
【0036】
ピストン32の移動に伴って第2室S2の容積が大きくなることにより、第2室S2内の圧力が低くなる。この移動過程において、第2室S2内の圧力がタイヤ13の内部空間13aの空気圧よりも低くなると、第1アンブレラバルブ37が閉じる。また、ピストン32の移動過程において、第2室S2内の圧力が第1室S1内の圧力(大気圧)よりも低くなると、第2アンブレラバルブ46が開き、第1室S1から第2室S2に空気が導入される(図4参照)。そして、図3に示すように、ピストン32がフィルタホルダ33に当接すると、第2室S2の容積は最大となる。
【0037】
その後、再び、自動車が50Km/hを超える速度で走行すると、遠心力によりピスト
ン32が移動して第2室S2内の圧力が高められ、必要に応じてタイヤ13の内部空間13aに第2室S2から空気が注入される。この結果、タイヤ13の内部空間13aの圧力は、基準空気圧に維持される。
【0038】
本実施形態は下記の利点を有する。
(1)ホイール11のスポーク15の一つに、リム12を貫通してタイヤ13の内部空間13aに繋がる円筒状の取付孔17が形成され、該孔17に空気圧調整装置16が固定される。従って、空気圧調整装置16は、外部へ露出しないので、飛び石といった障害物が空気圧調整装置16に対して衝突することはない。この結果、空気圧調整装置16の飛び石等の衝突による損傷のおそれが減少する。
【0039】
(2)ホイール11は、外気をシリンダ31内に導入すべく、シリンダ31に繋がる貯留部20からホイール11の径方向外側に向かって延びてホイール11の外面に開口する連通路24が形成されている。従って、雨天時などにおいて、連通路24内に雨水等の水が浸入した場合では、ホイールユニット10が回転することにより自身に遠心力が生じ、水が連通路24を通って外部へ排出される。この結果、塵や水分が除去された空気が空気圧調整装置16に導入される。
【0040】
(3)連通路24の外部に対する開口には第1フィルタ25が取着されている。従って、貯留部20に対して異物が侵入するのを阻止することができる。
(4)ピストン32は、シリンダ31の内部空間を、連通路24に連通する第1室S1と、タイヤ13の内部空間13aに連通可能な第2室S2とに区画する。ピストン32には、第1室S1に連通可能であると共に第2室S2に連通する軸孔48が形成される。空気圧調整装置16には、第1室S1から軸孔48への空気の流れを許容し、且つ軸孔48から第1室S1への空気の流れを阻止する第2アンブレラバルブ46が設けられるとともに、第2室S2からタイヤ13の内部空間13aへの空気の流れを許容し、且つタイヤ13の内部空間13aから第2室S2への空気の流れを阻止する第1アンブレラバルブ37が設けられている。従って、ピストン32は、ホイール11が回転したときに第2室S2内の空気が圧縮され、該圧縮された空気がタイヤ13の内部空間13aに注入されることから、タイヤ13の内部空間13a内の圧力が低下することはない。また、第2アンブレラバルブ46及び第1アンブレラバルブ37は、逆止弁として使用されており、他の機構を有する逆止弁に比べて簡単な構成であることから、空気圧調整装置16を小型化することが可能となる。
【0041】
(5)コイルばね53は、第2室S2の容積を拡大する方向にピストン32を付勢する。従って、ピストン32に遠心力が加わっていない場合では、ピストン32が第1室S1に向かって移動するので、第2室S2の容積は最大に維持される。この結果、第2室S2に充填されている空気を十分に加圧させることができることから、確実にタイヤ13の内部空間13aへ空気を注入させることができる。
【0042】
(6)貯留部20と第1室S1との間には、固体状の異物だけでなく水分の通過をも阻止する第2フィルタ34が設けられている。従って、シリンダ31の内部には、貯留部20から第2フィルタ34を通じて清浄な空気が流れ込むので、空気圧調整装置16の長寿命化を図ることができる。
【0043】
(7)ピストン32の外周壁32aに環状溝40が形成されており、該溝40にはシールリング41が嵌着されているので、シリンダ31の内周壁31aとピストン32の外周壁32aとがシールされる。従って、ピストン32の移動によって空気が外部へ漏れることはないことから、確実に第2室S2内の気圧を高めることができる。
【0044】
なお、本発明の実施形態は前記に限定されるものではなく、以下のように変更されてもよい。
・アンブレラバルブ37,46の代わりに、他の形態を成す逆止弁を用いてもよい。
【0045】
・本発明のホイールユニット10を自動車以外の車両に適用してもよい。
・コイルばね53の代わりに、収縮性に富む弾性部材を用いても良い。
・シール部材としてシールリング41を使用する代わりに、パッキンといった他の形態を成すシール部材を用いても良い。
【0046】
・シール部材としてシールリング41をピストン32の外周壁32aに設ける代わりに、シリンダ31の内周壁31aにシールリング41を設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明を具体化したホイールユニットの概略図。
【図2】図1のホイールユニットを構成する空気圧調整装置がホイールに取付けられた状態を示す概略図。
【図3】図2の空気圧調整装置の構成を示す断面図。
【図4】ホイールユニットの回転停止時又は低速回転時における空気圧調整装置の作用を説明するための図。
【図5】ホイールユニットの高速回転時における空気圧調整装置の作用を説明するための図。
【符号の説明】
【0048】
S1…第1室、S2…第2室、10…ホイールユニット、11…ホイール、12…リム、13…タイヤ、15…スポーク、16…空気圧調整装置、20…貯留部、24…連通路、31…シリンダ、32…ピストン、34…フィルタ、37…第2逆止弁及びアンブレラバルブとしての第1アンブレラバルブ、41…シール部材としてのシールリング、44…隔壁、46…第1逆止弁及びアンブレラバルブとしての第2アンブレラバルブ、53…付勢手段としてのコイルばね。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤが装着されるホイールと、前記タイヤの内部空気圧を調整すべくホイールに取り付けられる空気圧調整装置とを備えるホイールユニットであって、
前記空気圧調整装置は、シリンダと、該シリンダ内に設けられるピストンとを備え、該ピストンがホイールの回転により生じる遠心力によってシリンダ内を移動することにより、外部からシリンダ内に導入された空気をタイヤの内部空間に注入し、
前記ホイールには、該ホイールの径方向に延びて前記タイヤの内部空間に向かって開口する孔が形成され、前記空気圧調整装置は、前記シリンダの移動方向がホイールの径方向に沿うように、且つタイヤの内部空間を除いてホイールの外面から外部に露出しないように、前記孔に取り付けられることを特徴とするホイールユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のホイールユニットにおいて、
前記ホイールは、外気を前記シリンダ内に導入すべくシリンダを外部に連通させる連通路を有し、前記連通路は、シリンダに繋がる端部からホイールの径方向外側に向かって延びてホイールの外面に開口することを特徴とするホイールユニット。
【請求項3】
請求項2に記載のホイールユニットにおいて、
前記ピストンはシリンダの内部空間を、前記連通路に連通する第1室と、前記タイヤの内部空間に連通可能な第2室とに区画しており、前記ピストンには、前記第1室に連通可能であると共に前記第2室に連通する内部通路が形成され、
前記空気圧調整装置は、
前記第1室から前記内部通路への空気の流れを許容し、且つ前記内部通路から前記第1室への空気の流れを阻止する第1逆止弁と、
前記第2室から前記タイヤの内部空間への空気の流れを許容し、且つ前記タイヤの内部空間から前記第2室への空気の流れを阻止する第2逆止弁と、
を備えることを特徴とするホイールユニット。
【請求項4】
請求項3に記載のホイールユニットにおいて、
前記第1逆止弁及び前記第2逆止弁のうち、少なくともいずれか一方はアンブレラバルブであることを特徴とするホイールユニット。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のホイールユニットにおいて、
前記ピストンは、ホイールの回転により生じる遠心力によって、前記第2室の容積を縮小する方向への移動力を与えられることを特徴とするホイールユニット。
【請求項6】
請求項5に記載のホイールユニットにおいて、
前記空気圧調整装置は、第2室の容積を拡大する方向にピストンを付勢する付勢部材を備えていることを特徴とするホイールユニット。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか一項に記載のホイールユニットにおいて、
前記連通路と前記第1室との間には、水分を通さず空気を通すフィルタが設けられていることを特徴とするホイールユニット。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のホイールユニットにおいて、
前記ピストンの外周壁と前記シリンダの内周壁との間にはシール部材が設けられていることを特徴とするホイールユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−308081(P2008−308081A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−159015(P2007−159015)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(000204033)太平洋工業株式会社 (143)