説明

ホテル客室

【課題】ベッドに仰臥した状態で固定された視認対象位置を見ることを目的とする装置、特に拡大して見る装置を備えたホテル客室を提供すること。
【解決手段】ベッドと、ベッド周縁の垂直面に設けられた凹面鏡とを備える。凹面鏡は、ベッドに仰臥した人の目の位置から見て、所定の視認対象位置が拡大されて見える位置及び角度に設けられている。凹面鏡のサイズ、倍率を調整して、視認対称位置から20cm程度外れても拡大されて見えるようにする。視認対称位置は、ベッドに仰臥した人の乳房の位置、股間の位置等とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宿泊客がベッドに仰臥した状態で視認対象物を見るための装置を備えたホテル客室に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ベッドに仰臥した状態で何物かを見たいことは頻繁にある。例えば特許文献1には、仰臥位で書物等の視認対象物を見るための仰臥位視野拡張装置が開示されている。特許文献1の仰臥位視野拡張装置は、視認対象物の位置(視認対象位置)に合わせて鏡パネルの角度を調整するものである。
【0003】
ホテルにおいて、宿泊客に向けて、ベッドに仰臥した状態で視認対象位置を見るための装置を提供することを検討する。視認対象位置に合わせて調整を行うことは面倒である。ホテルの宿泊客は、病院の入院患者のように装置を継続的に使用する者ではなく、装置の扱いに習熟していないと考えられるからである。
【0004】
一方、ホテルにおいては、視認対象位置が特定されることも多い。例えば、母親が乳児と共に宿泊する場合、母親の乳房の周辺にある乳児の顔面(表情)を見たく、視認対象位置は母親の乳房の位置である。このように視認対象位置が特定される場合には、鏡を固定位置に設置してもベッドに仰臥した状態で視認対象位置を見ることができる。宿泊客による操作を必要としない。
【0005】
更に、視認対象物が小さい場合には、凹面鏡を用いて拡大して見ることができれば、より便利である。
しかし、ベッドに仰臥した状態で、操作を必要とせずに、固定された視認対象位置を見ることを目的とする装置、特に拡大して見る装置は、知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−292835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする課題は、ベッドに仰臥した状態で固定された視認対象位置を見ることを目的とする装置、特に拡大して見る装置を備えたホテル客室を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のホテル客室は、
ベッドと、該ベッド周縁の垂直面に設けられた凹面鏡とを備え、
前記凹面鏡は、前記ベッドに仰臥した人の目の位置から見て、所定の視認対象位置が拡大されて見える位置に設けられていることを特徴とする。
固定された位置の凹面鏡によって、固定された視認対象位置を拡大し見ることができる。
【0009】
本発明のホテル客室は、
前記凹面鏡は、所定の視認対象位置及びそこから少くとも20cm以内の距離の位置が拡大されて見えることを特徴とする。
凹面鏡のサイズ及び拡大倍率によって、視認対象位置の周辺の拡大されて見える範囲を調整することができる。視認対象物(子供の顔等)は動くことがあり、20cm程度の動きがあっても拡大されて見えることが好ましい。
また、拡大されて見える範囲が広いことにより、ベッドに仰臥した人の目の位置が動くことにも対応できる。
【0010】
本発明のホテル客室は、
前記拡大の倍率が1.2〜2.0倍であることを特徴とする。
視認対象物(子供の顔等)は、さほど拡大しなくてもよいことが多い。拡大倍率が大きいと拡大されて見える範囲が狭くなるので、拡大倍率を1.2〜2.0倍程度の小さめの値に調整することが好ましいことが多い。
【0011】

本発明のホテル客室は、
前記垂直面の前記凹面鏡の周辺に平面鏡が設けられていることを特徴とする。
視認対象物が拡大されて見える範囲を外れて動いてしまった場合に、平面鏡に写り、視認対象物または目の位置を調整することが容易である。
また、ホテル客室の意匠として、平面鏡と凹面鏡の組み合わせは斬新な印象を与える。
【0012】

本発明のホテル客室は、
前記視認対象位置は、ベッドに仰臥した人の乳房の位置であることを特徴とする。
母親がベッドに仰臥し、乳児の表情を見ることができる。
なお、乳房は左右の2つがあるが、どちらの位置を視認対象位置としてもよい。乳児を母親と凹面鏡の間に寝かせるならば、凹面鏡に近い側の乳房の位置を視認対象位置とすることとなる。
【0013】

本発明のホテル客室は、
前記視認対象位置は、ベッドに仰臥した人の股間の位置であることを特徴とする。
添い寝している老人の排泄について確認したい場合、腰痛等によりコルセット等の器具を着用している場合、その他ベッドに仰臥した人の股間の位置又はその周辺を視認したい場合が多くある。
【発明の効果】
【0014】
本発明のホテル客室は、ベッドに仰臥した状態で固定された視認対象位置を見ることが可能になる。視認対象物及び目の位置が動いても、視認対象物を見ることができる。
母親が乳児の表情を見る、乳児の排泄について確認する、或いは、着用しているコルセット等の器具の状態を確認するといった目的を達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、ベッドと鏡の配置の例を示す図である。
【図2】図2は、ベッドと鏡の配置の例を示す図である。
【図3】図3は、目の位置、視認対象位置、凹面鏡の配置を示す図である。
【図4】図4は、凹面鏡の作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図を参照しつつ実施例について説明する。なお、図面を見やすくするため凹面鏡の凹面の曲率を誇張して表現している。図面と実際の実施形態とは必ずしも一致しない。
【実施例1】
【0017】
図1は、ベッドと鏡の配置の例を示す図である。ベッド1が設置され、その周縁の壁面が垂直面2である。垂直面2には凹面鏡3及び平面鏡4が設けられている。
図3は、目の位置、視認対象位置、凹面鏡の配置を示す図である。目の位置5は、ベッドに配される枕の位置により定まる。視認対称位置は、乳房の位置であれば位置6a、股間の位置であれば位置6bとなる。位置6a及び6bについてはベッドに仰臥した人の体格に依存するが、平均的な体格に基づいて定めることができる。位置6a及び6bを視認対称位置とする場合、視認対称位置が拡大されて見えるよう、凹面鏡3をそれぞれ3a及び3bの位置に設置する。また、視認対象物を正立像として見ることができるよう、凹面鏡3の焦点距離はベッドの幅よりも十分に大きい。(図においては凹面を強調するために焦点距離がベッドの幅よりも小さく見えるように凹面鏡3が描かれているが、実際の凹面鏡は、図に描かれたよりも平面に近い形状で焦点距離の大きなものである。)
【0018】
図4は、凹面鏡の作用を示す図である。図は理解容易性のために平面を対象に描いてあるが、立体についても作用は同様である。
目の位置5と視認対象位置6を結ぶ直線7上の4点、A、B、X及びYは、以下の点である。点A及びBは、その点からの光(図において破線で示す)が、凹面鏡3と平面鏡4との境界において、平面鏡で反射して目の位置に届く点である。点X及びYは、その点からの光(図において一点鎖線で示す)が、凹面鏡3と平面鏡4との境界において、凹面鏡で反射して目の位置に届く点である。
直線7上の点のうち、図においてAよりも左側の点及びBよりも右側の点は平面鏡4に写り見ることができる。XとYの間の点は凹面鏡3に写り拡大して見ることができる。AとXの間の点及びBとYの間の点は、鏡に写らず見えない。
【0019】
視認対称位置6を線分XYの中点とし、XとYとの距離が40cm以上となるようにすれば、視認対象位置及びそこから20cm以内の距離の位置が拡大されて見える。凹面鏡のサイズ及び拡大倍率(図においては一点鎖線の方向に反映されている)を設計してこれを実現する。
凹面鏡3の拡大倍率は、線分XYの長さに対する線分ABの長さの比で表される。一般に凹面鏡の拡大倍率は写る物と凹面鏡の距離に依存するので、厳密には拡大倍率は線分XY内で変化する。しかし、本発明の目的では線分XYの長さに対する線分ABの長さの比を拡大倍率として問題ない。線分XY内における拡大倍率の変化はあまり大きくならないからである。
ベッドの幅が120cmであり(目の位置が平面鏡の平面より60cmだけ図の下側にあり)、視認対象位置が股間の位置(目の位置に対し90cmだけ図の右側の位置)である場合に、凹面鏡3のサイズ(図1で円形に表されており、その円の直径で示される)を60cmとし、焦点距離を300cmとした。これにより、XとYとの距離をおよそ45cm、拡大倍率をおよそ1.3とした。
視認対称位置が異なる場合にも、凹面鏡3のサイズ及び焦点距離を設計して、XとYとの距離及び拡大倍率を所定の範囲のものとすることができる。
【実施例2】
【0020】
図2は、ベッドと鏡の配置の例を示す図である。鏡の作用は実施例1と同様である。本実施例は、垂直面2としてベッドの足元側の側板を用いる。図に示すような意匠とすることができる。
また、目の位置、乳房の位置、股間の位置、凹面鏡3の中心がほぼ直線上に配されるので、凹面鏡3のサイズ及び焦点距離を設計して、乳房の位置及び股間の位置の双方を拡大して見ることが、1枚の凹面鏡によって可能となる。ただし、乳房の位置と股間の位置との拡大倍率は異なる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
ベッドに仰臥した状態で固定された視認対象位置を見ることを目的とする装置、特に拡大して見る装置であり、多くのホテルによる活用が期待できる。
【符号の説明】
【0022】
1 ベッド
2 垂直面
3 凹面鏡
4 平面鏡
5 目の位置
6 視認対称位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドと、該ベッド周縁の垂直面に設けられた凹面鏡とを備え、
前記凹面鏡は、前記ベッドに仰臥した人の目の位置から見て、所定の視認対象位置が拡大されて見える位置に設けられていることを特徴とする、ホテル客室。
【請求項2】
前記凹面鏡は、所定の視認対象位置及びそこから少くとも20cm以内の距離の位置が拡大されて見えることを特徴とする、請求項1に記載のホテル客室。
【請求項3】

前記拡大の倍率が1.2〜2.0倍であることを特徴とする、請求項1又は2のいずれか1項に記載のホテル客室。
【請求項4】

前記垂直面の前記凹面鏡の周辺に平面鏡が設けられていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のホテル客室。
【請求項5】

前記視認対象位置は、ベッドに仰臥した人の乳房の位置であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のホテル客室。
【請求項6】

前記視認対象位置は、ベッドに仰臥した人の股間の位置であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のホテル客室。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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