説明

ホログラムシールの製造方法およびホログラムシール

【課題】 既成のホログラムフィルムのホログラム特性を損なうことなくその上から文字図形を表示する。
【解決手段】 熱転写プリンタ1の印字ヘッド2を含む印刷部に用紙8として既製品のホログラムフィルムをセットし、パソコン11から文字図形のデータを熱転写プリンタ1の印刷部に転送して、ホログラムフィルム8に文字図形をインクリボン7を介さずに印刷する。これにより、印字ヘッド2により熱を加えられたホログラムフィルム8の表層部分のみが変色して文字図形が形成されるので、下層のホログラムの特性を損なうことなく、文字図形を表示することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラムシールの製造方法およびこの製造方法により製造されたホログラムシールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の各種証明書や会員証、商品券、割引券、施設利用券、商品パッケージなどには、偽造防止のために意匠的効果の高いホログラムシールが貼着されている。この種のホログラムシールは、大量生産する場合はホログラム版を用いているが、ホログラム版の作成コストが高くなるため、安価な既成のホログラムフィルムまたはホログラムシートを利用する方法が検討されている。このようなホログラムフィルムを用いたホログラムシールの製造は、ホログラムフィルムの表面に図形や文字等をインクにより印刷するの一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−255824号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のホログラムシールの製造方法においては、ホログラムフィルムの表面に図形や文字等をインクにより印刷するので、印刷された文字図形によりその部分のホログラムが隠されて見えなくなり、その部分ではホログラムの特性である虹彩や見え方の変化が得られないという問題があった。
【0004】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、ホログラム特性を損なうことなく文字図形を表示することのできるホログラムシールの製造方法およびその方法により製造されたホログラムシールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明のホログラムシール製造方法は、熱転写プリンタの印刷部にホログラムフィルムまたはホログラムシートをセットする工程と、パーソナルコンピュータから文字図形のデータを前記熱転写プリンタの印刷部に転送して、前記ホログラムフィルムまたはホログラムシートに前記文字図形をインクリボンを介さずに印刷する工程とを含むものである。パーソナルコンピュータから文字図形データを熱転写プリンタの印刷部に転送して、ホログラムフィルムまたはホログラムシートにインクリボンを介さずに文字図形を印刷することにより、印字ヘッドにより熱を加えられた表層部分のみが変色して文字図形が形成されるので、下層のホログラムの特性を損なうことなく文字図形を表示することができる。また、見た目にはどのように製造されたかが分からないので、セキュリティ効果および偽造防止効果を高めることができる。
【0006】
また、本発明は、前記ホログラムフィルムまたはホログラムシートに前記パーソナルコンピュータで作成した文字図形データのみを印刷することを特徴とする。この構成により、ホログラムフィルムまたはホログラムシートに形成された文字図形は、全体的に薄く表示されるので、ホログラム特性が強調されたホログラムシールを得ることができる。
【0007】
また、本発明は、予め文字図形が印刷された前記ホログラムフィルムまたはホログラムシートに、前記文字図形以外の場所に前記パーソナルコンピュータからの文字図形データを印刷することを特徴とする。この構成により、強く印象付けたい文字図形は従来通りにインクで印刷し、あまり目立たせたくない、例えば管理番号のような文字図形を本発明の方法により形成することにより、文字図形を目的別に表示することができ、セキュリティ効果および偽造防止効果を高めることができる。
【0008】
また、本発明は、前記ホログラムフィルムまたはホログラムシートが既成品であることを特徴とするものであり、ホログラムフィルムまたはホログラムシートを市場から調達して使用することにより、ホログラムシールを安価に大量に製造することができる。
【0009】
本発明はまた、上記したホログラムシールの製造方法を用いて製造したホログラムシールであり、文字図形が表示されているにも拘らず、ホログラムの特性である虹彩や見え方の変化が得られ、セキュリティ効果および偽造防止効果の高い安価で多様なホログラムシールを提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、パーソナルコンピュータから文字図形データを熱転写プリンタの印刷部に転送して、ホログラムフィルムまたはホログラムシートにインクリボンを介さずに文字図形を印刷するものであり、印字ヘッドにより熱を加えられた表層部分のみが変色して文字図形が形成されるので、その文字図形を通してホログラムの特性である虹彩や見え方の変化が得られ、ホログラム特性を損なうことなく文字図形を表示することができ、セキュリティ効果および偽造防止効果の高いホログラムシールを得ることができる。また、パーソナルコンピュータや熱転写プリンタのような一般に普及している装置および市販のホログラムフィルムまたはホログラムシートを使用するので、安価で多様なホログラムシールを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態におけるホログラムシールの製造方法について、図面を用いて説明する。
【0012】
(実施の形態1)
本発明の第1の実施の形態を図1を用いて説明する。図1において、使用する熱転写プリンタ1は既成のものであり、印字ヘッド2を含む印刷部には、リボンカセット3を保持するキャリッジ4が設けられている。リボンカセット3は、キャリッジ4に着脱可能に取り付けられており、キャリッジ4は、前方に傾動可能な印字ヘッド2を備え、プラテン5と平行に配置されたキャリッジシャフト6上を印字信号に同期しながら往復動する。リボンカセット3の内部には、インクリボン7が収納され、このインクリボン7は、リボンカセット3内部の巻取りボビンおよび送出しボビンに搬送されながら、印字ヘッド2の前面を印字信号に同期しながら走行する。印字ヘッド2に印字信号が印加されると、印字ヘッド2は、プラテン5とインクリボン7との間に挿入された用紙8に圧接し、印加された印字信号に合わせて部分的に発熱し、その熱によりインクリボン7が部分的に溶融して用紙8に転写される。用紙8は搬送ローラ9によって搬送され、用紙8に対し印刷が順次行われる。印字ヘッド2への印字信号、およびリボンカセット3、キャリッジ4、搬送ローラ9への制御信号は、プリンタ制御部10から供給される。
【0013】
パーソナルコンピュータ(以下、パソコンという。)11は、熱転写プリンタ1に所定のインタフェースを介して接続され、ワープロソフトや作図ソフト等を有する既成のものである。図2に示すように、ユーザは、初めに作図ソフトを用いてホログラムシールに使用する文字図形データを作成する(ステップS1)。作成した文字図形データは、ユーザの操作によりパソコン制御部12がメモリに登録する(ステップS2)。そして、ユーザの指示によりその登録した文字図形データを熱転写プリンタ1に転送する。熱転写プリンタ1のプリンタ制御部10は、パソコン11のパソコン制御部12から送られて来た文字図形データを、メモリに蓄える。
【0014】
ユーザは、ホログラムフィルムまたはホログラムシート(以下、ホログラムフィルムという。)に文字図形データを熱転写プリンタ1を用いて印刷しようとする場合、まず、リボンカセット3をキャリッジ4から取り外しておく。次に、図3に示すように、市販品である所定サイズのホログラムフィルムの先端部を、熱転写プリンタ1の用紙挿入口にセットする(ステップS11)。ここでは、ホログラムフィルムは、ロール状のものを使用しているが、予め所定サイズに裁断したホログラムフィルムを使用してもよい。ユーザがパソコンから印刷命令を入力すると(ステップS12)、プリンタ制御部10がメモリからの文字図形データを基に印字信号および制御信号を作成して印字ヘッド2その他の関連する部材へ送出する(ステップS13)。これにより、印字ヘッド2が、インクリボン7を介さずに用紙8(ホログラムフィルム)に圧接し、印字ヘッド2の文字図形データに対応する部分が発熱し、その熱によりホログラムフィルムの表層部分が薄白く変色して印刷が行われる(ステップS14)。
【0015】
図4はこのようにして作成されたホログラムシール21の例を示している。このホログラムシール21は、ホログラムフィルム22の上に文字図形23を縦横複数列に並べ、各行の下に管理番号24を印刷したものである。各文字図形23は、シールとして型抜きされ、それぞれ個別に利用される。文字図形23は、ホログラムフィルム22の下層のホログラム層を破壊することなく、表層のみに形成されるので、文字図形23を通して下層のホログラムを見ることができ、ホログラムの特性である虹彩や角度による見え方の変化が得られる。言いかえれば、所定の角度でしか文字図形を見ることができないので、セキュリティ効果および偽造防止効果を高めることができる。また、管理番号24は、複写機でコピーしても写らないので、セキュリティ効果および偽造防止効果を一層高めることができる。
【0016】
市販されているホログラムフィルムは、ポリエステルフィルム等の支持フィルムの表面にアクリルラッカー等の熱可塑性樹脂層を形成し、その表面に2500Å程度の凹凸を有するホログラム面を形成し、さらに種々の金属を蒸着したものや、支持フィルムの一部または全面に、紫外線(または電子線)硬化性樹脂液を塗布し、市販ホログラムフィルムを圧着して紫外線(または電子線)硬化性樹脂層の表面にホログラム凹凸を形成し、金属蒸着膜を形成したものなど、さらには、これらホログラムフィルムの表面に保護フィルムをラミネートしたものなど、多種類のものが使用可能である。
【0017】
このように、本実施の形態1によれば、熱転写プリンタの印字ヘッドを含む印刷部に既製品のホログラムフィルムをセットし、パソコンから文字図形のデータを熱転写プリンタの印刷部に転送して、ホログラムフィルムに文字図形をインクリボンを介さずに印刷することにより、印字ヘッドにより熱を加えられたホログラムフィルムの表層部分のみが変色して文字図形が形成されるので、下層のホログラムの特性を損なうことなく文字図形を表示することができる。また、見た目にはどのように製造されたかが分からず、また複写機でもコピーされないので、セキュリティ効果および偽造防止効果を高めることができる。
【0018】
(実施の形態2)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態2では、既成のホログラムフィルムに既にインク印刷により予め文字図形が形成されたものを使用する。このようなホログラムフィルムを使用する理由は、ホログラム特性よりも文字図形の明確性を求める場合であり、文字図形の意味内容を消費者にアッピールすることを第1に考える場合である。このような場合においても、本発明の印刷法を適用することにより、製造番号や管理番号等の消費者にはあまり意味がなく、生産者にとって意味のある文字図形データをも同じホログラムシールに印刷したい要望に応えるものである。
【0019】
このようなホログラムシールの製造方法は、図1ないし図3に示した上記の実施の形態1と同様な装置を使用し、同様な工程により行う。異なるのは、用紙8として既に文字図形が印刷されているホログラムフィルムを使用することと、パソコン11からは既に印刷されている文字図形以外の場所に、新たな文字図形を印刷するための位置データが必要になることである。このような位置データは、既に文字データが印刷されている定形サイズのホログラムフィルムをスキャナで読み取って画像データを作成し、その画像データを基にその画像データ以外の場所に新たに文字図形データを作図し、その後に前の画像データを消去することにより得られる。前の画像データと後の文字図形データとは、用紙8の先端部からの位置により同期が取られる。文字図形以外の場所の位置データを得る別の方法として、既に印刷されている文字図形を型抜きすると、型抜きされた部分とされない部分とで厚さが異なるので、この厚さの違いをセンサーで検出する方法、または型抜きされた部分とされない部分との光透過の有無を検出する方法、または、文字図形以外の場所の位置を指定するタイミングマークを予め印刷して、そのタイミングマークを読み取る方法などがある。これらの方法により、文字図形以外の場所の位置データを得ることにより、1枚のホログラムフィルムに複数個の文字図形が表示されていても、それぞれの文字図形の近くに管理番号等を表示することができる。
【0020】
このように、本実施の形態2によれば、予め文字図形データが印刷された既製品のホログラムフィルムを熱転写プリンタ1の印刷部2にセットし、パソコン11からはその文字図形データ以外の位置データを有する新たな文字データを熱転写プリンタ1の印刷部に転送してインクリボン6を介さずに印刷するので、強く印象付けたい文字図形は従来通りにインクで印刷し、あまり目立たせたくない、例えば管理番号のような文字図形を本発明の方法により形成することにより、文字図形を目的別に描画することができ、また、見た目には管理番号が印刷されていることが簡単には分からず、また複写機でもコピーされないので、セキュリティ効果および偽造防止効果を高めることができる。
【0021】
なお、以上の説明では、パソコン11で作成した文字図形データを熱転写プリンタ1でインクリボン7を介さずに印刷するようにしたが、別のパソコンで作成した文字図形データを通信回線を介してパソコン11のメモリにダウンロードしたり、可搬型記憶媒体を介してパソコン11に取り込むようにしてもよい。また、プリンタとして熱転写プリンタを使用したが、図示の構造以外の熱転写プリンタを使用してもよく、また熱転写プリンタでなく感熱プリンタを使用して感熱紙の替わりにホログラムフィルムを使用しても実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態におけるホログラムシールの製造方法を説明するための概略図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるパソコンの処理を示すフロー図である。
【図3】本発明の実施の形態における熱転写プリンタの処理を示すフロー図である。
【図4】本発明の実施の形態により製造されたホログラムシールの例を示す部分平面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 熱転写プリンタ
2 印字ヘッド
3 リボンカセット
4 キャリッジ
5 プラテン
6 キャリッジシャフト
7 インクリボン
8 用紙(ホログラムフィルム)
9 搬送ローラ
10 プリンタ制御部
11 パソコン
12 パソコン制御部
21 ホログラムシール
22 ホログラムフィルム
23 文字図形
24 管理番号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱転写プリンタの印刷部にホログラムフィルムまたはホログラムシートをセットする工程と、
パーソナルコンピュータから文字図形のデータを前記熱転写プリンタの印刷部に転送して、前記ホログラムフィルムまたはホログラムシートに前記文字図形をインクリボンを介さずに印刷する工程とを含むホログラムシールの製造方法。
【請求項2】
前記ホログラムフィルムまたはホログラムシートに前記パーソナルコンピュータで作成した文字図形データのみを印刷することを特徴とする請求項1記載のホログラムシールの製造方法。
【請求項3】
予め文字図形が印刷された前記ホログラムフィルムまたはホログラムシートに、前記文字図形以外の場所に前記パーソナルコンピュータからの文字図形データを印刷することを特徴とする請求項1または請求項2記載のホログラムシールの製造方法。
【請求項4】
前記ホログラムフィルムまたはホログラムシートが既成品であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のホログラムシールの製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のホログラムシールの製造方法を用いて製造したホログラムシール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate